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  • 特開-差圧計 図1A
  • 特開-差圧計 図1B
  • 特開-差圧計 図1C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138847
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】差圧計
(51)【国際特許分類】
   G01L 13/00 20060101AFI20241002BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G01L13/00 A
H01L29/84 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049553
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】東條 博史
【テーマコード(参考)】
2F055
4M112
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB05
2F055CC02
2F055DD05
2F055EE13
2F055FF04
2F055GG22
2F055GG25
2F055GG33
4M112AA01
4M112BA01
4M112CA02
4M112CA08
4M112CA12
4M112DA02
4M112DA18
4M112EA02
4M112EA13
4M112FA03
(57)【要約】
【課題】半導体による基体の上にガラス板を介して配置されるセンサチップに組み込まれた差圧計における出力のゼロ点シフトを抑制する。
【解決手段】第1半導体層103とガラス板102とを接合する第1接合領域111の周囲に第1未接合領域112が設けられ、ガラス板102と基体101とを接合する第2接合領域121の周囲に、第2未接合領域122が設けられている。第1接合領域111は、第1圧力室105の領域を囲って配置され、第2接合領域121は、第1導圧路109の領域を囲って配置されている。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体から構成された基体と、
前記基体の上に接合された耐熱ガラスからなるガラス板と、
前記ガラス板の上面に配置された第1圧力室を備える第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に配置された第2圧力室を備える第2半導体層と、
前記第1圧力室と前記第2圧力室との間を隔てる状態に形成されたダイアフラムと、
前記ガラス板および前記基体を貫通して形成され、前記第1圧力室と連通する導圧路と、
前記ダイアフラムの周端部近傍に設けられ、前記ダイアフラムの歪みを測定する歪計測部と、
前記第1半導体層と前記ガラス板との間で、前記第1圧力室を囲い平面視で前記第1圧力室の周方向に均一な幅とされた前記第1半導体層と前記ガラス板とを接合する第1接合領域と、
前記第1接合領域の周囲に設けられた第1未接合領域と、
前記ガラス板と前記基体との間で、前記導圧路の領域を囲い平面視で前記導圧路の領域の周方向に均一な幅とされて、前記ガラス板と前記基体とを接合する第2接合領域と、
前記第2接合領域の周囲に設けられた第2未接合領域と
を備え、
前記第2接合領域は、前記第1未接合領域の内側に設けられ、
前記第2未接合領域は、前記第1接合領域から前記第1未接合領域にかけて形成されている差圧計。
【請求項2】
請求項1記載の差圧計において、
前記ガラス板と前記基体との間で、前記第2未接合領域の周囲に、少なくとも1か所、設けられて、前記ガラス板と前記基体とを接合する第3接合領域をさらに備える差圧計。
【請求項3】
請求項1または2記載の差圧計において、
前記基体、前記第1半導体層、および前記第2半導体層はシリコンから構成され、
前記ガラス板はテンパックスガラスから構成されている
差圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用の差圧計は、小型化や耐食性などの要望により、センサチップ本体をシリコンなどの半導体やサファイアなどから構成している。例えば、ピエゾ抵抗素子などによる歪計測部が形成された半導体(シリコン)の膜から構成されたダイアフラムの一方の面および他方の面の各々に、第1圧力室および第2圧力室を設けた差圧計がある。この差圧計では、第1圧力室および第2圧力室の2方向から受ける圧力の差を測定している。第1圧力室、第2圧力室、およびこれらの圧力室の各々に接続する圧力伝達のための導管には、オイルなどの圧力伝達物質が充填され、圧力は、圧力伝達物質を介してダイアフラムに作用する。
【0003】
一方で、上述したダイアフラムおよび圧力室が形成されたセンサチップは、パッケージに収容されて用いられている。センサチップを半導体から構成する場合、主に金属から構成されるパッケージとの間を電気的に分離するために、耐熱ガラスによるガラス板を挟んでパッケージに固定している。
【0004】
