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特開2024-138963感光性樹脂組成物、硬化物、有機EL表示装置、および半導体装置
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  • 特開-感光性樹脂組成物、硬化物、有機EL表示装置、および半導体装置 図1
  • 特開-感光性樹脂組成物、硬化物、有機EL表示装置、および半導体装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138963
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化物、有機EL表示装置、および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241002BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20241002BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20241002BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241002BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20241002BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241002BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20241002BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20241002BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20241002BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20241002BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20241002BHJP
   C08K 5/28 20060101ALI20241002BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241002BHJP
   C08L 61/00 20060101ALI20241002BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20241002BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20241002BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20241002BHJP
   C08G 73/14 20060101ALI20241002BHJP
   C08G 73/22 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/023
H10K50/00
H10K50/10
H10K59/00
H10K59/10
H10K50/844
H10K59/122
H05B33/22 Z
H05B33/22 B
C08L79/08
C08K5/28
C08L63/00 A
C08L63/00 B
C08L63/00 C
C08L61/00
C08K5/42
C08L25/18
C08G59/40
C08G73/14
C08G73/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049701
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】鬼木 順平
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭
(72)【発明者】
【氏名】亀本 聡
【テーマコード(参考)】
2H225
3K107
4J002
4J036
4J043
【Fターム(参考)】
2H225AC00
2H225AE06P
2H225AE07P
2H225AF05P
2H225AM16P
2H225AM73P
2H225AM75P
2H225AM80P
2H225AM90P
2H225AM93P
2H225AM99P
2H225AN05P
2H225AN39P
2H225AN54P
2H225BA01P
2H225BA22P
2H225BA24P
2H225CA24
2H225CC03
2H225CC21
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC23
3K107DD89
3K107DD90
3K107DD97
3K107EE49
3K107FF14
4J002BC103
4J002CC002
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4J002CD042
4J002CD142
4J002CM021
4J002CM041
4J002EL026
4J002EL056
4J002EQ036
4J002ER007
4J002EU027
4J002EV198
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4J036AB07
4J036AB17
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4J036FB07
4J036FB14
4J036JA07
4J043QB15
4J043QB26
4J043SA16
4J043SA47
4J043SA54
4J043SA71
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB03
4J043UA082
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4J043UA132
4J043UA141
4J043XA03
4J043XA16
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】 高平坦かつ硬化物の吸水率が低い感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 (A)ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、およびそれらの共重合体からなる群より選択される一種類以上のアルカリ可溶性樹脂、(B)キノンジアジド化合物、(C)熱架橋剤、(D)熱酸発生剤および(E)フェノール樹脂を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(C)熱架橋剤が、(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤、および(C2)オキセタニル基を有する熱架橋剤を含有する感光性樹脂組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、およびそれらの共重合体からなる群より選択される一種類以上のアルカリ可溶性樹脂、(B)キノンジアジド化合物、(C)熱架橋剤、(D)熱酸発生剤および(E)フェノール樹脂を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(C)熱架橋剤が、(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤、および(C2)オキセタニル基を有する熱架橋剤を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤が、イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤、脂環式エポキシ熱架橋剤、および脂肪族エポキシ熱架橋剤からなる群より選択される1種類以上の熱架橋剤を含有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)熱酸発生剤が、スルホン酸エステル構造を有する熱酸発生剤を含有する、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)熱酸発生剤が、式(1)で示される化合物を含有する、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは炭素数1~10の2~4価の基である。Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基を示す。前記置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ビニル基、アセチレン基または炭素数1~10の直鎖若しくは環状のアルキル基が挙げられる。aは2~4の整数を示す。)
【請求項5】
前記(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤の含有量をγ1(質量)と前記(C2)オキセタニル基を有する熱架橋剤の含有量をγ2(質量)としたときに、質量比率γ2/γ1が1.1≦γ2/γ1≦5.0の範囲である、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、ポリベンゾオキサゾール前駆体を含む、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(E)フェノール樹脂がポリヒドロキシスチレン、および/またはポリヒドロキシスチレン/ポリスチレン共重合体を含む、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物を具備する有機EL表示装置。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化物を具備する半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化物、硬化物を具備する有機EL表示装置、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドやポリベンゾオキサゾールなどの耐熱性樹脂は、優れた機械特性や耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性を有することから、LSIなどの半導体装置の表面保護膜、層間絶縁膜、有機EL表示装置の絶縁層、表示装置用TFT基板の平坦化膜などに用いられている。
【0003】
一般に、有機EL表示装置は、基板上に、駆動回路、平坦化層、第一電極、画素分割層、発光層および第二電極を有し、対向する第一電極と第二電極との間に電圧を印加することで、あるいは、電流を流すことで発光することができる。これらのうち、平坦化層用材料および画素分割層用材料としては、紫外線照射によるパターニング可能な感光性樹脂組成物が一般に用いられている。
【0004】
近年では、長時間経過後でも性能が劣化しない、信頼性が高い材料が求められている。信頼性を低下させる要因としては、材料から発生するガス成分や、材料中に含まれる水分が放出することが挙げられ、溶出成分が配線や画素を腐食することで信頼性の低下を引き起こす。
【0005】
ポリイミド系やポリベンゾオキサゾール系の樹脂を用いた感光性樹脂組成物は、樹脂の耐熱性が高く、硬化物から発生するガス成分が少ないため、信頼性が高い有機EL表示装置を得ることができる点で好適に用いられている(例えば特許文献1参照)。
しかし、高温、高湿、光照射といった加速条件においては、発生するガス成分が少ないだけでは不十分であり、吸水率が低い材料が求められている。
【0006】
また、有機EL表示装置や半導体装置において、画素や配線の高密度化が進み、パターンの微細加工や、凹凸面を持った物体表面の平坦化に適した材料も求められている。
このような背景から、硬化物の吸水率が低く、平坦性に優れた感光性樹脂組成物の開発が強く望まれている。
【0007】
こうした課題に対して、高平坦化が可能な感光性樹脂組成物として、ポリイミド樹脂またはポリベンゾオキサゾール樹脂にノボラック樹脂を混合することが検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-91343号公報
