(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138836
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】機械式時計
(51)【国際特許分類】
G04C 3/06 20060101AFI20241002BHJP
G04B 17/06 20060101ALI20241002BHJP
G04B 17/22 20060101ALI20241002BHJP
G04C 10/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G04C3/06 B
G04B17/06
G04B17/22 Z
G04C10/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049540
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 照彦
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101DA06
2F101DJ05
(57)【要約】
【課題】指針の指示時刻のずれの原因となる外部磁界ノイズの影響を低減できる機械式時計を提供すること。
【解決手段】機械式時計は、ゼンマイと、ゼンマイからの動力により駆動されるテンプと、クロック信号を出力する発振回路と、永久磁石およびコイルを備え、永久磁石およびコイルの一方がテンプに保持される調速手段と、コイルによって外部磁界を検出する外部磁界検出手段と、テンプの振動を検出して振動検出信号を出力する振動検出手段と、クロック信号と振動検出信号とを比較した結果に応じて駆動パルスを出力し、駆動パルスによってコイルに電流を出力して発生させた電磁力を永久磁石に働かせてテンプを調速する処理を実行する調速制御手段と、調速制御手段に供給する電気エネルギーを蓄電する蓄電手段と電気エネルギーを発電する発電機とを備える。調速制御手段は、外部磁界の検出結果に応じて、テンプを調速する処理内容を変更する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼンマイと、
前記ゼンマイからの動力により駆動されるテンプと、
クロック信号を出力する発振回路と、
永久磁石およびコイルを備え、前記永久磁石および前記コイルの一方が前記テンプに保持される調速手段と、
前記コイルによって外部磁界を検出する外部磁界検出手段と、
前記テンプの振動を検出して振動検出信号を出力する振動検出手段と、
前記クロック信号と前記振動検出信号とを比較した結果に応じて駆動パルスを出力し、前記駆動パルスによって前記コイルに電流を出力して発生させた電磁力を前記永久磁石に働かせて前記テンプを調速する処理を実行する調速制御手段と、
前記調速制御手段に供給する電気エネルギーを蓄電する蓄電手段と
前記電気エネルギーを発電する発電機と、を備え、
前記調速制御手段は、
前記外部磁界の検出結果に応じて、前記テンプを調速する処理内容を変更する
ことを特徴とする機械式時計。
【請求項2】
請求項1に記載の機械式時計において、
前記蓄電手段から前記調速制御手段に前記電気エネルギーを供給する第1の電源ラインおよび第2の電源ラインが設けられ、
前記調速制御手段は、
前記コイルの第1の端子と前記第1の電源ラインとの間に接続された第1のスイッチと、
前記コイルの第2の端子と前記第1の電源ラインとの間に接続された第2のスイッチと、
前記コイルの前記第1の端子と前記第2の電源ラインとの間に接続された第3のスイッチと、
前記コイルの前記第2の端子と前記第2の電源ラインとの間に接続された第4のスイッチと、を備え、
前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ、前記第4のスイッチはトランジスターであり、
前記調速制御手段は、前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ、前記第4のスイッチを制御することで、前記テンプを調速する処理を実行する
ことを特徴とする機械式時計。
【請求項3】
請求項2に記載の機械式時計において、
前記外部磁界検出手段は、
前記第1の端子と前記第1の電源ラインとの間に直列に接続された第5のスイッチおよび第1の抵抗素子を備え、
前記第5のスイッチをオンに制御して前記外部磁界を検出する処理を実行する
ことを特徴とする機械式時計。
【請求項4】
請求項3に記載の機械式時計において、
前記外部磁界検出手段は、
前記第2の端子と前記第1の電源ラインとの間に直列に接続された第6のスイッチおよび第2の抵抗素子を備え、
前記第5のスイッチまたは前記第6のスイッチを交互にオンに制御して前記外部磁界を検出する処理を実行する
ことを特徴とする機械式時計。
【請求項5】
請求項3に記載の機械式時計において、
前記振動検出手段は、
前記第1の端子と前記第1の電源ラインとの間に直列に接続された前記第5のスイッチおよび前記第1の抵抗素子を備える
ことを特徴とする機械式時計。
【請求項6】
請求項5に記載の機械式時計において、
前記調速制御手段は、
前記外部磁界の検出期間、振動検出期間、前記駆動パルスの出力期間以外の期間は、前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ、前記第4のスイッチをオフに制御する
ことを特徴とする機械式時計。
【請求項7】
請求項1に記載の機械式時計において、
前記外部磁界検出手段が前記外部磁界を検出した場合、
前記調速制御手段は、前記テンプを調速する処理を第1期間停止する
ことを特徴とする機械式時計。
【請求項8】
請求項7に記載の機械式時計において、
前記外部磁界検出手段は、前記第1期間経過後、前記外部磁界を検出する処理を実行し、
前記調速制御手段は、
前記外部磁界検出手段が前記外部磁界を検出した場合、前記テンプを調速する処理をさらに第1期間停止し、
前記外部磁界検出手段が前記外部磁界を検出しなかった場合、前記テンプを調速する処理を再開する
ことを特徴とする機械式時計。
【請求項9】
請求項8に記載の機械式時計において、
前記テンプを調速する処理を停止した期間を記憶する記憶部を備え、
前記調速制御手段は、前記テンプを調速する処理を再開した場合に、前記記憶部に記憶された期間に応じて、前記駆動パルスの出力間隔を短くする
ことを特徴とする機械式時計。
【請求項10】
請求項1に記載の機械式時計において、
前記発電機は、前記ゼンマイからの動力により輪列を介して回転する発電用ローターと、前記発電用ローターの回転によって発電する発電用コイルとを備える電磁発電機である
ことを特徴とする機械式時計。
【請求項11】
請求項1に記載の機械式時計において、
前記発電機は、前記永久磁石および前記コイルを備え、前記テンプの振動によって前記永久磁石および前記コイルが相対的に移動して発電する電磁発電機である
