(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138935
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ケーキ生地用気泡安定剤
(51)【国際特許分類】
A21D 2/16 20060101AFI20241002BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20241002BHJP
A21D 2/14 20060101ALI20241002BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A21D2/16
A21D13/80
A21D2/14
A23D9/00 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049666
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一哉
(72)【発明者】
【氏名】福田 竜統
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG04
4B026DK01
4B026DK05
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP04
4B032DB05
4B032DB09
4B032DG02
4B032DG07
4B032DK02
4B032DK09
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK26
4B032DK42
4B032DK45
4B032DK47
4B032DK70
4B032DL02
4B032DP12
4B032DP13
4B032DP14
4B032DP15
4B032DP80
(57)【要約】
【課題】本発明は、ケーキ生地の気泡安定性を向上させるケーキ生地用気泡安定剤を提供することを目的とする。
【解決手段】ケーキ生地用気泡安定剤中にグリセリンコハク酸脂肪酸エステルを6質量%超30質量%以下、かつ油脂を70質量%以上含有するケーキ生地用気泡安定剤。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーキ生地用気泡安定剤中にグリセリンコハク酸脂肪酸エステルを6質量%超30質量%以下、かつ油脂を70質量%以上含有するケーキ生地用気泡安定剤。
【請求項2】
さらに、レシチンを含有する、請求項1に記載のケーキ生地用気泡安定剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーキ生地用気泡安定剤に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、スポンジケーキ等のケーキは、小麦粉、卵、油脂、糖類等のケーキ原料を混合し、ホイッパー等で起泡させたケーキ生地に焼成等の加熱処理を施すことで製造される。この際、ケーキ生地中の気泡の合一や脱気が発生しないうちに焼成等の加熱処理を施すことで口溶け、ボリューム等の品質が良好なケーキを製造することができる。しかし、実際の工業的な製造工程では、ケーキ生地が焼成等の加熱処理を施されるまで長時間を要したり、工場内に発生した熱で高温にさらされたりすることで、ケーキ生地中の気泡の合一や脱気が起こりやすくなり、その結果、ケーキ生地の分離等が発生し、最終的なケーキの品質に悪影響を及ぼすといった課題を有している。特に、バウムクーヘンのようにケーキ生地を幾層にも重ねて焼成するような製造工程を有するケーキの場合は、ケーキ生地が焼成器の熱で長時間、高温にさらされやすい。そのため、このような環境でも、気泡の合一や脱気が発生し難い、経時的な気泡安定性に優れたケーキ生地に関する技術が求められている。
【0003】
ケーキ生地の安定性に関する技術としては、例えば、油脂に対してポリグリセリン脂肪酸エステル及びグリセリン有機酸脂肪酸エステルのうち1種又は2種以上を合計で0.5~6重量%配合してなるバウムクーヘン用油脂組成物(特許文献1)、油脂と食品用乳化剤を含有するショートニングであって、ショートニング100質量%中、食品用乳化剤として、(a)ジグリセリン飽和脂肪酸エステル1~25質量%、(b)グリセリン有機酸飽和脂肪酸エステル0.1~5質量%、(c)レシチン0.05~5質量%、並びに(d)グリセリンモノ飽和脂肪酸エステル及び/又はソルビタン飽和脂肪酸エステル0.05~5質量%含有し、かつ(a)、(b)、(c)及び(d)の合計量が5~30質量%であることを特徴とするケーキ用流動状ショートニング(特許文献2)等が開示されている。
【0004】
しかし、これらの技術では、ケーキ生地の経時的な気泡安定性効果や高温にさらされた場合の気泡安定性効果等は必ずしも十分とはいえず、より実用性があり、効果に富んだケーキ生地の気泡の安定性を向上させる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-110238号公報
【特許文献2】特開2006-230224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ケーキ生地の気泡安定性を向上させるケーキ生地用気泡安定剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題に対して鋭意検討を行った結果、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルと油脂を所定量、併用することによって、前記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)ケーキ生地用気泡安定剤中にグリセリンコハク酸脂肪酸エステルを6質量%超30質量%以下、かつ油脂を70質量%以上含有するケーキ生地用気泡安定剤、
(2)さらに、レシチンを含有する、(1)に記載のケーキ生地用気泡安定剤、
