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特開2024-138948信号処理回路、ディジタルコヒーレント受信器及びディジタルコヒーレント通信システム
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  • 特開-信号処理回路、ディジタルコヒーレント受信器及びディジタルコヒーレント通信システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138948
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】信号処理回路、ディジタルコヒーレント受信器及びディジタルコヒーレント通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/61 20130101AFI20241002BHJP
   H04B 10/2507 20130101ALI20241002BHJP
【FI】
H04B10/61
H04B10/2507
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049684
(22)【出願日】2023-03-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、委託事業 「次世代ディジタルコヒーレント光ファイバ通信技術の研究開発」 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】森 洋二郎
(72)【発明者】
【氏名】久野 拓真
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩
(72)【発明者】
【氏名】石川 誉聡
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA52
5K102AD00
5K102AD01
5K102AD15
5K102AH11
5K102KA01
5K102KA02
5K102KA39
5K102PB11
5K102RD26
(57)【要約】
【課題】モード多重システムにおいて位相変動及び周波数オフセットが存在する場合においても、波長分割多重分離及びIQ不均衡補償を同時に実現する。
【解決手段】信号処理回路1は、波長分割多重分離を行う第1のディジタルフィルタ10と、受信器側IQ利得不均衡補償を行う第3のディジタルフィルタ30と、搬送波周波数の推定を行う第6のディジタルフィルタと、を含む。第6のディジタルフィルタ60は、推定した周波数オフセット値を第1のディジタルフィルタ10にフィードバックする。第1のディジタルフィルタ10は、フィードバックされた周波数オフセット値に基づいて帯域外クロストークを除去する。第1のディジタルフィルタ10、第3のディジタルフィルタ30及び第6のディジタルフィルタ60は、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、この順に直列に接続される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタルコヒーレント受信器に使われる信号処理回路であって、
波長分割多重分離を行う第1のディジタルフィルタと、
受信器側IQ不均衡補償を行う第3のディジタルフィルタと、
搬送波周波数の推定を行う第6のディジタルフィルタと、
を含み、
前記第6のディジタルフィルタは、推定した周波数オフセット値を前記第1のディジタルフィルタにフィードバックし、
前記第1のディジタルフィルタは、フィードバックされた周波数オフセット値に基づいて帯域外クロストークを除去し、
前記第1のディジタルフィルタ、前記第3のディジタルフィルタ及び前記第6のディジタルフィルタは、前記ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、この順に直列に接続されることを特徴とする信号処理回路。
【請求項2】
前記ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、前記第1のディジタルフィルタの前段又は前記第1のディジタルフィルタと前記第3のディジタルフィルタとの間に、波長分散補償を行う第2のディジタルフィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項3】
前記ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、前記第3のディジタルフィルタと前記第6のディジタルフィルタとの間に、モード分割多重分離を行う第4のディジタルフィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項4】
前記ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、前記第3のディジタルフィルタと前記第6のディジタルフィルタとの間又は前記第6のディジタルフィルタの後段に、搬送波位相推定を行う第5のディジタルフィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項5】
前記ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、前記第6のディジタルフィルタの後段に、送信器側IQ不均衡補償を行う第7のフィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項6】
信号処理回路と、コヒーレントレシーバと、ADコンバータと、ローカル光源とを備えたディジタルコヒーレント受信器であって、
前記信号処理回路は、
波長分割多重分離を行う第1のディジタルフィルタと、
受信器側IQ不均衡補償を行う第3のディジタルフィルタと、
搬送波周波数の推定を行う第6のディジタルフィルタと、
を含み、
前記第6のディジタルフィルタは、推定した周波数オフセット値を前記第1のディジタルフィルタにフィードバックし、
前記第1のディジタルフィルタは、フィードバックされた周波数オフセット値に基づいて帯域外クロストークを除去し、
前記第1のディジタルフィルタ、前記第3のディジタルフィルタ及び前記第6のディジタルフィルタは、前記ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、この順に直列に接続されることを特徴とするディジタルコヒーレント受信器。
【請求項7】
送信器と、ディジタルコヒーレント受信器とを備えたディジタルコヒーレント通信システムであって、
前記ディジタルコヒーレント受信器は、信号処理回路と、コヒーレントレシーバと、ADコンバータと、ローカル光源とを備えたディジタルコヒーレント受信器であって、
前記信号処理回路は、
波長分割多重分離を行う第1のディジタルフィルタと、
受信器側IQ不均衡補償を行う第3のディジタルフィルタと、
搬送波周波数の推定を行う第6のディジタルフィルタと、
を含み、
前記第6のディジタルフィルタは、推定した周波数オフセット値を前記第1のディジタルフィルタにフィードバックし、
前記第1のディジタルフィルタは、フィードバックされた周波数オフセット値に基づいて帯域外クロストークを除去し、
前記第1のディジタルフィルタ、前記第3のディジタルフィルタ及び前記第6のディジタルフィルタは、前記ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、この順に直列に接続されることを特徴とするディジタルコヒーレント通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号処理回路、ディジタルコヒーレント受信器及びディジタルコヒーレント通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタルコヒーレント受信器はディジタル信号処理回路とコヒーレント光受信器により構成され、長距離光ファイバ伝送系で広く普及している。コヒーレント通信システムにおいて、周波数利用効率をさらに拡大するためには、高次多値変調の高次化と、波長分割多重密度の高密度化の両方が必要となる。高密度な波長分割多重方式の中でも、周波数領域における信号間の間隔を極限まで信号帯域幅に近づけたものをナイキスト波長分割多重方式と呼ぶ。ナイキスト波長分割多重方式は、シンボル間干渉とチャネル間クロストークを回避しながら達成できる最大の周波数利用効率を実現する。また、伝送容量をさらに増加させる技術として、モード分割多重技術が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M. Arikawa, M. Saito, and K. Hayashi, “Compensation and monitoring of transmitter and receiver impairments in 10.000-km single-mode fiber transmission by adaptive multi-layer filters with augmented inputs,” Optics Express, Vol. 30, No. 12, June 2022.
