(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138955
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】構造物の遮水工法
(51)【国際特許分類】
B09B 1/00 20060101AFI20241002BHJP
E02B 7/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B09B1/00 F
E02B7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049692
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221615
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 祐子
(72)【発明者】
【氏名】松崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】手計 武尊
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AB01
4D004BB05
(57)【要約】
【課題】本発明は、形成した吹付遮水層が剥がれにくく、また、遮水シートの敷設箇所と吹付遮水層の形成箇所を施工現場に応じて判断することができ、遮水シートの破損を最小限に抑え、かつ固定部の破損を防止でき、また、吹付遮水層部分に孔が生じた場合であっても構造物部材と密着しているため漏水や浸水せず、さらには、補修などのメンテナンスも容易に行うことができ、作業効率を省力化できる構造物の遮水工法を提供する。
【解決手段】本発明は、構造物1の遮水すべき面の一部に遮水シート4を敷設し、敷設した遮水シート4の端面と構造物1の面との境目を取付バー6で塞ぎ、次いで、吹付遮水剤を構造物1の遮水すべき面の残余部及び前記取付バー6と該取付バー6近傍の遮水シート4部分の上に吹き付けて吹付遮水層5を形成したことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の遮水すべき面の一部に遮水シートを敷設し、敷設した遮水シートの端面と構造物の面との境目を取付バーで塞ぎ、次いで、吹付遮水剤を構造物の遮水すべき面の残余部及び前記取付バーと該取付バー近傍の遮水シート部分の上に吹き付けて吹付遮水層を形成した、
ことを特徴とする構造物の遮水工法。
【請求項2】
略凹形状をなす構造物の遮水工法であり、前記構造物の底面から立上り部途中箇所または立上り部の基端部周囲の基礎部分の少なくとも一部まで遮水シートを敷設し、敷設した遮水シートの端面と構造物の面との境目を取付バーで塞ぎ、次いで、吹付遮水剤を構造物の遮水すべき面の残余部及び前記取付バーと該取付バー近傍の遮水シート部分までに吹き付けて吹付遮水層を形成した、
ことを特徴とする構造物の遮水工法。
【請求項3】
前記遮水シートと前記吹付遮水層とは、構造体上で取付バーを介して接合される、
ことを特徴とする請求項1または2記載の構造物の遮水工法。
【請求項4】
前記構造体の遮水には前記吹付遮水層を適用し、前記構造体以外の箇所の遮水には前記遮水シートを適用する、
ことを特徴とする請求項3記載の構造物の遮水工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば最終処分場などの構造物において廃棄物に由来する浸出水の漏出を防止する構造物の遮水工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、廃棄物を処分する最終処分場などの構造物を建設する際には、廃棄物に由来する浸出液の漏出を防ぐため、底面や周囲壁に遮水工を行う必要がある。
通常の遮水方法としては、ポリエチレン系の遮水シートを対象面に密着させるように配設する。ここで、従来の遮水シートよる遮水では、鉄骨面、擁壁や中柱等のような立上り部においては、遮水シートの端部を該立上り部の上端側にアンカーボルト等を用いて物理的に固定している。
【0003】
しかし、上記のように遮水シートの端部を立上り部の上端側にアンカーボルト等を用いて物理的に固定すると、廃棄物の荷重や埋立作業時の下方向への引張力により、前記アンカーボルト等で物理的に固定した固定部が破損してしまう可能性がある。
