(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138846
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】推奨材料検索システム、推奨材料検索方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20241002BHJP
G06F 16/903 20190101ALI20241002BHJP
【FI】
B29C45/76
G06F16/903
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049551
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中土 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】島田 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 漢
(72)【発明者】
【氏名】服部 一希
【テーマコード(参考)】
4F206
5B175
【Fターム(参考)】
4F206AM23
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JP17
4F206JP25
4F206JP30
5B175DA10
5B175HB03
(57)【要約】
【課題】成形品質を考慮したより適切な推奨材の選定を可能にすることができる。
【解決手段】 1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有する推奨材料検索システムであって、前記メモリリソースは、材料検索プログラムを記憶し、前記材料検索プログラムを実行することで、前記プロセッサは、所定の物性評価項目および物性値を検索条件として推奨材を検索し、検索された前記推奨材の成形品質と、基準材の成形品質と、の類似度の比較に基づき前記推奨材の推奨順位を決定し、前記推奨材に前記推奨順位を対応付けた検索結果を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有する推奨材料検索システムであって、
前記メモリリソースは、材料検索プログラムを記憶し、
前記材料検索プログラムを実行することで、前記プロセッサは、
所定の物性評価項目および物性値を検索条件として推奨材を検索し、
検索された前記推奨材の成形品質と、基準材の成形品質と、の類似度の比較に基づき前記推奨材の推奨順位を決定し、
前記推奨材に前記推奨順位を対応付けた検索結果を出力する
ことを特徴とする推奨材料検索システム。
【請求項2】
請求項1に記載の推奨材料検索システムであって、
前記成形品質は、前記推奨材および前記基準材の流動性および収縮性を示す情報である
ことを特徴とする推奨材料検索システム。
【請求項3】
請求項1に記載の推奨材料検索システムであって、
前記プロセッサは、
前記成形品質の統計量に基づき前記推奨材および前記基準材を基準化し、基準化後の前記推奨材と前記基準材との類似度を比較する
ことを特徴とする推奨材料検索システム。
【請求項4】
請求項3に記載の推奨材料検索システムであって、
前記プロセッサは、
前記基準化後の前記推奨材のクラスタと前記基準材のクラスタとの間のユークリッド距離に基づき類似度を比較し、
前記ユークリッド距離が近いほど類似度が高いと評価し、
前記基準材との類似度が高い前記推奨材に高い推奨順位を付与する
ことを特徴とする推奨材料検索システム。
【請求項5】
請求項1に記載の推奨材料検索システムであって、
前記プロセッサは、
前記推奨材の環境負荷を計算し、前記検索結果に含める
ことを特徴とする推奨材料検索システム。
【請求項6】
請求項1に記載の推奨材料検索システムであって、
前記プロセッサは、
前記基準材に関する物性情報の中から対応する物性評価項目の選択と、物性値の入力を受け付けて、前記推奨材を検索する
ことを特徴とする推奨材料検索システム。
【請求項7】
請求項1に記載の推奨材料検索システムであって、
前記基準材は、製品に使用している現行の材料または使用を想定している材料であり、
前記推奨材は、再生材である
ことを特徴とする推奨材料検索システム。
【請求項8】
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有する推奨材料検索システムが行う推奨材料検索方法であって、
前記メモリリソースは、材料検索プログラムを記憶し、