【非特許文献2】Y. Mori, C. Han, H. Lu, and K. Kikuchi, "Wavelength demultiplexing of Nyquist WDM signals under large frequency offsets in digital coherent receivers," European Conference on Optical Communication (ECOC 2013), paper Mo.4.C.6, London, United Kingdom, September 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高次多値変調方式は、シンボルがコンスタレーション上において密に配置されることから、IQ利得不均衡、IQ位相不均衡、及びIQスキューを含むIQ不均衡により信号品質が著しく低下する。また、受信されたナイキスト波長分割多重信号は、隣接チャネルに存在する信号を原因とする帯域外クロストークにより信号対雑音比が劣化する。モード分割多重システムでは異なる伝搬モードの信号が結合しクロストークが生じるため、安定的にクロストークを除去可能なモード分離技術が必要である。従って、IQ不均衡補償、波長分割多重分離と、モード間クロストーク除去と、を両方同時に行うことが可能なディジタル信号処理回路が必要となる。
【0005】
モード分割多重分離技術及びIQ不均衡補償技術として、複素タップ係数を用いたFIR(Finite Impulse Response)フィルタを多段接続した信号処理回路構成が提案されている(非特許文献1参照)。この信号処理回路構成ではトレーニング信号を用いてフィルタタップ係数を逐次更新するLMS(Least Mean Square)アルゴリズムによりモード多重分離を行なうため、CMA(Constant Modulus Algorithm)に特有のモード特異点問題を回避することができる。また、最急降下法により各フィルタに起因して生じた誤差信号を個別に導出することができるため、フィルタ間の干渉を避けるようにフィルタタップ係数を更新することができる。多段接続されたフィルタの中にはWL(Widely Linear)フィルタが存在し、これによりIQ不均衡を補償する。
【0006】
しかしながら、この信号処理回路構成によりナイキスト波長分割多重信号の分離を行うためには、急峻なカットオフ特性を実現するために、多数のフィルタタップ係数を有するFIRフィルタを用いる必要があり、これには膨大な計算量を必要とする。急峻なカットオフ特性を有するディジタルフィルタをフーリエ変換後の信号スペクトルに対して乗じる処理であれば、低計算量にナイキスト波長分割多重信号の分離が可能である。しかし、周波数オフセットが生じた場合、この方法では抽出したい信号の一部を削除し、隣接信号のクロストークの一部を残存させてしまう。
【0007】
そこで、周波数オフセットが存在する場合においても、周波数領域におけるフィルタ処理により波長分割多重分離を可能とする手法が提案されている(非特許文献2参照)。この手法は4段階の処理により、ナイキスト波長分割多重信号を分離する。第一の処理では、低次の適応フィルタにより波長分割多重分離を行う。第二の処理では、得られた信号を周波数推定器に入力し、周波数オフセットの値を推定する。第三の処理では、推定した周波数オフセットの値に基づき、周波数領域において急峻なカットオフ特性を有するディジタルディジタルフィルタの通過域の中心を移動させる。第四の処理では、フーリエ変換後の信号スペクトルに対し、急峻なカットオフ特性を有するディジタルフィルタを作用させる。この四段階の処理を経ることで、周波数オフセットが存在する状況においても、ナイキスト波長分割多重信号を分離することができる。
【0008】
しかしながら、周波数オフセットと受信器IQ不均衡が共に生じた場合、隣接チャネルから生じたクロストークが信号帯域内へ侵入してしまう。この受信器IQ不均衡由来のクロストークは、波長分割多重分離後の場合、IQ不均衡補償を行ったとしても除去することができない。なお、ここまでの議論はすべてナイキスト波長分割多重システムに焦点を当てたものであるが、サブキャリア多重システムにおいても同様である。
【0009】
本開示はこうした状況に鑑みてなされており、その目的とするところは、モード多重システムにおいて位相変動及び周波数オフセットが存在する場合においても、波長分割多重分離及びIQ不均衡補償を同時に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の信号処理回路は、ディジタルコヒーレント受信器に使われる信号処理回路であって、波長分割多重分離を行う第1のディジタルフィルタと、受信器側IQ不均衡補償を行う第3のディジタルフィルタと、搬送波周波数の推定を行う第6のディジタルフィルタと、を含む。第6のディジタルフィルタは、推定した周波数オフセット値を第1のディジタルフィルタにフィードバックする。第1のディジタルフィルタは、フィードバックされた周波数オフセット値に基づいて帯域外クロストークを除去する。第1のディジタルフィルタ、第3のディジタルフィルタ及び第6のディジタルフィルタは、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、この順に直列に接続される。