ことを特徴とする機械式時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンプを有する機械式時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、動力源からの動力で駆動するテン輪のテン真に取り付けられたローターと、コイルとを備え、テン輪の正逆回転運動に伴うローターの回転によって発電し、ローターの回転検出信号に基づいてコイルに調速パルスを出力してローターの動きを制御する機械式時計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の機械式時計では、コイルに生じる電圧波形によってローターの回転を検出している。このため、外部磁界ノイズがある環境下では、磁界ノイズをコイルで検出してしまうことでローターの回転を正確に検出することができず、誤検出に基づいて調速パルスを出力することで、指針で指示する時刻にズレが生じるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の機械式時計は、ゼンマイと、前記ゼンマイからの動力により駆動されるテンプと、クロック信号を出力する発振回路と、永久磁石およびコイルを備え、前記永久磁石および前記コイルの一方が前記テンプに保持される調速手段と、前記コイルによって外部磁界を検出する外部磁界検出手段と、前記テンプの振動を検出して振動検出信号を出力する振動検出手段と、前記クロック信号と前記振動検出信号とを比較した結果に応じて駆動パルスを出力し、前記駆動パルスによって前記コイルに電流を出力して発生させた電磁力を前記永久磁石に働かせて前記テンプを調速する処理を実行する調速制御手段と、前記調速制御手段に供給する電気エネルギーを蓄電する蓄電手段と前記電気エネルギーを発電する発電機と、を備え、前記調速制御手段は、前記外部磁界の検出結果に応じて、前記テンプを調速する処理内容を変更することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】機械式時計の要部の構成を示す概略斜視図である。
【
図4】機械式時計のテンプ、アンクル、ガンギ車を示す分解斜視図である。
【
図5】機械式時計のテンプの永久磁石およびコイルを示す側面図である。
【
図6】機械式時計のテン輪、永久磁石およびコイルを示す平面図である。
【
図7】機械式時計のテンプの動作を説明する図である。
【
図8】機械式時計の回路構成を示すブロック図である。
【
図9】機械式時計の整流部の構成を示す回路図である。
【
図10】機械式時計の電子調速装置の構成を示す回路図である。
【
図11】機械式時計の制御を示すフローチャートである。
【
図12】機械式時計の調速制御信号を示すタイミングチャートである。
【
図13】機械式時計の電子調速装置での振動検出時および外部磁界検出時の動作を示す回路図である。
【
図14】外部ノイズの発生要因の一例であるスイッチングレギュレーターのスイッチング波形および出力波形を示す図である。
【
図15】機械式時計の振動検出波形を示す波形図である。
【
図16】機械式時計の電子調速装置での調速制御時の動作を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の機械式時計1を図面に基づいて説明する。
機械式時計1は、
図1に示すように、ケース2と、文字板3と、時針4、分針5、秒針6と、りゅうず7と、日車8とを備える。
機械式時計1は、
図2に示すように、機械式ムーブメント10と、機械式ムーブメント10の精度を向上させるために追加された電子調速装置40、制御部50、発電機60、整流部70、蓄電部80、振動子90を備える。
機械式ムーブメント10は、
図2に示すように、動力用のゼンマイ12、輪列20、ガンギ車21、アンクル22、テンプ30を備え、輪列20には、時針4、分針5、秒針6が取り付けられている。
【0008】
図3にも示すように、動力用のゼンマイ12は、香箱歯車13、香箱真14および香箱蓋からなる香箱車11内に収納されている。ゼンマイ12は、外端が香箱歯車13、内端が香箱真14に固定される。香箱真14は、地板に設けられた支持部材に挿通されて角穴ネジによって固定され、角穴車15と一体で回転する。角穴車15は、りゅうず7により丸穴車16等を介して回転され、ゼンマイ12が巻き上げられる。
【0009】
香箱歯車13の回転は、二番車17、三番車18、四番車19の各歯車を介して増速される。これらの各歯車17~19は、地板および輪列受け等で軸支されている。各歯車17~19によって、ゼンマイ12からの機械エネルギーを伝達する輪列20が構成されている。なお、
図3では、三番車18に噛み合う秒かなに固定された秒針6のみが表示されているが、実際には、図示しない筒かなや筒車を介して駆動される分針5や時針4も設けられている。
機械式ムーブメント10は、ガンギ車21およびアンクル22を備えた脱進機と、テンプ30を備えた調速機とを備えている。脱進機は、四番車19を介してゼンマイ12から供給される機械エネルギーを調速機に少しずつ供給して調速機の振動を維持させるとともに、調速機の振動周期に応じて輪列20の回転速度を制御している。
【0010】
テンプ30は、
図4~
図6にも示すように、上下2枚のテン輪31、32と、テン真33と、ヒゲゼンマイ34とを備えている。テンプ30は、テン輪31、32の中に細いヒゲゼンマイ34を仕込んだものであり、ヒゲゼンマイ34は一端がテン輪31、32の軸であるテン真33に固定され、反対の端がヒゲ持39を介して時計本体に固定されている。テンプ30のテン輪31、32は、等時性のあるヒゲゼンマイ34の伸縮で規則正しい往復回転運動を繰り返すことで振動する。
【0011】
テン輪31、32の互いに対向する対向面には、
図5にも示すように、永久磁石36が取り付けられている。永久磁石36は、ボタン型のネオジム磁石などで構成され、テン輪31に取り付けられた永久磁石361、362と、テン輪32に取り付けられた永久磁石363、364とを備える。
上下のテン輪31、32間には、コイル35が配置されている。コイル35は、後述するように、テンプ30に制動力や駆動力を与えてテンプ30の振動速度を調速する駆動コイルと、テンプ30の振動状態を検出する振動検出用コイルと、外部磁界を検出する外部磁界検出用コイルとを兼用している。
【0012】
永久磁石361および永久磁石363は、コイル35を挟んでテン真33の軸方向に互いに対向する位置に取り付けられ、永久磁石361はコイル35側がN極となり、永久磁石363はコイル35側がS極となる向きでテン輪31、32に固定されている。
永久磁石362および永久磁石364は、コイル35を挟んでテン真33の軸方向に互いに対向する位置に取り付けられ、永久磁石362はコイル35側がS極となり、永久磁石364はコイル35側がN極となる向きでテン輪31、32に固定されている。
このため、N極からS極に向かう磁力線は、
図5に示すように、永久磁石361から永久磁石363に向かう方向となり、永久磁石364から永久磁石362に向かう方向となり、これらの磁力線に直交するようにコイル35が設けられている。
【0013】
テン輪31、32は、ヒゲゼンマイ34によってテン真33を中心にして、一体で左右に往復回転運動し、永久磁石36はテン輪31、32に固定されているので、一体で左右に往復回転運動する。コイル35は、機械式ムーブメント10の図示しない支持板に固定されている。コイル35は、
図6に示すように、テン真33の軸方向から見た平面視で、左右に往復回転運動する永久磁石36が、往路および復路の中間位置を通過する際に、永久磁石36と重なる位置に配置されている。
また、テン輪31、32は、永久磁石361、362、363、364を取り付けることで、重量バランスに偏りが生じる。このため、テン輪31、32には、テン真33を挟んで永久磁石36とは反対側に、重量バランス調整用の重り38が取り付けられている。
【0014】
図7は、ガンギ車21、アンクル22、テンプ30の動きを説明する図である。
ゼンマイ12に蓄積された機械エネルギーで輪列20を介してガンギ車21が回転すると、ガンギ車21の歯211によってアンクル22の爪石221、222が押され、アンクル22の爪石221、222とは反対側のクワガタ223が左右に移動してテンプ30の降り石37を押し、テン輪31、32を回転させる。振り石37は摩擦に強い人工ルビー製であり、クワガタ223の中央に留まろうとする性質を持っているが、アンクル22の爪石221、222がガンギ車21の歯211で押されてクワガタ223が左右に移動することで左右に振られ、これによりテン輪31、32が左右に回転し、左右に回りきった状態からヒゲゼンマイ34によってテン輪31、32は逆方向に回転する。
