(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138862
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01P 5/20 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G01P5/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049576
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】山本 真士
(57)【要約】
【課題】 粒子の拡散ルートと集約箇所を予測することにある。
【解決手段】 情報処理装置は、撮像装置から複数の粒子画像を取得し、取得した複数の粒子画像に対してPIV(Particle Image Velocimetry)解析処理を実行して、フレームごとに流速ベクトル場を算出するPIV解析部と、フレームごとの流速ベクトル場に基づいて、あらかじめ設定された期間経過後の対象の粒子それぞれの座標を算出する座標算出部と、対象の粒子それぞれに対する有限時間リアプノフ指数を算出し、算出した有限時間リアプノフ指数に基づいて、対象の粒子それぞれの拡散ルートと集約箇所を特定する集約特定部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置から複数の粒子画像を取得し、取得した複数の粒子画像に対してPIV(Particle Image Velocimetry)解析処理を実行して、フレームごとに流速ベクトル場を算出するPIV解析手段と、
前記フレームごとの前記流速ベクトル場に基づいて、あらかじめ設定された期間経過後の対象の粒子それぞれの座標を算出する座標算出手段と、
前記対象の粒子それぞれに対する有限時間リアプノフ指数を算出し、算出した前記有限時間リアプノフ指数に基づいて、前記対象の粒子それぞれの集約箇所を特定する集約特定手段と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記集約特定手段は、算出した前記有限時間リアプノフ指数の中から、あらかじめ設定した閾値以上の有限時間リアプノフ指数を抽出し、抽出した有限時間リアプノフ指数に対応する粒子の座標を結んだ曲線に基づいて、前記対象の粒子それぞれの集約箇所を特定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
情報処理装置が、
撮像装置から複数の粒子画像を取得し、取得した複数の粒子画像に対してPIV(Particle Image Velocimetry)解析処理を実行して、フレームごとに流速ベクトル場を算出し、
前記フレームごとの前記流速ベクトル場に基づいて、あらかじめ設定された期間経過後の対象の粒子それぞれの座標を算出し、
前記対象の粒子それぞれに対する有限時間リアプノフ指数を算出し、算出した前記有限時間リアプノフ指数に基づいて、前記対象の粒子それぞれの集約箇所を特定する、
情報処理方法。
【請求項4】
算出した前記有限時間リアプノフ指数の中から、あらかじめ設定した閾値以上の有限時間リアプノフ指数を抽出し、抽出した有限時間リアプノフ指数に対応する粒子の座標を結んだ曲線に基づいて、前記対象の粒子それぞれの集約箇所を特定する、
請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
コンピュータが、
撮像装置から複数の粒子画像を取得し、取得した複数の粒子画像に対してPIV(Particle Image Velocimetry)解析処理を実行して、フレームごとに流速ベクトル場を算出させ、
前記フレームごとの前記流速ベクトル場に基づいて、あらかじめ設定された期間経過後の対象の粒子それぞれの座標を算出させ、
前記対象の粒子それぞれに対する有限時間リアプノフ指数を算出し、算出した前記有限時間リアプノフ指数に基づいて、前記対象の粒子それぞれの集約箇所を特定させる、
命令を含むプログラム。
【請求項6】
算出した前記有限時間リアプノフ指数の中から、あらかじめ設定した閾値以上の有限時間リアプノフ指数を抽出し、抽出した有限時間リアプノフ指数に対応する粒子の座標を結んだ曲線に基づいて、前記対象の粒子それぞれの集約箇所を特定する、
請求項5に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛沫(粒子)の拡散ルートを予測する情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための対策が行われている。対策の中でも、感染の原因である飛沫の拡散予防は不可欠であるので、感染リスクが低い環境の構築が重要である。そこで、飛沫の拡散ルートの予測を、オイラー的視点又はラグランジュ的視点で解析し、予測結果に基づいて感染リスクが低い環境を構築することが知られている。
