(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138861
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08B 15/02 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
C08B15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049573
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】松本 眞
(72)【発明者】
【氏名】宮田 苑加
(72)【発明者】
【氏名】山田 喜威
【テーマコード(参考)】
4C090
【Fターム(参考)】
4C090AA04
4C090BA34
4C090BB52
4C090BB84
4C090BD08
4C090BD18
4C090CA06
4C090CA07
4C090DA02
(57)【要約】
【課題】増粘機能を付与する相手方と混合する際に、撹拌処理を行った場合に、撹拌前後における粘度低下を抑制することが可能な酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】固形分濃度0.1~5.0質量%の酸化セルロースナノファイバー分散液に対して、回転数2000~6000rpmの条件で撹拌処理を1~90分間行う撹拌工程と、前記撹拌工程後に、前記酸化セルロースナノファイバー分散液を温度4~35℃で12時間以上静置する静置工程とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分濃度0.1~5.0質量%の酸化セルロースナノファイバー分散液に対して、回転数2000~6000rpmの条件で撹拌処理を1~90分間行う撹拌工程と、
前記撹拌工程後に、前記酸化セルロースナノファイバー分散液を温度4~35℃で12時間以上静置する静置工程とを含む
粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
【請求項2】
前記静置工程後に、前記酸化セルロースナノファイバー分散液を固形分濃度0.1~0.8質量%まで希釈する希釈化工程をさらに含む、請求項1に記載の粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
【請求項3】
前記酸化セルロースナノファイバーは、酸化セルロースナノファイバーの絶乾質量に対してカルボキシルキ量が0.2~2.0mmol/gである、請求項1又は2に記載の粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
【請求項4】
前記希釈化工程において、酸化セルロースナノファイバーの固形分100質量部に対して、さらに分散剤を5~100質量部添加することを特徴とする、請求項2に記載の粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
【請求項5】
前記希釈化工程後に、前記酸化セルロースナノファイバー分散液中の酸化セルロースナノファイバーの固形分100質量部に対して、分散剤を5~100質量部添加し、混合する工程をさらに含む、請求項2に記載の粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルの領域すなわち原子や分子のスケールにおいて物質を自在に制御する技術であるナノテクノロジーから様々な便利な新素材やデバイスが生み出されることが期待される。植物繊維を細かく解すことで得られるセルロースナノファイバーもその一つであり、このセルロースナノファイバーは非常に結晶性が高く、低い熱膨張係数と高い弾性率を特徴とすることに加え、高いアスペクト比を有するため、ゴムや樹脂へ複合化することで強度付与、形状安定化といった効果が期待されている。また、このセルロースナノファイバーは、分散液の状態では擬塑性やチキソトロピー性といった粘度特性を有し、増粘剤などの添加剤としても効果が期待されている。
【0003】
このセルロースナノファイバーに関する様々な開発や研究が行われており、例えば、特許文献1には、セルロースの水酸基の一部がカルボキシル基化された数平均繊維径が2~150nmの微細セルロース繊維(セルロースナノファイバー)が開示されている。このセルロースナノファイバーは、低せん断速度における粘度が高く、高せん断速度における粘度が低い特性を有している。セルロースナノファイバーは、このような粘度特性を有するため、化粧品、食品、土木、建材、インキ、塗料など様々な分野において、増粘剤として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のセルロースナノファイバーを増粘剤として用いる場合、増粘機能を付与する相手方と混合する際に、撹拌処理を行うと、粘度が大幅に低下する問題があった。
【0006】
このため、本発明は、増粘機能を付与する相手方と混合する際に、撹拌処理を行った場合に、撹拌前後における粘度低下を抑制することが可能な酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の(1)~(5)を提供する。
(1) 固形分濃度0.1~5.0質量%の酸化セルロースナノファイバー分散液に対して、回転数2000~6000rpmの条件で撹拌処理を1~90分間行う撹拌工程と、前記撹拌工程後に、前記酸化セルロースナノファイバー分散液を温度4~35℃で12時間以上静置する静置工程とを含む粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