ここで、テン輪31、32の回転角度が270度であった場合、
図7(A)は、テン輪31、32が右方向(反時計回り)に回った後、ヒゲゼンマイ34によって左方向(時計回り)に回転し始めた状態である。
図7(B)は、テン輪31、32が左方向に135度回転した状態つまり左方向への回転の中間位置である。
図7(C)は、テン輪31、32が左方向に回った状態、つまりヒゲゼンマイ34によって右方向に回転し始める状態である。また、
図7(D)は、テン輪31、32が右方向に135度回転した状態つまり右方向への回転の中間位置であり、
図7(E)は、テン輪31、32が右方向に回った状態である。このため、
図7(A)の状態に戻り、以下、
図7(A)~(E)の動作が繰り返される。
本実施形態では、コイル35は、テン輪31、32が右方向および左方向に回転する中間位置に配置され、永久磁石36は、この中間位置においてコイル35と平面視で重なる位置に配置されている。
【0015】
図8は、機械式時計1の回路ブロック図である。
図8に示すように、機械式時計1は、制御部50、発電機60、整流部70、電子調速装置40、蓄電部80、電圧検出部85、振動子90を備えて構成される。
制御部50は、発振回路51と、第1検出回路52と、第2検出回路53と、制御回路54とを備える。
なお、電子調速装置40、制御部50、整流部70、蓄電部80、電圧検出部85は、第1の電源ライン81と、第2の電源ライン82とに接続されている。本実施形態では、第1の電源ライン81の電位はVDDであり、第2の電源ライン82の電位はVDDと異なる電位のVSSである。また、本実施形態では、高電位側の電位VDDを基準電位としているが、低電位側の電位VSSを基準電位としてもよい。
【0016】
発電機60は、
図3に示すように、テン真33に取り付けられた発電用ローター61と、発電用ローター61が配置される開口を区画するステーター62と、ステーター62に両端が固定された磁心63と、磁心63に巻回された発電用コイル64と、発電用コイル64の両端が導通された端子65、66とを備えている。
発電機60は、ゼンマイ12から輪列20を介してテンプ30に伝達される機械エネルギーでテン真33と共に発電用ローター61が回転することで、ステーター62および磁心63に流れる磁力線の向きを変化させ、発電用コイル64に誘起電力を発生させる電磁発電機である。
【0017】
整流部70は、
図9に示すように、全波整流回路であり、かつ、チョッピングにより発電機60の発電用コイル64をショートさせて、発電用コイル64に発生する交流電力を昇圧整流して蓄電部80に充電するものである。このため、整流部70は、第1のスイッチ71と、第2のスイッチ72と、ダイオード77、78とを備える。
第1のスイッチ71は、発電用コイル64の第1端子MG11と、第1の電源ライン81との間に接続されたPチャネルの電界効果型トランジスター73、74で構成される。電界効果型トランジスター73、74は互いに並列に接続され、電界効果型トランジスター73のゲートは発電用コイル64の第2端子MG12に接続され、電界効果型トランジスター74のゲートは制御回路54に接続されている。
第2のスイッチ72は、第2端子MG12と、第1の電源ライン81との間に接続されたPチャネルの電界効果型トランジスター75、76で構成される。電界効果型トランジスター75、76は互いに並列に接続され、電界効果型トランジスター75のゲートは第1端子MG11に接続され、電界効果型トランジスター76のゲートは制御回路54に接続されている。
なお、発電用コイル64の第1端子MG11、第2端子MG12は、発電機60に設けられた端子65、66を介して整流部70に接続されている。
【0018】
第1のスイッチ71の電界効果型トランジスター73と、第2のスイッチ72の電界効果型トランジスター75とは、ゲートが第2端子MG12、第1端子MG11にそれぞれ接続されているため、発電機60で発電しているときは、電界効果型トランジスター73、75のうち、発電用コイル64の低電位側の端子に接続されたトランジスターがオフ状態となり、高電位側の端子に接続されたトランジスターがオン状態となる。
第1のスイッチ71の電界効果型トランジスター74と、第2のスイッチ72の電界効果型トランジスター76とは、制御回路54から出力されるチョッパ信号P1がゲートに入力されることによってチョッピング制御が実行され、同時にオン状態またはオフ状態に制御される。
ダイオード77、78は、発電用コイル64の第1端子MG11、第2端子MG12と、第2の電源ライン82との間に配置されている。ダイオード77、78は、一方向に電流を流す一方向性素子であればよく、その種類は問わず、例えば、ショットキーバリアダイオードやシリコンダイオードを利用できる。
【0019】
発電機60のチョッピング制御は、整流部70に対して制御回路54からチョッパ信号P1を出力し、チョッピング用の電界効果型トランジスター74、76を、発電用ローター61の回転に比べて高い周波数で同時にオン/オフさせる制御である。この制御により発電用コイル64の両端のショートとオープンが繰り返される。電界効果型トランジスター74、76が同時にオンしている期間は、発電用コイル64の両端はショート状態になるため、発電用コイル64の内部には大きな電流が流れる。次に、前述した2つの電界効果型トランジスター74、76を同時にオフにすると、その瞬間に発電用コイル64に流れていた電流は電圧に変換され、高い誘起電圧が発生する。
【0020】
なお、整流部70は、
図9に示す全波整流回路に限定されない。すなわち、整流部70は、昇圧整流、全波整流、半波整流、トランジスター整流等からなり、発電機60の交流出力を整流して、蓄電部80に充電できるものであればよい。また、チョッピングによる昇圧整流を行わずに、発電機60の交流出力を整流して蓄電部80に充電してもよい。
【0021】
蓄電部80は、二次電池やコンデンサーなどで構成される。蓄電部80は、第1の電源ライン81、第2の電源ライン82を介して、整流部70、電子調速装置40、電圧検出部85、制御部50に接続されている。このため、発電機60で発電された電気エネルギーは、整流部70を介して蓄電部80に蓄えられる。また、蓄電部80に蓄積された電気エネルギーは、制御部50や電子調速装置40に供給される。蓄電部80が設けられることで、発電機60の発電が停止している間も、蓄電部80に蓄えた電気エネルギーで制御部50を作動できるので、電子調速装置40によるテンプ30の調速制御も継続できる。したがって、蓄電部80は、後述する調速制御手段である制御回路54に供給する電気エネルギーを蓄積する蓄電手段である。
蓄電部80は、全固体電池を用いることが好ましい。全固体電池は、電池容量は少ないが、経時性能劣化は殆ど無い特徴があり、長く使い続けることができる機械式時計1の蓄電部80として適している。機械式時計1は、ゼンマイ12によって時針4、分針5、秒針6等の指針を駆動しており、発電機60および蓄電部80は、制御部50を構成するICを駆動させるために必要な僅かな電力を発電、蓄電できればよい。例えば、ステップモーターによって指針を運針するアナログクオーツ時計の消費電力に対し、本実施形態のような電子調速を行う機械式時計1の消費電力は1/20程度である。したがって、発電機60は、発電電力が小さい小型の発電機を利用できる。また、蓄電部80は、電池容量が少ない二次電池、例えば全個体電池を利用できる。
【0022】
電圧検出部85は、蓄電部80の電圧を検出し、検出結果を制御部50に出力する。したがって、電圧検出部85は、蓄電部80の蓄電量を検出する。