【0003】
なお、オイラー的視点による解析は、一定の座標値の位置を注目対象として固定し、そこに存在する流体粒子が入れ替わることを前提とし、各時点に存在する運動方程式を用いた解析である。ラグランジュ的視点による解析は、流体中の粒子それぞれに着目し、それら粒子の運動を追いかける解析である。なお、ラグランジュ的視点による解析では、大域的な流体構造を予測することができる。
【0004】
関連する技術して特許文献1、2にはラグランジュ的視点による解析について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-125014号公報
【特許文献2】特開2013-185939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に開示の技術は、粒子の拡散ルートと集約箇所を予測するものではない。
【0007】
本開示の目的の一例は、粒子の拡散ルートと集約箇所を予測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の一側面における情報処理装置は、
撮像装置から複数の粒子画像を取得し、取得した複数の粒子画像に対してPIV(Particle Image Velocimetry)解析処理を実行して、フレームごとに流速ベクトル場を算出するPIV解析部と、
前記フレームごとの前記流速ベクトル場に基づいて、あらかじめ設定された期間経過後の対象の粒子それぞれの座標を算出する座標算出部と、
前記対象の粒子それぞれに対する有限時間リアプノフ指数を算出し、算出した前記有限時間リアプノフ指数に基づいて、前記対象の粒子それぞれの集約箇所を特定する集約特定部と、
を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本開示の一側面における情報処理方法は、
情報処理装置が、
撮像装置から複数の粒子画像を取得し、取得した複数の粒子画像に対してPIV(Particle Image Velocimetry)解析処理を実行して、フレームごとに流速ベクトル場を算出し、
前記フレームごとの前記流速ベクトル場に基づいて、あらかじめ設定された期間経過後の対象の粒子それぞれの座標を算出し、
前記対象の粒子それぞれに対する有限時間リアプノフ指数を算出し、算出した前記有限時間リアプノフ指数に基づいて、前記対象の粒子それぞれの集約箇所を特定する、
ことを特徴とする。
【0010】
さらに、上記目的を達成するため、本開示の一側面におけるプログラムは、
コンピュータに、
撮像装置から複数の粒子画像を取得し、取得した複数の粒子画像に対してPIV(Particle Image Velocimetry)解析処理を実行して、フレームごとに流速ベクトル場を算出させ、
前記フレームごとの前記流速ベクトル場に基づいて、あらかじめ設定された期間経過後の対象の粒子それぞれの座標を算出させ、
前記対象の粒子それぞれに対する有限時間リアプノフ指数を算出し、算出した前記有限時間リアプノフ指数に基づいて、前記対象の粒子それぞれの集約箇所を特定させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本開示によれば、粒子の拡散ルートと集約箇所を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、情報処理装置を有するシステムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、粒子画像の撮像方法を説明するための図である。
【
図3】
図3は、粒子の速度と流速ベクトル場の関係について説明するための図である。
【
図4】
図4は、FTLEの算出を説明するための図である。
【
図5】
図5は、FTLEで表された不安定多様体を用いた粒子の移動予測を説明するための図である。
【
図6】
図6は、情報処理装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、粒子の拡散ルートと集約箇所の予測を説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施形態における情報処理装置を実現するコンピュータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下で説明する図面において、同一の機能又は対応する機能を有する要素には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0014】
(実施形態)
図1を用いて、実施形態におけるシステムの構成について説明する。
図1は、情報処理装置を有するシステムの一例を示す図である。
【0015】
[システム構成]
図1に示すように、実施形態におけるシステムは、情報処理装置10と、照射装置20と、撮像装置30とを有する。
【0016】
