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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138947
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】情報提供装置、及び情報提供方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20241002BHJP
   G06Q 50/163 20240101ALI20241002BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q50/16 300
E04B1/00 ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049683
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】今仲 雅之
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L049CC28
5L049CC29
5L050CC07
5L050CC28
5L050CC29
(57)【要約】
【課題】 既存の建物を居住以外の目的で利用する場合に、その目的に適した建物に関する情報を提供する。
【解決手段】 複数の既存の建物に関する情報が建物毎に蓄積された建物データベースから、検索条件に応じた前記既存の建物に関する情報を検索し、検索された情報を出力する。建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報には、建物に用いられる建材、建物の構造、建物の建設工事、建物周辺の環境、及び建物の利用状況のうち、少なくとも一つに関する情報が含まれている。そして、既存の建物に対する、居住以外の利用目的についてのユーザの指定を受け付け、ユーザにより指定された利用目的に応じた検索条件を設定し、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報に基づいて、検索条件に対する既存の建物の適合度を建物毎に評価し、適合度の評価結果に応じて選定された既存の建物に関する情報を出力する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の既存の建物に関する情報が建物毎に蓄積された建物データベースと、
前記建物データベースから、検索条件に応じた前記既存の建物に関する情報を検索し、検索された情報を出力する検索装置と、を備え、
前記建物データベースに蓄積された前記既存の建物に関する情報には、建物に用いられる建材、建物の構造、建物の建設工事、建物周辺の環境、建物の管理に関する内容、及び建物の利用状況のうち、少なくとも一つに関する情報が含まれ、
前記検索装置は、
前記既存の建物に対する、居住以外の利用目的についてのユーザの指定を受け付け、
ユーザにより指定された前記利用目的に応じた前記検索条件を設定し、
前記建物データベースに蓄積された前記既存の建物に関する情報に基づいて、前記検索条件に対する前記既存の建物の適合度を建物毎に評価し、
前記適合度の評価結果に応じて選定された前記既存の建物に関する情報を出力する、情報提供装置。
【請求項2】
前記建物データベースに蓄積された前記既存の建物に関する情報には、建物に用いられる建材、建物の構造、及び建物の利用状況に関する情報が含まれ、
前記ユーザが指定した前記利用目的が、前記既存の建物における建材のサンプリングである場合に、前記検索装置は、
前記建材のサンプリングに応じた前記検索条件を設定し、
前記建物データベースに蓄積された前記既存の建物に関する情報に基づいて、前記サンプリングの対象である対象建材の有無、建物における前記対象建材の使用場所、及び建物の利用年数のうちの少なくとも一つを建物毎に特定して、前記適合度としてのスコアを建物毎に算出し、
建物毎に算出された前記スコアに応じて選定された前記既存の建物に関する情報を出力する、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記検索装置は、前記建物データベースに蓄積された前記既存の建物に関する情報のうち、建物の構造に関する情報に基づいて、建物の各方位での日射量を算出し、各方位での前記日射量の算出結果に基づいて前記適合度を評価する、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記建物データベースに蓄積された前記既存の建物に関する情報には、建物の構造、及び、建物周辺の環境に関する情報が含まれ、
前記ユーザが指定した前記利用目的が、建物の点検の模擬である場合に、前記検索装置は、
前記建物の点検の模擬の内容に応じた前記検索条件を設定し、
前記建物データベースに蓄積された前記既存の建物に関する情報に基づいて、建物の点検用に設けられた点検用構造の有無及び数、建物周辺に配置された施設の特徴、及び、建物の建設図面の有無のうちの少なくとも一つを建物毎に特定して、前記適合度としてのスコアを建物毎に算出し、
建物毎に算出された前記スコアに応じて選定された前記既存の建物に関する情報を出力する、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記建物データベースに蓄積された前記既存の建物に関する情報には、建物の構造、建物の建設工事、及び建物の利用状況に関する情報が含まれ、
前記ユーザが指定した前記利用目的が、所定の仕様を有する建物を対象とする調査である場合に、前記検索装置は、
前記所定の仕様と対応する前記検索条件を設定し、
前記建物データベースに蓄積された前記既存の建物に関する情報に基づいて、複数の前記既存の建物のうち、前記所定の仕様を有する該当建物を特定し、
特定された前記該当建物について、建物の間取り、建物における増改築の有無、並びに、建物内の各部屋の用途、サイズ及び位置のうちの少なくとも一つの項目を、前記建物データベースに蓄積された前記該当建物に関する情報に基づいて特定し、
前記少なくとも一つの項目の内容に応じて選定された、前記該当建物に関する情報を出力する、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記建物データベースに蓄積された前記既存の建物に関する情報には、建物が居住以外の利用目的にて利用された回数に関する利用回数情報が含まれ、
前記検索装置は、前記適合度の評価結果に応じて選定された前記既存の建物に関する情報を出力する場合に、当該既存の建物の前記利用回数情報を出力する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の情報提供装置。
【請求項7】
複数の既存の建物に関する情報が建物毎に蓄積された建物データベースから、検索条件に応じた前記既存の建物に関する情報を検索し、検索された情報を出力する情報提供方法であって、
前記建物データベースに蓄積された前記既存の建物に関する情報には、建物に用いられる建材、建物の構造、建物の建設工事、建物周辺の環境、建物の管理についての内容、及び建物の利用状況のうち、少なくとも一つに関する情報が含まれ、
コンピュータが、前記既存の建物に対する、居住以外の利用目的についてのユーザの指定を受け付ける工程と、
コンピュータが、ユーザにより指定された前記利用目的に応じた前記検索条件を設定する工程と、
