(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138898
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】マガジン装置、及び、それを備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/157 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B23Q3/157 M
B23Q3/157 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049615
(22)【出願日】2023-03-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(72)【発明者】
【氏名】石塚 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 晋
(72)【発明者】
【氏名】金岩 勝樹
(72)【発明者】
【氏名】峯重 智之
(72)【発明者】
【氏名】隅岡 健二
【テーマコード(参考)】
3C002
【Fターム(参考)】
3C002AA03
3C002BB07
3C002DD06
3C002FF03
3C002KK04
(57)【要約】
【課題】工作機械全体をコンパクトに構成しながらホイールと工作機械本体との間に設けられる搬送ユニットと、工作機械本体を構成する各機器との干渉を生じにくくできるマガジン装置を提供する。
【解決手段】水平軸周りに回転可能なホイール2と、前記ホイール2において円環状をなすように当該ホイール2の周方向に並べて設けられており、工具Tの先端部を前記ホイールの径方向外側に向けて保持する複数のポット1と、前記ホイール2と、前記工具Tが着脱される主軸頭MSを少なくとも具備する工作機械本体101との間で前記工具Tを搬送する搬送ユニットCUと、を備え、前記ホイール2を前記工作機械本体101側から前記水平軸に沿って視た場合に、前記搬送ユニットCUにより前記工具Tが前記ポット1に対して着脱される位置である工具着脱位置が、前記ホイール2の天頂を12時方向として9時方向と12時方向の間に設定した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平軸周りに回転可能なホイールと、
前記ホイールにおいて円環状をなすように当該ホイールの周方向に並べて設けられており、工具の先端部を前記ホイールの径方向外側に向けて保持する複数のポットと、
前記ホイールと、前記工具が着脱される主軸頭を少なくとも具備する工作機械本体との間で前記工具を搬送する搬送ユニットと、を備え、
前記ホイールを前記工作機械本体側から前記水平軸に沿って視た場合に、前記搬送ユニットにより前記工具が前記ポットに対して着脱される位置である工具着脱位置が、前記ホイールの天頂を12時方向として9時方向と12時方向の間に設定されていることを特徴とする工具マガジン装置。
【請求項2】
前記搬送ユニットが、前記工具の姿勢を先端部は上方に向くとともに水平面に対して傾斜させた状態で前記工具を前記ポットに対して抜き差しするように構成された請求項1記載の工具マガジン装置。
【請求項3】
前記搬送ユニットが、
前記工具を水平方向に搬送する水平方向搬送機構と、
前記工具を上下方向に搬送する上下方向搬送機構と、を備えた請求項2記載の工具マガジン装置。
【請求項4】
前記水平方向搬送機構が、
前記工具を前記工具着脱位置と、前記ポットから前記工具が抜けて所定距離離間した状態となる第1退避位置との間で前記工具を斜め方向に進退させる進退部と、
前記進退部に保持されている前記工具を前記第1退避位置と、当該第1退避位置から前記工作機械本体側へ水平方向に離間した第2退避位置との間で水平方向に移動可能に構成された水平移動部と、を備えた請求項3記載の工具マガジン装置。
【請求項5】
前記上下方向搬送機構が、
前記工具が着脱される待機ポットと、
前記待機ポットに前記工具が着脱される待機位置と、前記待機ポットに取り付けられている前記工具が前記主軸頭に取り付けられている別の工具と交換される工具交換位置との間で上下方向に搬送する上下移動部と、を備えた請求項3記載の工具マガジン装置。
【請求項6】
前記上下移動部は、前記待機位置と前記工具交換位置との間で前記待機ポットの姿勢を変化させながら上下方向に移動させるように構成されている請求項5記載の工具マガジン装置。
【請求項7】
前記主軸頭の軸方向は水平方向に延びており、