振動子90は、水晶振動子やシリコン製のMEMS振動子である。MEMSは、Micro Electro Mechanical Systemsの略語であり、MEMS振動子を用いた場合、水晶振動子に比べて精度は劣るが小型化が可能である。振動子90は、所定周波数のクロック信号を制御部50に出力する。
【0023】
電子調速装置40は、テンプ30の往復回転運動の速度を調速する調速手段であり、テンプ30に保持された永久磁石36と、コイル35と、
図10に示すスイッチ回路43とを備えて構成される。
スイッチ回路43は、制御回路54で制御され、コイル35と、第1のスイッチ431と、第2のスイッチ432と、第3のスイッチ433と、第4のスイッチ434と、第5のスイッチ435と、第6のスイッチ436と、第1の抵抗素子441と、第2の抵抗素子442とを備える。各スイッチ431~436は、制御回路54から出力される制御信号CS1~CS6によってオン状態およびオフ状態が制御される。
第1のスイッチ431は、コイル35の第1の端子351と、第1の電源ライン81との間に接続されたPチャネルの電界効果型トランジスターである。第2のスイッチ432は、コイル35の第2の端子352と、第1の電源ライン81との間に接続されたPチャネルの電界効果型トランジスターである。
第3のスイッチ433は、コイル35の第1の端子351と、第2の電源ライン82との間に接続されたNチャネルの電界効果型トランジスターである。第4のスイッチ434は、コイル35の第2の端子352と、第2の電源ライン82との間に接続されたNチャネルの電界効果型トランジスターである。
【0024】
第5のスイッチ435は、コイル35の第1の端子351と、第1の電源ライン81との間に接続されたPチャネルの電界効果型トランジスターである。第6のスイッチ436は、コイル35の第2の端子352と、第1の電源ライン81との間に接続されたPチャネルの電界効果型トランジスターである。
第1の抵抗素子441は、コイル35の第1の端子351と、第5のスイッチ435との間に接続され、第2の抵抗素子442は、コイル35の第2の端子352と、第6のスイッチ436との間に接続されている。これらの第1の抵抗素子441、第2の抵抗素子442は、100kΩ程度のIC内蔵の半導体拡散抵抗等で構成される。
第5のスイッチ435および第1の抵抗素子441は、コイル35の第1の端子351と、第1の電源ライン81との間に直列に接続され、第1のスイッチ431とは並列に接続されている。
第6のスイッチ436および第2の抵抗素子442は、コイル35の第2の端子352と、第1の電源ライン81との間に直列に接続され、第2のスイッチ432とは並列に接続されている。
【0025】
発振回路51は、振動子90を発振させ、発振信号を分周して所定周波数の基準クロックを制御回路54に出力する。基準クロックの周波数は、テンプ30の振動検出周期に応じて設定される。例えば、テンプ30が1秒間に6振動に設定されている場合、テンプ30の振動検出周期が1秒毎、つまり1Hzであれば、基準クロックの周波数を1Hzに設定すればよく、テンプ30の振動を各振動毎に検出する場合、つまり振動検出周期が6Hzであれば、基準クロックの周波数を6Hzに設定すればよい。
【0026】
第1検出回路52および第2検出回路53は、
図10にも示すように、コイル35の第1の端子351、第2の端子352に接続され、コイル35で生じた誘起電圧波形を予め設定された閾値と比較して検出可能に構成されている。なお、本実施形態では、テンプ30の振動を検出する第1検出回路52で用いられる第1閾値は、外部磁界を検出する第2検出回路53で用いられる第2閾値よりも高い値に設定されている。また、第2検出回路53は、短いパルス幅の信号も検出できるように応答速度が速い回路を用いている。
【0027】
制御回路54は、前述したように、整流部70に対してチョッパ信号P1を出力するとともに、スイッチ回路43に対して制御信号CS1~CS6を出力する。
このため、制御部50は、前述した発電機60のチョッピング制御のほかに、外部磁界検出処理と、テンプ30の振動検出処理と、テンプ30の調速制御と実行する。
制御部50による外部磁界検出処理と、テンプ30の振動検出処理と、テンプ30の調速制御とに関し、
図11~
図16を参照して説明する。
【0028】
機械式時計1は、りゅうず7によってゼンマイ12を巻き上げることで起動を開始する。すなわち、ゼンマイ12に蓄積された機械エネルギーで輪列20を介してガンギ車21が回転すると、アンクル22が左右に揺動し、テンプ30のテン輪31、32が左右方向に振動する。テン輪31、32の振動により、テン真33および発電用ローター61が回転し、発電用コイル64に起電力が発生し、発電した電気エネルギーが蓄電部80に蓄えられることで蓄電部80の電圧が上昇して制御部50等のシステムが起動し、発振回路51により振動子90が作動する。
制御部50は、起動後に、1分間隔で電圧検出部85により蓄電部80の電圧を検出し、蓄電部80の電圧が予め設定された所定の電圧値以上に維持されている間は、
図11のフローチャートに示す制御を実行する。
【0029】
[外部磁界検出処理]
制御部50は、まず、磁界検出タイミングであるか否かを判定するステップS1を実行する。磁界検出タイミングは、一定時間間隔、例えば10秒間隔に設定され、さらに、テン輪31、32に取り付けた永久磁石36がコイル35上を通過しないタイミングに設定されている。
【0030】
制御部50は、磁界検出タイミングになり、ステップS1でYESと判定すると、外部磁界を検出するステップS2を実行する。ステップS2では、制御回路54は、
図12のタイミングチャートの外部磁界検出期間T1に示すように、第2のスイッチ432および第5のスイッチ435をオンにし、他のスイッチ431、433、434、436をオフにする制御信号CS1~CS6を出力する。なお、外部磁界検出期間T1は、例えば30msec程度である。
具体的には、第2のスイッチ432および第5のスイッチ435は、Pチャネルの電界効果型トランジスターであるため、制御回路54は、制御信号CS2、CS5をLレベルに切り替えて各スイッチ432、435をオンにする。第1のスイッチ431および第6のスイッチ436は、Pチャネルの電界効果型トランジスターであるため、制御回路54は、制御信号CS1、CS6をHレベルのままに維持して各スイッチ431、436をオフに維持する。第3のスイッチ433および第4のスイッチ434は、Nチャネルの電界効果型トランジスターであるため、制御回路54は、制御信号CS3、CS4をLレベルのままに維持して各スイッチ433、434をオフに維持する。
また、外部磁界検出期間T1の経過後は、制御回路54は、各スイッチ431~436をオフにする制御信号CS1~CS6を出力する。
【0031】
外部磁界検出期間T1に外部磁界の影響を受けると、
図13に示すように、コイル35に電流I1が流れる。この電流I1は、検出用の第1の抵抗素子441を流れるため、第1の端子351には検出抵抗を設けない場合に比べて大きな電圧波形が現れる。したがって、制御部50は、外部磁界検出期間T1に、第1の端子351、第2の端子352に接続された第2検出回路53で第2閾値を超える電圧波形を検出した場合は、ステップS3で外部磁界を検出したのでYESと判定する。一方、制御部50は、第2閾値を超える電圧波形を検出しなかった場合は、ステップS3でNOと判定する。
この外部磁界検出期間T1で検出される外部磁界は、例えば、スイッチングレギュレーターによるスパイクノイズである。スイッチングレギュレーターは、DC/DCコンバーターとして効率が良く小型というメリットがあるため、電子機器等の電源装置として広く普及している。ただし、
