(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138922
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】抗糖化剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/48 20060101AFI20241002BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20241002BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241002BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241002BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241002BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241002BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241002BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241002BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A61K36/48
A61K31/353
A61P3/10
A61P9/10 101
A61P27/02
A61P13/12
A61P25/00
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049646
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】507103020
【氏名又は名称】株式会社アカシアの樹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】片岡 武司
(72)【発明者】
【氏名】小川 壮介
(72)【発明者】
【氏名】横正 健剛
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD08
4B018MD48
4B018ME03
4B117LC04
4B117LG24
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4C088AB59
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4C088ZA81
4C088ZC35
(57)【要約】
【課題】抗糖化剤の提供。
【解決手段】アカシアの樹皮の抽出物を含む、抗糖化剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アカシアの樹皮の抽出物を含む、抗糖化剤。
【請求項2】
前記抽出物が、プロアントシアニジンを含む、請求項1に記載の抗糖化剤。
【請求項3】
糖尿病合併症の予防又は治療に用いるための請求項1に記載の抗糖化剤。
【請求項4】
糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害、糖尿病血管合併症又は動脈硬化症の予防又は治療に用いるための請求項1に記載の抗糖化剤。
【請求項5】
食品である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗糖化剤。
【請求項6】
医薬品又は医薬部外品である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗糖化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗糖化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
糖とタンパク質との結合で生じる糖化タンパク質は、最終的には糖化最終生成物(AGEs:Advanced Glycation End Products)と呼ばれる不可逆的な化合物を形成することが知られている。
【0003】
AGEsとしては、ペントシジン、クロスリン、カルボキシメチルリジン、ピラジン等が知られている。AGEsは、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病神経障害、糖尿病血管合併症及び動脈硬化症等の糖尿病合併症の原因物質であると考えられている。AGEsは、血管内皮細胞に存在する特異的な受容体(RAGE)に結合して、タンパク質同士を架橋させ、その架橋構造により分子が固くなり糖尿病性血管症の発症に関連することも知られている(非特許文献1)。従って、タンパク質の糖化を阻害することは、AGEsの減少にもつながり、糖尿病合併症を予防又は治療することに対し有効であると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】小山英則:AGEとその受容体からみた糖尿病性血管障害の標的療法の可能性. 糖尿病 53巻4号 2010:227-230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗糖化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者達が鋭意検討した結果、アカシアの樹皮の抽出物が、抗糖化作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下の実施形態を含む。