【0004】
また、ポリウレタン系の吹付遮水剤により遮水層を形成する遮水方法(例えば特開2008-142703号公報)もあるが、最終処分場の底面は地面やモルタルで構成されるため、地面やモルタルにひび割れ等が生じると、一緒に遮水層も割れてしまうとの課題があった。このため、吹付遮水剤による遮水事例は国内では極めて少ないとされている。
【0005】
さらに、遮水シートと吹付け遮水剤との組み合わせ、すなわち遮水シート上に遮水剤を吹き付ける工法は、遮水シートがポリエチレン系で、吹付け遮水剤がポリウレタン系であるため、付着力が弱く剥がれやすいとの課題も指摘されており、該課題の解決策も要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かくして、本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであって、形成した吹付遮水層が剥がれにくく、また、法面や底面などには遮水シートを敷設しつつ、立上り部には吹付遮水層を形成するなど遮水シートの敷設箇所と吹付遮水層の形成箇所を施工現場に応じて判断することができ、これにより例えば廃棄物の荷重や埋立作業時の下方向への引張力等が遮水シートに作用し難い構造とし、もって遮水シートの破損を最小限に抑え、かつ固定部の破損を防止でき、また、吹付遮水層部分に例えばピンホールなどの孔が生じた場合であっても構造物部材と密着しているため漏水や浸水せず、さらには、補修などのメンテナンスも容易に行うことができ、従来の遮水シートの設置作業に比べて作業効率を省力化できる構造物の遮水工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
構造物の遮水すべき面の一部に遮水シートを敷設し、敷設した遮水シートの端面と構造物の面との境目を取付バーで塞ぎ、次いで、吹付遮水剤を構造物の遮水すべき面の残余部及び前記取付バーと該取付バー近傍の遮水シート部分の上に吹き付けて吹付遮水層を形成した、
ことを特徴とし、
または、
略凹形状をなす構造物の遮水工法であり、前記構造物の底面から立上り部途中箇所または立上り部の基端部周囲の基礎部分の少なくとも一部まで遮水シートを敷設し、敷設した遮水シートの端面と構造物の面との境目を取付バーで塞ぎ、次いで、吹付遮水剤を構造物の遮水すべき面の残余部及び前記取付バーと該取付バー近傍の遮水シート部分までに吹き付けて吹付遮水層を形成した、
ことを特徴とし、
または、
前記遮水シートと前記吹付遮水層とは、構造体上で取付バーを介して接合される、
ことを特徴とし、
または、
前記構造体の遮水には前記吹付遮水層を適用し、前記構造体以外の箇所の遮水には前記遮水シートを適用する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、形成した吹付遮水層が剥がれにくく、また、法面や底面などには遮水シートを敷設しつつ、立上り部には吹付遮水層を形成するなど遮水シートの敷設箇所と吹付遮水層の形成箇所を施工現場に応じて判断することができ、これにより例えば廃棄物の荷重や埋立作業時の下方向への引張力等が遮水シートに作用し難い構造とし、もって遮水シートの破損を最小限に抑え、かつ固定部の破損を防止でき、また、吹付遮水層部分に例えばピンホールなどの孔が生じた場合であっても構造物部材と密着しているため漏水や浸水せず、さらには、補修などのメンテナンスも容易に行うことができ、従来の遮水シートの設置作業に比べて作業効率を省力化できるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】擁壁部における本発明の概略構成を説明する説明図である。
【
図2】中柱部における本発明の概略構成を説明する説明図である。
【
図3】浸出水集排水管周りにおける本発明の概略構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図に基づき、本発明の構造物の遮水工法につき説明する。
廃棄物を処分する最終処分場などの構造物1の底面や立上がり部には、前記廃棄物に由来する浸出水を防ぐための工夫がなされている。前記立上り部とは、鉄骨面、擁壁部2および中柱部3のような箇所のことである。
