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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138833
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】振動素子及び振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
H03H9/19 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049537
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山口 啓一
(72)【発明者】
【氏名】西澤 竜太
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC08
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE09
5J108EE18
5J108FF07
5J108GG03
5J108GG11
5J108GG15
5J108GG16
5J108KK02
(57)【要約】
【課題】接合強度に優れた振動素子及び振動デバイスを提供する。
【解決手段】振動素子1は、薄肉部11及び厚肉部12を含む基板10と、励振電極31,32、パッド電極33,34、及び引出電極35,36を含む電極部30と、を備え、電極部30は、基板10上の、パッド電極配置領域14及び第1領域16に配置されている第1電極層41と、第1電極層41上で第1電極層41と重なる領域に配置され、第1電極層41より厚さが大きい第2電極層42と、第2電極層42上において、平面視で、パッド電極配置領域14及び第1領域16と重なる領域と、基板10上において、平面視で、第2領域17及び励振電極配置領域13と重なる領域と、に亘って配置され、第2電極層42より厚さが小さい第3電極層43と、第3電極層43上で第3電極層43と重なる領域に配置され、第2電極層42より厚さが小さい第4電極層44と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉部及び前記薄肉部より厚さが大きい厚肉部を含む基板と、
前記薄肉部の励振電極配置領域に配置されている励振電極と、前記厚肉部のパッド電極配置領域に配置されているパッド電極と、前記励振電極と前記パッド電極とを接続し、前記基板の引出電極配置領域に配置されている引出電極と、を含む電極部と、
を備え、
前記引出電極配置領域は、前記厚肉部に位置する部分を含む第1領域と、前記薄肉部に位置する部分を含む第2領域と、を含み、
前記電極部は、
前記基板上の、前記パッド電極配置領域及び前記第1領域に配置されている第1電極層と、
前記第1電極層上において、平面視で、前記パッド電極配置領域及び前記第1領域と重なる領域に配置され、前記第1電極層より厚さが大きい第2電極層と、
前記第2電極層上において、平面視で、前記パッド電極配置領域及び前記第1領域と重なる領域と、前記基板上において、平面視で、前記第2領域及び前記励振電極配置領域と重なる領域と、に亘って配置され、前記第2電極層より厚さが小さい第3電極層と、
前記第3電極層上において、平面視で、前記パッド電極配置領域、前記引出電極配置領域、及び前記励振電極配置領域と重なる領域に亘って配置され、前記第2電極層より厚さが小さい第4電極層と、を含む、
振動素子。
【請求項2】
前記第2電極層の厚さは、前記第4電極層の厚さの3倍以上である、
請求項1に記載の振動素子。
【請求項3】
前記第1領域は、前記薄肉部に位置する部分を含む、
請求項1に記載の振動素子。
【請求項4】
前記第1領域は、前記薄肉部に位置する部分を含む、
請求項2に記載の振動素子。
【請求項5】
前記基板は、前記厚肉部と前記薄肉部との間を接続し、傾斜部を有する接続部を含み、
前記第1領域は、平面視で、前記薄肉部及び前記接続部に位置する部分を含む、
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の振動素子。
【請求項6】
前記第2電極層及び前記第4電極層は、金であり、
前記第1電極層及び前記第3電極層は、ニッケル、クロム、及び窒化クロムの少なくとも1つを含む、
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の振動素子。
【請求項7】
前記第2電極層及び前記第4電極層は、金であり、
