(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138841
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、車載装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20241002BHJP
【FI】
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049545
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 章渡
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】サービスに対する実質的な評価を可能にすること。
【解決手段】実施形態に係る情報処理装置は、コントローラを備える。コントローラは、ユーザ端末に対するサービスの提供処理を実行する。また、コントローラは、上記ユーザ端末と上記情報処理装置との通信障害が発生した時間帯および当該通信障害によって影響を受けた上記ユーザ端末の機能に関する情報を収集し、収集した上記情報に基づいて上記通信障害によるユーザの不満度を算出し、上記不満度に基づいて上記サービスに対する評価情報を生成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末に対するサービスの提供処理を実行するコントローラを備える情報処理装置であって、
前記コントローラは、
前記ユーザ端末と前記情報処理装置との通信障害が発生した時間帯および当該通信障害によって影響を受けた前記ユーザ端末の機能に関する情報を前記ユーザ端末から収集し、
収集した前記情報に基づいて前記通信障害によるユーザの不満度を算出し、
前記不満度に基づいて前記サービスに対する評価情報を生成する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記収集した前記情報の各要素が示す値を前記通信障害によって受ける影響が大きいほど重くなるように重み付けした重み値に基づいて前記不満度を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記収集した前記情報の各要素は、
前記ユーザが利用した前記機能、該機能の利用時間帯および該機能の重要度のうちの少なくともいずれかである、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ユーザ端末は車載装置であって、
前記収集した前記情報の各要素はさらに、
前記ユーザが前記機能を利用中の車両周囲の天候、交通状況および位置情報のうちの少なくともいずれかを含む、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記不満度を有する前記ユーザの数および前記サービスの単価に基づいて前記通信障害による推定損害額を算出する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項6】
サーバ装置から提供されるサービスの入出力制御を実行するコントローラを備え、
前記コントローラは、
ユーザの前記サービスの利用状況を含む車両の状況データを取得し、
前記サーバ装置から通信障害の復旧通知を受けた場合に、少なくとも前記ユーザの不満度に関連する要素を含む前記状況データを抽出して前記サーバ装置へ送信する、
車載装置。
【請求項7】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
ユーザ端末に対するサービスの提供処理を実行することと、
前記ユーザ端末と前記情報処理装置との通信障害が発生した時間帯および当該通信障害によって影響を受けた前記ユーザ端末の機能に関する情報を前記ユーザ端末から収集することと、
収集した前記情報に基づいて前記通信障害によるユーザの不満度を算出することと、
前記不満度に基づいて前記サービスに対する評価情報を生成することと、
を含む、情報処理方法。
【請求項8】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
ユーザが利用するユーザ端末に対するサービスの提供処理を実行することと、
通信障害が発生した時間帯の状況を含む状況データを前記ユーザ端末から収集することと、
収集した前記状況データに基づくビッグデータ処理によって前記ユーザの不満度を含む前記サービスに対する評価値を算出することと、