図1は、構造物1の擁壁部2における本発明の概略構成を説明した図である。
【0012】
図1の符号4は、遮水シートを示している。前記遮水シート4は、ポリエチレン系等の遮水シート4が用いられる。そして、符号5は、吹付遮水剤を吹き付けて形成した吹付遮水層を示している。前記吹付遮水剤は、ポリウレタン系の吹付遮水剤が使用される。
【0013】
ここで、ポリエチレン系等の遮水シート4と、ポリウレタン系の吹付遮水剤とを組み合わせる場合、一般的に、ポリエチレンに対してポリウレタンの付着性が弱く、引張力により剥がれてしまい、適切に遮水できないとの課題があった。
【0014】
そこで、本発明では、まず最終処分場などの構造物1において遮水すべき面の一部に遮水シート4を敷設する。そして、敷設した遮水シート4の端面と前記構造物1の面との境目に取付バー6を取り付けて、該境目を塞ぐように取付バー6を固定部材で取り付け、固定する。すなわち、構造物1の面に対して遮水シート4の端部を取付バー6および固定部材により封止するように気密に固定する。前記取付バー6は、吹付遮水剤に対する付着力が遮水シート4より強い材料、例えば金属板、好ましくはステンレスバーが用いられる。なお、取付バー6の固定方法は何ら限定されないが、本実施例ではアンカーボルトが採用されている。
【0015】
そして、前記取付バー6で境目を塞いだ後、構造物1の面の残余部分、すなわち前記遮水シート4が敷設されていない部分に吹付遮水剤を吹き付けて吹付遮水層5を形成する。前記吹付遮水剤を吹き付ける際は、取付バー6及び該取付バー6近傍の遮水シート4部分の上からも吹き付けることが好ましい。なお、吹付遮水剤の吹き付け作業は、残余部分の上から下に向かって吹き付け、この上から下に向かって吹き付ける作業を繰り返し行うことで、吹付遮水剤を効率よく被覆することができる。
【0016】
ここで、吹付遮水剤の付着性を向上させるため、前記取付バー6は、該取付バー6の表面を研磨により粗く加工したり、溶剤で埃や油分等の接着阻害成分を除去したり、あるいはその両方を行うことで、ポリウレタン系の吹付遮水剤の付着性を向上することができる。しかしながら、この加工は必ず行う必要はなく、構造物1や施工現場に応じて適宜判断されるものとなる。
【0017】
擁壁部2における実施例を
図1に基づき説明する。
本実施例における擁壁部2は、
図1に示すとおり、小段部7及び法面部8が設けられており、該小段部7及び法面部8に遮水シート4が敷設される。この遮水シート4を敷設するにあたって、
図1から理解されるように各部材を積層することで遮水シート層9が形成されている。
【0018】
前記遮水シート層9は、まず例えば反毛フェルトなどのフェルト素材からなる保護マットを構造物1の小段部7及び法面部8に敷設する。次いで、低密度ポリエチレンシートなどのポリエチレン系等の遮水シート4(下面遮水シート4)を前記保護マットの上から敷設し、その下面遮水シート4の上から漏水などを検出する導電性マットを敷設する。そして、その導電性マットの上からは、例えばベントナイトシートなどのベントナイト系の自己修復マットを敷設し、該自己修復マットの上からポリエチレン系等の遮水シート4(上面遮水シート4)を重ねて敷設する。その後、前記上面遮水シート4の上に給電電極を配置した後、反毛フェルトなどのフェルト素材からなる遮光性保護マットを敷設して遮水シート層9が形成される。なお、
図1においては、導電性マット及び給電電極は省略している。
【0019】
そして、前記遮水シート層9を形成した後、その遮水シート層9を構成する下面遮水シート4と上面遮水シート4の各端面と構造物1の擁壁部2の面との境目に取付バー6を取り付けて、該境目を塞ぐように取付バー6が固定部材で固定される。なお、
図1から理解されるとおり、遮水シート層9を構成する下面遮水シート4と上面遮水シート4以外の部材の端部近傍については、後に打設されるコンクリート中に埋設されることとなる。
【0020】
ここで、前記取付バー6の取付けについては、まず気密防水性を有し、両面に粘着力を有した両面粘着テープ(例えばブチルテープ)を構造物1の表面に貼り付ける。この貼り付ける位置は、遮水シート4の端面と構造物1の面との境目にあたる部分に貼り付けることが好ましい。そして、その両面粘着テープに下面遮水シート4の端面を貼り付けて、固定する。次いで、前記下面遮水シート4の端面に同じく前記両面粘着テープを貼り付け、その貼り付けた両面粘着テープに上面遮水シート4の端面を貼り付けて固定する。その後、その上に取付バー6を取り付けるのだが、上面遮水シート4と取付バー6との間にはゴム板が挟まれて構成される。つまり、ゴム板の上に取付バー6が取り付けられ、これらを例えばアンカーのような固定部材によって固定する(