しかしながら、金属から構成されるパッケージと耐熱性ガラスとの間には線膨張係数差があり、また、耐熱性ガラスは強度があまり高くない。このため、パッケージにガラス板を直接接合した場合、熱応力によりガラス板が割れるなどの問題が起き場合がある。このため、ガラス板とパッケージとの間にシリコン板を挟んで接合している。この構成では、パッケージの上に、シリコン板、ガラス板、センサチップの順に積層されたものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-060333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような構成の圧力センサにおいて、ゼロ点シフトの発生が確認され、問題となっている。このゼロ点シフトを防止するために、ガラス板と半導体からなるセンサチップとの接合面の一部に、接合していない空洞を設ける技術がある(特許文献1)。しかしながら、特許文献1の技術では、センサチップを搭載するガラス板を、さらにシリコンなどの半導体による基体の上に配置する構成については考慮されていない。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、半導体による基体の上にガラス板を介して配置されるセンサチップに組み込まれた差圧計における出力のゼロ点シフトの抑制を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る差圧計は、半導体から構成された基体と、基体の上に接合された耐熱ガラスからなるガラス板と、ガラス板の上面に配置された第1圧力室を備える第1半導体層と、第1半導体層の上に配置された第2圧力室を備える第2半導体層と、第1圧力室と第2圧力室との間を隔てる状態に形成されたダイアフラムと、ガラス板および基体を貫通して形成され、第1圧力室と連通する導圧路と、ダイアフラムの周端部近傍に設けられ、ダイアフラムの歪みを測定する歪計測部と、第1半導体層とガラス板との間で、第1圧力室を囲い平面視で第1圧力室の周方向に均一な幅とされた第1半導体層とガラス板とを接合する第1接合領域と、第1接合領域の周囲に設けられた第1未接合領域と、ガラス板と基体との間で、導圧路の領域を囲い平面視で導圧路の領域の周方向に均一な幅とされて、ガラス板と基体とを接合する第2接合領域と、第2接合領域の周囲に設けられた第2未接合領域とを備え、第2接合領域は、第1未接合領域の内側に設けられ、第2未接合領域は、第1接合領域から第1未接合領域にかけて形成されている。
【0009】
上記差圧計の一構成例において、ガラス板と基体との間で、第2未接合領域の周囲に、少なくとも1か所、設けられて、ガラス板と基体とを接合する第3接合領域をさらに備える。
【0010】
上記差圧計の一構成例において、基体、第1半導体層、および第2半導体層はシリコンから構成され、ガラス板はテンパックスガラスから構成されている。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス板と基体とを接合する第2接合領域の周囲に第2未接合領域を設けたので、半導体による基体の上にガラス板を介して配置されるセンサチップに組み込まれた差圧計における出力のゼロ点シフトが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、本発明の実施の形態に係る差圧計の構成を示す断面図である。
図1B図1Bは、本発明の実施の形態に係る差圧計の一部構成を示す平面図である。
図1C図1Cは、本発明の実施の形態に係る差圧計の一部構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る差圧計について図1A図1B図1Cを参照して説明する。この差圧計は、基体101、ガラス板102、第1半導体層103、第2半導体層104を備える。基体101、ガラス板102、第1半導体層103、第2半導体層104は、これらの順に積層されている。この差圧計は、基体101、ガラス板102、第1半導体層103、第2半導体層104によるセンサチップに組み込まれている。
【0014】
基体101は、半導体から構成されている。基体101は、例えば、シリコンから構成することができる。ガラス板102は、基体101の上に接合して配置されている。また、ガラス板102は、テンパックスガラスなどの耐熱ガラスから構成されている。
【0015】
第1半導体層103は、ガラス板102の上面に配置され、第1領域141に第1圧力室105を備える。第1圧力室105は、例えば、平面視の形状が正方形とされている。第1圧力室105は、第1半導体層103に形成された凹部であり、この凹部は、ガラス板102の側に開口している。第1半導体層103は、例えばシリコンから構成することができる。
【0016】
第2半導体層104は、第1半導体層103の上に配置(接合)されている。また、第2半導体層104は、第2圧力室106を備える。第2圧力室106は、第2半導体層104に形成された凹部であり、この凹部は、第1半導体層103の側に開口している。また、第2圧力室106は、平面視の形状が、第1圧力室105より広い形状、例えば、正方形とされている。また、第2圧力室106は、平面視で第1圧力室105が形成された領域を含んで形成されている。第2半導体層104は、例えばシリコンから構成することができる。ただし、第1圧力室105および第2圧力室106の平面視の形状は正方形以外であってもよい。
【0017】
上述した第1圧力室105と第2圧力室106との間には、これらを隔てる状態に形成されたダイアフラム107が配置されている。ダイアフラム107は、第1圧力室105を形成することで薄くされた第1半導体層103の部分から構成することができる。ダイアフラム107の平面視の形状は、第1圧力室105の平面視の形状により規定され、第1圧力室105の平面視の形状が正方形であれば、ダイアフラム107の平面視の形状は正方形となる。
【0018】
また、この差圧計は、ダイアフラム107の周端部近傍に、ダイアフラム107の歪みを測定する第1歪計測部108a、第2歪計測部108b、第3歪計測部108c、第4歪計測部108dを備える。第1歪計測部108a、第2歪計測部108b、第3歪計測部108c、第4歪計測部108dにより、ダイアフラム107の歪みを計測する。第1歪計測部108a、第2歪計測部108b、第3歪計測部108c、第4歪計測部108dの各々は、例えば、複数のピエゾ抵抗素子から構成することができる。
【0019】