を含む、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、情報処理装置、車載装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クラウドサービス等のサービス提供事業者のシステム運用に対する評価指標の一つとして、サービス提供事業者とユーザとの間で合意されるSLA(Service Level Agreement)が知られている。
【0003】
SLAは、サービス提供事業者がサービス品質をどの程度まで保証するかを示す具体的な保証値を含む合意内容であり、保証値にはたとえばシステムの稼働率等が用いられる。また、SLAは、サービス品質が保証値を満たすことができなかった場合のユーザに対する補償内容等について定めておくことも多い。
【0004】
このようなSLAを用いたシステムに関しては、通信障害発生時に、サービス品質が保証値を満たすことができないSLA違反があったか否かを判定する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術には、サービスに対する実質的な評価を可能にするうえで、さらなる改善の余地がある。
【0007】
通信障害発生時には、常にすべてのユーザが一律に同等の損害を被ってしまうわけではない。たとえば、通信障害が発生しても、あるユーザはユーザ端末を使って利用中の機能に通信障害の影響がなく、あるユーザはそもそもサービスを利用していない等、種々の状況が存在するためである。したがって、通信障害が発生したと言っても、ユーザの状況等によってユーザの不満度は異なる。
【0008】
上述した従来技術は、単にSLA違反の存否を判定しているに過ぎず、ユーザの不満度まで考慮した実質的な評価を可能にするものではない。
【0009】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、サービスに対する実質的な評価を可能にする情報処理装置、車載装置および情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の一態様に係る情報処理装置は、ユーザ端末に対するサービスの提供処理を実行するコントローラを備える。前記コントローラは、前記ユーザ端末と前記情報処理装置との通信障害が発生した時間帯および当該通信障害によって影響を受けた前記ユーザ端末の機能に関する情報を前記ユーザ端末から収集し、収集した前記情報に基づいて前記通信障害によるユーザの不満度を算出し、前記不満度に基づいて前記サービスに対する評価情報を生成する。
【発明の効果】
【0011】
実施形態の一態様によれば、サービスに対する実質的な評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報処理方法の概要説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車載装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るサーバ装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、天候に関する重みの定義例を示す図である。
【
図5】
図5は、交通状況に関する重みの定義例を示す図である。
【
図6】
図6は、利用時間帯に関する重みの定義例を示す図である。
【
図7】
図7は、通信障害のランクに関する重みの定義例を示す図である。
【
図8】
図8は、通信障害内容とその通信障害により影響を受ける機能、および、その通信障害のランクの定義例を示す図である。
【
図9】
図9は、算出部が実行する算出処理の具体例を示す図である。
【
図10】
図10は、評価部が実行する評価処理の具体例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るサーバ装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する情報処理装置、車載装置および情報処理方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
また、以下では、実施形態に係る情報処理システムが、各車両Vに搭載された車載装置10と保険会社等との間で車両走行時や事故発生時の状況等を示す各種情報の連携や管理等を行う保険テレマティクスサービスシステム(以下、「保険テレマシステム1」と言う)である例を挙げる。実施形態に係る情報処理装置は、当該保険テレマシステム1における各種サービスを車載装置10や保険会社等にクラウドサービスとして提供するサーバ装置100であるものとする。以下では、「サービス」は、サーバ装置100が提供するとする。
【0015】