図1参照)。
【0021】
このゴム板は、弾力性を有するため、浸出水が構造物1と遮水シート層9との間に浸入しないようしっかり密閉することができ、かつ滑りにくく摩擦力が大きいため、廃棄物の荷重や埋立作業時の下方向への引張力により遮水シート4が剥がれ、また取付バー6が破損するのを抑制する作用がある。
【0022】
なお、遮水シート層9は、下面遮水シート4と上面遮水シート4の端部同士を融着(袋綴融着)させるととともに、上面遮水シート4の端部から別の上面遮水シート4を延出させるように接合する構成としてもよい。この場合は、延出する上面遮水シート4を上記方法により構造物の面に固定することになる。
【0023】
次に、取付バー6を取り付けて、遮水シート4を固定して境目を塞いだ後、構造物1の擁壁部2の残余部分、すなわち前記遮水シート4が敷設されていない面に吹付遮水剤を吹き付けて吹付遮水層5を形成する。
【0024】
前記吹付遮水層5を形成するにあたって、まず吹付遮水剤を吹き付ける残余部分にエポキシ系プライマー(例えば、レジプライマー)などの下地材(プライマー)を塗布用のローラーやハケ、エアレス塗装機を用いて塗布する。前記下地材は、吹付遮水剤の馴染みを良くし表面の密着性を高め、吹付遮水剤を剥がれにくくするとの役割がある。
【0025】
その後、前記塗布した下地材の上から吹付遮水剤を吹き付ける。この吹き付け方法としては、吹付遮水剤を擁壁部2の残余部分の上から下に向かって吹き付けることが好ましい。また、吹き付けた吹付遮水剤の厚みは2mm以上となることが好ましい。
【0026】
なお、本実施例においては、前記吹付遮水剤として超速硬化ポリウレタン樹脂を吹付機械を使用して吹付塗布することで、吹き付けられた吹付遮水剤は10~20秒程度でゲル化硬化し、液だれせずに、均質かつ強靭で継目のない防水膜を形成することができる。
【0027】
次いで、吹付遮水剤を吹き付けた上から、塗布用のローラーやハケ、エアレス塗装機を用いて遮光性のある遮水剤(トップコート)を塗布して、吹付遮水層5を形成する(
図1参照)。この遮水剤としては、アクリル系ハルスハイブリッド塗料(レジトップ)などが用いられる。
つまり、吹付遮水層5は、プライマーを塗布し、該プライマーの上に吹付遮水剤を吹き付け、該吹付遮水剤の上から遮光性のあるトップコートを塗布した3層から形成されている。
【0028】
ここで、吹付遮水層5の形成は、取付バー6及び該取付バー6近傍の遮水シート4部分の上にも形成する。これにより、吹付遮水剤が取付バー6に結合して、前記吹付遮水層5が剥がれにくくなるのである。
【0029】
このように吹付遮水層5を形成することにより、吹付遮水層5が構造物1の擁壁部2に結合するため廃棄物の荷重による破損は生じにくく、密着状態で被覆するため隙間なく施工することができる。また、吹付遮水層5に孔(ピンホール)が生じた場合でも、構造物1の擁壁部2と密着しているため漏水や浸水しにくく、仮に補修が必要な場合は、孔が生じた箇所に適宜吹付遮水層5を形成するだけで補修ができるためメンテナンスも容易となる。
【0030】
また、遮水シート層9の形成には、遮水シート4等をクレーンで荷揚げし、展張機を用いてシートの引き出し、隣り合うシート同士の重ね代の融着し、各シートを層状に順々に敷設する等の作業が必要で、いわゆる重労働であるのに対し、吹付遮水層5の形成は、プライマー、吹付遮水剤、トップコートを塗布するだけであるので肉体的な負荷を低減できる。そのため、本発明のように、遮水シート層9と吹付遮水層5とを組み合わせることで、吹付遮水層5の分だけ省力化できる。
【0031】
次に、中柱部3における実施例を
図2に基づき説明する。
図2から理解されるとおり、中柱部3の基端部周囲の基礎部分(構造体)の一部まで吹付遮水層5が形成されている。まず、構造物1の底面には遮水シート4を敷設するが、前記中柱部3の基端部においては該基端部に構築された構造体である基礎部分まで遮水シート4を敷設し、その遮水シート4の端面と基礎部分との境目に取付バー6を取り付けて、アンカーなどの固定部材で固定する(