[1]
アカシアの樹皮の抽出物を含む、抗糖化剤。
[2]
前記抽出物が、プロアントシアニジンを含む、[1]に記載の抗糖化剤。
[3]
糖尿病合併症の予防又は治療に用いるための[1]又は[2]に記載の抗糖化剤。
[4]
糖尿病合併症が、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害、糖尿病血管合併症及び/又は動脈硬化症の予防又は治療に用いるための[1]~[3]のいずれかに記載の抗糖化剤。
[5]
食品である、[1]~[4]のいずれかに記載の抗糖化剤。
[6]
医薬品又は医薬部外品である、[1]~[4]のいずれかに記載の抗糖化剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抗糖化剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、アカシア樹皮抽出物の濃度依存的な切断率の結果を示す。
【
図2】
図2は、糖化タンパク質の分解実験の結果を示す。
【0010】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
本発明の一実施形態は、アカシアの樹皮の抽出物を含む、抗糖化剤に関する。
【0012】
本明細書において、抗糖化とは、糖化タンパク質の蓄積を阻害する作用を意味する。
したがって、抗糖化としては、例えば、タンパク質から糖化タンパク質の生成を抑制する作用、生成された抗糖化タンパク質を分解する作用、糖化タンパク質中の架橋を分解又は切断する作用等が挙げられる。
また、本発明における抗糖化剤は、AGEsの生成を抑制する作用を有していてもよい。
すなわち、抗糖化剤により、上記作用が活性化されて、糖化タンパク質の蓄積が阻害される。糖化タンパク質の蓄積が阻害される結果、糖化タンパク質の量が減少あるいは維持されるか、糖化タンパク質の量の増加が抑制される。また、糖化タンパク質中の架橋の量が減少あるいは維持されるか、糖化タンパク質中の架橋の量の増加が抑制される。これらの作用により、あるいは、これらの作用が増強されることで、AGEsの生成が抑制されてよい。
【0013】
糖化タンパク質とは、グルコース等のアルドース(アルデヒド基を潜在的に有する単糖及びその誘導体)のアルデヒド基と、タンパク質のアミノ基が非酵素的に共有結合を形成し、アマドリ転移することにより生成したものである。タンパク質のアミノ基としてはアミノ末端のαアミノ基、タンパク質中のリジン残基側鎖のεアミノ基が挙げられる。生体内で生じる糖化タンパク質としては、例えば、血液中のヘモグロビンが糖化されることによって生成される糖化ヘモグロビン、アルブミンが糖化されることによって生成される糖化アルブミン等が知られている。
【0014】
本明細書において、糖化タンパク質の架橋とは、糖化タンパク質同士、又は糖化タンパク質とタンパク質、糖化タンパク質とAGEs等の間に形成された架橋構造をいう。糖化タンパク質の架橋は、例えば糖化タンパク質のαジケトンのC-C結合を意味してもよい。糖化タンパク質の架橋が分解又は切断されることにより、架橋により多量体化していたタンパク質が、当該多量体化が解かれることとなる。
すなわち、抗糖化剤により、糖化タンパク質の架橋による多量体の量が減少あるいは維持されるか、糖化タンパク質の架橋による多量体の量の増加が抑制されてよい。
【0015】
本発明の他の実施形態は、アカシアの樹皮の抽出物を含む、糖化タンパク質分解剤に関する。
本発明における糖化タンパク質分解剤は、生成された抗糖化タンパク質を分解する作用、糖化タンパク質中の架橋を分解又は切断する作用を有していてよい。
糖化タンパク質分解剤は、糖化タンパク質中の架橋を分解又は切断する作用を有していることが好ましい。糖化タンパク質分解剤が、糖化タンパク質の架橋を分解又は切断する活性を有することにより、抗糖化剤として機能し得る。
抗糖化剤としての機能により、あるいは、これらの機能が増強されることで、AGEsの生成が抑制されてよい。
【0016】
本発明のさらにほかの実施形態は、アカシアの樹皮の抽出物を含む、糖化タンパク質の架橋分解剤に関してもよい。架橋分解剤は、糖化タンパク質中の架橋を分解又は切断する作用を有していてよい。
糖化タンパク質の架橋分解剤に対しても、本願明細書におけり抗糖化剤に関する説明が適用される。
【0017】
