(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138926
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】長尺ケーブルを介して駆動する道路トンネルのジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241002BHJP
E21F 1/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/48 M
E21F1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049653
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】501170080
【氏名又は名称】株式会社創発システム研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】川畑 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 茂
(72)【発明者】
【氏名】迫 響
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA04
5H770AA05
5H770BA04
5H770BA20
5H770CA02
5H770CA08
5H770DA03
5H770DA33
5H770DA34
5H770DA41
5H770EA01
5H770JA11Z
5H770JA13Z
5H770KA01Y
(57)【要約】
【課題】長尺ケーブルを介してジェットファン用誘導電動機を駆動する可変速駆動装置の構成要素において、構成を簡素化してコスト低減を図る。
【解決手段】 三相商用電源入力電圧を調整する電圧変圧器と、直流電圧を可変周波数可変電圧の三相交流電圧に変換するインバータ装置と、インバータ装置の出力に対するノイズを低減するノイズフィルタ回路と、ノイズフィルタ回路の出力をジェットファン用誘導電動機に入力してインバータ駆動する可変速駆動装置100において、電圧変圧器を絶縁変圧器110とし、インバータ装置をPWMコンバータ131とインバータ回路132を備えたインバータ装置150とし、ノイズフィルタをリアクトル151とキャパシタ152を用いたLCフィルタ回路150とし、さらにLCフィルタ回路151のキャパシタ152をスター接続として接地用キャパシタ170あるいは接地用抵抗171を介してその中性点を接地する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相商用電源入力の電圧を調整する電圧変圧器と、
前記電圧変圧器により調整された交流電圧を直流電圧に変換する交流/直流変換器と前記交流/直流変換器により得られた前記直流電圧を可変周波数可変電圧の三相交流電圧に変換するインバータ回路を備えたインバータ装置と、
前記インバータ装置の出力に対するノイズを低減するノイズフィルタ回路と、
前記ノイズフィルタ回路を経た出力を長尺ケーブルを介してジェットファン用誘導電動機に入力し、道路トンネルのジェットファン用誘導電動機をインバータ駆動する可変速駆動装置において、
前記電圧変圧器を絶縁変圧器とし、
前記交流/直流変換器をPWMコンバータとし、
前記ノイズフィルタが、リアクトルとキャパシタを用いたLCフィルタ回路であり、
前記LCフィルタ回路のキャパシタをスター接続とし、当該スター接続の中性点を接地用キャパシタあるいは接地用抵抗を介して接地したことを特徴とする道路トンネルのジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置。
【請求項2】
前記接地用キャパシタまたは前記接地用抵抗のインピーダンスが、前記長尺ケーブルの対地浮遊容量と前記ジェットファン用電動機の対地浮遊容量の和のインピーダンスの1/5倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の道路トンネルのジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置。
【請求項3】
前記LCフィルタ回路の後で前記ケーブルの前の位置に設置した調整用変圧器を備え、
前記調整用変圧器により、前記長尺ケーブルによる電圧降下を経て現れる前記ジェットファン用誘導電動機の入力電圧が、前記ジェットファン用誘導電動機の定格電圧となるよう電圧を調整せしめることを特徴とする請求項1に記載の道路トンネルのジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置。
【請求項4】
前記インバータ装置の前記インバータ回路が2レベルインバータであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の道路トンネルのジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長尺ケーブルを介して自動車道路のトンネルの換気に使われるジェットファン用誘導電動機を駆動する道路トンネルのジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路トンネルにおいては、人体に対して有害な自動車のエンジンからの排出物質や塵埃などが浮遊しており、そのままではトンネル内の汚染物質濃度が高まってゆく。そこで、トンネル内の良好な環境を確保するためトンネル内の汚染物質を排気する必要がある。トンネル内の汚染物質を排気するには自然換気力や交通換気力による換気では不十分であり、トンネル内に設置された換気機を用いた強制換気が行われている。