まず、実施形態に係る情報処理方法の概要について、
図1を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る情報処理方法の概要説明図である。
【0016】
図1に示すように、実施形態に係る保険テレマシステム1は、複数の車両V-1,V-2,…にそれぞれ搭載された車載装置10-1,10-2…と、サーバ装置100と、1以上の保険会社装置200と、1以上の保守事業者装置300とを含む。
【0017】
なお、以下では、車両V-1,V-2…をそれぞれ区別する必要がない場合には、「車両V」と記載する。同様に、車載装置10-1,10-2…をそれぞれ区別する必要がない場合には、「車載装置10」と記載する。
【0018】
車載装置10は、カメラや加速度センサ、GPS(Global Positioning System)センサといった各種のセンサを有し、これらセンサのセンサデータに基づく車両走行時や事故発生時の状況等を示す状況データを取得する。また、車載装置10は、ネットワークNを介し、取得した状況データをサーバ装置100へ向けて送信可能に設けられる。
【0019】
ネットワークNは、インターネットやC-V2X(Cellular Vehicle to Everything)通信網等である。車載装置10は、たとえば通信型のドライブレコーダである。車載装置10は、保険テレマシステム1において、たとえば保険会社から保険契約者である車両Vのユーザへ貸与される。
【0020】
サーバ装置100は、たとえばクラウドサーバとして実現される。サーバ装置100は、各車載装置10から送信される状況データの連携や管理といった保険テレマシステム1における各種サービスを車載装置10や保険会社、保守事業者にクラウドサービスとして提供する。
【0021】
保険会社装置200は、サーバ装置100から提供されるクラウドサービスを保険会社において利用するためのコンピュータである。保険会社装置200は、たとえばPC(Personal Computer)等によって実現され、保険会社のオペレータ等によって利用される。
【0022】
保守事業者装置300は、サーバ装置100から提供されるクラウドサービスを保守事業者が利用するためのコンピュータである。保守事業者は、車載装置10の管理や発送、回収、メンテナンス等を委託された事業者である。保守事業者装置300は、保険会社装置200と同様にPC等によって実現され、保守事業者の保守担当者等によって利用される。
【0023】
サーバ装置100が提供するサービスの詳細については後ほど
図8に示すが、サーバ装置100は、保険会社向けサービスの一例として、事故情報管理や安全運転診断レポートの作成といったサービスを提供する。また、サーバ装置100は、保守事業者向けサービスの一例として、保険会社の指示に基づく車載装置10の発送回収作業等に関するサービスを提供する。
【0024】
このような構成の保険テレマシステム1において、通信障害が発生し、復旧したものとする(ステップS1)。通信障害復旧後、各車載装置10は、通信障害時間帯の状況を含む状況データをサーバ装置100へ送信する(ステップS2)。サーバ装置100は、これら状況データを収集する(ステップS3)。
【0025】
そして、サーバ装置100は、収集した状況データから通信障害の影響を受けた機能に関する情報を抽出する(ステップS4)。なお、ここに言う「機能」は主に、ユーザが車載装置10等のユーザ端末を使って利用するユーザ端末の機能を指す。ただし、サーバ装置100がサービスを提供するにあたっての関連機能(管理機能等)を含む場合もある。以下、当該機能に関する情報を適宜「抽出パラメータ」と言う。抽出パラメータは、たとえばユーザが利用していた機能(アクション)や、利用時間帯(タイムスタンプ)や、天候や、交通状況や、位置情報等である。
【0026】
そして、サーバ装置100は、抽出した情報に基づいて通信障害によるユーザの不満度を算出する(ステップS5)。本実施形態では、サーバ装置100は、抽出パラメータの各値を通信障害によって受ける影響が大きい(困る、深刻である等)ほど重くなる重み値へ変換し、この重み値の積としてユーザの不満度を算出する。
【0027】
不満度の具体的算出方法は後に詳述するが、不満度とは抽出パラメータの状況から推定されるユーザの不満感情の度合いを表す数値のことである。ユーザの利用状況は様々であるため、通信障害発生時にユーザが影響されるシステムの機能、環境等は異なる。これにより、同じ通信障害が発生したとしてもユーザの不満度は異なるため、単純にシステムの稼働率だけを見ても実質的に通信障害がユーザに及ぼした悪影響の評価指標にはならない。
【0028】