本明細書において糖化最終生成物(AGEs:Advanced Glycation End Products)とは、メイラード反応による生成物の総称であり、タンパク質と糖質の生体内反応によって作られる複合体であり、身体の様々な箇所で発現する物質を指す。AGEsは糖化タンパク質が各種反応中間体を経て形成される。糖化タンパク質は、タンパク質が非酵素的に糖により修飾され、タンパク質の変性やタンパク質間の架橋等が起こる。糖化タンパク質の蓄積を阻害することは、中でも、糖化タンパク質中の架橋を分解又は切断することは、糖化タンパク質の減少にもつながり、ひいてはAGEsが減少することになり、糖尿病合併症を予防又は治療することに対し有効であると考えられる。
【0018】
糖化タンパク質と疾患との関連性は、多数の報告によって示唆されている。例えば、糖化タンパク質やAGEsの生体内での影響は、複数報告されており、直接生理活性や物理的障害を引き起こすこと(参考文献1)や生体内のレセプターに結合し、細胞内シグナル伝達により炎症を引き起こすこと(参考文献2)等に関連することが示唆されている。直接生理活性や物理的障害を引き起こすことに関して、糖化タンパク質やAGEsの生成に伴うタンパク質の架橋形成に起因して組織が硬化し、それによって生体機能が低下することも報告されている(参考文献3)。
【0019】
糖化タンパク質自体も疾患に関連することが報告されており、例えば、糖尿病合併症の1つとして知られている糖尿病性血管障害では、繊維状のタンパク質で皮膚等の組織を構成するコラーゲンが糖化によって架橋を形成することにより引き起こされることが示唆されており(参考文献4)、さらに、コラーゲンの糖化による架橋形成が細胞レベルで研究され、血管内皮の形質にも影響を与えることが報告されている(参考文献5)。
【0020】
現在までの報告により、糖化タンパク質又はAGEsは、タンパク質の架橋を形成することによって又はその重合等によって糖尿病合併症の原因となり得ることが示唆されている。これは、糖化タンパク質の蓄積を減少させることにより、結果として糖化タンパク質の架橋の形成又は重合が減少し、上記関連疾患の予防及び治療に繋がることが予想される。糖化タンパク質は、タンパク質の架橋を引き起こすことから分解を受けにくくなり、それによってタンパク質のターンオーバー時間が遅延され代謝が滞り結果的に皮膚の肥厚や多層化又はタンパク質自体の結合能を変化させ細胞組織の構築異常を引き起こすことが知られている。
【0021】
本発明における抗糖化剤は、抗糖化作用により、好ましくは、糖化タンパク質の架橋を分解又は切断するため、糖化タンパク質が関与する合併症、特に糖尿病合併症の予防及び治療にも用いられ得る。また、本発明における抗糖化剤は、糖尿病合併症の進行を遅らせることにも用いられ得る。
【0022】
以下に参考文献を示す。
・参考文献1 Brownlee M, Vlassara H, Kooney A, Ulrich P and Cerami A: Aminoguanidine prevents diabetesinduced arterial wall protein cross-linking. Science 1986; 232: 1629-1632.
・参考文献2 Doi T, Vlassara H, Kirstein M, Yamada Y, Striker GE and Striker LJ: Receptor-specific increase inextracellular matrix production in mouse mesangial cells by advanced glycosylation end products is mediated via platelet-derived growth factor. Proc Natl Acad Sci USA 1992; 89: 2873-2877.
・参考文献3 Kim, Yurim, et al. Cleavage of glycated protein cross-linking and cleavage of AGEs cross-linking of substances contained in vegetables and herbs Glycative Stress Research 9.2 2022; 106-111.
・参考文献4 Brownlee M: Advanced glycosylation endo Products in tissue and the biochemical basis of diabetic complications. New Engl J Med 1998; 318: 1315-1321.
・参考文献5 武田浩: 培養ヒト血管内皮細胞に及ぼす高濃度グルコースならびに糖化コラーゲンの影響. 糖尿病 1992; 35.1: 1-8.
【0023】
抗糖化作用を調べる方法としては、例えば、糖化によって架橋重合したタンパク質を、モノマー(元のタンパク質のサイズ)に戻す作用を評価する方法等が挙げられる。
