(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138894
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ミクロフィブリルセルロースの製造方法及びダブルディスクリファイナー
(51)【国際特許分類】
D21H 11/18 20060101AFI20241002BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20241002BHJP
D21D 1/30 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
D21H11/18
D21H15/02
D21D1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049611
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】中田 咲子
(72)【発明者】
【氏名】高山 雅人
(72)【発明者】
【氏名】寺坂 博史
(72)【発明者】
【氏名】渡部 啓吾
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AC06
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG07
4L055AG99
4L055BB03
4L055CA16
4L055CB15
4L055EA03
4L055EA16
4L055EA25
4L055EA32
(57)【要約】
【課題】ダブルディスクリファイナーにおけるメタルタッチによる刃の消耗、原料への鉄粉の混入を防止しつつミクロフィブリルセルロースの製造を行う。
【解決手段】ダブルディスクリファイナーを用いてパルプ原料からミクロフィブリルセルロースを製造するミクロフィブリルセルロースの製造方法であって、前記パルプ原料を前記ダブルディスクリファイナーにより叩解する叩解工程と、前記叩解工程中に実施される、回転軸方向に固定されたローターを挟んで設けられた第1移動式固定歯及び第2移動式固定歯の前記ローターとのクリアランスを制御する制御工程を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダブルディスクリファイナーを用いてパルプ原料からミクロフィブリルセルロースを製造するミクロフィブリルセルロースの製造方法であって、
前記パルプ原料を前記ダブルディスクリファイナーにより叩解する叩解工程と、
前記叩解工程中に実施される、回転軸方向に固定されたローターを挟んで設けられた第1移動式固定刃及び第2移動式固定刃の前記ローターとのクリアランスを制御する制御工程を含む、ミクロフィブリルセルロースの製造方法。
【請求項2】
前記制御工程は、前記ローターと前記第1移動式固定刃のクリアランス及び前記ローターと前記第2移動式固定刃のクリアランスを検出する検出工程と、
前記検出工程による検出結果に基づいて、前記ローターとのクリアランスが予め定めたクリアランスとなるように前記第1移動式固定刃及び前記第2移動式固定刃を前記回転軸方向に移動させる移動工程を含む、請求項1記載のミクロフィブリルセルロースの製造方法。
【請求項3】
前記予め定めたクリアランスは、0.01mm~0.5mmである請求項1または請求項2記載の
ミクロフィブリルセルロースの製造方法。
【請求項4】
前記ダブルディスクリファイナーの前記パルプ原料の流れ方式は、モノフロー方式である、請求項1または請求項2記載のミクロフィブリルセルロースの製造方法。
【請求項5】
前記ダブルディスクリファイナーで叩解する前記パルプ原料の濃度が0.5%~10%である、請求項1または請求項2記載のミクロフィブリルセルロースの製造方法。
【請求項6】
回転軸方向に固定されたローターと、
前記回転軸方向に前記ローターを挟んで設けられた第1移動式固定刃及び第2移動式固定刃と、
前記第1移動式固定刃及び前記第2移動式固定刃を前記回転軸方向に移動させて前記ローターとのクリアランスの制御を行う制御部と
を備えるダブルディスクリファイナー。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1移動式固定刃と前記ローターのクリアランス及び前記第2移動式固定刃と前記ローターのクリアランスを検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて、前記ローターとのクリアランスが予め定めたクリアランスとなるように前記第1移動式固定刃及び前記第2移動式固定刃を前記回転軸方向に移動させる駆動部と
を備える請求項6記載のダブルディスクリファイナー。
【請求項8】
前記予め定めたクリアランスは、0.01mm~0.5mmである請求項6または請求項7記載のダブルディスクリファイナー。
【請求項9】
パルプ原料の流れ方式がモノフロー方式である請求項6または請求項7記載のダブルディスクリファイナー。
【請求項10】