【特許文献2】特開2022-34533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記に挙げた特許文献で提案された材料は、硬化物の吸水率の低減と、高平坦の両立が困難である。本発明は、上記問題点を鑑み、高平坦かつ硬化物の吸水率が低い感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は以下の構成により達成される。すなわち、
[1] (A)ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、およびそれらの共重合体からなる群より選択される一種類以上のアルカリ可溶性樹脂、(B)キノンジアジド化合物、(C)熱架橋剤、(D)熱酸発生剤および(E)フェノール樹脂を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(C)熱架橋剤が、(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤、および(C2)オキセタニル基を有する熱架橋剤を含有する感光性樹脂組成物。
[2] 前記(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤が、イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤、脂環式エポキシ熱架橋剤、および脂肪族エポキシ熱架橋剤からなる群より選択される1種類以上の熱架橋剤を含有する、前記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] 前記(D)熱酸発生剤が、スルホン酸エステル構造を有する熱酸発生剤を含有する、前記[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] 前記(D)熱酸発生剤が、式(1)で示される化合物を含有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは炭素数1~10の2~4価の基である。Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基を示す。前記置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ビニル基、アセチレン基または炭素数1~10の直鎖若しくは環状のアルキル基が挙げられる。aは2~4の整数を示す。)
[5] 前記(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤の含有量をγ1(質量)と前記(C2)オキセタニル基を有する熱架橋剤の含有量をγ2(質量)としたときに、質量比率γ2/γ1が1.1≦γ2/γ1≦5.0の範囲である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6] 前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、ポリベンゾオキサゾール前駆体を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7] 前記(E)フェノール樹脂がポリヒドロキシスチレン、および/またはポリヒドロキシスチレン/ポリスチレン共重合体を含む、前記[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8] 前記[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物。
[9] 前記[8]に記載の硬化物を具備する有機EL表示装置。
[10] 前記[8]に記載の硬化物を具備する半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、高平坦かつ硬化物の吸水率が低い感光性樹脂組成物を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】平坦化層と画素分割層を形成したTFT基板を例示する断面図である。
図2】平坦性評価サンプルの断面を例示する模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、およびそれらの共重合体からなる群より選択される一種類以上のアルカリ可溶性樹脂、(B)キノンジアジド化合物、(C)熱架橋剤、(D)熱酸発生剤および(E)フェノール樹脂を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(C)熱架橋剤が、(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤、および(C2)オキセタニル基を有する熱架橋剤を含有する感光性樹脂組成物である。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂を含有する。本発明におけるアルカリ可溶性とは、樹脂をγ-ブチロラクトンに溶解した溶液をシリコンウェハー上に塗布し、120℃で4分間乾燥(このように塗布した感光性樹脂膜に熱をかけて乾燥することを「プリベーク」と記す場合もある。)を行って、膜厚10μm±0.5μmの乾燥した感光性樹脂膜(このようにプリベークにより得た乾燥した感光性樹脂膜を「プリベーク膜」と記す場合もある。)を形成し、該プリベーク膜を23±1℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬した後、純水でリンス処理したときの膜厚減少から求められる溶解速度が50nm/分以上であることをいう。
【0015】
(A)アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体である。具体的には、ポリベンゾオキサゾール前駆体を含むことが好ましく、(A)アルカリ可溶性樹脂がポリベンゾオキサゾール前駆体を含むことで、硬化物の耐熱性や、吸水率などの膜物性に優れる。
【0016】
本発明において(A)アルカリ可溶性樹脂として用いることができるポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種類以上のアルカリ可溶性樹脂は、上記アルカリ可溶性を付与するため、樹脂の構造単位中および/またはその主鎖末端に酸性基を有することが好ましい。酸性基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基などが挙げられる。また、前記アルカリ可溶性樹脂は、フッ素原子を有することが好ましく、アルカリ水溶液で現像する際に、膜と基材との界面に撥水性を付与し、界面へのアルカリ水溶液のしみこみを抑制することができる。前記アルカリ可溶性樹脂中のフッ素原子含有量は、界面へのアルカリ水溶液のしみこみ防止効果の観点から5質量%以上が好ましく、アルカリ水溶液に対する溶解性の点から20質量%以下が好ましい。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物において用いられるポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種類以上のアルカリ可溶性樹脂は、公知の方法により合成されるものを用いることができる。
【0018】
ポリイミド前駆体の場合、ポリアミド酸であれば、例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を反応させる方法で、合成することができる。また、ポリアミド酸エステルであれば、例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を反応させた後、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールなどでアミド酸構造を部分的にエステル化する方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後アミンと縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、アミンと反応させる方法などで、合成することができる。
【0019】
ポリベンゾオキサゾール前駆体の場合、製造方法としては、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸を縮合反応させることで得ることができる。具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような脱水縮合剤と酸を反応させ、ここにビスアミノフェノール化合物を加える方法やピリジンなどの3級アミンを加えたビスアミノフェノール化合物の溶液にジカルボン酸ジクロリドの溶液を滴下する方法などがある。
【0020】
ポリイミド前駆体の原料として用いられる酸二無水物としては、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸二無水物、などの芳香族のテトラカルボン酸二無水物や、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族のテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0021】
ポリベンゾオキサゾール前駆体の原料として用いられるジカルボン酸の例としてテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸などが挙げられ、トリカルボン酸の例としてトリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸などが挙げられ、テトラカルボン酸の例としてピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン、などの芳香族のテトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族のテトラカルボン酸などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0022】
ポリイミド前駆体の原料として用いられるジアミンの具体的な例としては、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、あるいはこれらの芳香族環の水素原子の少なくとも一部をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物や、脂肪族のシクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンおよび下記に示した構造のジアミンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【化2】

上記式中、R、Rは酸素原子、C(CF、またはC(CHを表す。R、R、R~R13はそれぞれ独立に水素原子、または水酸基を表す。
【0023】
また、感光性樹脂組成物の保存安定性を向上させるため、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種類以上のアルカリ可溶性樹脂の主鎖末端をモノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物などの末端封止剤で封止することが好ましい。焼成して得られる樹脂硬化物の耐薬品性を向上させる目的で、これらの末端封止剤としてアルケニル基またはアルキニル基を少なくとも1個有する、モノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物を用いることもできる。
【0024】
モノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸などの末端封止剤の含有量は、保存安定性向上の観点で、樹脂を構成する全モノマー成分の総和100モル%に対して1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましい。また、良好な膜物性の樹脂が得られる観点で、樹脂を構成する全モノマー成分の総和100モル%に対して40モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましい。複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物は(B)キノンジアジド化合物を含有する。(B)キノンジアジド化合物を含有することで、光照射部に酸が発生して光照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大し、光照射部が溶解するポジ型のレリーフパターンを得ることができる。