前記水平方向搬送機構は、前記工具の姿勢を先端部が斜め上方向に向いた状態で搬送するように構成されており、
前記上下移動部は、前記待機位置においては前記待機ポットに対して前記工具が先端部が斜め上方向に向いた状態で着脱されるとともに、前記工具交換位置では前記待機ポットに取り付けられている前記工具の姿勢を先端部が水平方向に向くように構成されている請求項6記載の工具マガジン装置。
【請求項8】
前記搬送ユニットが、
前記上下方向搬送機構と、前記主軸頭との間で工具交換を行うATCユニットをさらに備えた請求項4記載の工具マガジン装置。
【請求項9】
前記工作機械本体と、
請求項1~8のいずれか1項に記載の工具マガジン装置と、を備えた工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平軸周りに回転可能なホイールと、前記ホイールにおいて円環状をなすように当該ホイールの周方向に並べて設けられており、工具の先端部を前記ホイールの径方向外側に向けて保持する複数のポットと、を備えたマガジン装置、及び、それを備えた工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、いわゆるホイール型の工具マガジンを備えたものがある。この種の工具マガジンは、円環状をなし、水平軸周りに回転可能に構成されたホイールの外周部に工具が着脱されるポットが周方向に並べて設けられている。また、工具マガジンと主軸頭を具備する工作機械本体との間で工具交換を行う場合、工具が取り付けられているポット自体を搬送するものもある。
【0003】
例えば特許文献1に示すマガジン装置は、ホイールを工作機械本体側から視た場合における9時の方向でポットがホイールから取り外されて、水平方向に延びる案内部材内に設けられたポットスライダにより、ATCユニットまでポット自体を搬送する。
【0004】
ところで、このマガジン装置は鉛直方向であるY軸方向に立設するコラムに対してホイールを水平方向であるX軸方向に大きく離隔させておき、その間にポットスライダを設けているため工作機械全体としてX軸方向の幅を小さくすることが難しい。かといって、従来のマガジン装置のようにポットスライダをホイールの手前側であり、工作機械本体側から見て9時の位置にポットスライダを設けると、例えばワークが載置されるテーブルをX軸周りとY軸周りといった複数軸周りに回転可能にするために揺動器が干渉してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、工作機械全体をコンパクトに構成しながらホイールと工作機械本体との間に設けられる搬送ユニットと、工作機械本体を構成する各機器との干渉を生じにくくできるマガジン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係るマガジン装置は、水平軸周りに回転可能なホイールと、前記ホイールにおいて円環状をなすように当該ホイールの周方向に並べて設けられており、工具の先端部を前記ホイールの径方向外側に向けて保持する複数のポットと、前記ホイールと、前記工具が着脱される主軸頭を少なくとも具備する工作機械本体との間で前記工具を搬送する搬送ユニットと、を備え、前記ホイールを前記工作機械本体側から前記水平軸に沿って視た場合に、前記搬送ユニットにより前記工具が前記ポットに対して着脱される位置である工具着脱位置が、前記ホイールの天頂を12時方向として9時方向と12時方向の間に設定されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明において工具着脱位置は9時方向と12時方向の位置には設定されない。別の表現をすると工具着脱位置は前記ホイールの回転軸を含む水平面を基準として、当該水平面と、工具着脱位置と前記ホイールの回転中心とを結ぶ仮想直線とがなす角の小さい方の角度が0度よりも大きく90度よりも小さくなるように設定されている。
【0009】
このようなものであれば、前記工具着脱位置が9時方向と12時方向の間に設定されているので、前記搬送ユニットは9時方向の最大外径部分よりも前記ホイールの中心側に配置するとともに、従来よりも高い位置に配置することが可能となる。この結果、前記ホイールと前記工作機械本体を近づけたとしても例えばテーブルを揺動させるための機構は前記搬送ユニットの下側に配置させることが可能となり、コンパクトに構成することが可能となる。また、前記搬送ユニットは前記ポットに対して前記工具を着脱し、前記工具だけを搬送するので、搬送重量を低減して安全に運びやすくしやすくできる。また、例えば前記ホイールが複数連設けられている場合には前記搬送ユニットを用いて前記ホイール間での前記工具の配置の入れ替えを行い、工具交換効率を高めることも可能となる。