そして、サーバ装置100は、算出した不満度に基づいてサービスに対する評価情報を生成する(ステップS6)。当該評価情報は、評価値としてたとえば通信障害の影響を受けたユーザ全体の不満度や、通信障害による全ユーザの不満度、また、通信障害の影響を受けたユーザの割合や、通信障害による推定損失額等を含む。
【0029】
これにより、ユーザの不満度まで考慮したサービスに対する実質的な評価が可能となる。
【0030】
このように、実施形態に係る情報処理方法では、サーバ装置100が、車載装置10に対するサービスの提供処理を実行し、車載装置10とサーバ装置100との通信障害が発生した時間帯および当該通信障害によって影響を受けた車載装置10の機能に関する情報を車載装置10から収集し、収集した上記情報に基づいて通信障害によるユーザの不満度を算出し、上記不満度に基づいて上記サービスに対する評価情報を生成する。
【0031】
したがって、実施形態に係る情報処理方法によれば、サーバ装置100が提供するサービスに対する実質的な評価が可能となる。以下、上述した実施形態に係る情報処理方法を適用した保険テレマシステム1の構成例について、より具体的に説明する。なお、上述した不満度の算出方法については、具体的な数値等を示しつつ
図4~
図10を用いて説明する。
【0032】
図2は、実施形態に係る車載装置10の構成例を示すブロック図である。なお、
図2および後に示す
図3では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0033】
換言すれば、
図2および
図3に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0034】
また、
図2および
図3を用いた説明では、既に説明済みの構成要素については、説明を簡略するか、説明を省略する場合がある。
【0035】
図2に示すように、実施形態に係る車載装置10は、センサ部11と、HMI(Human Machine Interface)部12と、通信部13と、記憶部14と、コントローラ15とを有する。
【0036】
センサ部11は、カメラや、加速度センサや、GPSセンサといった各種のセンサである。HMI部12は、ユーザに対する入力および出力に関するインターフェイス部品を提供する構成要素である。
【0037】
HMI部12は、ユーザからの入力操作を受け付ける入力インターフェイスを含む。入力インターフェイスは、たとえばタッチパネルによって実現される。なお、入力インターフェイスは、キーボードや、マウスや、ペンタブレットや、マイク等によって実現されてもよい。また、入力インターフェイスは、GUI(Graphical User Interface)等のソフトウェア部品によって実現されてもよい。
【0038】
また、HMI部12は、ユーザに対して画像情報や音声情報を提示する出力インターフェイスを含む。出力インターフェイスは、たとえばディスプレイやスピーカ等によって実現される。
【0039】
通信部13は、ネットワークアダプタ等によって実現される。通信部13は、前述のネットワークNと無線接続され、サーバ装置100との間で情報の送受信を行う。
【0040】
記憶部14は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の記憶デバイスによって実現される。
図2の例では、記憶部14は、記録情報14aを記憶する。
【0041】
記録情報14aは、後述する取得部15aによってセンサ部11から取得され、記録部15cによって記録される前述の状況データ群を含む情報である。
【0042】
コントローラ15は、いわゆるプロセッサや制御部に相当する。コントローラ15は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等によって、記憶部14に記憶されている図示略の各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、コントローラ15は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0043】
コントローラ15は、取得部15aと、入出力制御部15bと、記録部15cと、抽出部15dと、送信部15eとを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0044】
取得部15aは、センサ部11から出力されるセンサデータを取得する。また、取得部15aは、通信部13を介し、サーバ装置100から送信される情報を取得する。サーバ装置100から送信される情報は、保険テレマシステム1において提供されるクラウドサービスに関する入出力情報を含む。当該入出力情報は、通信障害が発生した場合の通信障害通知や、通信障害が復旧した場合の通信障害復旧通知等を含む。