叩解されたパルプ原料を叩解室に循環させる循環用配管を更に備える請求項6または請求項7記載のダブルディスクリファイナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロフィブリルセルロースの製造方法及びミクロフィブリルセルロースの製造に用いるダブルディスクリファイナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パルプ原料を微細化して得られるセルロースナノファイバーやミクロフィブリルセルロースは、繊維幅がナノ~マイクロオーダーの微細な繊維であり、高強度、高弾性、チキソ性等、通常のパルプにはない機能を有する新規材料として様々な分野での利用が期待されている。例えば、製紙分野においては、紙の強度を向上させるために紙力向上剤を用いる場合があり、その効果を補強するためにセルロースナノファイバーよりも解繊度の程度が低く、低コストで製造することができるミクロフィブリルセルロースを添加することが検討されている。
【0003】
ミクロフィブリルセルロースの製造は、パルプ原料に対してダブルディスクリファイナーなどを用いて叩解処理を施すことにより行われている。ダブルディスクリファイナーにより叩解処理を行う場合には、回転刃と固定刃の接触によるメタルタッチが発生することがあり、メタルタッチが発生すると、刃の消耗を早めてしまうことの他に原料に鉄粉が混入することで明度の低下や鉄臭という問題も発生する。そこで特許文献1に記載されているダブルディスクリファイナーにおいては、メタルタッチの発生を検出したときに、モーター出力を変動させて回転刃と固定刃の間隔を広げる制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたダブルディスクリファイナーは、メタルタッチの発生を検出した後に回転刃と固定刃の間隔を広げる制御を行うため、メタルタッチによる刃の消耗、原料への鉄粉の混入などの問題を十分に解消することができていなかった。
【0006】
本発明の目的は、ダブルディスクリファイナーにおけるメタルタッチの発生を防止することにより、製造されたミクロフィブリルセルロースに含まれる金属量を減少させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下を提供する。
(1)ダブルディスクリファイナーを用いてパルプ原料からミクロフィブリルセルロースを製造するミクロフィブリルセルロースの製造方法であって、前記パルプ原料を前記ダブルディスクリファイナーにより叩解する叩解工程と、前記叩解工程中に実施される、回転軸方向に固定されたローターを挟んで設けられた第1移動式固定刃及び第2移動式固定刃の前記ローターとのクリアランスを制御する制御工程を含む、ミクロフィブリルセルロースの製造方法。
(2)前記制御工程は、前記ローターと前記第1移動式固定刃のクリアランス及び前記ローターと前記第2移動式固定刃のクリアランスを検出する検出工程と、前記検出工程による検出結果に基づいて、前記ローターとのクリアランスが予め定めたクリアランスとなるように前記第1移動式固定刃及び前記第2移動式固定刃を前記回転軸方向に移動させる移動工程を含む、(1)記載のミクロフィブリルセルロースの製造方法。
(3)前記予め定めたクリアランスは、0.01mm~0.5mmである(1)または(2)記載のミクロフィブリルセルロースの製造方法。
(4)前記ダブルディスクリファイナーの前記パルプ原料の流れ方式は、モノフロー方式である(1)または(2)記載のミクロフィブリルセルロースの製造方法。
(5)前記ダブルディスクリファイナーで叩解する前記パルプ原料の濃度が0.5%~10%である(1)または(2)記載のミクロフィブリルセルロースの製造方法。
(6)回転軸方向に固定されたローターと、前記回転軸方向に前記ローターを挟んで設けられた第1移動式固定刃及び第2移動式固定刃と、前記第1移動式固定刃及び前記第2移動式固定刃を前記回転軸方向に移動させて前記ローターとのクリアランスの制御を行う制御部とを備えるダブルディスクリファイナー。
(7)前記制御部は、前記第1移動式固定刃と前記ローターのクリアランス及び前記第2移動式固定刃と前記ローターのクリアランスを検出する検出部と、前記検出部による検出結果に基づいて、前記ローターとのクリアランスが予め定めたクリアランスとなるように前記第1移動式固定刃及び前記第2移動式固定刃を前記回転軸方向に移動させる駆動部とを備える(6)記載のダブルディスクリファイナー。
(8)前記予め定めたクリアランスは、0.01mm~0.5mmである(6)または(7)記載のダブルディスクリファイナー。
(9)パルプ原料の流れ方式がモノフロー方式である(6)または(7)記載のダブルディスクリファイナー。
(10)叩解されたパルプ原料を叩解室に循環させる循環用配管を更に備える(6)または(7)記載のダブルディスクリファイナー。
【発明の効果】
【0008】
本発明のミクロフィブリルセルロースの製造方法及びダブルディスクリファイナーによれば、製造されたミクロフィブリルセルロースに含まれる金属量を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のダブルディスクリファイナーの構成を示す図である。
【