【0010】
前記ホイールの斜め上方向のスペースを利用して前記工具の移動を行えるようにするとともに、前記工具の着脱時に複雑な動作を必要としないようにするには、前記搬送ユニットが、前記工具の姿勢を先端部は上方に向くとともに水平面に対して傾斜させた状態で前記工具を前記ポットに対して抜き差しするように構成されたものであればよい。
【0011】
前記工作機械本体における工具交換可能な最大高さに制限されることなく、前記ホイールに対して装着可能な前記工具の本数を多くするために前記ホイールの直径を大きくできるようにするは、前記搬送ユニットが、前記工具を水平方向に搬送する水平方向搬送機構と、前記工具を上下方向に搬送する上下方向搬送機構と、を備えたものであればよい。
【0012】
前記工具の先端側を斜め上方に向けたまま水平方向に搬送できるようにして簡易な構成によって工具搬送を実現できるようにするには、前記水平方向搬送機構が、前記工具を前記工具着脱位置と、前記ポットから前記工具が抜けて所定距離離間した状態となる第1退避位置との間で前記工具を斜め方向に進退させる進退部と、前記進退部に保持されている前記工具を前記第1退避位置と、当該第1退避位置から前記工作機械本体側へ水平方向に離間した第2退避位置との間で水平方向に移動可能に構成された水平移動部と、を備えたものであればよい。
【0013】
前記水平方向搬送機構が、前記工具を前記工作機械本体において工具交換可能な位置よりも高い位置で前記工具を水平方向に移動させるようにして、前記搬送ユニットの下部にスペースを形成した場合でも従来と同様の工具交換を実現できるようにするには、前記上下方向搬送機構が、前記工具が着脱される待機ポットと、前記待機ポットに前記工具が着脱される待機位置と、前記待機ポットに取り付けられている前記工具が前記主軸頭に取り付けられている別の工具と交換される工具交換位置との間で上下方向に搬送する上下移動部と、を備えたものであればよい。
【0014】
前記工具を前記ホイールの高所で着脱するようにしつつ、前記工作機械本体については従来と同等の高さにおいて工具交換が行えるようにするには、前記上下移動部は、前記待機位置と前記工具交換位置との間で前記待機ポットの姿勢を変化させながら上下方向に移動させるように構成されていればよい。
【0015】
前記工具交換位置における前記工具の姿勢が前記主軸頭に装着される際の姿勢と同じ状態にして例えば既存の自動工具交換方法を用いやすくするには、前記主軸頭の軸方向は水平方向に延びており、前記水平方向搬送機構は、前記工具の姿勢を先端部が斜め上方向に向いた状態で搬送するように構成されており、前記上下移動部は、前記待機位置においては前記待機ポットに対して前記工具は先端部が斜め上方向に向いた状態で着脱されるとともに、前記工具交換位置では前記待機ポットに取り付けられている前記工具の姿勢を先端部が水平方向に向くように構成されていればよい。
【0016】
前記ホイールの高所から取り外された前記工具が前記上下方向搬送機構により前記工具交換位置まで下された状態において高速かつ確実に工具交換を行えるようにするには、前記搬送ユニットが、前記上下方向搬送機構と、前記主軸頭との間で工具交換を行うATCユニットをさらに備えたものであればよい。
【0017】
前記工作機械本体と、前記工具マガジン装置と、を備えた工作機械であれば、前記ホイールと前記工作機械本体との距離をおいて設置しなくてもよく、コンパクトな構成でありながら例えば5軸加工機のように多数の駆動部を干渉させることなく設けることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明に係るマガジン装置であれば、前記工具着脱位置が9時の方向と12時の方向に設定しているので、従来は使用されていなかった上方の空間に前記搬送ユニットの大部分を配置し、その下部に大きなスペースを形成することができる。この結果、前記工作機械本体の一部を前記搬送ユニットの下部に配置することが可能となるため前記ホイールと前記工作機械本体を近づけて設けることができ、工作機械全体をコンパクトに構成することができる。このような効果は例えば前記ホイールを大型化して装着できる工具本数を増加させる場合に顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態における工作機械の外観を示す模式的斜視図。
【
図2】第1実施形態における工作機械の工作機械本体及びマガジン装置を示す模式的側面図。
【
図3】第1実施形態におけるマガジン装置の全体構成を示す模式的斜視図。
【
