(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138840
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】立体物印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 401
B41J2/01 303
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049544
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小林 一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC11
2C056EC12
2C056EC28
2C056EC35
2C056FA10
2C056HA07
2C056HA12
2C056HA29
2C056HA37
2C056HA38
(57)【要約】
【課題】ワークの設置を容易としつつ、立体的なワークに対して高精度な印刷を行う。
【解決手段】立体物印刷装置は、第1ノズルから液体を吐出する第1ヘッドと、第2ノズルから液体を吐出する第2ヘッドと、第1ヘッドをZ軸に沿って移動させる第1のZ移動機構と、第2ヘッドをZ軸に沿って移動させる第2のZ移動機構と、Z軸に交差するX軸に沿って第1のZ移動機構および第2のZ移動機構を一括して移動させることにより、第1ヘッドおよび第2ヘッドをX軸に沿って移動させるX移動機構と、第1ヘッドおよび第2ヘッドから吐出される液体の付与を受ける立体的なワークを支持する多関節ロボットと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ノズルから液体を吐出する第1ヘッドと、
第2ノズルから液体を吐出する第2ヘッドと、
前記第1ヘッドをZ軸に沿って移動させる第1のZ移動機構と、
前記第2ヘッドを前記Z軸に沿って移動させる第2のZ移動機構と、
前記Z軸に交差するX軸に沿って前記第1のZ移動機構および前記第2のZ移動機構を一括して移動させることにより、前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドを前記X軸に沿って移動させるX移動機構と、
前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドから吐出される液体の付与を受ける立体的なワークを支持する多関節ロボットと、を備える、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項2】
前記第1のZ移動機構と前記第2のZ移動機構と前記X移動機構とを動作させつつ、前記ワーク上の第1印刷領域に向けて前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドから液体を吐出させる第1印刷動作を実行し、
前記第1印刷動作の実行中において前記多関節ロボットは動作しない、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項3】
前記Z軸および前記X軸に交差するY軸に沿って前記多関節ロボットを移動するY移動機構をさらに備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の立体物印刷装置。
【請求項4】
前記第1のZ移動機構と前記第2のZ移動機構と前記X移動機構とを動作させつつ、前記ワーク上の前記第1印刷領域と隣接する第2印刷領域に向けて前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドから液体を吐出させる第2印刷動作を実行し、
前記第2印刷動作の実行中において前記多関節ロボットは動作せず、
前記第1印刷動作と前記第2印刷動作との間の期間において、前記Y移動機構が動作し、かつ、前記多関節ロボットは動作しない、
ことを特徴とする請求項3に記載の立体物印刷装置。
【請求項5】
前記第1印刷領域の一部は前記第2印刷領域と重複し、かつ、前記第1印刷領域の他の一部は前記第2印刷領域と重複しない、
ことを特徴とする請求項4に記載の立体物印刷装置。
【請求項6】
前記第1のZ移動機構と前記第2のZ移動機構と前記X移動機構とを動作させつつ、前記ワーク上の前記第1印刷領域とは異なる第3印刷領域に向けて前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドから液体を吐出させる第3印刷動作を実行し、
前記第3印刷動作の実行中において前記多関節ロボットは動作せず、
前記第1印刷動作と前記第3印刷動作との間の期間において、前記多関節ロボットが動作することにより前記ワークの姿勢を変更するワーク回転動作を実行する、
ことを特徴とする請求項2に記載の立体物印刷装置。
【請求項7】
前記多関節ロボットは、互いに異なる回動軸まわりに回動可能なN個(ただし、Nは、2以上の自然数である)の関節を有し、
前記N個の関節のうち前記ワーク回転動作の実行中において回動する関節の数は、M個(ただし、Mは、Nより小さい自然数である)である、
ことを特徴とする請求項6に記載の立体物印刷装置。
【請求項8】
前記N個の関節のうち、
最も先端に近い関節を第1関節とし、
前記第1関節に次いで先端に近い関節を第2関節としたとき、
前記ワーク回転動作の実行中において回動する関節は、前記第1関節および前記第2関節のいずれか一方である、
ことを特徴とする請求項7に記載の立体物印刷装置。
【請求項9】
前記第2関節の回動軸と前記X軸とが互いに平行である、
ことを特徴とする請求項8に記載の立体物印刷装置。
【請求項10】
前記第1関節の回動軸と前記X軸に交差するY軸とが互いに平行である、
ことを特徴とする請求項8に記載の立体物印刷装置。
【請求項11】
前記第1印刷動作よりも前に前記多関節ロボットが前記ワークを搬送する搬送動作を実行し、
前記ワーク回転動作の実行中において回動する関節の回転加速度は、前記搬送動作よりも前記ワーク回転動作において小さい、
ことを特徴とする請求項8に記載の立体物印刷装置。
【請求項12】
前記第1印刷動作と前記ワーク回転動作との間の期間において、前記第1のZ移動機構および前記第2のZ移動機構の動作により、前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドが前記ワークから離れる方向に移動するヘッド退避動作を実行する、
ことを特徴とする請求項6に記載の立体物印刷装置。
【請求項13】
前記Z軸および前記X軸に交差するY軸に沿って前記多関節ロボットを移動するY移動機構をさらに備え、
前記第1印刷動作と前記ワーク回転動作との間の期間において、前記Y移動機構の動作により、前記多関節ロボットが前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドから離れる方向に移動するヘッド退避動作を実行する、
ことを特徴とする請求項6に記載の立体物印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立体物印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体的なワークの表面にインクジェット方式により印刷を行う立体物印刷装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の装置は、複数のヘッドと、複数のヘッドを上下させるヘッド上下機構と、を有する。この装置では、上下動するキャリッジにインクジェットヘッドが搭載されるとともに、テーブル上に印刷対象物であるワークが載せられており、当該テーブル上のワークと当該キャリッジが相対的にXY方向に移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような従来の装置では、ワークの印刷面がヘッドと対向するように、テーブル上の治具等によってワークの位置が調整される。しかしながら、ワークの印刷面とは反対の載置面が平面であるとは限らないため、ワークの種類または印刷面を変更するたびに手動にて治具の交換または調整が必要となるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示の立体物印刷装置の一態様は、第1ノズルから液体を吐出する第1ヘッドと、第2ノズルから液体を吐出する第2ヘッドと、前記第1ヘッドをZ軸に沿って移動させる第1のZ移動機構と、前記第2ヘッドを前記Z軸に沿って移動させる第2のZ移動機構と、前記Z軸に交差するX軸に沿って前記第1のZ移動機構および前記第2のZ移動機構を一括して移動させることにより、前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドを前記X軸に沿って移動させるX移動機構と、前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドから吐出される液体の付与を受ける立体的なワークを支持する多関節ロボットと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る立体物印刷装置の概略を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る立体物印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】ヘッドユニットおよび調整機構の概略構成を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る立体物印刷装置の動作の流れを示す図である。
【
図6】第1印刷領域および第2印刷領域を説明するための図である。
【
図7】第1実施形態の第1印刷動作を説明するための図である。
【
図8】第1実施形態の第1印刷動作の実行時のX移動機構およびZ移動機構を説明するための図である。
【
図9】第1実施形態のヘッド退避動作およびフィード動作を説明するための図である。
【
図10】第1実施形態の第2印刷動作を説明するための図である。
【
図11】第2実施形態に係る立体物印刷装置の動作の流れを示す図である。
【
図12】第1印刷領域および第3印刷領域を説明するための図である。
【
図13】第2実施形態の第1印刷動作を説明するための図である。
【
図14】第2実施形態のヘッド退避動作およびワーク回転動作を説明するための図である。
【
図15】第2実施形態の第3印刷動作を説明するための図である。
【
図16】変形例1のヘッド退避動作およびワーク回転動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0008】
以下の説明は、便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、以下の説明では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。
【0009】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述の移動機構2および支持機構4が設置される空間に設定されるワールド座標系の座標軸に相当する。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。以下では、便宜上、ワールド座標系を用いて移動機構2の動作を制御する場合が例示される。
【0010】
なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0011】
1.第1実施形態
1-1.印刷装置の概略
図1は、第1実施形態に係る立体物印刷装置1の概略を示す斜視図である。立体物印刷装置1は、立体的なワークWの表面にインクジェット方式により印刷を行う装置である。
【0012】
ワークWは、印刷対象となる領域を含む面WFを有する。
図1に示す例では、ワークWが略半球体であり、面WFが略凸球面である。なお、ワークWの大きさ、形状または設置姿勢は、
図1に示す例に限定されず、任意である。
【0013】
図1に示すように、立体物印刷装置1は、基台10と移動機構2とヘッドユニット3_1~3_4とセンサーユニット30と支持機構4とを備える。以下、
図1に基づいて、立体物印刷装置1の各部を順次簡単に説明する。なお、以下では、ヘッドユニット3_1~3_4のそれぞれをヘッドユニット3という場合がある。
【0014】
基台10は、移動機構2を支持する面10aを有する台である。面10aは、Z1方向を向く面である。ここで、基台10には、基台10に対して、移動機構2がネジ止め等により直接的または他の部材を介して間接的に固定される。
【0015】
図1に示す例では、基台10が箱状をなしており、面10aがZ1方向を向く面である。基台10に対してZ1方向の位置には、ケースが配置されてもよい。当該ケースは、基台10に支持される移動機構2等の構造物を収容する空間を面10aとの間に形成する箱状の構造体であり、例えば、金属等で構成される複数の柱および複数の梁と、アクリル樹脂等の透明材料で構成される天板および壁板等の複数の板材と、を有する。
【0016】
なお、基台10の構成は、
図1に示す例に限定されず、任意である。また、基台10は、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。基台10が省略される場合、立体物印刷装置1の各構成要素は、例えば、建物の床、壁または天井等に設置される。
【0017】
移動機構2は、ワークWに対するヘッドユニット3_1~3_4およびセンサーユニット30の相対的な位置をX軸に沿う方向とY軸に沿う方向とで変化させる機構である。移動機構2は、X移動機構2XとZ移動機構2Z_0~2Z_4とを備える。ここで、Z移動機構2Z_1が「第1のZ移動機構」の一例であり、Z移動機構2Z_2が「第2のZ移動機構」の一例である。なお、以下では、Z移動機構2Z_0~2Z_4のそれぞれをZ移動機構2Zという場合がある。
【0018】
X移動機構2Xは、Z軸と直交するX軸に沿ってワークWに対するヘッドユニット3およびセンサーユニット30のそれぞれの相対位置を変化させる直動機構である。
図1に示す例では、X移動機構2Xは、Z移動機構2Z_0~2Z_4を介してヘッドユニット3_1~3_4およびセンサーユニット30を支持しており、Z移動機構2Z_0~2Z_4を一括してX軸に沿って移動させる。これにより、ヘッドユニット3_1~3_4およびセンサーユニット30がワークWに対してX軸に沿って移動する。
【0019】
X移動機構2Xは、1対の柱2aと梁2bと1対のレール2cと可動体2dとを有する。これらは、例えば、鉄、ステンレス鋼またはアルミニウム合金等の金属で構成される。
【0020】
1対の柱2aのそれぞれは、基台10の面10aからZ1方向に延びる部材である。
図1に示す例では、1対の柱2aがX軸に沿う方向に並ぶ。1対の柱2aの先端には、梁2bが架け渡される。梁2bは、1対の柱2aに支持される部材である。
図1に示す例では、梁2bは、X軸に沿う方向に延びており、Z軸に沿う方向を厚さ方向とする板状をなす。梁2bのZ1方向を向く面には、1対のレール2cが配置される。1対のレール2cのそれぞれは、可動体2dを1対の柱2aおよび梁2bに対してX軸に沿う方向に相対的に移動させるように案内するリニアレールであり、X軸に沿う方向に延びる。1対のレール2cには、図示しない直動軸受を介して、可動体2dが取り付けられる。可動体2dは、1対の柱2aおよび梁2bに対してX軸に沿う方向に相対的に移動する部材である。
図1に示す例では、Z軸に沿う方向を厚さ方向とする板状をなす。図示しないが、X移動機構2Xは、当該移動のための駆動力を発生させるサーボモーター等の電動機を有するアクチュエーターと、当該移動の動作量を検出するリニアエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、X移動機構2Xの構成は、
図1に示す例に限定されない。
【0021】
以上のX移動機構2Xの可動体2dには、支持体2eを介してZ移動機構2Z_0~2Z_4が取り付けられる。これにより、可動体2dの移動に伴って、Z移動機構2Z_0~2Z_4がX軸に沿う方向に移動する。
【0022】
ここで、支持体2eは、図示しない直動機構を介して可動体2dに取り付けられる。当該直動機構は、可動体2dに対して支持体2eをZ軸に沿う方向に移動させる。これにより、Z移動機構2Z_0~2Z_4が一括してZ軸に沿う方向に移動する。当該直動機構は、例えば、Z移動機構2Zと同様に構成される電動式の機構であってもよいし、手動式の機構であってもよい。当該直動機構は、電動式である場合、印刷時に駆動制御されてもよい。
【0023】
Z移動機構2Z_1~2Z_4のそれぞれは、Z軸に沿ってワークWに対してヘッドユニット3を移動させる直動機構である。
図1に示す例では、Z移動機構2Z_1~2Z_4が支持体2eを介して前述のX移動機構2Xの可動体2dに取り付けられており、ヘッドユニット3をZ軸に沿う方向に移動させる。また、Z移動機構2Z_1~2Z_4がこの順でX2方向に並ぶ。
【0024】
ここで、Z移動機構2Z_1~2Z_4には、ヘッドユニット3_1~3_4がそれぞれ一対一で対応する。そして、Z移動機構2Z_1~2Z_4のそれぞれには、対応するヘッドユニット3が取り付けられる。したがって、Z移動機構2Z_1は、ワークWに対するヘッドユニット3_1の相対的な位置をZ軸に沿う方向で変化させる。同様に、Z移動機構2Z_2~2Z_4は、ワークWに対するヘッドユニット3_2~3_4の相対的な位置をそれぞれZ軸に沿う方向で変化させる。このように、Z移動機構2Z_1~2Z_4は、ワークWに対するヘッドユニット3_1~3_4の相対的な位置を互いに独立にZ軸に沿う方向で変化させる。
【0025】
これに対し、Z移動機構2Z_0は、Z軸に沿ってワークWに対してセンサーユニット30を移動させる直動機構であり、前述のZ移動機構2Z_1~2Z_4のそれぞれとは独立に動作する。Z移動機構2Z_0には、センサーユニット30が取り付けられる。
図1に示す例では、Z移動機構2Z_0が支持体2eを介して前述のX移動機構2Xの可動体2dに取り付けられており、センサーユニット30をZ軸に沿う方向に移動させる。このように、Z移動機構2Z_0は、ワークWに対するセンサーユニット30の相対的な位置をヘッドユニット3_1~3_4のそれぞれとは独立にZ軸に沿う方向で変化させる。また、Z移動機構2Z_0は、Z移動機構2Z_1に対してX1方向の位置で隣り合う。すなわち、Z移動機構2Z_0~2Z_4がこの順でX2方向に並ぶ。
【0026】
以上のZ移動機構2Z_0~2Z_4は、前述のように移動の対象が異なること以外は、互いに同様に構成される。図示しないが、Z移動機構2Z_0~2Z_4のそれぞれは、レールと可動体とアクチュエーターとエンコーダーとを有する。当該レールは、支持体2eに固定されており、Z軸に沿う方向に延びるリニアレールである。当該可動体は、直動軸受を介して当該レールに取り付けられており、Z軸に沿う方向に移動する。当該アクチュエーターは、当該移動のための駆動力を発生させるサーボモーター等の電動機を有する。当該エンコーダーは、当該移動の動作量を検出するリニアエンコーダー等である。なお、Z移動機構2Z_0~2Z_4の構成は、互いに異なってもよい。ただし、低コスト化等の観点から、Z移動機構2Z_0~2Z_4は、互いに同一の構成であることが好ましい。また、Z移動機構2Z_0は、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。
【0027】
図1では、図示を省略するが、当該可動体には、ヘッドユニット3またはセンサーユニット30の姿勢を微調整するための調整機構を介して、ヘッドユニット3またはセンサーユニット30が取り付けられる。当該調整機構の具体例については、後に
図4に基づいて説明する。
【0028】
ヘッドユニット3_1~3_4のそれぞれは、「液体」の一例であるインクをワークWに向けて吐出するヘッド3aを有するアセンブリーである。ここで、ヘッドユニット3_1の有するヘッド3aである後述のヘッド3a_1が「第1ヘッド」の一例であり、ヘッドユニット3_2の有するヘッド3aである後述のヘッド3a_2が「第2ヘッド」の一例である。なお、ヘッドユニット3の詳細については、後に
図4に基づいて説明する。
【0029】
当該インクとしては、特に限定されないが、本実施形態では、熱硬化型、光硬化型、放射線硬化型および電子線硬化型等の硬化性樹脂を用いた硬化性インクが用いられる。なお、当該インクは、色材を含むインクに限定されず、例えば、配線等を形成するための金属粒子等の導電性粒子を分散質として含むインクでもよいし、クリアインクでもよいし、ワークWの表面処理のための処理液でもよい。
【0030】
ヘッドユニット3には、図示しない配線および供給管が接続される。当該配線は、ヘッド3aを駆動するための電気信号をヘッド3aに供給する。当該供給管は、図示しないインクタンクからのインクをヘッドユニット3に供給する可撓性の管体である。なお、ヘッドユニット3_1~3_4に用いるインクの種類は、互いに同一であっても異なってもよい。
【0031】
センサーユニット30は、ワークWとの位置関係を検出するセンサー31を有するアセンブリーである。
図1に示す例では、センサーユニット30は、センサー31とエネルギー出射部32とを有する。
【0032】
センサー31は、例えば、ワークWとの接触を検出する接触式のセンサーと、ワークWとの間の距離を検出する光学式の変位センサーと、のうちの一方または両方を有する。エネルギー出射部32は、ワークW上のインクを硬化または固化させるための光、熱、電子線または放射線等のエネルギーを出射する。エネルギー出射部32は、例えば、紫外線を出射するLED(light emitting diode)等の発光素子等で構成される。また、センサー31およびエネルギー出射部32のうちの一方または両方は、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。
【0033】
支持機構4は、ワークWを支持する機構である。
図1に示す例では、支持機構4は、Y移動機構4Yと多関節ロボット4Wとを有する。
【0034】
Y移動機構4Yは、多関節ロボット4WをY軸に沿って移動させる直動機構である。この移動により、ワークWに対するヘッドユニット3_1~3_4およびセンサーユニット30の相対的な位置をY軸に沿う方向で変化させることが可能である。
【0035】
Y移動機構4Yは、支持体4aと1対のレール4bと可動体4cとを有する。これらは、例えば、鉄、ステンレス鋼またはアルミニウム合金等の金属で構成される。
【0036】
支持体4aは、固定設置される台である。
図1に示す例では、支持体4aは、Y軸に沿う方向に延びており、Z軸に沿う方向を厚さ方向とする板状をなす。支持体4aのZ1方向を向く面には、1対のレール4bが配置される。なお、支持体4aは、前述の基台10に固定されてもよいし、基台10と一体で構成されてもよい。また、支持体4aの形状は、