図2】本発明のダブルディスクリファイナーのシステム構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明のミクロフィブリルセルロースの製造方法及びミクロフィブリルセルロースの製造に用いられるダブルディスクリファイナーについて説明する。本発明において「~」は端値を含む。すなわち「X~Y」はその両端の値Xおよび値Yを含む。
【0011】
(ミクロフィブリルセルロース)
ミクロフィブリルセルロース(以下「MFC」ともいう。)とは、パルプ等のセルロース系原料を解繊または叩解して得られる500nm以上の平均繊維幅を有する繊維であり、化学変性ミクロフィブリルセルロース(以下「化学変性MFC」ともいう。)とは、セルロース系原料を化学変性して得られた化学変性セルロース系原料を解繊または叩解して得られるMFCである。
【0012】
本発明において平均繊維幅とは長さ加重平均繊維幅であり、当該繊維幅はABB株式会社製ファイバーテスターやバルメット社製フラクショネータで測定できる。当該繊維幅の下限は好ましくは500nm以上であり、上限は特に限定されないが60μm以下程度である。MFCは、セルロース系原料をビーター、ディスパーザー、リファイナーなどで比較的弱く解繊または叩解処理して得られる。したがってMFCは、高圧ホモジナイザーなどでセルロース系原料を強く解繊処理して得られるセルロースナノファイバーと比較して、繊維表面にセルロースのミクロフィブリルの毛羽立ちが見られる繊維や、サブミクロンオーダーの繊維幅まで解繊された繊維など、大小様々な繊維を含み、繊維幅がミクロンオーダーの繊維も含む。
【0013】
(原料パルプ)
原料パルプとしては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹未漂白サルファイトパルプ(LUSP)、広葉樹漂白サルファイトパルプ(LBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、加圧砕木パルプ(PGW)、リファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、アルカリ過酸化水素メカニカルパルプ(APMP)、アルカリ過酸化水素サーモメカニカルパルプ(APTMP)、リンター、ジュート、麻、コウゾ、ミツマタ、ケナフ等の草本由来のパルプ、竹由来のパルプ、再生パルプ、古紙パルプ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
(化学変性)
化学変性とはパルプに官能基を導入することであり、化学変性はアニオン変性であることが好ましい、すなわち化学変性パルプはアニオン性基を有することが好ましい。アニオン性基としてはカルボキシル基、カルボキシル基含有基、リン酸基、リン酸基含有基、硫酸エステル基等の酸基が挙げられる。カルボキシル基含有基としては、-COOH基、-R-COOH(Rは炭素数が1~3のアルキレン基)、-O-R-COOH(Rは炭素数が1~3のアルキレン基)が挙げられる。リン酸基含有基としては、ポリリン酸基、亜リン酸基、ホスホン酸基、ポリホスホン酸基等が挙げられる。これらの酸基は反応条件によっては、塩の形態(例えばカルボキシレート基(-COOM、Mは金属原子))で導入されることもある。本発明において化学変性は酸化またはエーテル化が好ましい。
【0015】
酸化は公知のとおりに実施できる。例えばN-オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群より選択される物質との存在下で、酸化剤を用いて水中で原料パルプを酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、およびカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。あるいは、オゾン酸化方法が挙げられる。この酸化反応によればセルロースを構成するグルコピラノース環の少なくとも2位および6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
【0016】
N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であればいずれの化合物も使用できる。例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル(TEMPO)およびその誘導体(例えば4-ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。
【0017】
カルボキシル基量の測定方法の一例を以下に説明する。酸化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる。
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース重量〔g〕
【0018】