【0045】
入出力制御部15bは、取得部15aによって取得されたサーバ装置100からの入出力情報についてのHMI部12に対する入出力制御を実行する。
【0046】
記録部15cは、取得部15aによって取得されたセンサ部11からのセンサデータに基づく状況データを記録情報14aへ記録する。
【0047】
抽出部15dは、記録情報14aからサーバ装置100の送信対象となる状況データを抽出する。抽出部15dは、取得部15aによってサーバ装置100からの障害復旧通知が取得された場合に、少なくともユーザの不満度に関連する要素を含む状況データを抽出する。ここに言う「ユーザの不満度に関連する要素」は、前述の抽出パラメータに対応する。
【0048】
送信部15eは、通信部13を介し、抽出部15dによって抽出された状況データをサーバ装置100へ向けて送信する。
【0049】
次に、サーバ装置100の構成例について、
図3を用いて説明する。
図3は、実施形態に係るサーバ装置100の構成例を示すブロック図である。
【0050】
図3に示すように、実施形態に係るサーバ装置100は、通信部101と、記憶部102と、コントローラ103とを有する。
【0051】
通信部101は、ネットワークアダプタ等によって実現される。通信部101は、前述のネットワークNと有線または無線で接続され、車載装置10、保険会社装置200および保守事業者装置300との間で情報の送受信を行う。
【0052】
記憶部102は、RAM、フラッシュメモリ等の記憶デバイス、または、ハードディスク装置、光ディスク装置等のディスク装置などによって実現される。
図3の例では、記憶部102は、サービス関連情報DB(Database)102aと、通信障害対応情報DB102bと、収集情報DB102cと、算出関連情報102dと、評価情報DB102eとを記憶する。
【0053】
サービス関連情報DB102aは、保険テレマシステム1において提供される各種のサービスに関する情報の基幹データベースである。サービス関連情報DB102aは、保険契約者のアカウントや、アカウントに紐付くユーザ属性情報、車両情報、車載装置10の情報、サービス利用履歴情報、事故情報等の種々の情報を含む。サービス関連情報DB102aは、後述するサービス提供部103aによって実行されるサービスの提供処理において利用される。
【0054】
通信障害対応情報DB102bは、保険テレマシステム1において発生した通信障害に関する情報のデータベースであり、通信障害の内容や対応履歴等を含む。
【0055】
収集情報DB102cは、各車載装置10から収集された状況データが格納されるデータベースである。算出関連情報102dは、前述のユーザの不満度の算出に関する情報である。算出関連情報102dは、前述の抽出パラメータや、重みに関する定義情報等を含む。算出関連情報102dは、後述する算出部103dによって用いられる。
【0056】
評価情報DB102eは、後述する評価部103eによって生成されるサービスに対する評価情報が格納されるデータベースである。
【0057】
コントローラ103は、いわゆるプロセッサや制御部に相当する。コントローラ103は、CPUやMPU、GPU等によって、記憶部102に記憶されている図示略の各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、コントローラ103は、ASICやFPGA等の集積回路により実現することができる。
【0058】
コントローラ103は、サービス提供部103aと、通信障害対応処理部103bと、収集部103cと、算出部103dと、評価部103eとを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0059】
サービス提供部103aは、車載装置10や保険会社装置200、保守事業者装置300からの要求に応じて、保険テレマシステム1における各種のサービスの提供処理を実行する。
【0060】
通信障害対応処理部103bは、通信障害の発生を検知した場合に、この通信障害の対応処理を実行する。なお、ここに言う「通信障害」は、システムを維持・管理するうえでのパッチ適用作業といったメンテナンス作業等を含む概念である。こうしたメンテナンス作業の場合、通信障害対応処理部103bは、通信部101を介し、当該作業によって生じるシステム停止等の内容を予め車載装置10や、保険会社装置200や、保守事業者装置300へ通知する。
【0061】
