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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138938
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】車体の姿勢制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20241002BHJP
   B60T 8/1755 20060101ALI20241002BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20241002BHJP
   B60W 10/184 20120101ALI20241002BHJP
   B60W 40/076 20120101ALI20241002BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B60W30/02
B60T8/1755 Z
B60W10/04
B60W10/184
B60W40/076
F02D29/02 311Z
F02D29/02 341
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049670
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】阿部 公彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰弘
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
3G093
【Fターム(参考)】
3D241AD10
3D241AD41
3D241AE12
3D241AE41
3D241BA18
3D241BA51
3D241BB02
3D241BB05
3D241BC06
3D241CA02
3D241CC01
3D241CC08
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DC45Z
3D246DA01
3D246EA02
3D246GA08
3D246GC07
3D246GC14
3D246HA02A
3D246HA08A
3D246HA86A
3D246HA94A
3D246HB07A
3D246HC03
3D246HC13
3D246JA12
3D246JB02
3D246JB11
3D246JB22
3D246JB43
3G093BA02
3G093CB06
3G093CB07
3G093DA06
3G093DB15
(57)【要約】
【課題】登坂路において、走行している車両の減速停止時および停止している車両の発進加速時に車両の乗員に与える不快感を抑制する
【解決手段】前輪12Fおよび後輪12Rに制動力を付与する制動力制御部128と、少なくとも後輪12Rに駆動力を付与する駆動力制御部130と、を備え、制動力制御部128が車両10の減速停止時および車両10の発進加速時に前輪12Fに制動力を付与し、駆動力制御部130が減速停止時および発進加速時に後輪12Rに駆動力を付与する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および後輪に制動力を付与する制動力制御部と、
少なくとも前記後輪に駆動力を付与する駆動力制御部と、を備え、
前記制動力制御部は、車両の減速停止時および前記車両の発進加速時に、前記前輪に前記制動力を付与し、
前記駆動力制御部は、前記減速停止時および前記発進加速時に、前記後輪に前記駆動力を付与する、
ことを特徴とする車両の姿勢制御装置。
【請求項2】
前記車両が走行している走行路の路面勾配を検出する勾配検出部をさらに備え、
前記制動力制御部は、検出された前記路面勾配に対応する前記制動力を前記前輪に付与し、
前記駆動力制御部は、検出された前記路面勾配に対応する前記駆動力を前記後輪に付与する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記制動力制御部は、前記減速停止時において、前記車両を停止させるための前記制動力に、前記後輪に付与された前記駆動力に相当する前記制動力を加算した前記制動力を、前記前輪に付与する、
ことを特徴とする請求項2記載の車両の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記駆動力制御部は、前記発進加速時において、前記車両を発進させるための前記駆動力に、前記前輪に付与された前記制動力に相当する前記駆動力を加算した前記駆動力を、前記後輪に付与する、
ことを特徴とする請求項2記載の車両の姿勢制御装置。
【請求項5】
前記車両の車速を検出する速度検出部と、
前記車両の加減速度を検出する加減速度検出部と、をさらに備え、
前記制動力制御部は、検出された前記車速または前記加減速度に対応する前記制動力を前記前輪に付与し、
前記駆動力制御部は、検出された前記車速または前記加減速度に対応する前記駆動力を前記後輪に付与する、
ことを特徴とする請求項3または4記載の車両の姿勢制御装置。
【請求項6】
前記車両の運転者によるブレーキ操作量を検出するブレーキ検出部と、
前記運転者によるアクセル操作量を検出するアクセル検出部と、
検出された前記ブレーキ操作量または前記アクセル操作量に基づいて前記運転者による要求加減速度を算出する要求加減速度算出部と、をさらに備え、