このようにして測定した酸化セルロース中のカルボキシル基の量は、絶乾重量に対して、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.5mmol/g以上、さらに好ましくは0.8mmol/g以上である。当該量の上限は、好ましくは3.0mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、さらに好ましくは2.0mmol/g以下である。従って、当該量は0.1mmol/g以上3.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上2.5mmol/g以下がより好ましく、0.8mmol/g以上2.0mmol/g以下がさらに好ましい。
【0019】
エーテル化としては、カルボキシメチル(エーテル)化、メチル(エーテル)化、エチル(エーテル)化、シアノエチル(エーテル)化、ヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピル(エーテル)化、エチルヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピルメチル(エーテル)化などが挙げられる。この中でもカルボキシメチル化が好ましい。カルボキシメチル化は、例えば、発底原料としての原料パルプをマーセル化し、その後エーテル化する方法により実施できる。
【0020】
カルボキシメチル化セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定は例えば、次の方法による。すなわち、1)カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。3)水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5g以上2.0g以下程度精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する。
A=[(100×F’-(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾重量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのH2SO4のファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
【0021】
カルボキシメチル化セルロース中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上がさらに好ましい。当該置換度の上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下がさらに好ましい。従って、カルボキシメチル基置換度は、0.01以上0.50以下が好ましく、0.05以上0.40以下がより好ましく、0.10以上0.35以下がさらに好ましい。
【0022】
(叩解処理工程)
本工程では、固形分濃度を調整した化学変性パルプに対して、ダブルディスクリファイナーを用いて叩解処理を行う。化学変性パルプに対して叩解処理を行うと、繊維長、繊維幅が小さくなる微細化、および繊維の毛羽立ちが多くなるフィブリル化が進行する。本発明の叩解処理工程においては、ダブルディスクリファイナーを用いた叩解処理を循環処理としてもよいし、複数台のダブルディスクリファイナーを用いて叩解処理を連続して行う連続処理としてもよい。
【0023】
なお、本発明においては、循環用配管を用いた部分循環を行うダブルディスクリファイナーを用いて叩解処理をした場合における原料の実処理回数(原料が実際に刃物クリアランス間を通過した回数)は、処理する原料が1台のダブルディスクリファイナーを通過した回数(パス数)に下記nを乗じ、モノフロー処理の場合は更に2を乗じた数とする。
n=1/(1-a)
ここで、a=循環割合である。(循環率50%の場合、a=0.5であり、循環率75%の場合、a=0.75である。部分循環を行わない場合、a=0である。)
【0024】
部分循環を行うダブルディスクリファイナーを複数台用いて連続処理をする場合における叩解処理の実処理回数は、1台のダブルディスクリファイナーごとに上記の方法で実処理回数を算出し、足し合わせるものとする。
【0025】
叩解処理を複数回実施する場合であって、部分循環を行わない完全循環によるバッチ処理を行う場合における叩解処理の実処理回数は、処理する原料が回収されるまでにダブルディスクリファイナーの刃物クリアランス間を実際に通過した回数とする。
【0026】
(ダブルディスクリファイナー)
ダブルディスクリファイナーは、2個の叩解刃のついたディスクDAおよびDBと、その間に叩解刃のついたディスクDMを備え、ディスクDAおよびDBまたはディスクDMの何れか一方が固定され、他方が回転する構成、もしくは、ディスクDAおよびDBとディスクDMとが逆方向に回転する構成をとる。ダブルディスクリファイナーとして、2個のディスクDA、DBが固定ディスクであり、DMがその間で自由に回転するフローティングディスクである構成をとるものとしては、例えば、相川鉄工株式会社製のダブルディスクリファイナー、三菱重工業/ベロイト(ジョーンズ)製のダブルディスクリファイナー、石川島産業機械/ブラック・クローソン製のツインハイドラディスク、日立造船(日立造船富岡機械)/エッシャーウイス製のツインディスクリファイナー等が挙げられる。
【0027】