【0003】
強制換気に用いる換気装置としては、ジェットファン用誘導電動機が普及している。ジェットファン用誘導電動機は通常20kwから50kw程度、4極から8極、400v系の誘導電動機で駆動されるものが多い。
【0004】
従来の一般的なジェットファン用誘導電動機を用いた対面通行道路トンネルを
図9に示す。このトンネルは、交通方向が両方向の対面通行トンネルと呼ばれるタイプである。このような対面通行道路トンネルでは、内部に縦流方向の換気を行なうジェットファン用誘導電動機10が複数台配設されている。
図9の例ではジェットファン用誘導電動機10a、10b、10c、10dの4台が描かれている。長距離のトンネルであればさらに多くの台数のジェットファン用誘導電動機を稼働することがあるが、この例では4台としている。
【0005】
一般には、従来のジェットファン用誘導電動機10を用いた換気制御は、台数ごとにオンオフを切り替えて運転する台数制御が基本であった。
従来のジェットファン用誘導電動機を用いた強制換気方式では、対面通行道路トンネル内部の風向風速計、煙霧透過率計、一酸化炭素濃度計、交通量計測装置から得られた各種環境成分値に基づいて、換気制御装置(図示せず)により対面通行道路トンネル内部に設置されたジェットファン用誘導電動機10a~10dの運転台数を調整することが行われている。すなわち、トンネル内に設置している各種センサ類の計測結果などに基づいて、必要な換気量を確保するのに必要な台数だけジェットファン用誘導電動機10a~10dを運転し、これによって汚染物質濃度を予め設定されている許容値以下にして、トンネル利用者の安全性、快適性を確保している。
このように、従来の対面通行トンネルでは費用対効果からジェットファン用誘導電動機の運転台数をオンオフで切り替えることにより、台数運転制御を行っている。
この従来技術におけるジェットファン用誘導電動機の台数運転制御では、ジェットファン用誘導電動機のインバータ駆動運転に比べると消費電力が大きいという問題があった。
【0006】
図10は、ジェットファン用誘導電動機の台数運転時とインバータ駆動運転時におけるジェットファン用誘導電動機の回転数、推力、動力の関係を示す図である。横軸に自動車用トンネル内の状態に応じて要求されるジェットファン用誘導電動機の必要推力をとり、縦軸に、ジェットファン用誘導電動機の回転数、ジェットファン用誘導電動機の推力、ジェットファン用誘導電動機の動力をとっている。
ジェットファン用誘導電動機の台数制御運転の場合、運転しているジェットファン用誘導電動機の回転数は、
図10の“R0”に示すように常に100%である。また、ジェットファン用誘導電動機の推力M0およびジェットファン用誘導電動機の動力P0は、運転しているジェットファン用誘導電動機と運転していないジェットファン用誘導電動機の比となり、
図10の“M0”“P0”に示すように階段状になる。
図10に示す例は、トンネルの特性に応じて必要なジェットファン用誘導電動機の台数が5台である例を示しているが、ジェットファン用誘導電動機の台数が何台であっても、階段の段数が台数と同じになるだけで、同様に説明される。
【0007】
一方、ジェットファン用誘導電動機のインバータ制御運転の場合、ジェットファン用誘導電動機の推力M1は、全部のジェットファン用誘導電動機を同一回転数で駆動した状態で、個々のジェットファン用誘導電動機の推力を合計(
図10の場合は5台分がM1である)として得られるが、回転数を制御することによって、必要推力に応じてその通りに推力を出せるので、
図10の“M1”に示すような比例関係となる。ジェットファン用誘導電動機の回転数R1はジェットファン用誘導電動機の推力の平方根となるので、
図10の“R1”に示すような曲線となる。また、ジェットファン用誘導電動機の動力P1はジェットファン用誘導電動機の回転数R1とジェットファン用誘導電動機の推力M1の積となるので、
図10の“P1”に示すような曲線となる。なお、
図10の場合、P1も5台分の合計値である。
【0008】
図10に示すように、従来のジェットファン用誘導電動機の台数運転によるジェットファン用誘導電動機全体の消費電力は“P0”のように階段状にしか制御できないが、ジェットファン用誘導電動機のインバータ運転によるジェットファン用誘導電動機全体の消費電力は“P1”のように曲線状に制御でき、全体として明らかにインバータ運転によるジェットファン用誘導電動機全体の消費電力の方が省電力化できることが分かる。
【0009】
そこで、長距離トンネルにおいてジェットファン用誘導電動機をインバータ制御で駆動することが考えられるが、長距離トンネルのジェットファン用誘導電動機のインバータ制御による駆動を想定する場合、以下の問題があり、インバータ制御による駆動は実用化が難しいとされていた。
【0010】
第1の原因は、インバータの出力電圧のように急峻なdv/dtのPWM変調波を長距離伝送する場合、そのサージ電圧が増大するという問題である。