【0011】
ある実施の形態では、信号処理回路は、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、第1のディジタルフィルタの前段又は第1のディジタルフィルタと第3のディジタルフィルタとの間に、波長分散補償を行う第2のディジタルフィルタを含んでもよい。
【0012】
ある実施の形態では、信号処理回路は、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、第3のディジタルフィルタと第6のディジタルフィルタとの間に、モード分割多重分離を行う第4のディジタルフィルタを含んでもよい。
【0013】
ある実施の形態では、信号処理回路は、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、第3のディジタフィルタと第6のディジタルフィルタとの間又は第6のディジタルフィルタの後段に、搬送波位相推定を行う第5のディジタルフィルタを含んでもよい。
【0014】
ある実施の形態では、信号処理回路は、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、第6のディジタルフィルタの後段に、送信器側IQ不均衡補償を行う第7のフィルタを含んでもよい。
【0015】
本開示の別の態様は、ディジタルコヒーレント受信器である。このディジタルコヒーレント受信器は、信号処理回路と、コヒーレントレシーバと、ADコンバータと、ローカル光源とを備えたディジタルコヒーレント受信器であって、信号処理回路は、波長分割多重分離を行う第1のディジタルフィルタと、受信器側IQ不均衡補償を行う第3のディジタルフィルタと、搬送波周波数の推定を行う第6のディジタルフィルタと、を含む。第6のディジタルフィルタは、推定した周波数オフセット値を第1のディジタルフィルタにフィードバックする。第1のディジタルフィルタは、フィードバックされた周波数オフセット値に基づいて帯域外クロストークを除去する。第1のディジタルフィルタ、第3のディジタルフィルタ及び第6のディジタルフィルタは、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、この順に直列に接続される。
【0016】
本開示のさらに別の態様は、ディジタルコヒーレント通信システムである。このディジタルコヒーレント通信システムは、送信器と、ディジタルコヒーレント受信器とを備えたディジタルコヒーレント通信システムであって、ディジタルコヒーレント受信器は、信号処理回路と、コヒーレントレシーバと、ADコンバータと、ローカル光源とを備えたディジタルコヒーレント受信器であって、信号処理回路は、波長分割多重分離を行う第1のディジタルフィルタと、受信器側IQ不均衡補償を行う第3のディジタルフィルタと、搬送波周波数の推定を行う第6のディジタルフィルタと、を含む。第6のディジタルフィルタは、推定した周波数オフセット値を第1のディジタルフィルタにフィードバックする。第1のディジタルフィルタは、フィードバックされた周波数オフセット値に基づいて帯域外クロストークを除去する。第1のディジタルフィルタ、第3のディジタルフィルタ及び第6のディジタルフィルタは、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、この順に直列に接続される。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、ディジタルコヒーレント通信におけるIQ不均衡を補償しつつ、搬送波位相及び周波数を推定してこれを波長分割多重分離フィルタにフィードバックすることで、位相変動及び周波数オフセットの存在下においても安定にモード多重分離及びナイキスト波長分割多重分離を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】適応フィルタの機能ブロック図である。
図2】第1の実施の形態に係る信号処理回路の機能ブロック図である。
図3】第2の実施の形態に係るディジタルコヒーレント受信器の機能ブロック図である。
図4】第3の実施の形態に係るディジタルコヒーレント通信システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態及び変形例では、同一または同等の構成要素、部品には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部品の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない要素の一部は省略して表示する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0021】
具体的な実施の形態を説明する前に基本となる知見を説明する。図1は、基本的な適応フィルタの機能ブロック図である。適応フィルタは、伝達関数を適応アルゴリズムに従って自己適応させるフィルタである。図1に示されるように、適応フィルタは適応アルゴリズムとFIRフィルタとを含み、入力信号に基づいて自己適応する。
【0022】
FIRフィルタに信号x(n)を入力したときの出力信号をy(n)とすると、出力信号y(n)は以下の方程式により表すことができる。