前記材料検索プログラムを実行することで、前記プロセッサは、
所定の物性評価項目および物性値を検索条件として推奨材を検索するステップと、
検索された前記推奨材の成形品質と、基準材の成形品質と、の類似度の比較に基づき前記推奨材の推奨順位を決定するステップと、
前記推奨材に前記推奨順位を対応付けた検索結果を出力するステップと、を行う
ことを特徴とする推奨材料検索方法。
【請求項9】
請求項8に記載の推奨材料検索方法であって、
前記プロセッサは、
前記推奨材の推奨順位を決定するステップにおいて、
前記成形品質の統計量に基づき前記推奨材および前記基準材を基準化するステップと、
基準化後の前記推奨材と前記基準材との類似度を比較するステップと、を行う
ことを特徴とする推奨材料検索方法。
【請求項10】
請求項9に記載の推奨材料検索方法であって、
前記プロセッサは、
前記推奨材の推奨順位を決定するステップにおいて、
前記基準化後の前記推奨材のクラスタと前記基準材のクラスタとの間のユークリッド距離に基づき類似度を比較するステップを行い、
前記ユークリッド距離が近いほど類似度が高いと評価し、
前記基準材との類似度が高い前記推奨材に高い推奨順位を付与する
ことを特徴とする推奨材料検索方法。
【請求項11】
1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有する推奨材料検索システムの前記プロセッサが前記メモリリソースから読み込んで実行するプログラムであって、
前記メモリリソースは、材料検索プログラムを記憶し、
前記プロセッサが実行する前記材料検索プログラムは、
所定の物性評価項目および物性値を検索条件として推奨材を検索し、
検索された前記推奨材の成形品質と、基準材の成形品質と、の類似度の比較に基づき前記推奨材の推奨順位を決定し、
前記推奨材に前記推奨順位を対応付けた検索結果を出力する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムであって、
前記プロセッサが実行する前記材料検索プログラムは、
前記成形品質の統計量に基づき前記推奨材および前記基準材を基準化し、基準化後の前記推奨材と前記基準材との類似度を比較する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムであって、
前記プロセッサが実行する前記材料検索プログラムは、
前記基準化後の前記推奨材のクラスタと前記基準材のクラスタとの間のユークリッド距離に基づき類似度を比較し、
前記ユークリッド距離が近いほど類似度が高いと評価し、
前記基準材との類似度が高い前記推奨材に高い推奨順位を付与する
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推奨材料検索システム、推奨材料検索方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの需要は増加傾向にある一方で、今後は、枯渇資源である石油由来の新規プラスチックの生産量が減少し、再生プラスチックの割合が大幅に増加すると予想されている。
【0003】
また、最近では、外観部品等に再生材を適用した製品のリリースが増加しており、再生材の活用が新たな競争軸となりつつある。
【0004】
しかしながら、急速に高まる再生材需要に対して、現状は、候補材を選定するための方法やデータが不十分な状態と言える。そのため、製造メーカ等は、適切な候補材を採用するまでに試作を繰り返す必要があり、多大な時間と費用がかかることが課題となっている。
【0005】
なお、特許文献1には、キャビティ内の樹脂の溶融状態を推定する成形条件決定支援装置が開示されている。具体的には、特許文献1には、「射出成形機に取り付けられたセンサにより成形時に検出された検出データに基づいて、検出データに関する特徴量群を生成する特徴量生成部と、特徴量群および制御パラメータ値群に基づいて、それぞれの特徴量に対応する樹脂の溶融状態を表す樹脂状態識別パラメータを演算する識別パラメータ値演算部と、樹脂状態識別パラメータ値に基づいて、樹脂状態識別を説明変数とする多変量解析を適用することにより、樹脂の溶融状態のグループを取得するグループ取得部とを備える」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
再生材活用の活性化に伴い、今後は再生材を製品の外観部品に適用する割合がより増えるものと予想される。一方で、外観部品に再生材を用いる場合、内部部品に用いる場合に比べて、寸法や成形品質精度の要求スペックが高くなる。そのため、要求スペックに応じた適切な再生材を選定できないと、射出成形段階での調整では対応しきれない場合が生じ得る。