電気室に設置するインバータからジェットファン用誘導電動機までの距離が数百mから2000m以上の長距離になると、その間を接続する長尺ケーブルがインバータの高いdv/dtのPWM変調波形に対して分布定数回路として働いてしまい、インバータのスイッチングサージがインバータと電動機の間でインピーダンスが不整合なため反射を繰り返し電動機端子ではインバータ端子より2倍程度に大きくなってしまう。400v系電動機用インバータの直流電圧は600v程度であるので、電動機端子におけるスイッチングサージの波高値は1000v以上となる。400v系(定格電圧が400v、440v、460vなど)の電動機は絶縁耐力に余裕がないため、1000vを超える程度のスイッチングサージが電機子巻線に印加されると、dv/dtの大きなスイッチングサージは、巻線の全てのターンに対して均等には印加されず、端子の次の1、2ターンに集中的に印加されてしまい、微少なコロナを生じて劣化が進行し、絶縁破壊に到るおそれがある。
また、高周波の同相電圧が電機子に印加されると、軸受けに有害な電流が流れ、ベアリングを劣化させることも知られている。即ち、dv/dtが急峻でかつピーク値の大きなスイッチングサージが電動機端子に印加されないような工夫が必要となる。
【0011】
第2の原因は、EMI問題である。IGBTなどの高速スイッチングデバイスを用いて数kHzから20kHz程度のスイッチングで出力の基本波電圧と周波数を制御するVVVFインバータは、その出力配線及び周辺の空間に広い周波数範囲(30MHz~300MHz)の有害なEMI電磁障害を出してしまう。
【0012】
第3の原因は、PWMコンバータやインバータが大きな同相電圧を発生し、同相電流がケーブルとジェットファン用誘導電動機を通して対地に流れるため、トンネル内でAMラジオや火災報知器にノイズ障害が起きる問題やジェットファン用誘導電動機のベアリングを損傷する問題である。
長尺ケーブルの対地浮遊容量に流れる同相電流の原因は、交流/直流変換器(整流器またはPWMコンバータ)およびインバータの出力電圧に存在する同相電圧である。三相ブリッジ整流器は6f=360Hz(60Hz系の場合)の同相電圧を発生する。直流電源にPWMコンバータを用いる場合はそのスイッチング周波数の同相電圧がある。電動機駆動用VVVFインバータの出力には主としてスイッチング周波数の同相電圧がある。さらに変調方式によっては、3f成分、即ち駆動周波数の3倍の同相電圧がある場合もある。
これら整流回路とインバータの同相電圧は直列に加算され、電源の仮想中性点とインバータの出力端子の間に現れる。それがそのまま長尺ケーブルに与えられるとケーブルの各相電線と対地間の静電容量Cに同相電流i=C(dv/dt)が流れる。インバータの出力電圧は、急峻なdv/dt(例えばIGBTインバータでは3000v/μsec程度)でかつ数kHzから20kHzのPWM波形の同相電圧であるため、スイッチングのたびに流れる電流i=C(dv/dt)は極めて大きくなる。この同相電流は、商用電源を環流するので、設備の絶縁に問題がなくても誤動作する場合があり得る。
【0013】
上記のような様々な問題があり、それらを解決することは困難であるため、数百mから2000m程度の長尺ケーブルを介してジェットファン用誘導電動機をインバータ駆動することは実用化するのは一般には難しく、従来技術において、ジェットファン用誘導電動機をインバータ運転により可変速に駆動する装置は、出願人である創発システム研究所による実用化例しかないのが現状である。
例えば、特開2014-037854号に開示されたジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置が知られている。
【0014】
図11は、特開2014-037854号に開示されたジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置の構成例を示した図である。
図11の構成によれば、ジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置40は、インバータ装置43と、同相リアクトル44と、交流リアクトル45を備えており、交流リアクトル45の後にスター接続された第1のコンデンサ回路46を並列接続し、その端子電圧を長尺ケーブル30を通してジェットファン用誘導電動機40に供給するとともに、さらに、第2のコンデンサ回路47を介して第1のコンデンサ回路46のスター接続の中性点を交流/直流変換器43の中性点などに接続する。このように、同相リアクトル44と第1のコンデンサ回路46と第2のコンデンサ回路47を介して、インバータ装置43のコンバータ43-1の同相成分とインバータ43-2の同相成分を還流せしめる還流路を形成し、同相電圧を低減するものとなっている。
【0015】
【特許文献1】特開2004-019250号公報
【特許文献2】特開2014-037854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記した特開2014-037854号公報に開示されたジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置40によれば、インバータの出力電圧における急峻なdv/dtのPWM変調波を長距離伝送する場合に生じ得るサージ電圧の増大を抑制することができ、また、EMI電磁障害の発生を抑制することができ、さらに、交流/直流変換器43から長尺ケーブル30の浮遊容量と対地の間に流れる同相電流を低減することができる。
このように、特開2014-037854号公報に開示されたジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置40は、非常に優れた技術的特徴を備えた装置であり、ジェットファン用誘導電動機を低消費電力にて可変速に駆動できる装置として今後も普及が期待される装置である。
【0017】