糖化タンパク質をモノマーに戻す作用を評価するポジティブコントロールとして、PTB(N-phenacylthiazolium bromide)等の既知のタンパク質架橋分解剤を用いてよい。
具体的には、リゾチーム又はアルブミン等をグルコース等の糖とインキュベートし、架橋を形成させ、糖化リゾチーム又は糖化アルブミンを得る。得られた糖化リゾチーム又は糖化アルブミン等における架橋の切断反応を行う。反応後、SDS-PAGEにてリゾチーム又はアルブミン等の分子量を確認するか、リゾチーム又はアルブミンあるいはその糖化物等に対する抗体を用いたELISA法によって分解活性を求めてもよい。
【0024】
糖化タンパク質の分解活性は、ジカルボニル化合物のジカルボニル結合切断活性を調べることによって求めてもよい。ジカルボニル化合物とは、その構造内に反応性の高いカルボニル結合を2つ持つ化合物の総称を指す。糖化生成物では、3-デオキシグルコソン及びグリオキサールが該当する。ジカルボニル結合を持つモデル化合物としてPPD(1-Phenyl-1,2-propanedione)等を用いてジカルボニル結合の切断反応を行って、遊離する安息香酸量を測定し、結合切断率を算出してもよい。
【0025】
本明細書において、「アカシア」とは、アカシア(Acacia)属に属する樹木を意味する。アカシアとしては、例えば、Acacia mearnsii De Wild.、Acacia mangium Willd.、Acacia dealbata Link、Acacia decurrens Willd.、Acacia pycnantha Benth. 等が挙げられる。特に限定するものではないが、アカシアは、好ましくはAcacia mearnsii De Wild.又はAcacia mangium Willd.であり、より好ましくはAcacia mearnsii De Wild.である。
【0026】
アカシアの樹皮の調製方法及び樹皮からの抽出方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。例えば、特開2011-51992号公報、特開2010-105923号公報、特開2009-203209号公報等に記載の方法等を使用することができる。
【0027】
抽出溶媒としては、特に限定されないが、水、有機溶媒等が挙げられる。水は熱水であることが好ましい。有機溶媒は、好ましくはアルコールであり、より好ましくは炭素数1~4のアルコールであり、特に好ましくはエタノールである。抽出溶媒は、1種の溶媒を単独で使用してもよいし、2種以上の溶媒を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
特に限定するものではないが、アカシアの樹皮から熱水で抽出を行い、得られた抽出物から更に有機溶媒で抽出を行うことが好ましい。
【0029】
アカシア樹皮抽出物は、所定の方法で抽出した抽出物を精製したものでもよい。
【0030】
アカシア樹皮抽出物は、複数の成分を含んでいてもよいし、単一の成分のみを含んでいてもよい。アカシア樹皮抽出物の成分としては、例えば、プロフィセチニジン、プロロビネチニジン、プロアントシアニジン、プロシアニジン、プロデルフィニジン、ロビネチニドール、フィセチニドール、シリング酸、タキシフォリン、ブチン、スクロース、ピニトール等が挙げられる。アカシア樹皮抽出物の成分としては、好ましくは、プロアントシアニジンを含む。
【0031】
プロアントシアニジンとは、様々な植物に含まれるポリフェノールの一種である。プロアントシアニジンは、植物の組織において広く分布しており、その種類も豊富であり、様々な生理活性を有することが知られている。アカシアの樹皮抽出物には、ポリフラボノイド又はそれらの前駆体として含まれており、その分子量は、300~3000の化合物で構成される。
【0032】
本発明において、抗糖化剤は、糖尿病合併症の予防又は治療に用いることができる。糖尿病合併症は、例えば、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害、糖尿病血管合併症、慢性腎不全、動脈硬化症、粥状動脈硬化病、透析性アミロイドーシスの手根管症候群等が挙げられる。
【0033】
抗糖化剤は、例えば、食品、医薬品、医薬部外品、動物用飼料等として使用することができる。食品としては、限定されないが、例えば、一般食品、保健機能食品(例えば、特定保健用食品、機能性表示食品、及び栄養機能食品)、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、アイスクリーム類、麺類(そば、うどん、中華麺、パスタ類等)、即席麺等の麺類、飴、ガム、チョコレート、錠菓、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類、スナック菓子、水産加工品、畜肉加工品、乳製品、油脂加工食品、調味料、栄養補助食品等が挙げられる。
血糖値が高めの方に適した食品(飲料を含む)である旨の表示を付した食品としてもよい。
【0034】
