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特開2024-138895玄米飯の製造方法及び玄米飯成形食品、並びに冷凍玄米飯の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138895
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】玄米飯の製造方法及び玄米飯成形食品、並びに冷凍玄米飯の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20241002BHJP
【FI】
A23L7/10 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049612
(22)【出願日】2023-03-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和5年3月21日に「玄米老舗福岡本店」にて販売 (2)令和5年3月21日にテイクアウト専門店「すずかけごはん」にて販売
(71)【出願人】
【識別番号】520094307
【氏名又は名称】株式会社LEE惣菜研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100229389
【弁理士】
【氏名又は名称】香田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】李 奈美
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC02
4B023LC05
4B023LE01
4B023LE11
4B023LG03
4B023LP07
4B023LP10
4B023LP15
(57)【要約】
【課題】優れた食感を有し、玄米特有の臭みが抑制された玄米飯の製造方法及び玄米飯成形食品、並びに冷凍玄米飯の製造方法を提供する。
【解決手段】
玄米を焙煎処理する工程(1)と、焙煎処理後の玄米を熱水と接触させる工程(2)と、熱水と接触後の玄米を炊飯して玄米飯を得る工程(3)と、を有する玄米飯の製造方法。
玄米として、うるち米の玄米と有色米(例えば、黒米等)の玄米との混合物を使用すると、うるち米由来の栄養素だけでなく、有色米由来の栄養素も含有する玄米飯を得ることができる。原料となる玄米を焙煎し、焙煎後の玄米と熱水を接触させることにより、玄米を長時間浸水せずに炊飯することができ、得られた玄米飯は、優れた食感を有し、玄米特有の臭みが抑制される。また、製造された玄米飯を冷凍し、冷凍玄米飯とすることができる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄米を焙煎処理する工程(1)と、
焙煎処理後の玄米を熱水と接触させる工程(2)と、
熱水と接触後の玄米を炊飯して玄米飯を得る工程(3)と、
を有することを特徴とする玄米飯の製造方法。
【請求項2】
前記玄米が、うるち米の玄米と有色米の玄米との混合物である請求項1に記載の玄米飯の製造方法。
【請求項3】
前記有色米が、黒米、赤米、及び緑米から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の玄米飯の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の製造方法によって得られた玄米飯を成形してなる玄米飯成形食品。
【請求項5】
玄米を焙煎処理する工程(1)と、
焙煎処理後の玄米を熱水と接触させる工程(2)と、
熱水と接触後の玄米を炊飯して玄米飯を得る工程(3)と、
得られた玄米飯を冷凍して冷凍玄米飯を得る工程(4)と、
を有する冷凍玄米飯の製造方法。
【請求項6】
前記玄米が、うるち米の玄米と有色米の玄米との混合物である請求項5に記載の冷凍玄米飯の製造方法。
【請求項7】
前記有色米が、黒米、赤米、及び緑米から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の冷凍玄米飯の製造方法。
【請求項8】