前記第1電極層及び前記第3電極層は、ニッケル、クロム、及び窒化クロムの少なくとも1つを含む、
請求項5に記載の振動素子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の振動素子と、
前記振動素子を収容し、接合材を介して前記振動素子が固定されたパッケージと、
を備える、
振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動素子及び振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主面の一部に凹陥部を形成して高周波化を図った所謂逆メサ構造の圧電振動素子が開示されている。この圧電振動素子は、接着・固定に起因する応力の広がりを抑圧するために圧電振動素子を固定する厚肉部と振動部との間にスリットを設けている。また、高周波化に伴う電極の薄膜化により、特に、励振電極とパッド電極とを電気的に接続する幅の狭い引出電極において、シート抵抗の増大を防ぐために引出電極の厚みを励振電極の厚みより厚くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-7693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の圧電振動素子は、圧電振動素子をパッケージに機械的接続且つ電気的接続する接合材がパッド電極に接合されている。そのため、パッド電極の厚さが不十分な場合、圧電振動素子と接合材との間の接合強度が得られず、結果として圧電振動素子とパッケージとの間の機械的接続又は電気的接続が不安定になるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
振動素子は、薄肉部及び前記薄肉部より厚さが大きい厚肉部を含む基板と、前記薄肉部の励振電極配置領域に配置されている励振電極と、前記厚肉部のパッド電極配置領域に配置されているパッド電極と、前記励振電極と前記パッド電極とを接続し、前記基板の引出電極配置領域に配置されている引出電極と、を含む電極部と、を備え、前記引出電極配置領域は、前記厚肉部に位置する部分を含む第1領域と、前記薄肉部に位置する部分を含む第2領域と、を含み、前記電極部は、前記基板上の、前記パッド電極配置領域及び前記第1領域に配置されている第1電極層と、前記第1電極層上において、平面視で、前記パッド電極配置領域及び前記第1領域と重なる領域に配置され、前記第1電極層より厚さが大きい第2電極層と、前記第2電極層上において、平面視で、前記パッド電極配置領域及び前記第1領域と重なる領域と、前記基板上において、平面視で、前記第2領域及び前記励振電極配置領域と重なる領域と、に亘って配置され、前記第2電極層より厚さが小さい第3電極層と、前記第3電極層上において、平面視で、前記パッド電極配置領域、前記引出電極配置領域、及び前記励振電極配置領域と重なる領域に亘って配置され、前記第2電極層より厚さが小さい第4電極層と、を含む。
【0006】
振動デバイスは、上記に記載の振動素子と、前記振動素子を収容し、接合材を介して前記振動素子が固定されたパッケージと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る振動素子の構成を示す斜視図。
図2】ATカット水晶基板と水晶の結晶軸との関係を説明する図。
図3図1に示す振動素子の平面図。
図4図3中のA1-A1線断面図。
図5図3中のA2-A2線断面図。
図6図3中のA3-A3線断面図。
図7】第2実施形態に係る振動素子の構成を示す平面図。
図8図7中のB1-B1線断面図。
図9】第3実施形態に係る振動素子の構成を示す斜視図。
図10】第4実施形態に係る振動デバイスの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態
1.1.振動素子
第1実施形態に係る振動素子1について、図1図6を参照して説明する。
【0009】
尚、説明の便宜上、図2を除く以降の各図には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y’軸、及びZ’軸を図示している。また、振動素子1の長手方向をX軸に沿った方向として「X方向」、振動素子1の厚み方向をY’軸に沿った方向として「Y’方向」、X軸及びY’軸に垂直な方向をZ’軸に沿った方向として「Z’方向」と言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」、矢印と反対側を「マイナス側」とも言う。また、Y’方向のプラス側を「表」、Y’方向のマイナス側を「裏」とも言う。