から成っている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤は、ケーキ生地の気泡安定性を向上させることができる。具体的には、ケーキ生地中の気泡の合一や脱気を抑制することで、ケーキ生地中の気泡を安定化させ、経時的なケーキ生地の分離、及び比重の上昇を抑制することができる。特に、ケーキ生地が高温(例えば、40℃以上、50℃以上を挙げることができる。)に長時間(例えば、5分間以上、10分間以上、30分間以上を挙げることができる。)さらされる場合には、経時的なケーキ生地の分離、及び比重の上昇が起こりやすいため、ケーキ生地が高温にさらされる場合に求められるケーキ生地の気泡安定性(熱安定性)に効果が発揮される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤に用いられるグリセリンコハク酸脂肪酸エステルは、グリセリン有機酸脂肪酸エステルの1種であり、グリセリンが有するヒドロキシ基のいずれかにコハク酸及び脂肪酸がそれぞれ少なくとも1つエステル結合した化合物であり、通常、グリセリンモノ脂肪酸エステルと無水コハク酸(又はコハク酸)との反応、グリセリンとコハク酸と脂肪酸との反応等、自体公知の方法により製造される。
【0011】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤に用いられるグリセリンコハク酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6~24の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸を挙げることができる。炭素数6~24の飽和脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等を挙げることができる。炭素数6~24の不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸等を挙げることができる。これらの中でも、炭素数12~22の飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~22の飽和脂肪酸がより好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸がさらに好ましい。グリセリンコハク酸脂肪酸エステルは、これら脂肪酸の1種のみを構成脂肪酸とするものであっても、任意の2種以上を構成脂肪酸とするものであってもよい。
【0012】
グリセリンコハク酸脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムB-10(商品名;グリセリンコハク酸ステアリン酸エステル;理研ビタミン社製)、ポエムB-30(商品名;グリセリンコハク酸ステアリン酸エステル;理研ビタミン社製)等が商業的に製造、販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0013】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤に用いられる油脂は、特に制限はないが、植物油脂、動物油脂、加工油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド等を挙げることができる。植物油脂としては、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、コメ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、落花生油、オリーブ油、ゴマ油等を挙げることができる。動物油脂としては、豚脂、牛脂、魚油、乳脂、バター等を挙げることができる。加工油脂としては、植物油脂や動物油脂に分別、水素添加、エステル交換等の処理をしたものを挙げることができ、具体的には、パーム硬化油脂、ヤシ硬化油脂、大豆硬化油脂、菜種硬化油脂等の硬化油脂、パーム分別油脂、ヤシ分別油脂、大豆分別油脂、菜種分別油脂等の分別油脂等を挙げることができる。中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、カプロン酸トリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド等を挙げることができる。油脂は、いずれか1種のみを用いてもよく、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤には、さらにレシチンを用いることが好ましい。本発明のケーキ生地用気泡安定剤に用いられるレシチンは、大豆や菜種等の油糧種子又は卵黄等の動物原料から得られるリン脂質[例えば、フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジン酸又はこれらの酵素処理物(例えば、フォスファチジルコリンの酵素分解物であるリゾフォスファチジルコリン等)]を主成分とするものである。レシチンの種類としては、リン脂質以外に糖脂質、トリグリセリド等の単純脂質、遊離の糖、色素等を含有する粗製レシチン(クルードレシチン)、粗製レシチンから単純脂質等を除去してリン脂質の純度を高めた高純度レシチン(精製レシチン)、さらに分別や酵素処理を行った分別レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン等を挙げることができる。レシチンは、いずれか1種のみを用いてもよく、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
レシチンとしては、例えば、SLPペースト(商品名;粗製レシチン;辻製油社製)、日清レシチンDX(商品名;粗製レシチン;日清オイリオグループ社製)、レシマールEL(商品名;酵素分解レシチン;理研ビタミン社製)等が商業的に製造、販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0016】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤は、粉末状、顆粒状、液状、ペースト状、半固形状等その形態に特に制限はないが、ケーキ生地への分散性の点で、液状、ペースト状、半固形状であることが好ましい。
【0017】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤に含有するグリセリンコハク酸脂肪酸エステルは、ケーキ生地用気泡安定剤中に6質量%超30質量%以下であれば、特に制限はないが、6質量%超25質量%以下が好ましく、6.5~20質量%がより好ましい。