【0008】
なお、特許文献1の成形条件決定支援装置は、キャビティ内の樹脂の溶融状態をグループ分けし、当該グループに応じた射出成形条件の修正量を決定している。しかしながら、同文献の技術は、射出成形条件の決定に関するものであり、それよりも前段階の候補材の選定については考慮されていない。そのため、特許文献1の技術では、上記課題を解決することが難しい。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、成形品質を考慮したより適切な候補材の選定を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。上記の課題を解決する本発明の一態様に係る推奨材料検索システムは、1以上のプロセッサと、1以上のメモリリソースと、を有する推奨材料検索システムであって、前記メモリリソースは、材料検索プログラムを記憶し、前記材料検索プログラムを実行することで、前記プロセッサは、所定の物性評価項目および物性値を検索条件として推奨材を検索し、検索された前記推奨材の成形品質と、基準材の成形品質と、の類似度の比較に基づき前記推奨材の推奨順位を決定し、前記推奨材に前記推奨順位を対応付けた検索結果を出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形品質を考慮したより適切な推奨材の選定を可能にすることができる。
【0012】
なお、上記以外の課題、構成および効果等は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】推奨材料検索システムの全体構成の一例を示した図である。
【
図2】推奨材料検索装置の概略構成の一例を示した図である。
【
図5】流動性の算出に用いる数式およびグラフの一例を示した図である。
【
図6】推奨材料検索処理の一例を示したフロー図である。
【
図7】類似度比較処理の一例を示したフロー図である。
【
図8】基準材と候補材のデータプロットの一例を示した図である。
【
図9】基準化された基準材および候補材の成形品質の分布例を示した図である。
【
図10】基準材および候補材のユークリッド距離と、成形品質の類似度と、の関係の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。また、特に限定しない限り、各構成要素は、単数でも複数でも構わない。
【0015】
また、図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0016】
また、各種情報の例として、「テーブル」や「リスト」等の表現を用いて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「**テーブル」等の各種情報は、「**情報」としてもよい。また、識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0017】
また、同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0018】
また、実施形態において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、GPU:Graphics Processing Unit)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリリソース)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。
【0019】
同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部(処理部)であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0020】
また、プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施例において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0022】
本実施形態に係る推奨材料検索システムは、推奨材料検索装置と、外部装置と、を有し、基準になる材料の成形品質と類似度の高い材料を推奨材料として検索するシステムである。なお、推奨材料検索システムは、様々な種類の材料を検索可能であるが、本実施形態では、射出成形に用いられる材料(例えば、樹脂材やプラスチック材などの再生材)を一例として説明を行う。
【0023】