抗糖化剤は、例えば、血糖値が高めのヒト、血糖値が気になるヒト、血糖値に悩んでいるヒト、皮膚(肌)の糖化を気にしているヒト、又は糖化ストレスを軽減し肌の潤いを保持したいヒトを対象に使用してもよい。
【0035】
抗糖化剤は、食品(動物用を含む。以下、同じ。)、医薬品、医薬部外品等として使用する場合に、例えば、固体(粉末、顆粒等)、液体(溶液、懸濁液等)、及びペースト等の何れかの形状であってもよい。また、抗糖化剤を食品、医薬品、医薬部外品等として使用する場合に、その剤形は特に限定されないが、例えば、散剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、注射剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼布剤、外用液剤、外用散剤、坐剤、吸入剤、点眼剤等であってよい。
動物用の食品としては、例えば、家畜動物や愛玩動物の飼料であってもよい。
【0036】
抗糖化剤は、食品、医薬品、医薬部外品等として使用する場合に、アカシア樹皮抽出物以外に、例えば、生理学的に許容される担体、賦形剤、安定剤、着色剤、又は保存剤等から選択される1つ以上の他の成分を含んでもよい。
食品、医薬品、医薬部外品等として使用する場合の製剤の製造方法は当業者が適宜公知の方法を使用してよい。
【実施例0037】
以下、本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0038】
アカシア樹皮抽出物は、以下のようにして得たアカシア樹皮熱水抽出物である。アカシア(Acacia mearnsii De Wild.)の樹皮を粉砕し、100℃の熱水で抽出した。アカシア樹皮を用いた抽出液をスプレードライヤーで噴霧乾燥して熱水抽出物を得た。
アカシア樹皮抽出物をダイアイオンHP20(0-100% EtOH)にて、糖画分とプロアントシアニジン画分を分画して、それぞれを得た。
すなわち、本実施例で用いたアカシア樹皮抽出物は、アカシア属の一種であるモリシマアカシア(Acacia mearnsii De Wild.)の樹皮から得られるアカシア樹皮熱水抽出物である。このアカシア樹皮抽出物はポリフェノールの1種であるガロカテキンやロビネチニドールのようなフラバン-3-オールを基本骨格とする単体、二量体、三量体及びそれらがさらに縮合されたポリマーからなる化合物の混合物であり(Botha, et al., 1978; Roux, et al., 1960)、アカシア樹皮抽出物の約80%がポリフェノール類である(Guangcheng, et al., 1988; Yazaki, 1990)。A環にOHが2個、B環にOHが2個の構造が重合しているブドウ種子(Rodriguez-Perez, et al., 2019)や松樹皮(Packer, et al., 1999)に由来するプロアントシアニジンとは異なり、アカシア樹皮由来プロアントシアニジンは、A環にOHが1個、B環にOHが3個の構造が重合していることが特徴である(Kusano et al., 2011; Matsuo, et al., 2016)。
【0039】
アカシア樹皮抽出物による糖化タンパク質の架橋の分解又は切断作用を以下の方法により確認した。
1.試験内容
1)アカシア樹皮抽出物を用いた濃度依存性試験を行った(n数は1とした)。
2)アカシア樹皮抽出物、プロアントシアニジン画分と糖画分を用いた比較試験を行った(n数は、3として実施して、平均及び標準偏差を算出した)。
【0040】
2.試料(反応液中で下記濃度になるように調整した)
・アカシア樹皮抽出物(表1及び表2に記載の濃度で実施した)
・プロアントシアニジン画分:0.0737mg/mL
・糖画分:0.0263mg/mL
・N-フェナシルチアゾリムブロミド(PTB)(表2に記載の濃度で実施した)
【0041】
3.方法
リゾチームとグルコースを含む0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)を60℃、40時間反応させた後、限外ろ過を行い、糖化リゾチームを含む試験液を作成した。
糖化リゾチームを含む0.05mol/Lリン酸緩衝液中に試料を添加した試験液;(S)、Sの試料の代わりに水を添加した試験液(コントロール);(R)を作成し、37℃で16時間インキュベートして反応させた。その後、反応液を遠心分離し、上清を4-20%SDS-PAGEに供した。泳動後のゲルはCBB Stain One(ナカライテスク)で染色し、スキャナーで画像化後、リゾチームの単量体(M)、二量体(D)のバンドの強度をImageJで解析した。糖化リゾチーム中の架橋の切断作用のポジティブコントロールとしてPTBを使用した。
【0042】
架橋切断率は以下の式に基づいて算出した。
架橋切断率(%)=[1-{(DS/MS)/(DR/MR)}]×100
S;試料添加時のリゾチームのバンド強度
R;水のみを添加した時のリゾチームのバンド強度
M;リゾチームの単量体バンド
D;リゾチームの二量体バンド
【0043】
濃度依存性プレ試験の結果を表1及び
図1に示す。
【表1】
【0044】