工程(4)において、前記玄米飯を所定の形状に成形した後に冷凍する請求項5から7のいずれかに記載の冷凍玄米飯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた食感を有し、かつ玄米特有の臭みが抑制された玄米飯の製造方法及び玄米飯成形食品、並びに冷凍玄米飯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
玄米は、精白米に比べ栄養価が高いことは一般によく知られている。しかしながら、玄米は白米層(胚乳)の周囲が外側からロウ層、糠層(果皮、種皮、及び糊粉層)の順で覆われている。玄米には、このようなロウ層と糠層とがあるため、炊飯後の玄米飯には、玄米特有の臭みやパサつきがあり、食感等の食味が低下するという欠点があった。
【0003】
良好な食感の玄米飯を得るための玄米の炊飯方法として、例えば、表皮に傷をつけた玄米(3分づき玄米)を水に浸漬し、玄米付着菌により発酵させ菌糸により覆われた後に炊飯する方法(特許文献1)、長径1~3ミリ、短径0.5~2ミリの大きさに粗挽きした玄米に水を加えて炊飯する方法(特許文献2)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-220060号公報
【特許文献2】特開2010-200631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、玄米を水に長時間(8~15時間)浸漬させ、玄米付着菌を発酵させているため、玄米飯に酸臭が発生することがあり、喫食しにくいという問題があった。また、特許文献2の方法では、粗挽きした玄米を炊飯するため、得られた玄米飯の粒が小さくなり、食感が悪くなるという問題があった。
【0006】
かかる状況下、本発明の目的は、優れた食感を有し、かつ玄米特有の臭みが抑制された玄米飯の製造方法及び玄米飯成形食品、並びに冷凍玄米飯の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 玄米を焙煎処理する工程(1)と、
焙煎処理後の玄米を熱水と接触させる工程(2)と、
熱水と接触後の玄米を炊飯して玄米飯を得る工程(3)と、
を有する玄米飯の製造方法。
<2> 前記玄米が、うるち米の玄米と有色米の玄米との混合物である<1>に記載の玄米飯の製造方法。
<3> 前記有色米が、黒米、赤米、及び緑米から選択される少なくとも1種である<2>に記載の玄米飯の製造方法。
<4> <1>から<3>のいずれかに記載の製造方法にて製造された玄米飯を成形してなる玄米飯成形食品。
<5> おにぎりである<4>に記載の玄米飯成形食品。
【0009】
<1a> 玄米を焙煎処理する工程(1)と、
焙煎処理後の玄米を熱水と接触させる工程(2)と、
熱水と接触後の玄米を炊飯する工程(3)と、
得られた玄米飯を冷凍して冷凍玄米飯を得る工程(4)と、
を有する冷凍玄米飯の製造方法。
<2a> 前記玄米が、うるち米の玄米と有色米の玄米との混合物である<1a>に記載の冷凍玄米飯の製造方法。
<3a> 前記有色米が、黒米、赤米、及び緑米から選択される少なくとも1種である<2a>に記載の冷凍玄米飯の製造方法。
<4a> 工程(4)において、均等磁束と電磁波を加えて冷凍する<1a>から<3a>のいずれかに記載の冷凍玄米飯の製造方法。
<5a> 工程(4)において、前記玄米飯を所定の形状に成形した後に冷凍する<1a>から<4a>のいずれかに記載の冷凍玄米飯の製造方法。
<6a> <5a>に記載の製造方法にて製造された冷凍玄米飯成形食品。
<7a> おにぎりである<6a>に記載の冷凍玄米飯成形食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた食感を有し、かつ玄米特有の臭みが抑制された玄米飯の製造方法及び玄米飯成形食品、並びに冷凍玄米飯の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の玄米飯の製造工程を示すフローチャートである。
図2】玄米の構造を示す概略図である。
図3】本発明の冷凍玄米飯の製造工程を示すフローチャートである。
図4】玄米の外観写真である(焙煎処理前の玄米、焙煎処理後の玄米、及び熱水接触後の玄米)。
図5】官能試験のアンケートまとめである。