推奨材料検索システムは、例えば、製造メーカが現在使用している材料から他の材料(例えば、再生材)に変更を試みる場合など、対象製品の製造に使用できる好適な候補の材料(以下、「候補材」、「推奨材」あるいは「推奨材料」という場合がある)を選定する際に利用される。
【0024】
具体的には、推奨材料検索装置は、例えば製品の製造に使用している現行の材料や使用を想定している材料を基準の材料(以下、「基準材」という場合がある)として入力を受け付ける。また、推奨材料検索装置は、検索ユーザが重視する物性の値に基づき候補材を絞り込んだ後、成形品質が基準材に近い順に候補材の推奨順位を決定し、検索結果として出力する。
【0025】
このような推奨材料検索システムによれば、現行製品等の使用材料と成形品質の近い材料を候補材として選定し、製造メーカ等に検索結果を提示することができる。すなわち、当該システムは、成形品質を考慮したより適切な推奨材の選定を実現することができる。
【0026】
<推奨材料検索システム1000の全体構成>
図1は、推奨材料検索システム1000の全体構成の一例を示した図である。図示するように、推奨材料検索装置100は、例えば、材料メーカやリサイクラの計算機といった外部装置10から材料データ(例えば、材料情報や物性情報など)を取得し、データベースに格納する。また、推奨材料検索装置100は、例えば、製造メーカの計算機である外部装置10から候補材の検索要求を受け付ける。また、推奨材料検索装置100は、所定情報(例えば、物性情報や成形品質情報)を用いて好適な候補材をデータベースから検索し、基準材との類似度に基づく推奨順位を付帯した検索結果を出力する。
【0027】
<推奨材料検索装置100の概略構成>
図2は、推奨材料検索装置100の概略構成の一例を示した図である。図示するように、推奨材料検索装置100(プロセッサシステム)は、例えば通信ケーブルや所定の通信ネットワーク(例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)あるいはWAN(Wide Area Network)など)Nにより外部装置10と相互通信可能に接続されている。
【0028】
<<外部装置10>>
外部装置10は、推奨材料検索装置100へ各種の情報を送信する装置である。この場合、外部装置10は、例えば材料メーカやリサイクラの計算機であって、推奨材料検索装置100に対して材料データ(例えば、材料情報や物性情報など)を送信する。
【0029】
また、外部装置10は、推奨材料検索装置100に対して検索要求を行ったり、検索結果を表示する装置である。この場合、外部装置10は、例えば製造メーカなど、本システムが提供する検索サービスを利用する事業者等の計算機が該当する。
【0030】
<<推奨材料検索装置100の詳細>>
推奨材料検索装置100は、メモリリソース30に格納されたプログラムや各種の情報をプロセッサ20が読み込むことにより、様々な処理を実行するプロセッサシステムである。具体的には、推奨材料検索装置100は、基準材の成形品質に類似する推奨材(候補材)を検索する推奨材料検索処理を実行する。なお、当該処理の詳細については後述する。
【0031】
推奨材料検索装置100は、例えば、サーバ計算機やクラウドサーバあるいはパーソナルコンピュータであり、少なくともこれらの計算機を1つ以上含むシステムである。
【0032】
具体的には、推奨材料検索装置100は、プロセッサ20と、メモリリソース30と、NI(Network Interface Device)40と、UI(User Interface Device)50と、を有している。
【0033】
プロセッサ20は、メモリリソース30に格納されているプログラム210を読み込んで、当該プログラム210に対応する処理を実行する演算装置である。なお、プロセッサ20は、マイクロプロセッサ20、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはその他の演算できる半導体デバイス等が一例として挙げられる。
【0034】
メモリリソース30は、各種の情報を記憶する記憶装置である。具体的には、メモリリソース30は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの不揮発性あるいは揮発性の記憶媒体である。なお、メモリリソース30は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスクあるいはSSD(Solid State Drive)などの書き換え可能な記憶媒体や、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカードおよびハードディスクであっても良い。
【0035】
NI40は、外部装置10との間で情報通信を行う通信装置である。NI40は、例えばLANやインターネットなど所定の通信ネットワークNを介して外部装置10との間で情報通信を行う。なお、以下で特に言及しない場合、推奨材料検索装置100と外部装置10との情報通信は、NI40を介して実行されているものとする。
【0036】
UI50は、ユーザ(オペレータ)の指示を推奨材料検索装置100に入力する入力装置、および、推奨材料検索装置100で生成した情報等を出力する出力装置である。入力装置には、例えばキーボード、タッチパネル、マウスなどのポインティングデバイスや、マイクロフォンのような音声入力装置などがある。
【0037】
また、出力装置には、例えばディスプレイ、プリンタ、音声合成装置などがある。なお、以下で特に言及しない場合は、推奨材料検索装置100に対するユーザの操作(例えば、情報の入力、出力および処理の実行指示など)は、UI50を介して実行されているものとする。
【0038】
また、推奨材料検索装置100の各構成、機能、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、推奨材料検索装置100は、各機能の一部または全部を、ソフトウェアにより実現することもできるし、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することもできる。また、推奨材料検索装置100は、固定的な回路を有するハードウェアを用いても良いし、少なくとも一部の回路を変更可能なハードウェアを用いてもよい。
【0039】
また、推奨材料検索装置100は、各プログラムにより実現される機能や処理の一部または全部をユーザ(オペレータ)が実施することで、システムを実現することもできる。
【0040】
なお、推奨材料検索装置100で実行されるプログラムは、当該装置が読み込み可能な不揮発ストレージ媒体に格納されても良い。不揮発ストレージ媒体に格納されたプログラムは、直接、推奨材料検索装置100が読み込んでも良いが、プログラム配信用のプロセッサシステムが当該媒体からプログラムを読み込み、その後、プログラム配信用のプロセッサシステムから推奨材料検索装置100に当該プログラムを送信(配信)しても良い。なお、不揮発ストレージ媒体の例は、メモリリソース30として説明した不揮発メモリなどが挙げられるが、それ以外の光ディスク媒体でも良い。
【0041】
<<<材料情報DB110>>>
材料情報DB110は、材料情報を格納しているデータベースである。材料情報には、製品の製造に用いられる各種の材料(バージン材や再生材を含む)に関する情報が登録されている。具体的には、材料情報には、識別情報110aと、材料の名称・種類110bと、型番110cと、材料メーカ110dと、ロット番号110eと、配合比率110fと、が対応付けられて登録されている。
【0042】
図3は、材料情報の一例を示した図である。ここで、識別情報110aは、材料情報の各レコードに登録されている材料を一意に識別するための情報である。名称・種類110bは、材料の名称および種類(例えば、樹脂材やプラスチック材の種類)を示す情報である。型番110c、材料メーカ110dおよびロット番号110eは各々、材料の型番と、材料の製造メーカと、ロット番号と、を示す情報である。配合比率110fは、例えば、バージン材と再生材の配合比率を示す情報である。
【0043】
なお、各材料は、同じ種類であっても、材料メーカに応じて異なる型番やグレードが割り付けられ、物性なども相互に異なる。そのため、材料情報は、同じ種類であっても、異なる型番やグレードの材料を別種類の材料として登録している。
【0044】
<<<物性情報DB120>>>
物性情報DB120は、物性情報を格納しているデータベースである。物性情報には、各材料の物性値が登録されている。具体的には、物性情報には、識別情報120aと、材料の名称・種類120bと、材料メーカ120cと、物性値120dと、が対応付けられて登録されている。
【0045】
図4は、物性情報の一例を示した図である。ここで、識別情報120aは、材料を一意に識別する情報であって、材料情報の識別情報に対応している。名称・種類120bおよび材料メーカ120cは各々、材料の名称および種類と、材料の製造メーカを示す情報である。
【0046】