情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプログラマブルなデバイス、又はGPU(Graphics Processing Unit)、又はそれらのうちのいずれか一つ以上を搭載した回路、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、モバイル端末などの情報処理装置である。
【0017】
照射装置20は、光を遮断した対象領域40(例えば暗室など)に、流体の流れを可視化するために散布された微小な粒子(トレーサ粒子)に、平面状の可視化光を照射する。平面状の可視化光は、例えば、平面レーザ光などである。ただし、可視化光は、レーザ光に限定されるものではなく、LEDなどの光源を用いた光でもよい。トレーサ粒子の粒径は、対象領域40(対象の現場:計測空間)に応じて、実験、シミュレーションなどにより決定する。
【0018】
撮像装置30は、光を遮断した対象領域40に、平面状の可視化光を照射している期間に、時系列に撮像し、複数の粒子画像を生成する。すなわち、撮像装置30は、トレーサ粒子を撮像する。撮像装置30は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ、CCD(Charge Coupled Devices)カメラなどが考えられる。なお、撮像装置30の撮像速度は、例えば、1から55[fps](frames per second)などが考えられる。ただし、撮像速度は、1から55[fps]に限定されるものではない。
【0019】
図2を用いて、粒子画像の撮像方法について説明する。
図2は、粒子画像の撮像方法を説明するための図である。
図2の例では、照射装置20が、対象領域40に平面状の可視化光21を照射し、照射している期間に、撮像装置30が、対象領域40に散布されたトレーサ粒子1それぞれを時系列に撮像し、撮像した複数の粒子画像31を順次、情報処理装置10に出力する。
【0020】
情報処理装置10について説明する。
情報処理装置10は、PIV(PIV:Particle Image Velocimetry)解析部11と、座標算出部12と、集約特定部13とを有する。
【0021】
PIV解析部11は、撮像装置30から粒子画像を取得し、取得した粒子画像に対してPIV解析処理を実行して、フレームごとに流速ベクトル場を算出する。
【0022】
流体の流速ベクトル場vbは、変位ベクトルΔxをフレーム間隔(微小時間Δt)で割ることで算出する(vb≒Δx/Δt)。
【0023】
変位ベクトルΔxは、連続した粒子画像の微小の領域内の輝度値分布を用いて相互相関関数を求め、最大値となる変位を検査領域内の粒子群の平均変位ベクトルとして算出する。
【0024】
また、PIV解析処理中に、可視化光の平面から粒子が出入りするので、追跡していた粒子の追跡ができなくなったり、急に粒子が出現したりする場合、変位ベクトルΔxを、各計測点の周囲の平均変位ベクトル、又は、相互相関関数の中央値で求めた変位ベクトルを用いて、補正する。
【0025】
座標算出部12は、フレームごとの流速ベクトル場に基づいて、あらかじめ設定された期間経過後の粒子それぞれの座標を算出する。座標算出部12では、ラグランジュ的な視点で粒子それぞれの拡散ルートを解析する。
【0026】
具体的には、座標算出部12では、開始時点t0から、微小時間Δt経過するごとに、粒子それぞれの座標を算出する。流速ベクトル場は、微小時間Δtごとに変化するので、流速ベクトル場を用いることで、粒子の正確な位置が算出できる。
【0027】
粒子の速度は、流速ベクトル場と粒子座標の比率を用いて表すことができる。
図3に示した粒子1の速度Vは数1のように表される。
図3は、粒子の速度と流速ベクトル場の関係について説明するための図である。
【0028】
(数1)
V= Vf1×(1-a)b
+Vf2×ab
+Vf3×(1-a)(1-b)
+Vf4×a(1-b)
V :粒子の速度
Vf1:(1)の流速ベクトル場
Vf2:(2)の流速ベクトル場
Vf3:(3)の流速ベクトル場
Vf4:(4)の流速ベクトル場
a :x軸方向の比率
b :y軸方向の比率
【0029】
図3に示した解析窓61は、PIV解析処理を実行する際に、粒子画像に設定された複数の解析窓(格子)のうちの一つを示している。
図3に示したベクトル62は、解析窓61内の粒子画像上のトレーサ粒子1′の速度を表している。
図3に示した比率aはx軸方向の比率を表し、比率bはy軸方向の比率を表している。
図3のベクトル(1)(2)(3)(4)は、解析窓61の四つの格子点それぞれの流速ベクトル場を表している。
【0030】
集約特定部13は、対象の粒子それぞれに対する有限時間リアプノフ指数を算出し、算出した有限時間リアプノフ指数に基づいて、対象の粒子それぞれの集約箇所を特定する。
【0031】
有限時間リアプノフ指数(FTLE:Finite Time Lyapunov Exponent)は、開始時点t0から時点Tintまでの期間に、対象の粒子が、近傍の粒子(上下左右)とどれくらい離れているかを表す指標である。