【0010】
本実施形態の振動素子1は、図1に示すように、基板10と、基板10上に形成された電極部30と、を有している。
【0011】
基板10は、板状の水晶基板である。ここで、基板10の材料である水晶は、三方晶系に属しており、図2に示すように互いに直交する結晶軸X、Y、Zを有している。X軸、Y軸、Z軸は、それぞれ、電気軸、機械軸、光学軸と呼称される。本実施形態の基板10は、XZ面をX軸の回りに所定の角度θ回転させた平面に沿って切り出された「回転Yカット水晶基板」であり、例えばθ=35°15’だけ回転させた平面に沿って切り出された場合の基板は「ATカット水晶基板」という。このような水晶基板を用いることにより優れた温度特性を有する振動素子1となる。
【0012】
但し、基板10としては、厚みすべり振動を励振することができれば、ATカットの水晶基板に限定されず、例えば、BTカットの水晶基板を用いてもよい。また、基板10としては、水晶基板の他、例えば、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の各種圧電基板を用いてもよい。
尚、以下では、角度θに対応してX軸回りに回転したY軸及びZ軸を、Y’軸及びZ’軸とする。即ち、基板10は、Y’方向に厚みを有し、XZ’面方向に広がりを有する。
【0013】
基板10は、平面視にて、X方向を長辺とし、Z’方向を短辺とする長手形状をなしている。また、基板10は、マイナスX方向を先端側とし、プラスX方向を基端側としている。基板10のX方向の最大長さLとし、Z’方向の最大幅Wとしたとき、L/Wとしては、特に限定されないが、例えば、1.1~1.4程度とすることが好ましい。
【0014】
基板10は、図1及び図3に示すように、振動エネルギーが閉じ込められる領域である振動領域の薄肉部11と、薄肉部11と一体化され、薄肉部11より厚さが大きい厚肉部12とを有している。
薄肉部11は、基板10の中央に対して、X方向マイナス側及びZ’方向マイナス側に片寄っており、その外縁の一部が厚肉部12から露出している。振動素子1の平面視にて、薄肉部11の面積は、基板10の面積の1/2以下であるのが好ましい。これにより、機械的強度が高い厚肉部12を十分広く形成することができるため、薄肉部11の剛性を十分に確保することができる。
【0015】
薄肉部11は、振動素子1の平面視にて、厚み滑り振動の振動方向であるX方向に離間し、Z’方向に延在する第1外縁21及び第2外縁22と、Z’方向に離間し、X方向に延在する第3外縁23及び第4外縁24とを有している。第1外縁21、第2外縁22のうち、第1外縁21がX方向プラス側に位置し、第2外縁22がX方向マイナス側に位置している。また、第3外縁23、第4外縁24のうち、第3外縁23がZ’方向プラス側に位置し、第4外縁24がZ’方向マイナス側に位置している。また、第3外縁23が第1外縁21及び第2外縁22のZ’方向プラス側の端同士を連結しており、第4外縁24が第1外縁21及び第2外縁22のZ’方向マイナス側の端同士を連結している。
【0016】
また、図1に示すように、厚肉部12のY’方向プラス側の主面である表面は、薄肉部11のY’方向プラス側の主面である表面よりもY’方向プラス側へ突出して設けられている。一方、厚肉部12のY’方向マイナス側の主面である裏面は、薄肉部11のY’方向マイナス側の主面である裏面と同一平面上に設けられている。
【0017】
厚肉部12は、第1外縁21に沿って配置された厚肉部12と、第3外縁23に沿って配置された厚肉部12とを有している。そのため、厚肉部12は、平面視で、薄肉部11に沿って曲がった構造を備え、略L字状をなしている。一方、薄肉部11の第2外縁22及び第4外縁24には、厚肉部12が形成されておらず、これら第2外縁22、第4外縁24は、厚肉部12から露出している。このように、厚肉部12を薄肉部11の外縁に部分的に設けて略L字とし、第2外縁22及び第4外縁24に沿って設けないことによって、振動素子1の薄肉部11の剛性を保ちつつ、振動素子1の先端側の質量を低減することができる。また、振動素子1の小型化を図ることができる。
【0018】
厚肉部12は、厚肉部12と薄肉部11との間を接続する、第1外縁21に連設され、プラスX方向に向けて厚みが漸増する傾斜部を有する接続部26と、第3外縁23に連設され、プラスZ’方向に向けて厚みが漸増する傾斜部を有する接続部25と、を備えている。また、接続部26側の厚肉部12がマウント部となり、導電性接着剤等を用いてパッケージ等に固定される。
【0019】
電極部30は、一対の励振電極31,32と、一対のパッド電極33,34と、一対の引出電極35,36とを有している。