前記制動力制御部は、算出された前記要求加減速度に対応する前記制動力を前記前輪に付与し、
前記駆動力制御部は、算出された前記要求加減速度に対応する前記駆動力を前記後輪に付与する、
ことを特徴とする請求項5記載の車両の姿勢制御装置。
【請求項7】
検出された前記車速、前記加減速度、および前記ブレーキ操作量に基づいて、前記運転者が前記車両を停止させる停車意思を有しているか否かを判定する停車意思判定部をさらに備え、
前記制動力制御部は、前記運転者が前記停車意思を有している場合、前記減速停止時と判断し、前記前輪に前記制動力を付与し、
前記駆動力制御部は、前記運転者が前記停車意思を有している場合、前記減速停止時と判断し、前記後輪に前記駆動力を付与する、
ことを特徴とする請求項6記載の車両の姿勢制御装置。
【請求項8】
検出された前記車速、前記加減速度、および前記アクセル操作量に基づいて、前記運転者が前記車両を発進させる発進意思を有しているか否かを判定する発進意思判定部をさらに備え、
前記制動力制御部は、前記運転者が前記発進意思を有している場合、前記発進加速時と判断し、前記前輪に前記制動力を付与し、
前記駆動力制御部は、前記運転者が前記発進意思を有している場合、前記発進加速時と判断し、前記後輪に前記駆動力を付与する、
ことを特徴とする請求項6記載の車両の姿勢制御装置。
【請求項9】
前記制動力制御部は、前記発進加速時に付与する前記前輪への前記制動力を所定時間保持する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両の姿勢制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の姿勢制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
登坂路を走行している車両を停止させる場合に、ブレーキを踏んで減速させると車体が前のめりになるノーズダイブが発生し、その後車両が完全停止すると、その反動および重力による後ろ向きの力により揺り返され、ピッチング挙動が発生する。一方、登坂路に停止している車両を発進させる場合、アクセルを踏んで加速させると車体の前部が浮き上がるスクワット(テールスクワット)が発生する。
【0003】
そこで、登坂路においても平坦路と同様の減速停車時のフィーリングを得る車両の走行制御装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の車両走行制御装置は、車両が停止直前と判断された時点で所定以上の路面勾配が検出されている場合、制動力を一時減圧した後に増圧する制御と並行して、所定のトルク要求を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-137732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の走行制御装置は、車両の減速停止時のピッチング抑制に特化されているため、登坂路を走行している車両を停止させ、その後停止している車両を発進させる場合の車体の姿勢まで制御することはできない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、登坂路において、走行している車両の減速停止時および停止している車両の発進加速時に車両の乗員に与える不快感を抑制する車両の姿勢制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため本発明の一実施の形態は、前輪および後輪に制動力を付与する制動力制御部と、少なくとも前記後輪に駆動力を付与する駆動力制御部と、を備え、前記制動力制御部は、車両の減速停止時および前記車両の発進加速時に、前記前輪に前記制動力を付与し、前記駆動力制御部は、前記減速停止時および前記発進加速時に、前記後輪に前記駆動力を付与することを特徴とする。
また、前記車両が走行している走行路の路面勾配を検出する勾配検出部をさらに備え、前記制動力制御部は、検出された前記路面勾配に対応する前記制動力を前記前輪に付与し、前記駆動力制御部は、検出された前記路面勾配に対応する前記駆動力を前記後輪に付与することを特徴とする。
また、前記制動力制御部は、前記減速停止時において、前記車両を停止させるための前記制動力に、前記後輪に付与された前記駆動力に相当する前記制動力を加算した前記制動力を、前記前輪に付与することを特徴とする。
また、前記駆動力制御部は、前記発進加速時において、前記車両を発進させるための前記駆動力に、前記前輪に付与された前記制動力に相当する前記駆動力を加算した前記駆動力を、前記後輪に付与することを特徴とする。
また、前記車両の車速を検出する速度検出部と、前記車両の加減速度を検出する加減速度検出部と、をさらに備え、前記制動力制御部は、検出された前記車速または前記加減速度に対応する前記制動力を前記前輪に付与し、前記駆動力制御部は、検出された前記車速または前記加減速度に対応する前記駆動力を前記後輪に付与することを特徴とする。
また、前記車両の運転者によるブレーキ操作量を検出するブレーキ検出部と、前記運転者によるアクセル操作量を検出するアクセル検出部と、検出された前記ブレーキ操作量または前記アクセル操作量に基づいて前記運転者による要求加減速度を算出する要求加減速度算出部と、をさらに備え、前記制動力制御部は、算出された前記要求加減速度に対応する前記制動力を前記前輪に付与し、前記駆動力制御部は、算出された前記要求加減速度に対応する前記駆動力を前記後輪に付与することを特徴とする。