【0026】
キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。また、感光性樹脂組成物は、(B)キノンジアジド化合物を2種以上含有してもよい。
【0027】
(B)キノンジアジド化合物の中でもナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物が好適に用いられ、フェノール性水酸基を有する化合物と、ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物とのエステル化反応によって、合成することが可能であって、公知の方法により合成することができる。これらのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を使用することで解像度、感度、残膜率がより向上する。
【0028】
ここで用いられるフェノール性水酸基を有する化合物としては、Bis-Z、BisP-EZ、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、TrisP-SA、TrisOCR-PA、BisOCHP-Z、BisP-MZ、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisOCP-IPZ、BisP-CP、BisRS-2P、BisRS-3P、BisP-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、DML-MBPC、DML-MBOC、DML-OCHP、DML-PCHP、DML-PC、DML-PTBP、DML-34X、DML-EP,DML-POP、ジメチロール-BisOC-P、DML-PFP、DML-PSBP、DML-MTrisPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-BP、TML-HQ、TML-pp-BPF、TML-BPA、TMOM-BP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP(以上商品名、本州化学工業(株)製)、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A、46DMOC、46DMOEP、TM-BIP-A(以上商品名、旭有機材工業(株)製)、2,6-ジメトキシメチル-4-tert-ブチルフェノール、2,6-ジメトキシメチル-p-クレゾール、2,6-ジアセトキシメチル-p-クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP-AP(商品名、本州化学工業(株)製)などの化合物が挙げられる。ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物としては、これらにナフトキノンジアジド-4-スルホン酸あるいはナフトキノンジアジド-5-スルホン酸をエステル結合で導入したものが好ましいものとして例示することが出来るが、これ以外の化合物を使用することもできる。
【0029】
ナフトキノンジアジドスルホン酸-4-エステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適しており、ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収が伸びており、g線露光に適している。本発明の感光性樹脂組成物は、ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物、ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル化合物のどちらも含有することができ、同一分子中にナフトキノンジアジド-4-スルホニル基、ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基を併用した、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含有することもできるし、ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物とナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル化合物を混合して含有することもできる。
【0030】
感光性樹脂組成物において、(B)キノンジアジド化合物の含有量は、露光時の感度を向上させる観点から、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、硬化物からのアウトガス低減の観点から、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)熱架橋剤を含有する。(C)熱架橋剤とは、メチロール基、アルコキシメチル基、エポキシ基、オキセタニル基をはじめとする熱反応性の官能基を分子内に少なくとも2つ有する化合物を指す。(C)熱架橋剤は(A)アルカリ可溶性樹脂またはその他添加成分と架橋し、硬化物の耐薬品性および耐熱性を高めることができる。
【0032】
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)熱架橋剤が(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤(以下、「(C1)成分」と呼ぶ場合がある。)を含有する。(C1)成分は、エポキシ基を分子内に少なくとも2つ有する。本発明の感光性樹脂組成物は(C1)成分を含有することで、加熱処理による硬化時に、アルカリ可溶性樹脂またはその他添加成分と架橋し、膜収縮を抑制することができる。
【0033】
(C1)成分としては、一分子内にエポキシ基を2つ有するものとして“エピコート”(登録商標)807、“エピコート”828、“エピコート”1002、“エピコート”1750、“エピコート”1007、YX8100-BH30、E1256、E4250、E4275(以上商品名、ジャパンエポキシ(株)製)、“エピクロン”(登録商標)EXA-4880、“エピクロン”EXA-4822、“エピクロン”EXA-9583、HP4032、HP4770(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、“エポライト”(登録商標)40E、“エポライト”100E、“エポライト”200E、“エポライト”400E、“エポライト”70P、“エポライト”200P、“エポライト”400P、“エポライト”1500NP、“エポライト”80MF、“エポライト”4000、“エポライト”3002、“エポライト”1708A、“エポライト”1608F(以上商品名、共栄社化学(株)製)、“デナコール”(登録商標)EX-212L、“デナコール”EX-214L、“デナコール”EX-216L、“デナコール”EX-252、“デナコール”EX-850L、“デナコール”EX-201-IM(以上商品名、ナガセケムテックス(株)製)、GAN、GOT(以上商品名、日本化薬(株)製)、“セロキサイド”(登録商標)2021P(商品名、(株)ダイセル製)、“リカレジン”(登録商標)DME-100、“リカレジン”BEO-60E(以上商品名、新日本理化(株)製)、“TBIS”(登録商標)-GG、“TBIS”-RXG、“TBIS”-BNEG(以上商品名、田岡化学工業(株)製)などが挙げられ、それぞれ各社から入手可能である。
【0034】
また、(C1)成分として、一分子内にエポキシ基を3つ以上有するものとして、VG3101L(商品名、(株)プリンテック製)、“TEPIC”(登録商標)-S、“TEPIC”-L、“TEPIC”-VL、“TEPIC”-FL、“TEPIC”-UC(以上商品名、日産化学工業(株)製)、“エピクロン”N660、“エピクロン”N695、HP7200(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、“デナコール”EX-321L(商品名、ナガセケムテックス(株)製)、NC6000、EPPN502H、NC3000(以上商品名、日本化薬(株)製)、“エポトート”(登録商標)YH-434L(商品名、東都化成(株)製)、EHPE-3150(商品名、(株)ダイセル製)などが挙げられ、それぞれ各社から入手可能である。
【0035】
(C1)成分は、イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤、脂環式エポキシ熱架橋剤、および脂肪族エポキシ熱架橋剤からなる群より選択される1種類以上の熱架橋剤を含有することが好ましい。特に、脂肪族エポキシ熱架橋剤を含有することが好ましい。これらのエポキシ熱架橋剤は、分子内に芳香環を有さない構造とすることで、樹脂の流動性が向上し、平坦性が向上する。ここで、イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤は、化合物構造中にイソシアヌル環構造を含有するエポキシ熱架橋剤である。脂環式エポキシ熱架橋剤は、エチレンオキサイド構造以外の化合物構造に、ヘテロ元素や分岐構造を有してもよい炭素数3~12の脂環構造を1つ以上有するエポキシ熱架橋剤である。脂肪族エポキシ熱架橋剤は、エチレンオキサイド構造以外の化合物構造に、ヘテロ元素や分岐構造を含んでもよい脂環構造ではない炭素数3~24の構造を有するエポキシ熱架橋剤である。また、エポキシ熱架橋剤が、イソシアヌル環構造、脂環構造、さらに脂肪族構造を有する化合物は、本願においてはイソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤と分類する。エポキシ熱架橋剤が、脂環構造、さらに脂肪族構造を有する化合物は、本願においては脂環式エポキシ熱架橋剤と分類する。
【0036】
イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤としては、例えば、“TEPIC”(登録商標)-S、“TEPIC”-L、“TEPIC”-VL、“TEPIC”-FL、“TEPIC”-UC(以上商品名、日産化学工業(株)製)、MA-DGIC(商品名、四国化成(株)製)などが挙げられ、脂環式エポキシ熱架橋剤としては、“デナコール”(登録商標)EX-252(商品名、ナガセケムテックス(株)製)、“エポカリック”(登録商標)THI-DE、“エポカリック”DE-102、“エポカリック”DE-103(以上商品名、ENEOS(株)製)、“ショウフリー”(登録商標)CDMDG(商品名、昭和電工(株)製)、“セロキサイド”(登録商標)2021P(商品名、(株)ダイセル製)などが挙げられ、脂肪族エポキシ熱架橋剤としては、“デナコール”(登録商標)EX-614B、“デナコール”EX-313、“デナコール”EX-512、“デナコール”EX-321L、“デナコール”EX-810、“デナコール”EX-861、“デナコール”EX-211(以上商品名、ナガセケムテックス(株)製)、“エポゴーセー”(登録商標)BD、“エポゴーセー”NPG、“エポゴーセー”HD(商品名、四日市合成(株)製)、“ショウフリー”(登録商標)PETG(商品名、昭和電工(株)製)などが挙げられ、それぞれ各社から入手可能である。
【0037】
(C1)成分の含有量は、硬化物の耐薬品性向上の観点で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また、高い感度でパターン加工できる観点で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)熱架橋剤が(C2)オキセタニル基を有する熱架橋剤(以下、「(C2)成分」と呼ぶ場合がある。)を含有する。(C2)成分は、オキセタニル基を分子内に少なくとも2つ有する。本発明の感光性樹脂組成物は、(C1)成分と(C2)成分の両方を含有することで、(C1)成分または(C2)成分を単独で含有する場合と比較して、平坦性を高めることができる。
【0039】