y(n)=h x(n)+h x(n-1)+…+h x(n-(k-1))
ここでhはフィルタタップ係数であり、kはフィルタタップ数である。また、x(n-1)はx(n)に対し、Z-1だけ遅延した信号を示す。フィルタタップ数kは遅延性の信号劣化要因を補償する場合、その遅延量に応じたフィルタタップの数Nが必要となる。
【0023】
フィルタタップ係数は、適応アルゴリズムにより出力信号y(n)と目標信号d(n)との差で表される誤差信号e(n)を最小化するように設定される。これにより、異なる伝搬モード間で生じるモード間クロストークを安定的に除去することが可能である。
【0024】
[第1の実施の形態]
図2は、第1の実施の形態に係る信号処理回路1の機能ブロック図である。なお、本信号処理回路は説明を簡略化するために偏波多重システム用の信号処理回路を図示したものであり、モード多重数が変化した場合には、適宜、信号処理回路内の素子数を変化させることで対応することが可能である。異なる2つの偏波モードをXモード(X偏波)とYモード(Y偏波)に区別することする。
【0025】
図2に示される通り、信号処理回路1は7段のディジタルフィルタを含んで構成される。すなわち信号処理回路1は、1段目に相当する第1のディジタルフィルタ10と、2段目に相当する第2のディジタルフィルタ20と、3段目に相当する第3のディジタルフィルタ30と、4段目に相当する第4のディジタルフィルタ40と、5段目に相当する第5のディジタルフィルタ50と、6段目に相当する第6のディジタルフィルタ60と、7段目に相当する第7のディジタルフィルタ70と、を含む。第1のディジタルフィルタ10、第2のディジタルフィルタ20の接続順は不同であり、信号の入力側に直列に接続される。第1のディジタルフィルタ10と第2のディジタルフィルタ20の後に、第3のディジタルフィルタ30及び第4のディジタルフィルタ40がこの順で直列に接続される。第4のディジタルフィルタの後に第5のディジタルフィルタ50及び第6のディジタルフィルタ60が直列接続され、その接続順は不同である。第5のディジタルフィルタ50及び第6のディジタルフィルタ60の後に、第7のディジタルフィルタ70が直列に接続される。
【0026】
第1のディジタルフィルタ10は、波長分割多重分離フィルタと呼ぶこともある。第1のディジタルフィルタ10は、ディジタルフィルタ11と、ディジタルフィルタ12と、ディジタルフィルタ13、とディジタルフィルタ14と、を含む。これらのディジタルフィルタは、急峻なカットオフ特性を有する波長分割多重分離フィルタであり、ロールオフ率0のコサインロールオフフィルタが適する。また、後述する搬送波周波数推定フィルタからフィードバックされた周波数オフセットの推定値に基づき、フィルタの中心周波数を変化させる機構を持つ。
【0027】
第2のディジタルフィルタ20は、波長分散補償フィルタと呼ぶこともある。第2のディジタルフィルタ20は、ディジタルフィルタ21と、ディジタルフィルタ22と、ディジタルフィルタ23と、ディジタルフィルタ24と、を含む。
【0028】
第3のディジタルフィルタ30は、受信器IQ不均衡補償フィルタと呼ぶこともある。第3のディジタルフィルタ30は、2並列ディジタルフィルタ31と、2並列ディジタルフィルタ32と、を含む。2並列ディジタルフィルタ31のフィルタタップ係数はbx-o、bx-cであるものとし、2並列ディジタルフィルタ32のフィルタタップ係数はby-o、by-cであるものとする。
【0029】
第4のディジタルフィルタ40は、モード多重分離フィルタと呼ぶこともある。第4のディジタルフィルタ40は、バタフライフィルタ41を含む。バタフライフィルタ41のフィルタタップ係数をcxx、cxy、cyx、cyyとする
【0030】
第5のディジタルフィルタ50は、搬送波位相推定フィルタと呼ぶこともある。第5のディジタルフィルタ50は、ディジタルフィルタ51と、ディジタルフィルタ52と、を含む。ディジタルフィルタ51及びディジタルフィルタ52のフィルタタップ係数は、それぞれf、fであるものとする。
【0031】
第6のディジタルフィルタ60は、搬送波周波数推定フィルタと呼ぶこともある。第6のディジタルフィルタ60は、ディジタルフィルタ61と、ディジタルフィルタ62と、を含む。ディジタルフィルタ61及びディジタルフィルタ62のフィルタタップ係数は、それぞれg、gであるものとする。
【0032】
第7のディジタルフィルタ70は、送信器IQ不均衡補償フィルタと呼ぶこともある。第7のディジタルフィルタ70はWLフィルタ71と、WLフィルタ72と、を含む。WLフィルタ71のフィルタタップ係数は、hx-o、hx-cである。Lフィルタ72のフィルタタップ係数は、hy-o、hy-cである。
【0033】
第1のディジタルフィルタ10は、周波数オフセットの推定値に基づき帯域外クロストークを除去する。第2のディジタルフィルタ20は、波長分散補償を行う。第3のディジタルフィルタ30は、受信器側IQ利得不均衡補償、受信器側IQ位相不均衡補償および受信器側IQスキュー補償を行う。第4のディジタルフィルタ40は、モード分割多重分離を行う。第5のディジタルフィルタ50は、搬送波位相推定を行う。第6のディジタルフィルタ60は、搬送波周波数推定を行う。第7のディジタルフィルタ70は、送信器側IQ利得不均衡補償、送信器側IQ位相不均衡補償および送信器側IQスキュー補償を行う。