しかし、特開2014-037854号公報に開示されたジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置40は、
図11に示したように、インバータ装置43に加え、さらに、同相リアクトル44、交流リアクトル45、第1のコンデンサ回路46、第2のコンデンサ回路47など装置構成要素が多く、コストが高くなる傾向があった。
【0018】
本発明は、上記問題点に鑑み、特開2014-037854号公報に開示されたジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置40の優れた技術的特徴を継承しつつ、装置構成要素を削減してコスト低減を図ることができるジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明のジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置は、三相商用電源入力の電圧を調整する電圧変圧器と、前記電圧変圧器により調整された交流電圧を直流電圧に変換する交流/直流変換器と前記交流/直流変換器により得られた前記直流電圧を可変周波数可変電圧の三相交流電圧に変換するインバータ回路を備えたインバータ装置と、前記インバータ装置の出力に対するノイズを低減するノイズフィルタ回路と、前記ノイズフィルタ回路を経た出力を長尺ケーブルを介してジェットファン用誘導電動機に入力し、道路トンネルのジェットファン用誘導電動機をインバータ駆動する可変速駆動装置において、前記電圧変圧器を絶縁変圧器とし、前記交流/直流変換器をPWMコンバータとし、前記ノイズフィルタが、リアクトルとキャパシタを用いたLCフィルタ回路であり、前記LCフィルタ回路のキャパシタをスター接続とし、当該スター接続の中性点を接地用キャパシタあるいは接地用抵抗を介して接地したことを特徴とするものである。
なお、上記のインバータ装置とは、交流/直流変換器であるPWMコンバータ回路とインバータ回路を備えた構成であり、直流を所望の可変周波数で可変電圧の三相交流に変換するものを言う。
また、上記絶縁変圧器の二次側は、巻線がY接続の場合は中性点接地を行わず、巻線がΔ接続の場合もいずれか1相の接地を行わない。すなわち
図1のジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100-1の点線内では接地用キャパシタ170を介してだけ接地することが大きな特徴である。また、
図2の場合は接地用キャパシタ171を介してだけ接地することが大きな特徴である。
【0020】
従来技術で述べた特許文献2の構成では、
図11の三相入力変圧器41の二次側巻線がY接続でその中性点を接地している。このためインバータ装置43が三相入力の中性点に対して零相電圧を発生し、長尺ケーブル30の対地浮遊容量と誘導電動機10の対地浮遊容量を経由して零相電流が流れるために長尺ケーブル30からの誘導ノイズの発生や、誘導電動機10のベアリング電流が発生してしまう問題があった。
しかし、本発明の上記構成では、接地されていない絶縁変圧器とPWMコンバータ回路とインバータ回路を直列に接続した構成であり、また、ノイズフィルタであるLCフィルタ回路におけるキャパシタをスター接続とし、そのスター接続のキャパシタの中性点から接地用キャパシタあるいは接地用抵抗を介してだけ接地しているため、キャパシタ中性点の同相電圧がゼロとなり、長尺ケーブルからの誘導ノイズの発生が無くなり、誘導電動機のベアリング電流を低減させることができる。
つまり、特許文献2では必要となっていた同相リアクトル44、第1のコンデンサ回路46、第2のコンデンサ回路47という構成要素を省略できることとなる。
【0021】
ここで、接地用キャパシタあるいは接地用抵抗のインピーダンスであるが、長尺ケーブルの対地浮遊容量とジェットファン用電動機の対地浮遊容量の和のインピーダンスの1/5倍以下であることが好ましい。
上記のように、インバータ装置の前段の電源変圧器として絶縁変圧器を設置し、インバータ装置のキャパシタをスター接続してその中性点を接地することにより、長尺ケーブルや誘導電動機に流れ込む零相電流は原理的に零となるが、その他の要素により発生し得る高周波電流を低減化するため、接地用キャパシタあるいは接地用抵抗のインピーダンスを長尺ケーブルの対地浮遊容量とジェットファン用電動機の対地浮遊容量の和のインピーダンスより十分小さくしておけば、発生し得るノイズ高周波電流を低減することができる。
例えば、接地用キャパシタあるいは接地用抵抗のインピーダンスを長尺ケーブルの対地浮遊容量とジェットファン用電動機の対地浮遊容量の和のインピーダンスの1/5倍以下とすることが好ましい。長尺ケーブルの対地浮遊容量とジェットファン用電動機の対地浮遊容量と接地用キャパシタのキャパシタ容量のこれら3つの容量がLCフィルタの出力電圧に対して並列に接続された容量となるので、接地用キャパシタの容量を大きくし、インピーダンスを小さくしておけばノイズ電流は接地用キャパシタ側に流れることとなり、長尺ケーブル側に流れ得るノイズ電流を1/6以下に抑制することができる。零相電流や他の高周波電流が小さくなれば、装置を小型化することにできる上、電力損失や騒音も低減できる。
【0022】
次に、上記した各構成要素による電圧降下や長尺ケーブルによる電圧降下を補償する調整用変圧器を加えた構成も好ましい。
調整用変圧器の追加箇所は、LCフィルタ回路の後でケーブルの前の位置が適切である。