(2) 前記静置工程後に、前記酸化セルロースナノファイバー分散液を固形分濃度0.1~0.8質量%まで希釈する希釈化工程をさらに含む、(1)に記載の粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
(3) 前記酸化セルロースナノファイバーは、酸化セルロースナノファイバーの絶乾質量に対してカルボキシルキ量が0.2~2.0mmol/gである、(1)又は(2)に記載の粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
(4) 前記希釈化工程において、酸化セルロースナノファイバーの固形分100質量部に対して、さらに分散剤を5~100質量部添加することを特徴とする、(2)に記載の粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
(5) 前記希釈化工程後に、前記酸化セルロースナノファイバー分散液中の酸化セルロースナノファイバーの固形分100質量部に対して、分散剤を5~100質量部添加し、混合する工程をさらに含む、(2)に記載の粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、増粘機能を付与する相手方と混合する際に、撹拌処理を行った場合に、撹拌前後における粘度低下を抑制することが可能な酸化セルロースナノファイバー分散液の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー(酸化CNF)分散液の製造方法は、固形分濃度0.1~5.0質量%の酸化セルロースナノファイバー分散液に対して、回転数2000~6000rpmの条件で撹拌処理を1~90分間行う撹拌工程と、前記撹拌工程後に、前記酸化セルロースナノファイバー分散液を温度4~35℃で12時間以上静置する静置工程とを含む。
【0010】
(酸化セルロースナノファイバー(酸化CNF))
本発明で用いられる酸化CNFは、セルロース原料にカルボキシル基を導入して得られる酸化セルロースを解繊することによって得ることができる。
【0011】
(原料)
セルロース原料としては、例えば、植物性材料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物性材料(例えば、ホヤ類)、藻類、微生物(例えば、酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物を起源とするものを挙げることができ、いずれも使用することができる。好ましくは、植物又は微生物由来のセルロース原料であり、より好ましくは、植物由来のセルロース原料である。
【0012】
(カルボキシル基の導入)
上記のセルロース原料を公知の方法で酸化(カルボキシル化)することにより、セルロース原料にカルボキシル基を導入することができる。
【0013】
酸化の一例として、セルロース原料を、N-オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物との存在下で酸化剤を用いて水中で酸化する方法がある。この酸化反応により、セルロース表面のピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化される。その結果、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基(-COOH)又はカルボキシレート基(-COO-)を有する酸化セルロースを得ることができる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5質量%以下であることが好ましい。
【0014】
N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生し得る化合物をいう。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル(TEMPO)及びその誘導体(例えば、4-ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。
【0015】
N-オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であればよく、特に制限されない。絶乾1gのセルロースに対して、0.01mmol~10mmolが好ましく、0.01mmol~1mmolがより好ましく、0.05mmol~0.5mmolがさらに好ましい。また、その濃度は、反応系に対し、0.1mmol/L~4mmol/L程度が好ましい。
【0016】
臭化物とは臭素を含む化合物であり、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。
【0017】
臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物及びヨウ化物の合計量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.1mmol~100mmolが好ましく、0.1mmol~10mmolがより好ましく、0.5mmol~5mmolがさらに好ましい。
【0018】
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物等がある。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0019】