(C2)成分は加熱時の流動性が高いため、平坦性向上へ効果がある一方で、単独で用いた場合は、熱硬化時の架橋反応が進行しにくく、熱硬化時に揮発する。その結果、膜収縮が大きくなるため、平坦性を悪化させる懸念も内包している。
【0040】
(C1)成分と(C2)成分を混合させることで、(C1)成分と(C2)成分間で熱架橋が進行し、(C2)成分の熱硬化時の揮発が抑制される。その結果、膜収縮が小さくなるため、より効果的に平坦性を向上させることができるものと推定している。
なお、分子中にエポキシ基を2つ以上、かつオキセタニル基を2つ以上有する化合物については、本願においては(C1)成分として分類する。
【0041】
(C2)成分としては、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、3,3’-(1,3-(2-メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス-(3-エチルオキセタン)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、OXT-121、OXT-221、OX-SQ-H(以上商品名、東亜合成(株)製)、“エタナコール”(登録商標)OXBP、“エタナコール”(登録商標)OXTP(以上商品名、宇部興産(株)製)などが挙げられ、それぞれ各社から入手可能である。
【0042】
(C2)成分は、分子内に芳香環を有するオキセタニル熱架橋剤を含有することが好ましい。このオキセタニル熱架橋剤は、分子内に芳香環を有するため、熱硬化時の揮発しにくく、平坦性向上に効果的である。
【0043】
分子内に芳香環を有するオキセタニル熱架橋剤としては、例えば、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、OXT-121(商品名、東亜合成(株)製)、“エタナコール”(登録商標)OXBP、“エタナコール”(登録商標)OXTP(以上商品名、宇部興産(株)製)などが挙げられ、それぞれ各社から入手可能である。
(C2)成分は、式(2)で表されるオキセタニル熱架橋剤を含有することが特に好ましい。
【化3】

(nは1~3の整数を示す。)
式(2)で表されるオキセタニル熱架橋剤としては、“エタナコール”(登録商標)OXBP、(商品名、宇部興産(株)製)が挙げられる。
【0044】
(C2)成分の含有量は、平坦性向上の観点で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また、高い感度でパターン加工できる観点で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0045】
(C1)成分の含有量をγ1(質量)と前記(C2)成分の含有量をγ2(質量)としたときに、硬化物の吸水率低下と高平坦性の両立の観点で、質量比率γ2/γ1は、1.1≦γ2/γ1≦5.0の範囲とすることが好ましい。質量比率γ2/γ1は、硬化物の吸水率低下の観点から、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましい。また、質量比率γ2/γ1は、平坦性の観点から、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましい。
【0046】
上記範囲内で、(C1)成分が脂肪族エポキシ熱架橋剤、(C2)成分が分子内に芳香環を有するオキセタニル熱架橋剤であるとき、より効果的な効果が得られる。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物は、感度を損なわない範囲で(C1)成分および(C2)以外の熱架橋剤を含有することができる。このような熱架橋剤としては、メチロール基および/またはアルコキシメチル基を有する熱架橋剤、ビスマレイミド化合物、イソシアネート化合物およびブロックイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0048】
メチロール基および/またはアルコキシメチル基を有する熱架橋剤としては、例えば、DML-PC、DML-PEP、DMOM-PC、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPE、TMOM-BP、TMOM-BPE、TMOM-BPA、TMOM-BPAF、TMOM-BPAP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP、HMOM-TPPA(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、26DMPC、46DMOC、DM-BIPC-F、DM-BIOC-F、TM-BIP-A(以上、商品名、旭有機材(株)製)、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP、HMOM-TPPA(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、“NIKALAC”(登録商標)MX-290、“NIKALAC”(登録商標)MX-280、“NIKALAC”(登録商標)MX-270、“NIKALAC”(登録商標)MX-279、“NIKALAC”(登録商標)MW-100LM、“NIKALAC”(登録商標)MX-750LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)などが挙げられ、それぞれ前記各社から入手可能である。
【0049】
ビスマレイミド化合物としては、例えば、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,3-ビス(マレイミド)プロパン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,5-ビス(マレイミド)ペンタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’-1,3-フェニレンビス(マレイミド)、4-メチル-N,N’-1,3-フェニレンビス(マレイミド)、N,N’-1,4-フェニレンビス(マレイミド)、3-メチル-N,N’-1,4-フェニレンビス(マレイミド)、4,4’-ビス(マレイミド)ジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチル-4,4’-ビス(マレイミド)ジフェニルメタン又は2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。
【0050】
イソシアネート化合物としては、例えば、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)等の脂環式ポリイソシアネート類などを挙げることができる。
【0051】
ブロックイソシアネート化合物としては、前述のイソシアネート化合物をオキシム、ラクタム、ピラゾール等のブロック体によりブロックした化合物が挙げられ、架橋温度を容易に調整することができる。
【0052】
(C1)成分および(C2)成分以外の熱架橋剤の含有量は、硬化物の耐熱性向上、耐薬品性向上の観点で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、高い感度でパターン加工できる観点で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、30質量部以下が好ましい。
【0053】
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)熱酸発生剤を含有する。熱酸発生剤とは、加熱により酸を発生する化合物で、(D)熱酸発生剤の熱分解開始温度は120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。熱分解温度を120℃以上とすることで、パターン加工において、塗布した感光性樹脂膜に熱をかけて乾燥する工程(「プリベーク工程」と記す場合もある。)で酸が発生することを防ぐことができる。また、(D)熱酸発生剤の熱分解開始温度は250℃以下が好ましく、240℃以下がより好ましく、230℃以下がさらに好ましい。熱分解温度を250℃以下とすることで、熱硬化工程において十分な酸を発生することができる。本発明においては、加熱処理工程で酸を発生させることで、硬化物の吸水率を低下することができる。これは、(D)熱酸発生剤が、加熱処理工程において、硬化物中の(A)アルカリ可溶性樹脂中のイミド前駆体構造および/またはオキサゾール前駆体構造の閉環を促進したためであると推測している。
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物における(D)熱酸発生剤は、加熱により酸を発生する機能を有していればよく、熱に加えて紫外線など光によって酸を発生する機能を有する化合物も(D)熱酸発生剤の定義に含まれる。ただし、(B)キノンジアジド化合物は、仮に加熱により酸を発生する場合であっても(D)熱酸発生剤には含まれないものと定義する。
【0055】
(D)熱酸発生剤から発生する酸は強酸が好ましく、例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸、またはカンファースルホン酸などが好ましい。
【0056】
(D)熱酸発生剤としては、以下に示すスルホニウム塩、スルホン酸エステルなどを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
スルホニウム塩としては、式(3)で表される構造を有することが好ましい。
【化4】

式(3)において、R14~R16は、それぞれ独立に、炭素数1~20の1価の有機基を示す。上記、R14~R16が取り得る炭素数1~20の1価の有機基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~10の直鎖または分岐または環状のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基が例示される。置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ビニル基、アセチレン基または炭素数1~10の直鎖若しくは環状のアルキル基が挙げられる。Zは、R17SO 、R17SO 、R17COO、SbF から選ばれるアニオン部を示す。R17は炭素数1~20の1価の有機基を示す。上記、R17が取り得る炭素数1~20の1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、パーフルオロアルキル基、式(4)で表される構造などが挙げられる。
【化5】

式(4)中、*は結合部を表す。
【0057】
式(3)のスルホニウム塩において、加熱によって熱を発生させる観点から、モノアリールスルホニウム塩およびトリアルキルスルホニウム塩からなる群より選択される化合物を含有することが好ましい。
【0058】
スルホン酸エステルとしては、例えば、式(5)または式(6)で表される構造を挙げることができる。
【化6】

式(5)において、R18およびR19はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の直鎖または分岐または環状のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基を示す。置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ビニル基、アセチレン基、炭素数1~10の直鎖または環状のアルキル基が挙げられる。
【0059】
【化7】

式(6)において、R20は炭素数1~20の1価の有機基を示す。上記、R20が取り得る炭素数1~20の1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、パーフルオロアルキル基、式(4)で表される構造などが挙げられる。
【化8】

式(4)中、*は結合部を表す。
【0060】