2個のディスクDAおよびDBの刃幅としては、0.3~4.0mmが好ましく、0.5~1.3mmであることがより好ましい。ディスクDAおよびDBの溝幅としては、0.5~4.0mmが好ましく、0.8~1.7mmがより好ましい。ディスクDAおよびDBの刃幅および溝幅は、同じであっても良いし、異ならせても良い。刃角度は特に制限するものではないが、0~40°が好ましく、5~20°が特に好ましい。
【0028】
ダブルディスクリファイナーは、原料の流れ方式によりモノフロー式とデュオフロー式の二種類に大別される。モノフロー式は、原料が、原料流入側に近い叩解間隙から、他方の叩解間隙へ流れる方式であり、デュオフロー式は、原料が中心部より挿入され、ディスクDMの両面に形成される叩解間隙を平行に流れる方式である。本発明の製造方法においては、効率よく解繊が進む観点から、原料の流れ方式として、モノフロー式が好ましい。
【0029】
本発明で用いるダブルディスクリファイナーを、
図1を用いて説明する。
図1は、原料の流れ方式がモノフロー式のダブルディスクリファイナーの概略を示す断面図である。
【0030】
ダブルディスクリファイナー2は、原料入口4から投入されたパルプ原料を叩解する叩解室6内に回転ディスクDM(ローター)8を配置し、回転ディスクDM8の両面には、所定の刃幅および溝幅を有する刃物が取り付けられている。回転ディスクDM8は駆動軸14に取り付けられており、駆動軸14はモーター16に連結され回転駆動される。ここで回転ディスクDM8は駆動軸14方向の位置が固定されている。叩解室6の内壁には、回転ディスクDM8の両面に取り付けられた刃物に対向して、固定ディスクDA(第1移動式固定刃)10および固定ディスクDB(第2移動式固定刃)12がそれぞれ配置されている。固定ディスクDA10および固定ディスクDB12には、所定の刃幅および溝幅を有する刃物が取り付けられている。
【0031】
叩解室6には、叩解された原料を叩解室6に循環させるための循環用配管18が接続されている。また叩解室6には叩解された原料を叩解室6外へ排出する排出口20が形成され、排出口20には、叩解された原料を回収用タンク(図示せず)に送るための出口配管22接続されている。なお循環用配管18と出口配管22には流量を調節するためのバルブ24が設けられている。
【0032】
叩解室6内には、回転ディスクDM8と固定ディスクDA10のクリアランスを検出する第1センサー26及び回転ディスクDM8と固定ディスクDA12のクリアランスを検出する第2センサー28が設けられている。更に第1センサー26による検出結果に基づいて回転ディスクDM8と固定ディスクDA10のクリアランスを予め定められている値となるように固定ディスクDA10を駆動軸14方向に移動させる第1駆動部30、及び第2センサー28による検出結果に基づいて回転ディスクDM8と固定ディスクDA12のクリアランスを予め定められている値となるように固定ディスクDA12を駆動軸14方向に移動させる第2駆動部32が設けられている。
【0033】
図2は、本発明のダブルディスクリファイナー2のシステム構成を示す図である。ダブルディスクリファイナー2は、装置全体の制御を行う制御部40を備えている。制御部40には、モーター16、第1センサー26、第2センサー28、第1駆動部30、第2駆動部32が接続されている。
【0034】
ダブルディスクリファイナー2を用いて、パルプ原料を叩解処理する場合には、パルプ原料がダブルディスクリファイナー2の原料入口4から投入され叩解室6に送られる。叩解室6に送られたパルプ原料は、はじめに固定ディスクDA10および回転ディスクDM8の間に形成される叩解間隙で叩解され、次に固定ディスクDB12および回転ディスクDM8の間に形成される叩解間隙で叩解され、パルプ原料の一部は循環用配管18を経由して再び叩解室6に送られる。叩解されたパルプ原料は、排出口20から排出され、出口配管22を経由して回収用タンク(図示せず)に送られる。循環するパルプ原料の量と排出口20から排出される叩解されたパルプ原料の量は、手動バルブ24によって調節される。
【0035】
ここでダブルディスクリファイナー2においては、パルプ原料の叩解処理が行われている間、制御部40は、第1センサー26により検出された回転ディスクDM8と固定ディスクDA10のクリアランスの値、第2センサー28により検出された回転ディスクDM8と固定ディスクDB12のクリアランスの値を取得する。そして制御部40は、第1駆動部30を制御して回転ディスクDM8と固定ディスクDA10のクリアランスが予め定められている値となるように固定ディスクDA10を駆動軸14方向に移動させる。また第2駆動部32を制御して回転ディスクDM8と固定ディスクDB12のクリアランスが予め定められている値となるように固定ディスクDB12駆動軸14方向に移動させる。
【0036】
本発明の製造方法において、ダブルディスクリファイナー2を用いる場合の運転条件としては、固定ディスクDA10と回転ディスクDM8および固定ディスクDB12と回転ディスクDM8とのクリアランスは0.5mm以下が好ましく、0.4mm以下がより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましい。下限は特に制限しないが、メタルタッチを避けるため、0.01mm以上が好ましい。運転温度としては、5~120℃が好ましい。なお、所望の繊維幅を有する化学変性ミクロフィブリルセルロースが得られるように、流量、処理時間またはその他条件等は、適宜調整される。