また、物性値120dは、各材料の物性に関する情報であって、例えば力学特性や熱特性などの物性とその値が登録されている。ここで、力学特性には、例えば弾性率、引張強度および衝撃特性などがあり、熱特性には、例えば結晶化温度、溶融温度および熱変形温度などがある。なお、これらの物性は一例であり、物性情報には、上記の例以外にも、様々な種類の物性とその値が登録されている。
【0047】
<<<成形品質情報DB130>>>
成形品質情報DB130は、成形品質情報を格納しているデータベースである。成形品質情報には、例えば、材料の流動性(粘性特徴量)や収縮性など、成形品質に関する情報が登録されている。なお、本実施形態では、流動性および収縮性を成形品質の一例として以下の説明を行う。
【0048】
流動性は、材料の流動性を示す情報であって、例えば射出成形機による試験片の試作時において、圧力センサからの出力値に基づき算出される。また、収縮性は、材料の収縮性を示す情報であって、例えば試験片の寸法測定に基づき取得される。
【0049】
なお、このような試作は、例えば、各々の材料種類、型番、材料メーカおよびロット番号の組み合わせごとに複数回ずつ(例えば、10回ずつ)施行され、都度、流動性および収縮性に関する値が成形品質情報に登録される。
【0050】
図5は、流動性(粘性特徴量)の算出に用いる数式およびグラフの一例を示した図である。図示するグラフは、速度制御の開始時間tintから終了時間tvendまでの区間を速度一定で制御し、tvend以降、圧力可変とした圧力制御を行った場合のセンサ圧力Pと時間tとの関係を示している。なお、粘性特徴量(μindex)は、速度制御した区間(tintからtvend)の特徴量である。流動性(粘性特徴量)の値は、以下の式(1)に基づき算出される。
【0051】
【0052】
ここで、P(t)は、変化する時間tにおけるセンサ圧力の総和を示す。
【0053】
なお、流動性や収縮性の値は、材料の識別情報(材料情報の識別情報に対応)と、試作回数(例えば、n回目など)と、に対応付けられて成形品質情報に登録されている。
【0054】
<<<環境情報DB140>>>
環境情報DB140は、環境情報を格納しているデータベースである。なお、環境情報には、環境負荷に関する情報であって、例えば二酸化炭素の排出量などを示す情報が登録されている。具体的には、環境情報には、環境負荷に関する情報と、材料の識別情報(材料情報の識別情報に対応)と、が対応付けられて登録されている。
【0055】
<<<材料検索プログラム211>>>
材料検索プログラム211は、推奨材料(候補材)を検索するプログラムである。具体的には、材料検索プログラム211は、推奨材料検索処理を実行する。より具体的には、材料検索プログラム211は、データベースから候補材を検索し、基準材の成形品質との類似度に基づく推奨順位を付帯した検索結果を出力する。
【0056】
以上、推奨材料検索装置100の詳細について説明した。
【0057】
<処理の説明>
図6は、推奨材料検索処理の一例を示したフロー図である。当該処理は、推奨材料検索装置100が推奨材料の検索要求を外部装置10から受け付けると、材料検索プログラム211を読み込んだプロセッサ20により実行される。
【0058】
処理が開始されると、プロセッサ20は、基準材の入力を外部装置10から受け付ける(ステップS10)。具体的には、プロセッサ20は、例えば基準材の名称・種類の入力を外部装置10の検索ユーザから受け付ける。
【0059】
次に、プロセッサ20は、入力を受け付けた基準材の材料情報等を取得する(ステップS20)。具体的には、プロセッサ20は、入力された基準材の名称・種類に基づき、材料情報DB110から該当する材料情報を引き当てる。また、プロセッサ20は、引き当てた材料情報の識別情報110aに基づき、対応する物性情報と成形品質情報とを各々、物性情報DB120および成形品質情報DB130から取得する。
【0060】
次に、プロセッサ20は、物性評価項目の選択と、評価物性値の入力と、を受け付ける(ステップS30)。具体的には、プロセッサ20は、例えば力学特性における弾性率等や熱特性における結晶化温度等、基準材の物性情報における物性値120dに対応する複数の物性評価項目の中から、検索ユーザが重視する物性評価項目の選択を受け付ける。例えば、基準材の物性情報における物性値120dに弾性率、引張強度および溶融温度が登録されている場合、プロセッサ20は、この中から検索ユーザが重視する物性評価項目(例えば、引張強度および溶融温度)の選択を受け付ける。
【0061】
また、プロセッサ20は、選択された物性評価項目について評価物性値の入力を受け付ける。例えば、物性評価項目として弾性率および結晶化温度が選択されている場合、プロセッサ20は、検索ユーザが所望(許容)する弾性率および結晶化温度の数値範囲を評価物性値として受け付ける。