(D)熱酸発生剤の中でも硬化物の吸水率低下効果が高い点で、スルホン酸エステル構造を有する熱酸発生剤を含有することが好ましい。前述の式(5)記載の化合物の例としては、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸プロピル、メタンスルホン酸ブチル、メタンスルホン酸フェニル、エタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸プロピル、エタンスルホン酸ブチル、エタンスルホン酸フェニル、プロパンスルホン酸メチル、プロパンスルホン酸エチル、プロパンスルホン酸プロピル、プロパンスルホン酸ブチル、プロパンスルホン酸フェニル、ブタンスルホン酸メチル、ブタンスルホン酸エチル、ブタンスルホン酸プロピル、ブタンスルホン酸ブチル、ブタンスルホン酸フェニル、オクタンスルホン酸メチル、オクタンスルホン酸エチル、オクタンスルホン酸プロピル、オクタンスルホン酸ブチル、オクタンスルホン酸フェニル、p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホン酸プロピル、p-トルエンスルホン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸フェニル、メタンスルホン酸メトキシフェニル、メタンスルホン酸メトキシエチル、p-トルエンスルホン酸メトキシエチル、などが挙げられ、前述の式(6)記載の化合物の例としては、“Irgacure”(登録商標)PAG103、PAG121(以上商品名、BASFジャパン(株)製)、PA-411、PA-480(以上商品名、ヘレウス(株)製)などが挙げられ、またこれ以外のスルホン酸エステル構造を有する熱酸発生剤としては、PAI-01、PAI-101、PAI-106、PAI-1001、PAI-1002、PAI-1003、PAI-1004(以上商品名、みどり化学(株)製)、SP-082、SP-601、SP-606、SP-607、SP-612(以上商品名、(株)ADEKA製)、NIT、MIN、ILP-110、ILP-110N、ILP-118、ILP-113、PA-223、PA-298(以上商品名、へレウス(株)製)、NAI-105、NAI-106、NAI-109(以上商品名、みどり化学(株)製)などが挙げられる。
【0061】
さらに、(D)熱酸発生剤が式(1)で示される化合物を含むことが特に好ましい。本発明者らの検討において、(D)熱酸発生剤が式(1)の化合物を含むことで、さらに吸水率が低くなることが判明した。理由は定かではないが、(D)熱酸発生剤が、式(1)で示される化合物を含むことで、加熱処理中の(D)熱酸発生剤の揮発性が低下し、硬化中に(D)熱酸発生剤から効率的に酸を発生させることができ、イミド前駆体構造および/またはオキサゾール前駆体構造への閉環促進効果が大きくなるため吸水率が低下すると推測している。
【化9】

式(1)中、Rは炭素数1~10の2~4価の基である。Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基を示す。前記置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ビニル基、アセチレン基または炭素数1~10の直鎖若しくは環状のアルキル基が挙げられる。aは2~4の整数を示す。
【0062】
硬化物の吸水率低下の観点から、式(1)中、Rは炭素数1~6の2~4価の基であり、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐若しくは環状のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基であることが好ましい。
【0063】
前述の式(1)記載の化合物の例としては、アルコール性水酸基を複数有する化合物(「多価アルコール化合物」と記す場合がある。)またはフェノール性水酸基を複数有する化合物(「多価フェノール化合物」と記す場合がある。)のアルコール性水酸基またはフェノール性水酸基を、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等によりスルホン酸エステル化した化合物が挙げられる。
【0064】
多価アルコール化合物のうち、2価のアルコール化合物の具体例として、メタンジオール、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール等が挙げられる。多価アルコール化合物のうち、3価以上のアルコール化合物の具体例として、プロパントリオール、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、ヘプタントリオール、オクタントリオール、ノナントリオール、デカントリオール、ペンタエリトリトール等が挙げられる。多価フェノール化合物の具体例として、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
【0065】
式(1)で示される化合物の含有量は、硬化物の吸水率低下の観点から、(D)熱酸発生剤100質量%中、20質量%以上含有することが好ましい。50質量%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0066】
(D)熱酸発生剤の含有量は、硬化物の吸水率を低下させる観点で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。また、(D)熱酸発生剤の含有量は、硬化物に高い耐熱性を付与できる観点で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下がさらに好ましい。
【0067】
本発明の感光性樹脂組成物は、(E)フェノール樹脂を含有する。感光性樹脂組成物に(E)フェノール樹脂を含有することで、硬化物の吸水率が低下することができる。その理由は定かではないが、(E)フェノール樹脂が、前記(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤および(C2)オキセタニル基を有する熱架橋剤の熱架橋反応の反応点となることで、(A)アルカリ可溶性樹脂と(C1)成分および(C2)成分が過剰に反応することを抑制することができ、その結果、加熱処理工程におけるイミド前駆体および/またはベンゾオキサゾール前駆体の閉環率が上昇したためであると推測している。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物において用いられる(E)成分は、公知の方法により合成されるものを用いることができる。
(E)フェノール樹脂としては、好ましくは、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシスチレン/ポリスチレン共重合体を挙げることができる。ノボラック樹脂として、ノボラックフェノール樹脂やレゾールフェノール樹脂があり、種々のフェノール類の単独あるいはそれらの複数種の混合物をホルマリンなどのアルデヒド類を用いて公知の方法で重縮合することにより得られる。
【0069】
ノボラックフェノール樹脂およびレゾールフェノール樹脂を構成するフェノール類としては、例えばフェノール、p-クレゾール、m-クレゾール、o-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2,4,5-トリメチルフェノール、メチレンビスフェノール、メチレンビスp-クレゾール、レゾルシン、カテコール、2-メチルレゾルシン、4-メチルレゾルシン、o-クロロフェノール、m-クロロフェノール、p-クロロフェノール、2,3-ジクロロフェノール、m-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、p-ブトキシフェノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3-ジエチルフェノール、2,5-ジエチルフェノール、p-イソプロピルフェノール、α-ナフトール、β-ナフトールなどが挙げられ、これらは単独で、または複数の混合物として用いることができる。
【0070】
また、アルデヒド類としては、ホルマリンの他、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロアセトアルデヒドなどが挙げられ、これらは単独でまたは複数の混合物として用いることができる。
【0071】
(E)フェノール樹脂として、ポリヒドロキシスチレン、および/またはポリヒドロキシスチレン/ポリスチレン共重合体を含有していることがより好ましい。ポリヒドロキシスチレンは、不飽和結合を有するフェノール誘導体を付加重合させて得ることができる。不飽和結合を有するフェノール誘導体としては、例えば、ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、アリルフェノール、クマル酸、2’-ヒドロキシカルコン、N-ヒドロキシフェニル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド、レスベラトロール、4-ヒドロキシスチルベン等が挙げられ、これらを2種以上用いてもよい。また、スチレン等のフェノール性水酸基を含有しないモノマーとの共重合体であってもよい。こうすることで、アルカリ溶解速度の調整が容易になる。
【0072】
(E)フェノール樹脂の含有量は、感度の観点で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、(E)フェノール樹脂の含有量は、現像密着観点で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、90質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましい。
【0073】
(E)フェノール樹脂の好ましい重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で求めることができ、感度の観点から、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上、さらに好ましくは3000以上、現像密着性の観点から、好ましくは10000以下、より好ましくは8000以下、さらに好ましくは7000以下である。
【0074】
(E)フェノール樹脂の含有量は、前記(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤の含有量をγ1(質量)、前記(C2)オキセタニル基を有する熱架橋剤の含有量をγ2(質量)、前記(E)フェノール樹脂の含有量をγ3(質量)としたときに、質量比率(γ1+γ2)/γ3が0.5≦(γ1+γ2)/γ3≦4.0の範囲であることが好ましい。γ1、γ2、γ3の含有量が前記範囲になることで、加熱処理後の硬化物の吸水率が低下する。より好ましくは0.8≦(γ1+γ2)/γ3≦3.0、さらに好ましくは1.3≦(γ1+γ2)/γ3≦2.0の範囲である。
【0075】
本発明の感光性樹脂組成物は、有機溶剤を含有することが好ましい。これによりワニスの状態にすることができ、塗布性を向上させることができる。
前記有機溶剤は、γ-ブチロラクトンなどの極性の非プロトン性溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、等のエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、などの溶剤を単独、または混合して使用することができる。
【0076】
前記有機溶剤の使用量は、特に限定されないが、溶剤を除く感光性樹脂組成物全量100質量部に対して、100~3000質量部が好ましく、150~2000質量部がさらに好ましい。また有機溶剤全量に対する沸点180℃以上の溶剤が占める割合は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。沸点180℃以上の溶剤の割合を20質量%以下にすることで、硬化物からのアウトガス量を低く抑えることができ、結果として有機EL装置の信頼性を高めることができる。
【0077】
本発明の感光性樹脂組成物は、着色剤を含有することができる。着色剤とは、有機顔料、無機顔料または染料をいう。着色剤は、好ましくは有機顔料および/または無機顔料であるとよい。
【0078】
有機顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾもしくはポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニンもしくは無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロンもしくはビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、ベンゾフラノン系、又は有機金属錯体系顔料が挙げられる。