また、通信障害対応処理部103bは、メンテナンス作業以外の通信障害が発生した場合、通信部101を介し、通信障害発生通知を車載装置10や、保険会社装置200や、保守事業者装置300へ通知する。また、通信障害対応処理部103bは、通信障害が復旧した場合、通信部101を介し、通信障害復旧通知を車載装置10や、保険会社装置200や、保守事業者装置300へ通知する。
【0062】
収集部103cは、通信部101を介し、各車載装置10から状況データを収集し、収集情報DB102cへ格納する。算出部103dは、通信障害復旧後に収集部103cによって収集された車載装置10からの状況データから通信障害の影響を受けた機能に関する情報、すなわち抽出パラメータを抽出する。
【0063】
また、算出部103dは、抽出した抽出パラメータに基づいて通信障害によるユーザの不満度を算出する。評価部103eは、算出部103dによって算出された不満度に基づいてサーバ装置100の提供するサービスに対する評価情報を生成し、評価情報DB102eへ格納する。
【0064】
ここで、算出部103dが実行する算出処理および評価部103eが実行する評価処理の具体例について、
図4~
図10を用いて説明する。
図4は、天候に関する重みの定義例を示す図である。また、
図5は、交通状況に関する重みの定義例を示す図である。
【0065】
また、
図6は、利用時間帯に関する重みの定義例を示す図である。また、
図7は、通信障害のランクに関する重みの定義例を示す図である。また、
図8は、通信障害内容とその通信障害により影響を受ける機能、および、その通信障害のランクの定義例を示す図である。
【0066】
また、
図9は、算出部103dが実行する算出処理の具体例を示す図である。また、
図10は、評価部103eが実行する評価処理の具体例を示す図である。
【0067】
通信障害の影響を受けた機能に関する抽出パラメータの一つとして、「天候」が挙げられる。
図4に示すように、天候は、たとえば「晴れ」、「曇り」の場合よりも「雨」や「雪」の場合の方が、重みが大きくなるように重み付けされる。これは、天候が「晴れ」、「曇り」の場合よりも「雨」や「雪」の場合の方が、たとえば事故発生時の事故情報の連携が通信障害によって行えないとなるとユーザは困る(通信障害による影響が大きい)ためである。
【0068】
同様の考え方から、
図5に示すように、「交通状況」は、混雑度が低い場合よりも高い場合の方が、重みが大きくなるように重み付けされる。また、
図6に示すように、「利用時間帯」は、通行車両や通行人が多く事故の目撃者等の存在も期待しやすい「昼」、「夕方」、「夜」の場合よりも、通行車両や通行人が少ない「朝」や「深夜」の方が重みが大きくなるように重み付けされる。
【0069】
なお、「昼」、「夕方」、「夜」の場合は、「昼」、「夕方」、「夜」の順に重みが大きくなるように重み付けされる。また、「朝」、「深夜」の場合は、「朝」、「深夜」、の順に重みが大きくなるように重み付けされる。
【0070】
また、機能の重要度とも言える通信障害の「ランク」は、
図7に示すように、「C」、「B」、「A」、「S」の順に重みが大きくなるように重み付けされる。
【0071】
通信障害内容とその通信障害により影響を受ける機能、および、その通信障害のランクの定義例は
図8に示す通りである。たとえば、通信障害内容が「サービス全停止」の場合の保険会社向けサービスまたは保険契約者向けサービスについては、機能の重要度に相当する通信障害の「ランク」は最高ランクの「S」となる。
【0072】
また、たとえば、通信障害内容が「セキュリティ通信障害」の場合の不正侵入による情報流出やデータ改ざん等については、保険会社向けや保険契約者向けといったサービス種別を問わず、通信障害の「ランク」は最高ランクの「S」となる。
【0073】
その他は、ランク「S」よりも通信障害によって受ける影響が小さくなる通信障害内容の順に、通信障害のランクは「A」、「B」、「C」と下がっていくように定義される。なお、通信障害内容の「ネットワーク通信障害」がキャリア(通信事業者)側の原因による場合、ランク「-」に示すように通信障害のランクは定義されない。これは、パッチ適用作業等の管理関連のメンテナンス作業についても同様である。
【0074】
図4~
図8に示した定義情報を前提として、たとえば22時前後に発生していたある通信障害の復旧後、収集部103cが各車載装置10から収集した状況データのうちから、
図9の上段に示すように通信障害時間帯に対応する6つのレコードが抽出されたものとする。
【0075】
すると、算出部103dは、
図9の下段に示すように、当該6つのレコードの「タイムスタンプ」、「アクション」、「天候」、「交通状況」の各抽出パラメータを
図4~