また、検出された前記車速、前記加減速度、および前記ブレーキ操作量に基づいて、前記運転者が前記車両を停止させる停車意思を有しているか否かを判定する停車意思判定部をさらに備え、前記制動力制御部は、前記運転者が前記停車意思を有している場合、前記減速停止時と判断し、前記前輪に前記制動力を付与し、前記駆動力制御部は、前記運転者が前記停車意思を有している場合、前記減速停止時と判断し、前記後輪に前記駆動力を付与することを特徴とする。
また、検出された前記車速、前記加減速度、および前記アクセル操作量に基づいて、前記運転者が前記車両を発進させる発進意思を有しているか否かを判定する発進意思判定部をさらに備え、前記制動力制御部は、前記運転者が前記発進意思を有している場合、前記発進加速時と判断し、前記前輪に前記制動力を付与し、前記駆動力制御部は、前記運転者が前記発進意思を有している場合、前記発進加速時と判断し、前記後輪に前記駆動力を付与することを特徴とする。
また、前記制動力制御部は、前記発進加速時に付与する前記前輪への前記制動力を所定時間保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施の形態によれば、制動力制御部が車両の減速停止時および車両の発進加速時に前輪に制動力を付与し、駆動力制御部が減速停止時および発進加速時に後輪に駆動力を付与することにより、登坂路において、走行している車両の減速停止時および停止している車両の発進加速時に車両の乗員に与える不快感を抑制する上で有利となる。すなわち、減速停止時に後輪に駆動力を付与することで車体のノーズダイブを抑制でき、発進加速時に前輪に制動力を付与することで車体のテールスクワットを抑制でき、車両の乗員に与える不快感を抑制する上で有利となる。
また、車両が走行している走行路の路面勾配を検出し、制動力制御部が路面勾配に対応する制動力を前輪に付与し、駆動力制御部が路面勾配に対応する駆動力を後輪に付与する構成とすれば、登坂路において、走行している車両の減速停止時および停止している車両の発進加速時に車両の乗員に与える不快感を抑制する上で有利となる。
また、制動力制御部が、減速停止時において、車両を停止させるための制動力に、後輪に付与された駆動力に相当する制動力を加算した制動力を前輪に付与する構成とすれば、後輪に付与された駆動力により車両の減速停止が妨げられることを抑制する上で有利となる。
また、駆動力制御部が、発進加速時において、車両を発進させるための駆動力に、前輪に付与された制動力に相当する駆動力を加算した駆動力を後輪に付与する構成とすれば、前輪に付与された制動力により車両の発進加速が妨げられることを抑制する上で有利となる。
また、車両の車速や加減速度を検出し、制動力制御部が車速または加減速度に対応する制動力を前輪に付与し、駆動力制御部が車速または加減速度に対応する駆動力を後輪に付与する構成とすれば、車両の走行状況に合わせた制動力および駆動力を付与する上で有利となる。
また、車両の運転者によるブレーキ操作量またはアクセル操作量に基づいて運転者による要求加減速度を算出し、制動力制御部が要求加減速度に対応する制動力を前輪に付与し、駆動力制御部が要求加減速度に対応する駆動力を後輪に付与する構成とすれば、運転者による操作量に基づく要求加減速度を考慮して制動力および駆動力を付与する上で有利となる。
また、運転者が車両を停止させる停車意思を有している場合に減速停止時と判定し、制動力制御部が前輪に制動力を付与し、駆動力制御部が後輪に駆動力を付与する構成とすれば、運転者の意思に基づく減速停止時に制動力および駆動力を付与する上で有利となる。
また、運転者が車両を発進させる発進意思を有している場合に発進加速時と判定し、制動力制御部が前輪に制動力を付与し、駆動力制御部が後輪に駆動力を付与する構成とすれば、運転者の意思に基づく発進加速時時に制動力および駆動力を付与する上で有利となる。
また、制動力制御部が発進加速時に付与する前輪への制動力を所定時間保持する構成とすれば、車体のテールスクワットを確実に抑制でき、車両の乗員に与える不快感を抑制する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)は登坂路を上がっていく従来の車両の状態を示す説明図であり、(B)は登坂路を上がっていく本実施の形態の車両の状態を示す説明図である。
図2】本実施の形態の車両の構成を示す概略図である。
図3】本実施の形態の車両の機能構成図である。
図4】(A)は従来の車両の速度および加減速度を示す図であり、(B)は本実施の形態の車両の速度および加減速度を示す図であり、(C)は従来の車両と本実施の形態の車両の速度および加減速度を示す図である。
図5】(A)は従来の車両の制動力を示す図であり、(B)は本実施の形態の車両の制動力を示す図であり、(C)は従来の車両と本実施の形態の車両の制動力を示す図である。
図6】(A)は従来の車両の駆動力を示す図であり、(B)は本実施の形態の車両の駆動力を示す図であり、(C)は従来の車両と本実施の形態の車両の駆動力を示す図である。
図7】(A)は従来の車両のピッチング角を示す図であり、(B)は本実施の形態の車両のピッチング角を示す図であり、(C)は従来の車両と本実施の形態の車両のピッチング角を示す図である。
図8】本実施の形態の車両の姿勢制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態の車両の姿勢制御装置は、車両10に設けられた車輪(前輪12F、後輪12R)に付与する制動力および駆動力を制御することで車両10の姿勢を制御するものである。まず、図1を参照して、本実施の形態の車両10の姿勢制御処理の概要を、当該処理を行っていない従来の車両90と比較して説明する。