図1に示す例に限定されず、任意である。
【0037】
1対のレール4bのそれぞれは、可動体4cを支持体4aに対してY軸に沿う方向に相対的に移動させるように案内するリニアレールであり、Y軸に沿う方向に延びる。1対のレール4bには、図示しない直動軸受を介して、可動体4cが取り付けられる。なお、1対のレール4bは、支持体4aと一体で構成されてもよい。
【0038】
可動体4cは、支持体4aに対してY軸に沿う方向に相対的に移動する部材である。
図1に示す例では、Z軸に沿う方向を厚さ方向とする板状をなす。図示しないが、Y移動機構4Yは、当該移動のための駆動力を発生させるサーボモーター等の電動機を有するアクチュエーターと、当該移動の動作量を検出するリニアエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。可動体4cには、ステージ4dがネジ留め等により取り付けられる。
【0039】
ステージ4dは、多関節ロボット4Wを支持する部材である。
図1に示す例では、ステージ4dは、板状をなす。なお、当該調整機構は、アクチュエーターおよびエンコーダーを含む電動式の構成であってもよいし、手動で調整可能な構成であってもよい。また、ステージ4dは、可動体4cと一体で構成されてもよい。
【0040】
以上のY移動機構4Yのステージ4dには、多関節ロボット4Wがネジ留め等により取り付けられる。以上のY移動機構4Yの動作により、多関節ロボット4Wを動作させずに、ワークWをY軸に沿って高精度に移動させることができる。
【0041】
多関節ロボット4Wは、ワークWを支持する。多関節ロボット4Wは、ワークWの位置および姿勢を変更可能であり、印刷動作の実行時に、ヘッドユニット3_1~3_4のヘッド3aから吐出されるインクの付与を受けることが可能な所望の位置および姿勢でワークWを支持する。多関節ロボット4Wの構成については、後に
図3に基づいて説明する。
【0042】
以上の概略のように、立体物印刷装置1は、ヘッドユニット3_1~3_4のヘッド3aと、Z移動機構2Z_1~2Z_4と、X移動機構2Xと、多関節ロボット4Wと、を備える。ここで、前述のように、ヘッドユニット3_1~3_4のヘッド3aのそれぞれは、「液体」の一例であるインクを後述のノズルNから吐出する。Z移動機構2Z_1~2Z_4は、ヘッドユニット3_1~3_4のヘッド3aをZ軸に沿って移動させる。X移動機構2Xは、Z軸に交差するX軸に沿ってZ移動機構2Z_1~2Z_4を一括して移動させることにより、ヘッドユニット3_1~3_4のヘッド3aをX軸に沿って移動させる。多関節ロボット4Wは、ヘッドユニット3_1~3_4のヘッド3aから吐出されるインクの付与を受ける立体的なワークWを支持する。
【0043】
このように、多関節ロボット4WがワークWを支持するので、ワークWの立体的な形状によらず、ヘッドユニット3_1~3_4のヘッド3aに対する所望の姿勢でワークWを設置することができる。このため、Z移動機構2Z_1~2Z_4とX移動機構2Xとを動作させつつ、ワークW上の印刷領域に向けて高精度にヘッドユニット3_1~3_4のヘッド3aからインクを吐出させることができる。このように、ワークWの設置を容易としつつ、立体的なワークWに対して高精度な印刷を行うことができる。以下、立体物印刷装置1について詳述する。
【0044】
1-2.印刷装置の電気的な構成
図2は、第1実施形態に係る立体物印刷装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
図2では、立体物印刷装置1の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。
図2に示すように、立体物印刷装置1は、前述の
図1に示す構成要素のほか、制御部50を有する。
【0045】
制御部50は、移動機構2、ヘッドユニット3_1~3_4、支持機構4およびセンサーユニット30の動作を制御する。
図2に示す例では、制御部50は、コントローラー5と制御モジュール6とコンピューター7とを有する。以下、コントローラー5、制御モジュール6およびコンピューター7を順次説明する。
【0046】
なお、
図2に示す電気的な各構成要素は、適宜に分割されてもよいし、一部が他の構成要素に含まれてもよいし、他の構成要素と一体で構成されてもよい。例えば、コントローラー5または制御モジュール6の機能の一部または全部は、コンピューター7により実現されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等のネットワークを介してコントローラー5に接続されるPC(personal computer)等の他の外部装置により実現されてもよい。
【0047】
コントローラー5は、移動機構2および支持機構4の駆動を制御する機能と、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作を移動機構2の動作に同期させるための信号D3を生成する機能と、を有する。
【0048】
コントローラー5は、記憶回路5aと処理回路5bとを有する。
【0049】
記憶回路5aは、処理回路5bが実行する各種プログラムと、処理回路5bが処理する各種データと、を記憶する。なお、記憶回路5aの一部または全部は、処理回路5bに含まれてもよい。
【0050】
記憶回路5aには、経路情報Daおよび経路情報Dbが記憶される。
【0051】
経路情報Daは、移動機構2の動作の制御に用いられ、ヘッド3aの移動すべき経路である後述の移動経路RU1、RU2におけるヘッド3aの位置を目標位置として示す情報である。経路情報Daは、例えば、ワールド座標系の座標値を用いて表される。ここで、経路情報Daの示す印刷時のヘッド3aの目標位置は、ヘッド3aがワークWから微小距離で離れた位置となるように設定される。経路情報Daは、ワークWの少なくとも一部の形状を表すワークデータに基づいて、コンピューター7により生成される。当該ワークデータは、例えば、STL(Standard Triangulated Language)形式のCAD(computer-aided design)データであるか、または、3次元カメラによりワークWの形状を計測したデータである。経路情報Daは、コンピューター7から記憶回路5aに入力される。なお、経路情報Daは、ワーク座標系の座標値を用いて表されてもよい。この場合、経路情報Daは、ワーク座標系の座標値からワールド座標系の座標値に変換した後に移動機構2の動作の制御に用いられる。
【0052】
経路情報Dbは、支持機構4の動作の制御に用いられ、ワークWの移動すべき経路におけるワークWの位置および姿勢を目標位置および目標姿勢として示す情報である。経路情報Dbは、例えば、ワールド座標系の座標値を用いて表される。ここで、経路情報Dbは、Y移動機構4Yの制御に用いられる情報と、多関節ロボット4Wの制御に用いられる情報と、を含む。Y移動機構4Yの制御に用いられる情報は、多関節ロボット4Wの後述の基部410のY軸に沿う方向での目標位置を示す情報を含む。多関節ロボット4Wの制御に用いられる情報は、Y移動機構4Yのステージ4dに対するワークWの目標位置および目標姿勢を示す情報を含む。また、経路情報Dbは、印刷時のワークWの位置および姿勢を目標位置および目標姿勢として示す情報を含む。経路情報Dbの示す印刷時のワークWの目標位置および目標姿勢は、例えば、ヘッド3aの後述の複数のノズルNとワークWとの間の距離のバラツキができるだけ小さくなるように設定される。経路情報Dbは、ユーザーの設定に応じて、コンピューター7により生成される。経路情報Dbは、コンピューター7から記憶回路5aに入力される。
【0053】
処理回路5bは、移動機構2および支持機構4の動作を制御するとともに、信号D3を生成する。
【0054】
具体的には、処理回路5bは、経路情報Daを移動機構2の移動量および移動速度等の動作量に変換する演算を行う。そして、処理回路5bは、移動機構2の実際の動作量が前述の演算結果となるように、移動機構2の各エンコーダーからの出力信号Dx、Dz_0~Dz4に基づいて、制御信号Sx、Sz_0~Sz_4を出力する。出力信号Dxは、X移動機構2Xのエンコーダーから出力される信号である。出力信号Dz_0~Dz_4は、Z移動機構2Z_0~2Z_4のエンコーダーから出力される信号である。制御信号Sxは、X移動機構2Xのアクチュエーターの駆動を制御するための信号である。制御信号Sz_0~Sz_4は、Z移動機構2Z_0~2Z_4のアクチュエーターの駆動を制御するための信号である。ここで、制御信号Sx、Sz_0~Sz_4は、必要に応じて、センサーユニット30のセンサー31からの出力信号D1に基づいて処理回路5bにより補正される。
【0055】
また、処理回路5bは、経路情報Dbを多関節ロボット4Wの各関節の回転角度および回転速度等の動作量に変換する演算である逆運動学計算を行う。そして、処理回路5bは、当該各関節の実際の回転角度および回転速度等の動作量が前述の演算結果となるように、多関節ロボット4Wの各関節に設けられるエンコーダーからの出力Dwに基づいて、制御信号Swを出力する。制御信号Swは、多関節ロボット4Wの各関節に設けられるモーターの駆動を制御する信号である。
【0056】
さらに、処理回路5bは、出力信号Dx、Dz_0~Dz_4のうちの少なくとも1つの信号に基づいて、信号D3を生成する。例えば、処理回路5bは、出力信号Dxが所定値となるタイミングのパルスを含む信号D3を生成してもよいし、出力信号Dxをそのまま信号D3として出力してもよい。
【0057】
制御モジュール6は、コントローラー5から出力される信号D3とコンピューター7からの印刷データとに基づいて、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作を制御する回路である。制御モジュール6は、タイミング信号生成回路6aと電源回路6bと制御回路6cと駆動信号生成回路6dとを有する。
【0058】
タイミング信号生成回路6aは、信号D3に基づいてタイミング信号PTSを生成する。タイミング信号生成回路6aは、例えば、信号D3の検出を契機としてタイミング信号PTSの生成を開始するタイマーで構成されるか、または、信号D3が出力信号Dxである場合、出力信号Dxのパルスに同期したタイミングのパルスを含む信号をタイミング信号PTSとして生成する回路で構成される。
【0059】
電源回路6bは、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。例えば、電源回路6bは、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、ヘッドユニット3に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路6dに供給される。
【0060】
制御回路6cは、タイミング信号PTSに基づいて、制御信号SI_1~SI_4と波形指定信号dComとラッチ信号LATとクロック信号CLKとチェンジ信号CNGとを生成する。これらの信号は、タイミング信号PTSに同期する。これらの信号のうち、波形指定信号dComは、駆動信号生成回路6dに入力され、それ以外の信号は、ヘッドユニット3のスイッチ回路3eに入力される。制御信号SI_1~SI_4は、ヘッドユニット3_1~3_4にそれぞれ一対一で対応する。なお、以下では、制御信号SI_1~SI_4のそれぞれを制御信号SIという場合がある。
【0061】