図8の定義情報に沿って重み値へ変換する。
【0076】
そして、算出部103dは、重み付けした各値の積としてユーザの不満度を算出する。
図9の例の場合、車載装置ID「0002」に該当する車載装置10を利用するユーザの不満度は、0.72(=0.9*1*0.8*1)となる。同様に、車載装置ID「0005」のユーザの不満度は0.54、車載装置ID「0001」、「0008」、「0007」のユーザの不満度は0.9、車載装置ID「0004」のユーザの不満度は0.855となる。このように、各パラメータの重みの値が大きいほどユーザの不満度は大きくなり、この値が大きくなるほどユーザは不満を抱える状態と推定される。
【0077】
そして、評価部103eは、算出部103dによって算出された不満度に基づいてサービスに対する評価情報を生成する。評価情報は、
図10に示すように、評価値として「通信障害の影響を受けたユーザ全体の不満度」、「通信障害の影響を受けたユーザの割合」、「通信障害による全ユーザの不満度」を含む。
【0078】
ここで、車載装置10の市場台数を説明の便宜上8台とする。すると、評価部103eは、
図9に示した各不満度の平均値から、
図10に示すように「通信障害の影響を受けたユーザ全体の不満度」を0.8025として算出する。また、評価部103eは、「通信障害の影響を受けたユーザの割合」を0.75(=6/8)として算出する。また、評価部103eは、「通信障害による全ユーザの不満度」を0.6019(≒0.8025*0.75)として算出する。
【0079】
また、評価部103eは、通信障害による推定損失額を算出する。評価部103eは、たとえば通信障害時間帯の利用ユーザ数(すなわち、不満度を有するユーザ数)とサービスの単価から推定損失額を算出する。
【0080】
このように、システム通信障害によるユーザの不満度を算出することで、たとえば稼働率だけからでは分からないサービスに対する実質的な評価を行うことが可能となる。
【0081】
次に、サーバ装置100が実行する処理手順について、
図11を用いて説明する。
図11は、実施形態に係るサーバ装置100が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0082】
サーバ装置100のコントローラ103は、
図11に示すように、保険テレマシステム1におけるサービスの提供処理を実行する(ステップS101)。そして、コントローラ103は、通信障害が発生したか否かを判定する(ステップS102)。
【0083】
通信障害が発生していない場合(ステップS102,No)、コントローラ103はステップS101からの処理を繰り返す。通信障害が発生した場合(ステップS102,Yes)、コントローラ103は、通信障害対応処理を実行する(ステップS103)。
【0084】
通信障害対応処理において、コントローラ103は、通信障害が復旧したか否かを判定する(ステップS104)。通信障害が復旧していない場合(ステップS104,No)、コントローラ103はステップS103からの処理を繰り返す。
【0085】
通信障害が復旧した場合(ステップS104,Yes)、コントローラ103は、通信障害が発生していた通信障害時間帯の状況を含む状況データを収集する(ステップS105)。そして、コントローラ103は、収集した状況データから通信障害の影響を受けた機能に関する情報を抽出する(ステップS106)。
【0086】
そして、コントローラ103は、抽出した情報に基づいて通信障害によるユーザの不満度を算出する(ステップS107)。そして、コントローラ103は、算出した不満度に基づいてサービスに対する評価情報を生成する(ステップS108)。そして、コントローラ103は、ステップS101からの処理を繰り返すこととなる。
【0087】
上述してきたように、実施形態に係るサーバ装置100(「情報処理装置」の一例に相当)は、コントローラ103を備える。コントローラ103は、ユーザ端末に対するサービスの提供処理を実行する。また、コントローラ103は、ユーザ端末とサーバ装置100との通信障害が発生した時間帯および当該通信障害によって影響を受けた上記ユーザ端末の機能に関する情報(例えば、「状況データ」)を上記ユーザ端末から収集し、収集した上記情報に基づいて上記通信障害によるユーザの不満度を算出し、上記不満度に基づいて上記サービスに対する評価情報を生成する。
【0088】
したがって、実施形態に係るサーバ装置100によれば、サービスに対する実質的な評価が可能となる。
【0089】
また、コントローラ103は、上記収集した上記情報の各要素が示す値を上記通信障害によって受ける影響が大きいほど重くなるように重み付けした重み値に基づいて上記不満度を算出する。