酸化剤の使用量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.5mmol~500mmolが好ましく、0.5mmol~50mmolがより好ましく、1mmol~25mmolがさらに好ましい。また、例えば、N-オキシル化合物1molに対して1mol~40molが好ましい。
【0020】
セルロースの酸化工程は、比較的温和な条件であっても反応を効率よく進行させられる。そのため、反応温度は4℃~40℃が好ましく、15℃~30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHは低下する。酸化反応を効率よく進行させるために、反応途中で水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを8~12、好ましくは10~11程度に維持することが好ましい。反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じ難い等の理由で、水が好ましい。
【0021】
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常、0.5時間~6時間であり、0.5時間~4時間であることが好ましい。
【0022】
また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段階目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一又は異なる反応条件で酸化することにより、1段階目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化することができる。
【0023】
他の例として、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより酸化する方法がある。この酸化反応により、ピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
【0024】
オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50g/m3~250g/m3であることが好ましく、50g/m3~220g/m3であることがより好ましい。セルロース原料に対するオゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100質量部とした際に、0.1質量部~30質量部であることが好ましく、5質量部~30質量部であることがより好ましい。
【0025】
オゾン処理温度は、0℃~50℃であることが好ましく、20℃~50℃であることがより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、1分~360分程度であり、30分~360分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。
【0026】
オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸等が挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を調製し、溶液中にセルロース原料を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
【0027】
酸化セルロースの変性度を示すカルボキシル基の量は、上記した酸化剤の添加量、反応時間等の反応条件をコントロールすることで調整することができる。なお、カルボキシル基の量は、酸化セルロースの絶乾質量に対して、好ましくは0.2~2.0mmol/g程度であり、より好ましくは0.5~1.6mmol/gである。0.2mmol/g未満であると酸化CNFへと解繊するためには多大なエネルギーが必要となる。また、2.0mmolを超えた酸化セルロースを原料に用いた場合、得られる酸化CNFは繊維形態を有していない。なお、酸化セルロースのカルボキシル基量とセルロースナノファイバーとしたときのカルボキシル基量は通常、同じである。
【0028】
(解繊)
解繊に用いる装置は特に限定されないが例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧又は超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーがより好ましい。装置は、セルロース原料又は酸化セルロース(通常は分散液)に強力なせん断力を印加できることが好ましい。装置が印加できる圧力は、50MPa以上が好ましく、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。装置は、セルロース原料又は酸化セルロース(通常は分散液)に上記圧力を印加でき、かつ強力なせん断力を印加できる、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーが好ましい。これにより、解繊を効率的に行うことができる。解繊装置での処理(パス)回数は、1回でもよいし2回以上でもよく、2回以上が好ましい。
【0029】
分散処理においては通常、溶媒に酸化セルロースを分散する。溶媒は、酸化セルロースを分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等の親水性の有機溶媒)、それらの混合溶媒が挙げられる。セルロース原料が親水性であることから、溶媒は水であることが好ましい。