コンピュータが、前記建物データベースに蓄積された前記既存の建物に関する情報に基づいて、前記検索条件に対する前記既存の建物の適合度を建物毎に評価する工程と、
コンピュータが、前記適合度の評価結果に応じて選定された前記既存の建物に関する情報を出力する工程と、を含む、情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供装置、及び情報提供方法に係り、特に、既存の建物に関する情報を提供可能な情報提供装置、及び情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中古物件のような既存の建物を居住目的で使用する場合において、所望の条件に適合する建物を検索するシステムは、既に利用されている。このようなシステムは、一般的に、物件に関する情報を蓄積するデータベースを備え、データベースに蓄積された情報を参照し、物件の購入予定者が希望する条件に合致する物件を検索し、その検索結果を提示する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の不動産情報検索装置は、詳細画面で設定された検索条件に基づいて不動産情報データベースから不動産情報を取得し、取得した不動産情報に関する物件の所在を地図画面に重畳する。また、上記の不動産情報検索装置は、重畳画像と物件の金額と土地面積と建物面積と築年数と部屋数からなる検索条件を設定する詳細画面を生成する。このような構成により、特許文献1に記載の不動産情報検索装置は、検索対象地域の実情に合致し、ユーザにとって有用な不動産に関する各種情報を適切に提示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-170210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、既存の建物は、居住以外の目的で利用することも可能である。例えば、既存の建物で使用されている建材の中には、新たな建材の研究開発に利用できるものがある。そのような建材が入手困難で貴重なものであれば、その建材を使用している建物は、高い利用価値(有用性)を備えるということになる。
【0006】
また、既存の建物は、建築用薬剤の試作品の効果を確認するための試験を行う場所として、あるいは、新規技術を用いた工法のテストフィールドとして活用し得る。このような建物が速やかに且つ容易に見つかれば、試験及びテスト等を円滑に実施できるようになり、建設技術等の開発を促進させることができる。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、既存の建物を居住以外の目的で利用する場合に、その目的に適した建物に関する情報を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、本発明の情報提供装置によれば、複数の既存の建物に関する情報が建物毎に蓄積された建物データベースと、建物データベースから、検索条件に応じた既存の建物に関する情報を検索し、検索された情報を出力する検索装置と、を備え、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報には、建物に用いられる建材、建物の構造、建物の建設工事、建物周辺の環境、建物の管理についての内容、及び建物の利用状況のうち、少なくとも一つに関する情報が含まれ、検索装置は、既存の建物に対する、居住以外の利用目的についてのユーザの指定を受け付け、ユーザにより指定された利用目的に応じた検索条件を設定し、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報に基づいて、検索条件に対する既存の建物の適合度を建物毎に評価し、適合度の評価結果に応じて選定された既存の建物に関する情報を出力することにより解決される。
【0009】
上記のように構成された本発明の情報提供装置では、ユーザが、既存の建物に対して、居住以外の目的を指定し、指定された利用目的に応じた検索条件に対する適合度を、複数の既存の建物のそれぞれについて評価する。そして、適合度の評価結果に応じて選定された既存の建物に関する情報を出力する。これにより、居住以外の目的に適した既存の建物に関する情報をユーザに提供し、ユーザは、居住以外の目的に適した既存の建物を容易に見つけることができ、その建物を有効に活用し得る。
【0010】
また、本発明において、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報には、建物に用いられる建材、建物の構造、及び建物の利用状況に関する情報が含まれてもよい。また、ユーザが指定した利用目的が、既存の建物における建材のサンプリングでもよい。この場合、検索装置は、建材のサンプリングに応じた検索条件を設定し、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報に基づいて、サンプリングの対象である対象建材の有無、建物における対象建材の使用場所、及び建物の利用年数のうちの少なくとも一つを建物毎に特定して、適合度としてのスコアを建物毎に算出し、建物毎に算出されたスコアに応じて選定された既存の建物に関する情報を出力すると、好適である。
上記の構成によれば、対象とする建材(対象建材)のサンプリングに適した既存の建物に関する情報をユーザに提供することができる。
【0011】
また、上記の構成において、検索装置は、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報のうち、建物の構造に関する情報に基づいて、建物の各方位での日射量を算出し、各方位での日射量の算出結果に基づいてスコアを計算してもよい。
日射量は、建物の劣化具合いに対して影響を与え得る。したがって、上記の構成によれば、既存の建物について、日射による建物の劣化具合いを加味して、居住以外の目的に適した建物であるか否かを評価することができる。
【0012】
また、本発明において、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報には、建物の構造、及び、建物周辺の環境に関する情報が含まれてもよい。また、ユーザが指定した利用目的が、建物の点検の模擬でもよい。この場合に、検索装置は、建物の点検の模擬の内容に応じた検索条件を設定し、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報に基づいて、建物の点検用に設けられた点検用構造の有無及び数、建物周辺に配置された施設の特徴、及び、建物の建設図面の有無のうちの少なくとも一つを建物毎に特定して、適合度としてのスコアを建物毎に算出し、建物毎に計算されたスコアに応じて選定された既存の建物に関する情報を出力すると、好適である。
上記の構成によれば、建物の点検の模擬に適した既存の建物に関する情報をユーザに提供することができる。
【0013】
また、本発明において、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報には、建物の構造、建物の建設工事、及び建物の利用状況に関する情報が含まれてもよい。また、ユーザが指定した利用目的が、所定の仕様を有する建物を対象とする調査でもよい。この場合、検索装置は、所定の仕様と対応する検索条件を設定し、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報に基づいて、複数の既存の建物のうち、所定の仕様を有する該当建物を特定し、特定された該当建物について、建物の間取り、建物における増改築の有無、並びに、建物内の各部屋の用途、サイズ及び位置のうちの少なくとも一つの項目を、建物データベースに蓄積された該当建物に関する情報に基づいて特定し、少なくとも一つの項目の内容に応じて選定された、該当建物に関する情報を出力すると、好適である。