制御信号SIは、ヘッドユニット3のヘッド3aが有する駆動素子の動作状態を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、制御信号SIは、印刷データに基づいて、当該駆動素子に対して後述の駆動信号Comを供給するか否かを指定するための信号である。この指定により、例えば、当該駆動素子に対応するノズルからインクを吐出するか否かを指定したり、当該ノズルから吐出されるインクの量を指定したりする。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CNGは、制御信号SIと併用され、当該駆動素子の駆動タイミングを規定することにより、当該ノズルからのインクの吐出タイミングを規定するための信号である。クロック信号CLKは、タイミング信号PTSに同期した基準となるクロック信号である。
【0062】
以上の制御回路6cは、例えば、1個以上のCPU等のプロセッサーを含む。
【0063】
駆動信号生成回路6dは、ヘッドユニット3のヘッド3aの有する各駆動素子を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路6dは、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路6dでは、当該DA変換回路が制御回路6cからの波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路6bからの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することで駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、当該駆動素子に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。駆動パルスPDは、ヘッドユニット3のスイッチ回路3eを介して、駆動信号生成回路6dから当該駆動素子に供給される。
【0064】
ここで、スイッチ回路3eは、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替えるスイッチング素子を含む回路である。
【0065】
コンピューター7は、例えば、プログラムをインストールしたデスクトップ型のコンピューターである。コンピューター7は、経路情報Da、Dbを生成する機能と、コントローラー5に経路情報Da、Db等の情報を供給する機能と、制御モジュール6に印刷データ等の情報を供給する機能と、作業者からの指示を受け付ける機能と、を有する。本実施形態のコンピューター7は、これらの機能のほか、ヘッドユニット3のエネルギー出射部3cとセンサーユニット30のエネルギー出射部32との駆動を制御する機能を有する。
【0066】
コンピューター7は、記憶回路7aと処理回路7bとを有する。記憶回路7aは、処理回路7bが実行する各種プログラムと、処理回路7bが処理する経路情報Da等の各種データと、を記憶する。
【0067】
処理回路7bは、記憶回路7aからプログラムを読み込んで実行することにより、各種機能を実現する。
【0068】
1-3.多関節ロボットの構成
図3は、多関節ロボット4Wの一例を示す斜視図である。以下、
図3に基づいて、多関節ロボット4Wの構成を説明する。
図3に示す例では、多関節ロボット4Wが6軸の多関節ロボットである。
【0069】
図3に示すように、多関節ロボット4Wは、基部410と、アーム420と、を有する。
【0070】
基部410は、アーム420を支持する台である。
図3に示す例では、基部410は、前述のY移動機構4Yのステージ4dに対してネジ止め等により固定される。
【0071】
アーム420は、基部410に取り付けられる基端と、当該基端に対して3次元的に位置および姿勢を変化させる先端と、を有する6軸のロボットアームである。具体的には、アーム420は、アーム421、422、423、424、425および426を有し、これらがこの順に基部410から連結される。
【0072】
アーム421は、基部410に対して回動軸O1まわりに回動可能に関節J1を介して連結される。アーム422は、アーム421に対して回動軸O2まわりに回動可能に関節J2を介して連結される。アーム423は、アーム422に対して回動軸O3まわりに回動可能に関節J3を介して連結される。アーム424は、アーム423に対して回動軸O4まわりに回動可能に関節J4を介して連結される。アーム425は、アーム424に対して回動軸O5まわりに回動可能に関節J5を介して連結される。アーム426は、アーム425に対して回動軸O6まわりに回動可能に関節J6を介して連結される。ここで、関節J6は、「第1関節」の一例であり、関節J5は、「第2関節」の一例である。
【0073】
関節J1~J6のそれぞれは、基部410およびアーム421~426のうち隣り合う2つの部材の一方を他方に対して回動可能に連結する機構である。
図3では図示しないが、関節J1~J6のそれぞれには、当該隣り合う2つの部材の一方を他方に対して回動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該回動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該回動の角度等の動作量を検出するロータリーエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。
【0074】
回動軸O1は、Z軸に平行な軸である。回動軸O2は、回動軸O1に対して垂直な軸である。回動軸O3は、回動軸O2に対して平行な軸である。回動軸O4は、回動軸O3に対して垂直な軸である。回動軸O5は、回動軸O4に対して垂直な軸である。回動軸O6は、回動軸O5に対して垂直な軸である。
【0075】
なお、これらの回動軸について、「垂直」とは、2つの回動軸のなす角度が厳密に90°である場合のほか、2つの回動軸のなす角度が90°から±5°程度の範囲内でずれる場合も含む。同様に、「平行」とは、2つの回動軸が厳密に平行である場合のほかに、2つの回動軸の一方が他方に対して±5°程度の範囲内で傾斜する場合も含む。
【0076】
以上の多関節ロボット4Wには、エンドエフェクターとしてハンド機構430が装着される。
【0077】
ハンド機構430は、ワークWを着脱可能に保持するロボットハンドである。ここで、「保持」とは、吸着および把持の双方を含む概念である。
図1に示す例では、ハンド機構430は、ワークWを負圧により吸着する機構である。なお、ハンド機構430の構成は、ワークWの形状、大きさまたは材質等に応じて適宜に決められる。ハンド機構430は、負圧による吸着機構に限定されず、例えば、把持ハンド機構であってもよい。
【0078】
1-4.ヘッドユニットの構成
図4は、ヘッドユニット3および調整機構2fの概略構成を示す斜視図である。調整機構2fは、Z移動機構2Zとヘッドユニット3とのY軸に沿う方向での位置関係、Z移動機構2Zとヘッドユニット3とのX軸に平行な軸まわりの位置関係、Z移動機構2Zとヘッドユニット3とのZ軸に平行な軸まわりの位置関係、を微調整するための機構である。図示しないが、調整機構2fには、当該微調整のためのツマミ等が設けられており、それぞれの位置関係を手動により当該微調整が可能である。調整機構2fは、必要に応じて設けられ、省略されてもよい。
【0079】
ヘッドユニット3は、ヘッド3aのほか、流路構造体3bとエネルギー出射部3cと支持体3gとカバー3hとを有する。ヘッドユニット3を構成する要素のうち、支持体3g以外の要素は、支持体3gに直接的または間接的に支持される。なお、
図4に示す例では、ヘッドユニット3の有するヘッド3aおよび流路構造体3bのそれぞれの数が1個であるが、当該数は、
図4に示す例に限定されず、2個以上でもよい。また、流路構造体3bは、ヘッドユニット3の外部に設けられてもよい。また、ヘッドユニット3の構成要素は、
図4に示す例に限定されず、例えば、ヒーターおよび温度センサー等を含んでもよい。
【0080】
支持体3gは、前述の調整機構2fを介してZ移動機構2Zに装着される。したがって、ヘッド3a、流路構造体3bおよびエネルギー出射部3cが支持体3gにより一括してZ移動機構2Zに支持される。
【0081】
支持体3gは、実質的な剛体であり、例えば、金属材料等で構成される。なお、
図4では、支持体3gが板状をなすが、支持体3gの形状は、特に限定されず、任意である。また、支持体3gは、複数の部材で構成されてもよい。
【0082】
前述の支持体3gに対してX1方向の位置には、ヘッド3a、流路構造体3bおよびカバー3hが配置される。これらは、支持体3gに対してねじ留め等により固定される。
【0083】
ヘッド3aは、ノズル面FNと、ノズル面FNに開口する複数のノズルNと、を有する。ここで、ヘッドユニット3_1の有するヘッド3aである後述のヘッド3a_1のノズルNは、「第1ノズル」の一例である。ヘッドユニット3_2の有するヘッド3aである後述のヘッド3a_2のノズルNは、「第2ノズル」の一例である。
【0084】
図4に示す例では、ノズル面FNの法線方向がZ2方向であり、当該複数のノズルNは、X軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶノズル列NLaとノズル列NLbとに区分される。ノズル列NLaおよびノズル列NLbのそれぞれは、Y軸に沿う方向であるノズル列方向DNに直線状に配列される複数のノズルNの集合である。ここで、ヘッド3aにおけるノズル列NLaの各ノズルNに関連する要素とノズル列NLbの各ノズルNに関連する要素とがX軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。以下では、ノズル列NLaおよびノズル列NLbの集合をノズル列NLという場合がある。個々のノズルNは、平行な吐出方向DEに沿ってインクを吐出する。理想的な条件において、Z2方向と吐出方向DEは等しい方向である。
【0085】
図示しないが、ヘッド3aは、ノズルNごとに、駆動素子である圧電素子と、インクを収容するキャビティと、有する。ここで、当該圧電素子は、当該圧電素子に対応するキャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルからインクを吐出させる。このようなヘッド3aは、例えば、エッチング等により適宜に加工したシリコン基板等の複数の基板を接着剤等により貼り合わせることにより得られる。なお、ノズルからインクを吐出させるための駆動素子として、当該圧電素子に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを用いてもよい。
【0086】
以上のヘッド3aには、流路構造体3bを介して供給管20aおよび排出管20bに接続される。供給管20aは、図示しないインクタンクからのインクをヘッドユニット3に供給する可撓性の管体である。排出管20bは、図示しない循環機構または排出機構へインクを移送するための可撓性の管体である。
【0087】
流路構造体3bは、ヘッド3aに対してZ1方向の位置に配置される。また、流路構造体3bは、供給管3i1および排出管3i2を介してヘッド3aに接続される。供給管3i1は、流路構造体3bからヘッド3aにインクを供給するための管体である。排出管3i2は、ヘッド3aから排出されるインクを流路構造体3bに導入するための管体である。
【0088】
流路構造体3bは、ヘッド3a内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、ヘッド3aと前述の図示しないインクタンクとの位置関係が変化しても、ヘッド3a内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。