【0037】
本発明の製造方法において、叩解処理工程に供する化学変性されたパルプ原料の固形分濃度は、パルプ原料の移送の観点から10質量%以下であり、0.5~10質量%が好ましく、0.5~6質量%がより好ましい。固形分濃度が低すぎると叩解時プレートの刃にかからず、叩解効率が悪い。固形分濃度は叩解処理を含む機械的処理中に変動しうるが、本発明においては、叩解処理開始時の固形分濃度を、叩解処理工程における固形分濃度という。
【0038】
化学変性パルプの固形分濃度を10質量%以下に調整する方法としては、希釈が挙げられる。叩解処理工程に供する化学変性パルプのpHは、解繊のしやすさの観点から6以上が好ましく、7以上がより好ましい。pHを上記範囲とするための方法としては、NaOHやKOH、炭酸水素ナトリウム等の薬品の添加、または化学変性後の酸性薬品添加量を減らす等が挙げられる。化学変性パルプのpHは叩解処理を含む機械的処理中に変動しうるが、本発明においては、叩解処理開始時のpHを、叩解処理工程におけるpHとする。
【0039】
叩解処理工程に供する化学変性パルプは、アルカリ処理を施したものであっても良い。このアルカリ処理には、NaOHやKOH等の任意のアルカリを用いることができる。本発明に用いる化学変性パルプがアニオン変性パルプの場合、アルカリを添加することにより変性基の末端がNa型等となり、繊維同士の反発が大きくなる。そのため、繊維の静電反発を利用して、効率的に叩解や離解、解繊などの機械的処理を進めることができる。
【0040】
叩解処理工程に供する化学変性パルプは、酸処理を施したものであっても良い。本発明に用いる化学変性パルプがアニオン変性パルプの場合、酸処理を施すことにより変性基の末端がH型となり、水への親和性が低下する。
【0041】
なお、本発明の製造方法においては、上記のダブルディスクリファイナーを用いた叩解処理工程の前後に、ダブルディスクリファイナー以外の装置を用いた機械的処理を行う機械的処理工程を1以上有するものであっても良い。
【0042】
本発明によれば、ダブルディスクリファイナーの回転ディスクDM8と固定ディスクDA10とのクリアランス、及び回転ディスクDM8と固定ディスクDB12とのクリアランスを予め定めた値とするように、回転ディスクDM8に対する固定ディスクDA10の回転軸14方向の位置、回転ディスクDM8に対する固定ディスクDB12の回転軸14方向の位置をそれぞれ制御するため、メタルタッチの発生を防止することができ製造されたミクロフィブリルセルロースに含まれる金属量を減少させることができる。
【0043】
また従来のダブルディスクリファイナーでは機械的に位置制御ができるのは片側の固定刃だけでもう一方の固定刃は位置制御ができず、回転刃はモーター側の固定刃とカバー側の固定刃の間で軸方向に遊動できる状態(フローティングディスク)であることが多く、原料の流れ方式としてモノフロー方式を採用した場合には、叩解室内における原料流入側と原料流出側の圧力のバランスをとるのが困難であり、回転刃はどちらかの固定刃側に偏った状態となっていた。更に従来のダブルディスクリファイナーにおいては回転刃と固定刃のクリアランスの状態は検出していないことから細かなクリアランス調整はできず、ある程度まで回転刃と固定刃を詰めていくとメタルタッチが発生してしまうという問題があった。
【0044】
本発明のダブルディスクリファイナーにおいては、回転ディスクDM8に対する固定ディスクDA10の回転軸14方向の位置、回転ディスクDM8に対する固定ディスクDB12の回転軸14方向の位置をそれぞれ制御するため、原料の流れ方式としてモノフロー方式を採用した場合においても、回転ディスクと固定ディスクのクリアランスを細かく調整することができメタルタッチの発生を防止することができる。
【0045】
本発明の製造方法によって得られた化学変性ミクロフィブリルセルロースは、化学変性パルプを原料としており、繊維表面に官能基が配されているため、官能基由来の様々な機能性を有する。このため本発明の製造方法により得られた化学変性ミクロフィブリルセルロースは種々の用途に使用でき、一般的に添加剤が用いられる様々な分野において、増粘剤、ゲル化剤、糊剤、食品添加剤、賦形剤、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、研磨剤、ゴム・プラスチック用配合材料、保水材、保形剤、泥水調整剤、ろ過助剤、溢泥防止剤、混和剤等として使用することができる。当該分野としては、食品、飲料、化粧品、医薬、製紙、各種化学用品、塗料、スプレー、農薬、土木、建築、電子材料、難燃剤、家庭雑貨、接着剤、洗浄剤、芳香剤、潤滑用組成物等が挙げられる。
【実施例0046】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0047】
(実施例1)