【0011】
図1では、左から右に上がる登坂路において、左から右に上がっていく車両の状態を示しており、(A)(B)ともに左から、
(a)車両が減速し停車に向かっている状態
(b)車両が停車した直後の状態
(c)車両が停車中である状態
(d)車両が発進し加速していく状態
を示している。
【0012】
まず、従来の車両90について説明する。図1(A)に示す従来の車両90は、前輪92Fおよび後輪92Rが設けられている。従来の車両90では、(a)、(b)の状態において、前輪92Fおよび後輪92Rに進行方向(X1方向)と反対方向(X2方向)の制動力が付与されている。そうすると、(a)の状態では、車体が前のめりになるノーズダイブが発生し、(b)の状態では、その反動および重力による後ろ向きの力により揺り返され、ピッチング挙動が発生してしまう。
【0013】
(c)の状態では、前輪92Fおよび後輪92RにX2方向の制動力が付与され停車している。そして、(d)の状態において、後輪92RのみにX1方向の駆動力が付与されている。そうすると、(d)の状態では、車体の前部が浮き上がるテールスクワットが発生してしまう。
【0014】
次に、本実施の形態の車両10について説明する。図1(B)に示す本実施の形態の車両10では、(a)、(b)の状態において、前輪12FにX2方向の制動力が付与されるとともに、後輪12RにX1方向の駆動力が付与されている。このように後輪12RにはX1方向の駆動力が付与されていると、車両10の減速停車時に車体が前のめりになることを抑制でき、さらに、後輪12Rに付与される駆動力よりも前輪12Fに付与される制動力よりの方が大きいため、車両10は減速していく。
【0015】
(c)の状態では、前輪12Fおよび後輪12RにX2方向の制動力が付与され停車している。そして、(d)の状態において、前輪12FにX2方向の制動力が付与されるとともに、後輪12RにX1方向の駆動力が付与されている。このように前輪12FにX1方向の制動力が付与されていると、車両10の発進加速時に車体の前部が浮き上がることを抑制できし、さらに、前輪12Fに付与されている制動力よりも後輪12Rに付与されている駆動力の方が大きいため、車両10は発進し加速していく。
【0016】
次に、図2を参照して、本実施の形態の車両10の構成について説明する。図2に示すように、車両10は、エンジン14とモータ16とを駆動力源として備えたハイブリッド車である。また、車両10は、エンジン14が車体の前方に配置され、駆動輪である後輪12Rが車体の後方に配置された、いわゆるFR車(フロントエンジン・後輪駆動車)である。本実施の形態では、ハイブリッド車を例に挙げて説明するが、車両はモータのみを搭載した電気自動車であってもよいし、前輪および後輪を駆動輪とする4輪駆動であってもよい。
【0017】
車両10には、エンジン14、モータ16の他、駆動系の装置として、バッテリ18、変速機20、デファレンシャルギア22などが備えられている。また、車両10には、制御系の装置として、ECU24(エンジンコントロールユニット)、MCU26(モータコントロールユニット)、TCU28(変速機コントロールユニット)、BCU30(ブレーキコントロールユニット)などが備えられている。
【0018】
エンジン14は、ガソリンを燃料に使用して燃焼を行う内燃機関であり、吸気、圧縮、膨張、排気の各サイクルを繰り返すことで回転動力を発生させる4サイクルエンジンである。エンジン14は、車幅方向の中央部に配置され、車体の前後に延在する出力軸により回転動力を出力している。なお、車両10には、吸気システム、排気システム、燃量供給システムなど、エンジンに付随した不図示の様々な装置や機構が設置されている。また、エンジン14は、ディーゼルエンジンを使用した内燃機関など、公知の様々なものを適用することができる。
【0019】
モータ16は、不図示のクラッチを介してエンジン14の後方に直列に配置されている。モータ16は、例えば、永久磁石式同期電動機などの発電機能のあるモータ(モータ・ジェネレータ:MG)である。モータ16の回転動力は、不図示のクラッチを介して変速機20に出力される。バッテリ18は、車両10がモータ16の駆動力を利用して走行する場合に、モータ16に電力を供給する。
【0020】
変速機20は、多段式自動変速機(AT)であり、一方の端部に設けられた入力軸32が不図示のクラッチを介してモータ16に接続され、他方の端部には入力軸32から独立した状態で回転する出力軸34が設けられている。これら入力軸32と出力軸34との間には、複数の歯車機構や変速機クラッチなどからなる変速機構が組み込まれており、変速機構を切り替えることにより、前進または後進の切り替えや、変速機20の入力軸32と出力軸34との間で異なる回転数に変更、つまり変速比の切り替えができるように構成されている。
【0021】
出力軸34は、車両10の前後方向に延在し、同軸に配置されているプロペラシャフト36を介してデファレンシャルギア22に連結されている。デファレンシャルギア22には、車幅方向に延在し、左右の後輪12R(駆動輪)に連結された一対の駆動シャフト38が連結されている。プロペラシャフト36を通じて出力される回転動力は、デファレンシャルギア22で振り分けられた後、これら一対の駆動シャフト38を通じて左右の後輪12R(駆動輪)に伝達される。また、各車輪12F、12Rには、その回転を制動するために、ブレーキ40が取り付けられている。
【0022】