【0018】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤に含有する油脂は、ケーキ生地用気泡安定剤中に70質量%以上であれば、特に制限はないが、75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。また、例えば、70~94質量%、75~94質量%、80~94質量%であってもよい。
【0019】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤に含有するレシチンは、ケーキ生地用気泡安定剤中に0.1~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.3~3質量%がさらに好ましい。0.1質量%以上であるとレシチンによる気泡安定性効果が高いが、10質量%を超えて含有させてもレシチンによる気泡安定性効果がほとんど頭打ちとなるため、ケーキの風味への影響も考慮すると、0.1~10質量%が好ましい。
【0020】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の成分を含有させてもよい。このような成分としては、多価アルコール、澱粉、タンパク質、安定剤、pH調整剤、食品用乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料、水等を挙げることができる。
【0021】
多価アルコールとしては、1分子中に2つ以上のヒドロキシ基をもつ化合物であれば特に制限はなく、例えば、キシロース、ブドウ糖、果糖等の単糖類、ショ糖、乳糖、麦芽糖等のオリゴ糖類、デキストリン、水飴等の澱粉分解物、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース等のマルトオリゴ糖類、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等の異性化糖類、蜂蜜等の転化糖類、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴等の糖アルコール類、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール等を挙げることができ、これらの中でも、澱粉分解物、糖アルコール類、グリセリンが好ましく、水飴、ソルビトール、還元水飴、グリセリンがより好ましい。
【0022】
澱粉としては、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉等の他、これらの澱粉に酸処理、アルカリ処理、酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、リン酸化処理、架橋処理、加熱処理、α化処理、粉砕処理、酵素処理等を施した加工澱粉等を挙げることができる。タンパク質としては、カゼインナトリウム等の乳タンパク質、大豆タンパク質、えんどうタンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質等を挙げることができる。
【0023】
安定剤としては、寒天、ゼラチン、ペクチン、カラギナン、カードラン、マンナン、アルギン酸、アルギン酸塩、多糖類、大豆多糖類、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、タラガム、トラガントガム、ジェランガム、アラビアガム等を挙げることができる。pH調整剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等を挙げることができる。
【0024】
食品用乳化剤としては、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びレシチン以外の食品用乳化剤を挙げることができ、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0025】
酸化防止剤としては、トコフェロール、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸塩、L-アスコルビン酸脂肪酸エステル、茶抽出物、ヤマモモ抽出物、ローズマリー抽出物、リン酸塩等を挙げることができる。着色料としては、β-カロテン、クチナシ色素、ベニバナ色素等を挙げることができる。
【0026】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤の製造方法は、特に制限はなく、自体公知の方法を用いることができるが、例えば、油脂にグリセリンコハク酸脂肪酸エステル、所望によりレシチンを溶解し、液状、ペースト状あるいは半固形状製剤にする方法、油脂にグリセリンコハク酸脂肪酸エステル、所望によりレシチンを溶解し、さらに水、多価アルコール等の水相を添加した混合液を乳化し、乳化製剤にする方法等を挙げることができる。
【0027】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤の使用対象であるケーキ生地は、各種ケーキ原料を混合し、起泡させた加熱処理前の生地をいい、ケーキ生地を焼成、スチーム等の加熱処理を施すことで、ケーキを得ることができる。ケーキ生地に用いられるケーキ原料としては、小麦粉、大麦粉、そば粉、米粉等の穀粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉等の澱粉、これら澱粉に酸処理、アルカリ処理、酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、リン酸化処理、架橋処理、加熱処理、α化処理、粉砕処理、酵素処理等を施した加工澱粉、上白糖、グラニュー糖、黒糖等の糖類、牛乳、濃縮乳、生クリーム、全粉乳、脱脂粉乳、練乳、チーズ等の乳製品、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、コメ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、豚脂、牛脂、魚油、乳脂、バター等の油脂、全卵、果実類、果実加工品、種実類、ココアパウダー、食塩、洋酒類、起泡剤、ベーキングパウダー等の膨張剤、甘味料、酸味料、香料、着色料、水等の一般的にケーキ原材として使用されるものを挙げることができる。
