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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138929
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】二酸化炭素の固定方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20241002BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241002BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20241002BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B01D53/14 100
B01D53/62 ZAB
B01D53/81
B01J20/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049658
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】中務(春日) 友明
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩希
(72)【発明者】
【氏名】明戸 剛
(72)【発明者】
【氏名】一坪 幸輝
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G066
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA03
4D002CA05
4D002DA66
4D002GA01
4D002GB03
4D002GB12
4D002GB20
4D020AA03
4D020BA30
4D020BB01
4D020CA06
4D020DA03
4D020DB02
4D020DB10
4D020DB20
4G066AA73B
4G066AA75B
4G066BA09
4G066BA20
4G066CA35
4G066DA01
4G066DA02
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素含有ガス(例えば、工場の排ガス)に含まれている二酸化炭素(炭酸ガス)を、廃コンクリート等のセメント質硬化体に固定する技術において、セメント質硬化体の材料であるセメントの単位質量当たりの二酸化炭素の固定量を増大させるための方法を提供する。
【解決手段】セメント質硬化体に二酸化炭素含有ガスを接触させて、二酸化炭素含有ガスに含まれている二酸化炭素を、セメント質硬化体に固定する接触工程を含む二酸化炭素の固定方法であって、接触工程の前に、セメント質硬化体の含水率を0.5~10%に調整する含水率調整工程を含む二酸化炭素の固定方法。接触工程において、二酸化炭素含有ガスとして、温度が75~175℃でかつ相対湿度が10~100%のガスを用いることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント質硬化体に二酸化炭素含有ガスを接触させて、上記二酸化炭素含有ガスに含まれている二酸化炭素を、上記セメント質硬化体に固定する接触工程を含む二酸化炭素の固定方法であって、
上記接触工程の前に、上記セメント質硬化体の含水率を0.5~10%に調整する含水率調整工程を含むことを特徴とする二酸化炭素の固定方法。
【請求項2】
上記接触工程において、上記二酸化炭素含有ガスとして、温度が75~175℃でかつ相対湿度が10~100%のガスを用いる請求項1に記載の二酸化炭素の固定方法。
【請求項3】
上記セメント質硬化体が、再生骨材、コンクリートもしくはモルタルからなる建材の廃材、セメントペースト硬化体の廃材、または、レディーミクストコンクリートで発生するスラッジの硬化体であり、かつ、50mm以下の粒度を有する粒状物を70質量%以上の割合で含むものである請求項1に記載の二酸化炭素の固定方法。
【請求項4】
