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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138927
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20241002BHJP
   C08J 9/42 20060101ALI20241002BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20241002BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B32B5/18
C08J9/42 CFG
B32B27/34
B29C70/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049654
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】森田 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】林 達也
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
4F205
【Fターム(参考)】
4F074AA71
4F074CA22
4F074CA23
4F074CE26
4F074CE55
4F074CE58
4F074CE77
4F074DA12
4F074DA24
4F100AG00
4F100AG00B
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK46
4F100AK46A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA01
4F100CA01A
4F100CA02
4F100CA02B
4F100DE01
4F100DE01A
4F100DG01
4F100DG01B
4F100DH02
4F100DH02B
4F100DJ01
4F100DJ01A
4F100EH31
4F100EJ42
4F100EJ50
4F100JA04
4F100JA04A
4F100JB13
4F100JB13B
4F100JK04
4F205AA36
4F205AD16
4F205AD17
4F205AG03
4F205AG20
4F205HA06
4F205HA14
4F205HA22
4F205HA33
4F205HA35
4F205HB01
4F205HB11
4F205HF05
4F205HK04
4F205HK05
(57)【要約】
【課題】硬化不良を抑制できる複合体の製造方法及びその製造方法に用いられる芯材を提供する。
【解決手段】芯材と前記芯材の少なくとも一部の表面に設けられた熱硬化性樹脂層とを有する複合体の製造方法であって、ポリアミド系樹脂発泡体から構成され、0.1~5質量%の水分量を有する芯材を成形型内に配置した後、前記成形型内に熱硬化性樹脂液体原料を充填し、前記熱硬化性樹脂液体原料を硬化させて、前記芯材の少なくとも一部の表面に熱硬化性樹脂層を形成する、複合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と前記芯材の少なくとも一部の表面に設けられた熱硬化性樹脂層とを有する複合体の製造方法であって、
ポリアミド系樹脂発泡体から構成され、0.1~5質量%の水分量を有する芯材を成形型内に配置した後、
前記成形型内に熱硬化性樹脂液体原料を充填し、
前記熱硬化性樹脂液体原料を硬化させて、前記芯材の少なくとも一部の表面に熱硬化性樹脂層を形成する、
複合体の製造方法。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂層が、強化繊維シート材を含む、請求項1に記載の複合体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミド系樹脂発泡体の独立気泡率が80%以上である、請求項1に記載の複合体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリアミド系樹脂発泡体を構成するポリアミド系樹脂の融点が、160~285℃である、請求項1に記載の複合体の製造方法。
【請求項5】
前記芯材が、粒子状のポリアミド系樹脂発泡体の表面に未硬化状態の熱硬化性樹脂を介して強化繊維が付着している複合粒子から構成される、請求項1に記載の複合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の複合体の製造方法に用いられる芯材であって、
前記芯材がポリアミド系樹脂発泡体により構成されており、