上記の構成によれば、所定の仕様を有する建物の調査に適した既存の建物に関する情報をユーザに提供することができる。
【0014】
また、本発明において、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報には、建物が居住以外の利用目的にて利用された回数に関する利用回数情報が含まれてもよい。また、検索装置は、適合度の評価結果に応じて選定された既存の建物に関する情報を出力する場合に、当該既存の建物の利用回数情報を出力してもよい。
上記の構成によれば、居住以外の目的に適した既存の建物に関する情報をユーザに提供する際に、居住以外の目的で実際に利用された回数に関する情報をユーザに提供することができる。これにより、ユーザは、居住以外の目的に適した既存の建物について、その目的に実際に利用された回数を知ることができ、その情報(利用回数情報)を基に、当該建物の利用の要否を適切に判断することができる。
【0015】
また、前述の課題は、本発明の情報提供方法によれば、複数の既存の建物に関する情報が建物毎に蓄積された建物データベースから、検索条件に応じた既存の建物に関する情報を検索し、検索された情報を出力する情報提供方法であって、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報には、建物に用いられる建材、建物の構造、建物の建設工事、建物周辺の環境、建物の管理についての内容、及び建物の利用状況のうち、少なくとも一つに関する情報が含まれ、コンピュータが、既存の建物に対する、居住以外の利用目的についてのユーザの指定を受け付ける工程と、コンピュータが、ユーザにより指定された利用目的に応じた検索条件を設定する工程と、コンピュータが、建物データベースに蓄積された既存の建物に関する情報に基づいて、検索条件に対する既存の建物の適合度を建物毎に評価する工程と、コンピュータが、適合度の評価結果に応じて選定された既存の建物に関する情報を出力する工程と、を含むことで解決される。
上記の方法によれば、居住以外の目的に適した既存の建物に関する情報をユーザに適切に提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の情報提供装置、及び情報提供方法によれば、既存の建物を居住以外の目的で利用しようとする場合に、その目的に適した建物に関する情報をユーザに提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一つの実施形態に係る情報提供装置を含む通信システムを示す図である。
図2】本発明の一つの実施形態に係る情報提供装置のハードウェア構成を示す図である。
図3A】本発明の一つの実施形態に係る建物データベースに収録される建物情報の一例を示す図である(その1)。
図3B】本発明の一つの実施形態に係る建物データベースに収録される建物情報の一例を示す図である(その2)。
図3C】本発明の一つの実施形態に係る建物データベースに収録される建物情報の一例を示す図である(その3)。
図4】検索条件に対する建物の適合度を評価する手順の第1例を示す図である。
図5】検索条件に対する建物の適合度を評価する手順の第2例を示す図である。
図6】検索条件に対する建物の適合度を評価する手順の第3例を示す図である。
図7】本発明により提供される情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明における設定値及び管理値等の数値は、説明を分かりやすくするために挙げた一例にすぎず、本発明は、その数値に限定されるものではない。
【0019】
また、本明細書に記載する「装置」という概念には、特定の機能を一台で発揮する単一の装置が含まれるとともに、分散してそれぞれが独立して存在しつつも協働(連携)して特定の機能を発揮する複数の装置の組み合わせも含まれることとする。
また、本明細書における「人」及び「者」は、個人であってもよく、世帯やグループのような複数の個人からなる集合及び団体を含み、また、企業等の法人も含むものとする。
【0020】
また、本発明を実施するための基礎的なデータ処理技術、例えば、通信/伝送技術、データ取得技術、データ記録技術、データ加工/解析技術、画像処理技術、及び可視化技術等については、公知の技術を利用することができるため、その説明を省略することとする。
【0021】
<<本実施形態に係る情報提供装置について>>
本実施形態に係る情報提供装置(以下、情報提供装置10)について、概要を説明する。情報提供装置10は、図1に示すように、建物データベース12と検索装置14とを有し、ユーザが利用可能な端末16とともに情報提供システム100を構築する。
【0022】
建物データベース12には、複数の既存の建物に関する情報が建物毎に蓄積されている。本明細書において、「既存の建物」とは、建設地に建設された現存の建築物であり、例えば、住宅であり、具体的には、中古物件としての戸建住宅である。ただし、既存の建物は、戸建住宅以外の建物でもよく、例えば、アパートやマンションのような集合住宅でもよく、住宅以外の建物、具体的には店舗、病院等の施設、事業所等のビル、工場、及び工場内の建屋等でもよい。
なお、以下の説明では、既存の建物(戸建住宅)を「中古物件」とも呼ぶこととする。
【0023】
検索装置14は、コンピュータからなり、建物データベース12から、検索条件に応じた中古物件に関する情報を検索し、検索された情報を出力してユーザに提供する。ユーザは、ユーザが利用可能な端末16を通じて、情報提供装置10から提供された情報を確認し、その情報に基づいて、当該中古物件の利用の要否を検討することができる。
【0024】
ユーザは、情報提供装置10により提供される情報の利用者であり、例えば、中古物件の利用者又は利用を検討している者、あるいは、中古物件の利用を斡旋する業者等が該当する。中古物件の利用者としては、例えば、住宅メーカ、建材メーカ、設備メーカ、薬品メーカ、及び大学又は研究機関等が挙げられる。
【0025】
ユーザが使用する端末16は、図1に示すように、インターネット等の通信用ネットワーク18を介して検索装置14と通信可能であり、検索装置14から出力される情報を受信して取得し、取得した情報を表示したり再生したりする。また、端末16は、ユーザによって操作され、その操作内容に応じた情報を生成し、生成された情報を検索装置14に向けて送信する。端末16は、ユーザが所持するパソコン、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、又は、通信機能を備えたテレビ受信機等によって構成される。また、端末16は、ユーザが所有していないものの店舗等に来店した際に暗証番号やパスワード等を入力したり、あるいは入金等したりすることで利用可能な端末でもよい。
【0026】