【0089】
カバー3hは、流路構造体3bの周囲を覆う箱状の部材であり、例えば、金属材料等で構成される。カバー3hは、支持体3gとの間に流路構造体3bを収容する空間を形成する。当該空間は、密閉されてもよいし、外部に開放されてもよい。
【0090】
支持体3gに対してX2方向の位置には、エネルギー出射部3cが配置される。エネルギー出射部3cは、ワークW上のインクを硬化または固化させるための光、熱、電子線または放直線等のエネルギーを出射する。例えば、インクが紫外線硬化性を有する場合、エネルギー出射部3cは、紫外線を出射するLED(light emitting diode)等の発光素子等で構成される。また、エネルギー出射部3cは、エネルギーの出射方向または出射範囲等を調整するためのレンズ等の光学部品等を適宜に有してもよい。
【0091】
ここで、エネルギー出射部3cは、ワークW上のインクを半硬化または半固化させるための光、熱、電子線または放射線等のエネルギーを出射する。「半硬化」とは、完全硬化に至らずに部分的に硬化した状態をいう。同様に、「半固化」とは、完全固化に至らずに部分的に固化した状態をいう。なお、エネルギー出射部3cは、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。また、エネルギー出射部3cは、後述のエネルギー出射部32と同様、ワークW上のインクを完全硬化させてもよい。
【0092】
1-5.印刷動作
図5は、第1実施形態に係る立体物印刷装置1の動作の流れを示す図である。立体物印刷装置1の動作の流れとは、立体物印刷装置1を用いた印刷方法とも表現される。立体物印刷装置1は、
図5に示すように、搬送動作MCと第1印刷動作MP1とヘッド退避動作MEとフィード動作MFと第2印刷動作MP2とをこの順に実行する。以下、まず、これらの動作の概略を説明する。
【0093】
搬送動作MCは、多関節ロボット4WがワークWを搬送する。例えば、搬送動作MCでは、ヘッド3a_1~3a_4から吐出されたインクがワークW上の後述の第1印刷領域RP1に着弾する位置に、多関節ロボット4WがワークWを搬送する。
【0094】
第1印刷動作MP1は、Z移動機構2Z_1~2Z_4とX移動機構2Xとを動作させつつ、ワークW上の後述の第1印刷領域RP1に向けてヘッド3a_1~3a_4からインクを連続的に吐出させる。これにより、第1印刷領域RP1に印刷が行われる。ここで、多関節ロボット4Wは、動作しない。これにより、ワークWの姿勢が安定するので、多関節ロボット4Wの動作による画質低下が防止される。
【0095】
ヘッド退避動作MEは、Z移動機構2Z_1~2Z_4の動作により、ヘッド3a_1~3a_4がワークWから離れる方向に移動する。つまり、ヘッド退避動作MEは、Z移動機構2Z_1~2Z_4の動作により、ヘッド3a_1~3a_4が第1印刷動作の実行中における位置からZ1方向に向かって移動する。これにより、フィード動作MFの実行時におけるヘッド3a_1~3a_4とワークWとの接触が防止される。ここで、多関節ロボット4Wは、動作しない。これにより、第1印刷動作MP1からワークWの位置および姿勢が変化しない。
【0096】
フィード動作MFは、多関節ロボット4Wを動作させずに、Y移動機構4Yを動作させることにより、ワークWをY軸に沿う方向に移動させる。これにより、ワークW上の印刷対象となる領域が第1印刷領域RP1から後述の第2印刷領域RP2に変更される。つまり、第1印刷領域RP1および第2印刷領域RP2をそれぞれ一つの「行」とみなすと、フィード動作MFは、改行に相当する動作である。ここで、多関節ロボット4Wは、動作しない。これにより、第1印刷動作MP1からワークWの位置および姿勢が変化しない。すなわち、第1印刷動作MP1の実行時から第2印刷動作MP2の実行時までの期間にわたり、多関節ロボット4Wが動作しないので、後述のワークWに対する印刷位置のずれが低減される。
【0097】
第2印刷動作MP2は、Z移動機構2Z_1~2Z_4とX移動機構2Xとを動作させつつ、ワークW上の第1印刷領域RP1と隣接する第2印刷領域RP2に向けてヘッド3a_1~3a_4からインクを連続的に吐出させる。これにより、第2印刷領域RP2に印刷が行われる。ここで、多関節ロボット4Wは、動作しない。これにより、ワークWの姿勢が安定するので、多関節ロボット4Wの動作による画質低下が防止される。
【0098】
図6は、第1印刷領域RP1および第2印刷領域RP2を説明するための図である。
図6では、第1印刷領域RP1および第2印刷領域RP2がワークWの中心軸AXまわりの側面に設定される場合が例示される。ここで、略半球体であるワークWは、中心軸AXまわりの回転体である。また、
図6では、ワークWの中心軸AXが多関節ロボット4Wの回動軸O6に一致する場合が例示される。
【0099】
第1印刷動作MP1の実行時には、
図6に示すように、ワークW上の第1印刷領域RP1に印刷が行われる。ここで、第1印刷領域RP1には、X移動機構2Xの動作により移動経路RU1に沿って始点PS1から終点PE1に移動するヘッド3aから吐出されたインクが付与される。移動経路RU1は、Z軸に沿う方向にみてX軸に平行に延びる経路である。
図6に示す例では、移動経路RU1の方向がX1方向である。
【0100】
一方、第2印刷動作MP2の実行時には、ワークW上の第1印刷領域RP1とは異なる第2印刷領域RP2に印刷が行われる。ここで、第2印刷領域RP2には、X移動機構2Xの動作により移動経路RU2に沿って始点PS2から終点PE2に移動するヘッド3aから吐出されたインクが付与される。移動経路RU2は、Z軸に沿う方向にみてX軸に平行に延びる経路である。
図6に示す例では、移動経路RU2の方向がX2方向である。なお、移動経路RU2の方向は、X1方向であってもよい。
【0101】
第1印刷領域RP1および第2印刷領域RP2の一部同士は、重複領域OVで互いに重複する。すなわち、第1印刷領域RP1および第2印刷領域RP2のそれぞれは、重複領域OVを共有する。また、第1印刷領域RP1の重複領域OV以外の他の一部は、第2印刷領域RP2に重複しない。同様に、第2印刷領域RP2の重複領域OV以外の他の一部は、第1印刷領域RP1に重複しない。
【0102】
ここで、第1印刷動作MP1および第2印刷動作MP2による印刷により、1つの画像が印刷される。すなわち、第1印刷動作MP1による印刷パスと第2印刷動作MP2による印刷パスとによる複数の印刷パスにより、1つの画像が印刷される。なお、「印刷パス」とは、ヘッド3aとワークWとの相対位置をY軸に沿ってずらすフィード動作MFとヘッド3aの移動方向を反対方向に切り替える戻り動作とのいずれも含まずに、ヘッド3aを移動経路に沿って移動させつつ、ヘッド3aによるインクの吐出を実行する一連の印刷動作のことをいう。
【0103】
このような複数の印刷パスによる印刷では、画質低下に与える影響が単一パスの場合に比べて大きい。特に、前述のように重複領域OVを有する場合、印刷パスを変更する際にワークWに対する印刷位置がずれると、重複領域OVでの画質低下が著しい。
【0104】
そこで、このようなワークWに対する印刷位置のずれを低減するべく、立体物印刷装置1では、後述のフィード動作MFにおいてY移動機構4Yを用いてワークWとヘッド3aとのY軸に沿う方向での位置関係が変更される。
【0105】
図7は、第1実施形態の第1印刷動作MP1を説明するための図である。第1印刷動作MP1の実行中の多関節ロボット4Wは、第1印刷領域RP1がヘッド3aの直下に位置するように、ワークWを支持する。
【0106】
図7に示す例では、多関節ロボット4Wの回動軸O2、O3、O5のそれぞれがX軸に平行であり、かつ、回動軸O4、O6のそれぞれがY軸に平行である。前述のように、回転体であるワークWの中心軸AXが回動軸O6に一致することから、中心軸AXもY軸に平行である。このため、第1印刷領域RP1および第2印刷領域RP2の両方がヘッド3aのノズル面FNにできるだけ沿うように配置される。
【0107】
図8は、第1実施形態の第1印刷動作MP1の実行時のX移動機構2XおよびZ移動機構2Zを説明するための図である。
図8では、第1印刷動作MP1の実行中におけるヘッド3a_1~3a_4の状態が示されており、多関節ロボット4Wのアーム240等の図示は省略されている。ヘッド3a_1は、ヘッドユニット3_1の有するヘッド3aであり、ヘッド3a_2は、ヘッドユニット3_2の有するヘッド3aであり、ヘッド3a_3は、ヘッドユニット3_3の有するヘッド3aであり、ヘッド3a_4は、ヘッドユニット3_4の有するヘッド3aである。ただし、以下では、ヘッド3a_1~3a_4を区別せずにヘッド3aという場合がある。
【0108】
図8に示すように、第1印刷動作MP1では、X移動機構2Xがヘッド3a_1~3a_4およびセンサーユニット30をX1方向である移動方向DSに移動させるとともに、Z移動機構2Z_1~2Z_4がヘッド3a_1~3a_4をワークWの面WFに沿うようにZ軸に沿って移動させながら、ヘッド3a_1~3a_4が印刷データに基づいて面WFに向けてインクを吐出する。
【0109】
ここで、第1印刷動作MP1におけるヘッド3a_1~3a_4の移動経路RU1は、前述の経路情報Daの示す位置により規定される。また、移動経路RU1は、例えば、ヘッド3a_1~3a_4のノズルNとワークWとのZ軸に沿う方向での距離を一定とするように設定される。なお、移動経路RU1の少なくとも一部は、ヘッド3a_1~3a_4のノズルNとワークWとのZ軸に沿う方向での距離を変化するように設定されてもよい。センサーユニット30の移動経路は、特に限定されないが、例えば、移動経路RU1よりもZ1方向に退避した経路である。また、第1印刷動作MP1の実行中、センサーユニット30は、必要に応じて動作させればよい。
【0110】
第1印刷動作MP1の開始指示があると、X移動機構2Xの動作によりヘッド3a_1~3_4のヘッド3aがワークWの面WFに対してX2方向の領域に位置した状態からX1方向に移動する。ここで、前述のように、ヘッドユニット3_1~3_4がこの順でX2方向に並ぶので、ヘッド3a_1~3a_4は、ヘッド3a_1を先頭として、最後尾のヘッド3a_4が面WF上を過ぎるまでX1方向に移動する。ここで、ヘッド3a_1~3a_4は、Z軸に沿う方向にみてワークWの面WFに順に重なった後にZ移動機構2Z_1~2Z_4の動作によりワークWの面WFに沿うようにZ軸に沿って移動しながら、面WFの第1印刷領域RP1に向けてインクを吐出する。ここで、第1印刷動作MP1の実行中において多関節ロボット4Wは動作しない。これにより、第1印刷動作MP1の実行中のワークWの位置および姿勢が安定する。
【0111】
以上のように、立体物印刷装置1は、第1印刷動作MP1を実行する。ここで、第1印刷動作MP1の実行中において多関節ロボット4Wは動作しない。このように、多関節ロボット4Wの動作による振動または速度の変動を防止しつつ、第1印刷動作MP1を行うことにより、印刷の画質低下を抑制することができる。ここで、多関節ロボット4Wの動作は、複数の関節Jの回転動作の組み合わせであることから、振動または速度の変動を生じやすいのに対し、Z移動機構2ZおよびX移動機構2Xの動作は、単純な直線動作であることから、動作精度を高めやすい。したがって、多関節ロボット4Wの動作を停止させつつ、Z移動機構2ZとX移動機構2Xとの動作により印刷動作を行うことにより、画質の低下が抑制される。
【0112】
図9は、第1実施形態のヘッド退避動作MEおよびフィード動作MFを説明するための図である。本実施形態のヘッド退避動作MEは、第1印刷動作MP1とフィード動作MFとの間の期間において、
図9に示すように、Z移動機構2Zの動作により、ヘッド3aがワークWから離れる方向に移動する。本実施形態においては、Z移動機構2Z_1~2Z_4の動作により、ヘッド3aが第1印刷動作の実行中における位置からZ1方向に向かって移動する。つまり、ヘッド3aが上昇する。このため、フィード動作MFの実行中にワークWに対してヘッド3aを退避させることができる。この結果、フィード動作MFの実行中にワークWに対してヘッド3aの接触が防止される。ここで、ワークWに対するヘッド3aの退避距離は、特に限定されないが、例えば、数cm~数10cm程度である。なお、X移動機構2Xの動作によりヘッド3aがワークWから十分に離れる方向に移動可能である場合、Z移動機構2Zを動作させずに、X移動機構2Xの動作によりワークWに対してヘッド3aを退避させてもよい。また、後述の変形例1のように、Y移動機構4Yの動作により、ヘッド退避動作MEが実行されてもよい。
【0113】
フィード動作MFは、ワークWの第2印刷領域RP2が第2印刷動作MP2の実行時にヘッド3aの直下に位置し得るように、多関節ロボット4Wを動作させずに、Y移動機構4Yを動作させる。ここで、ワークWの移動距離は、前述の
図6に示す距離ΔYである。
【0114】
図9に示す例では、フィード動作MFの実行期間にわたり、多関節ロボット4Wの回動軸O2、O3、O5のそれぞれがX軸に平行であり、かつ、回動軸O4、O6のそれぞれがY軸に平行である。前述のように、回転体であるワークWの中心軸AXが回動軸O6に一致することから、中心軸AXもY軸に平行である。
【0115】
以上のように、フィード動作MFは、第1印刷動作MP1と第2印刷動作MP2との間の期間において、Y移動機構4Yが動作し、かつ、多関節ロボット4Wは動作しない。このように、第1印刷動作MP1による印刷パスと第2印刷動作MP2による印刷パスとの間の期間において、多関節ロボット4Wの動作を停止させた状態で、Y移動機構4Yの動作によるフィード動作MFを実行することができる。ここで、多関節ロボット4Wの動作は、複数の回転動作の組み合わせであることから、振動または速度の変動を生じやすいのに対し、Y移動機構4Yの動作は、単純な直線動作であることから、動作精度を高めやすい。したがって、多関節ロボット4Wの動作を停止させつつ、Y移動機構4Yの動作によるフィード動作MFを行うことにより、連続した印刷画像における印刷パス間の位置ズレを抑制することができる。
【0116】
特に、前述のように、第1印刷領域RP1の一部は第2印刷領域RP2と重複し、かつ、第1印刷領域RP1の他の一部は第2印刷領域RP2と重複しない場合、これらの領域間での位置決め精度が低いと、大幅な画質の劣化が生じてしまう。したがって、この場合、多関節ロボット4Wを動作させずに、ワークWをY軸に沿って高精度に移動させるフィード動作MFを実行することによる効果が顕著である。
【0117】
図10は、第1実施形態の第2印刷動作MP2を説明するための図である。第2印刷動作MP2の実行中の多関節ロボット4Wは、第2印刷領域RP2がヘッド3aの直下に位置するように、ワークWを支持する。
【0118】
図10に示す例では、多関節ロボット4Wの回動軸O2、O3、O5のそれぞれがX軸に平行であり、かつ、回動軸O4、O6のそれぞれがY軸に平行である。前述のように、回転体であるワークWの中心軸AXが回動軸O6に一致することから、中心軸AXもY軸に平行である。
【0119】
第2印刷動作MP2では、第1印刷動作MP1と同様、X移動機構2Xがヘッド3a_1~3a_4およびセンサーユニット30をX軸に沿って移動させるとともに、Z移動機構2Z_1~2Z_4がヘッド3a_1~3a_4をワークWの面WFに沿うようにZ軸に沿って移動させながら、ヘッド3a_1~3a_4が印刷データに基づいて面WFの第2印刷領域RP2に向けてインクを吐出する。ここで、第2印刷動作MP2の実行中において多関節ロボット4Wは動作しない。これにより、第2印刷動作MP2の実行中のワークWの位置および姿勢が安定する。
【0120】
ここで、第2印刷動作MP2におけるヘッド3a_1~3a_4の移動経路RU2は、第1印刷動作MP1におけるヘッド3a_1~3a_4の移動経路RU1と同一であっても異なっていてもよい。
【0121】
以上の立体物印刷装置1の動作、つまり、立体物印刷装置1を用いた印刷方法により、ワークWの第1印刷領域RP1および第2印刷領域RP2に印刷を行うことができる。
【0122】
以上の第1実施形態では、多関節ロボット4WがワークWを支持するので、ワークWの立体的な形状によらず、ヘッド3a_1~3a_4に対する所望の姿勢でワークWを設置することができる。このため、Z移動機構2Z_1~2Z_4とX移動機構2Xとを動作させつつ、ワークW上の第1印刷領域RP1および第2印刷領域RP2に向けて高精度にヘッド3a_1~3a_4からインクを吐出させることができる。このように、ワークWの設置を容易としつつ、立体的なワークWに対して高精度な印刷を行うことができる。
【0123】
また、本実施形態では、第1印刷動作MP1による印刷パスと第2印刷動作MP2による印刷パスとの間の期間において、多関節ロボット4Wの動作を停止させた状態で、Y移動機構4Yの動作によるフィード動作MFを実行することにより、連続した印刷画像における印刷パス間の位置ズレを抑制することができる。
【0124】
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0125】
本実施形態の後述の立体物印刷装置1Aは、動作が異なること以外は、前述の第1実施形態の立体物印刷装置1と同様に構成される。なお、本実施形態では、第1実施形態のフィード動作MFおよび第2印刷動作MP2を行わない場合、Y移動機構4Yが省略されてもよい。
【0126】
図11は、第2実施形態に係る立体物印刷装置1Aの動作の流れを示す図である。立体物印刷装置1Aの動作の流れとは、立体物印刷装置1Aを用いた印刷方法とも表現される。立体物印刷装置1Aは、
図11に示すように、搬送動作MCと第1印刷動作MP1とヘッド退避動作MEとワーク回転動作MRと第3印刷動作MP3とをこの順に実行する。なお、本実施形態の搬送動作MCと第1印刷動作MP1とヘッド退避動作MEとのそれぞれは、第1実施形態と同様である。
【0127】
ワーク回転動作MRは、多関節ロボット4Wが動作することによりワークWの姿勢を変更する。これにより、ワークWの印刷対象となる領域が変更される。
【0128】
第3印刷動作MP3は、Z移動機構2Z_1~2Z_4とX移動機構2Xとを動作させつつ、ワークW上の第1印刷領域RP1とは異なる第3印刷領域RP3に向けてヘッド3a_1~3a_4からインクを吐出させる。これにより、第3印刷領域RP3に印刷が行われる。ここで、多関節ロボット4Wは、動作しない。これにより、ワークWの姿勢が安定するので、多関節ロボット4Wの動作による画質低下が防止される。
【0129】
図12は、第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3を説明するための図である。
図12では、第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3がワークWの中心軸AXまわりの側面に互いに異なる周方向の位置で設定される場合が例示される。また、
図6では、ワークWの中心軸AXが多関節ロボット4Wの回動軸O6に一致する場合が例示される。なお、本実施形態の第1印刷領域RP1は、前述の第1実施形態の第1印刷領域RP1と同様である。
第3印刷動作MP3の実行時には、ワークW上の第1印刷領域RP1とは異なる第3印刷領域RP3に印刷が行われる。
図12に示す例では、第3印刷領域RP3が第1印刷領域RP1とは中心軸AXまわりに180°異なる位置である。ただし、中心軸AXに沿う方向において、第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3の少なくとも一部は、互いに重複する。
【0130】
第3印刷領域RP3には、X移動機構2Xの動作により移動経路RU3に沿って始点PS3から終点PE3に移動するヘッド3aから吐出されたインクが付与される。移動経路RU3は、Z軸に沿う方向にみてX軸に平行に延びる経路である。
図12では、ワークWからみた移動経路RU3が示されるが、実空間では、ワーク回転動作MRの実行後に第3印刷動作MP3が実行されるので、移動経路RU3が移動経路RU1と略一致する。なお、移動経路RU3の方向は、移動経路RU1の方向と同方向であってもよいし異なる方向であってもよい。
【0131】
図13は、第2実施形態の第1印刷動作MP1を説明するための図である。
図13に示すように、本実施形態の第1印刷動作MP1は、前述の第1実施形態の第1印刷動作MP1と同様に行われる。なお、ワーク回転動作MR後に第3印刷領域RP3への印刷が可能であれば、本実施形態の第1印刷動作MP1が前述の第1実施形態の第1印刷動作MP1と異なる動作を含んでもよい。
【0132】
図14は、第2実施形態のヘッド退避動作MEおよびワーク回転動作MRを説明するための図である。
図14に示すように、本実施形態のヘッド退避動作MEは、前述の第1実施形態のヘッド退避動作MEと同様に行われる。ただし、ワークWに対するヘッド3aの退避距離は、ワーク回転動作MRの実行時にワークWにヘッド3aが接触しない程度であり、特に限定されないが、例えば、数cm~数10cm程度である。なお、X移動機構2Xの動作によりヘッド3aがワークWから離れる方向に十分に移動可能である場合、Z移動機構2Zを動作させずに、X移動機構2Xの動作によりワークWに対してヘッド3aを退避させてもよい。また、後述の変形例1のように、Y移動機構4Yの動作により、ヘッド退避動作MEが実行されてもよい。
【0133】
ワーク回転動作MRは、第1印刷動作MP1と第3印刷動作MP3との間の期間において、多関節ロボット4Wが動作することによりワークWの姿勢を変更する。ここで、ワーク回転動作MRは、ワークWの第3印刷領域RP3が第3印刷動作MP3の実行時にヘッド3aの直下に位置し得るように、多関節ロボット4Wが動作する。
【0134】
このように、多関節ロボット4Wの動作によりワークWの姿勢を調整することにより、様々な立体的形状のワークWに対して容易に印刷を行ったり、同一のワークWの互いに異なる方向を向く領域である第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3に対しても容易に印刷を行ったりすることができる。
【0135】
図14に示す例では、フィード動作MFの実行期間にわたり、多関節ロボット4Wの回動軸O2、O3、O5のそれぞれがX軸に平行であり、かつ、回動軸O4、O6のそれぞれがY軸に平行である。前述のように、回転体であるワークWの中心軸AXが回動軸O6に一致することから、中心軸AXもY軸に平行である。
【0136】
本実施形態のワーク回転動作MRは、関節J6のみの回動により行われる。なお、回動軸O6が回動軸O4に一致することから、関節J6の回動に代えて、または、関節J6の回動に加えて、関節J4の回動によっても、ワーク回転動作MRを実行することができる。ただし、関節J4の負荷が関節J6の負荷に比べて大きいことから、ワーク回転動作MRの精度を高める観点から、関節J6のみの回動によりワーク回転動作MRを行うことが好ましい。また、関節J4のみを回転する場合は、その先の関節J5に位置決め誤差があった場合に影響を受けやすくなるため、最も先端に位置する関節J6のみを回動する方が好ましい。