この調整用変圧器を追加する構成により、数百mから2000m程度の長尺ケーブルによる電圧降下や商用電源とジェットファン用誘導電動機の間に挿入した特別な電気回路装置や特別な電気的接続などにより発生する電圧降下によるジェットファン用誘導電動機への供給電圧の不足の解消するよう電圧の昇圧調整を行うことができる。
【0023】
また、上記の構成におけるインバータ装置内のインバータ回路としては、3レベルインバータより2レベルインバータを適用する構成が好ましい。
2レベルインバータの方が3レベルインバータに比べ、部品点数が少ないため、小型で安価で信頼性が高い。また、2レベルインバータの方が、キャリア周波数を高くすることができるため、正弦波化フィルタも小型で安価になるからである。
【発明の効果】
【0024】
上記構成により、本発明のジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置は、ジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置の優れた技術的特徴を継承しつつ、装置構成要素を削減してコスト低減を図ることができる。ケーブル入り口端子の同相電圧を低く抑えることができ、EMI障害が軽減されると共に漏電ブレーカーの誤作動がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100-1を示す図、接地用キャパシタを用いる図である。
【
図2】ジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100-2を示す図で、接地用抵抗を用いる図である。
【
図3】交流/直流変換器として使用するPWMコンバータ131の回路図である。
【
図4】インバータ回路132aとして使用する2レベルインバータの三相ブリッジインバータの例を示す回路図である。
【
図5】インバータ回路132bとして使用するTYPE1の3レベルインバータの例を示す回路図である。
【
図6】インバータ回路132cとして使用するTYPE2の3レベルインバータの例を示す回路図である。
【
図7】(a)調整用変圧器180を設けない場合と、(b)調整用変圧器180を設ける場合の各部位の電圧の関係を簡単に示した図である。
【
図8】ジェットファン用誘導電動機の特性を簡単に示した図である。
【
図9】従来の一般的なジェットファン用誘導電動機を用いた縦流換気方式の対面通行道路トンネルを示す図である。
【
図10】ジェットファン用誘導電動機の台数運転時とインバータ駆動運転時におけるジェットファン用誘導電動機の回転数、推力、動力の関係を示す図である。
【
図11】従来技術における特開2014-037854号に開示されたジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置の構成例を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明のジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
なお、以下の各実施例の構成において、道路トンネルの入口側に設けられている構成として説明したものが出口側に設けられていても構わない。また、入口側と出口側の双方に設備等が設けられている例では、入口側の構成と出口側の構成が相互に入れ替わって逆になっても構わない。
【0027】
以下の実施例の説明では、トンネルは、例えば3000m以上の長距離道路トンネルとして説明する。トンネル内は対面交通となっている例とした。つまり、トンネル内には外界から吹き込む自然風による自然換気力と、通行車両のピストン効果により生じる各車両の通行方向に生じる風圧が合成されて生じる交通風による交通換気力が生じている。ここに、本発明のトンネル換気制御システムによる機械換気力、つまり、ジェットファン用誘導電動機の駆動による機械換気力を加えるものである。
本発明のジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置の構成例として、以下、実施例を示す。
【実施例0028】
本発明の道路トンネルのジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100は、回路の構成要素として、商用電源の電圧を適切に変圧する絶縁変圧器110と、PWMコンバータ回路131とインバータ回路132を備えたインバータ装置130と、LCフィルタ150(交流リアクトル151とキャパシタ回路152)と、接地用キャパシタ170の各要素を備えた構成となっている。オプション構成として、漏電検出リレー付きブレーカー120と、調整用変圧器180を備えた構成となっている。
このジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100を用いて、商用電源200、長尺ケーブル300、ジェットファン用誘導電動機400をつなぎ合わせてシステムを構成する。
【0029】
まず、
図1の構成例のジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100-1を参照しつつ説明する。
【0030】
先に周辺設備から説明する。
商用電源200は、受電設備としては特に限定されないが、長距離道路トンネル内にはジェットファン用誘導電動機400のみならず多数の照明設備や防災設備などがあり大容量の電力を必要とするため、電気事業者から直接、特別高圧ないしは高圧で受電し、施設内の装置向けに変圧して電気を供給するものである。後述するように、商用電源200の電圧は、電源変圧器である絶縁変圧器110により降圧され、絶縁変圧器110の二次電圧は400v、440v、460v等に降圧されている。