【0079】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット又はコバルトバイオレットが挙げられる。
【0080】
染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、縮合多環芳香族カルボニル染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、フタロシアニン染料、メチン又はポリメチン染料が挙げられる。
【0081】
有機EL表示装置のコントラストを向上させる目的においては、着色剤の色は可視光を全波長域に渡って遮光できる黒色が好ましく、感光性樹脂組成物に有機顔料、無機顔料、および染料から選ばれる少なくとも1種以上を含有させて、硬化物とした時に黒色を呈するような着色剤を含有させることが好ましい。そのためには、上述の黒色有機顔料および黒色無機顔料を含有させてもてもよいし、二種以上の有機顔料および染料を混合することで疑似黒色化してもよい。疑似黒色化する場合は、上述の赤色、橙色、黄色、紫色、青色、緑色などの有機顔料および染料から二種以上を混合することで得ることができる。なお、本発明の感光性樹脂組成物自体は必ずしも黒色である必要はなく、加熱処理による硬化時に色が変化することで硬化物が黒色を呈するような着色剤を用いてもよい。
【0082】
これらのうち、高い耐熱性を確保できる観点においては、有機顔料および/または無機顔料を含有し、かつ硬化物とした時に黒色を呈するような着色剤を含有することが好ましい。また、高い絶縁性を確保できる観点においては、有機顔料および/または染料を含有し、かつ硬化物とした時に黒色を呈するような着色剤を含有することが好ましい。すなわち、高い耐熱性と絶縁性を両立できる点で、有機顔料を含有し、かつ硬化物とした時に黒色を呈するような着色剤を含有することが好ましい。
【0083】
着色剤の含有量は、硬化物に必要な着色性が得られる観点で、溶剤を除く感光性樹脂組成物全量に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また、良好な保存安定性が得られる観点で、溶剤を除く感光性樹脂組成物全量に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0084】
感光性樹脂組成物が、顔料を含有する場合は分散剤を含有することが好ましい。分散剤を含有することで、顔料を樹脂組成物中に均一かつ安定に分散させることができる。分散剤は、特に制限されるものではないが、高分子分散剤が好ましい。高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル系高分子分散剤、アクリル系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤、ポリアリルアミン系高分子分散剤又はカルボジイミド系分散剤が挙げられる。より具体的には、高分子分散剤とは、主鎖がポリアミノ、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート等からなり、側鎖または主鎖末端にアミン、カルボン酸、リン酸、アミン塩、カルボン酸塩、リン酸塩等の極性基を有する高分子化合物のことをいう。極性基が顔料に吸着し、主鎖ポリマーの立体障害により顔料の分散が安定化される役割を果たす。
【0085】
分散剤は、アミン価のみを有する(高分子)分散剤、酸価のみを有する(高分子)分散剤、アミン価及び酸価を有する(高分子)分散剤、又は、アミン価も酸価も有さない(高分子)分散剤に分類されるが、アミン価及び酸価を有する(高分子)分散剤、アミン価のみを有する(高分子)分散剤が好ましく、アミン価のみを有する(高分子)分散剤がより好ましい。
【0086】
分散剤の含有量は、良好な分散安定性が得られる観点で、顔料100質量部に対して1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。また、硬化物の耐熱性を維持する観点で、顔料100質量部に対して100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物は、密着改良剤を含有することができる。密着改良剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタンキレート剤、アルミキレート剤、芳香族アミン化合物とアルコキシ基含有ケイ素化合物を反応させて得られる化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの密着改良剤を含有することにより、感光性樹脂膜を現像する場合などに、シリコンウェハー、ITO(透明電極)、SiO、窒化ケイ素などの下地基板との密着性を高めることができる。また、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めることができる。密着改良剤の含有量は、溶剤を除く感光性樹脂組成物全量に対して、0.1~10質量%が好ましい。
【0088】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて基板との濡れ性を向上させる目的で界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は市販の化合物を用いることができ、具体的にはシリコーン系界面活性剤としては、東レダウコーニングシリコーン社のSHシリーズ、SDシリーズ、STシリーズ、ビックケミー・ジャパン社のBYKシリーズ、信越シリコーン社のKPシリーズ、日本油脂社のディスフォームシリーズ、東芝シリコーン社のTSFシリーズなどが挙げられ、フッ素系界面活性剤としては、大日本インキ工業社の“メガファック(登録商標)”シリーズ、住友スリーエム社のフロラードシリーズ、旭硝子社の“サーフロン(登録商標)”シリーズ、“アサヒガード(登録商標)”シリーズ、新秋田化成社のEFシリーズ、オムノヴァ・ソルーション社のポリフォックスシリーズなどが挙げられ、アクリル系および/またはメタクリル系の重合物からなる界面活性剤としては、共栄社化学社のポリフローシリーズ、楠本化成社の“ディスパロン(登録商標)”シリーズなどが挙げられるが、これらに限定されない。
界面活性剤の含有量は溶剤を除く感光性樹脂組成物全量に対して好ましくは0.001~1質量%である。
【0089】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を補う目的で、フェノール性水酸基を有する化合物であって、(C1)成分とは異なるものを含有してもよい。このようなフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、Bis-Z、BisOC-Z、BisOPP-Z、BisP-CP、Bis26X-Z、BisOTBP-Z、BisOCHP-Z、BisOCR-CP、BisP-MZ、BisP-EZ、Bis26X-CP、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisCRIPZ、BisOCP-IPZ、BisOIPP-CP、Bis26X-IPZ、BisOTBP-CP、TekP-4HBPA(テトラキスP-DO-BPA)、TrisPHAP、TrisP-PA、TrisP-PHBA、TrisP-SA、TrisOCR-PA、BisOFP-Z、BisRS-2P、BisPG-26X、BisRS-3P、BisOC-OCHP、BisPC-OCHP、Bis25X-OCHP、Bis26X-OCHP、BisOCHP-OC、Bis236T-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、BisRS-OCHP、(以上商品名、本州化学工業(株)製)、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A(以上商品名、旭有機材工業(株)製)、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,4-ジヒドロキシキノリン、2,6-ジヒドロキシキノリン、2,3-ジヒドロキシキノキサリン、アントラセン-1,2,10-トリオール、アントラセン-1,8,9-トリオール、8-キノリノールなどが挙げられる。これらのフェノール性水酸基を有する化合物を含有することで、得られる感光性樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液にほとんど溶解せず、露光すると容易にアルカリ現像液に溶解するために、現像による膜減りが少なく、かつ短時間で現像が容易になる。そのため、感度が向上しやすくなる。
このようなフェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、溶剤を除く感光性樹脂組成物全量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
【0090】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、無機粒子を含んでもよい。好ましい具体例としては酸化珪素、酸化チタン、チタン酸バリウム、アルミナ、タルクなどが挙げられるがこれらに限定されない。これら無機粒子の一次粒子径は100nm以下、より好ましくは60nm以下が好ましい。
無機粒子の含有量は、溶剤を除く感光性樹脂組成物全量に対して、好ましくは5~90質量%である。
【0091】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を製造する製造方法について説明する。例えば、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)キノンジアジド化合物、(C)熱架橋剤、(D)熱酸発生剤、(E)フェノール樹脂と、必要より溶剤、密着改良剤、界面活性剤、着色剤、無機粒子などを溶解させることにより、感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0092】
溶解方法としては、撹拌や加熱が挙げられる。加熱する場合、加熱温度は感光性樹脂組成物の性能を損なわない範囲で設定することが好ましく、通常、室温~80℃である。また、各成分の溶解順序は特に限定されず、例えば、溶解性の低い化合物から順次溶解させる方法が挙げられる。また、界面活性剤や一部の密着改良剤など、撹拌溶解時に気泡を発生しやすい成分については、他の成分を溶解してから最後に添加することにより、気泡の発生による他成分の溶解不良を防ぐことができる。
【0093】
得られた感光性樹脂組成物は、濾過フィルターを用いて濾過し、ゴミや粒子を除去することが好ましい。フィルター孔径は、例えば0.5μm、0.2μm、0.1μm、0.07μm、0.05μm、0.02μmなどがあるが、これらに限定されない。濾過フィルターの材質には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(NY)、ポリテトラフルオロエチエレン(PTFE)などがあり、ポリエチレンやナイロンが好ましい。
【0094】
本発明の硬化物は、感光性樹脂組成物を硬化した硬化物である。硬化物は、感光性樹脂組成物を加熱処理することで得られる。加熱処理の方法はホットプレート、オーブン、赤外線を用いる方法等の公知の方法を用いることができる。好ましい加熱処理条件については、後述の硬化物の製造方法(5)現像した感光性樹脂膜を加熱処理する工程の中で述べる。
【0095】
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いた硬化物膜の製造方法について詳しく説明する。
硬化物の製造方法は、
(1)本発明の感光性樹脂組成物を基板に塗布し、感光性樹脂膜を形成する工程、
(2)前記感光性樹脂膜を乾燥する工程、
(3)乾燥した感光性樹脂膜にフォトマスクを介して露光する工程、
(4)露光した感光性樹脂膜を現像する工程および
(5)現像した感光性樹脂膜を加熱処理する工程
をこの順に含む。
【0096】