【0032】
FTLEが低い粒子は、近傍の粒子と同じ運動をしているため、安定しているといえる。対して、FTLEが高い粒子は、近傍の粒子から離れる運動をしているため、不安定であるといえる。
【0033】
図4を用いて、FTLEの算出について説明する。
図4は、FTLEの算出を説明するための図である。
【0034】
図4の開始時点t0における、粒子P(a,b)は、初期位置、すなわちPIV解析処理で設定した格子点上に配置されている。また、近傍の粒子P(a,b+1)、P(a+1,b)、P(a-1,b)、P(a,b-1)は、粒子P(a,b)(格子点)の上下左右に等間隔に配置されている。なお、PIV解析処理で設定された格子点から横方向の長さdx、縦方向の長さdyとする。
【0035】
また、
図4の時点Tint[秒]後の粒子の位置をP′(a,b)と表し、近傍の粒子の位置をP′(a,b+1)、P′(a+1,b)、P′(a-1,b)P′(a,b-1)と表している。
【0036】
時点Tint[秒]後における、FTLEは、中心差分を表す行列Mに基づいて求めることができる。数2にFTLEの算出方法を示す。
【0037】
【0038】
図5は、FTLEで表された不安定多様体を用いた粒子の移動予測を説明するための図である。曲線51は、FTLEの高い点を結んだ曲線である。
図5のAに示すように、不安定多様体が近くに存在するので、粒子52は曲線51から離れる動きをする。なお、不安定多様体は、FTLEの高い点の集合である。すなわち、ある固定点に収束しない点全体の集合であり、粒子から避けられる存在である。
【0039】
また、
図5のBに示したように、FTLEが高い曲線51を跨ぐ粒子52の移動は、理論上難しいと考えられる。
図5のCは、FTLEが高い曲線51を跨ぐことのできない粒子52が、曲線51内の領域で運動する様子を示した図である。
【0040】
上述した
図5A、Bで説明した、FTLEが高い曲線51に対する対象粒子52の動きを推定することで、
図5のCに示すような、粒子52の拡散ルートの予測、及び、粒子52の集約箇所を特定できる。
図5のCに示した曲線51は、FTLEが高い曲線を示している。
図5のCに示したように曲線51に囲まれた場合、粒子52は、
図5のBに示したように曲線51を跨ぐことができない。したがって、
図5のCに示したように粒子52は、曲線51は跨ぐことができないので、曲線51内の領域で運動する。
【0041】
具体的には、集約特定部13は、まず、対象の粒子それぞれに対するFTLEを算出する。次に、集約特定部13は、算出したFTLEの中から、あらかじめ設定した閾値Th以上のFTLEを抽出する。次に、集約特定部13は、抽出したFTLEに対応する粒子の座標を結んだ曲線を生成する。なお、閾値Thは、例えば、実験、シミュレーションなどにより決定する。
【0042】
次に、集約特定部13は、生成した曲線に基づいて、粒子の拡散ルートの予測、及び粒子の集約箇所を特定する。
【0043】
すなわち、粒子が、計算で導出したFTLEが高い曲線を跨ぐことは理論上ありえない。そのため、これら曲線を判断材料として今後の粒子が進むルートを予測することができる。また、曲線に囲まれた粒子であればその領域内に留まるので、どの箇所に粒子が集約されるかを特定することができる。
【0044】
[装置動作]
次に、実施形態における情報処理装置の動作について
図6、
図7を用いて説明する。
図6は、情報処理装置の動作の一例を説明するための図である。
図7は、粒子の拡散ルートと集約箇所の予測を説明するための図である。
【0045】
以下の説明においては、適宜図を参照する。また、実施形態では、情報処理装置を動作させることによって、情報処理方法が実施される。よって、実施形態における情報処理方法の説明は、以下の情報処理装置の動作説明に代える。
【0046】
図6に示すように、まず、PIV解析部11は、撮像装置30から粒子画像を取得し、取得した粒子画像に対してPIV解析処理を実行して、フレームごとに流速ベクトル場を算出する(ステップA1)。
図7のAは、格子点ごとに計測された流速ベクトル場71(矢印)を表す図である。
【0047】
次に、座標算出部12は、フレームごとの流速ベクトル場に基づいて、あらかじめ設定された期間経過後の粒子それぞれの座標を算出する(ステップA2)。
図7のBからDは、格子点ごとに計測された流速ベクトル場71と、画像上の粒子1′の座標を表す図である。
【0048】
次に、集約特定部13は、対象の粒子それぞれに対するFTLEを算出し、算出したFTLEに基づいて、それぞれの集約箇所を特定する(ステップA3)。具体的には、集約特定部13は、算出したFTLEの中から、あらかじめ設定した閾値以上のFTLEを抽出し、抽出したFTLEに対応する粒子の座標を結んだ曲線に基づいて、対象の粒子それぞれの集約箇所を特定する。
【0049】