【0090】
したがって、実施形態に係るサーバ装置100によれば、通信障害によって受ける影響が大きいほど高くなるようにユーザの不満度を算出することが可能となる。
【0091】
また、上記収集した上記情報の各要素は、上記ユーザが利用した上記機能、該機能の利用時間帯および該機能の重要度のうちの少なくともいずれかである。
【0092】
したがって、実施形態に係るサーバ装置100によれば、ユーザが利用した機能、かかる機能の利用時間帯および重要度に基づくユーザの不満度を考慮した実質的な評価が可能となる。
【0093】
また、上記ユーザ端末は車載装置10であって、上記収集した上記情報の各要素はさらに、上記ユーザが上記機能を利用中の車両周囲の天候、交通状況および位置情報のうちの少なくともいずれかを含む。
【0094】
したがって、実施形態に係るサーバ装置100によれば、ユーザ端末が車載装置10である場合の、車両周囲の天候、交通状況および位置情報に基づくユーザの不満度を考慮した実質的な評価が可能となる。
【0095】
また、コントローラ103は、上記不満度を有する上記ユーザの数および上記サービスの単価に基づいて上記通信障害による推定損害額を算出する。
【0096】
したがって、実施形態に係るサーバ装置100によれば、ユーザの不満度に基づいて簡便に推定損害額を算出することが可能となる。
【0097】
また、実施形態に係る車載装置10は、コントローラ15を備える。コントローラ15は、サーバ装置100から提供されるサービスの入出力制御を実行する。また、コントローラ15は、ユーザの上記サービスの利用状況を含む車両の状況データを取得し、サーバ装置100から通信障害の復旧通知を受けた場合に、少なくとも上記ユーザの不満度に関連する要素を含む上記状況データを抽出してサーバ装置100へ送信する。
【0098】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、サーバ装置100から提供されるサービスに対するユーザの不満度を考慮した実質的な評価をサーバ装置100に行わせることが可能となる。
【0099】
また、実施形態に係る情報処理方法は、サーバ装置100が実行する情報処理方法であって、車載装置10に対するサービスの提供処理を実行することと、車載装置10とサーバ装置100との通信障害が発生した時間帯および当該通信障害によって影響を受けた車載装置10の機能に関する情報を車載装置10から収集することと、収集した上記情報に基づいて上記通信障害によるユーザの不満度を算出することと、上記不満度に基づいて上記サービスに対する評価情報を生成することと、を含む。
【0100】
したがって、実施形態に係る情報処理方法によれば、サービスに対する実質的な評価が可能となる。
【0101】
また、実施形態に係る情報処理方法は、サーバ装置100が実行する情報処理方法であって、ユーザが利用する車載装置10に対するサービスの提供処理を実行することと、通信障害が発生した時間帯の状況を含む状況データを車載装置10から収集することと、収集した上記状況データに基づくビッグデータ処理によって上記ユーザの不満度を含む上記サービスに対する評価値を算出することと、を含む。
【0102】
上述した車載装置10の市場台数は説明の便宜上8台としたが、実際の運用上は、車載装置10の市場台数がきわめて多くなることが想定される。このため、サーバ装置100は、実施形態に係る情報処理方法として、多数の車載装置10から収集した上記状況データに基づくビッグデータ処理によって統計的に上記ユーザの不満度を含むサービスに対する評価値を算出することとなる。
【0103】
したがって、実施形態に係る情報処理方法によれば、サービスに対する実質的な評価が可能となる。
【0104】
なお、上述した実施形態では、車載装置10がユーザ端末の一例であることとしたが、保険会社装置200や保守事業者装置300がユーザ端末であってもよい。この場合、サーバ装置100は、保険会社装置200や保守事業者装置300の各ユーザの不満度を考慮したサービスに対する評価を行うようにしてもよい。また、サーバ装置100は、車載装置10、保険会社装置200、保守事業者装置300のそれぞれのユーザごとのサービスに対する評価を行うようにしてもよい。
【0105】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 保険テレマシステム
10 車載装置
11 センサ部
12 HMI部
13 通信部
14 記憶部
15 コントローラ
100 サーバ装置
101 通信部
102 記憶部
103 コントローラ
200 保険会社装置
300 保守事業者装置