上記接触工程において、上記二酸化炭素含有ガスに対して、追加の水分を供給しない請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素含有ガス(例えば、工場の排ガス)に含まれている二酸化炭素を、廃コンクリート等のセメント質硬化体に固定する技術が、知られている。
例えば、特許文献1に、セメント質硬化体からなる、粒度が40mm以下の粉粒状体に、75~110℃の温度下で二酸化炭素含有ガスを接触させて、上記二酸化炭素含有ガスに含まれている二酸化炭素を、上記粉粒状体に固定化する接触工程を含む、二酸化炭素の固定化方法であって、上記粉粒状体の粒度の大きさ、及び、上記接触工程の前における上記粉粒状体の水分量の調整の状況に応じて、上記二酸化炭素含有ガスの相対湿度を調整することを特徴とする二酸化炭素の固定化方法が、記載されている。
特許文献2に、セメント質硬化体に二酸化炭素含有ガスを接触させて、上記二酸化炭素含有ガスに含まれている二酸化炭素を、上記セメント質硬化体に固定化する接触工程を含む、二酸化炭素の固定化方法であって、上記二酸化炭素含有ガスは、「JIS Z 8808:2013 排ガス中のダスト濃度の測定方法」の「7 排ガス中の水分量の測定」に記載された方法で測定した水分量が1.5%以上でかつ温度が75~175℃のガスであることを特徴とする二酸化炭素の固定化方法が、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-131076号公報
【特許文献2】特開2020-15659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、実施例として、セメントペースト硬化体からなる粉粒状体を、水で満たした密封容器内で養生して、供試体を得た後、この供試体を、100℃の温度雰囲気下で二酸化炭素含有ガスと接触させて、炭酸化させる(換言すると、二酸化炭素を固定化する)ことが記載されている。
しかし、特許文献1には、セメントペースト硬化体からなる粉粒状体が、どのような大きさの含水率を有すれば、炭酸化率が最も大きくなるかは、記載されていない。
特許文献2には、二酸化炭素含有ガス中の水蒸気の割合が、体積分率として例えば30%以上であると、セメント質硬化体(例えば、セメントペースト硬化体)における炭酸ガス(二酸化炭素)の固定化を、より効率的にかつ多量に行うことができると記載されている。
しかし、特許文献2には、セメント質硬化体が、どのような大きさの含水率を有すれば、炭酸化率が最も大きくなるかは、記載されていない。
【0005】
本発明の目的は、二酸化炭素含有ガス(例えば、工場の排ガス)に含まれている二酸化炭素(炭酸ガス)を、廃コンクリート等のセメント質硬化体に固定する技術において、セメント質硬化体の材料であるセメントの単位質量当たりの二酸化炭素の固定量を増大させるための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメント質硬化体に二酸化炭素含有ガスを接触させる前に、セメント質硬化体の含水率を0.5~10%に調整すれば、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、以下の[1]~[4]を提供するものである。
[1] セメント質硬化体に二酸化炭素含有ガスを接触させて、上記二酸化炭素含有ガスに含まれている二酸化炭素を、上記セメント質硬化体に固定する接触工程を含む二酸化炭素の固定方法であって、上記接触工程の前に、上記セメント質硬化体の含水率を0.5~10%に調整する含水率調整工程を含むことを特徴とする二酸化炭素の固定方法。
[2] 上記接触工程において、上記二酸化炭素含有ガスとして、温度が75~175℃でかつ相対湿度が10~100%のガスを用いる、上記[1]に記載の二酸化炭素の固定方法。
[3] 上記セメント質硬化体が、再生骨材、コンクリートもしくはモルタルからなる建材の廃材、セメントペースト硬化体の廃材、または、レディーミクストコンクリートで発生するスラッジの硬化体であり、かつ、50mm以下の粒度を有する粒状物を70質量%以上の割合で含むものである、上記[1]又は[2]に記載の二酸化炭素の固定方法。