そして、本実施形態において、情報提供装置10は、建物データベース12に蓄積された中古物件に関する情報のうち、居住以外の利用目的に適した建物の情報をユーザに提供する機能を有する。より詳しく説明すると、本実施形態において、ユーザは、居住以外の利用目的を指定し、検索装置14は、利用目的についてのユーザの指定を受け付ける。検索装置14は、ユーザにより指定された利用目的に応じた検索条件を設定し、建物データベース12に蓄積された中古物件に関する情報に基づいて、設定された検索条件に対する中古物件の適合度を物件毎(建物毎)に評価する。
【0027】
最終的に、検索装置14は、検索条件に対する適合度の評価結果に応じて選定された中古物件に関する情報を出力し、具体的には、選定された中古物件に関する情報を端末16に送信し、当該情報を端末16側で表示等させる(例えば、図7参照)。
【0028】
ここで、中古物件に対する居住以外の利用目的としては、例えば、建材のサンプリング、建物の点検の模擬、及び各種調査等が挙げられる。なお、居住以外の利用目的には、これら以外の目的が含まれてもよい。
【0029】
建材のサンプリングとは、中古物件内で使用されている建材のうち、対象とする建材(対象建材)のサンプリングである。対象建材は、研究や新規材料の開発等の用途に用いられる。建材のサンプリングは、対象建材が市場では既に入手困難な材料や貴重な材料である場合、あるいは、対象資料が耐久性の試験用又は劣化評価用の曝露試料として有効な材料である場合に実施され得る。
【0030】
建物の点検の模擬とは、中古物件を活用して建物(住宅)の点検の訓練、練習、指導又は研修等を実施することである。なお、点検には、建物の外部から行う点検(以下、外部点検)と、建物の内部にて行う点検(以下、内部点検)が含まれる。外部点検では、例えば、カメラ付きドローンを利用して建物の外観を撮影して検査する。内部点検では、建物の床下及び天井等に設けられた点検口から床下空間及び天井裏の空間等の状態を視認して検査する。
【0031】
各種調査とは、所定の仕様を有する建物を対象として行われる調査であり、具体的には、建物に施用される薬品等の効果を確認するための試験、建物の性能に関する試験、及び建物内における環境値等のモニタリングである。所定の仕様は、主として建物の構造に関する仕様であり、調査の内容に応じて決まる。例えば、建物内の温度及び湿度をモニタリングする調査については、所定の断熱区分に該当する断熱構造が、「所定の仕様」に該当する。また、各種調査には、建物の建材又は建物内部の機器設備について、従来品と新規製品との間で性能を比較するための試験(比較試験)、及び比較評価目的のフィールドテストが含まれてもよい。
【0032】
<<本実施形態に係る情報提供装置の構成例>>
次に、図2を参照しながら、情報提供装置10の構成例について説明する。
情報提供装置10が有する検索装置14は、プロセッサを備えるコンピュータからなり、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション又はサーバコンピュータ等によって構成される。また、スマートフォン又はタブレット端末のような情報処理端末によって検索装置14が構成されてもよい。
【0033】
検索装置14は、1台のコンピュータによって構成されてもよく、あるいは並列分散された複数台のコンピュータによって構成されてもよい。また、検索装置14を構成するコンピュータがサーバコンピュータである場合、ASP(Application Service Provider)、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)又はIaaS(Infrastructure as a Service)用のサーバコンピュータであってもよい。この場合、PCやタブレット端末等のクライアント端末にて必要な情報を入力すると、上記のサーバコンピュータが入力情報に基づいて各種の情報処理(演算)を実施し、その演算結果がクライアント端末側で出力される。この結果、検索装置14であるサーバコンピュータの機能をクライアント端末側で利用することができる。
【0034】
検索装置14を構成するコンピュータは、図2に示すように、プロセッサ21、メモリ22、ストレージ23、及び通信用インタフェース24を有する。
【0035】
プロセッサ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、TPU(Tensor Processing Unit)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成される。
メモリ22は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリによって構成される。
【0036】
ストレージ23は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、FD(Flexible Disc)、MOディスク(Magneto-Optical disc)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、SDカード(Secure Digital card)、又はUSBメモリ(Universal Serial Bus memory)等によって構成される。ストレージ23は、検索装置14を構成するコンピュータ本体内に内蔵されてもよく、外付け形式でコンピュータ本体に取り付けてもよい。また、ストレージ23は、NAS(Network Attached Storage)等によって構成されてもよい。
【0037】
通信用インタフェース24は、例えばネットワークインターフェースカード、又は通信インタフェースボード等によって構成されるとよい。検索装置14を構成するコンピュータは、通信用インタフェース24を介して、インターネット又はモバイル通信回線等に接続された他の機器とデータ通信することが可能である。これにより、検索装置14は、通信用ネットワーク18を通じて、ユーザが利用する端末16と通信し、端末16との間で情報の送受信を行うことができる。また、検索装置14は、通信用ネットワーク18を通じて官庁データベース20にアクセスし、同データベースに蓄積された情報を取得することができる。官庁データベース20とは、例えば、気象庁が管理する日本の各地域の気温、湿度、天候、日照時間、及び日射量等が蓄積されたデータベースである。
【0038】
また、検索装置14を構成するコンピュータには、ソフトウェアとして、オペレーティングシステム(OS)用のプログラム、及び、情報提供用のアプリケーションプログラムがインストールされている。これらのプログラムがプロセッサ21によって読み取られて実行されることで、検索装置14を構成するコンピュータは、検索装置14としての機能を発揮する。
【0039】
また、ストレージ23には、後述する建物提供フローの実行に必要な各種の情報が格納されている。また、ストレージ23には、複数の中古物件に関する情報(以下、中古物件情報)が物件毎に蓄積されており、データベースが構築されている。このデータベースが建物データベース12に相当する。
なお、建物データベース12は、検索装置14を構成するコンピュータが有するストレージ23以外の記憶装置によって構成されてもよく、例えば、ネットワーク上に存在する外部サーバ(例えば、データベースサーバやファイルサーバ)によって構成されてもよい。また、ストレージ23は、検索装置14を構成するコンピュータとインターネット又はモバイル通信回線を通じて通信可能な外部機器、例えばオンラインストレージでもよい。
【0040】
<<建物データベースに蓄積された中古物件情報について>>