【0031】
次に、長尺ケーブル300について述べる。長距離道路トンネルでの利用を前提としており、長尺ケーブル300は重要な要素である。長尺ケーブル300として、CVケーブル「架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル」が使われることが多い。CVケーブルとしては単芯の架橋ポリエチレン絶縁電線にPVC(ビニル)の外皮保護(シース)を施した単芯ケーブルと多芯(2~4)の絶縁電線を円形圧縮して仕上げて、間隙を絶縁物の介在物で充填し、一体でシースを施した多芯ケーブルがある。(2芯はCV-2C、3芯はCV-3Cと記述する。)いずれも、シースの内側に電磁遮蔽を施した、シールドケーブルもある。他に、単芯CVケーブルを3本撚りあわせたCVT(トリプレックス)がある。
【0032】
ジェットファン用誘導電動機400の配線工事には一般的に次のような選択がなされる。モータ用動力配線にはCV-3Cが使用されることが多いが、これは機能的にはCVTであってもよい。割高であることからCVTが使用されることは少ないが、CV-3Cと比べて、軽量で曲げやすいことから、工事の容易さで選択されることがある。モータ用接地電線として、前項のケーブルに14sq(14平方ミリ)程度のIV電線(インドアPVC)が並列に敷設されることが殆どである。少ないケースではあるが、3Cシールドケーブルが使用されることもある。これにもIV電線の接地線が併設される。
【0033】
3芯シールドケーブルに接地用IV電線を付設する方法を用いている。ケーブルは、3芯のシールドケーブルが最も高価でCV-3Cが最も安価である。充分なEMI対策を行えば、最も安価なシールドなしのCV-3Cを適用できると期待できる。ケーブルは、芯線のサイズによって許容電流が決まっていて、2sqから325sqまである。サイズの決定はモータ定格電流以上の許容電流値を持つケーブルであって、定格電流と配線の距離によって決まる電圧降下を一定値以下(例として、定格電圧の6%)にするようなサイズに決められる。
なお、長尺ケーブル300は3芯シールドケーブルに接地線を併設しているものであるが、他の形式のケーブルでもよい。
【0034】
ジェットファン用誘導電動機400は、トンネル内の空気を換気する機器であり、誘導モータが組み込まれたものであり、本発明では、インバータ駆動により運転されるジェットファン用誘導電動機である。本発明ではジェットファン用誘導電動機の構造などは特に限定されず、インバータ駆動により運転できるものであれば多様なジェットファン用誘導電動機を適用することができる。ジェットファン用誘導電動機400は、長距離道路トンネル内に適切な間隔で配設されている。トンネルが長距離になれば多数のジェットファン用誘導電動機400が配設されることもあり得る。
【0035】
次にジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100の各構成を説明する。なお、
図1のジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100-1、
図2のジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100-2における各々の構成要素は共通しており、接地用キャパシタ170に代えて接地用抵抗171が適用されている点が異なっている。
【0036】
まず、絶縁変圧器110を説明する。本発明にかかるジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100では、電源変圧器が絶縁変圧器110であり、二次側巻線は中性点を含め主回路は接地しない。
商用電源200の電圧は高圧であるが、絶縁変圧器110の二次電圧は400v、440v、460v等に降圧されている。絶縁変圧器110の出力はインバータ装置130に供給されている。
【0037】
なお、オプション構成として漏電検出リレー付きブレーカーをLCフィルタ150と長尺ケーブル300の間に設ける構成も可能である。後段のインバータ装置130、長尺ケーブル300、電動機400などの絶縁に不具合が生じ、地絡電流が流れた場合を検出し、ブレーカーとして電流を遮断して装置の各部分の破壊を防止するものである。
【0038】
インバータ装置130は、交流/直流変換器であるPWMコンバータ回路131及びインバータ回路132を備えており、交流/直流変換器であるPWMコンバータ回路131によって一旦交流を直流に変換し、さらに、インバータ回路132により所望の周波数の交流を発生する装置である。このように、本発明のジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100では、交流/直流変換器としてPWMコンバータ131を適用する。
PWMコンバータは、電源電流に5、7、11、13次など低次の高調波を出さないこと、力率が0.95以上であること、電動機の回生制動時にその電力を商用に回生できるので、強力なブレーキが可能なことである。
図3は、PWMコンバータの回路例である。
図3に示した例は、RaとRbは便宜上描いた同相電圧観測用のもので、N0とN1の間でPWMコンバータの同相電圧を観測できる。
【0039】
次に、インバータ回路132を説明する。
インバータ回路132としては、幾つかの回路構成がある。
まず、2レベルタイプのインバータ回路を採用した構成例を説明する。
図4は、2レベルタイプのインバータ回路132aの回路図である。この