車両10には、運転者の操作に応じて、その走行をコントロールするために、上述した、ECU24、MCU26、TCU28、およびBCU30の各ユニットが設置されている。これらユニットの各々は、プロセッサ、メモリ、インターフェースなどのハードウェアと、データベースや制御プログラムなどのソフトウェアとで構成されている。
【0023】
ECU24は、エンジン14の作動を主に制御するユニットである。MCU26は、モータ16の作動を主に制御するユニットである。TCU28は、変速機20の作動を主に制御するユニットである。BCU30は、ブレーキ40の作動を主に制御するユニットである。本実施の形態の車両の姿勢制御装置はこれらのユニットによって構成され、互いに協働することによって、後述する様々な処理が実行される。
【0024】
次に、図3を参照して車両の姿勢制御装置について説明する。図3に示すように、車両の姿勢制御装置100は、アクセルペダル102と、アクセルセンサ104と、ブレーキペダル106と、ブレーキセンサ108と、速度センサ110と、加速度センサ112と、勾配センサ114と、制御部120とを備えている。制御部120は、さらに、停車意思判定部122と、発進意思判定部124と、要求加減速度算出部126と、制動力制御部128と、駆動力制御部130と、を備えて構成されている。
【0025】
アクセルペダル102は、運転者が足で踏み込むことにより駆動力を操作する操作部材である。車両10は、アクセルペダル102を踏み込むことで加速し、踏み込みを戻す(足を離す)ことで減速する。アクセルセンサ104は、アクセルペダル102に取り付けられており、運転者によるアクセルペダル102の操作量(ブレーキ操作量)を検出する。
【0026】
ブレーキペダル106は、運転者が足で踏み込むことにより制動力を操作する操作部材である。ブレーキペダル106を踏み込むことでブレーキを作動させて減速する。ブレーキセンサ108は、ブレーキペダル106に取り付けられており、運転者によるブレーキペダル106の操作量(ブレーキ操作量)を検出する。
【0027】
速度センサ110は、車両10の車速を検出するものであり、例えば車輪12F、12Rの回転数を検出し、その回転数を検出信号として出力する。加速度センサ112は、車両10の加減速度を検出する。加減速度とは、加速度および減速度の両方を示しており、加速度は単位時間あたりの速度の増加分、減速度は単位時間あたりの速度の減少分である。
【0028】
勾配センサ114は、車両10が走行している走行路の路面勾配を検出するものであり、例えばジャイロセンサや加速度センサ等である。これに代えてまたはこれとともに、GPS等の測位装置によって車両の地理的位置を取得し、この地理的位置に基づいて地図データ等から勾配を取得してもよい。
【0029】
停車意思判定部122は、速度センサ110により検出された車速、加速度センサ112により検出された加減速度、およびブレーキセンサ108により検出されたブレーキ操作量に基づいて、運転者が車両10を停止させる停車意思を有しているか否かを判定する。停車意思判定部122は、例えば、ブレーキ操作量からブレーキペダル106が踏み込まれたと判断した時点の車速および減速度から、予め定めた時間経過した場合(例えば3秒後)の速度を予測する。そして、停車意思判定部122は、予測した速度が予め定められた閾値未満である場合に、運転者に停車意思があると判定し、予測した速度が閾値以上である場合には、運転者に停車意思がないと判定する。
【0030】
発進意思判定部124は、速度センサ110により検出された車速、加速度センサ112により検出された加減速度、およびアクセルセンサ104により検出されたアクセル操作量に基づいて、運転者が車両10を発進させる発進意思を有しているか否かを判定する。発進意思判定部124は、例えば、アクセル操作量からアクセルペダル102が踏み込まれたと判断した時点の車速および加速度から、予め定めた時間経過した場合(例えば3秒後)の速度を予測する。そして、発進意思判定部124は、予測した速度が予め定められた閾値以上である場合に、運転者に発進意思があると判定し、予測した速度が閾値未満である場合には、運転者に発進意思がないと判定する。
【0031】
要求加減速度算出部126は、ブレーキセンサ108により検出されたブレーキ操作量またはアクセルセンサ104により検出されたアクセル操作量に基づいて、運転者による要求加減速度、すなわち運転者が車両10に対して要求する加減速度を算出する。例えば、要求加減速度は、ブレーキ操作量が大きくなるほど要求減速度が大きくなり、アクセル操作量が大きくなるほど要求加速度が大きくなる。例えば、要求加減速度算出部126は、それら操作量と減速度や加速度とを予め対応付けて記憶した対応表を参照して、操作量に対応する減速度や加速度を算出する。
【0032】
制動力制御部128は、車輪12F、12Rに取り付けられたブレーキ40により、車両10の前輪12Fおよび後輪12Rに制動力を付与する。本実施の形態の車両の姿勢制御処理では、制動力制御部128は、走行中の車両10が減速して停止する減速停止時、および停車中の車両10が発進して加速する発進加速時に、前輪12Fに制動力を付与する。
【0033】
また、制動力制御部128は、減速停止時および発進加速時において、勾配センサ114により検出された路面勾配に対応する制動力を前輪12Fに付与する。すなわち、登坂路の勾配が大きいほど車両10に重力がかかるため、制動力制御部128は、重力を考慮した制動力を前輪12Fに付与する。
【0034】