次に、建物データベース12に蓄積された中古物件情報について、図3A~3Cを参照しながら説明する。なお、図3A~3Cに記載された中古物件情報は、あくまでも一例であり、図面に記載された情報以外の情報が含まれてもよく、図面に記載された情報の一部が省略されてもよい。
【0041】
建物データベース12において、中古物件情報は、図3A~3Cに示すように、中古物件である建物の識別情報、具体的には建物の識別ID、番号、名称及び建設地等と関連付けられた状態で、建物毎(物件毎)に蓄積されている。建物データベース12に蓄積された中古物件情報には、建物に用いられる建材、建物の構造、建物の建設工事、建物周辺の環境、建物の管理についての内容、及び建物の利用状況のうち、少なくとも一つに関する情報が含まれ、本実施形態では、これらの情報を全て含んでいる。
【0042】
建物に用いられる建材に関する情報には、例えば、図3B及び3Cに示すように、建物内の各部屋における壁、床、及び天井を構成する材料の種類(アスベストのような特定の材料の有無を含む)、並びに、建物の屋根を構成する材料等が含まれる。つまり、建物に用いられる建材に関する情報は、建材の種類及び建物における使用場所等を示す情報である。
【0043】
建物の構造に関する情報には、例えば、図3Aに示すように、建物形式、床下仕様、建築面積、建蔽率、間取り、及び、建物完成時の省エネ基準に基づいて定められた断熱区分等が含まれる。間取りに関する情報には、建物内の各部屋の用途、方位及びサイズ(帖数)、建物の点検用に設けられた点検用構造(例えば、点検口及び点検窓等)の有無及び数、並びに、各部屋における開口なしの収納室の有無が含まれ得る。また、建物の構造に関する情報には、さらに、図3Cに示すように、建物の各部屋に設けられた外壁の日射吸収率に関する情報が含まれ得る。
また、増改築が実施されたことがある建物については、建物の構造に関する情報として、建物における増改築前後の構造上の変化を特定するための情報、具体的には、増改築後の間取りに関する情報が含まれ得る。
【0044】
建物の建設工事に関する情報には、図3Aに示すように、建設地及び工法等が含まれる。また、図示していないが、建物の建設工事に関する情報には、建物完成時(すなわち、竣工時点)の年月日が含まれてもよい。
【0045】
建物周辺の環境に関する情報には、図3Aに示すように、建物から見た海岸の方位、海岸までの距離、鉄道又は高速道路までの最短距離、及び、建物周辺30m以内に配置された建物の中で高さが最大である最高建物の高さ等が含まれる。鉄道又は高速道路までの最短距離、及び、最高建物の高さは、建物周辺に配置された施設の特徴に相当する。
また、建物周辺の環境に関する情報には、建設地における気候の情報、具体的には、図3Aに示すように平均外気温、相対湿度が70%以上となる累積頻度、及び累積降雨量等が含まれ得る。
【0046】
建物の管理についての内容に関する情報には、図3Aに示すように、建物の建設図面(詳しくは、完成図)の有無、及び、建物における増改築の有無等が含まれる。
【0047】
建物の利用状況に関する情報には、図3Aに示すように、建物の利用者(例えば、住宅の場合には、居住者の家族構成)、及び、築年数(建物の利用年数に相当)等が含まれる。また、建物の利用状況に関する情報には、図3Cに示すように、居住以外の目的での利用の可否が含まれてもよい。さらに、建物の利用状況に関する情報には、図3Cに示すように、建物が居住以外の利用目的にて実際に利用された回数に関する利用回数情報が含まれてもよい。図3Cにおける利用実績及びサンプリング実績が利用回数情報に該当し、前者は、点検の模擬又は各種調査の目的で過去に利用された回数を、後者は、建材のサンプリングの目的で過去に利用された回数を、それぞれ示している。
【0048】
建物データベース12に蓄積される中古物件情報には、上記以外の情報がさらに含まれてもよく、例えば、後述するスコアの算出結果、及び累積日射量の算出結果等が含まれてもよい。
【0049】
<<検索装置の機能について>>
検索装置14は、居住以外の利用目的がユーザによって指定された場合に、その目的に利用可能な中古物件に関する情報(中古物件情報)を建物データベース12から検索し、ユーザに対して出力する。
【0050】
詳しく説明すると、検索装置14は、中古物件の利用目的についてのユーザの指定を受け付ける機能、指定された利用目的に応じて検索条件を設定する機能、検索条件に対する各中古物件の適合度を評価する機能、及び、検索条件に適合する中古物件に関する中古物件情報を出力する機能を有する。以下、検索装置14の各機能について説明する。
【0051】
(利用目的についてのユーザの指定を受け付ける機能)
検索装置14は、中古物件の利用目的として、居住以外の利用目的をユーザから受け付ける。具体的に説明すると、ユーザは、情報提供装置10による情報提供サービスを享受するために端末16を操作する。より詳しくは、ユーザは、端末16にて専用のアプリを起動し、その後に表示される不図示の操作画面にて、中古物件の利用目的として、居住以外の利用目的を指定する。端末16は、ユーザにより指定された利用目的を示すデータ(以下、利用目的データ)を生成して、そのデータを検索装置14に向けて送信する。検索装置14は、利用目的データを通信用ネットワーク18経由で受信することで、利用目的についてのユーザの指定を受け付ける。
【0052】
また、ユーザは、建材のサンプリングを利用目的として指定した場合に、サンプリングの対象となる建材(以下、対象建材)の種類、及び、建物において対象建材が使用される部位をさらに指定してもよい。また、ユーザは、建物の点検の模擬を利用目的として指定した場合に、点検の模擬の内容をさらに指定してもよい。また、ユーザは、各種調査、すなわち所定の仕様を有する建物を対象とする調査を利用目的として指定した場合に、所定の仕様をさらに指定してもよい。
ユーザによって指定された上記の内容については、データ化され、利用目的とともに利用目的データとして検索装置14に向けて送信され、検索装置14によって受け付けられる。
【0053】
なお、ユーザは、中古物件内に存在する2つ以上の部屋のうち、利用対象とする部屋の種類又は用途をさらに指定してもよい。この場合、検索装置14は、利用目的とともに、利用対象の部屋の種類又は用途についてユーザが指定した内容を受け付けることになる。
【0054】
(検索条件を設定する機能)
検索装置14は、利用目的についてのユーザの指定を受け付けると、指定された利用目的に応じた検索条件を設定する。具体的には、検索装置14は、利用目的毎に決められた検索条件の内容を記憶しており、ユーザにより指定された利用目的と対応した検索条件を特定して、その条件を、利用目的に応じた検索条件として設定する。
【0055】
具体的に説明すると、ユーザが建材のサンプリングを利用目的として指定した場合、検索装置14は、建材のサンプリングに応じた検索条件(以下、サンプリング用条件)を設定する。サンプリング用条件としては、例えば、対象建材が建物内に存在すること、対象建材が使用される部位(例えば、床、天井、壁等)が所定の部位であること、建物における対象建材の使用場所が特定の場所(例えば、開口なしの収納室)に該当するか、及び付随条件が挙げられる。付随条件は、対象建材が用いられた中古物件に対して設定される条件であり、例えば、増改築の有無、建物への日射量、相対湿度が70%以上となる累積頻度、築年数、及び、利用者(居住者)の家族構成等に関する条件である。
【0056】