図4の2レベルタイプのインバータ回路132aは、最もよく使われる3相ブリッジインバータである。直流回路電圧をEdとした場合、相電圧はEd/2、-Ed/2の2レベルである。20kwから50kw程度のジェットファン用誘導電動機駆動にはIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)が適しているので、以下全てのインバータはIGBTを用いた例で描いている。
【0040】
次に、3レベルインバータのTYPE1のインバータ回路を採用した構成例を説明する。
図5は3レベルインバータのTYPE1のインバータ回路132bの回路図である。この回路は同じ定格のIGBTを用いた場合、2レベルインバータに比べて2倍の直流電圧に対応でき、出力電圧も2倍になる。インバータの相電圧は、Ed/2、0、-Ed/2の3レベルとなるので、2レベルインバータに比し、高調波の少ない優れた出力電圧波形が得られる。
【0041】
次に、3レベルインバータのTYPE2のインバータ回路を採用した構成例を説明する。
図6は3レベルインバータのTYPE2のインバータ回路132cの回路図である。この回路は2レベルインバータと同じ直流電圧にしか対応できないという欠点のため、ほとんど実用された例がないが、出力電圧はTYPE1と同様の3レベルとなる。
【0042】
本発明のジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100では、インバータ回路132として、
図4のインバータ回路132a、
図5のインバータ回路132b、
図6のインバータ回路132cのいずれのものであっても適用することができる。
つまり、本実施例1のインバータ装置130の装置構成は、
図3のPWNコンバータ151と、
図4のインバータ回路132a、
図5のインバータ回路132b、
図6のインバータ回路132cのいずれかのインバータ回路を組み合わせることにより構成できる。
【0043】
上記のように、2レベルインバータ、3レベルインバータのいずれであっても適用可能であるが、3レベルインバータよりも2レベルインバータを適用する方が有利な点として、 2レベルインバータの方が3レベルインバータに比べ、部品点数が少ないため小型で安価で信頼性が高い点がある。また2レベルインバータの方がキャリア周波数を高くすることができるため、正弦波化フィルタも小型で安価になる。
【0044】
次に、LCフィルタ150について説明する。
インバータ装置130の出力は同相リアクトル140を通した後、LCフィルタ150に供給される。
LCフィルタ150は、交流リアクトル151およびスター接続されたコンデンサ回路152を備えたものであり、インバータ装置130の出力に含まれる急峻なdv/dt(3000v/μsec程度)のPWM変調された線間電圧の高周波成分を除去し、インバータ装置130出力を正弦波に近い波形とするものである。例えば、この実施例ではフィルタの経済設計のためL=5%、C=2%と小さくし、LCの振動を減衰係数0.5になるような抵抗Rでダンピングする構成としている。小さなフィルタではキャリア脈動がかなり残るが、線間電圧のdv/dtはPWM波形に比べて1/1000程度になっているので電動機の絶縁劣化や軸電流のおそれはない。
【0045】
なお、LCフィルタ回路150のコンデンサ回路152の構成として、コンデンサCの他にダンピング抵抗Rを含んだ構成でも良い。なお、このダンピング抵抗Rは必須のものではないため、インピーダンスの状況などにより省略することが可能である。また、コンデンサCの後にダンピング抵抗Rを接続する構成でも良く、コンデンサCの前にダンピング抵抗Rを接続する構成でも良い。
【0046】
次に、接地用キャパシタ170について説明する。
接地用キャパシタ170は、LCフィルタ回路130のスター接続となっているキャパシタ132の中性点を接地するキャパシタである。
接地用キャパシタ170を介してLCフィルタ回路130のキャパシタ132の中性点の電位を強制的にゼロとするので、同相電圧がゼロとなる。その結果、長尺ケーブル300からの誘導ノイズの発生も無くなり、ジェットファン用誘導電動機400のベアリング電流を低減させることもできる。
PWMコンバータ131の同相成分はインバータ装置130の同相電圧全体の10%以下と少なく周波数も低いが、一方、インバータ回路132の同相成分はインバータ装置130の同相電圧全体の90%以上と大きいため、インバータ回路132の同相成分だけでも接地用キャパシタ170で対地接続すれば同相電圧を効果的に低減できる。
もし、LCフィルタ150のコンデンサ回路152を対地から浮かせたままであれば線間電圧が改善されるだけで同相電圧は低減されず改善されない。
このように、LCフィルタ回路130のキャパシタ132の中性点の電位を強制的にゼロとすることにより、特許文献2では必要となっていた同相電圧を抑制する同相リアクトルや、同相電圧を無くすためにLCフィルタ回路の中性点と前段の構成要素の中性点をフィードバック接続する第2のコンデンサ回路という構成要素を省略できることとなる。
【0047】
上記のように、インバータ装置130のキャパシタ132をスター接続してその中性点を接地用キャパシタ170により接地することにより、ジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置100から供給電圧において同相電流は零にできる。もし、インバータ装置130の出力電圧に存在する同相電圧が存在すれば、長尺ケーブル300の対地浮遊容量やジェットファン用電動機400の対地浮遊容量を通じて対地にノイズ電流が流れ得る。