<化学変性パルプの調製>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%:日本製紙株式会社製)55kg(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社製)429g(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム5654g(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液5500Lに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応混合物に塩酸を添加してpH2に調整した後、脱水と水での希釈を繰り返してパルプを十分に水洗し、最終的にパルプ固形分濃度が20質量%となるまで脱水して化学変性パルプ(TEMPO酸化パルプ)を得た。パルプ収率は90%であり、カルボキシル基量は1.45mmol/gであった。
【0048】
得られたTEMPO酸化パルプを水道水に分散し、水酸化ナトリウムを加えて攪拌することにより、pH7.6、固形分濃度1.2質量%のTEMPO酸化パルプの水分散液を得た。
【0049】
<叩解>
得られたTEMPO酸化パルプの水分散液1000kgをダブルディスクリファイナー(新規DDR:相川鉄工株式会社製 AWU20(原料の流れ方式:モノフロー式))を用い、クリアランス0.03mm、循環率90.9%の条件で30分間運転を行い、叩解処理して、TEMPO酸化パルプをMFCとした。なお、叩解処理のパス数は3回(実処理回数:65.9回)であった。後述する方法によって、当該MFCを評価した。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例2)
ダブルディスクリファイナーによる叩解処理時間を20分、叩解処理のパス数を2回(実処理回数:44回)に変更したこと以外は、実施例1と同様に叩解処理することによりMFCを得た。後述する方法によって、当該MFCを評価した。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例3)
ダブルディスクリファイナーにより叩解するTEMPO酸化パルプの水分散液の固形分濃度1.0質量%、循環率72.7%、叩解処理時間7分、叩解処理のパス数を1回(実処理回数:7.3回)に変更したこと以外は、実施例1と同様に叩解処理することによりMFCを得た。後述する方法によって、当該MFCを評価した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例4)
ダブルディスクリファイナーにより叩解するTEMPO酸化パルプの水分散液の固形分濃度1.0質量%、循環率0%、叩解処理時間7分、叩解処理のパス数を1回(実処理回数:2回)に変更したこと以外は、実施例1と同様に叩解処理することによりMFCを得た。後述する方法によって、当該MFCを評価した。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
実施例1と同様にして化学変性パルプ(TEMPO酸化パルプ)を得た。カルボキシル基量は1.36mmol/gであった。このTEMPO酸化パルプを水道水に分散し、水酸化ナトリウムを加えて攪拌することにより、pH7.7、固形分濃度1.1質量%のTEMPO酸化パルプの水分散液を得た。
得られたTEMPO酸化パルプの水分散液3000kgをダブルディスクリファイナー(従来DDR:AWN20(原料の流れ方式:モノフロー式))を用い、クリアランス0.03mm、循環率75.5%の条件で45分間運転を行い、叩解処理してTEMPO酸化パルプをMFCとした。なお、叩解処理のパス数は2回(実処理回数:16.3回)であった。後述する方法によって、当該MFCを評価した。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例2)
ダブルディスクリファイナーによる叩解処理時間を90分、叩解処理のパス数を4回(実処理回数:32.7回)に変更したこと以外は、比較例1と同様に叩解処理することによりMFCを得た。後述する方法によって、当該MFCを評価した。結果を表1に示す。
【0055】
(比較例3)
実施例1と同様にして化学変性パルプ(TEMPO酸化パルプ)を得た。カルボキシル基量は1.45mmol/gであった。このTEMPO酸化パルプを水道水に分散し、水酸化ナトリウムを加えて攪拌撹拌することにより、pH7.6、固形分濃度1.2質量%のTEMPO酸化パルプの水分散液を得た。
【0056】
得られたTEMPO酸化パルプの水分散液1000kgをダブルディスクリファイナー(従来DDR:AWN20(原料の流れ方式:デュオフロー式))を用い、クリアランス0.03mm、循環率0%の条件で15分間運転を行い、叩解処理してTEMPO酸化パルプをMFCとした。なお、叩解処理のパス数は3回(実処理回数:3.0回)であった。後述する方法によって、当該MFCを評価した。結果を表1に示す。
【0057】
【0058】
以下のようにして物性および特性を評価した。
<平均繊維長、平均繊維幅>
ミクロフィブリルセルロースのスラリーを固形分濃度が0.25%となるように水で希釈し、流速5.7L/min、水温25±1℃、全流出量22Lの条件で約250gずつ(うち50gが測定に供される)2回フラクショネータにかけ、フラクショネータに付属のCCDカメラで装置内部にて、流量で分級されたミクロフィブリルセルロースの画像およそ2000枚を取得した。