【0137】
ここで、多関節ロボット4Wの有する互いに異なる回動軸まわりに回動可能な関節Jの数をNとした場合、本実施形態では、Nは、6個である。N個の関節のうちワーク回転動作MRの実行中において回動する関節の数をM個とした場合、Mは、1個であり、Nより小さい自然数である。このように、ワーク回転動作MRに用いる関節Jの数を少なくすることにより、多関節ロボット4Wの動作によるワークWの位置精度の低下を抑制することができる。この結果、第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3のそれぞれに対する印刷画像の位置ズレを抑制することができる。
【0138】
また、ワーク回転動作MRの実行中において回動する関節J6は、「第1関節」の一例であり、N個の関節のうち、最も先端に近い関節である。すなわち、関節J6は、関節J1~J6のうち最も負荷の少ない関節である。このように、できるだけ先端に近い1個の関節J6のみを用いてワーク回転動作MRを行うことにより、多関節ロボット4Wの動作によるワークWの位置精度の低下を抑制することができる。この結果、第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3のそれぞれに対する印刷画像の位置ズレを抑制することができる。
【0139】
なお、第3印刷領域RP3の位置またはワークWの設置姿勢等によっては、関節J5ののみの回動によりワーク回転動作MRが実行されてもよい。ここで、関節J5は、「第2関節」の一例であり、第1関節に次いで先端に近い関節である。すなわち、関節J5は、関節J1~J6のうち関節J6の次に負荷の少ない関節である。このため、この場合であっても、ワーク回転動作MRを行うことにより、多関節ロボット4Wの動作によるワークWの位置精度の低下を抑制することができる。
【0140】
ここで、関節J6の回動軸O6とY軸とが互いに平行であるため、関節J6のみを用いてワーク回転動作MRを行う場合、第1印刷動作MP1および第3印刷動作MP3の印刷開始位置を一致させることが容易である。この結果、第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3のそれぞれに対する印刷画像の位置ズレを抑制することができる。
【0141】
さらに、関節J5の回動軸O5とX軸とが互いに平行であるため、関節J5のみを用いてワーク回転動作MRを行う場合であっても、第1印刷動作MP1および第3印刷動作MP3の印刷開始位置を一致させることが容易である。この結果、第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3のそれぞれに対する印刷画像の位置ズレを抑制することができる。
【0142】
本実施形態の立体物印刷装置1Aは、第1印刷動作MP1よりも前に多関節ロボット4WがワークWを搬送する搬送動作MCを実行するが、ワーク回転動作MRの実行中において回動する関節Jの回転加速度は、搬送動作MCよりもワーク回転動作MRにおいて小さいことが好ましい。このように、搬送動作MCよりもワーク回転動作MRにおいて加速度を小さくすることにより、画質の低下を抑制することができる。ここで、搬送動作MCの段階においては、ワークW上にインクが付与されていないため当該加速度は問題にならない。一方、ワーク回転動作MRの段階は、第1印刷動作MP1の実行によりヘッド3a_1~3a_4からインクが付与された後であり、ワーク回転動作MRの加速度が大きいと、十分に硬化または固化していないインクがワークW上で移動してしまう場合がある。特に、ヘッド3a_1~3a_4に用いるインクの種類が異なり、かつ、複数種のインク滴が互いの移動によって接近する場合、混色が生じることにより色合いが変化しまうので、画質が大幅に低下する場合がある。そこで、このような画質低下を抑制するべく、ワーク回転動作MRの加速度が搬送動作MCの加速度よりも小さくなるように設定されることが好ましい。
【0143】
以上のように、立体物印刷装置1Aは、第1印刷動作MP1とワーク回転動作MRとの間の期間において、Z移動機構2Z_1およびZ移動機構2Z_2の動作により、ヘッド3a_1およびヘッド3a_2がワークWから離れる方向に移動するヘッド退避動作MEを実行する。このため、ワーク回転動作MRの実行中にワークWに対してヘッド3a_1~3a_4を退避させることができる。この結果、ワーク回転動作MRの実行中にワークWに対してヘッド3a_1~3a_4の接触が防止される。
【0144】
図15は、第2実施形態の第3印刷動作MP3を説明するための図である。第3印刷動作MP3の実行中の多関節ロボット4Wは、第3印刷領域RP3がヘッド3aの直下に位置するように、ワークWを支持する。
【0145】
図15に示す例では、多関節ロボット4Wの回動軸O2、O3、O5のそれぞれがX軸に平行であり、かつ、回動軸O4、O6のそれぞれがY軸に平行である。前述のように、回転体であるワークWの中心軸AXが回動軸O6に一致することから、中心軸AXもY軸に平行である。
【0146】
第3印刷動作MP3では、第1印刷動作MP1と同様、X移動機構2Xがヘッド3a_1~3a_4およびセンサーユニット30をX軸に沿って移動させるとともに、Z移動機構2Z_1~2Z_4がヘッド3a_1~3a_4をワークWの面WFに沿うようにZ軸に沿って移動させながら、ヘッド3a_1~3a_4が印刷データに基づいて面WFに向けてインクを吐出する。ここで、第3印刷動作MP3の実行中において多関節ロボット4Wは動作しない。これにより、第3印刷動作MP3の実行中のワークWの位置および姿勢が安定する。
【0147】
このように、第3印刷動作MP3の実行中において多関節ロボット4Wは動作させないことにより、第3印刷領域RP3に対して高精度な印刷を行うことができる。
【0148】
ここで、第2印刷動作MP2におけるヘッド3a_1~3a_4の移動経路RU2は、第1印刷動作MP1におけるヘッド3a_1~3a_4の移動経路RU1と同一であっても異なっていてもよい。
【0149】
以上の立体物印刷装置1Aの動作、つまり、立体物印刷装置1Aを用いた印刷方法により、ワークWの第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3に印刷を行うことができる。
【0150】
以上の第2実施形態では、前述の第1実施形態と同様、多関節ロボット4WがワークWを支持するので、ワークWの立体的な形状によらず、ヘッド3a_1~3a_4に対する所望の姿勢でワークWを設置することができる。このため、Z移動機構2Z_1~2Z_4とX移動機構2Xとを動作させつつ、ワークW上の第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3に向けて高精度にヘッド3a_1~3a_4からインクを吐出させることができる。このように、ワークWの設置を容易としつつ、立体的なワークWに対して高精度な印刷を行うことができる。
【0151】
ここで、本実施形態では、第1印刷動作MP1と第3印刷動作MP3との間の期間において、多関節ロボット4Wの動作によるワーク回転動作MRを実行することにより、第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3が互いに逆方向を向く面であっても、第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3のそれぞれに対する印刷画像の位置ズレを抑制することができる。
【0152】
3.変形例
以上の例示における各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択される2以上の態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0153】
3-1.変形例1
図16は、変形例1のヘッド退避動作MEおよびワーク回転動作MRを説明するための図である。変形例1では、
図16に示すように、Y移動機構4Yの動作により、ヘッド退避動作MEが実行される。すなわち、変形例1のヘッド退避動作MEは、第1印刷動作MP1とワーク回転動作MRとの間の期間において、Y移動機構4Yの動作により、多関節ロボット4Wがヘッド3aから離れる方向に移動する。ここで、ワークWに対するヘッド3aの退避距離は、特に限定されないが、例えば、数cm~数10cm程度である。
【0154】
このように、立体物印刷装置1Aは、Y移動機構4Yの動作によりヘッド退避動作MEを実行してもよい。この場合であっても、ワークWに対してヘッド3a_1およびヘッド3a_2を退避させた状態で、ワーク回転動作MRを実行することができる。この結果、ワーク回転動作MRの実行中にワークWに対してヘッド3a_1およびヘッド3a_2の接触が防止される。また、この場合であっても、Y移動機構4Yが直動機構であるため、その後の第3印刷動作MP3のためにワークWの位置を元に戻しても、多関節ロボット4Wの動作に比べてワークWの位置の誤差が小さいので、第3印刷動作MP3において良好な画質を得ることができる。
【0155】
3-2.変形例2
前述の第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせることにより、第1印刷動作MP1、第2印刷動作MP2および第3印刷動作MP3を実行してもよい。例えば、第1実施形態の第2印刷動作MP2の実行後、ヘッド退避動作ME、ワーク回転動作MR、第3印刷動作MP3をこの順で実行してもよい。この場合、必要に応じて、第2印刷動作MP2の実行後のヘッド退避動作MEと第3印刷動作MP3との間の期間にフィード動作MFが実行される。また、第1印刷動作MP1のみを実行してもよい。この場合、フィード動作MF、ヘッド退避動作MEおよびワーク回転動作MRは、省略されてもよい。
【0156】
3-3.変形例3
前述の形態では、ヘッド3aをZ軸に沿って移動させるZ移動機構2Zの数が4個である態様が例示されるが、この態様に限定されず、当該数またはヘッド3aの数が2個または3個でもよいし、5個以上でもよい。ここで、当該数が3個以上の場合、印刷時におけるX軸に沿う移動方向に並ぶ任意の2個のZ移動機構2Zのうち、一方のZ移動機構2Zが「第1のZ移動機構」に相当し、他方のZ移動機構2Zが「第2のZ移動機構」に相当する。例えば、前述の形態において、Z移動機構2Z_1~2Z_4のうち、任意の1つのZ移動機構2Zを「第1のZ移動機構」とし、他の任意の1つのZ移動機構2Zを「第2のZ移動機構」として捉えればよい。
【0157】
ここで、第1のZ移動機構に相当するZ移動機構2Zの動作によりZ軸に沿って移動するヘッド3aが「第1ヘッド」に相当し、第2のZ移動機構に相当するZ移動機構2Zの動作によりZ軸に沿って移動するヘッド3aが「第2ヘッド」に相当する。
【0158】
3-4.変形例4
前述の形態では、多関節ロボット4Wが6軸の多関節ロボットである態様が例示されるが、多関節ロボット4Wの有する関節の数は、6個に限定されず、2個以上5個以下であってもよいし、7個以上であってもよい。
【0159】
ここで、多関節ロボット4Wは、互いに異なる回動軸まわりに回動可能なN個(ただし、Nは、2以上の自然数である)の関節を有する場合、N個の関節のうち第2実施形態のワーク回転動作MRの実行中において回動する関節の数は、M個(ただし、Mは、Nより小さい自然数である)であればよい。この場合でも、多関節ロボット4Wの動作によるワークWの位置精度の低下を抑制することができる。この結果、第2実施形態と同様、第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3のそれぞれに対する印刷画像の位置ズレを抑制することができる。