【0020】
励振電極31,32は、薄肉部11の励振電極配置領域13に配置されている。励振電極31は、薄肉部11の表面に形成されている。一方、励振電極32は、薄肉部11の裏面に、励振電極31と対向して配置されている。励振電極31、32は、それぞれ、X方向を長手とし、Z’方向を短手とする略矩形である。
【0021】
パッド電極33,34は、厚肉部12のパッド電極配置領域14に配置されている。パッド電極33は、接続部26側の厚肉部12の表面に形成されている。一方、パッド電極34は、接続部26側の厚肉部12の裏面に、パッド電極33と対向して形成されている。
【0022】
引出電極35,36は、基板10の引出電極配置領域15に配置されている。尚、引出電極配置領域15は、接続部25,26を含む厚肉部12に位置する部分を含む第1領域16と、薄肉部11に位置する部分を含む第2領域17と、で構成されている。引出電極35は、励振電極31とパッド電極33とを電気的に接続している。一方、引出電極36は、励振電極32とパッド電極34とを電気的に接続している。引出電極35,36は、基板10を介して重ならないように設けられている。これにより、引出電極35,36間の静電容量を抑えることができる。
【0023】
また、電極部30は、図3図4図5、及び図6に示すように、第1電極層41、第2電極層42、第3電極層43、及び第4電極層44の4層の金属が積層されたパッド電極33,34及び引出電極35,36の一部と、第3電極層43及び第4電極層44の2層の金属が積層された引出電極35,36の一部及び励振電極31,32と、で構成されている。
【0024】
具体的には、第1電極層41は、基板10上のパッド電極配置領域14及び第1領域16に配置されている。第2電極層42は、第1電極層41上において、平面視で、パッド電極配置領域14及び第1領域16と重なる領域に配置されている。尚、第2電極層42の厚さt2は、第1電極層41の厚さt1より大きい。また、第2電極層42の厚さt2は、第4電極層44の厚さt4の3倍以上であることが、シート抵抗の増大を制御する上で、より好ましい。
【0025】
第3電極層43は、第2電極層42上において、平面視で、パッド電極配置領域14及び第1領域16と重なる領域と、基板10上において、平面視で、第2領域17及び励振電極配置領域13と重なる領域と、に亘って配置されている。尚、第3電極層43の厚さt3は、第2電極層42の厚さt2より小さい。
【0026】
第4電極層44は、第3電極層43上において、平面視で、パッド電極配置領域14、引出電極配置領域15、及び励振電極配置領域13と重なる領域に亘って配置されている。尚、第4電極層44の厚さt4は、第2電極層42の厚さt2より小さい。
【0027】
電極部30の構成材料は、第2電極層42及び第4電極層44は、金(Au)であり、第1電極層41及び第3電極層43は、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、及び窒化クロム(CrN)の少なくとも1つである。
【0028】
以上で述べたように本実施形態の振動素子1は、基板10の接続部25,26を含む厚肉部12に4層構造のパッド電極33,34と引出電極35,36とが設けられ、薄肉部11に2層構造の励振電極31,32と引出電極35,36とが設けられている。従って、励振電極31,32の厚さを不要なスプリアスが発生し難い薄さとし、引出電極35,36の厚さをシート抵抗が増大し難い厚みとし、パッド電極33,34の厚さを十分な接合強度が得られる厚みとすることができる。そのため、振動特性に優れ、機械的信頼性又は電気的信頼性に優れた振動素子1を得ることができる。
【0029】
1.2.振動素子の製造方法
次に、振動素子1の製造方法について説明する。
振動素子1の製造方法は、基板10の一部を薄肉化する薄肉部形成工程と、基板10上に電極を形成する第1電極部形成工程と、第1電極部上と薄肉部上に電極を形成する第2電極部形成工程と、を含む。
【0030】
1.2.1.薄肉部形成工程
基板10の表裏面に、スパッタリング等の成膜装置によって、金(Au)等のエッチング保護膜を形成する。次に、フォトリソグラフィー技法及びエッチング技法を用いて、基板10の表面に凹陥部を形成するための保護膜マスクを形成する。
【0031】
次に、エッチング液、例えば、フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液を用いて、保護膜マスクを介して基板10をウエットエッチングし、基板10に薄肉部11を形成する。