図4】第1実施形態における搬送ユニットによるホイールからの工具の取り外しを示す模式図。
【
図5】第1実施形態における搬送ユニットによる工具の水平方向の搬送動作を示す模式図。
【
図6】第1実施形態における搬送ユニットによる工具の上下方向の搬送動作を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態におけるマガジン装置100、及び、それを用いた工作機械200について
図1乃至
図6を参照しながら説明する。
【0021】
図1は工作機械200の外観を示すものである。本明細書で言う「工作機械200」とは、ワークを加工する機能を備えた種々の装置を包含する概念である。本明細書では、工作機械200の一例として横形のマシニングセンタを例に挙げて説明を行うが、工作機械200はこれに限定されない。例えば、工作機械200は立形のマシニングセンタであってもよい。また、工作機械200はターニングセンタや5軸加工機、複合加工機であってもよい。加えて、工作機械200は研削機やその他の切削機械であってもよい。また、加工は除去加工だけを含む概念ではなく、付加加工も含み得る概念である。
【0022】
図1に示すように工作機械200は機内と機外を仕切るカバー体CVと、複数の開閉可能なドアDR1、DR2と、操作盤OBとを備えている。この工作機械200は機内に切削加工が行われる加工エリアと、内扉により仕切られており、待機中の次のワークがパレットの上に載置されている待機エリアが内部に区切って設定されている。一方のドアは機外から加工エリアにアクセスするための加工エリア用ドアDR1であり、他方のドアは機外から待機エリアにアクセスするための待機エリア用ドアDR2である。各ドアには機内の様子を機外から観察できる観察窓OWが形成されている。加工エリア用ドアDR1の近傍には操作盤OB1が設けられている。オペレータは操作盤OBの前に立った状態で加工エリア用ドアDR1の前に立つ状態となる。つまり、オペレータは操作盤OBを操作しながらわずかに体の向きを加工エリア側に向けるだけで、観察窓OWを介して機内の様子、特にクーラントの供給状態を視認できるように構成されている。
【0023】
第1実施形態における工作機械200は、ワークと工具TとがX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3つの直交3軸に対して相対移動可能であるとともに、ワークの姿勢を2方向にそれぞれ回転させて変更可能に構成された5軸加工機である。
【0024】
この工作機械200は、工具Tが水平方向を向くように横型のマシニングセンタとして構成されている。また、工具Tの向いている方向をZ軸として、Z軸に対して水平方向に直交する工具Tの移動方向がX軸、Z軸に対して鉛直方向に直交する工具Tの移動方向がY軸として定義される。また、初期状態においてX軸と平行な軸線を有する第1回転軸はA軸、Y軸と平行な軸線を有する第2回転軸はB軸と定義される。
【0025】
各機構の概略について説明すると、
図2に示すように第1実施形態の工作機械200における工作機械本体101は、Z軸方向の延びるベッドBSと、ベッドBSに対してY軸方向に立設しているコラムCLと、を備えている。ここで、
図2は加工エリア用ドアDR1側から視た場合の内部構造を示しており、手前側に想像線で記載された工作機械本体101があり、その奥側に実線で記載されたマガジン装置100が設けられている。
【0026】
図2に示すようにベッドBS上にはZ軸方向に延びる一対の案内面が形成されており、ワークをZ軸方向に対して移動させるための第1サドルSD1がその案内面上に設けられている。第1サドルSD1は、図示しないボールねじ、サーボモータ等を具備するZ軸方向駆動機構によりワークのZ軸方向に対して所定の位置となるように制御される。この第1サドルSD1上には、ワークをA軸周り、及び、B軸周りに回転させるためのAB軸ユニットABが搭載されている。このAB軸ユニットABは、ワークが固定されるとともに、B軸周りに回転可能に構成されたテーブルRTと、テーブルRTを支持する揺動器CRと、揺動器CRをA軸周りに回転させるとともに、その回転角度を制御する一対の回転制御装置と、を備えている。
【0027】
コラムCLの側面にはX軸方向に延びる一対の案内面が形成されており、第2サドルSD2がその案内面上に設けられている。第2サドルSD2は図示しないボールねじ、サーボモータ等を具備するX軸方向駆動機能によりX軸方向に対して所定の位置となるように制御される。第2サドルSD2は工具TがZ軸方向を向けて取り付けられる主軸頭MSをY軸方向に駆動し所定の位置に制御するためのY軸方向駆動機構を備えている。