[4] 上記接触工程において、上記二酸化炭素含有ガスに対して、追加の水分を供給しない、上記[1]~[3]のいずれかに記載の二酸化炭素の固定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、二酸化炭素含有ガスの温度及び相対湿度の各値を特定の値に維持している場合であっても、セメント質硬化体の含水率を特定の範囲内に調整するだけで、セメント質硬化体の材料であるセメントの単位質量当たりの二酸化炭素の固定量を増大させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の二酸化炭素の固定方法は、(A)セメント質硬化体の含水率を0.5~10%に調整する含水率調整工程と、(B)含水率調整工程によって含水率を調整したセメント質硬化体に、二酸化炭素含有ガスを接触させて、二酸化炭素含有ガスに含まれている二酸化炭素を、セメント質硬化体に固定する接触工程、を含む。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0010】
[(A)含水率調整工程]
本工程は、二酸化炭素を固定する対象物であるセメント質硬化体の含水率を0.5~10%に調整する工程である。
セメント質硬化体としては、コンクリートからなる硬化体、モルタルからなる硬化体、または、セメントペーストからなる硬化体が挙げられる。
本明細書中、「セメント質硬化体」の語は、完全に硬化した硬化体の他、半硬化の硬化体(換言すると、硬化が進行中のもの)を包含するものとする。
特に、廃棄物の利用促進の観点から、再生骨材や、コンクリートもしくはモルタルからなる建材の廃材(廃コンクリート等)や、セメントペースト硬化体の廃材や、レディーミクストコンクリートで発生するスラッジの硬化体(完全に硬化したもの、または、脱水処理後の半硬化状態のスラッジ)等が、本発明において、好ましく用いられる。
【0011】
セメント質硬化体は、二酸化炭素含有ガスとの接触面積を大きくして、固定される二酸化炭素の量を増大させるために、好ましくは、粒状物(粒度が0.1mm以上のもの)の形態を有する。
該粒状物の好ましい粒度分布は、二酸化炭素の固定量を大きくする観点から、50mm以下(好ましくは40mm以下、より好ましくは30mm以下、さらに好ましくは20mm以下、特に好ましくは10mm以下)の粒度を有するものを、70質量%以上(より好ましくは80質量%以上)の割合で含むものである。
また、該粒状物の粒度分布は、セメント質硬化体として用いる上述の各種の廃棄物(再生骨材等)の破砕の手間を軽減するなどの観点から、1mm以下の粒度を有するものの割合が、30質量%以下(好ましくは20質量%以下)であることが、好ましい。
ここで、粒状物の粒度とは、その粒状物の最大寸法(例えば、断面が楕円の形状である場合、長軸の寸法)をいう。
【0012】
セメント質硬化体の含水率は、0.5~10%、好ましくは1~8%、より好ましくは1.5~5%、さらに好ましくは2~4%、特に好ましくは2.5~3.5%である。含水率が0.5%未満では、二酸化炭素の固定化の効率が低下する。含水率が10%を超えると、二酸化炭素の固定化の効率が低下する。
本明細書中、「含水率」とは、セメント質硬化体に含まれている水(換言すると、セメント質硬化体の細孔内に水として付着しているもの)の質量を、セメント質硬化体の質量(水を含む全体の質量)で除して得られる値をいい、以下の式(1)によって算出される。
含水率(%)=[セメント質硬化体に含まれている水の質量]×100÷[セメント質硬化体の絶乾状態の質量と、セメント質硬化体に含まれている水の質量の合計]・・(1)
セメント質硬化体の含水率を上述の数値範囲内に調整するための方法としては、絶乾状態等にあるセメント質硬化体に対して、水分を供給する方法や、水に浸漬した後の大きな含水率を有するセメント質硬化体に対して、加熱等による乾燥を行う方法等が挙げられる。
【0013】
[(B)接触工程]
本工程は、前工程(含水率調整工程)によって含水率を調整したセメント質硬化体に、二酸化炭素含有ガスを接触させて、二酸化炭素含有ガスに含まれている二酸化炭素を、セメント質硬化体に固定する工程である。
本発明においては、セメント質硬化体の含水率が0.5~10%の範囲内に調整された状態で、セメント質硬化体と二酸化炭素含有ガスが接触することによって、セメント質硬化体に含まれているセメントの単位質量当たりの二酸化炭素の固定量(以下、二酸化炭素の固定量と略すことがある。)を、上記含水率が0.5~10%の範囲外である場合に比べて、増大させることができる。
【0014】