【0034】
(第1のディジタルフィルタ10の動作)
第1のディジタルフィルタ10(波長分割多重分離フィルタ10)は、周波数オフセットの推定値に基づき帯域外クロストークを除去する。第1のディジタルフィルタ10には、xモードの複素入力信号及びyモードの複素入力信号を入力する。第1のディジタルフィルタ10は、xモードの複素入力信号及びyモードの複素入力信号に対して、MWDFの系列長で離散フーリエ変換を行う。これにより、信号の周波数成分So-x及びSo-yが得られる。So-x及びSo-yの共役複素成分を、それぞれSc-x及びSc-yとする。So-x、Sc-x、So-y、Sc-yは、それぞれディジタルフィルタ11、ディジタルフィルタ12、ディジタルフィルタ13、ディジタルフィルタ14に入力される。各ディジタルフィルタからは、S’o-x、S’c-x、S’o-y、S’c-yが出力として得られる。ディジタルフィルタ11、ディジタルフィルタ12、ディジタルフィルタ13及びディジタルフィルタ14は、急峻なカットオフ特性を有し、信号帯域幅と同一幅の通過域を有するディジタルフィルタである。ディジタルフィルタ11及び12には、ロールオフ率を0とするコサインロールオフフィルタが好適である。また、ディジタルフィルタ11、ディジタルフィルタ12、ディジタルフィルタ13、ディジタルフィルタ14の中心周波数は、共に、第6のディジタルフィルタ60(搬送波周波数推定フィルタ60)によって推定されてフィードバックされた周波数オフセット値fと一致するように設定される。周波数オフセットの推定値は、変調レート及び虚数単位をそれぞれFおよびjとすると、
log(g)/(2πj)
または
log(g)/(2πj)
から導出することができる。
【0035】
(第2のディジタルフィルタ20の動作)
第2のディジタルフィルタ20(波長分散補償フィルタ20)は、波長分散補償を行う。S’o-x、S’c-x、S’o-y及びS’c-yは、それぞれディジタルフィルタ21、ディジタルフィルタ22、ディジタルフィルタ23及びディジタルフィルタ24に入力される。ディジタルフィルタ21、ディジタルフィルタ22、ディジタルフィルタ23及びディジタルフィルタ24の伝達関数は、波長分散により生じた位相変化の逆特性となるように設定される。S’o-x、S’c-x、S’o-y及びS’c-yは、それぞれディジタルフィルタ21、ディジタルフィルタ22、ディジタルフィルタ23及びディジタルフィルタ24に入力される。これにより得られた出力を、それぞれS’’o-x、S’’c-x、S’’o-y及びS’’c-yとする。S’’o-x、S’’c-x、S’’o-y及びS’’c-yは、逆離散フーリエ変換により信号の時間波形に変換される。これにより、信号系列Vax-o、Vax-c、Vay-o、Vay-cが得られる。
【0036】
(第3のディジタルフィルタ30の動作)
第3のディジタルフィルタ30(受信器IQ不均衡補償フィルタ30)は、受信器側IQ利得不均衡補償、受信器側IQ位相不均衡補償および受信器側IQスキュー補償を行う。2並列ディジタルフィルタ31、2並列ディジタルフィルタ32、へ入力されるxモード及びモードの複素入力信号列を、それぞれubx-o、ubx-c、uby-o及びuby-cとする。これらは、それぞれ以下の式(1)、(2)、(3)及び(4)で与えられる。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
ここで、nはサンプルインデックスを表し、D、D及びDは、それぞれ第3のディジタルフィルタ30の処理遅延、第4のディジタルフィルタ40の処理遅延及び第7のディジタルフィルタ70の処理遅延を表す。
【0037】
2並列ディジタルフィルタ31、2並列ディジタルフィルタ32のフィルタタップ係数bx-o、bx-c、by-o、by-cは、それぞれ、以下の式(5)、(6)、(7)、(8)で与えられる。
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
は第3のディジタルフィルタ30のフィルタタップ数を示す。
【0038】
出力Vbx及びVbyはそれぞれ式(9)及び(10)のように表すことができる。
【数9】
【数10】
【0039】
(第4のディジタルフィルタ40の動作)
第4のディジタルフィルタ40(モード多重分離フィルタ40)は、モード分割多重分離を行う。バタフライフィルタ41のフィルタタップ数をMとする。バタフライフィルタ41へ入力されるxモード及びyモードの複素入力信号列をそれぞれ、ucx、ucyとすると、それらはそれぞれ式(11)及び(12)により表すことができる。
【数11】
【数12】
【0040】
xx、cxy、cyx、cyyは以下の式で与えられる。
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【0041】
出力Vcx及びVcyは、それぞれ式(17)及び(18)で表すことができる。
【数17】
【数18】
【0042】
(第5のディジタルフィルタの動作)