図2参照)。
【0032】
なお、遮水シート4の敷設には、上述したとおり各部材を順々に敷設し、遮水シート層9を形成する。また、取付バー6の取付けについても、上述のとおり両面粘着テープを所定の箇所に貼り付けて、その貼り付けた両面粘着テープの上から下面遮水シート4の端面を貼り付け、固定する。その下面遮水シート4の端面上に、両面粘着テープを貼り付け、その上から上面遮水シート4を貼り付け、ゴム板を挟んで取付バー6を取り付けて固定する。これにより、取付バー6のすき間をなくし、浸出水が浸入してくるのを完全に防ぐことができる。
【0033】
そして、本実施例では中柱部3全体に吹付遮水層5を形成しつつ、前記のとおり中柱部3の基端部の周囲の基礎部分の一部まで吹付遮水層5が形成されている。なお、吹付遮水層5についても、上述のとおり下地材と該下地材の上に吹付遮水剤を吹き付け、該吹付遮水剤の上から遮光性のある遮水剤を塗布した3層から形成されている。
【0034】
このように、最終処分場等の構造物における擁壁部2および中柱部3のような立上り部や、基礎部分のようなコンクリート打設箇所や、鉄骨箇所などの平滑で割れ等が生じにくい構造体の遮水には吹付遮水層5が適用され、最終処分場の底面等の地面やモルタルのようなひび割れや変形が生じやすい構造体以外の箇所の遮水には遮水シート4などを敷設して形成される遮水シート層9が適用される。また、遮水シート4と吹付遮水層5とは構造体上で取付バー6を介して接合される。このように、施工される箇所に応じて遮水シート層9及び吹付遮水層5の適用箇所が適宜判断されるのである。また、強度のある構造体上で遮水シート4を取付バー6により固定することで、強固に固定して適切に封止できる。
【0035】
次に、浸出水集排水管10周りにおける実施例を
図3に基づき、説明する。
ここで、前記浸出水集排水管10は、構造物1の法面部8に沿って設けられ、廃棄物から発生する浸出水を集め構造物1の外側に排出する集排水機能を有しており、またガス抜き設備としての空気供給機能を兼ね備えている。
【0036】
前記構造物1の法面部8には、遮水シート4を敷設し、前記浸出水集排水管10の周囲のコンクリート打設箇所(構造体)の一部まで該遮水シート4が敷設される。そして、その浸出水集排水管10の近傍まで敷設された遮水シート4の端面と前記コンクリート打設箇所との境目に取付バー6を取り付けて、アンカーなどの固定部材で固定する。
なお、遮水シート4の敷設には、上述したとおり各部材を順々に敷設し、遮水シート層9を形成する。また、取付バー6の取付けについても、上述のとおりの手順にて取り付けられる。
【0037】
そして、前記遮水シート層9が形成されていない、浸出水集排水管10の周囲のコンクリート打設箇所の残余部分には吹付遮水層5が形成される。この際、取付バー6及び該取付バー6近傍の遮水シート4部分の上にも吹付遮水剤が吹き付けられて、吹付遮水層5を形成するが、この時、前記法面部8から突出している浸出水集排水管10の基端部(根本部分)にも吹付遮水剤が吹き付けられ、吹付遮水層5を形成する(
図3参照)。すなわち、吹付遮水層5は浸出水集排水管10の一部から遮水シート4の一部にわたって形成する。
【0038】
これにより、浸出水集排水管10の基端部の周囲も有効に遮水できる。また、浸出水集排水管10周りを完全に覆うように遮水シート4を敷設するより、取付バー6を用いて遮水シート4の端部を固定し、吹付遮水剤を吹き付ける方が簡単に作業でき、作業効率もよくなる。また、先ほども説明したが、メンテナンスも容易である。
【0039】
以上のように、本発明の
図1乃至
図3に基づいた実施例のように、(1)遮水シート層9の形成、(2)取付バー6の取付け、(3)吹付遮水層5の形成の順に構成することで、従来工法の廃棄物の荷重や埋立作業時の下方向への引張力により固定部が破損してしまうとの課題や、地面やモルタルにひび割れ等が生じると一緒に遮水層も割れてしまうとの課題、ポリエチレン系の遮水シートとポリウレタン系の吹付け遮水剤とでは付着力が弱く剥がれやすいとの課題を解決することができるのである。
【符号の説明】
【0040】
1 構造物
2 擁壁部
3 中柱部
4 遮水シート
5 吹付遮水層
6 取付バー
7 小段部
8 法面部
9 遮水シート層
10 浸出水集排水管