【0028】
マガジン装置100は、主軸頭MSに取り付けられる工具Tを多数収容し、例えばNCプログラムで指定された工具Tを主軸頭MSに対して交換するものである。このマガジン装置100は、いわゆるホイール2型のものであり、水平軸周りに回転可能なホイール2の外周部に多数の工具Tを円環状(真円状)に並べて保持する。より具体的にはホイール2は、外周部に円環状に設けられており、工具Tの基端側が着脱され、例えば油圧駆動によりその端部を把持するように構成されたポット1を具備する。すなわち、保持されている工具Tはホイール2の半径方向外側に先端部が向くように取り付けられる。なお、各図においては工具Tの表記は一部を除いて省略しているが、実際の使用時には多数の工具Tがホイール2の各ポット1に対して取り付けられている。
【0029】
工具Tは、先端側の刃具T1と基端側のホルダT2とから構成されている。刃具T1はエンドミル、フェイスミル、ドリルなど加工目的に応じたものが用意される。ホルダT2は刃具T1を保持するとともに、主軸頭MS及びポット1に対して固定される。
図2に示すように第1実施形態ではホイール2を工作機械本体101側から視た場合においてホイール2の天頂を12時の方向とした場合に、ホイール2において9時の方向から12時の方向の間にある工具Tが工作機械本体101側へと搬送されて、主軸頭MSに取りつけられている工具Tと交換される。ここで、主軸頭MSにおいて工具Tが取り付けられるZ軸方向の位置はホイール2の外周よりも内側に設定されている。ホイール2における工具T着脱位置とホイール2の回転中心とを結ぶ直線と、ホイール2の回転軸を含む水平面とがなす小さい方の角度は例えば45度に設定される。なお、この角度は45度に限られるものではなく、例えば10時の方向(30度の方向)に設定されていてもよい。
【0030】
以下では
図3乃至
図6を参照しながらマガジン装置100の詳細について説明する。マガジン装置100は、
図3に示すようにホイール2及び多数のポット1からなるホイールマガジンMGと、ホイールマガジンMGと、工作機械本体101との間で工具Tを搬送する搬送ユニットCUとを備えている。本実施形態では2連のホイールマガジンMGがX軸方向に並べて設けられているが、この数はより多くてもよいし、1つだけであってもよい。搬送ユニットCUは、工具Tを水平方向に搬送する水平方向搬送機構3と、工具Tを上下方向に搬送する上下方向搬送機構4と、主軸頭MSにある工具Tとの工具交換を行うATCユニット5とを備えている。ホイールマガジンMGに取りつけられている工具Tは、先端側が斜め上方を向いた状態を保ったまま水平方向搬送機構3によってX軸方向に搬送されたのち、水平方向搬送機構3から上下方向搬送機構4に渡される。上下方向搬送機構4は受け取った工具Tを上下方向に移動させながら、その姿勢も上端側では斜め上方に先端側が向いた状態から下端側では水平方向に向いた状態へ変化させる。上下方向搬送機構4により工具Tが下端側へ搬送されるとATCユニット5により主軸頭MSにある工具Tとの交換が行われる。ここでATCユニット5については既存のものと同様の構造であるため、以下ではホイールマガジンMG、水平方向搬送機構3、上下方向搬送機構4の詳細について説明する。
【0031】
ホイールマガジンMGは、図示しない駆動系とラックアンドピニオンにより駆動系される内輪22と、多数のポット1が取り付けられる外輪21とがスポーク部によって接続されたものである。外輪21の内周面は図示しない支持機構によって回転可能に支持される。各ホイールマガジンMGはそれぞれ独立に水平軸周りに回転可能に構成されており、工具交換の対象となる工具Tは45度の位置に割り出される。隣り合うポット1に対して1つずつ工具Tを取りつけてもよいし、直径の大きい工具Tの場合には隣のポット1を開けて用いてもよい。
【0032】
図4に示すように水平方向搬送機構3は、工具Tを水平方向に移動させる水平移動部31と、水平移動部31に設けられて、ホイール2に設けられているポット1、又は、後述する上下搬送機構の待機ポット41に対して工具Tを斜め方向に移動させて着脱を行う進退部32と、を備えている。水平移動部31は、X軸方向に延びる直線レールR1上を走行するものであり、例えばモータやギア等からなる駆動系を備えている。進退部32は工具TのホルダT2を挟んで掴む爪部を具備し、XZ平面内においてZ軸に対して45度をなす方向に斜めに移動可能に構成されている。進退部32は例えば油圧又は空圧により駆動される駆動部を備えている。
図4(a)は工具T着脱位置において水平方向搬送機構3が斜め上方を向くポット1に対して工具Tを差し込む、又は、引き抜く状態を示す。進退部32は工具TのホルダT2を掴むと、