第5のディジタルフィルタ50(搬送波位相推定フィルタ50)は、搬送波位相の推定を行う。バタフライフィルタ41の出力Vcx及びVcyは、それぞれディジタルフィルタ51及びディジタルフィルタ52へ入力される。ディジタルフィルタ51及びディジタルフィルタ52の出力をそれぞれVfx及びVfyとすると、それらはそれぞれ式(19)及び(20)で与えられる。
【数19】
【数20】
【0043】
(第6のディジタルフィルタの動作)
第6のディジタルフィルタ60(搬送波周波数推定フィルタ60)は、搬送波周波数の推定を行う。ディジタルフィルタ51及びディジタルフィルタ52の出力Vfx、Vfyは、それぞれディジタルフィルタ60及びディジタルフィルタ61へ入力される。第6のディジタルフィルタの出力をVgx及びVgyとすると、それらはそれぞれ式(21)及び(22)で与えられる。
【数21】
【数22】
【0044】
第6のディジタルフィルタ60によって推定された搬送波周波数のオフセット値fは、PLL(位相同期回路)63を介して、第1のディジタルフィルタ10にフィードバックされる。
【0045】
(第7のディジタルフィルタの動作)
第7のディジタルフィルタ70(送信器IQ不均衡補償フィルタ70)は、送信器側IQ利得不均衡補償、送信器側IQ位相不均衡補償および送信器側IQスキュー補償を行う。行列Aの複素共役をAとし、WLフィルタ71及びWLフィルタ72へ入力される複素入力信号列をそれぞれ、uhx-o、uhy-o、uhx-c及びuhy-cとすると、それらはそれぞれ式(23)、(24)、(25)及び(26)により表すことができる。
【数23】
【数24】
【数25】
【数26】
【0046】
WLフィルタ71及びWLフィルタ72のフィルタタップ数をMとすると、WLフィルタ71のフィルタタップ係数hx-o、hx-c及びWLフィルタ72のフィルタタップ係数hy-o、hy-cはそれぞれ式(27)、(28)、(29)及び(30)により表すことができる。
【数27】
【数28】
【数29】
【数30】
【0047】
第7のフィルタの出力をVhx、Vhyとすると、WLフィルタ71及びWLフィルタ72の出力はそれぞれ式(31)及び(32)で表すことができる。
【数31】
【数32】
【0048】
(フィルタタップ係数の更新法)
WLフィルタ71及びWLフィルタ72の出力Vhx及びVhyに対し、シンボル判定を行い、得られたxモード及びyモードの決定信号をそれぞれd、dとする。WLフィルタ71及びWLフィルタ72のフィルタタップ係数を更新するための誤差信号をそれぞれe、eとすると、それらはそれぞれ式(33)及び(34)で表すことができる。
【数33】
【数34】
【0049】
WLフィルタ71及びWLフィルタ72のフィルタタップ係数の更新式は、
行列Aのエルミート転置をAとすると、
それぞれ式(35)、(36)、(37)および(38)で表すことができる。
【数35】
【数36】
【数37】
【数38】
【0050】
ディジタルフィルタ61及びディジタルフィルタ62のフィルタタップ係数を更新するための誤差信号をそれぞれegx及びegyとし、それらをそれぞれ式(39)及び(40)で表す。
【数39】
【数40】
【0051】
egx及びegyは、それぞれ式(41)及び(42)から導出することができる。
【数41】
【数42】
【0052】
ディジタルフィルタ61及びディジタルフィルタ62のフィルタタップ係数は、それぞれ式(43)及び式(44)により更新される。
【数43】
【数44】
【0053】
ディジタルフィルタ51及びディジタルフィルタ52のフィルタタップ係数を更新するための誤差信号をefx及びefyとし、それぞれ式(45)及び式(46)で表す。
【数45】
【数46】
【0054】
fx及びefyは、それぞれ式(47)及び(48)から導出することができる。
【数47】
【数48】
【0055】
ディジタルフィルタ51及びディジタルフィルタ52のフィルタタップ係数は、それぞれ式(49)及び(50)により更新される。
【数49】
【数50】
【0056】
バタフライフィルタ41のフィルタタップ係数を更新するための誤差信号をecx、ecyとし、それらをそれぞれ式(51)および(52)で表す。
【数51】
【数52】
【0057】
cx、ecyは、それぞれ式(53)および(54)から導出することができる。
【数53】
【数54】
【0058】
バタフライフィルタ41のフィルタタップ係数は、それぞれ式(55)、(56)、(57)及び(58)により更新される。
【数55】
【数56】
【数57】
【数58】
ただし、Ucx、Ucyは、それぞれ式(59)及び(60)で表されるものとする。
【数59】
【数60】
【0059】
2並列ディジタルフィルタ31及び2並列ディジタルフィルタ32のフィルタタップ係数を更新するための誤差信号をそれぞれebx及びebyとし、それらをそれぞれ式(61)及び(62)で表す。
【数61】
【数62】
【0060】
2並列ディジタルフィルタ31及び2並列ディジタルフィルタ32のフィルタタップ係数は、それぞれ式(63)、(64)、(65)、(66)により更新される。
【数63】
【数64】
【数65】
【数66】
【0061】
ただし、Ubx-o、Ubx-c、Uby-o、Uby-cは、それぞれ式(67)、(68)、(69)及び(70)で表されるものとする。
【数67】
【数68】
【数69】
【数70】