図14に示すように、上段に示すスイッチング波形の電圧変化時に、下段に示す点線で囲まれた部分のように、大きなスパイクノイズが発生するというデメリットがある。このため、機械式時計1の近くに電子機器が存在し、コイル35を用いたテンプ30の振動検出動作中にスイッチングレギュレーターによるスパイクノイズがコイル35に飛び込んでくると、テンプ30の振動を誤検出する可能性がある。
【0032】
制御部50は、ステップS3で磁界を検出してYESと判定した場合は、ステップS1に戻る。制御部50は、ステップS1でNOと判定した場合、つまり10秒間隔で発生する磁界検出タイミングの間、つまり10秒後の磁界検出タイミングになるまでの間は、前回の外部磁界検出で磁界検出有りであったか否かを判定するステップS4を実行する。
制御部50は、前回の磁界検出タイミングで外部磁界を検出し、ステップS4でYESと判定した場合、ステップS1に戻る。このため、制御部50は、外部磁界を検出した場合は、次の磁界検出タイミングまでの10秒間つまり第1期間が経過するまでは、振動検出処理および調速制御を実行しない。外部磁界の影響下では、テンプ30の振動、具体的にはテンプ30のテン輪31、32に設けられた永久磁石36がコイル35を通過する正確なタイミングを検出できない可能性があるからである。
【0033】
制御部50は、外部磁界検出期間T1でスイッチ432、435をオンした場合、次の外部磁界検出期間では、スイッチ431、436をオンし、外部磁界検出期間でオンするスイッチを交互に切り替えている。スイッチ432、435をオンした場合と、スイッチ431、436をオンした場合とで、検出しやすい磁界の向きも変化するため、スイッチを交互にオンにすることで、磁界を検出し易い利点がある。
【0034】
[振動検出処理]
制御部50は、ステップS3でNOと判定した場合と、ステップS4でNOと判定した場合、つまり外部磁界の影響が無いと推定できる場合は、振動検出タイミングであるか否かを判定するステップS5を実行する。振動検出タイミングは、一定時間間隔、例えば1秒間隔に設定され、さらに、テン輪31、32に取り付けた永久磁石36がコイル35上を通過するタイミングに設定されている。
制御部50は、振動検出タイミングになり、ステップS5でYESと判定すると、テンプ30の振動を検出するステップS6を実行する。ステップS6では、制御回路54は、
図12のタイミングチャートの振動検出期間T2に示すように、第2のスイッチ432および第5のスイッチ435をオンにし、他のスイッチ431、433、434、436をオフにする制御信号CS1~CS6を出力する。このため、外部磁界検出期間T1と同じく、
図13に示すように、第2のスイッチ432および第5のスイッチ435がオン、他のスイッチ431、433、434、436がオフとなり、検出用のコイル35が基準電位VDDに接続し、テンプ30の振動を検出できる振動検出状態となる。また、振動検出期間T2は、テンプ30の振動バラツキを考慮して設定すればよく、例えば、100~200msec程度である。
また、振動検出期間T2の経過後は、制御回路54は、各スイッチ431~436をオフにする制御信号CS1~CS6を出力する。
【0035】
振動検出期間T2に、テン輪31、32が回転し、永久磁石36がコイル35に近づくと、外部磁界検出時と同様に、コイル35および第1の抵抗素子441に電流I1が流れ、コイル35に誘起電圧波形が生じる。コイル35に生じる誘起電圧波形は、
図15(A)に示すテンプ30の往路の波形と、
図15(B)に示すテンプ30の復路の波形とで逆向きとなり、そのピーク値が生じるタイミングは、永久磁石36がコイル35上を通過する一定のタイミングである。このため、第1検出回路52は、テン輪31、32の回転方向と、振動位相つまりテン輪31、32に保持された永久磁石36とコイル35との位置関係で設定される振動検出位置まで回転したことを検出できる。
なお、テンプ30の半周期を1つの振動とした場合、1秒間に6振動に設定されている場合は、コイル35には、1秒間に往路で3回、復路で3回の計6回、誘起電圧波形が生じる。振動検出タイミングは、1秒間隔であるため、振動検出期間T2においては、計6回の誘起電圧波形のうちの1回の波形を検出する。
【0036】
次に、制御部50は、ステップS7を実行し、制御回路54において発振回路51から入力される基準クロックと、第1検出回路52から入力される振動検出信号とを比較し、テン輪31、32の振動が基準クロックに比べて進んでいるか、遅れているか、あるいは一致するかを判定する。
制御部50は、テン輪31、32の振動が基準クロックよりも進んでいると判定した場合は、ステップS8を実行し、制御回路54からテン輪31、32に制動力を加えるために遅れパルスを出力する。制御部50は、テン輪31、32の振動が基準クロックよりも遅れていると判定した場合は、ステップS8を実行し、制御回路54からテン輪31、32に駆動力を加えるために進みパルスを出力する。また、制御部50は、テン輪31、32の振動が基準クロックに一致し、調速が不要と判定した場合は、調速用の駆動パルス出力は行わない。
【0037】
遅れパルス、進みパルスは、対となる第1のスイッチ431および第4のスイッチ434をオン状態にする、あるいは、第2のスイッチ432および第3のスイッチ433をオン状態にする調速制御信号であり、本実施形態では予め設定された固定幅のパルスである。
制御部50の制御回路54は、テンプ30を調速する調速状態では、テン輪31、32の永久磁石36がコイル35と重なる適切なタイミングで、遅れパルスまたは進みパルスをスイッチ回路43に出力し、第1のスイッチ431および第4のスイッチ434をオン状態にする、あるいは、第2のスイッチ432および第3のスイッチ433をオン状態にして、コイル35に電流を流して電磁力を発生させる。コイル35に流れる電流の向きを変えることで、テン輪31、32に取り付けた永久磁石36に対して、電磁力によって吸引あるいは反発の力を切り替えて制御することができる。
このため、テンプ30に制動力を加えて減速したり、駆動力を加えて加速することができる。例えば、テン輪31、32の振動により、永久磁石36がコイル35から離れ始めるタイミングで永久磁石36に対して吸引する電磁力を発生させれば、テン輪31、32の振動を減速できる。逆に、永久磁石36がコイル35から離れ始めるタイミングで永久磁石36に対して反発する電磁力を発生させれば、テン輪31、32の振動を加速できる。
図12に示すタイミングチャートでは、最初の振動検出期間T2の検出結果に応じた調速期間T3では、第1のスイッチ431、第4のスイッチ434をオン状態にして、
図16に示すように、コイル35に電流I2を流して調速制御を行っている。
調速期間T3の経過後は、制御回路54は、各スイッチ431~436をオフにする制御信号CS1~CS6を出力する。
【0038】
制御部50は、ステップS7で一致と判定した場合や、ステップS8、S9のパルス出力処理の実行後は、ステップS1に戻り、処理を継続する。このため、外部磁界検出期間T1で外部磁界を検出していない場合は、次の磁界検出タイミングである10秒後になるまでは、ステップS1でNO、ステップS4でNOと判定するため、ステップS5でYESと判定する1秒毎にステップS6のテンプ30の振動検出処理を実行する。このため、
図12に示すタイミングチャートでは、振動検出期間T2の1秒後の振動検出期間T4と、振動検出期間T4の1秒後の振動検出期間T6において、テンプ30の振動検出処理を実行している。なお、振動検出期間T4では、制御回路54は、制御信号CS1、CS6により、スイッチ431、436をオンし、他のスイッチ432~435をオフし、振動検出期間T6では、制御信号CS2、CS5により、スイッチ432、435をオンし、他のスイッチ431、433、434、436をオフしている。このように、制御回路54は、振動検出期間毎に、オンにするスイッチを交互に切り替えているが、振動検出期間毎に同じスイッチの組みをオンしてもよいし、最初の数回は交互に切り替え、誘起電圧波形のピーク値が大きくなるスイッチの組み合わせを判定し、その後は、ピーク値が大きくなるスイッチをオンするように制御してもよい。