図4(b)に示すように斜め上方にある第1退避位置へ所定距離移動する。第1退避位置では工具Tの基端はポット1から完全に抜けた状態となる。
【0033】
進退部32によりポット1から工具Tが抜かれると、
図5(a)に示すように水平移動部31により工具TはX軸方向に沿って第1退避位置から第2退避位置へと移動する。その後
図5(b)に示すように進退部32が斜め下方に移動することで工具Tは第2退避位置から上下搬送機構の待機ポット41に対して着脱される待機位置に移動する。
【0034】
上下方向移動機構は
図5及び
図6に示すように、水平方向移動機構との間で工具Tの受け渡しをする待機ポット41と、待機ポット41を上下方向に移動させる上下移動部42と、を備えている。待機ポット41はホイール2のポット1と同じ構造のものであり、待機ポット41に工具Tが差し込まれると油圧によってホルダT2の一部を固定する。上下移動部42は工具Tを上下に移動させつつ、その姿勢を変化させるように構成されている。上下移動部42は湾曲レールR2上を走行するものであり、図示しない駆動機構により待機ポット41を回転させながら上下に移動する。上下移動部42が上端にある状態では待機ポット41の開口は斜め上方を向き、下端にある状態では待機ポット41の開口は水平方向(Z軸方向)を向くように構成されている。すなわち、上下移動部42によって工具Tは待機位置と工具交換位置との間を上下方向に姿勢を変化させながら移動することになる。
【0035】
工具交換位置は例えばATCユニット5を基準として、工具交換が行われる際の主軸頭MSに取り付けられている工具Tの位置と概略面対称となる位置に設定される。ATCユニット5が回転及び進退動作を行うことで、待機ポット41に取り付けられている工具Tと主軸頭MSに取り付けられている工具Tとが交換される。主軸頭MSから取り外された工具Tは待機ポッドに挿入されて、
図6から
図4に記載の搬送ユニットCUの動作を逆に行うことによりホイールマガジンMGのポット1へと収入される。また、待機ポット41が上下に移動している間や、工具交換のために待機している間は水平方向搬送機構3だけを独立させて動作させて各ホイールマガジンMG間において工具Tの入れ換えや並び替えを行うこともできる。
【0036】
このように構成された工具Tマガジン装置100であれば、従来のようにホイール2において9時方向の位置に搬送機構を設けていた場合と比較して高い位置に搬送ユニットCUの大部分を設けることができる。したがって、搬送ユニットCUの下方には大きなスペースを容易に形成でき、ワークの姿勢を変化させるためにAB軸ユニットの一部を設けることもできる。したがって、工作機械本体101とマガジン装置100をX軸方向に対して近接させて設けることができ、工具T収容本数を多くしながらコンパクトな工作機械200にすることができる。
【0037】
また、ホイール2の9時の方向から12時の方向の間には水平方向搬送機構3を配置するスペースに設定し、水平方向搬送機構3の高さがホイール2の天頂よりも低くなるように構成されているので、工作機械200全体の高さを増加させることもない。例えば輸出等で工作機械200を輸送する場合には高さ制限が発生することがある、そのような制限に適合するようにして必要最小限の分解だけで梱包することも可能となる。
【0038】
工具Tが取り付けられているポット1自体を搬送するのではなく、工具Tだけが搬送されるように構成されているので、搬送重量を小さくすることができ、例えば水平方向搬送機構3の進退部32による把持力をそれほど大きくしなくても安全性を保つことができる。したがって、高所での工具T搬送についても安全性を保ちやすい。
【0039】
ホイール2に設けられているポット1、及び、上下方向搬送機構4の待機ポット41に対して工具Tの先端部が斜め上方を向いた状態を保ったまま着脱が行われるので、簡素な構成にできる。また、ポット1への工具T挿入時には自重を利用できるので挿入されやすい。したがって、高所に設けられる搬送ユニットCUの重量や出力を押さえることができる。
【0040】
水平方向搬送機構3と上下方向搬送機構4が独立しており、上下方向搬送機構4は待機ポット41を別途具備しているので、工具交換が行われている間や待機中には水平方向搬送機構3により各ホイールマガジンMGに取り付けられている工具Tの移動を並行して行うことができる。つまり、従来であればマガジン装置100に収納されている多数の工具Tの整理作業は加工等が行われていない休止期間に行うしかなかった。これに対して、第1実施形態の工作機械200であれば、ワークを加工しながら工具Tの整理を行うことで加工の効率化や休止期間の最小化を実現できる。
