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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138942
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】豆類テンペの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/00 20210101AFI20241002BHJP
【FI】
A23L11/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049675
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】521541284
【氏名又は名称】株式会社トワメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】中原 達雄
【テーマコード(参考)】
4B020
【Fターム(参考)】
4B020LB27
4B020LC07
4B020LG02
4B020LK17
4B020LP02
4B020LP18
4B020LP30
(57)【要約】
【課題】 豆類の種皮を付けたままであっても雑菌等の繁殖を抑え、人体に対する安全性に優れたテンペの製造方法を提供する。
【解決手段】 種皮をつけた豆類を殺菌料で処理し、リゾープス菌を植菌して発酵させ、加圧加熱殺菌することを特徴とするテンペの製造方法。当該方法においては、発酵の前に豆類を発芽させることが好ましく、また、殺菌料が微酸性電解水であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種皮をつけた豆類を殺菌料で処理し、
リゾープス菌を植菌して発酵させ、
加圧加熱殺菌する
ことを特徴とするテンペの製造方法。
【請求項2】
前記発酵の前に前記豆類を発芽させる、請求項1に記載のテンペの製造方法。
【請求項3】
前記殺菌料が微酸性電解水である、請求項1に記載のテンペの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆をはじめとする豆類のテンペの製造方法に関し、一般生菌や大腸菌群などからの汚染を防止する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テンペとは、狭義にはインドネシアを発祥とする大豆の発酵食品である。最近は、大豆だけでなく、おから(特許文献1)、ハトムギ(特許文献2)、プロポリス(特許文献3)などにもリゾープス菌(テンペ菌)で発酵させた製品の開発も行われている。
【0003】
テンペの製造方法は、大豆を浸漬させた後、種皮を取り除き、煮た後にテンペ菌を播種させて発酵させることが一般的である(特許文献4)。しかし、発酵時間が長いため、製品の腐敗を防ぐために酵素不活化剤の添加(特許文献5)、原料を焙煎し温水に浸漬させて発酵をスムーズに行わせる方法(特許文献6)などが考えられてきた。
【0004】
さらにテンペの機能性探索として、免疫賦活化作用(特許文献7)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体活性作用(特許文献8)が検討されてきた。
【0005】
しかし、大豆を主原料とするテンペには、土壌菌を含む雑菌等が付着していることが多い。食品衛生法などに発酵食品における一般生菌数の規定は無いが、発酵過程において、これら雑菌等が増殖することがある。近年、企業などの納入規格には一般生菌数を規定する会社が増えてきており、発酵食品の納入基準が高くなってきている。これまでも大豆を焙煎して一般生菌数を減少させる方法(特許文献9)、大豆を有機酸やエタノールに浸漬させる方法(特許文献10)などが考えられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61-128855号公報
【特許文献2】特開平9-234007号公報
【特許文献3】特開平11-253118号公報
【特許文献4】特開2006-254702号公報
【特許文献5】特開2008-245524号公報
【特許文献6】特開2020-80764号公報
【特許文献7】特開2012-87102号公報
【特許文献8】特開2012-171911号公報
【特許文献9】特許第6554714号公報
【特許文献10】特開2006-180871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
豆類は、種皮にも栄養が豊富に存在している。また、豆類は発芽させることで栄養価を高めることができるが、発芽させるためには種皮を残す必要がある。このように、栄養価を高める観点からは、豆類の種皮を残すことが考えられる。
しかし、種皮には、土壌菌を含む雑菌等が付着していることが多いため、種皮をつけた豆類から発酵食品を得ることは、安全性の観点から非常に困難であった。