前記芯材の水分量が0.1~5質量%である、芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体の製造方法及びその製造方法に用いられる芯材に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂を発泡してなる発泡体と、熱硬化性樹脂との複合体は、軽量性と機械的強度とを兼ね備え得るため、様々な用途に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、軽量にして高い圧縮強度や曲げ強度を有する複合成形体の製造方法を提供することを課題として、熱可塑性樹脂発泡小片を成形してなる発泡小片成形体と、熱硬化性樹脂硬化物との複合成形体の製造方法であって、密閉可能な所定形状の内部空間を有する型内に、連通した空隙を有し且つ空隙率が特定の範囲である発泡小片成形体を配置する工程、該内部空間を密閉して減圧し、減圧された該内部空間に熱硬化性樹脂液体原料を導入して、該液体原料を該発泡小片成形体の空隙部に含浸させる工程、及び該液体原料を硬化させる工程、を含むことを特徴とする、複合成形体の製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、軽量にして高い曲げ強度を有する複合成形体を提供することを課題として、複数の樹脂発泡小片と、熱硬化性樹脂硬化物とからなる複合成形体であって、該樹脂発泡小片間に熱硬化性樹脂硬化物が形成されており、前記複合成形体を構成する熱硬化性樹脂硬化物が特定の範囲の空隙率であり、前記複合成形体の曲げ弾性率E(MPa)と複合成形体の密度ρ(kg/m)が特定の式を満足することを特徴とする複合成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-193539号公報
【特許文献2】特開2015-17190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された複合成形体は、樹脂発泡小片に熱硬化性樹脂を積層させる際に、生産性を考慮して成形サイクルを短縮しようとすると、熱硬化性樹脂の硬化発熱反応により、樹脂発泡小片の樹脂の種類によっては成形収縮が生じやすくなる場合があった。一方で、成形収縮を防止するために、硬化反応による発熱を抑制しようとすると、複合成形体の成形サイクルが長期化し、生産性が低下してしまうという課題があった。
【0007】
また、成形型に熱硬化性樹脂液体原料を充填して成形する注型成形において、樹脂発泡小片の樹脂の種類によっては、熱硬化性樹脂液体原料に硬化不良が生じる場合があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、生産性に優れ、硬化不良を抑制できる複合体の製造方法及びその製造方法に用いられる芯材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、芯材と芯材の少なくとも一部の表面に設けられた熱硬化性樹脂層とを有する複合体の製造方法において、ポリアミド系樹脂発泡体から構成され、かつ特定の範囲の水分量を有する芯材を用いることにより、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
<1> 芯材と前記芯材の少なくとも一部の表面に設けられた熱硬化性樹脂層とを有する複合体の製造方法であって、ポリアミド系樹脂発泡体から構成され、0.1~5質量%の水分量を有する芯材を成形型内に配置した後、前記成形型内に熱硬化性樹脂液体原料を充填し、前記熱硬化性樹脂液体原料を硬化させて、前記芯材の少なくとも一部の表面に熱硬化性樹脂層を形成する、複合体の製造方法。
<2> 前記熱硬化性樹脂層が、強化繊維シート材を含む、<1>に記載の複合体の製造方法。
<3> 前記ポリアミド系樹脂発泡体の独立気泡率が80%以上である、<1>又は<2>に記載の複合体の製造方法。
<4> 前記ポリアミド系樹脂発泡体を構成するポリアミド系樹脂の融点が、160~285℃である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の複合体の製造方法。
<5> 前記芯材が、粒子状のポリアミド系樹脂発泡体の表面に未硬化状態の熱硬化性樹脂を介して強化繊維が付着している複合粒子から構成される、<1>~<4>のいずれか1つに記載の複合体の製造方法。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の複合体の製造方法に用いられる芯材であって、 前記芯材がポリアミド系樹脂発泡体により構成されており、前記芯材の水分量が0.1~5質量%である、芯材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産性に優れ、硬化不良を抑制できる複合体の製造方法及びその製造方法に用いられる芯材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、数値の記載に関する「A~B」という用語は、「A以上B以下」(A<Bの場合)又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を意味する。本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0012】
[複合体の製造方法]
本発明の複合体の製造方法(以下、単に「複合体の製造方法」ともいう)は、芯材と前記芯材の少なくとも一部の表面に設けられた熱硬化性樹脂層とを有する複合体の製造方法であって、ポリアミド系樹脂発泡体(以下、単に「発泡体」ともいう)から構成され、0.1~5質量%の水分量を有する芯材(以下、単に「芯材」ともいう)を成形型内に配置した後、前記成形型内に熱硬化性樹脂液体原料を充填し、前記熱硬化性樹脂液体原料を硬化させて、前記芯材の少なくとも一部の表面に熱硬化性樹脂層を形成する。
【0013】
本発明の複合体の製造方法は、少なくとも以下の工程を含む。
工程(A):ポリアミド系樹脂発泡体から構成され、0.1~5質量%の水分量を有する芯材を成形型内に配置する工程、
工程(B):成形型内に熱硬化性樹脂液体原料を充填する工程、
工程(C):熱硬化性樹脂液体原料を硬化させて、芯材の少なくとも一部の表面に熱硬化性樹脂層を形成する工程。