(1)本発明の感光性樹脂組成物を基板に塗布し、感光性樹脂膜を形成する工程では、本発明の感光性樹脂組成物をスピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などで塗布し、基板上に感光性樹脂組成物の感光性樹脂膜を得る。塗布に先立ち、感光性樹脂組成物を塗布する基板を予め前述した密着改良剤で前処理してもよい。例えば、密着改良剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5~20質量%溶解させた溶液を用いて、基材表面を処理する方法が挙げられる。基材表面の処理方法としては、スピンコート、スリットダイコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート、蒸気処理などの方法が挙げられる。
【0097】
(2)感光性樹脂膜を乾燥する工程では、塗布した感光性樹脂膜を必要に応じて減圧乾燥処理を施し、その後、ホットプレート、オーブン、赤外線などを用いて、50℃~180℃の範囲で1分間~数時間の熱処理を施すことで乾燥した感光性樹脂膜を得る。
【0098】
次に、(3)乾燥した感光性樹脂膜にフォトマスクを介して露光する工程について説明する。乾燥した感光性樹脂膜上に所望のパターンを有するフォトマスクを通して化学線を照射する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。化学線を照射した後、露光後ベークをしても構わない。露光後ベークを行うことによって、現像後の解像度向上又は現像条件の許容幅増大などの効果が期待できる。露光後ベークは、オーブン、ホットプレート、赤外線、フラッシュアニール装置又はレーザーアニール装置などを使用することができる。露光後ベーク温度としては、50~180℃が好ましく、60~150℃がより好ましい。露光後ベーク時間は、10秒~数時間が好ましい。露光後ベーク時間が上記範囲内であると、反応が良好に進行し、現像時間を短くできる場合がある。
【0099】
(4)露光した感光性樹脂膜を現像する工程では、露光した感光性樹脂膜を、現像液を用いて現像し露光部以外を除去する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像方式としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0100】
次に、現像によって形成したパターンを蒸留水にてリンス処理をすることが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを蒸留水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0101】
次に、(5)現像した感光性樹脂膜を加熱処理する工程を行う。加熱処理により残留溶剤や耐熱性の低い成分を除去できるため、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体を含有し、加熱処理によりイミド環、オキサゾール環を形成できるため、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。また、本発明の感光性樹脂組成物は、熱架橋剤を含有するので、加熱処理により熱架橋反応を進行させることができ、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。加熱処理温度は、硬化物の耐熱性向上の観点で、200℃以上が好ましく、220℃以上がより好ましく、230℃以上がさらに好ましく、240℃以上が特に好ましい。一方、TFT素子の熱劣化の影響を避ける観点から、400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましく、320℃以下がさらに好ましい。この温度範囲において、段階的に昇温してもよいし、連続的に昇温してもよい。加熱処理時間は、硬化物の耐熱性向上の観点から、30分以上が好ましく、45分以上がより好ましい。また、生産性の観点から180分以下が好ましく、120分以下がより好ましい。例えば、150℃、250℃で各60分間ずつ熱処理する方法や、室温から250℃まで2時間かけて直線的に昇温しながら熱処理する方法などが挙げられる。
【0102】
本発明の感光性樹脂組成物により形成した硬化物は、基板上に形成された第一電極と、前記第一電極に対向して設けられた第二電極とを含む表示装置、具体的には例えば、液晶表示装置の平坦化層、有機EL表示装置の平坦化層および/または画素分割層などに用いることができる。以下、有機EL表示装置を例に説明する。
【0103】
本発明の有機EL表示装置は、前記硬化物を具備する。具体的には、基板上に、駆動回路、平坦化層、第一電極、画素分割層、有機EL層(発光層)および第二電極を有し、平坦化層および/または画素分割層が前記硬化物を含む有機EL表示装置であることが好ましい。アクティブマトリックス型の表示装置を例に挙げると、ガラスや樹脂フィルムなどの基板上に、駆動回路として薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す場合もある。)と、TFTの側方部に位置しTFTと接続された配線とを有し、その上に凹凸を覆うようにして平坦化層を有し、さらに平坦化層上に有機EL層が設けられている。有機EL層と配線とは、平坦化層に形成されたコンタクトホールおよび第一電極を介して接続される。特に、近年有機EL表示装置のフレキシブル化が主流になっており、前述の駆動回路を有する基板が樹脂フィルムからなる有機EL表示装置であることが好ましい。
【0104】
本発明の有機EL表示装置は、好ましくは硬化物を具備する部分の少なくとも一部が屈曲可能な部分および/または屈曲された状態で固定化された部分を有することが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物または感光性樹脂シートを硬化した硬化物を用いることで、折り曲げ耐性に優れた有機EL表示装置を得ることができる。上述の屈曲可能な部分および/または屈曲された状態で固定化された部分の曲率半径は、0.1mm以上が好ましく、5mm以下が好ましい。曲率半径が0.1mm以上であれば、屈曲部における折り曲げ性耐性を確保でき、5mm以下であれば、狭額縁化などのデザイン性を確保できる。本発明の有機EL表示装置は、任意の適切な部分で屈曲可能である。例えば、有機EL表示装置は、折り畳み式の表示装置のように中央部で屈曲可能であってもよく、デザイン性と表示画面を最大限に確保するという観点から端部で屈曲可能であってもよい。さらに、有機EL表示装置は、その長手方向に沿って屈曲可能であってもよく、その短手方向に沿って屈曲可能であってもよい。用途に応じて有機EL表示装置の特定部分が屈曲可能(例えば、四隅の一部または全部が斜め方向に屈曲可能)であればよい。
【0105】
図1に平坦化層と画素分割層を形成したTFT基板の一例の断面図を示す。基板1上に、ボトムゲート型またはトップゲート型のTFT2が行列状に設けられており、このTFT2を覆う状態でTFT絶縁層3が形成されている。また、このTFT絶縁層3上にTFT2に接続された配線4が設けられている。さらにTFT絶縁層3上には、配線4を埋め込む状態で平坦化層5が設けられている。平坦化層5には、配線4に達するコンタクトホール6が設けられている。そして、このコンタクトホール6を介して、配線4に接続された状態で、平坦化層5上に第一電極7としてITO(透明電極)が形成されている。ここで、第一電極7は、表示素子(例えば有機EL素子)の電極となる。そして第一電極7の周縁を覆うように画素分割層8が形成される。さらに、第一電極7の露出部に有機EL層9が形成され、基板全体を覆うように第二電極10が設けられている。有機EL素子は、基板1と反対側から発光光を放出するトップエミッション型でもよいし、基板1側から光を取り出すボトムエミッション型でもよい。このようにして、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFT2を接続したアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られる。
【0106】
かかるTFT絶縁層3、平坦化層5および/または画素分割層8は、前述の通り(1)本発明の感光性樹脂組成物を基板に塗布し、感光性樹脂膜を形成する工程、(2)前記感光性樹脂膜を乾燥する工程 、(3)乾燥した感光性樹脂膜にフォトマスクを介して露光する工程、(4)露光した感光性樹脂膜を現像する工程および(5)現像した感光性樹脂膜を加熱処理する工程により形成することができる。これらの工程を有する製造方法より、有機EL表示装置を得ることができる。
【0107】
また、本発明の感光性樹脂組成物により形成した硬化物は、電子部品を構成する絶縁膜、保護膜として使用することができる。ここで、電子部品としては、トランジスタ、ダイオード、集積回路(以下、IC)、メモリなどの半導体を有する能動部品、抵抗、キャパシタ、インダクタなどの受動部品が挙げられる。また、半導体を用いた電子部品を半導体装置とも称する。すなわち、本発明の半導体装置は、前記硬化物を具備する。電子部品が具備する硬化物の具体例としては、半導体のパッシベーション膜、半導体素子、TFTなどの表面保護膜、2~10層の高密度実装用多層配線における層間絶縁膜、タッチパネルディスプレーの絶縁膜、保護膜などの用途に好適に用いられるが、これに制限されず、様々な構造をとることができる。また、硬化物を形成する基板の表面は用途、工程によって適宜選択できるが、シリコン、セラミックス、金属、ガラス、エポキシ樹脂などが挙げられ、同一面内にこれらが複数配置されていてもよい。本発明の硬化物を配置した表面保護膜や層間絶縁膜等を有する電子デバイスとしては、例えば、耐熱性の低いMRAMなどが挙げられる。すなわち、本発明の硬化物は、MRAMの表面保護膜用として好適である。また、MRAM以外にも次世代メモリとして有望なポリマーメモリ(Polymer Ferroelectric RAM:PFRAM)や相変化メモリ(Phase Change RAM:PCRAM、あるいはOvonics Unified Memory:OUM)も、従来のメモリに比べて耐熱性の低い新材料を用いる可能性が高い。したがって、本発明の硬化物は、これらの表面保護膜用としても好適である。また、ファンアウトウエハレベルパッケージ(以下、「ファンアウトWLP」ということがある。)にも好適に用いられる。ファンアウトWLPは、半導体チップの周辺にエポキシ樹脂等の封止樹脂を用いて拡張部分を設け、半導体チップ上の電極から該拡張部分まで再配線を施し、拡張部分にもはんだボールを搭載することで必要な端子数を確保した半導体パッケージである。ファンアウトWLPにおいては、半導体チップの主面と封止樹脂の主面とが形成する境界線を跨ぐように配線が設置される。すなわち、金属配線が施された半導体チップおよび封止樹脂という2種以上の材料で構成される基材の上に層間絶縁膜が形成され、該層間絶縁膜の上に配線が形成される。これ以外にも、半導体チップをガラスエポキシ樹脂基板に形成された凹部に埋め込んだタイプの半導体パッケージでは、半導体チップの主面とプリント基板の主面との境界線を跨ぐように配線が設置される。この態様においても、2種以上の材料で構成される基材の上に層間絶縁膜が形成され、該層間絶縁膜の上に配線が形成される。本発明の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、金属配線が施された半導体チップに高い密着力を有するとともに、エポキシ樹脂等へ封止樹脂にも高い密着力を有するため、2種以上の材料で構成される基材の上に設ける層間絶縁膜として好適に用いられる。
【実施例0108】
以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるも
のではない。なお、実施例中の感光性樹脂組成物の評価は以下の方法により行った。
(1)平坦性評価(表面段差)