【0062】
本実施の形態によれば、ディジタルコヒーレント通信におけるIQ不均衡を補償しつつ、搬送波位相及び周波数を推定してこれを波長分割多重分離フィルタにフィードバックすることで、位相変動及び周波数オフセットの存在下においても安定にモード多重分離及びナイキスト波長分割多重分離を実現する信号処理回路を提供できる。
【0063】
本実施の形態において、第1のディジタルフィルタ10、第3のディジタルフィルタ30及び第6のディジタルフィルタ60は、本開示に関して必須の構成である。一方、第2のディジタルフィルタ20、第4のディジタルフィルタ40、第5のディジタルフィルタ50及び第7のディジタルフィルタ70は、本開示に関して任意の構成である。
【0064】
第2のディジタルフィルタ20を備えた構成では、波長分散に伴う信号品質の低下を補償できるので、信号処理回路の性能をさらに向上できる。
【0065】
第4のディジタルフィルタ40を備えた構成では、モード多重分離を実現できる。
【0066】
第5のディジタルフィルタ50を備えた構成では、搬送波位相推定を実現できる。
【0067】
第7のディジタルフィルタ70を備えた構成では、送信器側IQ不均衡に伴う信号品質の低下を補償できるので、信号処理回路の性能をさらに向上できる。
【0068】
[第2の実施の形態]
図3は、第2の実施の形態に係るディジタルコヒーレント受信器2の機能ブロック図である。ディジタルコヒーレント受信器2は、コヒーレントレシーバ201と、ADコンバータ202と、信号処理回路1と、ローカル光源203と、を備える。コヒーレントレシーバ201、ADコンバータ202およびローカル光源203は、既存の技術を用いて実現することができる。信号処理回路1は、図2に示される信号処理回路1である。コヒーレントレシーバ201は、ローカル光源203からのローカル光との干渉を利用して光信号をコヒーレント検波する。ADコンバータ202は、コヒーレント検波されたアナログ信号をディジタル信号に変換して信号処理回路1に入力する。信号処理回路1の構成および動作は前述の通りであるので、詳しい説明は省略する。
【0069】
本実施の形態によれば、ディジタルコヒーレント通信におけるIQ不均衡を補償しつつ、搬送波位相及び周波数を推定してこれを波長分割多重分離フィルタにフィードバックすることで、位相変動及び周波数オフセットの存在下においても安定にモード多重分離及びナイキスト波長分割多重分離を実現するディジタルコヒーレント受信器を提供できる。
【0070】
[第3の実施の形態]
図4は、第3の実施の形態に係るディジタルコヒーレント通信システム3の機能ブロック図である。ディジタルコヒーレント通信システム3は、送信器4と、ディジタルコヒーレント受信器2と、を備える。送信器4は、既存の技術を用いて実現することができる。ディジタルコヒーレント受信器2は、図3に示されるディジタルコヒーレント受信器である。送信器4からの信号光は、ディジタルコヒーレント受信器2によって受信される。ディジタルコヒーレント受信器の構成および動作は前述の通りであるので、詳しい説明は省略する。
【0071】
本実施の形態によれば、ディジタルコヒーレント通信におけるIQ不均衡を補償しつつ、搬送波位相及び周波数を推定してこれを波長分割多重分離フィルタにフィードバックすることで、位相変動及び周波数オフセットの存在下においても安定にモード多重分離及びナイキスト波長分割多重分離を実現するディジタルコヒーレント通信システムを提供できる。
【0072】
[本開示の各態様]
以下、本開示の各態様についてまとめる。本開示のある態様の信号処理回路は、ディジタルコヒーレント受信器に使われる信号処理回路であって、波長分割多重分離を行う第1のディジタルフィルタと、受信器側IQ不均衡補償を行う第3のディジタルフィルタと、搬送波周波数の推定を行う第6のディジタルフィルタと、を含む。第6のディジタルフィルタは、推定した周波数オフセット値を第1のディジタルフィルタにフィードバックする。第1のディジタルフィルタは、フィードバックされた周波数オフセット値に基づいて帯域外クロストークを除去する。第1のディジタルフィルタ、第3のディジタルフィルタ及び第6のディジタルフィルタは、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、この順に直列に接続される。
【0073】
この態様によれば、モード多重システムにおいて位相変動及び周波数オフセットが存在する場合においても、波長分割多重分離及びIQ不均衡補償を同時に実現する信号処理装置を提供することができる。
【0074】
ある態様では、信号処理回路は、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、第1のディジタルフィルタの前段又は第1のディジタルフィルタと第3のディジタルフィルタとの間に、波長分散補償を行う第2のディジタルフィルタを含む。
【0075】
この態様によれば、波長分散に伴う信号品質の低下を補償できるので、信号処理回路の性能をさらに向上できる。
【0076】
ある態様では、信号処理回路は、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、第3のディジタルフィルタと第6のディジタルフィルタとの間に、モード分割多重分離を行う第4のディジタルフィルタを含む。