【0014】
<芯材>
芯材は、ポリアミド系樹脂発泡体から構成される。ポリアミド系樹脂発泡体は、ポリアミド系樹脂を基材樹脂とし、該基材樹脂を発泡してなる。
芯材の水分量は、熱硬化性樹脂層を構成する熱硬化性樹脂液体原料の硬化不良を抑制し、機械的強度、特に曲げ強さに優れる複合体を得る観点から、0.1~5質量%である。上記観点から、芯材の水分量は、好ましくは0.3~4.7質量%であり、より好ましくは0.5~4.5質量%である。水分量が上記範囲である芯材は、複合体の製造に好適に用いられる。なお、芯材の水分量は、ポリアミド系樹脂発泡体を作製する際に、ポリアミド系樹脂発泡体を乾燥させる乾燥工程により調整できる。
芯材の水分量は、加熱水分気化装置を用いてポリアミド系樹脂発泡体を温度235℃まで加熱することにより、発泡体の内部の水分を気化させ、この水分を加熱水分気化装置に接続されたカールフィッシャー水分測定装置(例えば、株式会社三菱化学アナリテック社製「CA-200型」)へ導くことにより、測定できる。
【0015】
芯材がポリアミド系樹脂発泡体から構成され、かつ特定の範囲の水分量を有することにより、熱硬化性樹脂層を構成する熱硬化性樹脂液体原料の硬化不良を抑制できる理由は定かではないが、以下のように推察される。芯材がポリアミド系樹脂発泡体から構成されることにより、熱硬化性樹脂の硬化発熱反応に起因する、芯材を形成している発泡体のセル構造の破壊を抑制できる。その結果として、熱硬化性樹脂の硬化発熱反応を徐々に進行させる必要がなく、複合成形体の成形サイクルが長期化せず、生産性が低下しないと考えられる。また、注型成形において、特に、ポリアミド系樹脂発泡体から構成される芯材を用いて減圧下で注型成形を行った場合には、硬化不良(ドライスポット)が生じてしまう傾向があったが、芯材の水分量を特定の範囲とすることにより、熱硬化性樹脂液体原料の硬化不良を抑制できると考えられる。
【0016】
(ポリアミド系樹脂発泡体)
本発明のポリアミド系樹脂発泡体は、ポリアミド系樹脂を基材樹脂とするものである。
ポリアミド系樹脂発泡体の基材樹脂となるポリアミド系樹脂としては、ポリアミド、ポリアミド共重合体が挙げられ、ポリアミド共重合体が好ましい。
ポリアミドとしては、例えば、ポリ(カプロラクタム)としても知られるポリ(6-アミノヘキサン酸)(ポリカプロアミド、ナイロン6)、ポリ(ラウロラクタム)(ナイロン12)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリ(7-アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8-アミノオクタン酸)(ナイロン8)、ポリ(9-アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10-アミノデカン酸)(ナイロン10)、ポリ(11-アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン610)、ポリ(デカメチレンセバカミド)(ナイロン1010)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン69)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(ナイロン46)、ポリ(テトラメチレンセバカミド)(ナイロン410)、ポリ(ペンタメチレンアジパミド)(ナイロン56)、及びポリ(ペンタメチレンセバカミド)(ナイロン510)等のホモポリマーが挙げられる。
ポリアミド共重合体とは、2種以上の繰り返し単位を有し、それぞれの繰り返し単位の少なくとも一部にアミド結合を有するものを意味する。ポリアミド共重合体としては、例えば、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム(ナイロン6/66/12)、及びカプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)等が挙げられる。ポリアミド系樹脂は、これらのポリアミド及びポリアミド共重合体を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以上のポリアミド系樹脂の中でも、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、及びナイロン6/66/12から選択される1種または2種以上を組み合わせたポリアミド系樹脂であることが好ましく、ナイロン6/66及びナイロン6/66/12から選択される1種または2種であることがより好ましい。また、上記のポリアミド系樹脂として、植物由来原料を取り入れたポリアミド、ポリアミド共重合体も用いることができる。
なお、ポリアミド系樹脂は、一般に、吸湿性を有するものであり、固体状態で、23℃の水中に置いた場合の飽和吸水率は繰り返し単位中のアミド基1個当たりの炭素数が少ないほど高く、ナイロン6で11.5%程度、ナイロン66で9.5%程度の飽和吸水率である。
【0017】
ポリアミド共重合体は、ある一定量同じ繰り返し単位のアミドが続いた後に、異なる種類のアミドがある一定量続くブロック共重合体であっても、異なる種類のアミドがそれぞれランダムに繰り返すランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。ポリアミド共重合体がランダム共重合体であれば、発泡粒子を型内成形する際に比較的低い成形圧力で成形することが可能となる。
【0018】