ユーザが建物の点検の模擬を利用目的として指定した場合、検索装置14は、点検の模擬の内容に応じた検索条件(以下、点検用条件)を設定する。点検用条件としては、点検(具体的には、外部点検及び内部点検)が可能であること、建物において点検口等の点検用構造が設けられていること、必要な個数の点検用構造が設けられていること、及び、建物の建設図面が有ること等が挙げられる。また、点検用条件には、鉄道又は高速道路までの最短距離が所定値未満であること、及び、建物周辺30m以内に配置された建物の中で高さが最大である最高建物の高さが所定値未満であること等が含まれてもよい。さらに、点検用条件として、建物において点検に有利な構造が採用されていること、例えば、床下が土間コンクリートによって構成されていること等が含まれてもよい。
【0057】
ユーザが各種調査、すなわち所定の仕様を有する建物を対象とする調査を利用目的として指定した場合、検索装置14は、所定の仕様と対応する検索条件(以下、調査用条件)を設定する。調査用条件としては、所定の仕様と対応する構造を有する建物であること、具体的には、例えば、所定の断熱区分に属する断熱構造を有することである。ここで、断熱区分は、建物の建設地、及び建設完了の年(換言すると、築年数)に応じて決まるものであり、所定の断熱区分に該当する断熱構造を有することは、建設地が所定の地域であり、且つ築年数が所定年数であることを意味する。そのため、調査用条件は、建設地が所定の地域であり、且つ築年数が所定年数であるという条件としてもよい。
また、調査用条件には付随条件が含まれ、付随条件としては、建物内に所定の用途に用いられる部屋が存在すること、その部屋が所定のサイズであること、及び所定の間取りであること等が挙げられる。所定の用途、サイズ、及び間取りは、ユーザによって指定されてもよいし、あるいは、検索される2以上の中古物件(詳しくは、後述の該当物件)の間で互いに類似する関係になるように決められてもよい。
【0058】
(検索条件に対する適合度を評価する機能)
検索装置14は、建物データベース12に蓄積された各中古物件の中古物件情報に基づき、検索条件に対する各中古物件の適合度を物件毎に評価する。適合度は、各中古物件が検索条件を満たす度合いであり、例えば、検索条件のうち、成立する(満たされる)条件の数、検索条件として設定された内容との合致度合い又は類似度を適合度として用いることができる。また、適合度は、検索条件の成否に応じて加点又は減点されるスコアとして数値化して評価することもできる。
【0059】
また、適合度を評価する際に、各中古物件の構造に関する情報、具体的には間取りの情報に基づいて、建物内の各部屋で使用されている建材の劣化度合いに関する指標値を部屋毎に算出又は特定してもよい。劣化度合いに関する指標値としては、例えば、日射量、及び、相対湿度が70%以上となる累積頻度等が挙げられ、これらの数値が大きい部屋では、その部屋で使用されている建材の劣化度合いが大きくなる傾向にある。
【0060】
適合度の評価方法は、検索条件に応じて決まり、換言すると、ユーザにより指定された中古物件の利用目的に応じて変わり得る。以下では、下記3つのパターンを例に挙げて、適合度を評価する手順について具体的に説明することとする。
【0061】
[第1のパターン]
第1のパターンは、利用目的として建材のサンプリングが指定されたケースである。つまり、第1のパターンでは、検索条件としてのサンプリング用条件に対する各中古物件の適合度を評価する。
【0062】
第1のパターンにて適合度を評価する処理は、図4に示す流れにて進行し、中古物件毎に繰り返し実施される。具体的に説明すると、先ず、増改築の有無が判定され(S001)、増改築がない場合には、ステップS002に移行する。他方、増改築がある場合には、増改築の対象ではない非増改築部位を特定した上で(S003)、ステップS002に移行する。非増改築部位を特定した場合には、S002以降の各ステップが、非増改築部位を対象として実施されることになる。
【0063】
ステップS002では、対象建材の使用部位についてユーザによる指定があるか否かを判定する。使用部位の指定がある場合には、その指定部位を特定し(S004)、指定部位に対象建材が使用されている部屋が建物内に存在するかを判定する(S005)。指定部位に対象建材が使用されている部屋を有する中古物件については、その中古物件に関する情報(中古物件情報)に基づいて、適合度としてのスコアを算出する(S006)。
【0064】
詳しく説明すると、指定部位に対象建材が使用されている部屋の有無(つまり、対象建材の有無、及び、建物における対象建材の使用場所)、築年数、利用者(居住者)の家族構成、相対湿度が70%以上となる累積頻度等に基づいて、スコアを算出する。スコアの加点及び減点に関するルール及び基準については、特に限定されず、任意に決めてもよい。例えば、築年数がより大きいほど、家族の人数がより多いほど、また、相対湿度が70%以上となる累積頻度がより多いほど、スコアの加点数をより大きくしてもよい。これは、一般的に、築年数がより大きいほど、家族の人数がより多いほど、相対湿度が70%以上となる累積頻度がより多いほど、経年劣化が進行し易い傾向にあることを反映している。
【0065】
なお、上記とは逆の採点基準を採用し、築年数がより大きいほど、家族の人数がより多いほど、また、相対湿度が70%以上となる累積頻度がより多いほど、スコアの加点数をより小さくしてもよい。
また、ユーザが、中古物件において利用対象とする部屋の種類又は用途を指定した場合には、部屋毎にスコアを算出してもよい。この場合、指定された種類又は用途の部屋については、スコアの加点数をより大きくし、それ以外の部屋については、スコアの加点数をより小さくするとよい。
【0066】
ステップS002に戻って説明すると、使用部位の指定がない場合、建物内のどの部屋で対象建材が使用されているかを特定する(S007)。対象建材が使用されている部屋を有する中古物件については、その中古物件に関する情報(中古物件情報)のうち、間取りに関する情報に基づいて、対象建材が特定の場所、例えば、開口なしの収納室で使用されているか否かを判定する(S008)。対象建材が開口なしの収納室で使用されている場合には、適合度を比較的高く評価する(S009)。これは、開口なしの収納室では、日射が入り難く、また人が入る機会が少ない場所であるため、収納室内で使用されている建材については、比較的劣化度合いが低く、利用価値が高い状態にあると考えられるためである。
なお、以降の流れについては、対象建材が特定の場所で使用されており、且つ、特定の場所以外の場所でも対象建材が使用されているケースを想定して説明することとする。
【0067】
対象建材が使用されている中古物件については、その中古物件に該当する建物の各方位での日射量、より詳しくは累積日射量を算出する(S010)。累積日射量は、対象建材が使用されている中古物件に関する情報(中古物件情報)のうち、建物の構造に関する情報、詳しくは間取りに関する情報と、建物の築年数と、官庁データベース20から取得した日射量の情報と、建物において各方位に設けられた外壁の日射吸収率(図3C参照)とに基づいて、方位別に算出される。日射量の情報は、対象建材が使用されている中古物件の建設地における方位別の日射量に関する情報である。日射吸収率は、外壁等の建物外皮に利用される物性値(吸収値)に応じた値であり、詳しくは、外壁等の建物外皮に日射が熱として吸収される度合いを示す値である。
【0068】