図6】冷凍後の冷凍玄米飯と解凍後の冷凍玄米飯(レンジアップ、自然解凍)の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「~」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。
【0013】
[1.玄米飯の製造方法]
本発明は、玄米を焙煎処理する工程(1)と、焙煎処理後の玄米を熱水と接触させる工程(2)と、熱水と接触後の玄米を炊飯して玄米飯を得る工程(3)と、を有する玄米飯の製造方法(以下、「本発明の玄米飯の製造方法」と称す。)に関する。
【0014】
また、本発明の玄米飯の製造方法によれば、玄米を焙煎処理することにより、玄米表皮が乾燥状態となり、表皮に細かなクラックが生成する。その状態の玄米を熱水と接触させると、玄米内部(白米層)へ吸水がしやすくなるため、長時間浸水せずに炊飯できる。
【0015】
また、本発明の玄米飯の製造方法によれば、工程(1)の焙煎処理によって焙煎香が玄米に付与される。そして、工程(2)において焙煎処理した玄米を熱水と接触させた後に炊飯することによって、製造される玄米飯は、玄米特有の臭みを抑制できる。本発明の玄米飯の製造方法の特徴のひとつは工程(2)にあり、焙煎処理した玄米を熱水と接触させることによって、熱水を接触させる処理を有さない場合と比較して、玄米特有の臭みを抑えた玄米飯を製造することができる。なお、実施例に示すように工程(2)において熱水に代えて常温水を使用した場合には、熱水を使用した場合と比較して玄米臭は抑制されない。
【0016】
以下、本発明の玄米飯の製造方法の各工程について、図1に示すフローチャートを参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明の玄米飯の製造方法は、工程(1)~工程(3)の順で行う。また、必要に応じて、その他の材料等を添加する工程、成形工程等、その他の工程を追加して行うことができる。
【0018】
<工程(1)>
工程(1)は、玄米を焙煎処理する工程である。
玄米を焙煎処理することにより、玄米表皮が乾燥され焙煎香が付与されると共に、玄米表皮に細かいクラックが発生する。
【0019】
(玄米)
本発明の玄米飯の原料となる玄米(以下、「原料玄米」と記載する場合がある。)は、イネ種子から籾殻のみを除いたものであり、図2に示すように、白米層(胚乳)の周囲を外側からロウ層、糠層(果皮、種皮、及び糊粉層)の順で覆われている。本発明において玄米の表皮は、ロウ層及び糠層を含む。
【0020】
原料玄米は、うるち米(ジャポニカ米、インディカ米、ジャバニカ米等)を含む。原料玄米はさらにその他の玄米を含んでいてもよい。
その他の玄米としては、例えば、有色米(黒米、赤米、緑米等)、香り米等が挙げられる。原料玄米は、産地や品種も特に限定されない。
【0021】
その他の玄米の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。
原料となる玄米が、うるち米の玄米と有色米の玄米の混合物である場合は、うるち米の玄米の含有量を100重量部とした時に、有色米の玄米の含有量は、例えば、0.5~1.0重量部である。
【0022】
また、原料玄米が、うるち米の玄米と有色米の玄米との混合物である場合、含まれる有色米は、黒米、赤米、及び緑米から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
有色米として、黒米、赤米、及び緑米から選択される少なくとも1種を使用することにより、有色米由来の栄養素を含有する玄米飯を得ることができる。栄養素としては、例えば、黒米由来のアントシアニン、赤米由来のタンニン、緑米由来のクロロフィル等が挙げられる。特に有色米として黒米を使用すると炊飯後の玄米飯に均等な紫色を付与できる。
【0023】
焙煎処理は、熱媒体として油や水を使わずに乾燥状態で処理対象物を加熱処理することであり、工程(1)における焙煎処理は、加熱容器に原料となる玄米を入れ、玄米が香気(焙煎香)を発生するまで加熱することを意味する。
焙煎処理の方法としては、本発明の効果を損なわない限り制限はなく、玄米を加熱容器(フライパン、鍋等)に入れ、玄米が焦げない程度に加熱する焙煎方法が好ましい。
【0024】