また、制動力制御部128は、減速停止時において、車両10を停止させるための制動力に、駆動力制御部130により後輪12Rに付与された駆動力に相当する制動力を加算した制動力を、前輪12Fに付与する。すなわち、後輪12Rに付与された駆動力により車両10の減速を妨げられないよう、制動力制御部128は、駆動力を打ち消す制動力を前輪12Fに加算する。
【0035】
また、制動力制御部128は、減速停止時および発進加速時において、速度センサ110により検出された車速または加速度センサ112により検出された加減速度に対応する制動力を前輪12Fに付与する。すなわち、制動力制御部128は、車両10の速度や加減速度を考慮した制動力を前輪12Fに付与する。
【0036】
また、制動力制御部128は、減速停止時および発進加速時において、要求加減速度算出部126により算出された要求加減速度に対応する制動力を前輪12Fに付与する。すなわち、制動力制御部128は、運転者が意図する加減速度を考慮した制動力を前輪12Fに付与する。
【0037】
また、制動力制御部128は、停車意思判定部122により運転者が停車意思を有していると判定された場合、減速停止時と判断し、前輪12Fに制動力を付与する。また、制動力制御部128は、発進意思判定部124により運転者が発進意思を有していると判定された場合、発進加速時と判断し、前輪12Fに制動力を付与する。
【0038】
また、制動力制御部128は、車体のテールスクワットを確実に抑制できるように、発進加速時に付与する前輪12Fへの制動力を所定時間保持する。
【0039】
駆動力制御部130は、車両10に設けられたエンジン14、モータ16などにより、車両10の後輪12Rに駆動力を付与する。本実施の形態の車両の姿勢制御処理では、駆動力制御部130は、走行中の車両10が減速して停止する減速停止時、および停車中の車両10が発進して加速する発進加速時に、後輪12Rに駆動力を付与する。
【0040】
また、駆動力制御部130は、減速停止時および発進加速時において、勾配センサ114により検出された路面勾配に対応する駆動力を後輪12Rに付与する。すなわち、登坂路の勾配が大きいほど車両10に重力がかかるため、駆動力制御部130は、重力を考慮した駆動力を後輪12Rに付与する。
【0041】
また、駆動力制御部130は、発進加速時において、車両10を発進させるための駆動力に、制動力制御部128により前輪12Fに付与された制動力に相当する駆動力を加算した駆動力を、後輪12Rに付与する。すなわち、前輪12Fに付与された制動力により車両10の加速を妨げられないよう、駆動力制御部130は、制動力を打ち消す駆動力を後輪12Rに加算する。
【0042】
また、駆動力制御部130は、減速停止時および発進加速時において、速度センサ110により検出された車速または加速度センサ112により検出された加減速度に対応する駆動力を後輪12Rに付与する。すなわち、駆動力制御部130は、車両10の速度や加減速度を考慮した駆動力を後輪12Rに付与する。
【0043】
また、駆動力制御部130は、減速停止時および発進加速時において、要求加減速度算出部126により算出された要求加減速度に対応する駆動力を後輪12Rに付与する。すなわち、駆動力制御部130は、運転者が意図する加減速度を考慮した駆動力を後輪12Rに付与する。
【0044】
また、駆動力制御部130は、停車意思判定部122により運転者が停車意思を有していると判定された場合、減速停止時と判断し、後輪12Rに駆動力を付与する。また、駆動力制御部130は、発進意思判定部124により運転者が発進意思を有していると判定された場合、発進加速時と判断し、後輪12Rに駆動力を付与する。
【0045】
次に、図4図7を参照して、本実施の形態の車両の姿勢制御処理を行った車両10の速度および加減速度、制動力、駆動力、ピッチング角について、従来の車両90と比較しながら説明する。車両90および車両10は登坂路を上っており、図4図7では、時刻t0~t11を横軸にとり、速度および加減速度、制動力、駆動力、ピッチング角それぞれ縦軸にとった折れ線グラフで表している。
【0046】
まず、車両90と車両10の速度および加減速度について説明する。図4(A)~(C)に示すように、車両90と車両10の速度および加減速度は、時刻t0~t11の間で全て同一となっている。具体的には、車両90および車両10はともに、時刻t0~t1で登坂路を走行しており、時刻t1~t4で減速していき停止に向かっている(図1(a)参照)。そして、車両90および車両10はともに、時刻t4~t7の間は停車中で(図1(b)(c)参照)、時刻t7~t10で発進して加速していき(図1(d)参照)、時刻t10~t11で再び登坂路を走行している。
速度および加減速度は車両90および車両10ともに、以下のようになっている。
t0~t1(登坂路走行) :速度v1/加減速度0
t1~t4(減速停止時) :速度v1から0/加減速度a1
t4~t7(停車中) :速度0/加減速度0
t7~t10(発進加速時) :速度0からv1/加減速度-a2
t10~t11(登坂路走行):速度v1/加減速度0
【0047】
次に、車両90および車両10の制動力について説明する。図5(A)に示すように、車両90の前輪12Fに付与される制動力は以下のようになっている。
t0~t1 :制動力0
t1~t7 :制動力b1
t7~t11 :制動力0
一方、図5(B)に示すように、車両10の前輪12Fに付与される制動力は以下のようになっている。なお、制動力は、b1<b2である。
t0~t1 :制動力0
t1~t1´ :制動力b1
t1´~t4 :制動力b2
t4~t7´ :制動力b1
t7´~t11 :制動力0