【0030】
分散液中の酸化セルロースの固形分濃度は、通常は0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。これにより、セルロース繊維原料の量に対する液量が適量となり効率的である。上限は、通常10質量%以下、好ましくは6質量%以下である。これにより流動性を保持することができる。
【0031】
解繊処理と分散処理の順序は特に限定されず、どちらを先に行ってもよいし同時に行ってもよいが、分散処理後に解繊処理を行うことが好ましい。各処理の組み合わせを少なくとも1回行えばよく、2回以上繰り返してもよい。
【0032】
解繊処理又は分散処理に先立ち、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理は、高速せん断ミキサーなどの混合、撹拌、乳化、分散装置を用いて行えばよい。
【0033】
本発明の酸化CNFの平均繊維径は、3nm以上又は500nm以下であることが好ましい。セルロースナノファイバーの平均繊維径及び平均繊維長の測定は、例えば、酸化CNFの0.001質量%水分散液を調製し、この希釈分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥させて観察用試料を作成し、原子間力顕微鏡(AFM)にて観察した形状像の断面高さを計測することにより、数平均繊維径あるいは繊維長として算出することができる。
【0034】
また、酸化CNFの平均アスペクト比は、通常は50以上である。上限は特に限定されないが、通常は1000以下である。平均アスペクト比は下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0035】
(撹拌工程)
本発明の撹拌工程においては、固形分濃度0.1~5.0質量%の酸化セルロースナノファイバー分散液に対して、回転数2000~6000rpmの条件で撹拌処理を1~90分間行う。撹拌工程に供する酸化CNF分散液の固形分濃度は、0.1~5.0質量%であり、好ましくは0.1~3.0質量%である。濃度が高すぎると撹拌が困難となり、濃度が低すぎると他の材料に添加する際にCNF添加量が低くなり増粘剤としての使用が困難となる。撹拌工程に供する酸化CNF分散液としては、固形分濃度が上記範囲内であれば、上記の分散・解繊処理後の酸化CNF分散液をそのまま撹拌工程に供することができる。固形分濃度は、適宜、希釈、脱水等することにより調整可能である。撹拌工程における回転数は、CNF分散液全体をしっかりと撹拌する観点から2000~6000rpmであり、好ましくは2000~3000rpmである。撹拌処理の時間は、CNF分散液全体に撹拌によるせん断の効果を与える観点から1~90分間であり、好ましくは5~60分間、より好ましくは10~60分間である。
【0036】
撹拌工程で用いる撹拌機としては、上記の回転数で固形分濃度0.1~5.0質量%の酸化CNF分散液を撹拌できるものであれば特に限定されず、例えば、高速撹拌機、高速乳化分散機等が挙げられ、高速撹拌機としては例えばプライミクス社製のホモディスパー等を用いることができる。
【0037】
(静置工程)
本発明の静置工程においては、撹拌工程後の酸化CNF分散液を、温度4~35℃、好ましくは6~25℃で、12時間以上、好ましくは24時間以上静置する。静置する時間の上限は特に限定されないが、長期での保管の観点から、例えば10日以下である。静置する時間が短すぎると、撹拌直後の一時的な減粘が回復しない虞がある。静置工程においては、CNF分散液中の水分の蒸発を防ぐため、酸化CNF分散液を容器に入れて静置することが好ましい。容器の材質は、ガラス瓶やプラスチック製など、特に限定されない。容器は、蓋を閉めることができものであることが好ましい。
【0038】
(希釈化工程)
本発明の製造方法は、静置工程後に、希釈化工程を含むものであっても良い。希釈化工程を含む場合は、酸化CNFの固形分濃度が、好ましくは0.1~0.8質量%、より好ましくは0.1~0.6質量%となるまで希釈する。希釈に用いる溶媒は、希釈前の分散液の溶媒と同じであってもよいし、異なるものであってもよく、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等の親水性の有機溶媒)、それらの混合溶媒が挙げられる。セルロース原料が親水性であることから、溶媒は水であることが好ましい。希釈化工程においては、均一に希釈できれば撹拌・混合条件は特に限定されないが、例えば回転数1000rpmで10分間撹拌することにより希釈化する。
【0039】
(分散剤)
本発明の製造方法で製造される酸化CNF分散液は、分散剤を含むものであってもよい。分散剤を添加する場合におけるその添加量は、CNFの固形分量の観点から酸化CNFの固形分100質量部に対して、5~100質量部が好ましく、10~50質量部がより好ましい。分散剤の種類としては、本発明の効果を奏する限り特に制限なく用いることができ、例えば、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリウレタン分散剤等が挙げられる。
【0040】