【0160】
また、N個の関節のうち、最も先端に近い関節が「第1関節」であり、第1関節に次いで先端に近い関節が「第2関節」である。また、第2実施形態のワーク回転動作MRの実行中において回動する関節は、第1関節および第2関節のいずれか一方であればよい。この場合でも、多関節ロボット4Wの動作によるワークWの位置精度の低下を抑制することができる。この結果、第2実施形態と同様、第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3のそれぞれに対する印刷画像の位置ズレを抑制することができる。
【0161】
4.付記
以下、本開示のまとめを付記する。
【0162】
(付記1)本開示の好適例である第1態様の立体物印刷装置は、第1ノズルから液体を吐出する第1ヘッドと、第2ノズルから液体を吐出する第2ヘッドと、前記第1ヘッドをZ軸に沿って移動させる第1のZ移動機構と、前記第2ヘッドをZ軸に沿って移動させる第2のZ移動機構と、前記Z軸に交差するX軸に沿って前記第1のZ移動機構および前記第2のZ移動機構を一括して移動させることにより、前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドを前記X軸に沿って移動させるX移動機構と、前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドから吐出される液体の付与を受ける立体的なワークを支持する多関節ロボットと、を備える。
【0163】
以上の第1態様では、多関節ロボットがワークを支持するので、ワークの立体的な形状によらず、第1ヘッドおよび第2ヘッドに対する所望の姿勢でワークを設置することができる。このため、第1のZ移動機構と第2のZ移動機構とX移動機構とを動作させつつ、ワーク上の印刷領域に向けて高精度に第1ヘッドおよび第2ヘッドから液体を吐出させることができる。このように、ワークの設置を容易としつつ、立体的なワークに対して高精度な印刷を行うことができる。
【0164】
(付記2)第1態様の好適例である第2態様において、前記第1のZ移動機構と前記第2のZ移動機構と前記X移動機構とを動作させつつ、前記ワーク上の第1印刷領域に向けて前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドから液体を吐出させる第1印刷動作を実行し、
前記第1印刷動作の実行中において前記多関節ロボットは動作しない。以上の第2態様では、多関節ロボットの動作による振動または速度の変動を防止しつつ、印刷動作を行うことにより、印刷の画質低下を抑制することができる。ここで、多関節ロボットの動作は、複数の回転動作の組み合わせであることから、振動または速度の変動を生じやすいのに対し、Z移動機構およびX移動機構の動作は、単純な直線動作であることから、動作精度を高めやすい。したがって、多関節ロボットの動作を停止させつつ、第1のZ移動機構と第2のZ移動機構とX移動機構との動作により印刷動作を行うことにより、画質の低下が抑制される。
【0165】
(付記3)第2態様の好適例である第3態様において、前記Z軸および前記X軸に交差するY軸に沿って前記多関節ロボットを移動するY移動機構をさらに備える。以上の第3態様では、多関節ロボットを動作させずに、ワークをY軸に沿って高精度に移動させることができる。
【0166】
(付記4)第3態様の好適例である第4態様において、前記第1のZ移動機構と前記第2のZ移動機構と前記X移動機構とを動作させつつ、前記ワーク上の前記第1印刷領域と隣接する第2印刷領域に向けて前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドから液体を吐出させる第2印刷動作を実行し、前記第2印刷動作の実行中において前記多関節ロボットは動作せず、前記第1印刷動作と前記第2印刷動作との間の期間において、前記Y移動機構が動作し、かつ、前記多関節ロボットは動作しない。以上の第4態様では、第1印刷動作による印刷パスと第2印刷動作による印刷パスとの間の期間において、多関節ロボットの動作を停止させた状態で、Y移動機構の動作によるフィード動作を実行することができる。ここで、多関節ロボットの動作は、複数の回転動作の組み合わせであることから、振動または速度の変動を生じやすいのに対し、Y移動機構の動作は、単純な直線動作であることから、動作精度を高めやすい。したがって、多関節ロボットの動作を停止させつつ、Y移動機構の動作によるフィード動作を行うことにより、連続した印刷画像における印刷パス間の位置ズレを抑制することができる。
【0167】
(付記5)第4態様の好適例である第5対応において、前記第1印刷領域の一部は前記第2印刷領域と重複し、かつ、前記第1印刷領域の他の一部は前記第2印刷領域と重複しない。以上の第5態様では、第1印刷領域と第2印刷領域との一部同士が重複する場合、これらの領域間での位置決め精度が低いと、大幅な画質の劣化が生じてしまう。したがって、この場合、多関節ロボットを動作させずに、ワークをY軸に沿って高精度に移動させるフィード動作を実行することによる効果が顕著である。
【0168】
(付記6)第2態様の好適例である第6態様において、前記第1のZ移動機構と前記第2のZ移動機構と前記X移動機構とを動作させつつ、前記ワーク上の前記第1印刷領域とは異なる第3印刷領域に向けて前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドから液体を吐出させる第3印刷動作を実行し、前記第3印刷動作の実行中において前記多関節ロボットは動作せず、前記第1印刷動作と前記第3印刷動作との間の期間において、前記多関節ロボットが動作することにより前記ワークの姿勢を変更するワーク回転動作を実行する。以上の第6態様では、多関節ロボットの動作によりワークの姿勢を調整することにより、様々な立体的形状のワークに対して容易に印刷を行ったり、同一のワークの領域のうち互いに異なる方向を向く領域に対しても容易に印刷を行ったりすることができる。また、第3印刷動作の実行中において多関節ロボットは動作させないことにより、第3印刷領域に対して高精度な印刷を行うことができる。
【0169】
(付記7)第6態様の好適例である第7態様において、前記多関節ロボットは、互いに異なる回動軸まわりに回動可能なN個(ただし、Nは、2以上の自然数である)の関節を有し、前記N個の関節のうち前記ワーク回転動作の実行中において回動する関節の数は、M個(ただし、Mは、Nより小さい自然数である)である。以上の第7態様では、多関節ロボットの動作によるワーク位置精度の低下を抑制することができる。この結果、第1印刷領域および第3印刷領域のそれぞれに対する印刷画像の位置ズレを抑制することができる。
【0170】
(付記8)第7態様の好適例である第8態様において、前記N個の関節のうち、最も先端に近い関節を第1関節とし、前記第1関節に次いで先端に近い関節を第2関節としたとき、前記ワーク回転動作の実行中において回動する関節は、前記第1関節および前記第2関節のいずれか一方である。以上の第8態様では、多関節ロボットの動作によるワーク位置精度の低下を抑制することができる。この結果、第1印刷領域および第3印刷領域のそれぞれに対する印刷画像の位置ズレを抑制することができる。
【0171】
(付記9)第8態様の好適例である第9態様において、前記第2関節の回動軸と前記X軸とが互いに平行である。以上の第9態様では、第1印刷動作および第3印刷動作の印刷開始位置を一致させることが容易である。この結果、第1印刷領域および第3印刷領域のそれぞれに対する印刷画像の位置ズレを抑制することができる。
【0172】
(付記10)第8態様の好適例である第10態様において、前記第1関節の回動軸と前記Xおよび前記X軸に交差するY軸とが互いに平行である。以上の第10態様では、第1印刷動作および第3印刷動作の印刷開始位置を一致させることが容易である。この結果、第1印刷領域および第3印刷領域のそれぞれに対する印刷画像の位置ズレを抑制することができる。
【0173】
(付記11)第8態様の好適例である第11態様において、前記第1印刷動作よりも前に前記多関節ロボットが前記ワークを搬送する搬送動作を実行し、前記ワーク回転動作の実行中において回動する関節の回転加速度は、前記搬送動作よりも前記ワーク回転動作において小さい。以上の第11態様では、搬送動作よりもワーク回転動作において加速度を小さくすることにより、画質の低下を抑制することができる。ここで、搬送動作の段階においては、ワーク上にインクが付与されていないため問題にならない。一方、ワーク回転動作の段階は、第1ヘッドおよび第2ヘッドからインクが付与された後であり、ワーク回転動作の加速度が大きいと、十分に硬化または固化していないインクがワーク上で移動してしまう場合がある。特に、第1ヘッドおよび第2ヘッドに用いるインクの種類が異なり、かつ、2種類のインク滴が互いの移動によって接近する場合、混色が生じることにより色合いが変化しまうので、画質が大幅に低下する場合がある。そこで、このような画質低下を抑制するべく、ワーク回転動作の加速度が搬送動作の加速度よりも小さくなるように設定される。
【0174】
(付記12)第6態様の好適例である第12態様において、前記第1印刷動作と前記ワーク回転動作との間の期間において、前記第1のZ移動機構および前記第2のZ移動機構の動作により、前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドが前記ワークから離れる方向に移動するヘッド退避動作を実行する。以上の第12態様では、ワーク回転動作の実行中にワークに対して第1ヘッドおよび第2ヘッドを退避させることができる。この結果、ワーク回転動作の実行中にワークに対して第1ヘッドおよび第2ヘッドの接触が防止される。
【0175】
(付記13)第6態様の好適例である第13態様において、前記Z軸および前記X軸に交差するY軸に沿って前記多関節ロボットを移動するY移動機構をさらに備え、
前記第1印刷動作と前記ワーク回転動作との間の期間において、前記Y移動機構の動作により、前記多関節ロボットが前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドから離れる方向に移動するヘッド退避動作を実行する。以上の第13態様では、ワークに対して第1ヘッドおよび第2ヘッドを退避させた状態で、ワーク回転動作を実行することができる。この結果、ワーク回転動作の実行中にワークに対して第1ヘッドおよび第2ヘッドの接触が防止される。
【符号の説明】
【0176】
1…立体物印刷装置、1A…立体物印刷装置、2X…X移動機構、2Z_1…Z移動機構(第1のZ移動機構)、2Z_2…Z移動機構(第2のZ移動機構)、3a…ヘッド、3a_1…ヘッド(第1ヘッド)、3a_2…ヘッド(第2ヘッド)、3a_3…ヘッド、3a_4…ヘッド、4W…多関節ロボット、4Y…Y移動機構、J…関節、J1…関節、J2…関節、J3…関節、J4…関節、J5…関節、J6…関節、MC…搬送動作、ME…ヘッド退避動作、MF…フィード動作、MP1…第1印刷動作、MP2…第2印刷動作、MP3…第3印刷動作、MR…ワーク回転動作、N…ノズル、O1…回動軸、O2…回動軸、O3…回動軸、O4…回動軸、O5…回動軸、O6…回動軸、RP1…第1印刷領域、RP2…第2印刷領域、RP3…第3印刷領域、W…ワーク。