【0041】
その他の実施形態について説明する。工具着脱位置については第1実施形態において説明した位置に限られず、9時の方向から12時の方向の間に設定されていればよい。搬送ユニットを設けることによる機械の最大高さを抑える観点からすると、工具交換位置は例えば10時の方向11時の方向の間に設定するのがよい。この場合10時の方向及び11時の方向は含んでもよい。
【0042】
水平方向搬送機構は工具着脱位置での工具の姿勢を保ったまま水平方向の搬送を行うように構成されていたが、例えば工具交換位置で必要とされる姿勢に予め変更したうえで工具を搬送するようにしてもよい。すなわち、進退部が工具の進退だけでなく、進退に伴って工具の姿勢を変化させるように構成してもよい。
【0043】
上下方向搬送機構については省略してもよい。例えば工作機械本体において主事頭の移動可能な最大高さが水平方向搬送機構と同等の位置であれば上下移動させずに工具交換を行うようにしてもよい。
【0044】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や、各実施形態の一部同士の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0045】
200・・・工作機械、100・・・マガジン装置、1・・・ポット、2・・・ホイール、CU・・・搬送ユニット、3・・・水平方向搬送機構、31・・・水平移動部、32・・・進退部、4・・・上下方向搬送機構、41・・・待機ポット、42・・・上下移動部、5・・・ATCユニット、101・・・工作機械本体。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平軸周りに回転可能なホイールと、
前記ホイールにおいて円環状をなすように当該ホイールの周方向に並べて設けられており、工具の先端部を前記ホイールの径方向外側に向けて保持する複数のポットと、
前記ホイールと、前記工具が着脱される主軸頭を少なくとも具備する工作機械本体との間で前記工具を搬送する搬送ユニットと、を備え、
前記ホイールを前記工作機械本体側から前記水平軸に沿って視た場合に、前記搬送ユニットにより前記工具が前記ポットに対して着脱される位置である工具着脱位置が、前記ホイールの天頂を12時方向として9時方向と12時方向の間に設定されており、
前記搬送ユニットが、前記工具の姿勢を先端部は上方に向くとともに水平面に対して傾斜させた状態で前記工具を前記ポットに対して抜き差しするように構成された、工具マガジン装置。
【請求項2】
前記搬送ユニットが、
前記工具を水平方向に搬送する水平方向搬送機構と、
前記工具を上下方向に搬送する上下方向搬送機構と、を備えた請求項1記載の工具マガジン装置。
【請求項3】
前記水平方向搬送機構が、
前記工具を前記工具着脱位置と、前記ポットから前記工具が抜けて所定距離離間した状態となる第1退避位置との間で前記工具を斜め方向に進退させる進退部と、
前記進退部に保持されている前記工具を前記第1退避位置と、当該第1退避位置から前記工作機械本体側へ水平方向に離間した第2退避位置との間で水平方向に移動可能に構成された水平移動部と、を備えた請求項2記載の工具マガジン装置。
【請求項4】
前記上下方向搬送機構が、
前記工具が着脱される待機ポットと、
前記待機ポットに前記工具が着脱される待機位置と、前記待機ポットに取り付けられている前記工具が前記主軸頭に取り付けられている別の工具と交換される工具交換位置との間で上下方向に搬送する上下移動部と、を備えた請求項2記載の工具マガジン装置。
【請求項5】
前記上下移動部は、前記待機位置と前記工具交換位置との間で前記待機ポットの姿勢を変化させながら上下方向に移動させるように構成されている請求項4記載の工具マガジン装置。
【請求項6】
前記主軸頭の軸方向は水平方向に延びており、
前記水平方向搬送機構は、前記工具の姿勢を先端部が斜め上方向に向いた状態で搬送するように構成されており、
前記上下移動部は、前記待機位置においては前記待機ポットに対して前記工具が先端部が斜め上方向に向いた状態で着脱されるとともに、前記工具交換位置では前記待機ポットに取り付けられている前記工具の姿勢を先端部が水平方向に向くように構成されている請求項5記載の工具マガジン装置。
【請求項7】
前記搬送ユニットが、
前記上下方向搬送機構と、前記主軸頭との間で工具交換を行うATCユニットをさらに備えた請求項3記載の工具マガジン装置。
【請求項8】
前記工作機械本体と、
請求項1~7のいずれか1項に記載の工具マガジン装置と、を備えた工作機械。