ポリアミド系樹脂発泡体を構成するポリアミド系樹脂の融点は、複合体の耐熱性を向上する観点及び発泡時の温度コントロールが容易であるという観点から、好ましくは160~285℃であり、より好ましくは170~240℃であり、更に好ましくは175~200℃である。また、複合体の成形時においても、上記範囲内であれば、熱硬化性樹脂の硬化発熱反応に耐え得るものとなる。
ポリアミド系樹脂発泡体を構成するポリアミド系樹脂の融点は、JIS K 7121:1987に基づき、試験片の状態調節として「一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、熱流束示差走査熱量測定法により、加熱速度10℃/分で得られるDSC曲線の融解ピークのピーク頂点温度として求められる値である。DSC曲線が複数の融解ピークを有する場合、最も大きな面積を有する融解ピークのピーク頂点温度を融解温度として採用する。なお、ポリアミド系樹脂の試験片は、例えば、デシケーター内に入れた後、真空吸引して保存する等、高温、多湿条件下を避けて加水分解しないように保存したものを使用できる。また、ポリアミド系樹脂が、2種以上のポリアミド系樹脂の混合物からなる場合、又はポリアミド系樹脂と他の熱可塑性樹脂の混合物からなる場合には、その混合物を試験片として使用できる。
【0019】
基材樹脂には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において、ポリアミド系樹脂の他に、他の熱可塑性樹脂を含有させてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられる。
基材樹脂中のポリアミド系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂の含有量は、軽量性及び機械的強度に優れた複合体を得る観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。基材樹脂は、ポリアミド系樹脂のみからなることが特に好ましい。
【0020】
ポリアミド系樹脂発泡体を構成する基材樹脂には、通常使用される帯電防止剤、導電性付与剤、滑剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属不活性化剤、結晶核剤、着色剤、及び充填材等の各種の添加剤を、必要に応じて適宜配合することができる。これらの各種添加剤の添加量は、複合体の使用目的により異なるが、ポリアミド系樹脂発泡体を構成する基材樹脂100質量部に対して、好ましくは25質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。
【0021】
≪独立気泡率≫
ポリアミド系樹脂発泡体の独立気泡率は、複合体の軽量性を維持する観点から、好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、より更に好ましくは90%以上である。
ポリアミド系樹脂発泡体の独立気泡率は、発泡体中の全気泡の容積に対する独立気泡の容積の割合であり、ASTM-D2856-70に基づき空気比較式比重計を用いて求めることができる。
【0022】
芯材を構成するポリアミド系樹脂発泡体としては、粒子状の発泡体である発泡粒子又は発泡粒子群、押出法により得られる押出発泡体、前記発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体などが挙げられる。これらの中でも、複合成形体の形状に合わせて任意の芯材を形成できる発泡粒子成形体が好ましい。
【0023】
≪見掛け蜜度≫
ポリアミド系樹脂発泡体の見掛け密度は、軽量性及び機械的強度に優れる複合体を得やすい観点から、好ましくは10kg/m以上、より好ましくは20kg/m以上、更に好ましくは30kg/m以上、より更に好ましくは40kg/m以上であり、そして、好ましくは200kg/m以下、より好ましくは150kg/m以下、更に好ましくは100kg/m以下、より更に好ましくは75kg/m以下である。
ポリアミド発泡体の見掛け密度は、外形寸法や水没法によって測定することができる。なお、ポリアミド系樹脂発泡体が発泡粒子である場合の見掛け密度は、以下の方法(水没法)で測定される。
相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて24時間以上放置した嵩体積が約500cmの発泡粒子の質量W1を測定し、温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、該質量W1の発泡粒子を、該メスシリンダー中に金網を使用して沈める。金網の体積を考慮して、水位上昇分より読みとられる発泡粒子の体積V1[cm]を測定し、発泡粒子の質量W1[g]を体積V1で割り算する(W1/V1)ことにより、発泡粒子の見掛け密度[g/cm]が求められる。
【0024】
芯材を構成するポリアミド系樹脂発泡体は、上記基材樹脂を発泡してなるものであれば特に制限はないが、上記基材樹脂を発泡してなる、粒子状のポリアミド系樹脂発泡体(ポリアミド系発泡粒子)の表面に未硬化状態の熱硬化性樹脂を介して強化繊維が付着している複合粒子から構成されていてもよい。
【0025】
複合粒子における熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、熱硬化性樹脂は、ポリアミド系樹脂発泡体を構成する基材樹脂との接着性に優れる観点から、不飽和ポリエステル系樹脂及びエポキシ系樹脂からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、エポキシ系樹脂から選ばれる1種以上であることがより好ましい。