工程(1)における焙煎処理条件は、原料となる玄米の種類や量等に応じて適宜決定される。焙煎処理は、玄米の吸水性が向上されるように、玄米表皮に細かなクラックができればよく、表皮に皺ができるまで行うことが好ましい。
典型的には、焙煎温度が、80℃以上200℃以下であり、焙煎時間が、3分~10分である。
【0025】
<工程(2)>
工程(2)は、焙煎処理後の玄米と熱水を接触させる工程である。
玄米を焙煎処理した後に、熱水と接触させることにより、玄米内部(白米層)へ吸水されやすくなる。その結果、後の工程(工程(3))での炊飯時に、玄米を長時間浸水せずに炊飯を行うことができる。
【0026】
玄米と熱水を接触させる方法としては、本発明の効果を損なわない限り制限はないが、玄米の焙煎処理後に、加熱された玄米の温度が下がる前(好適には焙煎処理直後)に、玄米を熱水と接触させることが好ましい。
【0027】
上述したように焙煎処理によって玄米表皮が乾燥状態となり、玄米表面に細かなクラックができる。表皮にクラックができた玄米と熱水を接触させることによって、玄米内部(白米層)へ吸水がされやすくなる。玄米と熱水を接触させる方法として、熱水を玄米に加えてもよく、玄米を熱水に加えてもよい。また、玄米と熱水とを接触させた後に、玄米と熱水を撹拌してもよい。
【0028】
本発明において、「熱水」とは、60℃以上の水を意味する。熱水を使用することによって焙煎処理した玄米を熱水と接触させることによって、熱水を接触させる処理を有さない場合と比較して、玄米特有の臭みを抑えた玄米飯を製造することができる。熱水の温度の上限は、特に限定されないが常圧下であれば通常は100℃未満である。
【0029】
特に、原料玄米が、うるち米の玄米と有色米の玄米の混合物である場合、有色米が含有する成分を溶出させるためには、熱水の温度は高い方が好ましく、例えば、70℃以上であり、より好ましくは80℃以上であり、より好ましくは90℃以上である。
【0030】
熱水に用いる水は、特に制限はなく、水道水、蒸留水、ミネラル水、アルカリイオン水等を使用することができる。また、本発明の効果を損なわなければ、熱水に塩等のその他の添加物成分を添加してもよい。
【0031】
工程(2)における条件は、本発明の効果を損なわない範囲で、玄米の量や種類、焙煎の程度等に応じて適宜設定される。玄米と熱水との接触は、焙煎処理後の玄米が膨張するまで行うことが好ましい。
【0032】
用いられる熱水の量は、容器内で玄米が接触できる量であればよく、接触させる玄米の量を考慮して適宜決定すればよい。
【0033】
工程(2)において、玄米と熱水との接触時間は、本発明の効果を奏する限り制限されず、玄米の量や種類、熱水の温度等に応じて適宜決定される。例えば、沸騰した熱水を接触させる場合は、1分以上であり、3分以上が好ましい。熱水に接触させる時間に制限はないが、接触時間が長すぎると玄米の食感、食味に影響する場合があるため、例えば、20分以下である。
【0034】
<工程(3)>
工程(3)は、熱水と接触後の玄米を炊飯して玄米飯を得る工程である。
本発明の玄米飯の製造方法において、工程(3)は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。
工程(3)としては、玄米と接触させた熱水を除去せずに、新たな水を追加して玄米を炊飯してもよく、玄米と接触させた熱水を除去し、新たな水と共に玄米を炊飯してもよい。
【0035】
特に、原料玄米が、うるち米の玄米と有色米の玄米の混合物である場合は、熱水によって抽出されたうるち米や有色米の栄養成分を玄米内部へ吸水させ、かつ、その栄養成分を閉じ込めながら炊飯させることができるために、玄米と接触させた熱水を除去せずに、玄米を炊飯することが好ましい。
【0036】
本発明における炊飯方法は、本発明の効果が損なわれず、玄米飯が目的の固さに炊飯されれば従来公知の方法で行うことができる。
【0037】
通常、玄米は表皮(ロウ層と糠層)に覆われているため、玄米内部(白米層)へ水が浸透しにくく、玄米を炊飯するには、手間がかかるという問題がある。
玄米内部(白米層)へ水を浸透させるため、通常、玄米の炊飯方法は、玄米を長時間浸水させ圧力鍋等を使用して炊飯する必要があるが、本発明の玄米飯の製造方法では、工程(1)及び工程(2)を行うことにより、熱水処理後の玄米を浸水処理せずにすぐに炊飯をおこなっても、通常の白米の炊飯と同じ条件で炊飯することができるという利点がある。