これらを重ね合わせた図5(C)を参照すると、減速停止時の時刻t1´~t4、および発進加速時の時刻t7~t7´において、車両10の制動力が車両90の制動力より大きくなっている。
【0048】
次に、車両90および車両10の駆動力について説明する。図6(A)に示すように、車両90の後輪12Rに付与される駆動力は以下のようになっている。なお、駆動力は、d2<d3である。
t0~t1 :駆動力d2
t1~t7 :駆動力0
t7~t10 :駆動力d3
t10~t11 :駆動力d2
一方、図6(B)に示すように、車両10の後輪12Rに付与される駆動力は以下のようになっている。なお、駆動力は、d1<d2<d3<d4である。
t0~t1 :駆動力d2
t1~t1´ :駆動力0
t1´~t4 :駆動力d1
t4~t7 :駆動力0
t7~t7´ :駆動力d4
t7´~t10 :駆動力d3
t10~t11 :駆動力d2
これらを重ね合わせた図6(C)を参照すると、減速停止時の時刻t1´~t4、および発進加速時の時刻t7~t7´において、車両10の駆動力が車両90の駆動力より大きくなっている。
【0049】
このように、図5、6に示すように、本実施の形態の車両10では、減速停止時(t1~t4)の時刻t1´~t4において、ノーズダイブや揺り返しによるピッチング挙動を回避するため後輪12Rに駆動力d1を付与している。したがって、その駆動力d1により車両10を停止させるための制動力を抑制しないように、付与した駆動力d1を打ち消すため、前輪12Fには制動力b1に、駆動力d1に相当する制動力(b2-b1分)を加算した制動力b2を付与している。
【0050】
また、本実施の形態の車両10では、発進加速時(t7~t10)の時刻t7~t7´において、テールスクワットを回避するため前輪12Fに制動力b1を付与している。したがって、その制動力b1により車両10を発進させるための駆動力を抑制しないように、付与した制動力b1を打ち消すため、後輪12Rには駆動力d3に、制動力b1に相当する駆動力(d4-d3分)を加算した制動力d4を付与している。
【0051】
このような図4図6の速度および加減速度、制動力、駆動力を踏まえ、車両90および車両10のピッチング角、すなわち車両の傾斜角について説明する。図5(A)、図6(A)に示すように、従来の車両90は、減速停止時(t1~t4)において、前輪12Fおよび後輪12Rに制動力を付与しているため、図7(A)に示すように、時刻t4前後でノーズダイブNが発生し(図1(A)の(a)参照)、時刻t4を超えたあたりで揺り返しによるピッチング挙動Pが発生している(図1(A)の(b)参照)。
【0052】
また、図5(A)、図6(A)に示すように、車両90は、発進加速時(t7~t10)において、後輪12Rに駆動力を付与するのみであるため、図7(A)に示すように、時刻t7を超えたあたりでテールスクワットSが発生している(図1(A)の(d)参照)。
【0053】
一方、図5(B)、図6(B)に示すように、本実施の形態の車両10は、減速停止時(t1~t4)において、前輪12Fに制動力、後輪12Rに駆動力を付与しているため、図7(B)に示すように、時刻t4付近でもピッチング角に大きな変化はなく、ノーズダイブやピッチング挙動は発生していない(図1(B)の(a)(b)参照)。
【0054】
また、図5(B)、図6(B)に示すように、車両10は、発進加速時(t7~t10)においても、前輪12Fに制動力、後輪12Rに駆動力を付与しているため、図7(B)に示すように、時刻t7を超えたあたりでもピッチング角に大きな変化はなく、テールスクワットは発生していない(図1(B)の(d)参照)。したがって、図7(C)に示すように、従来の車両90では、減速停止時の停止前後、および発進加速時の発進直後において、車両90の乗員に不快感を与えてしまうが、本実施の形態の車両10では、乗員に与える不快感を抑制できる。
【0055】
次に、本実施の形態の車両10による姿勢制御処理について説明する。図8は、本実施の形態の車両10による姿勢制御処理の流れを示すフローチャートである。以下では、車両10が登坂路を走行しており、その後、減速して停止し、再度発進し加速する場合について説明する。
【0056】
まず、車両10が登坂路を走行していると、制動力制御部128および駆動力制御部130は、勾配センサ114により検出された走行路の路面勾配から、所定の勾配以上の登坂路か否かを判定する(ステップS10)。平坦路、または所定の勾配未満の登坂路であった場合(ステップS10:NO)、ステップS10に戻る。
【0057】
一方、所定の勾配以上の登坂路であった場合(ステップS10:YES)、停車意思判定部122は、速度センサ110、加速度センサ112、およびブレーキセンサ108によりそれぞれ検出された車両10の車速、加減速度、およびブレーキ操作量に基づいて、運転者が停止意思を有しているか否かを判定する(ステップS12)。停止意思を有していないと判定した場合(ステップS12:NO)、ステップS10に戻り処理を繰り返す。
【0058】
一方、停止意思を有していると判定した場合(ステップS12:YES)、制動力制御部128および駆動力制御部130は、減速停止時の姿勢制御処理を実行する(ステップS14)。すなわち、制動力制御部128および駆動力制御部130は、路面勾配、車両10の車速および加減速度、要求加減速度算出部126により算出された要求加減速度に対応させた制動力および駆動力を、前輪12Fおよび後輪12Rにそれぞれ付与する。これにより、減速停止時におけるノーズダイブおよび揺り返しによるピッチング挙動を抑制できる。
【0059】