【0077】
この態様によれば、モード多重分離を実現できる。
【0078】
ある実施の形態では、信号処理回路は、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、第3のディジタフィルタと第6のディジタルフィルタとの間又は第6のディジタルフィルタの後段に、搬送波位相推定を行う第5のディジタルフィルタを含む。
【0079】
この態様によれば、搬送波位相推定を実現できる。
【0080】
ある態様では、信号処理回路は、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、第6のディジタルフィルタの後段に、送信器側IQ不均衡補償を行う第7のフィルタを含む。
【0081】
この態様によれば、送信器側IQ不均衡に伴う信号品質の低下を補償できるので、信号処理回路の性能をさらに向上できる。
【0082】
本開示のある態様のディジタルコヒーレント受信器は、信号処理回路と、コヒーレントレシーバと、ADコンバータと、ローカル光源とを備えたディジタルコヒーレント受信器であって、信号処理回路は、波長分割多重分離を行う第1のディジタルフィルタと、受信器側IQ不均衡補償を行う第3のディジタルフィルタと、搬送波周波数の推定を行う第6のディジタルフィルタと、を含む。第6のディジタルフィルタは、推定した周波数オフセット値を第1のディジタルフィルタにフィードバックする。第1のディジタルフィルタは、フィードバックされた周波数オフセット値に基づいて帯域外クロストークを除去する。第1のディジタルフィルタ、第3のディジタルフィルタ及び第6のディジタルフィルタは、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、この順に直列に接続される。
【0083】
この態様によれば、ディジタルコヒーレント通信におけるIQ不均衡を補償しつつ、搬送波位相及び周波数を推定してこれを波長分割多重分離フィルタにフィードバックすることで、位相変動及び周波数オフセットの存在下においても安定にモード多重分離及びナイキスト波長分割多重分離を実現するディジタルコヒーレント受信器を提供できる。
【0084】
本開示のある態様のディジタルコヒーレント通信システムは、送信器と、ディジタルコヒーレント受信器とを備えたディジタルコヒーレント通信システムであって、ディジタルコヒーレント受信器は、信号処理回路と、コヒーレントレシーバと、ADコンバータと、ローカル光源とを備えたディジタルコヒーレント受信器であって、信号処理回路は、波長分割多重分離を行う第1のディジタルフィルタと、受信器側IQ不均衡補償を行う第3のディジタルフィルタと、搬送波周波数の推定を行う第6のディジタルフィルタと、を含む。第6のディジタルフィルタは、推定した周波数オフセット値を第1のディジタルフィルタにフィードバックする。第1のディジタルフィルタは、フィードバックされた周波数オフセット値に基づいて帯域外クロストークを除去する。第1のディジタルフィルタ、第3のディジタルフィルタ及び第6のディジタルフィルタは、ディジタルコヒーレント受信器への光信号の入力側から見て、この順に直列に接続される。
【0085】
この態様によれば、ディジタルコヒーレント通信におけるIQ不均衡を補償しつつ、搬送波位相及び周波数を推定してこれを波長分割多重分離フィルタにフィードバックすることで、位相変動及び周波数オフセットの存在下においても安定にモード多重分離及びナイキスト波長分割多重分離を実現するディジタルコヒーレント通信システムを提供できる。
【0086】
以上、本開示を実施例を基に説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合わせに、色々な変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0087】
図2の信号処理回路1は、xモード、yモードの2モードの偏波信号を処理するものであった。これに限られず、実施の形態の信号処理回路は、より高次モードの信号を処理してもよい。本変形例によれば、多モードによる多重信号を処理することができる。
【符号の説明】
【0088】
1・・信号処理回路、
2・・ディジタルコヒーレント受信器、
3・・ディジタルコヒーレント通信システム、
4・・送信器、
10・・第1のディジタルフィルタ、
11・・ディジタルフィルタ、
12・・ディジタルフィルタ、
20・・第2のディジタルフィルタ、
21・・ディジタルフィルタ、
22・・ディジタルフィルタ、
23・・ディジタルフィルタ、
24・・ディジタルフィルタ、
30・・第3のディジタルフィルタ、
31・・2並列ディジタルフィルタ、
32・・2並列ディジタルフィルタ、
40・・第4のディジタルフィルタ、
41・・バタフライフィルタ、
50・・第5のディジタルフィルタ、
51・・ディジタルフィルタ、
52・・ディジタルフィルタ、
60・・第6のディジタルフィルタ、
61・・ディジタルフィルタ、
62・・ディジタルフィルタ、
63・・PLL
70・・第7のディジタルフィルタ、
71・・WLフィルタ、
72・・WLフィルタ、
201・・コヒーレントレシーバ、
202・・ADコンバータ、
203・・ローカル光源。
図1
図2
図3
図4