【0038】
工程(3)では、熱水処理後の玄米を浸水処理をせずにすぐに炊飯をおこなってもよいが、別途浸水処理をおこなってもよい。浸水処理を行う場合でも、原料玄米は工程(1)及び工程(2)を行うことにより既に吸水しているため、通常より短時間(例えば、1~3時間程度)にすることが好ましい。
また、工程(3)における炊飯は、通常、常圧で行うが、本発明の効果を損なわなければ、必要に応じて加圧条件下(例えば、圧力鍋等を使用)で行うことができる。
【0039】
(その他の工程)
また、本発明の玄米飯の製造方法では、本発明の目的を損なわない限り、上述する工程(工程(1)~工程(3))以外に、必要に応じてその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、玄米飯を所定の形状に成形する工程、その他の材料等を添加する工程、等が挙げられる。
【0040】
また、本発明の効果を損なわなければ、その他の材料を添加する工程を行うことができる。その他の材料の添加のタイミングは特に限定されず、各工程(工程(1)~工程(3))時に添加してもよく、炊飯後の玄米飯に添加してもよい。
その他の材料としては、通常、加工食品の製造に使用される原料であれば、特に制限されないが、例えば、玄米以外の穀類、その他の食品成分、任意の添加物成分等を添加してもよい。任意の添加物成分としては、調味料、香料、乳化剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、着色料等が挙げられる。
【0041】
その他の材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、その他の材料の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されず、使用する材料の種類等に応じて適宜設定される。
【0042】
本発明の玄米飯は、上述した本発明の玄米飯の製造方法によって製造される玄米飯である。
製造された玄米飯は、喫食後に繊維状のものが残らず、優れた食感を有し、かつ玄米特有の臭みが抑制されている。
【0043】
製造された玄米飯は、所定の形状に成形して玄米飯成形食品としてもよい。
通常、玄米を白米と同じように炊飯すると、パラパラな状態になり成形しにくいが、本発明の玄米飯の製造方法によれば、炊飯後の玄米に粘りがあり、パラパラになりにくいため、成形しやすい。
【0044】
製造された玄米飯を所定の形状に成形し、本発明の玄米飯成形食品とすることができる。成形される形状としては、特に限定されず、三角柱状、円柱状、直方体状、球状、楕円球状、俵状等が挙げられる。玄米飯の成形は、所望の形状を有する型を用いて実施することができる。
【0045】
玄米飯成形食品は、本発明の玄米飯の製造方法によって製造された玄米飯を所定の形状に成形できればよく、例えば、おにぎり、巻き寿司、いなり寿司等が挙げられる。この中でも、おにぎりが好適である。
また、玄米飯成形食品を容器に充填することにより、玄米飯パックとすることができる。
【0046】
[2.冷凍玄米飯の製造方法]
本発明は、玄米を焙煎処理する工程(1)と、焙煎処理後の玄米を熱水と接触させる工程(2)と、熱水と接触後の玄米を炊飯して玄米飯を得る工程(3)と、得られた玄米飯を冷凍して冷凍玄米飯を得る工程(4)と、を有する冷凍玄米飯の製造方法(以下、「本発明の冷凍玄米飯の製造方法」と称す。)に関する。
なお、本発明の冷凍玄米飯の製造方法における工程(1)~(3)は、上述した本発明の玄米飯の製造方法と同じである。
【0047】
以下、本発明の冷凍玄米飯の製造方法の各工程について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0048】
図3に示すように、本発明の冷凍玄米飯の製造方法は、上述した工程(1)~工程(3)に加えて、冷凍工程(工程(4))をさらに含む。
なお、本発明の冷凍玄米飯の製造方法において、原料玄米や、工程(1)~工程(3)、その他の工程に関する内容は、上述した通りであるため、説明を省略する。