【0039】
各振動検出期間T4、T6の後、ステップS8またはステップS9が実行される場合は、制御回路54は、調速期間T5、T7で第1のスイッチ431および第4のスイッチ434をオン状態にする、あるいは、第2のスイッチ432および第3のスイッチ433をオン状態にして、テンプ30を調速する。なお、
図12では、制御回路54は、調速期間T5ではスイッチ432、433をオン状態にし、調速期間T7ではスイッチ431、434をオン状態にしているが、ステップS7の比較結果によっては、各調速期間T5、T7でそれぞれ異なるスイッチをオン状態にする場合もある。また、ステップS7で一致と判定された場合は、スイッチをオン状態にする調速期間は発生しない。
すなわち、制御回路54は、テン輪31、32の回転方向と、制御回路54から出力されるパルスの種類によって、どのスイッチをオン状態にするかを制御する。また、制御回路54は、遅れパルスまたは進みパルスの出力後、次の磁界検出期間や振動検出期間までの間は、すべてのスイッチ431~436をオフ状態に切り替えて、コイル35の第1の端子351、第2の端子352を、第1の電源ライン81および第2の電源ライン82から電気的に切り離してオープン状態に制御する。
【0040】
以上のとおり、テンプ30の振動検出処理と、その検出結果に基づくテンプ30の調速処理とは1秒間隔で実行され、外部磁界検出処理は10秒間隔で実行される。
また、テンプ30の振動を検出して振動検出信号を制御回路54に出力する振動検出手段は、第1検出回路52と、コイル35と、テン輪31、32に保持された永久磁石36と、スイッチ回路43とを備えて構成される。
外部磁界を検出して外部磁界検出信号を制御回路54に出力する外部磁界検出手段は、第2検出回路53に加えて、コイル35と、スイッチ回路43とを備えて構成される。
調速手段である永久磁石36およびコイル35を用いてテンプ30を調速する処理を実行する調速制御手段は、発振回路51から入力されるクロック信号と、第1検出回路52から入力される振動検出信号との比較結果に基づいて駆動パルスである制御信号CS1~CS6を出力する制御回路54と、制御信号CS1~CS6によってコイル35に電流を出力して調速用の電磁力を発生させるスイッチ回路43とを備えて構成される。
このため、コイル35を調速用に加えて振動検出用および外部磁界検出用にも兼用しているので、別途、専用の振動検出手段や外部磁界検出手段を設ける場合に比べて、機械式時計1の小型化や低コスト化のメリットがある。
【0041】
制御部50は、電圧検出部85で一定時間毎、例えば1分毎に、蓄電部80の電圧検出を行い、蓄電部80の電圧が予め設定された調速停止電圧以下に低下した場合は、発振回路51への電源供給を強制的に停止して振動子90の発振を停止する待機モードに移行する。待機モードに移行することで、エネルギー消費を抑えて蓄電部80に蓄電される電気エネルギーを保持し、次回の発電機60の起動に備えることができる。
待機モードでは、スイッチ431~436をすべてオフにして第1の電源ライン81および第2の電源ライン82からコイル35を切り離して開放状態にする。この待機モードでは、電子調速装置40が完全に停止するため、機械式時計1はガンギ車21、アンクル22、テンプ30で調速される一般的な機械式時計の精度となる。このため、機械式時計1の精度は、電子調速装置40を作動した場合のクオーツ時計と同等の日差±0.5秒つまり月差±15秒程度の精度から、一般的な機械式時計と同等の日差±4~6秒程度の精度となる。
【0042】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、ゼンマイ12で輪列20を作動して運針し、ガンギ車21、アンクル22、テンプ30によって調速する機械式時計1において、調速機であるテンプ30の振動を検出した振動検出信号と、振動子90からのクロック信号とを比較した結果に基づいてテンプ30の振動を調速できるため、機械式時計1の時刻精度をクオーツ時計レベルに向上できる。
外部磁界の有無を検出し、外部磁界の検出結果に応じてテンプ30の調速処理内容を変更し、外部磁界を検出した場合は、テンプ30の振動を誤検出する可能性があるために調速制御を停止しているので、外部磁界ノイズの影響を受けずに調速制御を行うことができる。
【0043】
蓄電部80の電気エネルギーが減少し、調速停止電圧以下に電圧が低下して電子調速ができなくなった場合は、スイッチ回路43をオフ状態にしてコイル35を第1の電源ライン81および第2の電源ライン82から切り離す停止状態に切り替えているので、コイル35がテンプ30の機械的な調速に影響を与えることを確実に防止できる。このため、調速制御の停止状態では、指針が指示する時刻精度を一般的な機械式時計の精度に維持でき、時刻精度が著しく低下することを防止できる。
制御回路54は、遅れパルスまたは進みパルスの出力後、次の検出期間までの間も、スイッチ回路43をオフ状態とすることで、コイル35がテンプ30の機械的な調速に影響を与えることを防止できる。
【0044】
テンプ30の調速を、テン輪31、32に設けた永久磁石36と、電流を流すことによって電磁力を発生させるコイル35とを用いて行っているので、テンプ30に制動力を加えて減速する調速と、テンプ30に駆動力を加えて加速する調速とを実行することができる。特に、テンプ30を加速することができるため、ゼンマイ12のトルクが小さい領域、つまり巻き戻し速度が遅い期間も調速することができる。
このため、ゼンマイ12で機械式時計1を調速できる持続時間を延ばすことができる。すなわち、テンプ30を制動力および駆動力で調速制御する場合、巻き戻しトルクが低下する領域まで調速制御することができる。このため、機械式時計1は、クオーツ時計の精度で駆動できる持続時間を延ばすことができる。
【0045】
スイッチ回路43を、4つのスイッチ431~434からなるブリッジ回路で構成しているので、制御回路54は、コイル35に流れる電流の方向を容易に変更でき、永久磁石36に対して制動力および駆動力を簡単な制御で選択して加えることができ、テンプ30の進みや遅れの調速制御を簡単な回路構成で実現できる。
制御回路54は、各スイッチ431~436のオン状態およびオフ状態を適宜設定することで、振動検出状態、調速状態、外部磁界検出状態、停止状態を容易に切り替えて制御することができる。
【0046】
スイッチ回路43は、第1の抵抗素子441および第5のスイッチ435や、第2の抵抗素子442および第6のスイッチ436を備え、制御回路54は、外部磁界検出時や振動検出時には、コイル35に流れる電流が、第1の抵抗素子441または第2の抵抗素子442の一方を流れるように制御しているので、振動検出時や外部磁界検出時の検出電圧を大きくでき、第1検出回路52や第2検出回路53による検出精度を向上できる。
また、コイル35の第1の端子351に接続される第1の抵抗素子441および第5のスイッチ435と、第2の端子352に接続される第2の抵抗素子442および第6のスイッチ436とを設け、外部磁界検出期間毎に、各スイッチ435、436を交互に接続しているので、外部磁界の向きによって最初の外部磁界検出期間では外部磁界を検出できない場合でも、次の外部磁界検出期間に検出できる可能性が高まり、外部磁界の検出精度を向上できる。
【0047】
専用の発電機60を設けているので、調速手段である永久磁石36およびコイル35を発電機として兼用した場合に比べて、発電性能を向上でき、かつ、調整制御も精度良く行うことができる。