分散剤を含む場合において、分散剤を添加する工程は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、撹拌工程において分散剤を添加してもよいし、希釈化工程において分散剤を添加してもよいし、希釈化工程後に分散剤を添加し、混合する工程を設けてもよい。なお、希釈化工程を設けない場合は、静置工程後に分散剤を添加し、混合する工程を設けてもよい。撹拌工程および希釈化工程以外で分散剤を添加・混合する場合において、撹拌、混合に用いる装置は特に限定されず、慣用される撹拌装置を用いればよい。撹拌時間も特に限定されず、1分から1時間程度の範囲で撹拌すればよい。
【0041】
(粘度保持率)
酸化セルロースナノファイバー分散液の粘度保持率は、以下に示す安定性試験により撹拌前の粘度および撹拌後の粘度を求め、それらの値から下式により算出することができる。
粘度保持率(%)=(撹拌後の粘度/撹拌前の粘度)×100
【0042】
(安定性試験)
希釈化工程直後の酸化セルロースナノファイバー分散液について、B型粘度計を用いて6rpm、23℃、1分間の条件で、B型粘度を測定する(撹拌前の粘度)。なお、希釈化工程が必要ない場合には、静置工程後に撹拌(1000rpm、10分間)することにより剪断力を加えた分散液に対して、同様の条件にて撹拌前の粘度を測定すればよく、希釈化工程後に分散剤を添加、混合する工程を含む場合は、当該工程後の分散液に対して、同様の条件にて撹拌前の粘度を測定すればよい。
【0043】
B型粘度を測定し終えた酸化セルロースナノファイバー分散液は、高速撹拌機を用いて30分間撹拌(1000rpm、23℃)する。30分間撹拌した直後に、B型粘度計を用いて6rpm、23℃、1分間の条件で、B型粘度を測定する(撹拌後の粘度)。高速撹拌機としては、例えば、プライミクス社製のホモディスパー等を使用することができる。
【0044】
本発明の製造方法によれば、粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液を製造することができる。
【0045】
なお、本発明の製造方法により、粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液を得ることができる理由としては、以下のように考えられる。
酸化セルロースを解繊することによりセルロースナノファイバーを得ることが可能であり、ここで得られたセルロースナノファイバーは、繊維1本1本はナノレベルまで膨潤(解繊)しているが、解繊前から存在していたセルロース繊維の物理的な絡まり合いが残った状態である。このような酸化セルロースナノファイバーの分散液を、安定性試験の条件(1000rpm、23℃)で撹拌すると、絡まっていたナノファイバー同士がほぐれ、分散状態が変化し、ほぐれたナノファイバーが一定方向に配向することにより擬塑性が発現し、粘度が下がる。
本発明の製造方法においては、安定性試験を行う前に撹拌工程を設けるため、撹拌工程において、解繊後に残っているセルロース繊維の物理的な絡まり合いを解消することができる。したがって、安定性試験の前後における粘度の低下が抑制されることになり、結果的に、粘度保持率が改善された酸化セルロースナノファイバー分散液を製造することができる。
【実施例0046】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
(カルボキシル基量の測定方法)
酸化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した:
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロ
ース質量〔g〕
【0048】
(安定性試験)
実施例及び比較例の酸化セルロースナノファイバー水分散液について、希釈化工程直後に、B型粘度計を用いて6rpm、23℃、1分間の条件で、B型粘度を測定した(撹拌前の粘度)。
【0049】
B型粘度を測定し終えた酸化セルロースナノファイバー水分散液は、高速撹拌機(プライミクス社製、ホモディスパー)を用いて30分間撹拌(1000rpm、23℃)した。30分間撹拌した直後に、B型粘度計を用いて6rpm、23℃、1分間の条件で、B型粘度を測定した(撹拌後の粘度)。
【0050】
(粘度保持率)
粘度保持率は、安定性試験で測定した撹拌前の粘度及び撹拌後の粘度を用いて、下記式により求めた。
式:粘度保持率(%)=(撹拌後の粘度/撹拌前の粘度)×100
【0051】
(製造例A)
(酸化セルロースナノファイバー水分散液Aの製造)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)20mg(絶乾1gのセルロースに対し0.025mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムが5.1mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水で洗浄することで酸化されたパルプ(酸化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は60分、カルボキシル基量(以下、「変性度」ということがある)は1.46mmol/gであった。これを水で1.0質量%に調整し、高圧ホモジナイザーを用いて、3回解繊処理を実施することで、酸化セルロースナノファイバー水分散液Aを得た。平均繊維径は4nm、アスペクト比は270であった。
【0052】
(製造例B)