【0049】
工程(4)は、炊飯工程後に得られた玄米飯を冷凍する工程である。なお、成形された冷凍玄米飯を製造する場合は、工程(4)として、工程(3)で得られた玄米飯を所定の形状に成形した後に冷凍することが好ましい。
【0050】
工程(4)で得られた冷凍玄米飯を解凍した場合であっても、炊飯直後の玄米飯と同様に、喫食後に繊維状のものが残らず、優れた食感を有し、玄米特有の臭みを抑えることができる。
【0051】
工程(4)での冷凍温度は、0℃以下であればよいが、-10℃以下であることが好ましく、-15℃以下がより好ましい。冷凍温度の下限は特に制限がないが、解凍に余計なエネルギーや時間が必要になるため、通常、-25℃以上である。冷凍時間は、本発明の目的を損なわない限り、適宜の長さにしてもよい。
【0052】
工程(4)において、玄米飯の冷凍方法は特に制限されず、食品に対して通常行われる冷凍方法を採用することができる。冷凍を行う手段としては、冷凍の温度調節ができる限りにおいて適宜のものが選択でき、例えば一般に市販されている冷凍庫を使用することができる。また、大型の設備化された冷凍施設を用いてもよい。
【0053】
工程(4)における冷凍では、本発明の効果を損なわなければ、急速冷凍でもよく、緩慢冷凍でもよいが、好ましくは急速冷凍である。
なお、本明細書において、緩慢冷凍は、一般に市販されている冷凍設備を使用した緩慢な冷却速度での冷凍を意味し、最大氷結晶生成帯(-1℃~-5℃)の温度帯を穏やかに通過させる冷凍方法である。
また、本明細書において、急速冷凍は、急速な冷却速度で冷凍処理することを意味し、最大氷結晶生成帯(-1℃~-5℃)の温度帯を急速に通過させる冷凍方法である。急速冷凍では、冷却対象物の量にもよるが、少なくとも30分以内(好適には、10分以内)で、目的とする温度に冷却することである。
【0054】
工程(4)において、玄米飯を急速冷凍することにより、-1℃~-5℃の温度帯を早く通過させることができ、冷凍対象物(玄米飯)の中に氷結晶が発生することを抑制できるため、急速冷凍した冷凍玄米飯は、解凍後の食感の低下を抑制することができる。なお、急速冷凍する場合は、玄米飯を一旦急速冷凍で冷凍した後、通常の冷凍条件で保存してもよい。
【0055】
急速冷凍を行う装置は特に限定されないが、生産性がよく短時間に急速冷凍できることから、急速冷凍機を用いて玄米飯を冷凍するとよい。
急速冷凍機として、例えば、非貫流式熱交換による高湿度冷気を利用した3Dフリーザ法、冷却対象を冷媒液が入っているタンクに浸漬させて急速で凍結させる方法(液体窒素凍結を含む)が挙げられる。
【0056】
また、工程(4)において、均等磁束と電磁波を加えて冷凍する方法であってもよい。冷凍対象物である冷凍玄米飯に対し、均等磁束(静磁場)を加え、電磁波を加えて電磁波を所定の方向に照射しながら冷凍することにより、-18℃程度(通常の市販の冷凍庫と同程度の温度)であっても、冷凍時の氷の結晶の粗大化、水分を含む玄米の細胞の破壊及び解凍によるドリップ等をより効果的に抑制することができ、解凍後の被冷凍物(玄米飯)の食味、食感をより確実に維持することができる。
【0057】
均等磁束と電磁波を加えて冷凍する冷凍装置としては、株式会社菱豊フリーズシステムズが市販しているプロトン凍結機を好適に使用することができる。
この冷凍装置の詳細は特許第4424693号公報に記載の通りであるが、簡単に記載すると、間隔をあけて互いに対向して平行に設置された略矩形の第1板状部材及び略矩形の第2板状部材;前記第1板状部材の第1の辺と前記第2板状部材の第1の辺との間において、前記第1板状部材及び前記第2板状部材の側に電波を発信することができるように設けられた電波発信アンテナ;前記第1板状部材のうちの前記第2板状部材の側に設けられた第1磁石体、及び前記第2板状部材のうちの前記第1板状部材の側に設けられた第2磁石体;を具備し、前記第1板状部材と前記第2板状部材との間において、前記第1板状部材の主面及び前記第2板状部材の主面の略法線方向に一方向性で略均等な静磁場が形成されていること、を特徴とする冷凍装置用コアユニットと、前記コアユニットを収容する冷凍庫と、を具備することを特徴とする冷凍装置である。当該冷凍装置では、静磁場及び電波を所定の方向に照射しながら対象物を冷凍することができる。