【0026】
不飽和ポリエステル系樹脂としては、不飽和多価カルボン酸と多価アルコールとから得られる縮合生成物をビニルモノマーに溶解させて得られる不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。不飽和多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸等が例示される。多価アルコールとしてはエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等が例示される。ビニルモノマーとしては、スチレン系モノマー等が例示される。
【0027】
エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ系樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ系樹脂;脂環式エポキシ系樹脂;グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂;グリシジル化アミン型エポキシ系樹脂;ハロゲン化エポキシ系樹脂;或いは、グリシジル化ポリエステル、グリシジル化ポリウレタン、グリシジル化アクリル等のエポキシ基含有モノマーもしくはオリゴマーの付加重合体等が挙げられる。
【0028】
複合粒子における強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、セラミックス繊維、スチール繊維、ステンレス(SUS)繊維、アルミニウム繊維、ホウ素繊維等が挙げられる。これらの中でも、高強度性、汎用性、経済性等の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、及びビニロン繊維からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ガラス繊維及び炭素繊維からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
【0029】
複合粒子は、上記熱硬化性樹脂と反応して硬化物を生成し得る硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、熱硬化性樹脂と反応して硬化し、硬化物を生成し得るものであれば特に制限されるものではない。熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル系樹脂を使用する場合は、硬化剤(重合開始剤)として過酸化物を用いることが好ましい。過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、パーオキシパーベンゾエート、パーオキシケタール、ジクミルパーオキシド等の有機過酸化物が好ましく用いられる。これらの過酸化物は単独で又は2以上の混合物として用いられる。過酸化物に加えて連鎖移動剤を使用してもよい。エポキシ樹脂の硬化剤としては、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物等の酸無水物、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のフェノール樹脂、無水フタル酸誘導体、ジシアンジアミド、アミン化合物、イミダゾール化合物、アルミニウムキレート、BFのようなルイス酸のアミン錯体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して用いられる。
【0030】
複合粒子は、例えば、以下の方法により作製することができる。上記基材樹脂を発泡してなるポリアミド系樹脂発泡粒子と、熱硬化性樹脂と硬化剤とを撹拌等により混合し、熱硬化性樹脂と硬化剤とが均一に分散された熱硬化性樹脂分散液とを準備する。ポリアミド系樹脂発泡粒子と、熱硬化性樹脂分散液とを混合し、さらに、強化繊維を添加して混合することにより得ることができる。
【0031】
<熱硬化性樹脂層>
熱硬化性樹脂層は、芯材の少なくとも一部の表面側に設けられる。熱硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂液体原料を硬化させてなるものであり、熱硬化性樹脂の硬化物からなる。熱硬化性樹脂層の厚みは、適宜設定することができるが、軽量性と強度を両立する観点からは、0.5~20mmであることが好ましく、1~10mmであることがより好ましい。
【0032】
熱硬化性樹脂としては、上述した複合粒子における熱硬化性樹脂として例示したものを使用できる。これらの中でも、熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル系樹脂及びエポキシ系樹脂からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、不飽和ポリエステル系樹脂から選ばれる1種以上であることがより好ましい。
熱硬化性樹脂は、市販品を用いてもよく、不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、日本ユピカ株式会社製の商品名「4015」、「4072」、「5116」、「5126」等が挙げられる。エポキシ系樹脂としては、例えば、DIC株式会社製の商品名「EPICLON」シリーズ等が挙げられる。
【0033】