【0028】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤の使用方法は、ケーキ生地に添加し得る方法であれば、特に制限はないが、ケーキ生地の製造工程で直接添加する方法等を挙げることができる。
【0029】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤の使用対象であるケーキ生地の製造方法は、特に制限はないが、例えば、全卵を起泡させた後に小麦粉等と合わせる共立て法、卵黄と卵白を別々に起泡させた後に小麦粉等と合わせる別立て法、ケーキ原料全てを混合した後に起泡させてケーキ生地を製造するオールインミックス法等を挙げることができる。得られたケーキ生地は、焼成、スチーム等の加熱処理を施すことでケーキを得る。
【0030】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤の使用量は、ケーキ生地に含まれる小麦粉等の穀粉100質量部に対して1~25質量部が好ましく、3~20質量部がより好ましく、5~15質量部がさらに好ましい。
【0031】
本発明のケーキ生地用気泡安定剤を使用できるケーキは、特に制限はないが、例えば、スポンジケーキ、ロールケーキ、バタースポンジケーキ、パウンドケーキ、シフォンケーキ、マドレーヌ、マフィン、パンケーキ、バウムクーヘン、カステラ、どら焼き、蒸しケーキ、蒸しパン等を挙げることができる。これらの中でも、バウムクーヘンは、ケーキ生地が製造工程において高温に長時間さらされやすく、ケーキ生地の分離、及び比重の上昇が起きやすいため、本発明のケーキ生地用気泡安定剤を好ましく用いることができる。
【0032】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例0033】
[ケーキ生地用気泡安定剤の作製]
(1)原料
1)グリセリンコハク酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムB-10;グリセリンコハク酸ステアリン酸エステル;理研ビタミン社製)
2)グリセリンクエン酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムK-30;理研ビタミン社製)
3)グリセリン脂肪酸エステル(商品名:エマルジーP-100;理研ビタミン社製)
4)レシチン(商品名:SLPペースト;粗製レシチン;辻製油社製)
5)菜種油(商品名:なたねサラダ油;ボーソー油脂社製)
【0034】
(2)作製方法
各試験区において、得られるケーキ生地用気泡安定剤が500gとなるよう、表1に記載の含有量(質量%)に従って全ての原料を1Lステンレスビーカーに投入し、80℃で約10分間加熱混合した。その後、静置放冷し、ケーキ生地用気泡安定剤1~7を得た。なお、ケーキ生地用気泡安定剤1~4が実施例であり、ケーキ生地用気泡安定剤5~7が比較例である。
【0035】
【0036】
[ケーキ生地(バウムクーヘン生地)の作製及び評価]
(1)原料
1)液卵(商品名:エクセルエッグHV;キユーピータマゴ社製)
2)上白糖(商品名:上白糖ST;フジ日本製糖社製)
3)小麦粉(商品名:バイオレット;日清製粉社製)
4)とうもろこし澱粉(商品名:コーンスターチY-4P;日本コーンスターチ社製)
5)ベーキングパウダー(商品名:ベーキングパウダーO#1;オリエンタル酵母工業社製)
6)起泡剤(商品名:パティグラース-500;理研ビタミン社製)
7)無塩バター(商品名:森永バター;森永乳業社製)
8)牛乳(商品名:明治おいしい牛乳;明治社製)
9)ラム酒(商品名:ネプチューン ラム ダーク スペリオール;合同酒精社製)
10)製菓用油脂(商品名:パティグラースBK-1;理研ビタミン社製)
11)ケーキ生地用気泡安定剤1~7
【0037】
(2)ケーキ生地の作製
各試験区において、表2に記載の無塩バター60gを70℃に加温し、液状とした。次に、各試験区において、表2に記載の原料について、液卵270g、上白糖165g、小麦粉75g、とうもろこし澱粉75g、ベーキングパウダー3g、起泡剤6g、製菓用油脂75g又は60g、及びケーキ生地用気泡安定剤1~7のいずれか15gを5クォートミキサー(型式:万能混合攪拌機5DMr;品川工業所社製)に投入し、ワイヤーホイッパーで低速1分間、均質に混合した後、高速にて比重が0.5g/mlになるまで起泡させた。次に、各試験区において、低速で混合しながら、牛乳45g、ラム酒3gを投入後、液状とした無塩バターを投入し、低速30秒間、均質に混合し、ケーキ生地1~8を作製した。
【0038】
【0039】
(3)ケーキ生地の気泡安定性評価
ケーキ生地の気泡安定性評価は、ケーキ生地1~8それぞれを300mlビーカーに投入し、ビーカーを50℃の恒温槽に湯せんした状態で静置し、60分間加温した上で、加温60分後のビーカー内のケーキ生地の分離状態を目視で確認すること、及びケーキ生地の比重(g/ml)を測定することで実施した。なお、ケーキ生地の比重(g/ml)は、加温60分後のビーカー内のケーキ生地をスパチュラで攪拌し、均一にした後に測定した。気泡安定性評価は、表3に記載の評価基準により評価し、「◎」及び「○」を本発明の効果を満足するものとした。評価結果を表4に示す。
【0040】
【0041】
【0042】
表4のとおり、実施例であるケーキ生地用気泡安定剤1~4を含有するケーキ生地1~4は、いずれの評価項目においても、評価が「◎」又は「○」であり、気泡安定性に優れていることがわかった。これらの中でも、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルの含有量が高いケーキ生地用気泡安定剤3、及びレシチンを併用したケーキ生地用気泡安定剤4は、これらを添加したケーキ生地の比重が特に低い結果となったため、好ましいことがわかった。
一方、比較例であるケーキ生地用気泡安定剤5~7を含有するケーキ生地5~7、及びケーキ生地用気泡安定剤を含有しないケーキ生地8は、いずれの評価項目においても、評価が「△」又は「×」であり、安定性に乏しいことがわかった。
よって、本発明のケーキ生地用気泡安定剤は、ケーキ生地の気泡安定性を向上させることがわかった。