【0058】
本発明の冷凍玄米飯は、上述した本発明の冷凍玄米飯の製造方法によって製造される冷凍玄米飯である。玄米飯は、冷凍させることによって、玄米飯の長期保存が可能となる。
【0059】
本発明の冷凍玄米飯の製造方法によって製造された冷凍玄米飯は、解凍して喫食することができる。解凍方法としては、本発明の効果を損なわなければ特に制限されず、例えば、常温(25℃)での自然解凍、冷蔵温度での解凍、マイクロ波による電子レンジ加熱等が挙げられる。
【0060】
本発明の冷凍玄米飯は、解凍後の食味、食感等に優れる。特に急速冷凍した冷凍玄米飯は、解凍後の食感の低下を抑制され、冷凍していない玄米飯と同等の食味、食感を有する。
【実施例0061】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
[1.玄米飯]
[1-1.玄米飯の製造方法]
以下の方法で、実施例1、比較例1、比較例2及び参考例の玄米飯を製造した。
【0063】
<実施例1>
(工程(1))
原料玄米(うるち米の玄米と黒米の玄米の混合物)を鍋に入れ、弱火で撹拌しながら、玄米の焙煎香がするまで焙煎処理した。
(工程(2))
その後、焙煎処理後の玄米が入った鍋に、焙煎処理後の玄米100重量部に対して、沸騰させた熱水80重量部を加え、焙煎処理後の玄米と熱水を5分間接触させた。
(工程(3))
工程(2)の後に、圧力鍋に、熱水接触後の玄米と熱水を移し替え、次いで、玄米(焙煎処理後の玄米)100重量部に対して、107重量部の常温水(約25℃)を、熱水接触後の玄米と熱水を入れた圧力鍋に追加した後、浸水時間を設けずに、25分間炊飯することにより、実施例1の玄米飯を得た。
【0064】
<比較例1>
圧力鍋に、焙煎処理をしていない原料玄米(うるち米の玄米と黒米の玄米の混合物)を入れ、さらにその玄米100重量部に対して、187重量部の常温水を入れた後、浸水時間を設けずに、25分間炊飯することにより、比較例1の玄米飯を得た。
【0065】
<比較例2>
実施例1の工程(2)において、熱水の代わりに常温水を使用した以外は実施例1と同様の製造方法によって、比較例2の玄米飯を得た。
【0066】
<参考例>
圧力鍋に、原料玄米(うるち米の玄米と黒米の玄米の混合物)を入れ、さらにその玄米100重量部に対して、187重量部の常温水を入れ、6時間浸水させた後、25分間炊飯することにより参考例の玄米飯を得た。
【0067】
[1-2.玄米飯の評価(玄米の外観観察及び官能評価)]
実施例1において、工程(1)及び工程(2)後の玄米を数個取り出し、玄米の状態を観察した。図4に玄米の状態の外観写真を示す。図4に示すように、焙煎処理前の玄米(図4左側)と比較すると、焙煎処理後の玄米(図4中央)は、玄米表皮に皺が発生していることが確認できた。
また、熱水接触後の玄米(図4右側)には、玄米表皮の皺は確認されず、玄米の膨張が確認された。
【0068】
また、実施例1の玄米飯は、工程(3)後に圧力鍋の蓋を開けた時に、玄米特有の臭みをほとんど感じなかった。しかしながら、比較例1、比較例2及び参考例の玄米飯は、玄米特有の臭みを感じた。
【0069】
また、実施例1、比較例1、比較例2及び参考例の玄米飯をそれぞれ食すると、比較例1、比較例2及び参考例の玄米飯は、玄米特有の臭みを感じたのに対して、実施例1の玄米飯では、玄米特有の臭みをほとんど感じなかった。
食感については、実施例1の玄米飯が、特に優れており、舌に繊維状のものが残らず、良好であった。
また、実施例1、比較例1及び比較例2の玄米飯の味は、参考例の玄米飯と同等程度であった。
【0070】
[2.冷凍玄米飯]
[2-1.冷凍玄米飯の製造方法1]
上記[1―1.玄米飯の製造方法]で製造された実施例1(焙煎処理した玄米を熱水と接触後に炊飯したもの)、比較例1(焙煎処理させていない玄米を浸水させずに炊飯したもの)、及び参考例(焙煎処理させていない玄米を6時間浸水させた後に炊飯したもの)の玄米飯を成形した玄米飯成形食品を製造し、緩慢冷凍した冷凍玄米飯を以下の方法で製造した。
【0071】
<冷凍方法A:緩慢冷凍>
製造された玄米飯を三角形状(おにぎり状)に成形した後、成形された玄米飯成形食品を市販の冷凍庫(約-18℃)の中で10時間緩慢冷凍することにより、冷凍玄米飯を得た。