(酸化セルロースナノファイバー水分散液Bの製造)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)20mg(絶乾1gのセルロースに対し0.025mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムが3.4mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水で洗浄することで酸化されたパルプ(酸化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は92%であり、酸化反応に要した時間は60分、カルボキシル基量(以下、「変性度」ということがある)は1.1mmol/gであった。これを水で1.0質量%に調整し、高圧ホモジナイザーを用いて、3回解繊処理を実施することで、酸化セルロースナノファイバー水分散液Bを得た。平均繊維径は4nm、アスペクト比は273であった。
【0053】
(製造例C)
(酸化セルロースナノファイバー水分散液Cの製造)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)20mg(絶乾1gのセルロースに対し0.025mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムが1.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水で洗浄することで酸化されたパルプ(酸化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は93%であり、酸化反応に要した時間は60分、カルボキシル基量(以下、「変性度」ということがある)は0.58mmol/gであった。これを水で1.0質量%に調整し、高圧ホモジナイザーを用いて、5回解繊処理を実施することで、酸化セルロースナノファイバー水分散液Cを得た。平均繊維径は4nm、アスペクト比は290であった。
【0054】
(製造例D)
(酸化セルロースナノファイバー水分散液Dの製造)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)20mg(絶乾1gのセルロースに対し0.025mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムが2.2mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水で洗浄することで酸化されたパルプ(酸化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は93%であり、酸化反応に要した時間は60分、カルボキシル基量は0.76mmol/gであった。これを水で1.0質量%に調整し、高圧ホモジナイザーを用いて、5回解繊処理を実施することで、酸化セルロースナノファイバー水分散液Dを得た。平均繊維径は4nm、アスペクト比は280であった。
【0055】
(実施例1)
(撹拌工程)
製造例Aで得られた固形分濃度1.0質量%の酸化セルロースナノファイバー水分散液Aは、高速撹拌機(プライミクス社製、ホモディスパー)を用いて、回転数3000rpmの条件で撹拌処理を5分間行った。
【0056】
(静置工程)
上記の撹拌工程において撹拌処理を行った酸化セルロースナノファイバー水分散液Aをプラスチック容器に入れ、23℃で7日間静置した。
【0057】
(希釈化工程)
静置工程を行った酸化セルロースナノファイバー水分散液Aを、プラスチック容器に入れ、脱イオン水を添加して撹拌(1000rpm、10分間)することで、固形分濃度0.5質量%に希釈した酸化セルロースナノファイバー水分散液Aを得た。
【0058】
この希釈した酸化セルロースナノファイバー水分散液Aに対して、安定性試験を実施し、撹拌前と撹拌後のB型粘度の値を得た。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例2~4)
撹拌工程において、撹拌処理の時間をそれぞれ15分間(実施例2)、30分間(実施例3)、60分間(実施例4)に変更したこと以外は実施例1と同様に、撹拌工程、静置工程、希釈化工程をこの順で行い、安定性試験を実施した。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例5)
製造例Bで得られた酸化セルロースナノファイバー水分散液Bを用いたこと以外は実施例1と同様に撹拌工程、静置工程、希釈化工程をこの順で行い、安定性試験を実施した。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例6~8)
撹拌工程において、撹拌処理の時間をそれぞれ15分間(実施例6)、30分間(実施例7)、60分間(実施例8)に変更したこと以外は実施例5と同様に、撹拌工程、静置工程、希釈化工程をこの順で行い、安定性試験を実施した。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例9)
製造例Cで得られた酸化セルロースナノファイバー水分散液Cを用いたこと以外は、実施例1と同様に撹拌工程、静置工程、希釈化工程をこの順で行い、安定性試験を実施した。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例10~12)
撹拌工程において、撹拌処理の時間をそれぞれ15分間(実施例10)、30分間(実施例11)、60分間(実施例12)に変更したこと以外は実施例9と同様に、撹拌工程、静置工程、希釈化工程をこの順で行い、安定性試験を実施した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1)