本発明において、二酸化炭素含有ガスとは、気体である二酸化炭素(炭酸ガス)を含むガスを意味する。
二酸化炭素含有ガスの例としては、工場の排ガス等が挙げられる。
工場の排ガスとしては、セメント工場の排ガスや、石炭火力発電所の排ガスや、塗装工場における排気処理で発生する排ガス等が挙げられる。
また、工場の排ガスとしては、工場の排ガスから分離及び回収してなる高純度化したガス(炭酸ガスの濃度を高めたガス)を用いることもできる。
二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素(炭酸ガス)の割合は、体積分率の値として、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上である。該割合が10%以上であると、二酸化炭素の固定量が大きくなり、大気中への二酸化炭素の排出量の削減の効果が大きくなることから、好ましい。
二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素(炭酸ガス)以外のガスとしては、窒素ガス、一酸化炭素、炭化水素類、窒素酸化物、硫黄酸化物等が挙げられる。窒素ガス以外の例示物(一酸化炭素等)は、通常、工場の排ガス等に含まれているものである。
【0015】
二酸化炭素含有ガスの温度(セメント質硬化体との接触時の温度)は、好ましくは75~175℃、より好ましくは80~145℃、さらに好ましくは85~120℃、特に好ましくは87~95℃である。該温度が75℃未満では、二酸化炭素の固定量が小さくなる。該温度が175℃を超えると、二酸化炭素の固定量が小さくなる。
二酸化炭素含有ガスの供給源として、例えば、工場の排ガスを用いる場合、該排ガスの温度が、75℃未満または175℃を超えるのであれば、該排ガスを加熱または冷却して、該排ガスの温度を75~175℃の範囲内の所望の値に調整することによって、該排ガスを、本発明の接触工程の二酸化炭素含有ガスとして用いることができる。
二酸化炭素含有ガスの相対湿度(セメント質硬化体との接触時の相対湿度)は、好ましくは10~100%、より好ましくは30~95%、さらに好ましくは40~90%、特に好ましくは50~80%である。該値が10%未満では、セメント質硬化体の含水率が経時的に減少してしまい、二酸化炭素の固定量が小さくなる。該値が95%以下であると、このような二酸化炭素含有ガスを調製し易くなり、好ましい。
【0016】
本工程(接触工程)において、二酸化炭素含有ガスに対して、追加の水分を供給する必要は、ない。
二酸化炭素含有ガスの温度及び相対湿度を予め上述の数値範囲内(75~175℃、10~100%)に調整しておけば、この温度等を調整済みの二酸化炭素含有ガスを、セメント質硬化体と接触させるだけで、二酸化炭素の固定量として、大きな値を得ることができる。
接触工程におけるセメント質硬化体と二酸化炭素含有ガスの接触時間は、好ましくは10分~3時間、より好ましくは20分~2時間30分、さらに好ましくは30分~2時間、特に好ましくは40分~1時間30分である。該時間が10分以上であると、二酸化炭素の固定量をより大きくすることができる。該時間が3時間以下であると、二酸化炭素の固定をより効率的に行うことができる。
【0017】
セメント質硬化体に二酸化炭素含有ガスを接触させる手段としては、連続式加熱炉とバッチ式加熱炉のいずれも用いることができる。
中でも、連続式加熱炉は、本発明の二酸化炭素の固定方法を効率的に行うことができる点で、本発明で好ましく用いられる。
連続式加熱炉の例としては、ロータリーキルン(外熱式または内熱式)、トンネル式加熱炉等が挙げられる。
中でも、外熱式のロータリーキルンは、セメント質硬化体を収容して二酸化炭素含有ガスと接触させるための筒状の収容部の内部空間の温度を制御し易い点で、本発明において好ましく用いられる。
なお、外熱式のロータリーキルンとは、被処理物を収容するための筒状の収容部の外周面に対して、外側から、複数のバーナー等の熱源を用いて加熱するものをいう。内熱式のロータリーキルンとは、被処理物を収容するための筒状の収容部の内部空間内に、高温のガス(例えば、工場内の廃熱によって生じる高温の排ガス)を流通させるものなどをいう。
連続式加熱炉の筒状の収容部の長さは、好ましくは4~15mである。
連続式加熱炉の筒状の収容部の内径は、好ましくは0.3~2mである。