図2に平坦性評価サンプルの断面の模式的な説明図を示す。後述の各実施例および比較例により得られた感光性樹脂組成物を、塗布現像装置(東京エレクトロン(株)製ACT-8)を用いて、厚さ1.2μm、幅5μmのラインパターンが、5μm間隔で平行に5本パターニングされている段差基板11上にスピンコート法により塗布し、120℃で2分間ベークをして基板上のラインパターンの影響を受けない部分の膜厚が約2.9μmになる様にプリベーク膜を作製した。なお、膜厚は大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM-602を使用し、屈折率1.63の条件で測定した。その後、前記ACT-8の現像装置を用いて、2.38質量%のテトラメチルアンモニウム水溶液(多摩化学工業(株)製)を用いて、現像時の膜減りが0.5μmになる時間で現像した後、蒸留水でリンス後、振り切り乾燥し、膜厚約2.4μmの現像膜を得た。このとき基板上のラインパターンの影響を受けない部分の現像膜の膜厚を測定し、加熱処理前の膜厚とした。続いて、現像膜を、高温イナートガスオーブン(INH-9CD-S;光洋サーモシステム(株)製)を用いて、窒素雰囲気下250℃のオーブン中で60分間キュア(加熱処理)し、硬化膜(硬化物12)を作製した。ここで基板上のラインパターンの影響を受けない部分の硬化膜の膜厚を測定し、加熱処理後の膜厚とした。得られた硬化膜について、前記のラインパターンの存在する部分の最も外側の2本を除く3本のラインパターン上に生じた表面段差を表面プロファイラー(P・15;ケーエルエー・テンコール株式会社)で測定し、段差(図2中、h1~h3で表された硬化膜の高さ)の平均値を表面段差(μm)とした。なお、各段差のベースラインは、図2からみて、h1~h3を測定する山脈状の樹脂膜の部分それぞれの左右に存在する凹部の膜厚が最も小さくなる点を結んだ線として定義した。以下に具体例を記載する。図2において、段差形状の底部a1とa2を結んだ直線をベースラインとし、段差形状の頭頂部b1から基板面に対して垂直に下ろした線とベースラインとの交点までの長さをh1と定義した。h2はa2とa3を結んだ線をベースラインとして、段差形状の頭頂部b2から基板面に対して垂直に下ろした線とベースラインとの交点までの長さと定義し、h3はa3とa4を結んだ線をベースラインとして段差形状の頭頂部b3から基板面に対して垂直に下ろした線とベースラインとの交点までの長さと定義した。
【0109】
(2)キュア収縮率
上記平坦性評価において、加熱処理前の膜厚に対する加熱処理後の膜厚を計算し、これをキュア収縮率(%)とした。
【0110】
(3)吸水率の評価
後述の各実施例および比較例により得られた感光性樹脂組成物を、塗布現像装置ACT-8(東京エレクトロン(株)製)を用いて、8インチシリコンウェハー上にスピンコート法で塗布し感光性樹脂膜を得て、120℃で2分間ホットプレートにてプリベークを行って膜厚6.5μmのプリベーク膜を作製した。なお、膜厚は大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM-602を使用し、屈折率1.63の条件で測定した。露光する工程は行わず、次に前記ACT-8の現像装置を用いて、2.38質量%のテトラメチルアンモニウム水溶液(多摩化学工業(株)製)を用いて膜厚が6.0μmになるまで処理を行った後、蒸留水でリンスを行い、振り切り乾燥し現像膜を得た。イナートオーブン(光洋サーモシステム(株)製CLH-21CD-S)を用いて窒素雰囲気下250℃のオーブン中で60分間キュア(加熱処理)し、硬化物を具備するシリコンウェハー基板を得た。その後、硬化物を具備するシリコンウェハー基板を、45質量%のフッ化水素酸に5分間浸漬することで、シリコンウェハーから硬化物を剥離した。得られた硬化物を純水で十分洗浄した後、80℃の通風オーブンで5時間乾燥し、オーブンから取り出した直後に精密天秤で硬化物の乾燥重量を測定した。その後、硬化物を23℃で24時間純水中に浸漬し、純水から取り出した後、直ちに水分を拭き取り、5分後に精密天秤で硬化物の吸水重量を測定した。硬化物の乾燥重量と吸水重量とから、硬化物中の吸水率(wt%)を算出した。
【0111】
(4)実施例および比較例で用いた化合物
<(A)アルカリ可溶性樹脂>
・原料(フェノール性水酸基含有ジアミン化合物)の合成(合成例1)
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以降「BAHF」と呼ぶ。)18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0112】
白色固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセロソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行なった。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるフェノール性水酸基含有ジアミン化合物を得た。
【化10】
【0113】
・アルカリ可溶性樹脂(P1)の合成(合成例2)
乾燥窒素気流下、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸41.3g(0.16モル)、と1-ヒドロキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール43.2g(0.32モル)とを反応させて得られたジカルボン酸誘導体の混合物0.16モルとBAHF73.3g(0.20モル)をNMP570gに溶解させ、その後75℃で12時間反応させた。次にNMP70gに溶解させた5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物13.1g(0.08モル)を加え、更に12時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を濾過した後、反応混合物を水/メタノール=3/1(容積比)の溶液に投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、目的のポリベンゾオキサゾール(PBO)前駆体(P1)を得た。
【0114】
・アルカリ可溶性樹脂(P2)の合成(合成例3)
乾燥窒素気流下、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以降「ODPA」と呼ぶ。)62.0g(0.20モル)をN-メチル-2-ピロリドン(以降「NMP」と呼ぶ。)500gに溶解させた。ここに合成例1で得られたフェノール性水酸基含有ジアミン化合物96.7g(0.16モル)をNMP100gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で2時間反応させた。次に末端封止剤として3-アミノフェノール8.7g(0.08モル)をNMP50gとともに加え、50℃で2時間反応させた。その後、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール47.7g(0.40モル)をNMP100gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、50℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水5Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、目的のポリイミド前駆体(P2)を得た。
【0115】
<(B)キノンジアジド化合物>
・キノンジアジド化合物1の合成(合成例4)
乾燥窒素気流下、TrisP-PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド36.27g(0.135モル)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表されるキノンジアジド化合物1を得た。
【化11】
【0116】
<(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤>
・TEPIC-VL;“TEPIC” (登録商標)-VL(イソシアヌル環構造含有エポキシ熱架橋剤、下記化学式に示す化合物、日産化学工業(株)製)
【化12】

・VG3101L;“テクモア”(登録商標)VG3101L(芳香環を有しエポキシ基を有する熱架橋剤、下記化学式に示す化合物、(株)プリンテック製)
【化13】

・BD;“エポゴーセー” (登録商標)BD(脂肪族エポキシ熱架橋剤、下記化学式に示す化合物、四日市合成(株)製)
【化14】
【0117】
<(C2)オキセタニル基を有する熱架橋剤>
・OXT-221 (オキセタニル熱架橋剤、下記化学式に示す化合物、東亜合成(株)製)
【化15】

・OXBP;“エタナコール”(登録商標)OXBP(芳香族含有オキセタニル熱架橋剤、下記化学式に示す化合物、宇部興産(株)製)
【化16】

(nは1~3の整数を示す。)
【0118】
<(D)熱酸発生剤>
・BTS;p-トルエンスルホン酸ブチル(スルホン酸エステル構造を有する熱酸発生剤、富士フィルム和光純薬(株)製)
・D1;ジ-p-トルエンスルホン酸1,3-プロパンジオール(式(5)を満たす熱酸発生剤、富士フィルム和光純薬(株)製)
【化17】
【0119】
<(E)フェノール樹脂>
・ポリヒドロキシスチレン樹脂(E1)の合成(合成例5)
テトラヒドロフラン2400gに、開始剤としてsec-ブチルリチウム2.56g(0.04モル)を加えた混合液に、p-t-ブトキシスチレン105.75g(0.6モル)を加えて、3時間撹拌しながら重合させた後、メタノール12.82g(0.4モル)を添加して重合停止反応を行った。次にポリマーを精製するために反応混合物をメタノール3L中に注ぎ、沈降したポリマーを乾燥させた。得られたポリマーをアセトン1.6Lに溶解し、60℃で濃塩酸2gを加えて7時間撹拌し、p-t-ブトキシスチレンを脱保護してヒドロキシスチレンに変換した。反応終了後、溶液を水に注いでポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を水で3回洗浄した後、50℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、目的のポリヒドロキシスチレン(E1)を得た。重量平均分子量は4,500であった。
【0120】
・ノボラック樹脂(E2)の合成(合成例6)
乾燥窒素気流下、m-クレゾール70.2g(0.65モル)、p-クレゾール37.8g(0.35モル)、37重量%ホルムアルデヒド水溶液75.5g(ホルムアルデヒド0.93モル)、シュウ酸二水和物0.63g(0.005モル)、メチルイソブチルケトン264gを仕込んだ後、油浴中に浸し、反応液を還流させながら、4時間重縮合反応を行った。その後、油浴の温度を3時間かけて室温まで放冷し、その後に、フラスコ内の圧力を4~7kPaまで減圧し、揮発分を除去し、溶解している樹脂を室温まで冷却して、ノボラック樹脂(E2)を得た。重量平均分子量は3,500であった。
<溶剤>
・PGME;プロピレングリコールモノメチルエーテル
・GBL;γ-ブチロラクトン
【0121】
実施例1
黄色灯下、(A)アルカリ可溶性樹脂として合成例2で得られた(P1)を10.0g、(B)キノンジアジド化合物として合成例4で得られたキノンジアジド化合物1を2.0g((A)100質量部に対して20質量部)、(C1)エポキシ基を有する熱架橋剤としてVG3101Lを1.5g((A)100質量部に対して15質量部)、(C2)オキセタニル基を有する熱架橋剤としてOXBPを1.0g((A)100質量部に対して10質量部)、(E)熱酸発生剤としてBTSを0.3g((A)100質量部に対して3質量部)秤量し、これをPGME40.0gとGBL10.0gに溶解させた。その後、得られた溶液を孔径1μmのフィルターでろ過し、感光性樹脂組成物Aを得た。得られた感光性樹脂組成物を用い、上述(1)~(3)の評価を実施した。
【0122】
実施例2~17、比較例1~4
実施例1と同様の方法で、化合物の種類と量を表1-1、1-2および2に記載の通りにして感光性樹脂組成物B~Q、感光性樹脂組成物a~dを得た。得られた感光性樹脂組成物を用い、上述(1)~(3)の評価を実施した。
実施例および比較例の組成および評価結果を表1-1、1-2および2に示す。
【0123】
【表1-1】
【0124】
【表1-2】
【0125】
【表2】
【0126】
実施例1~17は、いずれも平坦性、吸水率において良好な結果が得られた。これに対し、(C1)成分を用いない比較例1は、平坦性が劣る結果となった。また、(D)熱酸発生剤を用いない比較例3、(E)フェノール樹脂を用いない比較例4は、吸水率が劣る結果となった。さらに、(C2)成分を用いない比較例2は、平坦性と吸水率がともに劣る結果となった。
【符号の説明】
【0127】
1:基板
2:TFT
3:TFT絶縁層
4:配線
5:平坦化層
6:コンタクトホール
7:第一電極
8:画素分割層
9:有機EL層
10:第二電極
11:段差基板
12:硬化物
図1
図2