解析ソフトIMG(Metso社)の繊維解析パラメーターを表2~4のように設定し、取得したおよそ2000枚の画像を解析し、平均繊維長・平均繊維幅、繊維長分布等のデータを得た。2回測定・解析を行った平均値を測定データとして採用した。
【0059】
【表2】
・平均繊維長(Length):長さ加重平均繊維長
・平均繊維幅(Width):長さ加重平均繊維幅
・繊維長分布(Fraction percentage of length weighted distribution):長さ加重繊維長分布(各フラクションの設定は表2に記載した通り。)
【0060】
【0061】
【0062】
<BET比表面積>
BET比表面積は、窒素ガス吸着法(JIS Z 8830)を参考に以下の方法により測定した:
(1)処理後の分散液に、必要に応じてイオン交換水を加えて約2%スラリー(分散媒:水)を調製し、これを固形分が約0.1gとなるように取り分け遠心分離の容器に入れ、100mLのエタノールを加えた。
(2)攪拌子を入れ、500rpmで30分以上攪拌した。
(3)撹拌子を取り出し、遠心分離機で、7000G、30分、30℃の条件でフィブリル化された化学変性セルロース繊維を沈降させた。
(4)フィブリル化された化学変性セルロース繊維をできるだけ除去しないようにしながら、上澄みを除去した。
(5)100mLエタノールを加え、撹拌子を加え、(2)の条件で攪拌、(3)の条件で遠心分離、(4)の条件で上澄み除去をし、これを3回繰り返した。
(6)(5)の溶媒をエタノールからt-ブタノールに変え、t-ブタノールの融点以上の室温下で、(5)と同様にして撹拌、遠心分離、上澄み除去を3回繰り返した。
(7)最後の溶媒除去後、t-ブタノールを30mL加え、軽く混ぜた後ナスフラスコに移し、氷浴を用いて凍結させた。
(8)冷凍庫で30分以上冷却した。
(9)凍結乾燥機に取り付け、3日間凍結乾燥した。
(10)BET測定装置(Micromeritics(マイクロメリティックス)社製)を用いてBET測定を行った(前処理条件:窒素気流下105℃2時間、相対圧0.01~0.30、サンプル量30mg程度)。
【0063】
<粘度>
処理後の分散液にイオン交換水を加えて1質量%スラリーを調製し、25℃で3時間放置した後、PRIMIX社製ホモディスパー(3000rpm)で5分間攪拌し、攪拌直後にB型粘度計(東機産業社製)を用いて、適切なローターを使用して回転数60rpmで3分後の粘度を測定した。
【0064】
<透明度>
ミクロフィブリルセルロースの水分散体(固形分1%(w/v)、分散媒:水)を調製し、UV-VIS分光光度計 UV-1800(島津製作所社製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて波長660nmの光の透過率を測定した。
【0065】
<電気伝導度>
試料濃度が1.0質量%となるようにミクロフィブリルセルロースの水分散体を調整し、pH6の条件下で、堀場製ポータブル型電気伝導度計を用いて測定した。
【0066】
<蛍光X線測定>
得られたミクロフィブリルセルロースの水分散体(組成物)はそれぞれ、固形分濃度1質量%に調整した後、水平な面に平滑なPETフィルムを広げ、PETフィルム上に水分散体組成物100gを均一に押し広げ、送風乾燥機(105℃)を用いて一晩乾燥させ、得られたウェブ状物をPETフィルムから剥がし、MFCシートを得た。
【0067】
得られたMFCシートを約2cm四方のサイズに切り出し、エネルギー分散型蛍光X線分析装置EDX-8000(株式会社島津製作所製)を用いて、蛍光X線測定を行った。照射径は5mm、真空雰囲気下で測定を実施し、化合物形態は金属であるとしてMFCシートに含まれる鉄元素とカリウム元素の強度(cps/μA)を得た。測定はそれぞれ2回行い平均値を算出し、それを鉄原子由来の強度XFeと、カリウム原子由来の強度XKとした。
【0068】
表1の実施例1、実施例2、比較例2,比較例2から分かるように、比較例1、比較例2は、メタルタッチが生じていることから蛍光X線測定におけるXFe/Xkの値が大きくなっているが、実施例1、実施例2では、XFe/Xkの値が小さいことからメタルタッチの発生が防止できていることが分かる。
また表1の実施例1のダブルディスクリファイナーは、モノフロー方式であるため、装置を1回通過するまでに刃物間を2回通ることになるが、比較例3のダブルディスクリファイナーは、デュオフロー方式であるため、装置を1回通過するまでに刃物間を1回通ることになる(循環率0%のとき)。従ってモノフロー方式の方が1台の装置で処理を進めやすいことが分かる。
また表1の実施例3、実施例4から循環率が高い方が同一のパス数でも処理が進みやすいことが分かる。
2…ダブルディスクリファイナー、4…原料入口、6…叩解室、8…回転ディスクDM、10…固定ディスクDA、12…固定ディスクDB、14…駆動軸、16…モーター、18…循環用配管、20…排出口、22…出口配管、24…手動バルブ、26…第1センサー、28…第2センサー、30…第1駆動部、32…第2駆動部、40…制御部