接地用キャパシタ170を設けることにより、長尺ケーブル300や誘導電動機400に流れ込む電流における同相電流を零にすることができるが、長尺ケーブル300の対地浮遊容量やジェットファン用電動機400の対地浮遊容量によって生じ得るノイズ電流の発生を抑制するため、接地用キャパシタ170の容量を大きくしておけば、効果的にノイズ電流の発生を抑制して良質な電力供給が可能となる。
【0048】
ここで、接地用キャパシタ170の容量をどのぐらい大きくすれば良いかについて検討する。もちろん接地用キャパシタ170の容量が大きいのに越したことはないが、接地用キャパシタ170の容量を大きくすると接地用キャパシタ170が大きくなりコストも向上する。そこで、例えば、接地用キャパシタ170のキャパシタ容量が、長尺ケーブル300の対地浮遊容量とジェットファン用電動機400の対地浮遊容量の和の5倍以上とすることが好ましい。
長尺ケーブル300の対地浮遊容量と,ジェットファン用電動機400の対地浮遊容量と、接地用キャパシタ170のキャパシタ容量のこれら3つの容量がLCフィルタ150の出力電圧Vに対して並列に接続された容量となるので、生じ得るノイズ電流はその多くが接地用キャパシタ170側に流れて(5倍であれば5:1の比で接地用キャパシタ170側に流れて)対地される。つまり、長尺ケーブル300側に流れ得るノイズ電流を1/6に抑制することができる。
同相電流が零に調整されているので、もともとノイズ電流が抑制されている中、さらに1/6以下に低減できれば好適である。
零相電流やノイズ高周波電流が小さくなれば、装置を小型化することにできる上、電力損失や騒音も低減できる。
【0049】
次に、調整用変圧器180について述べる。
調整用変圧器180は、インバータ130からケーブル300の間において配置され、インバータ130からケーブル300による電圧降下を経て現れるジェットファン用誘導電動機400への入力電圧が、ジェットファン用誘導電動機400の定格電圧となるよう電圧を調整せしめるものである。
調整用変圧器180により、ジェットファン用誘導電動機400の入力電圧がジェットファン用誘導電動機400の定格電圧となるよう電圧を調整せしめるように、一次側の入力電圧を昇圧して二次側の出力電圧を生成する。
【0050】
図7は、(a)調整用変圧器180を設けない場合と、(b)調整用変圧器180を設ける場合の各部位の電圧の関係を簡単に示した図である。
図7に示すように、インバータ装置130は内部に搭載している電子素子の耐圧の関係から480V程度が使用限界とされている。それ以上の電圧をかけるとインバータ装置130が破壊されてしまうおそれがある。そこで、商用電源110はインバータ装置130に対して460Vから480V程度の入力電圧を供給せざるを得ない。
ここで、インバータ装置130の二次側において、ジェットファン用誘導電動機400に至るまで、様々な電圧降下要素がある。インバータ装置130による電圧降下、LCフィルタ150の交流リアクトル151による電圧降下、コンデンサ回路152による電圧降下、ケーブル300による電圧降下などがある。
一方、トンネル換気用のジェットファン用誘導電動機400には定格入力電圧が440Vと定められており、440V以下の入力電圧で駆動すると効率が低下する。
【0051】
図8にジェットファン用誘導電動機の特性を簡単に示した。
図8に示すように、ジェットファン用誘導電動機400は定格入力電圧である440Vで駆動する場合に比べ、それ以下の420V駆動、400V駆動では明らかに、流れる電流[A]は増えてしまう一方、機械出力[kW]や回転数[rps]が落ちてしまい効率が低下することが分かる。
図7(a)に示すように、調整用変圧器180を設けない構成であれば、負荷時インバータ回路の出力電圧が最大440Vから460V程度であり、その後、LCフィルタ150の交流リアクトル151による電圧降下およびコンデンサ回路152による電圧降下、スター接続の接地用キャパシタ170による電圧降下、ケーブル300による電圧降下を経ると、ジェットファン用誘導電動機400の入力電圧が定格入力電圧の440Vよりも下回ってしまう可能性があることが分かる。一例であるが、LCフィルタ150の交流リアクトル151とコンデンサ回路152とスター接続の接地用キャパシタ170で10Vから20V程度の電圧降下、ケーブル300により20Vから40V程度の電圧降下が起こり得る。そのため、ジェットファン用誘導電動機400の入力電圧が400V程度に落ちてしまう可能性がある。
【0052】
ここで、
図7(b)に示すように、調整用変圧器180を入れて昇圧する調整を行う。調整用変圧器180は、インバータ装置130の定格出力電圧から、LCフィルタ150の交流リアクトル151とコンデンサ回路152とスター接続の接地用キャパシタ170の電圧降下と、ケーブル300による電圧降下を経て現れるジェットファン用誘導電動機400の入力電圧が、ジェットファン用誘導電動機400の定格電圧となるよう電圧を調整せしめる。
【0053】
以上、本発明のジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置の構成例における好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
本発明のジェットファン用誘導電動機の可変速駆動装置は、長距離道路トンネル用の換気制御システム、特に、長距離道路トンネル内に設置した複数のジェットファン用誘導電動機をインバータ駆動で制御する換気制御システムなどに適用することができる。