【0032】
1.2.2.第1電極部形成工程
薄肉部11が形成された基板10の表裏面に、スパッタリング等の成膜装置によって、クロム(Cr)等の第1電極層41と金(Au)等の第2電極層42とを積層して形成する。その後、フォトリソグラフィー技法及びエッチング技法を用いて、基板10上のパッド電極配置領域14及び引出電極配置領域15の第1領域16に、パッド電極33,34と引出電極35,36を形成する。
【0033】
1.2.3.第2電極部形成工程
パッド電極配置領域14及び引出電極配置領域15の第1領域16に、パッド電極33,34と引出電極35,36が形成された基板10の表裏面に、スパッタリング等の成膜装置によって、クロム(Cr)等の第3電極層43と金(Au)等の第4電極層44とを積層して形成する。その後、フォトリソグラフィー技法及びエッチング技法を用いて、第2電極層42上のパッド電極配置領域14及び引出電極配置領域15の第1領域16と重なる領域と、基板10上の引出電極配置領域15の第2領域17及び励振電極配置領域13にパッド電極33,34、引出電極35,36、及び励振電極31,32を形成する。
【0034】
以上の製造方法により、基板10の接続部25,26を含む厚肉部12に4層構造のパッド電極33,34と引出電極35,36が設けられ、薄肉部11に2層構造の励振電極31,32と引出電極35,36が設けられた振動素子1を製造することができる。従って、励振電極31,32の厚さを不要なスプリアスが発生し難い薄さとし、引出電極35,36の厚さをシート抵抗が増大し難い厚みとし、パッド電極33,34の厚さを十分な接合強度が得られる厚みとすることができる。そのため、振動特性に優れ、機械的信頼性又は電気的信頼性に優れた振動素子1を得ることができる。
【0035】
2.第2実施形態
2.1.振動素子
次に、第2実施形態に係る振動素子1aについて、図7及び図8を参照して説明する。
【0036】
本実施形態の振動素子1aは、第1実施形態の振動素子1に比べ、電極部30aの配置位置構成が異なること以外は、第1実施形態の振動素子1と同様である。なお、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項は同じ符号を付してその説明を省略する。
【0037】
振動素子1aは、図7に示すように、基板10と、基板10上に形成された電極部30aと、を有している。
【0038】
振動素子1aの電極部30aは、4層構造のパッド電極33,34と、4層構造と2層構造から構成される引出電極35a,36aと、2層構造の励振電極31,32と、で構成されている。4層構造の引出電極35a,36aが形成される引出電極配置領域15aの第1領域16aは、薄肉部11に位置する部分も含んでいる。つまり、図8に示すように、4層構造の引出電極35aは、接続部25を含む厚肉部12と薄肉部11の一部に形成されている。
【0039】
このような構成とすることで振動素子1aは、2層構造の引出電極35a,36aを短くすることができ、シート抵抗の増大を更に抑制することができる。従って、接合強度に優れ、低CI値の振動素子1aを得ることができる。
【0040】
3.第3実施形態
3.1.振動素子
次に、第3実施形態に係る振動素子1bについて、図9を参照して説明する。
【0041】
本実施形態の振動素子1bは、第1実施形態の振動素子1に比べ、基板10bの形状が異なること以外は、第1実施形態の振動素子1と同様である。なお、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項は同じ符号を付してその説明を省略する。
【0042】
振動素子1bは、図9に示すように、基板10bと、基板10b上に形成された電極部30と、を有している。
【0043】
振動素子1bの基板10bは、厚肉部12のY’方向プラス側の主面である表面は、薄肉部11bのY’方向プラス側の主面である表面よりもY’方向プラス側へ突出して設けられている。一方、厚肉部12のY’方向マイナス側の主面である裏面は、薄肉部11bのY’方向マイナス側の主面である裏面よりもY’方向マイナス側へ突出して設けられている。つまり、基板10bの表裏面に凹陥部を形成することによって、薄肉部11bが形成されている。そのため、製造方法において、前述した第1実施形態と比較して、凹陥部のエッチング深さを浅くでき、低コスト化が図れる。
【0044】
このような構成とすることで振動素子1bは、接合強度に優れ、低コストの振動素子1bを得ることができる。
【0045】
4.第4実施形態
4.1.振動デバイス