【0008】
本発明は、豆類の種皮を付けたままであっても雑菌等の繁殖を抑え、人体に対する安全性に優れたテンペの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が鋭意検討した結果、原料を殺菌料で処理し、さらに加圧加熱殺菌することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的には、本発明は以下の通りである。
【0010】
〔1〕 種皮をつけた豆類を殺菌料で処理し、
リゾープス菌を植菌して発酵させ、
加圧加熱殺菌する
ことを特徴とするテンペの製造方法。
〔2〕 前記発酵の前に前記豆類を発芽させる、〔1〕に記載のテンペの製造方法。
〔3〕 前記殺菌料が微酸性電解水である、〔1〕または〔2〕に記載のテンペの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、雑菌等が減少したこれまで以上に栄養価の高いテンペを得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の一実施形態に係るテンペの製造方法は、種皮をつけた豆類を殺菌料で処理し、リゾープス菌を植菌して発酵させ、加圧加熱殺菌するものである。
【0013】
本実施形態において「テンペ」とは、豆類をリゾープス(Rhizopus)菌で発酵させて得られる発酵食品をいう。
【0014】
(リゾープス菌)
本実施形態において使用するリゾープス(Rhizopus)菌は、接合菌類ケカビ科のカビで和名をクモノスカビとも呼ばれている。Rhizopus stronifer 、R. arrhizus 、R. sexualis 、R. microsporus 、R. oligosporus が使用できるが、好ましくは、R. oligosporusである。
【0015】
(豆類)
原料として使用できる豆類は大豆の他、小豆、黒豆、ひよこ豆、赤インゲン豆、青インゲン豆、コーヒー豆、玄米等が使用できる。大豆などは種皮を取ることも可能ではあるが、種皮にある栄養価を残すため、また後述するように好ましい実施形態においては発芽させるため、本実施形態においては、種皮はつけたままでで使用する。
【0016】
(洗浄・浸漬)
本実施形態においては、後述する殺菌料の処理や発酵を効果的に行う観点から、これらの処理の前に、豆類を洗浄して浸漬することが好ましい。
豆類の洗浄は、35度以上のぬるま湯であれば、雑菌等の繁殖を促進してしまう可能性があるため、通常の水で行うのが好ましく、具体的には、33℃以下、さらには30℃以下の水で行うことが好ましい。
【0017】
豆類の浸漬は通常の水で行うのが好ましいが、テンペ菌の発酵を促すため、有機酸(酢酸、乳酸等)を入れた水で行うことも可能である。浸漬時間は長くても良いが、長すぎると豆類の一部には、その浸漬水の中で発芽することもあるので、適度な時間が好ましい。
【0018】
(殺菌料)
本実施形態においては、リゾープス菌による発酵の前に、豆類を殺菌料にて処理する。
殺菌料は、食品添加物として豆類に使用可能なものであれば特に限定されず、亜塩素酸水、過酢酸製剤、過酸化水素、次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、次亜塩素酸水および過酢酸製剤が好ましい。
【0019】
これらのうち、次亜塩素酸水は、強酸性次亜塩素酸水、弱酸性次亜塩素酸水および微酸性次亜塩素酸水の3種が食品添加物として認可されており、成分規格が定まっている。これらの中でも、弱酸性次亜塩素酸水および微酸性次亜塩素酸水が好ましく、微酸性次亜塩素酸水が特に好ましい。弱酸性次亜塩素酸水は、有効塩素10~60mg/kg、pH2.7~5.0と定められている。また、微酸性次亜塩素酸水は、有効塩素10~80mg/kg、pH5.0~6.5と定められている。なお、本実施形態においては、微酸性次亜塩素酸水を微酸性電解水とも称する。
【0020】
上記殺菌料の処理は、所望の濃度の水溶液とした後、豆類を浸漬させることで行う。殺菌料の処理時間(豆類の浸漬時間)は10分以上が好ましく、さらには10~20分程度が好適である。殺菌料の水量が少ないと殺菌効果が出ないため、原料豆(重量)に対して2.5倍(容量)以上の水量がある方が良い。
【0021】
(発芽)
本実施形態においては、種皮をつけた豆類を用いるため、豆類を発芽させることができ、得られるテンペの栄養価を高める観点から、発芽させることが好ましい。
発芽させる条件は特に限定されないが、発芽の至適条件や所要時間などの観点から、温度は、26~34℃であることが好ましく、28~32℃であることが特に好ましい。湿度は、70~99%であることが好ましく、85~95%であることが特に好ましい。時間は、22~32時間であることが好ましく、24~30時間であることが特に好ましい。
【0022】