撹拌工程を行わず、静置工程において撹拌処理を行った酸化セルロースナノファイバー水分散液Aに代えて、撹拌処理を行っていないものを用いたこと以外は、実施例1と同様に静置工程、および希釈化工程を行い、固形分濃度0.5質量%の酸化セルロースナノファイバー水分散液を得た。この酸化セルロースナノファイバー水分散液に対して、安定性試験を実施した。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
撹拌工程を行わず、静置工程において撹拌処理を行った酸化セルロースナノファイバー水分散液Bに代えて、撹拌処理を行っていないものを用いたこと以外は、実施例5と同様に静置工程、および希釈化工程を行い、固形分濃度0.5質量%の酸化セルロースナノファイバー水分散液を得た。この酸化セルロースナノファイバー水分散液に対して、安定性試験を実施した。結果を表1に示す。
【0066】
(比較例3)
撹拌工程を行わず、静置工程において撹拌処理を行った酸化セルロースナノファイバー水分散液Cに代えて、撹拌処理を行っていないものを用いたこと以外は、実施例9と同様に静置工程、および希釈化工程を行い、固形分濃度0.5質量%の酸化セルロースナノファイバー水分散液を得た。この酸化セルロースナノファイバー水分散液に対して、安定性試験を実施した。結果を表1に示す。
【0067】
【0068】
表1からわかるように、0.1~5.0質量%の酸化セルロースナノファイバー分散液に対して、回転数2000~6000rpmの条件で撹拌処理を1~90分間行う撹拌工程と、撹拌工程後に、酸化セルロースナノファイバー分散液を温度4~35℃で12時間以上静置する静置工程とを含む実施例1~12の方法を用いると、撹拌工程を行わなかった比較例1~3と変性度が同じもの同士で比べた場合には、得られた酸化セルロースナノファイバー分散液は粘度保持率が改善されたものであった。
【0069】
(実施例13)
製造例Dで得られた酸化セルロースナノファイバー水分散液Dを用い、撹拌処理の時間を15分間に変更したこと以外は実施例1と同様に、撹拌工程、静置工程をこの順で実施した。
【0070】
(希釈化工程)
静置工程を行った酸化セルロースナノファイバー水分散液Dをプラスチック容器に入れ、さらに分散剤としてポリアクリル酸(東亜合成社製、アロンA-7100、以下「PAA」と略記することがある。)を、酸化セルロースナノファイバーの固形分100質量部に対して20質量部となるように添加した。さらに、このプラスチック容器に脱イオン水を添加して撹拌(1000rpm、10分間)することで、分散液の全体量に対して、それぞれ酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度が0.5質量%、分散剤の濃度が0.1質量%の分散液を得た。
【0071】
得られた分散液に対して、安定性試験を実施し、撹拌前と撹拌後のB型粘度の値を得た。結果を表2に示す。
【0072】
(実施例14)
分散剤をカルボキシメチルセルロース(日本製紙社製、サンローズA04SH、以下「CMC」と略記することがある。)に変えたこと以外は、実施例13と同様にして酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度が0.5質量%、分散剤の濃度が0.1質量%の分散液を得た。得られた分散液に対して安定性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0073】
(実施例15)
製造例Dで得られた酸化セルロースナノファイバー水分散液Dに代えて、製造例Cで得られた酸化セルロースナノファイバー水分散液Cを用いたこと以外は、実施例13と同様にして酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度が0.5質量%、分散剤の濃度が0.1質量%の分散液を得た。得られた分散液に対して安定性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0074】
(実施例16)
製造例Dで得られた酸化セルロースナノファイバー水分散液Dに代えて、製造例Cで得られた酸化セルロースナノファイバー水分散液Cを用いたこと以外は、実施例14と同様にして酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度が0.5質量%、分散剤の濃度が0.1質量%の分散液を得た。得られた分散液に対して安定性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0075】
(比較例4~5)
撹拌工程を行わず、静置工程において撹拌処理を行った酸化セルロースナノファイバー水分散液Dに代えて、撹拌処理を行っていないものを用いたこと以外は、実施例13および実施例14と同様に静置工程、および希釈化工程を行い、それぞれ比較例4および比較例5の酸化セルロースナノファイバーの固形分濃度が0.5質量%、分散剤の濃度が0.1質量%の分散液を得た。得られた分散液に対して安定性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0076】
【0077】
表2からわかるように、0.1~5.0質量%の酸化セルロースナノファイバー分散液に対して、回転数2000~6000rpmの条件で撹拌処理を1~90分間行う撹拌工程と、撹拌工程後に、酸化セルロースナノファイバー分散液を温度4~35℃で12時間以上静置する静置工程とを含む実施例13~16の方法を用いると、撹拌工程を行わなかった比較例4、5と比べて、得られた酸化セルロースナノファイバー分散液は、分散剤が添加されている場合であっても粘度保持率が改善されたものであった。