また、対象建材が使用されている中古物件については、その中古物件情報から、相対湿度が70%以上となる累積頻度を特定する(S011)。そして、対象建材が使用されている中古物件については、ステップS010で算出した累積日射量と、ステップS011で特定した相対湿度が70%以上となる累積頻度とに基づき、適合度としてのスコアを算出する(S012)。この場合、スコアの加点及び減点に関するルール及び基準については、特に限定されないが、例えば、上記の場合と同様、累積日射量(すなわち、ステップS010での日射量の算出結果)がより大きいほど、相対湿度が70%以上となる累積頻度がより多いほど、スコアの加点数をより大きくしてもよい。
【0069】
累積日射量等に基づくスコアの算出は、部屋毎に行ってもよく、その場合には、中古物件において、どの部屋の建材をサンプリングすればよいのかを、部屋毎に算出されたスコアに基づいて適切に決定することができる。
【0070】
以上のように、第1のパターンでは、検索条件に対する各中古物件の適合度を評価する際に、対象建材が使用されている場所、累積日射量、及び、相対湿度が70%以上となる累積頻度等を評価(具体的には、スコア)に反映させる。これらの項目は、部屋の劣化度合い、特に、その部屋で使用される建材の劣化度合いに影響を与える可能性があるため、第1のパターンでは、上記の点を加味して、建材のサンプリングに適した中古物件であるか否かを評価することができる。
【0071】
[第2のパターン]
第2のパターンは、利用目的として建物の点検の模擬が指定されたケースである。つまり、第2のパターンでは、検索条件としての点検用条件に対する各中古物件の適合度を評価する。
【0072】
第2のパターンにて適合度を評価する処理は、図5に示す流れにて進行し、中古物件毎に繰り返し実施される。具体的に説明すると、先ず、中古物件の建設図面の有無が特定される(S021)。次に、点検の模擬の内容が外部点検を含むか、また内部点検を含むかを判定する(S022、S023)。外部点検の内容を含む場合には、外部点検に関する下記の条件j1~j4の成否を特定する(S024)。
j1:外部点検が可能であること
j2:建蔽率が所定値以上であること
j3:鉄道又は高速道路までの最短距離が所定値未満であること
j4:建物周辺30m以内に配置された建物の中で高さが最大である最高建物の高さが所定値未満であること
なお、ステップS023において上記の条件j1~j4を全て満たすということは、外部点検の模擬が実施可能な中古物件であることを意味する。
【0073】
また、点検の模擬の内容が内部点検を含む場合には、内部点検に関する下記の条件j5~j8の成否を判定する(S025)。
j5:内部点検が可能であること
j6:建物において点検口等の点検用構造が設けられていること
j7:点検用構造が2箇所以上に設けられていること
j8:床下に土間コンクリートが設けられていること
なお、ステップS024において上記の条件j5~j8を全て満たすということは、内部点検の模擬が実施可能な中古物件であることを意味する。
【0074】
[第3のパターン]
第3のパターンは、利用目的として各種調査が指定されたケースである。つまり、第3のパターンでは、検索条件としての調査用条件に対する各中古物件の適合度を評価する。
なお、以下では、所定の断熱区分に属する断熱構造を有する建物を対象として建物内部の温度をモニタリングする調査を利用目的とするケースを例に挙げて説明することとする。
【0075】
第3のパターンにて適合度を評価する処理は、図6に示す流れにて進行する。具体的に説明すると、先ず、所定の断熱区分に属する断熱構造を有する建物であるか否かを判定する(S031)。所定の断熱区分に属する断熱構造を有するか否かを判定するには、先ず、建物の建設地が所定の地域であり、且つ築年数が所定年数であるかを判定し、この2つの条件が成立する場合には、所定の断熱区分に属する断熱構造を有する建物であると判定される。
【0076】
他方、上記2つの条件のうちの少なくとも一つが成立しない場合には、建物の建設地及び築年数から、建物の建設完了時点で施行されていた省エネ基準による断熱区分を特定し、特定された断熱区分と、中古物件情報に規定された断熱区分が一致するか否かを判定する。そして、両方の断熱区分が一致する場合には、所定の断熱区分に属する断熱構造を有する建物であると判定される。
【0077】
ステップS031は、中古物件毎に繰り返され、これにより、複数の中古物件から、所定の断熱区分に属する断熱構造を有する1又は2以上の中古物件(以下、該当物件)が特定される。なお、該当物件は、該当建物に相当する。
【0078】
次に、該当物件について、その中古物件情報に基づいて、建物の間取り、建物における増改築の有無、建物内の各部屋の用途、サイズ及び位置(方位を含む)のうちの少なくとも一つの項目を特定する(S032)。本実施形態では、ステップS032において、上記の全ての項目を特定する。
【0079】
次に、ステップS032にて特定された項目の内容に応じて、1又は2以上の該当物件の中から、所定数以上の該当物件を選定する(S033)。具体的には、建物の間取りが所定の間取りであり、且つ、建物内に所定の用途に用いられる部屋が存在し、その部屋が所定のサイズである該当物件を選定する。所定の間取り、所定の用途、及び、所定のサイズは、ユーザの指定に応じて決められてもよく、あるいは、これらの項目が該当物件間で互いに類似する関係の該当物件が抽出できるように決められてもよい。
【0080】
そして、選定された該当物件の数が所定数以上であれば(S034)、その時点で該当物件の選定が終了する。他方、選定された該当物件の数が所定数未満である場合、選定条件を変更し(S035)、変更後の選定条件に基づいて、所定数以上の該当物件を再度選定する(S036)。具体的には、建物内に所定の用途に用いられる部屋が存在し、その部屋が所定のサイズである該当物件を選定する。選定された該当物件の数が所定数以上であれば(S034)、その時点で該当物件の選定が終了する。
【0081】
一方で、再度選定された該当物件の数が所定数未満である場合には、選定条件を再度変更し、再変更後の選定条件に基づいて、所定数以上の該当物件を再度選定する。以降、所定数以上の該当物件が選定されるまで(すなわち、ステップS034でYesとなるまで)、ステップS035及びS036を繰り返す。
なお、再変更後の選定条件は、建物内に所定の用途に用いられる部屋が存在し、且つ、その部屋が所定の方位に配置されていることでもよい。また、再々変更後の選定条件は、建物内に所定の用途に用いられる部屋が存在することでもよい。
【0082】
(検索条件に適合する中古物件に関する中古物件情報を出力する機能)
検索装置14は、検索条件に適合する中古物件に関する中古物件情報を出力する。そのために、検索装置14は、建物データベース12に中古物件情報が記憶された複数の中古物件の中から、検索条件に対する適合度の評価結果に応じて、出力対象の中古物件を選定する。
【0083】
出力対象の中古物件を選定する手順について、上述した3つのパターンを例に挙げて具体的に説明すると、第1のパターンでは、先ず、建物データベース12に中古物件情報が記憶された複数の中古物件のうち、ユーザが指定した種類の建材、すなわち対象建材が使用されている物件を抽出する。このとき、対象建材の使用部位についてユーザの指定がある場合には、その指定部位に対象建材が使用されている物件を抽出する。
【0084】