発芽は、後述する発酵の前に行うことができ、前述した殺菌料の処理の前であっても後であってもよい。特に好ましい態様においては、発芽させる工程の前に殺菌料の処理(1回目)を行い、発芽させた工程の後に再び殺菌料の処理(2回目)を行うことが特に好ましい。
【0023】
(発酵)
本実施形態においては、殺菌料で処理した豆類に、前述したリゾープス菌を植菌して培養し、豆類を発酵させる。
培養温度はリゾープス菌の至適温度である28~36℃が好ましく、最も好ましいのは、30~34℃である。
【0024】
さらに、培養時間は20~32時間が好ましく、最も好ましくは22~26時間である。培養時間が上記下限値以上であれば、リゾープス菌の増殖が完全となり、好ましいテンペを得ることが出来る。なお、培養時間が長すぎるとリゾープス菌が胞子を作り、黒色に変化するため、見た目が悪くなることがあるが、培養時間が上記上限値以下であれば、このような不具合が生じないものとなる。
【0025】
(加圧加熱殺菌)
本実施形態においては、発酵させた豆類を加圧加熱殺菌する。加圧加熱殺菌とは、加圧加熱殺菌とは、蒸気または熱水を媒体とする高圧釜に対象物を入れて通常100℃以上に加熱することにより、圧力(蒸気による)および熱を対象物に加えて殺菌することをいう。
加圧加熱殺菌は103~115℃の範囲で行うことが好ましい。103℃以下では殺菌効果が認められず、115度以上になると製品に褐変作用が生じ、製品の品質が悪くなる。処理時間としては褐変が起こらない時間内で殺菌を行うことが好ましく、例えば10~30分、さらには15~25分とすることが好ましい。
【0026】
本製品は豆類の形が残った状態ではあるが、製品完成後、殺菌された粉砕機を使用すれば、粗粉末、微粉末等にして雑菌等の存在しないテンペパウダーを提供することが出来る。
【実施例0027】
〔実施例1〕
大豆1kgを水で洗浄した後、4時間、1%酢酸溶液に浸漬させた。次に、微酸性電解水3Lに15分間浸漬させた。その後、28℃・湿度90%の恒温室で24時間発芽させた後、再度、微酸性電解水に浸漬させた。その後、蒸器で蒸し、放冷後、テンペ菌を植菌し、24時間培養した。培養後、蒸気殺菌を行い、乾燥機で乾燥させた後、高温高圧装置で103℃・20分間処理をして、テンペを得た。
【0028】
〔実施例2〕
大豆1kgを水で洗浄した後、15時間水に浸漬させた。次に、微酸性電解水3Lに15分間浸漬させた。その後、28℃・湿度90%の恒温室で24時間発芽させた後、再度、微酸性電解水に浸漬させた。その後、蒸器で蒸し、放冷後、テンペ菌を植菌し、24時間培養した。培養後、蒸気殺菌を行い、乾燥機で乾燥させた後、高温高圧装置で103℃・20分間処理をして、テンペを得た。
【0029】
〔実施例3〕
小豆1kgを水で洗浄した後、15時間水に浸漬させた。次に、微酸性電解水3Lに15分間浸漬させた。その後、28℃・湿度90%の恒温室で24時間発芽させた後、再度、微酸性電解水に浸漬させた。その後、蒸器で蒸し、放冷後、テンペ菌を植菌し、24時間培養した。培養後、蒸気殺菌を行い、乾燥機で乾燥させた後、高温高圧装置で115℃・20分間処理をして、テンペを得た。
【0030】
〔比較例1〕
大豆1kgを水で洗浄した後、4時間、水に浸漬させた。その後、28℃・湿度90%の恒温室で24時間発芽させた後、蒸器で蒸し、放冷後、テンペ菌を植菌し、24時間培養した。培養後、蒸気殺菌を行い、乾燥機で乾燥させて、テンペを得た。
【0031】
〔比較例2〕
大豆1kgを水で洗浄した後、4時間、1%酢酸溶液に浸漬させた。次に、28℃・湿度90%の恒温室で24時間発芽させた後、蒸器で蒸し、放冷後、テンペ菌を植菌し、24時間培養した。培養後、蒸気殺菌を行い、乾燥機で乾燥させた後、高温高圧装置で103℃・20分間処理をして、テンペを得た。
【0032】
〔比較例3〕
大豆1kgを水で洗浄した後、4時間、1%酢酸溶液に浸漬させた。次に、微酸性電解水3Lに15分間浸漬させた。その後、28℃・湿度90%の恒温室で24時間発芽させた後、再度、微酸性電解水に浸漬させた。その後、蒸器で蒸し、放冷後、テンペ菌を植菌し、24時間培養した。培養後、蒸気殺菌を行い、乾燥機で乾燥させて、テンペを得た。
【0033】
〔比較例4〕
大豆1kgを水で洗浄した後、4時間、水に浸漬させた。その後、28℃・湿度90%の恒温室で24時間発芽させた後、蒸器で蒸し、放冷後、テンペ菌を植菌し、24時間培養した。培養後、蒸気殺菌を行い、乾燥機で乾燥させた後、高温高圧装置で121℃・20分間処理をして、テンペを得た。
【0034】
<微生物試験>
一般生菌数は標準平板培養法、大腸菌群はデゾキシコレート培地培養法、真菌はクロラムフェニコール加PDA培地法にて実施した。
【0035】
<官能評価>
実施例および比較例で得られたテンペの官能(風味)を評価した。事前評価により、実施例1を陽性対照、比較例4を陰性対照とした。
良好:加熱殺菌による風味の劣化が感じられず(実施例1と同等)、風味が良好である。
不良:加熱殺菌により風味が劣化しており不良である(比較例4と同等)。
【0036】
【表1】