【0062】
次に、プロセッサ20は、候補材の検索条件を決定する(ステップS40)。具体的には、プロセッサ20は、入力を受け受けた物性評価項目と、評価物性値と、を候補材の検索条件として決定する。なお、プロセッサ20は、検索条件に基準材の種類を含めても良い。基準材の種類も検索条件とすることで、プロセッサ20は、検索範囲をより狭範囲に絞り込むことができ、処理負荷を軽減することができる。
【0063】
次に、プロセッサ20は、候補材の検索を実行する(ステップS50)。具体的には、プロセッサ20は、検索条件に基づき物性情報DB120および材料情報DB110を検索し、検索条件を満たす候補材を特定する。なお、通常は、検索条件を満たす複数の候補材が特定される。
【0064】
次に、プロセッサ20は、類似度比較処理を実行する(ステップS60)。具体的には、プロセッサ20は、基準材と候補材の間のユークリッド距離に基づき、両者の類似度を比較する。
【0065】
図7は、類似度比較処理の一例を示したフロー図である。まず、プロセッサ20は、基準材と候補材のデータプロットを生成する(ステップS061)。具体的には、プロセッサ20は、所定の品質評価項目に基づき、基準材と候補材のデータプロットを生成する。より具体的には、プロセッサ20は、基準材および候補材の各々の収縮性を品質評価項目1(横軸)とし、流動性を品質評価項目2(縦軸)とするデータプロットを生成する。
【0066】
図8は、基準材と候補材のデータプロットの一例を示した図である。図示するように、基準材および候補材は各々、同一ロット番号内の材料であっても、測定ごとの成形品質には若干のばらつきがある。そのため、データプロットは、基準材および候補材の各々における成形品質のばらつき(分布)を示す点群により表現されている。
【0067】
次に、プロセッサ20は、統計量に基づき基準材および候補材の基準化を行う(ステップS062)。データプロットは、異なる種類の材料における品質評価項目の値を点群で表現しているため、相互に絶対値等が揃っていないデータである。そのため、プロセッサ20は、データプロットを用いて、基準材および候補材の平均値や標準偏差といった統計量に基づき、これらの基準化を行う。
【0068】
なお、基準化は、以下の式(2)、(3)を用いて実行される。
【0069】
【0070】
なお、「X’Ai」は、基準化後の候補材Aの横軸方向の位置を示す。また、「XAi」は、基準化前の候補材Aの横軸方向のプロット位置を示す。また、「Xo」は、基準化前の基準材の横軸方向の平均値を示す。また、「σxo」は、基準化前の基準材の横軸方向の標準偏差を示す。
【0071】
【数3】
なお、「Y’Ai」は、基準化後の候補材Aの縦軸方向の位置を示す。また、「YAi」は、基準化前の候補材Aの縦軸方向のプロット位置を示す。また、「Yo」は、基準化前の基準材の縦軸方向の平均値を示す。また、「σyo」は、基準化前の基準材の縦軸方向の標準偏差を示す。
【0072】
また、他の候補材の基準化についても同様に、式(2)、(3)が用いられる。
【0073】
図9は、基準化された基準材および候補材の成形品質の分布例を示した図である。基準化により、基準材および各候補材の成形品質のばらつきが定量化され、相互に比較可能な形態になる。
【0074】
次に、プロセッサ20は、類似度の比較に用いるユークリッド距離を計算する(ステップS063)。具体的には、プロセッサ20は、例えば群平均法など公知の方法を用いて、基準材の点群(クラスタ)と候補材の点群(クラスタ)との間のユークリッド距離を計算する。なお、ユークリッド距離dの計算は、以下の式(4)を用いて実行される。
【0075】
【数4】
なお、上記の式(4)は、基準化された全てのプロット点の距離の総和を表している。ここで、nは、候補材Aのプロット数を示す。また、mは、基準材のプロット数を示す。i、jは、総和のある点を示す添字である。なお、他の候補材の場合も同様に、式(4)が用いられる。
【0076】
次に、プロセッサ20は、基準材と候補材の類似度を比較する(ステップS64)。具体的には、プロセッサ20は、ユークリッド距離の大小に基づき、基準材と、各候補材との類似度を比較する。より具体的には、プロセッサ20は、ユークリッド距離が近い程、類似度がより高いと評価する。類似度は、成形品質を基準化することで比較可能となった基準材および推奨材の間のユークリッド距離に比例するからである。
【0077】