次に、制動力制御部128および駆動力制御部130は、速度および加速度により、車両10が停車したか否かを判断する(ステップS16)。車両10が停車していない場合(ステップS16:NO)、ステップS14に戻り停車するまで処理を繰り返す。
【0060】
一方、車両10が停車している場合(ステップS16:YES)、制動力制御部128および駆動力制御部130は、停車時の姿勢制御処理を実行する(ステップS18)。すなわち、制動力制御部128および駆動力制御部130は、駆動力を付与せず、制動力を前輪12Fおよび後輪12Rに付与した状態を保持することで、車体の傾斜角(ピッチング角)を保持する。
【0061】
次に、発進意思判定部124は、速度センサ110、加速度センサ112、およびアクセルセンサ104によりそれぞれ検出された車両10の車速、加減速度、およびアクセル操作量に基づいて、運転者が発進意思を有しているか否かを判定する(ステップS20)。発進意思を有していないと判定した場合(ステップS20:NO)、ステップS18に戻る。
【0062】
一方、発進意思を有していると判定した場合(ステップS20:YES)、制動力制御部128および駆動力制御部130は、発進加速時の姿勢制御処理を実行する(ステップS22)。すなわち、制動力制御部128および駆動力制御部130は、路面勾配、車両10の車速および加減速度、要求加減速度に対応させた制動力および駆動力を、前輪12Fおよび後輪12Rにそれぞれ付与する。そして、制動力制御部128による前輪12Fへの制動力は所定時間保持する。これにより、発進加速時におけるテールスクワットを抑制できる。
【0063】
このように、本実施の形態によれば、制動力制御部128が車両10の減速停止時および車両10の発進加速時に前輪12Fに制動力を付与し、駆動力制御部130が減速停止時および発進加速時に後輪12Rに駆動力を付与することにより、登坂路において、走行している車両10の減速停止時および停止している車両10の発進加速時に車両10の乗員に与える不快感を抑制する上で有利となる。
すなわち、減速停止時に後輪12Rに駆動力を付与することで車体のノーズダイブを抑制でき、発進加速時に前輪12Fに制動力を付与することで車体のテールスクワットを抑制でき、車両10の乗員に与える不快感を抑制する上で有利となる。
また、車両10が走行している走行路の路面勾配を検出し、制動力制御部128が路面勾配に対応する制動力を前輪12Fに付与し、駆動力制御部130が路面勾配に対応する駆動力を後輪12Rに付与する構成としたため、登坂路において、走行している車両10の減速停止時および停止している車両10の発進加速時に車両10の乗員に与える不快感を抑制する上で有利となる。
また、制動力制御部128が、減速停止時において、車両10を停止させるための制動力に、後輪12Rに付与された駆動力に相当する制動力を加算した制動力を前輪12Fに付与する構成としたため、後輪12Rに付与された駆動力により車両10の減速停止が妨げられることを抑制する上で有利となる。
また、駆動力制御部130が、発進加速時において、車両10を発進させるための駆動力に、前輪12Fに付与された制動力に相当する駆動力を加算した駆動力を後輪12Rに付与する構成としたため、前輪12Fに付与された制動力により車両10の発進加速が妨げられることを抑制する上で有利となる。
また、車両10の車速や加減速度を検出し、制動力制御部128が車速または加減速度に対応する制動力を前輪12Fに付与し、駆動力制御部130が車速または加減速度に対応する駆動力を後輪12Rに付与する構成としたため、車両10の走行状況に合わせた制動力および駆動力を付与する上で有利となる。
また、車両10の運転者によるブレーキ操作量またはアクセル操作量に基づいて運転者による要求加減速度を算出し、制動力制御部128が要求加減速度に対応する制動力を前輪12Fに付与し、駆動力制御部130が要求加減速度に対応する駆動力を後輪12Rに付与する構成としたため、運転者による操作量に基づく要求加減速度を考慮して制動力および駆動力を付与する上で有利となる。
また、運転者が車両10を停止させる停車意思を有している場合に減速停止時と判定し、制動力制御部128が前輪12Fに制動力を付与し、駆動力制御部130が後輪12Rに駆動力を付与する構成としたため、運転者の意思に基づく減速停止時に制動力および駆動力を付与する上で有利となる。
また、運転者が車両10を発進させる発進意思を有している場合に発進加速時と判定し、制動力制御部128が前輪12Fに制動力を付与し、駆動力制御部130が後輪12Rに駆動力を付与する構成としたため、運転者の意思に基づく発進加速時時に制動力および駆動力を付与する上で有利となる。
また、制動力制御部128が発進加速時に付与する前輪12Fへの制動力を所定時間保持する構成としたため、車体のテールスクワットを確実に抑制でき、車両10の乗員に与える不快感を抑制する上で有利となる。
【符号の説明】
【0064】
10 車両
12F 車輪
12R 車輪
14 エンジン
16 モータ
24 ECU
26 MCU
28 TCU
30 BCU
40 ブレーキ
90 車両(従来)
92F 前輪(従来)
92R 後輪(従来)
100 車両の姿勢制御装置
102 アクセルペダル
104 アクセルセンサ
106 ブレーキペダル
108 ブレーキセンサ
110 速度センサ
112 加速度センサ
114 勾配センサ
120 制御部
122 停車意思判定部
124 発進意思判定部
126 要求加減速度算出部
128 制動力制御部
130 駆動力制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8