熱硬化性樹脂層は、熱硬化性樹脂と反応して硬化物を生成し得る硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、熱硬化性樹脂と反応して硬化し、熱硬化性樹脂の硬化物を生成し得るものであれば特に制限されるものではなく、複合粒子における熱硬化性樹脂と反応して硬化物を生成し得る硬化剤として例示したものを使用できる。
【0034】
熱硬化性樹脂層は、強化繊維シート材を含むことが好ましい。強化繊維シート材は、強化繊維をシート状にしたものである。強化繊維シート材を構成する強化繊維としては、複合粒子における強化繊維として例示したものを使用できる。これらの中でも、高強度性、汎用性、経済性等の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、及びビニロン繊維からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ガラス繊維及び炭素繊維からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
強化繊維シート材の厚さは、複合体の使用用途により適宜変更できるが、1~3mm程度とすることができる。
【0035】
<工程(A)>
本発明の複合体の製造方法は、前記ポリアミド系樹脂発泡体から構成される芯材を成形型内に配置する工程を含む。
【0036】
ポリアミド系樹脂発泡体から構成される芯材を成形型内に配置する方法は特に限定されず、成形型内の所望の位置に、従来公知の方法により配置することができる。
【0037】
成形型としては、ポリアミド系樹脂発泡体から構成される芯材を配置した後に熱硬化性樹脂液体原料を充填できるものであれば特に限定されないが、例えば、下型と上型とから構成され、かつ下型と上型とで成形空間を形成する成形型を使用できる。
【0038】
熱硬化性樹脂層が強化繊維シート材を含む場合、工程(A)において、強化繊維シート材を成形型内に配置することができる。例えば、ポリアミド系樹脂発泡体から構成される芯材の一部に、熱硬化性樹脂層の強化繊維シート材を配置する場合、所望の位置に強化繊維シート材が配置された芯材を成形型内に配置したり、成形型内の所望の位置に強化繊維シート材を配置した後に芯材を成形型内に配置したりすることができる。ポリアミド系樹脂発泡体から構成される芯材の周囲全体に、熱硬化性樹脂層の強化繊維シート材を配置する場合、芯材の周囲全体を強化繊維シート材で覆って、成形型内に配置することができる。また、下型と上型とから構成される成形型を使用する場合、下型に強化繊維シート材を配置した後、強化繊維シート材上に芯材を配置し、さらに芯材上に強化繊維シート材を配置し、芯材上の強化繊維シート材と上型とが接触するように、下型と上型とを相対移動させて、下型と上型とを閉めることにより、強化繊維シート材及び芯材を成形型内に配置することができる。
【0039】
<工程(B)>
本発明の複合体の製造方法は、成形型内に熱硬化性樹脂液体原料を充填する工程を含む。すなわち、ポリアミド系樹脂発泡体から構成される芯材が配置された成形型内に熱硬化性樹脂液体原料を充填する工程を含む。
【0040】
成形型内に熱硬化性樹脂液体原料を充填する方法は特に限定されないが、芯材と強化繊維シート材との密着性を向上する観点及び複合体中に空気を残さないようにする観点からは、成形型内を減圧下にし、熱硬化性樹脂液体原料が滞留しないように熱硬化性樹脂液体原料を充填することが好ましい。成形型内を減圧下にする方法は特に限定されず、例えば、真空ポンプで減圧吸引する方法等が挙げられる。
なお、成形時に減圧して熱硬化性樹脂液体原料を充填する場合には、特に、芯材としてポリアミド系樹脂発泡体を用いると、硬化不良が起こりやすくなる傾向があった。このような硬化不良が生じると、複合体の強度が局所的に低下するおそれがある。本発明においては、この硬化不良が、充填時の減圧吸引とポリアミド系樹脂発泡体の水分量とに関係しており、減圧吸引口において水分が集中してしまうことに起因したものであり、特定の水分量のポリアミド系樹脂発泡体を芯材として用いることによって解決できることを見出したものである。
【0041】
<工程(C)>
本発明の複合体の製造方法は、熱硬化性樹脂液体原料を硬化させて、芯材の少なくとも一部の表面に熱硬化性樹脂層を形成する工程を含む。すなわち、ポリアミド系樹脂発泡体から構成される芯材が配置された成形型内に充填された熱硬化性樹脂液体原料を硬化させて、芯材の少なくとも一部の表面に熱硬化性樹脂層を形成する工程を含む。
【0042】
熱硬化性樹脂液体原料を硬化させる方法は特に限定されず、従来公知の方法により加熱や硬化反応により硬化させることができる。熱硬化性樹脂液体原料は、熱硬化性樹脂と反応して硬化物を生成し得る硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、熱硬化性樹脂と反応して硬化し、熱硬化性樹脂の硬化物を生成し得るものであれば特に制限されるものではなく、複合粒子における熱硬化性樹脂と反応して硬化物を生成し得る硬化剤として例示したものを使用できる。
【0043】
熱硬化性樹脂液体原料は、熱硬化性樹脂液体原料の成形型内への充填中又は充填後に硬化が進行し、熱硬化性樹脂層が形成される。成形型内を減圧下にして熱硬化性樹脂液体原料を充填した場合、成形型内の減圧を解除した後に、熱硬化性樹脂液体原料の硬化が進行しやすい傾向がある。
【0044】