また、プロセッサ20は、類似度の比較に基づき、候補材の推奨順位を決定する(ステップS65)。具体的には、プロセッサ20は、類似度が高い順に高い推奨順位を割り付けることで、候補材の推奨順位を決定する。
【0078】
図10は、基準材および候補材のユークリッド距離と、成形品質の類似度と、の関係の一例を示した図である。図示する例では、候補材B、CおよびAの順に基準材とのユークリッド距離が近いことを示している。この場合、プロセッサ20は、候補材B、C、Aの順に基準材の成形品質に対する類似度が高いと評価し、当該順序に従って各候補材の推奨順位を決定する。
【0079】
また、プロセッサ20は、推奨順位を決定すると、処理をステップS70(
図6)に移行する。
【0080】
次に、プロセッサ20は、環境情報に基づき、環境影響度を算出する(ステップS70)。具体的には、プロセッサ20は、候補材の識別情報に基づき、対応する環境情報を特定する。また、プロセッサ20は、特定した環境情報を用いて、例えば二酸化炭素の排出量など、所定の環境負荷に関する環境影響度を算出する。なお、環境影響度は、環境情報に登録されている環境負荷に関する数値そのものであっても良い。
【0081】
次に、プロセッサ20は、検索結果を出力する(ステップS80)。具体的には、プロセッサ20は、各候補材の材料情報と、推奨順位とを対応付けた検索結果を生成し、検索ユーザの計算機に出力(送信)する。なお、プロセッサ20は、候補材の物性情報や成形品質情報を検索結果に含めても良い。
【0082】
また、プロセッサ20は、検索結果を出力すると、本フローの処理を終了する。
【0083】
以上、推奨材料検索処理について説明した。
【0084】
このような推奨材料検索システムによれば、成形品質を考慮したより適切な推奨材の選定を可能にすることができる。
【0085】
特に、推奨材料検索システムでは、推奨材料検索装置は、流動性や収縮性などの成形品質のばらつきを定量化し、基準化後の基準材と候補材との類似度を比較することにより推奨順位を決定する。そのため、推奨材料検索システムによれば、基準材の成形品質に類似する適切な成形品質の推奨材を検索することができる。
【0086】
さらに、検索結果には、環境負荷を示す情報が推奨材に付帯されているため、検索ユーザは、環境負荷をも参考にして好適な材料を選定することができる。
【0087】
なお、推奨材料検索装置100は、検索結果に推奨材のコストを付帯させても良い。コストに関する情報は、例えば、材料情報の各種材料に紐付けられて管理されていれば良い。このような推奨材料検索システムによれば、検索ユーザは、基準材との類似度や環境負荷に加えて、推奨材のコストをも参考にして好適な材料を選定することができる。
【0088】
また、本実施形態は、上記に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、前述の実施形態では、材料情報DB110、物性情報DB120、成形品質DBおよび環境情報DB140が予めメモリリソース30内に記憶されていることを前提に説明したが、これらのデータベースは他の計算機(例えば、クラウドサーバ)に記憶されていても良い。すなわち、この場合の推奨材料検索システム1000には、データベースを記憶した計算機(クラウドサーバ)が構成に含まれる。
【0089】
この場合、推奨材料検索装置100は、推奨材料検索処理の実行時に当該計算機(クラウドサーバ)のデータベースから対象となる材料情報、物性情報、成形品質情報および環境情報を検索して取得する。
【0090】
このような構成の推奨材料検索システムによっても、成形品質を考慮したより適切な推奨材の選定を可能にすることができる。
【0091】
また、本発明は、上記の実施形態や変形例などに限られるものではなく、これら以外にも様々な実施形態および変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態や変形例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0092】
また、上記説明では、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0093】
1000・・・推奨材料検索システム、100・・・推奨材料検索装置、110・・・材料情報DB、120・・・物性情報DB、130・・・成形品質情報DB、140・・・環境情報DB、210・・・プログラム、211・・・材料検索プログラム、20・・・プロセッサ、30・・・メモリリソース、40・・・NI(ネットワークインターフェースデバイス)、50・・・UI(ユーザインターフェースデバイス)、10・・・外部装置、N・・・ネットワーク