そして、抽出された中古物件のそれぞれについて算出されたスコアに基づき、抽出された中古物件の中から、出力対象の中古物件を選定する。より詳しく説明すると、例えば、スコアが大きい中古物件から順にm個(mは自然数)の中古物件を選定してもよい。このとき、対象建材として、劣化度合いが高いものと、劣化度合いが低いものとを両方サンプリングできるように、開口なしの収納室と、日射量が比較的大きい方位に面する部屋の双方で対象建材が使用されている中古物件を優先して選定してもよい。
あるいは、抽出された中古物件のすべてを、出力対象の中古物件として選定してもよい。
【0085】
第2のパターンでは、先ず、建物データベース12に中古物件情報が記憶された複数の中古物件のうち、ユーザが指定した点検の模擬を実施することが可能な物件を抽出する。そして、抽出された中古物件のそれぞれについて、上述した条件j1~j8のうち、成立する条件の数を特定し、特定された成立条件の数に基づいて、抽出された中古物件の中から、出力対象の中古物件を選定する。例えば、成立条件の数が多い中古物件から順にm個(mは自然数)の中古物件を選定してもよい。また、条件j1~j8のそれぞれに対して、重み付けを設定し、成立した条件とその重み付けに基づいて、m個の中古物件を出力対象として選定してもよい。
あるいは、抽出された中古物件のすべてを、出力対象の中古物件として選定してもよい。
【0086】
第3のパターンでは、図6に示す処理(特に、図中のステップS033~S036)により選定された該当物件、つまり、所定の仕様(具体的には、所定の断熱区分に属する断熱構造)を有し、且つ前述の選定条件を満たす所定数以上の該当物件を、出力対象の中古物件として選定する。
【0087】
そして、検索装置14は、選定された出力対象の中古物件に関する中古物件情報を出力して、その中古物件情報をユーザに提供する。具体的には、検索装置14が上記の中古物件情報を表示させるためのデータを生成し、生成されたデータを端末16に向けて送信する。当該データを受信した端末16側では、当該データに基づき、上記の中古物件情報が画面に表示される。このとき、検索装置14は、選定された出力対象の中古物件の利用回数情報を出力してもよく、例えば、図7に示すように、出力対象の中古物件の各々について、利用回数情報が示す利用実績及びサンプリング実績を端末16に表示させてもよい。
【0088】
また、上述した第1のパターンにおいて、出力対象の中古物件に関する中古物件情報を出力(表示)する際には、スコアが低い(又は高い)中古物件から順に出力してもよい。また、出力対象の中古物件である建物に含まれる各部屋についての情報、具体的には、各部屋の用途、方位、累積日射量、及び各部屋における対象建材の使用の有無等を併せて出力(表示)してもよい。この場合、各部屋に対してスコアが評価されていれば、スコアに応じた順序にて各部屋の情報を表示するとよい。
【0089】
また、上述した第2のパターンにおいて、出力対象の中古物件に関する中古物件情報を出力(表示)する際には、上述した条件j1~j8のうち、成立する条件の数が多い中古物件から順に出力してもよい。
【0090】
<<本実施形態の有効性について>>
本実施形態によれば、中古物件を居住以外の目的で利用する場合に、その目的に適した物件に関する情報(中古物件情報)をユーザに提供することができる。
【0091】
より詳しく説明すると、本実施形態では、ユーザが中古物件に対して、居住以外の利用目的として、建材のサンプリング、点検の模擬、又は各種調査を指定すると、指定された利用目的に応じた検索条件が設定される。そして、設定された検索条件に対する各中古物件の適合度を評価し、適合度の評価結果に応じて選定される中古物件に関する情報(中古物件情報)をユーザに対して出力する。
上記の手順によれば、ユーザは、ユーザが指定した利用目的に適した中古物件を容易に見つけることができ、その中古物件を当該目的のために有効に活用することができる。このような効果は、一般的な従来の中古物件検索システム、すなわち、居住目的で利用される中古物件を検索するための通常の情報提供システムでは得られない効果である。
【0092】
また、本実施形態では、検索条件に対する適合度の評価結果に応じて選定された中古物件に関する情報(中古物件情報)をユーザに提供する際に、居住以外の目的にて利用された実績回数に関する情報をユーザに提供することができる。これにより、ユーザは、選定された中古物件について、居住以外の目的に実際に利用された回数を知ることができ、その回数を基に、当該中古物件の利用の要否を適切に判断することができる。例えば、建材サンプリングの利用目的に適するものとして選定された中古物件について、過去に同じ目的で利用された実績回数を確認し、サンプリングの対象とする建材が過去のサンプリングで既に取り除かれている可能性があるかを判断することができる。
【0093】
<<その他の実施形態について>>
以上までに、本発明の情報提供装置、及び情報提供方法に関する一つの実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0094】
また、上記の実施形態に関する説明の中で参照された図面が示す画面例も一例に過ぎず、画面の構成例、表示される情報の内容、及びGUI(Graphical User Interface)等は、システム設計の仕様及びユーザの好み等に応じて自由に設計することができ、また適宜変更し得るものである。
【0095】
また、上記の実施形態における情報提供の手段としては、特に限定されず、例えば、メールによる情報の提供でもよく、あるいは、端末16の画面に情報を表示してもよく、あるいは、情報を示す音声を再生して端末16のスピーカから出音してもよい。また、SNS(Social Networking Service)用のアカウントを有するユーザに対して情報を提供する場合には、SNSでの投稿やメッセージ交換等を活用してもよい。また、メッセージ等を表示させる画面は、端末16の初期画面(具体的には、待ち受け画面)でもよい。
【0096】
また、上記の実施形態では、本発明を適用して、検索条件に基づいて検索された中古物件情報を提供する手順について説明したが、その手順では、本発明の情報提供方法が採用されている。また、上記の実施形態では、検索条件に対する各中古物件の適合度を評価する流れとして、図4~6に示した処理フローを例に挙げて説明した。ただし、当該処理フローは、あくまでも一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、フロー中の不要なステップを削除したり、フローに新たなステップを追加したり、フローにおける各ステップの実施順序を入れ替えてもよい。
【0097】
また、上記の実施形態では、ユーザが中古物件の利用目的、及び、利用目的に関連する事項を指定し、指定された項目の内容に応じて検索条件が設定されることとした。検索条件の設定に際してユーザが指定可能な項目には、当然ながら、上記以外の項目が含まれてもよく、例えば、建設地の地域、築年数、居住者の有無、及び、過去に居住以外の目的で利用された回数等が含まれてもよい。その場合には、それらの項目も加味して検索条件が設定されると、好適である。
【符号の説明】
【0098】
10 情報提供装置
12 建物データベース
14 検索装置
16 端末
18 通信用ネットワーク
20 官庁データベース
21 プロセッサ
22 メモリ
23 ストレージ
24 通信用インタフェース
100 情報提供システム
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7