【実施例0018】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)セメント質硬化体からなる供試体の作製
普通ポルトランドセメント100質量部と、水47質量部を混合して、セメントペーストを得た。このセメントペーストと、水と、砂を、各々、15.5質量%、7.3質量%、77.2質量%(以上の合計:100質量%)の割合で混合して、モルタルを得た。このモルタルを型枠内に充填し、28日間、水中養生を行った後、脱型して、モルタル硬化体(寸法:300mm×300mm×100mm)を得た。このモルタル硬化体を破砕して、モルタル硬化体の破砕物(セメント質硬化体からなる供試体)を得た。
モルタル硬化体の破砕物の粒度分布は、40mm以下の粒度のものが100質量%、30mm以下の粒度のものが90質量%以上、20mm以下の粒度のものが90質量%以上、10mm以下の粒度のものが80質量%以上、1mm以下の粒度のものが20質量%以下であった。
得られたモルタル硬化体の破砕物について、加熱(温度:80℃)による乾燥(処理時間:12時間)と、水の添加を、この順で行うことによって、含水率を0.5%に調整した。
【0019】
(2)二酸化炭素含有ガスとの接触
作製した供試体(モルタル硬化体の破砕物)及び二酸化炭素含有ガス(炭酸ガス濃度:100%)を、外熱式のロータリーキルン(筒状の収容部の長さ:5m;筒状の収容部の内径:0.55m;栗本鐵工所社製)内に供給して、該キルン内で、供試体に二酸化炭素含有ガスを接触させた。なお、二酸化炭素含有ガスは、外熱式のロータリーキルンに対して、供試体とは反対側から供給した。また、外熱式のロータリーキルン(換言すると、該キルン内に供給された二酸化炭素含有ガス)には、水分を供給しなかった。供試体(モルタル硬化体の破砕物)の供給量は、50kg/hとした。
ロータリーキルン内の温度(換言すると、該キルン内の二酸化炭素含有ガスの温度)は、90℃に維持されるように調整した。
ロータリーキルン内の供試体(モルタル硬化体の破砕物)の滞留時間(供給から排出までの時間)は、60分間であった。
温湿度計(rotronic社製の「HygroPalm32」)を用いて、ロータリーキルン内の相対湿度を測定したところ、相対湿度は、35%であった。
(3)二酸化炭素の固定量の算出
二酸化炭素含有ガスとの接触の前後におけるセメント質硬化体の絶乾状態での質量の変化に基いて、セメント1トン(t)当たりの二酸化炭素(CO)の固定量(kg)を算出した。
【0020】
[実施例2~5、比較例1]
セメント質硬化体の含水率を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、実験を行った。
なお、含水率の調整は、以下の方法で行った。
実施例2については、モルタル硬化体の破砕物について、加熱(温度:80℃)による乾燥(処理時間:12時間)と、水の添加を、この順で行うことによって、含水率を1.0%に調整した。
実施例3については、モルタル硬化体の破砕物について、加熱等の処理を行わず、含水率が3.1%のものをそのまま用いた。
実施例4~5については、加熱による乾燥を行わず、水の添加のみを行うことによって、含水率を4.8%(実施例4)または6.4%(実施例5)に調整した。
比較例1については、加熱(温度:80℃)による乾燥(処理時間:12時間)のみを行うことによって、含水率を0%に調整した。
以上の結果を表1に示す。
表1中、「二酸化炭素の固定量」は、大気中の空気に含まれている二酸化炭素に由来する固定量を含まず、二酸化炭素含有ガス(炭酸ガス濃度:100%)に含まれている二酸化炭素(炭酸ガス)に由来する固定量のみを示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1から、比較例1では、セメント質硬化体の含水率が0%であるため、二酸化炭素の固定量が、セメント1トン当たり、42kgであるのに対し、実施例1~5では、セメント質硬化体の含水率が0.5~6.4%であるため、二酸化炭素の固定量が、セメント1トン当たり、46~130kgであり、比較例1に比べて、大きな固定量を得ていることがわかる。特に、セメント質硬化体の含水率が3.1%である実施例3では、二酸化炭素の固定量が、セメント1トン当たり、130kgであり、非常に大きな固定量を得ていることがわかる。