【0048】
[変形例]
なお、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、外部磁界の検出による調速制御の未実施期間を記憶し、外部磁界を検出しなくなった後に調速動作の頻度を増やして、テンプ30の進みや遅れを取り戻すように制御してもよい。すなわち、外部磁界を検出していない通常制御時は、1秒ごとにテンプ30の振動検出を行い、調速用の駆動パルスを出力し、外部磁界の検出による調速制御の未実施後のリカバリー動作中は、1秒間に例えば2回の振動検出および調速制御を行うようにすればよい。例として、60秒間の調速制御の未実施期間があった場合は、この60秒間に実施される予定であった60回分の調速制御をリカバリー動作で実行すればよい。例えば、1秒間に2回の調速制御を行う場合、60回分の補正でリカバリー動作を行う実施期間は30秒となる。
なお、調速制御の未実施期間から一定時間以上が経過すると、機械式時計1の姿勢差や温度などの原因でテンプ30の振動周期のズレ量つまり補正量が当初から変わってしまうため、このリカバリー動作を実施するのは、磁界検出が無くなってから例えば最大30分とすればよい。
【0049】
外部磁界を検出した場合のテンプの調速制御の内容としては、前記実施形態のように、第1期間、具体的には次の外部磁界検出タイミングになるまで、振動検出処理や調速制御を実行しないものに限定されず、外部磁界の影響を軽減できる調速制御を行ってもよい。例えば、外部磁界を検出した場合の振動検出処理の実行間隔を、外部磁界を検出していない場合に比べて短くし、振動検出期間に第1検出回路52で第1閾値を超えて検出される波形の検出タイミングの間隔を測定し、振動検出信号と外部磁界ノイズとを判別して調速制御を行うようにしてもよい。
【0050】
スイッチ回路43では、振動検出や外部磁界検出のために、2つのスイッチ435、436と、2つの抵抗素子441、442を設けていたが、直列に接続される1つのスイッチおよび抵抗素子のみを設けてもよい。抵抗素子を1つにすればスイッチ回路43を小さくできる。
また、スイッチ435、436や抵抗素子441、442は、第1の端子351、第2の端子352と、第2の電源ライン82との間に配置してもよい。
【0051】
機械式時計1に温度センサーを搭載し、予め不揮発性記憶手段に記憶した、ヒゲゼンマイ34や振動子90等の温度特性データに基づく温度補正データを用いて調速制御に反映させた温度補正を行ってもよい。温度変化による部品の伸縮でヒゲゼンマイ34のバネ力やテン輪31、32の慣性モーメントが変化するため、テンプ30の振動が検出されてから駆動パルスを出力するまでの時間を、測定した温度に応じて変化させてもよい。
【0052】
前記実施形態では、振動検出タイミングを1秒間隔とし、この振動検出タイミングの後に調速用の駆動パルスを出力していたが、駆動パルスの出力は1秒間隔を維持し、振動検出タイミングは1秒よりも短い間隔としてもよい。例えば、テンプ30が6振動の場合、1秒間に6回現れる振動検出信号と基準クロックとのタイミングを比較することで正確な補正量を算出できる。振動検出信号が基準クロックより進んでいる場合は、テンプ30に制動力を与えるタイミングでコイル35に電流を流し、逆に振動検出信号が基準クロックより遅れている場合は、テンプ30に駆動力を与えるタイミングや位相でコイル35に電流を流すよう制御を行えば良い。但し、振動検出時にも電気エネルギーを消費するため、1秒間隔で振動検出を行ったほうが消費エネルギーを低減できる。
【0053】
発電機は、前記実施形態のようにテン真33に発電用ローター61を取り付けた発電機60に限定されない。例えば、輪列20によって駆動されるカナを有する発電用ローターを備える発電機を用いてもよい。また、テンプ30に設けた永久磁石36と、コイル35とを発電機として兼用してもよい。
さらに、発電機は、ソーラーパネルでもよいし、回転錘で回転するローターを備えた発電機でもよいし、外部充電器からの電磁誘導によるワイヤレス充電機構を用いてもよい。これらのゼンマイ12の機械エネルギーを用いない発電機を用いれば、発電に機械エネルギーが消費されないため、その分、持続時間を延長したり、テンプ30を容易に調速制御することができる。
【0054】
テンプ30は、2枚のテン輪31、32を備えるものに限定されず、1枚のテン輪を備えるものでもよい。
また、コイル35をテン輪に取り付け、永久磁石36はムーブメント側に固定してもよい。例えば、1枚のテン輪にコイル35を取り付け、テン輪を挟んで対となる永久磁石361~364を配置してもよい。
永久磁石36の数は4つに限定されない。特に発電機を別途設け、コイル35を発電用には用いずにテンプ30の調速や振動検出に用いる場合は、永久磁石は少なくとも1つ設けられていればよい。この場合、コイル35はテン輪31、32間に配置されるものに限定されず、テンプ30の外周側や、テンプ30の文字板側あるいは裏蓋側に配置してもよい。
【0055】
前記実施形態では、コイル35は、振動検出用コイル、外部磁界検出用コイル、調速制御用コイルを兼用していたが、振動および外部磁界の検出用のコイルと、調速制御用のコイルとを別々に設けてもよい。さらに、振動検出用コイル、外部磁界検出用コイル、調速制御用コイルをそれぞれ別々に設けてもよい。このように、各コイルを別体とした場合は、用途に応じて巻き数や線径などを最適化したコイル仕様とすることで、それぞれ最大の性能を得ることができる。
さらに、調速制御用コイルを複数設けてもよい。例えば、テン輪31、32の振動の中間位置に振動検出用コイルを配置し、この振動検出用コイルを挟んで左右に調速制御用コイルをそれぞれ配置してもよい。
【0056】
制御回路54は、調速制御信号として、パルス幅が一定の遅れパルス、進みパルスを出力していたが、クロック信号に対する振動検出信号の進み量、遅れ量に応じて、遅れパルス、進みパルスのパルス幅を調整し、制動力や駆動力を調整してもよい。
【0057】
前記実施形態では、蓄電部80の電圧が調速停止電圧以下になった場合、コイル35を第1の電源ライン81、第2の電源ライン82に接続するスイッチ431~436をすべてオフ状態にして調速制御を停止状態に切り替えていたが、例えば、コイル35と第1の電源ライン81、第2の電源ライン82との間に高抵抗を配置することで停止状態としてもよい。すなわち、停止状態は、コイル35に電流が流れない、あるいは、電流が流れても極力小さな電流しか流れないようにして、コイル35で電磁力が発生しない、あるいは、調速制御に影響を与えない僅かな電磁力しか発生しないようにすることで、テンプ30の動作に影響を与えないものであればよい。
【0058】
[本開示のまとめ]
本開示の機械式時計は、ゼンマイと、前記ゼンマイからの動力により駆動されるテンプと、クロック信号を出力する発振回路と、永久磁石およびコイルを備え、前記永久磁石および前記コイルの一方が前記テンプに保持される調速手段と、前記コイルによって外部磁界を検出する外部磁界検出手段と、前記テンプの振動を検出して振動検出信号を出力する振動検出手段と、前記クロック信号と前記振動検出信号とを比較した結果に応じて駆動パルスを出力し、前記駆動パルスによって前記コイルに電流を出力して発生させた電磁力を前記永久磁石に働かせて前記テンプを調速する処理を実行する調速制御手段と、前記調速制御手段に供給する電気エネルギーを蓄電する蓄電手段と前記電気エネルギーを発電する発電機と、を備え、前記調速制御手段は、前記外部磁界の検出結果に応じて、前記テンプを調速する処理内容を変更することを特徴とする。