芯材が、ポリアミド系樹脂発泡粒子の表面に未硬化状態の熱硬化性樹脂を介して強化繊維が付着している複合粒子の成形体から構成される場合、工程(C)において、ポリアミド系樹脂発泡粒子の表面に存在する未硬化状態の熱硬化性樹脂も硬化することとなる。芯材が前記複合粒子の成形体から構成される場合、強化繊維がポリアミド系樹脂発泡粒子の周囲にも存在することとなり、機械的強度により優れる。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0046】
実施例及び比較例におけるポリアミド系樹脂、発泡粒子、複合粒子、芯材、及び複合体は、以下の方法により測定及び評価した。
【0047】
[測定及び評価]
<ポリアミド系樹脂の融点>
JIS K 7121:1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定法により、発泡粒子を構成するポリアミド系樹脂の融点を測定した。窒素流入量30mL/分の条件下で、10℃/分の加熱速度で30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融(1回目の昇温)してから、次いでその温度にて10分間保った後、10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分で融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融して得られる2回目のDSC曲線の融解ピークのピーク頂点温度として求めた。なお、測定装置として、高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用した。また、試験片として用いた樹脂は、高温、多湿条件下を避けて加水分解しないようデシケーター内で窒素雰囲気下とした後、真空吸引して水分量を1000質量ppm以下で24時間保存したものを融点の測定に使用した。なお、DSC曲線が複数の融解ピークを有する場合、最も大きな面積を有する融解ピークのピーク頂点温度を融点として採用した。
【0048】
<発泡粒子、複合粒子及び芯材の水分量>
発泡粒子、複合粒子及び芯材の水分量は、加熱水分気化装置を用いてポリアミド系樹脂発泡体を温度235℃まで加熱することにより、発泡粒子、複合粒子及び芯材の内部の水分を気化させ、この水分を加熱水分気化装置に接続されたカールフィッシャー水分測定装置(株式会社三菱化学アナリテック社製「CA-200型」)へ導くことにより、測定した。
【0049】
<ポリアミド系樹脂発泡体の見掛け密度>
ポリアミド系樹脂発泡粒子及びそれを用いて得られた複合粒子の見掛け密度は、次のようにして求めた。相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて24時間以上放置した嵩体積が約500cmの粒子の質量W1を測定し、温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、該質量W1の前記粒子を、該メスシリンダー中に金網を使用して沈めた。金網の体積を考慮して、水位上昇分より読みとられる粒子の体積V1[cm]を測定し、粒子の質量W1[g]を体積V1で割り算する(W1/V1)ことにより、発泡粒子の見掛け密度[g/cm]が求めた。
【0050】
<ポリアミド系樹脂発泡粒子、複合粒子及び芯材の独立気泡率>
ポリアミド系樹脂発泡粒子、複合粒子及び芯材の独立気泡率は、以下の方法により測定した。ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、ポリアミド系樹脂発泡粒子、複合粒子又は芯材からなるサンプルの真の体積(複合粒子又は芯材を構成する樹脂の容積と、サンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値Vxを測定した。この真の体積Vxの測定には、東芝・ベックマン株式会社製の空気比較式比重計「930」を用いた。次いで、下記の式(1)により独立気泡率を算出し、5回の測定結果の算術平均値を求めた。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
Vx:上記方法で測定されるサンプルの真の体積(cm
Va:サンプルの見掛けの体積(cm
W:測定用サンプルの質量(g)
ρ:サンプルを構成する樹脂の密度(g/cm
【0051】
<芯材の密度>
芯材の密度は、3つの芯材の質量及び体積を測定し、見掛け密度を算出して、その算術平均値として求めた。
【0052】
<芯材の空隙率>
芯材の空隙率は、以下の方法により測定した。芯材の中心部分から切り出した直方体形状の試験片を、エタノールを入れたメスシリンダー中に沈めてエタノールの液面の上昇分から試験片の真の体積Vc[L]を求めた。また、該試験片の外形寸法(縦25mm×横25mm×高さ100mm)から見掛けの体積Vd[L]を求めた。求められた真の体積Vcと見掛けの体積Vdから下記の式(2)により芯材の空隙率を求めた。
空隙率(%)=[(Vd-Vc)/Vd]×100 (2)
【0053】
<熱硬化性樹脂層の表層厚み>
熱硬化性樹脂層の表層厚みは、以下の方法により測定した。得られた複合体を長手方向に対して垂直に計3箇所切断し、それぞれの切断面において周方向に沿って等間隔に6箇所熱硬化性樹脂層部分を測定し、得られた18箇所の厚みの算術平均値を熱硬化性樹脂層の表層厚みとした。
【0054】
<複合体のサイクル時間>
成形型内に芯材を配置してから、芯材の表面に熱硬化性樹脂層が形成された複合体を成形型から取り出すまでに要する時間を測定し、複合体のサイクル時間とした。
【0055】
<複合体中の芯材のセルの破壊の有無>