また、第1歪計測部108a、第2歪計測部108b、第3歪計測部108c、第4歪計測部108dは、ブリッジ回路を構成している。このブリッジ回路は、一定の電流が流れている、もしくは一定の電圧が印加されている状態においてダイアフラム107に応力が発生したとき、発生した応力による各ピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を電圧の変化として出力する差圧検出部として機能する。このブリッジ回路の各ノードは、ダイアフラム107の図示しない領域の面に形成された配線パターンを介し、図示しない電極に接続されている。
【0020】
また、基体101、ガラス板102、第1半導体層103、第2半導体層104による積層構造は、平面視の形状が長方形とされ、平面視長方形の長辺方向の一端側の第1領域141と平面視長方形の長辺方向の他端側の第2領域142とを備えることができる。第1領域141に第1圧力室105,第2圧力室106が配置されている。
【0021】
また、第1領域141には、ガラス板102および基体101を貫通して形成され、第1圧力室105と連通する第1導圧路109が設けられている。第1導圧路109は、例えば、平面視で第1圧力室105の中央に配置することができる。一方、第2領域142には、第1半導体層103、ガラス板102、および基体101を貫通して形成され、第2圧力室106と連通する第2導圧路110が設けられている。
【0022】
さらに、この差圧計は、第1接合領域111、第1未接合領域112,第2接合領域121、第2未接合領域122を備えている。
【0023】
第1接合領域111は、第1半導体層103とガラス板102とを接合する。また、第1接合領域111は、第1半導体層103とガラス板102との間で第1圧力室105を囲って配置され、平面視で第1圧力室105の周方向に均一な幅とされている。第1未接合領域112は、第1接合領域111の周囲に設けられている。第1未接合領域112は、第1半導体層103とガラス板102とが接合されていない領域である。
【0024】
第2接合領域121は、ガラス板102と基体101とを接合する。また、第2接合領域121は、ガラス板102と基体101との間で第1導圧路109の領域を囲って配置され、平面視で第1導圧路109の領域の周方向に均一な幅とされている。また、平面視で重ねて見た状態において、第2接合領域121は、第1未接合領域112の内側に設けられている。
【0025】
第2未接合領域122は、第2接合領域121の周囲に設けられている。第2未接合領域122は、ガラス板102と基体101とが接合されていない領域である。また、平面視で重ねて見た状態において、第2未接合領域122は、第1接合領域111から第1未接合領域112にかけて形成されている。
【0026】
また、実施の形態では、ガラス板102と基体101との間で、第2未接合領域122の周囲に設けられた第3接合領域123を備える。ただし、第3接合領域123は、第2未接合領域122の周囲全周を囲む必要はなく一部囲まれていない部分があってもよい。言い換えると、第3接合領域123は第2未接合領域の周囲の少なくとも1か所を囲めばよい。また、第3接合領域123は、ガラス板102と基体101とを接合する領域である。また、第1半導体層103とガラス板102との間で、第2導圧路110が形成されている箇所の周囲には、第4接合領域113を備える。第4接合領域113は、第1半導体層103とガラス板102とを接合する領域であり、第2領域142において、第1未接合領域112より外周側に形成されている。
【0027】
特許文献1に示されているように、第1半導体層103とガラス板102との間に第1未接合領域112を設けることで、第1歪計測部108a、第2歪計測部108b、第3歪計測部108c、第4歪計測部108dに発生する応力を調整して、ゼロ点シフトの調整が可能である。
【0028】
しかしながら、ガラス板102を介して第1半導体層103、第2半導体層104が配置されるガラス板102を、半導体からなる基体101の上に形成する構成では、第1未接合領域112を設けても、ゼロ点シフトが残る場合がある。これは、基体101、ガラス板102、第1半導体層103、第2半導体層104の積層構造からなるセンサチップは剛性が高くなるため、第1未接合領域112だけでは調整が十分にできないためと考えられる。
【0029】
これに対し、上述した実施の形態によれば、第1半導体層103とガラス板102との間の第1未接合領域112に加え、ガラス板102と基体101との間の第2未接合領域122を備えるので、温度によるゼロ点シフトを抑制することが可能となる。なお、ダイアフラム107の一方の面および他方の面に加わる圧力の差がゼロのときに、第1歪計測部108a、第2歪計測部108b、第3歪計測部108c、第4歪計測部108dによるブリッジ回路の出力電圧がゼロとなるように、第1未接合領域112、第2未接合領域122を設ける。
【0030】
例えば、未接合領域は、対応する領域の第1半導体層103や基体101の接合面を、エッチング処理により数μm薄くすることで形成することができる。また、未接合領域は、例えば、対応する領域のガラス板102の接合面を、エッチング処理により数μm薄くすることで形成することができる。
【0031】
以上に説明したように、本発明によれば、ガラス板と基体とを接合する第2接合領域の周囲に第2未接合領域を設けたので、半導体による基体の上にガラス板を介して配置されるセンサチップに組み込まれた差圧計における出力のゼロ点シフトが抑制できるようになる。
【0032】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0033】
101…基体、102…ガラス板、103…第1半導体層、104…第2半導体層、105…第1圧力室、106…第2圧力室、107…ダイアフラム、108a…第1歪計測部、108b…第2歪計測部、108c…第3歪計測部、108d…第4歪計測部、109…第1導圧路、110…第2導圧路、111…第1接合領域、112…第1未接合領域、113…第4接合領域、121…第2接合領域、122…第2未接合領域、123…第3接合領域、141…第1領域、142…第2領域。
図1A
図1B
図1C