本開示の機械式時計によれば、テンプの振動を検出した振動検出信号と、クロック信号とを比較した結果に基づいてテンプの振動を調速できるため、機械式時計の時刻精度をクオーツ時計レベルに向上できる。また、外部磁界の有無を検出しているので、外部磁界の検出結果に応じてテンプの調速処理内容を変更でき、外部磁界によってテンプの振動を誤検出する可能性がある場合は調速制御を停止するなどの外部磁界ノイズの影響を低減した調速制御を行うことができる。
さらに、テンプの調速を、永久磁石と、電流を流すことによって電磁力を発生させるコイルとを用いて行っているので、テンプに制動力を加えて減速する調速と、テンプに駆動力を加えて加速する調速とを実行することができる。特に、テンプを加速できるため、ゼンマイのトルクが小さい領域、つまり巻き戻し速度が遅い期間も調速することができる。このため、ゼンマイで機械式時計を調速できる持続時間を延ばすことができる。
【0059】
本開示の機械式時計において、前記蓄電手段から前記調速制御手段に前記電気エネルギーを供給する第1の電源ラインおよび第2の電源ラインが設けられ、前記調速制御手段は、前記コイルの第1の端子と前記第1の電源ラインとの間に接続された第1のスイッチと、前記コイルの第2の端子と前記第1の電源ラインとの間に接続された第2のスイッチと、前記コイルの前記第1の端子と前記第2の電源ラインとの間に接続された第3のスイッチと、前記コイルの前記第2の端子と前記第2の電源ラインとの間に接続された第4のスイッチと、を備え、前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ、前記第4のスイッチはトランジスターであり、前記調速制御手段は、前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ、前記第4のスイッチを制御することで、前記テンプを調速する処理を実行することが好ましい。
調速制御手段を、4つのスイッチからなるブリッジ回路を備えて構成しているので、コイルに対して電流が流れる方向を簡単な制御で変更でき、永久磁石に対して制動力および駆動力を選択して加えることができ、テンプの進みや遅れの調速制御を簡単な回路構成で実現できる。
【0060】
本開示の機械式時計において、前記外部磁界検出手段は、前記第1の端子と前記第1の電源ラインとの間に直列に接続された第5のスイッチおよび第1の抵抗素子を備え、前記第5のスイッチをオンに制御して前記外部磁界を検出する処理を実行することが好ましい。
この構成によれば、外部磁界検出手段は、第5のスイッチをオンすることで、外部磁界によってコイルに流れる電流を、第1の抵抗素子にも流すことができるので、抵抗素子を設けない場合に比べて大きな検出電圧を得ることができ、検出感度を向上できる。このため、微小な外部磁界でも検出することができる。
【0061】
本開示の機械式時計において、前記外部磁界検出手段は、前記第2の端子と前記第1の電源ラインとの間に直列に接続された第6のスイッチおよび第2の抵抗素子を備え、前記第5のスイッチまたは前記第6のスイッチを交互にオンに制御して前記外部磁界を検出する処理を実行することが好ましい。
外部磁界検出手段は、第5のスイッチをオンに制御して外部磁界を検出する処理と、第6のスイッチをオンに制御して外部磁界を検出する処理とを交互に実行するため、外部磁界の向きによって一方のスイッチをオンに制御した場合には検出し難い場合でも、他方のスイッチをオンに制御することで検出できる可能性が高まるため、外部磁界の検出精度を向上できる。
【0062】
本開示の機械式時計において、前記振動検出手段は、前記第1の端子と前記第1の電源ラインとの間に直列に接続された前記第5のスイッチおよび前記第1の抵抗素子を備えることが好ましい。
この構成によれば、コイルに対して永久磁石が相対的に重なるタイミングで第5のスイッチをオンに制御すれば振動検出手段として機能し、コイルに対して永久磁石が相対的に重ならないタイミングで第5のスイッチをオンに制御すれば磁界検出手段として機能するため、第5のスイッチおよび第1の抵抗素子を外部磁界検出手段および振動検出手段で兼用できる。
【0063】
本開示の機械式時計において、前記調速制御手段は、前記外部磁界の検出期間、振動検出期間、前記駆動パルスの出力期間以外の期間は、前記第1のスイッチ、前記第2のスイッチ、前記第3のスイッチ、前記第4のスイッチをオフに制御することが好ましい。
この構成によれば、各検出期間や駆動パルスの出力期間以外は、コイル端子を各電源ラインから切り離して開放状態、つまりハイインピーダンス状態にできる。このため、ヒゲゼンマイによるテンプの振動運動中に、コイルに電流が流れて磁界が発生し、テンプの振動に影響を与えることを防止できる。
【0064】
本開示の機械式時計において、前記外部磁界検出手段が前記外部磁界を検出した場合、前記調速制御手段は、前記テンプを調速する処理を第1期間停止することが好ましい。
外部磁界を検出した場合にテンプの調速処理を第1期間停止しているので、外部磁界の影響によってテンプの振動を誤検出して誤った調速制御を行うことを防止できる。
【0065】
本開示の機械式時計において、前記外部磁界検出手段は、前記第1期間経過後、前記外部磁界を検出する処理を実行し、前記調速制御手段は、前記外部磁界検出手段が前記外部磁界を検出した場合、前記テンプを調速する処理をさらに第1期間停止し、前記外部磁界検出手段が前記外部磁界を検出しなかった場合、前記テンプを調速する処理を再開することが好ましい。
外部磁界の検出を第1期間経過する毎に実行しているので、外部磁界が長く影響を与えている場合でも、外部磁界を検出している間はテンプの調速処理を第1期間停止しているので、外部磁界の影響によってテンプの振動を誤検出して誤った調速制御を行うことを確実に防止できる。
【0066】
本開示の機械式時計において、前記テンプを調速する処理を停止した期間を記憶する記憶部を備え、前記調速制御手段は、前記テンプを調速する処理を再開した場合に、前記記憶部に記憶された期間に応じて、前記駆動パルスの出力間隔を短くすることが好ましい。
テンプの調速処理の停止期間に応じて駆動パルスの出力間隔を短くすることで、停止期間中の精度低下による時刻の指示ズレを短期間で取り戻すことができる。
【0067】
本開示の機械式時計において、前記発電機は、前記ゼンマイからの動力により輪列を介して回転する発電用ローターと、前記発電用ローターの回転によって発電する発電用コイルとを備える電磁発電機であることが好ましい。
発電用ローターおよび発電用コイルを備えた専用の発電機を設けているので、発電性能を向上でき、テンプの調速制御への影響を軽減できる。
【0068】
本開示の機械式時計において、前記発電機は、前記永久磁石および前記コイルを備え、前記テンプの振動によって前記永久磁石および前記コイルが相対的に移動して発電する電磁発電機であることが好ましい。
振動検出用の永久磁石およびコイルを発電にも兼用できるので、別途、専用の発電機を設ける場合に比べて、部品数を少なくでき、コストを低減できる。
【符号の説明】
【0069】
1…機械式時計、4…時針、5…分針、6…秒針、10…機械式ムーブメント、11…香箱車、12…ゼンマイ、20…輪列、21…ガンギ車、22…アンクル、30…テンプ、31…テン輪、32…テン輪、33…テン真、34…ヒゲゼンマイ、35…コイル、36…永久磁石、40…電子調速装置、43…スイッチ回路、50…制御部、51…発振回路、52…第1検出回路、53…第2検出回路、54…制御回路、60…発電機、61…発電用ローター、64…発電用コイル、70…整流部、80…蓄電部、81…第1の電源ライン、82…第2の電源ライン、85…電圧検出部、90…振動子、351…第1の端子、352…第2の端子、361…永久磁石、362…永久磁石、363…永久磁石、364…永久磁石、431…第1のスイッチ、432…第2のスイッチ、433…第3のスイッチ、434…第4のスイッチ、435…第5のスイッチ、436…第6のスイッチ、441…第1の抵抗素子、442…第2の抵抗素子。