複合体中の芯材のセルの破壊の有無は、成形した複合体の中心部および四隅付近(R部を除く)の合計5箇所から、熱硬化性樹脂層を含まないように、100mm×100mm×熱硬化性樹脂層部を除いた部分の厚み、の計5個の試験片を切り出した。切り出した何れかのカット面における全ての発泡粒子について、目視観察でカット面の粒子の状態を観察し、発泡粒子の気泡が破壊されている粒子数を計数した。カット面における全ての発泡粒子の数に対する、気泡が破壊されている発泡粒子の数の割合を求め、5個の試験片から得た値のうちの最も低い値を発泡粒子の破壊率とし、以下の判断基準により複合体中の芯材のセルの破壊を評価した。
A:発泡粒子の破壊率が50%未満
B:発泡粒子の破壊率が50%以上
【0056】
<複合体のドライスポットの形成の有無>
複合体の硬化不良による空隙部分であるドライスポットの有無は、目視により確認した。
【0057】
<複合体の曲げ物性>
複合体は、JIS K 7171:2006に準拠して、具体的には以下の方法で1.0mmたわみ曲げ荷重、最大降伏点荷重を測定した。
まず、各複合体から幅50mm×長さ400mm×厚み300mmの試験片となるように切り出した。なお、試験片厚みが上記範囲未満の場合には、そのままの厚みの試験片とした。切り出した試験片は、室温23℃、湿度50%の恒室内で試験片を24時間以上放置した後、支点間距離300mm、圧子の半径R5.0mm、支持台の半径R2.0mm、試験速度5mm/min、室温23℃、湿度50%の条件で、株式会社島津製作所製の卓上形精密万能試験機「オートグラフAGS-10kNG」によりたわみ-曲げ荷重カーブ(SSカーブ)を測定した。前記SSカーブのたわみ量1.0mmの時の荷重(1.0mmたわみ荷重(N))を測定し、5点以上の測定値の平均値を測定結果として採用し、以下の基準で評価した。
A:1.0mmたわみ荷重(N)が170N以上
B:1.0mmたわみ荷重(N)が170N未満
【0058】
[原料]
複合体の原料として使用したものを以下に示す。
<発泡粒子>
・PA1:ポリアミド系樹脂発泡粒子
・PA2:ポリアミド系樹脂発泡粒子
・PA3:ポリアミド系樹脂発泡粒子
・PA4:ポリアミド系樹脂発泡粒子
・PLA1:ポリ乳酸発泡粒子
<熱硬化性樹脂>
・熱硬化性樹脂A:DIC株式会社製の商品名「EPICLON850」
・熱硬化性樹脂1:日本ユピカ株式会社製の商品名「4072PT-3」
<硬化剤>
・硬化剤A:1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン
・硬化剤B:2-エチル-4-メチルイミダゾール
・硬化剤1:日油株式会社製の商品名「パーキュアAH」
・硬化剤2:日油株式会社製の商品名「パーキュアHB」
<強化繊維>
・強化繊維:ガラス強化繊維、セントラル硝子株式会社製のミルドファイバー、商品名「EFK80-31/T」
・強化繊維シート1:ガラス繊維シート、株式会社GRPジャパン製、商品名「コンビフロー S450/V250/S450」
・強化繊維シート2:ガラス繊維シート、SHINDO株式会社製、商品名「NCF Q880G」
【0059】
製造例1~5
表1に示す熱硬化性樹脂及び硬化剤を撹拌混合し、熱硬化性樹脂分散液を得た。表1に示す発泡粒子と熱硬化性樹脂分散液とを混合した。さらに、表1に示す強化繊維を添加して混合し、複合粒子を得た。複合粒子の測定結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例1~3、比較例1、及び参考例1~2
表2に示す複合粒子を、表2に示す圧縮率及び成形温度で成形し、表2に示す水分量を有する、縦450mm、横300mm、厚み27mmの芯材を得た。また、表2に示す熱硬化性樹脂と硬化剤とを撹拌混合し、熱硬化性樹脂液体原料を得た。
上型と下型とから構成される成形型を用いて、上型と下型とで形成される成形空間の寸法を、縦460mm、横310mm、厚み30mmとして複合体を形成した。具体的には、下型に強化繊維シート1を配置し、該強化繊維シート1上に強化繊維シート2を配置し、該強化繊維シート2上に上記芯材を配置し、該芯材上に、さらに強化繊維シート2を配置し、該強化繊維シート2上に強化繊維シート1を配置し、強化繊維シート1と上型とが接触するように、下型と上型とを相対移動させて、下型と上型とを閉めることにより、強化繊維シート材1、2及び芯材を成形型内に配置した(工程(A))。熱硬化性樹脂液体原料貯槽から成形型内に接続された第一の配管から、成形型内から成形型外に接続された第二の配管を通して真空ポンプで減圧吸引して、前記熱硬化性樹脂液体原料を成形型内に充填した(工程(B))。そして、前記熱硬化性樹脂液体原料の充填中、または充填後において、熱硬化性樹脂液体原料の硬化反応による硬化を行い、熱硬化性樹脂液体原料の硬化を完了させた。なお、熱硬化性樹脂液体原料の充填後、硬化反応の完了前に減圧吸引を解除した。その後、複合体の表面温度が常温(25℃)となったら、成形型内から複合体を取り出し、芯材の表面に熱硬化性樹脂が硬化した熱硬化性樹脂層が形成された複合体を得た(工程(C))。複合体の測定及び評価結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
表2より、実施例で得られた複合体によれば、硬化不良を抑制できることがわかる。また、複合体中の芯材のセルの破壊がなく、成形時間の短縮が可能であることが分かる。また、得られた複合体は、曲げ物性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る複合体の製造方法及びその製造方法に用いられる芯材は、硬化不良を抑制でき、複合体中の芯材のセルの破壊がなく、曲げ物性に優れる。