【0072】
上記の方法で製造された冷凍玄米飯を、以下の解凍方法で解凍した。
【0073】
(解凍方法1:レンジアップ)
得られた冷凍玄米飯を出力600ワットの家庭用電子レンジを用いて、1分30秒間加温することにより解凍した。
(解凍方法2:自然解凍)
得られた冷凍玄米飯を常温(25℃)に3時間静置し、自然解凍することにより解凍した。
【0074】
[2-2.解凍後の冷凍玄米飯の評価(官能試験)]
パネラー(30代~40代の男女4名)を対象に、解凍後の冷凍玄米飯を食し、におい及び食感についての官能試験を行った。なお、評価には、冷凍方法Aで製造された冷凍玄米飯を、解凍方法1(レンジアップ)によって解凍したもの(以下、それぞれ、「実施例1A」、「比較例1A」、「参考例A」と記載する。)を用いた。
解凍した冷凍玄米飯の官能試験(におい、食感)を以下の評価基準の通り、評価した。また、表1の基になった評価試験のアンケートまとめを図5に示す。
【0075】
(評価基準:におい(玄米特有の臭み))
1点:玄米特有の臭みをほとんど感じない。
0点:玄米特有の臭みを感じる。
-1点:玄米特有の臭みを強く感じる。
【0076】
(評価基準:食感)
1点:参考例Aの食感より優れる。
0点:参考例Aの食感と同等である。
-1点:参考例Aの食感よりわずかに劣る。
【0077】
表1にパネラーの平均点を示した評価結果を示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の通り、解凍した冷凍玄米飯(実施例1A、比較例1A、参考例Aをそれぞれ食したところ、実施例1Aは、玄米特有の臭みは、ほとんど感じなかったが、参考例Aは玄米特有の臭みを感じ、比較例1Aは、玄米特有の臭みを強く感じた。
また、比較例1Aの食感は、参考例Aと比較して、同等以上ではあった。これに対して、実施例1Aは、参考例Aと比較して、優れた食感であった。
【0080】
また、実施例1及び比較例1の玄米飯を成形した玄米飯成形食品を製造し、緩慢冷凍した冷凍玄米飯を解凍方法2(自然解凍)で解凍した冷凍玄米飯をそれぞれ食したところ、上述したレンジアップで解凍した玄米飯成形食品と同様な結果であった。
【0081】
[2-3.冷凍玄米飯の製造方法2]
上記[1―1.玄米飯の製造方法]で製造された実施例1(焙煎処理した玄米を熱水と接触後に炊飯したもの)の玄米飯を成形した玄米飯成形食品を製造し、静磁場及び電波を所定の方向に照射しながら冷凍した冷凍玄米飯を以下の方法で製造した。
【0082】
<冷凍方法B:静磁場及び電波照射冷凍>
製造された玄米飯を三角形状(おにぎり状)に成形した後、成形された玄米飯成形食品をプロトン凍結機(株式会社菱豊フリーズシステムズ)を使用し、静磁場及び電波を所定の方向に照射しながら、-18℃になるまで冷凍し、その状態で保持し、冷凍玄米飯を得た(合計冷凍時間:30分)。
【0083】
上記の方法で製造された冷凍玄米飯を、以下の解凍方法で解凍した。
【0084】
(解凍方法1:レンジアップ)
得られた冷凍玄米飯を出力600ワットの家庭用電子レンジを用いて、1分30秒間加温することにより解凍した。
(解凍方法2:自然解凍)
得られた冷凍玄米飯を常温(25℃)に3時間静置し、自然解凍することにより解凍した。
【0085】
[2-4.解凍後の冷凍玄米飯の評価(外観観察及び官能評価)]
図6に、実施例1の玄米飯を成形した玄米飯成形食品を冷凍方法Bで冷凍した冷凍玄米飯と、解凍後の冷凍玄米飯(レンジアップ、自然解凍)の外観写真を示す。
図6に示すように、冷凍方法Bで冷凍後の冷凍玄米飯の表面は、霜や氷結晶は確認されず(図6上側)、解凍方法の違いによる外観の変化も確認されなかった(図6中央及び下側)。
また、各解凍方法で解凍した冷凍玄米飯をそれぞれ食したところ、いずれの解凍方法でも食感や味は損なわれておらず、玄米特有の臭みは、ほとんど感じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、優れた食感を有し、玄米特有の臭みが抑制された玄米飯の製造方法及び玄米飯成形食品、並びに冷凍玄米飯の製造方法を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6