次に、第4実施形態に係る振動デバイス2について、図10を参照して説明する。尚、本説明では、前述した振動素子1を備えた振動デバイス2を一例として挙げ説明する。
【0046】
振動デバイス2は、図10に示すように、振動素子1と、振動素子1を収容するパッケージ50と、パッケージ50と収容空間52を形成するリッド60と、を有している。
【0047】
パッケージ50は、第1面55に開放する凹部51を有し、第1面55に凹部51の開口を塞ぐリッド60が接合されている。パッケージ50の凹部51をリッド60で塞ぐことによって、振動素子1を収容する収容空間52が形成される。収容空間52は、減圧又は真空状態となっていてもよいし、窒素(Ni)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の不活性ガスが封入されていてもよい。
【0048】
パッケージ50の構成材料としては、特に限定されないが、酸化アルミニウム等の各種セラミックスを用いることができる。また、リッド60の構成材料としては、特に限定されないが、パッケージ50の構成材料と線膨張係数が近似する部材であると良い。尚、パッケージ50とリッド60の接合は、特に限定されず、例えば、接着剤を介して接合してもよいし、シーム溶接等により接合してもよい。
【0049】
パッケージ50の内底面53には、接続電極56,57が形成されている。また、パッケージ50の第2面54には、外部実装端子58,59が形成されている。接続電極56は、パッケージ50に形成された図示しない貫通電極を介して外部実装端子58と電気的に接続されており、接続電極57は、パッケージ50に形成された図示しない貫通電極を介して外部実装端子59と電気的に接続されている。
【0050】
収容空間52内に収容されている振動素子1は、厚肉部12のY’方向プラス側の主面である表面をパッケージ50側に向けて、厚肉部12のマウント部において、導電性接着剤である接合材61によってパッケージ50に固定されている。接合材61は、接続電極56とパッド電極33とに接触して設けられている。これにより、接合材61を介して接続電極56とパッド電極33とが電気的に接続される。接合材61を用いて振動素子1を一カ所又は一点で支持することによって、例えば、パッケージ50と基板10の熱膨張率の差によって振動素子1に発生する応力を抑えることができる。
【0051】
振動素子1のパッド電極34は、ボンディングワイヤー62を介して接続電極57に電気的に接続されている。前述したように、パッド電極34は、パッド電極33と対向して配置されているため、振動素子1がパッケージ50に固定されている状態では、接合材61の直上に位置している。そのため、ワイヤーボンディング時にパッド電極34に与える超音波振動の漏れを抑制することができ、パッド電極34へのボンディングワイヤー62の接続をより確実に行うことができる。
【0052】
また、パッド電極33,34は、4層構造で十分な厚みを有している。そのため、接合材61との接合強度やボンディングワイヤー62との接合強度を十分確保することができる。従って、十分な接合強度を有するパッド電極33,34を備えた振動素子1をパッケージ50内に固定している振動デバイス2は、機械的信頼性又は電気的信頼性に優れている。
【0053】
このような構成とすることで振動デバイス2は、励振電極31,32の厚さを不要なスプリアスが発生し難い薄さとし、引出電極35,36の厚さをシート抵抗が増大し難い厚みとし、パッド電極33,34の厚さを十分な接合強度が得られる厚みとした振動素子1を備えているので、良好な振動特性を有し、機械的信頼性又は電気的信頼性に優れた振動デバイス2を得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
1,1a,1b…振動素子、2…振動デバイス、10…基板、11…薄肉部、12…厚肉部、13…励振電極配置領域、14…パッド電極配置領域、15…引出電極配置領域、16…第1領域、17…第2領域、21…第1外縁、22…第2外縁、23…第3外縁、24…第4外縁、25,26…接続部、30…電極部、31,32…励振電極、33,34…パッド電極、35,36…引出電極、41…第1電極層、42…第2電極層、43…第3電極層、44…第4電極層、50…パッケージ、51…凹部、52…収容空間、53…内底面、54…第2面、55…第1面、56,57…接続電極、58,59…外部実装端子、60…リッド、61…接合材、62…ボンディングワイヤー、t1,t2,t3,t4…厚さ、L…最大長さ、W…最大幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10