図7のFは、格子点ごとに計測された流速ベクトル場71と、画像上の粒子1′の拡散ルート(矢印)と、集約箇所72を表す図である。
【0050】
[実施形態の効果]
実施形態によれば、上述したように、感染対策が必要な現場にて、飛沫と見立てた粒子を拡散させた動画(複数の粒子画像)を撮影する。次に、PIV解析処理によりフレームごとの流速ベクトル場を算出する。次に、流速ベクトル場を用いて、ラグランジュ的視点で大域的な流体構造を把握し、粒子(飛沫)一つ一つの移動先を予測する。その後、有限時間リアプノフ指数(FTLE)を用いた流体構造の解析を行い、粒子の集約箇所を特定する。
【0051】
また、粒子の拡散ルートと集約箇所を用いて、空気清浄機棟等の対策を行うことができる。さらに、感染予防策の効果を最大限発揮させることができる。したがって、実施形態を用いて感染リスクが低い環境づくりができる。
【0052】
また、これら解析結果を応用することで、空気清浄機の設置、換気の際に注意、部屋の家具配置の見直し、花粉などの拡散物の経路の予測ができる。
【0053】
[プログラム]
実施形態におけるプログラムは、コンピュータに、
図6に示すステップA1からA3を実行させるプログラムであればよい。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、実施形態における情報処理装置と情報処理方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、PIV解析部11、座標算出部12、集約特定部13として機能し、処理を行なう。
【0054】
また、実施形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されてもよい。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、PIV解析部11、座標算出部12、集約特定部13のいずれかとして機能してもよい。
【0055】
[物理構成]
ここで、実施形態におけるプログラムを実行することによって、情報処理装置を実現するコンピュータについて
図8を用いて説明する。
図8は、実施形態における情報処理装置を実現するコンピュータの一例を示す図である。
【0056】
図8に示すように、コンピュータ110は、CPU111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0057】
また、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU、又はFPGAを備えていても良い。この態様では、GPU又はFPGAが、実施形態におけるプログラムを実行することができる。
【0058】
CPU111は、記憶装置113に格納された、コード群で構成された実施形態におけるプログラムをメインメモリ112に展開し、各コードを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置である。
【0059】
また、実施形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、実施形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0060】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0061】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0062】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)などの汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0063】
なお、実施形態における情報処理装置10は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェア、例えば、電子回路を用いることによっても実現可能である。更に、情報処理装置10は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。実施形態において、コンピュータは、
図8に示すコンピュータに限定されることはない。
【0064】
以上、実施形態を参照して発明を説明したが、発明は上述した実施形態に限定されるものではない。発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
上述した記載によれば、粒子の拡散ルートと集約箇所を予測することができる。また、粒子の分析が必要な分野において有用である。
【符号の説明】
【0066】
10 情報処理装置
11 PIV解析部
12 座標算出部
13 集約特定部
20 照射装置
30 撮像装置
40 対象領域
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス