(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138966
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ディストリビュータ
(51)【国際特許分類】
E04G 21/04 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
E04G21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049705
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 智之
(72)【発明者】
【氏名】礒村 涼
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA33
2E172CA53
2E172DE01
(57)【要約】
【課題】所望の場所(打設現場)に生コンクリートを供給するディストリビュータであって、当該ディストリビュータの盛替え時における作業者の負担を、軽減することができるディストリビュータを提供する。
【解決手段】ベース装置10と、ベース装置10に支持されるマスト装置20と、マスト装置20の上端部に配置されるブーム装置30とを備え、ブーム装置30に設けられる輸送管32を介して、所望の場所に生コンクリートを供給するディストリビュータ1であって、ベース装置10は、ベース本体11と、ベース本体11の周縁より水平方向に展開可能に設けられる、少なくとも1つ以上のアウトリガ12と、アウトリガ12を、床面Fとの間で各々挟持することにより、ベース装置10を当該床面Fに固定する、少なくともアウトリガ12と同等数の固定部材13とを有し、ディストリビュータ1は、固定部材13を懸吊可能な懸吊装置6をさらに備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部に起立した状態で支持されるマスト部と、
前記マスト部の上端部に配置されるブーム部とを備え、
前記ブーム部は、
直列且つ互いに屈曲揺動可能に連結された複数のブーム片からなるブーム列と、
前記ブーム列に沿って設けられる輸送管と、
前記ブーム列の基部を起伏可能に軸支する支持台とを有し、
前記輸送管を介して、所望の場所に生コンクリートを供給するディストリビュータであって、
前記ベース部は、
本体部と、
前記本体部の周縁より水平方向に展開可能に設けられる、少なくとも1つ以上のアウトリガと、
前記アウトリガを、床面との間で各々挟持することにより、前記ベース部を当該床面に固定する、少なくとも前記アウトリガと同等数の固定部材とを有し、
前記ディストリビュータは、前記固定部材を懸吊可能な懸吊手段をさらに備える、
ことを特徴とするディストリビュータ。
【請求項2】
前記ベース部は、第1階層の床面に固定され、
前記懸吊手段は、
前記第1階層の次の上層階である第2階層の床面に比べて上方に設けられる、
ことを特徴とする、請求項1に記載のディストリビュータ。
【請求項3】
前記懸吊手段は、
前記ベース部が固定される床面に対して、
少なくとも前記アウトリガの上方まで前記固定部材を懸吊可能な、所定高さの位置に設けられる、
ことを特徴とする、請求項1に記載のディストリビュータ。
【請求項4】
前記マスト部は、側面より突出したフック部を有し、
前記懸吊手段は、前記フック部に設けられる、
ことを特徴とする、請求項1~請求項3の何れか一項に記載のディストリビュータ。
【請求項5】
前記懸吊手段は、
前記マスト部の側面より水平方向に延びるアーム部材と、
前記固定部材を上昇方向及び下降方向に懸吊可能なウインチと、
前記アーム部材の延び方向の一端部において、前記ウインチを連結させる連結部材とを有し、
平面視において、
前記アーム部材の延び方向の端面は、
前記ベース部の本体部における外縁に比べて、前記マスト部の軸心側に位置する、
ことを特徴とする、請求項1~請求項3の何れか一項に記載のディストリビュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の場所(打設現場)に生コンクリートを供給するディストリビュータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、床面に固定されるベース部と、当該ベース部に起立した状態で支持されるマスト部と、当該マスト部の上端部に配置される屈曲揺動可能なブーム部とを備え、当該ブーム部に沿って設けられる輸送管を介して、所望の場所(打設現場)に生コンクリートを供給するディストリビュータが知られている(例えば、「特許文献1」を参照)。
上記ディストリビュータにおいて、床面に対するベース部の固定方法としては様々な手法が知られており、その一例として、例えば、一方に延びる複数の固定部材を予め別部品として用意しておき、ベース部から展開される複数のアウトリガの上面に、当該固定部材を交差させた状態で各々載置し、その後、アンカーボルト等を用いて、各固定部材の両端部を床面に固定することにより、固定部材と床面とによってアウトリガを挟持する手法が知られている。
【0003】
ここで、例えばビル等の建設現場において、ディストリビュータを用いて生コンクリートの供給作業(打設作業)を行う場合、一般的には、所定階層(例えば、第1階層)の床面(床スラブ)にコンクリートを打設して、鉄筋コンクリート製床スラブを構築した後、クレーン等を用いて、次の上層階(例えば、第2階層)の床面(床スラブ)にディストリビュータを載せ替える作業(以下、「盛替え」と記載する)が行われる。
そして、上記盛替えを繰り返しながら、ディストリビュータによって、各階層の床面(床スラブ)にコンクリートを順次打設することにより、各階層における鉄筋コンクリート製床スラブが順次構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディストリビュータの盛替えを行う場合、所定階層の床面にベース部を固定していた複数の固定部材が取り外された後、ディストリビュータ本体については、クレーン等によって吊り上げられて、次の上層階の床面まで移動されるが、取り外された複数の固定部材については、作業者の人力によって当該上層階まで持ち運ぶ必要があり、作業者にとって過大な負担となっていた。
【0006】
本発明は、以上に示した現状の問題点に鑑みてなされたものであり、所望の場所(打設現場)に生コンクリートを供給するディストリビュータであって、当該ディストリビュータの盛替え時における作業者の負担を、軽減することができるディストリビュータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、本発明の態様1に係るディストリビュータは、ベース部と、前記ベース部に起立した状態で支持されるマスト部と、前記マスト部の上端部に配置されるブーム部とを備え、前記ブーム部は、直列且つ互いに屈曲揺動可能に連結された複数のブーム片からなるブーム列と、前記ブーム列に沿って設けられる輸送管と、前記ブーム列の基部を起伏可能に軸支する支持台とを有し、前記輸送管を介して、所望の場所に生コンクリートを供給するディストリビュータであって、前記ベース部は、本体部と、前記本体部の周縁より水平方向に展開可能に設けられる、少なくとも1つ以上のアウトリガと、前記アウトリガを、床面との間で各々挟持することにより、前記ベース部を当該床面に固定する、少なくとも前記アウトリガと同等数の固定部材とを有し、前記ディストリビュータは、前記固定部材を懸吊可能な懸吊手段をさらに備えることを特徴とする。
このような構成を有することにより、ディストリビュータの盛替えを行う場合、クレーン等によって、ディストリビュータ本体を、次の上層階へと吊り上げて移動させた後、懸吊手段によって、取り外された固定部材や、ブーム部の輸送管に接続される延長用配管等の別部品を、当該上層階へと吊り上げて移動させることができる。
従って、作業者の人力によって、固定部材や上記別部品を、上層階へと持ち運ぶ手間を極力省くことができ、ディストリビュータの盛替え時における作業者の負担を、軽減することができる。
【0009】
また、本発明の態様2に係るディストリビュータは、上記態様1において、前記ベース部は、第1階層の床面に固定され、前記懸吊手段は、前記第1階層の次の上層階である第2階層の床面に比べて上方に設けられることを特徴とする。
このような構成を有することにより、例えば、第2階層の床面上に、固定部材を別途追加して予め用意しておき、ディストリビュータの盛替えを行う場合には、ディストリビュータ本体を第1階層から第2階層へと移動させ、第2階層の床面上にて、これらの追加した固定部材を用いてベース部を固定した後、懸吊手段によって、第1階層の床面上にて用いられていた固定部材を、第2階層の次の上層階である第3階層へと、階を飛ばして吊り上げて運ぶことができる。
【0010】
また、本発明の態様3に係るディストリビュータは、上記態様1において、前記懸吊手段は、前記ベース部が固定される床面に対して、少なくとも前記アウトリガの上方まで前記固定部材を懸吊可能な、所定高さの位置に設けられることを特徴とする。
このような構成を有することにより、ディストリビュータの盛替えを行う場合、懸吊手段によって固定部材を懸吊した状態で、当該固定部材を取り外すことができ、また、当該固定部材を用いてアウトリガを挟持させ、ベース部を床面に固定することができ、当該ベース部の脱着作業及び固定作業を容易に行うことができる。
また、懸吊手段によって懸吊することにより、これらの固定部材や上記別部品等を、床面上において容易に移動させることができる。
【0011】
また、本発明の態様4に係るディストリビュータは、上記態様1~3の何れかの態様において、前記マスト部は、側面より突出したフック部を有し、前記懸吊手段は、前記フック部に設けられることを特徴とする。
ここで、マスト部の側面には、ワイヤ等と連結可能な複数のフック部が予め設けられており、例えば、所定の現場にマスト部を搬入する場合には、当該フック部に連結したワイヤを介して、クレーン等によって、マスト部を横臥した姿勢にて吊り上げた状態で行われる。
また、ディストリビュータによる生コンクリートの供給作業(打設作業)が一旦開始されると、ディストリビュータの盛替えを行う場合も含めて、当該打設作業が終了するまでの間、上記フック部は、使用されることがない。
本発明の態様4に係るディストリビュータによれば、例えばこのような上記フック部を用いて、懸吊手段が設けられることから、マスト部に取り付けるための取付け構造を、他に別途設ける必要も無く、当該懸吊手段を構成する部品点数を削減することができる。
【0012】
また、本発明の態様5に係るディストリビュータは、上記態様1~3の何れかの態様において、前記懸吊手段は、前記マスト部の側面より水平方向に延びるアーム部材と、前記固定部材を上昇方向及び下降方向に懸吊可能なウインチと、前記アーム部材の延び方向の一端部において、前記ウインチを連結させる連結部材とを有し、平面視において、前記アーム部材の延び方向の端面は、前記ベース部の本体部における外縁に比べて、前記マスト部の軸心側に位置することを特徴とする。
このような構成を有することにより、ディストリビュータの盛替えを行う場合において、各階層に設けられる開口部を介して、当該ディストリビュータをクレーン等によって吊り上げて、次の上層階へと移動させる際に、懸吊手段のアーム部材が、当該上層階の床面と干渉するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係るディストリビュータによれば、当該ディストリビュータの盛替え時における作業者の負担を、軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るディストリビュータの全体的な構成を示した側面図である。
【
図2】ベース装置の構成を示した図であって、(a)はその側面図であり、(b)は
図2(a)の矢視X2の方向に見た平面図である。
【
図3】マスト装置の構成を示した図であって、(a)はその側面図であり、(b)はその正面図である。
【
図5】懸吊装置の構成を示した図であって、
図3中の領域X1によって示された範囲の拡大正面図である。
【
図6】懸吊装置の構成を示した図であって、
図5中の矢視X3の方向に見た拡大側面図である。
【
図7】固定部材の個数が1セットである場合の盛替え時の作業手順を説明するための図であって、(a)はディストリビュータを上階に移動させる直前の状態を示した側面図であり、(b)はディストリビュータを上階に移動させた直後の状態を示した側面図である。
【
図8】固定部材の個数が2セットである場合の盛替え時の作業手順を説明するための図であって、(a)はディストリビュータを上階に移動させる直前の状態を示した側面図であり、(b)はディストリビュータを上階に移動させた直後の状態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態について、
図1乃至
図8を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、懸吊装置6が設けられる側を前側とし、
図1乃至
図8中に示した矢印の方向によって、ディストリビュータ1の前後方向、左右方向、及び上下方向を規定して記述する。
【0016】
[ディストリビュータ1の全体構成]
先ず、本発明を具現化したディストリビュータ1の全体構成について、
図1乃至
図4を用いて説明する。
【0017】
本実施形態におけるディストリビュータ1は、例えばビル等の建設現場において、構造物の躯体(例えば、床スラブや壁部など)を構築するための生コンクリートを、地上に配置されたコンクリートポンプ(図示せず)から受け取り、高所に位置する打設現場の随所に、当該生コンクリートを供給する装置である。
ディストリビュータ1は、
図1に示すように、主に下方から上方に向かって順に配置されるベース装置10、マスト装置20、及びブーム装置30等を備える。
【0018】
ベース装置10は、本発明に係るベース部の一例であって、所望の床面Fに対してディストリビュータ1を固定する装置である。
ベース装置10は、ベース本体11と、アウトリガ12と、固定部材13とを有する。
【0019】
ベース本体11は、本発明に係る本体部の一例であって、ベース装置10の基体となるものである。
ベース本体11は、
図2(a)(b)に示すように、断面視矩形状の中空角筒部材からなる角筒部11aと、矩形枠体形状の部材からなる上側フレーム11b及び下側フレーム11cと、これらの上側フレーム11b及び下側フレーム11cを角筒部11aより支持する鉛直壁部11dとを有する。
なお、角筒部11aは、後述するマスト部材片21aと略同等の部材からなる。
【0020】
角筒部11aは起立した状態で配置されており、その周縁には、上側フレーム11b及び下側フレーム11cが、当該角筒部11aと同軸上、且つ互いに上下方向に平行に配置されている。
また、平面視において、鉛直壁部11d・11d・11d・11dは、角筒部11aにおける複数(本実施形態においては、4個所)の角部より、放射状に延びるようにして各々配置されており、各鉛直壁部11dにおける延び方向側の端部は、上側フレーム11b及び下側フレーム11cにおける複数(本実施形態においては、それぞれ4個所)の角部と、各々接続されている。
【0021】
そして、上側フレーム11bの各角部(即ち、鉛直壁部11dとの接続部)には、上側軸受部11eが各々設けられている。
また、下側フレーム11cの各角部(即ち、鉛直壁部11dとの接続部)には、下側軸受部11fが各々設けられている。
【0022】
各上側軸受部11eには、ブッシングやベアリング等からなる上側軸受部材11e1が、軸方向を上下方向として嵌設されている。
また、各下側軸受部11fにも同様に、ブッシングやベアリング等からなる下側軸受部材11f1が、軸方向を上下方向として嵌設されている。
そして、これらの上側軸受部材11e1及び下側軸受部材11f1は、互いに同軸上に配置されている。
【0023】
角筒部11aの上端部には、複数(本実施形態においては8個)の結合ブロック5・5・・・(より具体的には、後述する凸側結合ブロック51・51・・・)が設けられている。
これら複数の凸側結合ブロック51・51・・・は、角筒部11aの上端部における各々の側面において、上方に突出させた状態で、所定間隔を有して配置されている。
なお、これら複数の凸側結合ブロック51・51・・・は、後述するように、最下部のマスト部材片21aの下端部に設けられる複数の凹側結合ブロック52・52・・・と、互いに嵌合可能に構成されている。
【0024】
また、下側フレーム11cの下面には、接地可能な複数の支持脚11c1・11c・・・が、下方に向かって突設されている。
【0025】
アウトリガ12は、所望の床面Fに対して、ベース装置11を固定する場合に利用されるものである。
アウトリガ12は、例えば、一方に延びる直方体形状の部材からなるアウトリガ本体部12aと、略中空円筒部材からなるハウジング部12bとを有する。
【0026】
ハウジング部12bは、アウトリガ本体部12aの長手方向における一端部に設けられ、軸方向を当該長手方向との直交方向である幅方向(本実施形態においては、上下方向)とした状態で、当該アウトリガ本体部12aと一体的に形成されている。
【0027】
アウトリガ12は、ベース本体11に対して、少なくとも1つ以上設けられており、例えば本実施形態においては、上側フレーム11b(または、下側フレーム11c)の角部と、同等の個数分(4個)設けられている。
また、各アウトリガ12は、上側フレーム11bの上側軸受部11eと、下側フレーム11cの下側軸受部11fとの間において、ハウジング部12bを介して、各々同軸上に配置される。
さらに、各アウトリガ12は、回動軸14を介して、上側軸受部11eの上側軸受部材11e1、及び下側軸受部11eの下側軸受部材11f1と連結され、当該回動軸14を中心にして回動可能に構成されている。
【0028】
そして、アウトリガ12は、回動軸14を中心にして回動することにより、上側フレーム11bと下側フレーム11cとの間の空間部内に収まる収納位置P1と、上側フレーム11b(または、下側フレーム11c)の一側に沿って、ベース本体11の外側に向かって水平方向に延びた状態となる最大展開位置P2との間で、変位可能に構成されている。
つまり、アウトリガ12は、ベース本体11の周縁(より具体的には、上側軸受部11eまたは下側軸受部11f)より、水平方向に展開可能に設けられている。
【0029】
固定部材13は、アウトリガ12を介して、所望の床面Fにベース装置10を固定するものである。
固定部材13は、例えば、一方に延びる直方体形状の部材からなり、長手方向の両端部には、当該長手方向との直交方向に貫通する貫通孔13a・13aが各々設けられている。
また、固定部材13の長手方向における両端面には、ワイヤ等と連結可能なフック部13b・13bが各々設けられている。
【0030】
固定部材13・13・13・13は、少なくとも、アウトリガ12・12・12・12と同等の個数分(本実施形態においては、4個)設けられている。
【0031】
そして、各固定部材13は、ベース本体11の周縁より展開された各アウトリガ13に対して、平面視にて交差させた状態で、当該アウトリガ13の上面に載置される。
また、固定部材13は、アウトリガ13の上面に載置された状態で、貫通孔13a・13aを介して、アンカーボルト等からなる一対の締結部材15・15を用いて、床面Fと固定される。
これにより、固定部材13と床面Fとの間において、アウトリガ13が堅固に挟持された状態となり、ベース装置11は、固定部材13によって所望の床面Fに固定される。
【0032】
マスト装置20は、本発明に係るマスト部の一例であって、ベース装置10の直上において、ブーム装置30を支持する装置である。
マスト装置20は、
図3(a)(b)に示すように、マスト部材21と、梯子22と、作業台23(
図1を参照)と、マスト側接続配管24とを有する。
【0033】
マスト部材21は、マスト装置20の基体となるものである。
マスト部材21は、断面視矩形状の中空角筒部材からなり、長手方向に沿って所定長さに分断された分割構造を有する。
即ち、マスト部材21は、一方に向かって互いに直列に接続された複数(本実施形態においては、2本)のマスト部材片21a・21aによって構成されており、当該マスト部材片21aの本数を増やすことにより、マスト装置20の全長(または、全高)を長く(または、高く)することができ、また、当該マスト部材片21aの本数を減らすことにより、マスト装置20の全長(全高)を短く(または、低く)することができる。
なお、マスト部材片21aは、上述したベース本体11の角筒部11aと略同等の部材からなる。
【0034】
各マスト部材片21aにおいて、長手方向の両端部には、複数(本実施形態においては8個)の結合ブロック5・5・・・が、各々設けられている。
ここで、各結合ブロック5は、突起部51aを有した凸側結合ブロック51と、当該突起部51aに対して嵌合可能な凹部52aを有した凹側結合ブロック52とにより構成される。
また、凸側結合ブロック51及び凹側結合ブロック52には、嵌合した状態で互いに同軸上に貫通する複数の貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0035】
そして、各マスト部材片21aにおいて、長手方向の一端部における各々の側面には、複数の凸側結合ブロック51・51・・・が、突起部51a・51a・・・を突出させた状態で、所定間隔を有して配置される。
また、各マスト部材片21aにおいて、長手方向の他端部における各々の側面には、複数の凹側結合ブロック52・52・・・が、当該マスト部材片21aの他端部から突出した箇所に凹部52a・52a・・・が位置した状態で、所定間隔を有して配置されている。
【0036】
このような構成を有する複数のマスト部材片21a・21aは、一方のマスト部材片21aに設けられた凸側結合ブロック51と、他方のマスト部材片21aに設けられた凹側結合ブロック52とを互いに嵌合させた状態で直列に配置され、上記複数の貫通孔を介して、ボルト等の締結部材によって締結される。
これにより、複数のマスト部材片21a・21aによって、マスト部材21が構築される。
【0037】
そして、構築されたマスト部材21は、複数の凸側結合ブロック51・51・・・を上方に向け、且つ複数の凹側結合ブロック52・52・・・を下方に向けた状態で起立され、ベース装置10における角筒部11aの上端部に配置される。
また、上述したように、角筒部11aの上端部には、複数の凸側結合ブロック51・51・・・が設けられており、当該凸側結合ブロック51・51・・・と、最下部のマスト部材片21aの下端部に設けられる複数の凹側結合ブロック52・52・・・とが互いに嵌合した状態で、上記複数の貫通孔を介して締結部材によって締結されることにより、当該角筒部11aにマスト部材21が固定される。
これにより、マスト装置20は、ベース装置10に対して起立した状態で支持される。
【0038】
梯子22は、床面F(
図1を参照)に固定されたディストリビュータ1において、マスト装置20に沿って作業者が昇降する際に用いられるものである。
梯子22は、マスト部材片21aの長手方向における寸法と略同等の長さに設定されており、各マスト部材片21aの一側面(例えば、本実施形態においては、前側面21a1)において、当該前側面21a1に沿って固定されている。
【0039】
作業台23は、作業者が各種作業を行うための架台であって、
図1に示すように、床面Fに固定されたディストリビュータ1において、マスト装置20の上端部(より具体的には、最上部のマスト部材片21aの上端部)に固定されている。
なお、作業台23において行われる上記各種作業としては、例えば、所定の現場への搬入時における、マスト装置20とブーム装置30との連結作業や、各種配管の接続作業や、ブーム支持台33の点検整備、及び給油等のメンテナンス作業等が挙げられる。
【0040】
マスト側接続配管24は、上記コンクリートポンプから供給される生コンクリートを、後述するブーム装置30のブーム側接続配管33cへと導くものである。
マスト側接続配管24は、直列に配置された複数の配管部材24a・24a・・・と、互いに隣接する配管部材24a・24aを液密に接続する、複数のジョイント部材24b・24b・・・とを有する。
【0041】
ここで、本実施形態において、各配管部材24aの長さは、各マスト部材片21aの長手方向における寸法に対して、1/2程度に設定されており、例えば、全長4mのマスト部材片21aに対して、各配管部材24aの長さは、2m程度に設定されている。
【0042】
そして、
図3(a)(b)に示すように、各マスト部材片21aの前側面21a1において、直列に接続された2本の配管部材24a・24aが、複数の支持部材25・25・・・を介して予め支持されており、複数(2本)のマスト部材片21a・21aを連結してマスト部材21を構築する際に、一方のマスト部材片21aに支持された配管部材24a・24a、及び他方のマスト部材片21aに支持された配管部材24a・24aにおける、互いに対向する端部同士を、ジョイント部材24bによって新たに接続することにより、マスト側接続配管24が構築される。
【0043】
なお、後述するように、最上部のマスト部材片21aに支持された配管部材24aの上端部は、ブーム装置30のブーム側接続配管33cと接続される。
また、ディストリビュータ1による生コンクリートの供給作業(打設作業)を行う場合、最下部のマスト部材片21aに支持された配管部材24aの下端部は、上記コンクリートポンプから延びるコンクリート圧送管(図示せず)と接続される。
【0044】
ところで、マスト装置20において、各マスト部材片21aの一側面(例えば、本実施形態においては、前側面21a1)には、当該前側面21a1より突出する、複数(本実施形態においては、2個)のフック部21a2・21a2が設けられている。
上記フック部21a2は、例えば、所定の現場にマスト装置20を搬入する場合において、クレーン等によって、各々のマスト部材片21aを横臥した状態で懸吊する際に用いられる部位であり、ワイヤ等と接続可能に構成されている。
【0045】
本実施形態においては、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合に、取り外された複数の固定部材13・13・・・(
図2を参照)を懸吊する懸吊装置6が設けられており、当該懸吊装置6は、フック部21a2を介して、各マスト部材片21aに取り付けられる。
なお、懸吊装置6の構成の詳細については、後述する。
【0046】
ブーム装置30は、本発明に係るブーム部の一例であって、上記コンクリートポンプから供給される生コンクリートを、所望の場所(打設現場)へと導く装置である。
ブーム装置30は、
図4に示すように、ブーム列31と、輸送管32と、ブーム支持台33とを有する。
【0047】
ブーム列31は、輸送管32を支持するものである。
ブーム列31は、順に直列に配置され、且つ図示せぬ連結部材等を用いて互いに屈曲揺動可能に連結された、第1ブーム片31a、第2ブーム片31b、第3ブーム片31c、及び第4ブーム片31dからなる複数のブーム片と、例えば油圧シリンダ等からなり、これら複数のブーム片を可動させる、第1アクチュエータ31e、第2アクチュエータ31f、第3アクチュエータ31g、及び第4アクチュエータ31hとを有する。
【0048】
上記複数のブーム片は、第1ブーム片31aの基端部(より具体的には、第2ブーム片31b側との反対側の端部)において、回動軸34を介して、ブーム支持台33(より具体的には、後述する旋回台33b)の上端部と上下方向に回動可能に連結されている。
また、上記連結部材を介して、第2ブーム片31bは、第1ブーム片31aに対して上下方向に相対回動可能であり、第3ブーム片31cは、第2ブーム片31bに対して上下方向に相対回動可能であり、第4ブーム片31dは、第3ブーム片31cに対して上下方向に相対回動可能である。
【0049】
そして、第1アクチュエータ31eは、ブーム支持台33(より具体的には、旋回台33b)と第1ブーム片31aとの間に配置され、また、第2アクチュエータ31fは、第1ブーム片31aと第2ブーム片31bとの間に配置され、また、第3アクチュエータ31gは、第2ブーム片31bと第3ブーム片31cとの間に配置され、さらに第4アクチュエータ31hは、第3ブーム片31cと第4ブーム片31dとの間に配置されている。
【0050】
このような構成からなるブーム列31において、これら複数の第1アクチュエータ31e、第2アクチュエータ31f、第3アクチュエータ31g、及び第4アクチュエータ31hが各々単独に伸縮可動することにより、上記複数のブーム片(第1ブーム片31a、第2ブーム片31b、第3ブーム片31c、及び第4ブーム片31d)は、互いに単独に屈曲揺動される。
【0051】
輸送管32は、生コンクリートを輸送して、当該生コンクリートを所望の場所(打設現場)に排出するものである。
輸送管32は、第1ブーム片31aに沿って設けられる第1輸送管32aと、第2ブーム片31bに沿って設けられる第2輸送管32bと、第3ブーム片31cに沿って設けられる第3輸送管32cと、第4ブーム片31dに沿って設けられる第4輸送管32dとを有する。
【0052】
第1輸送管32aの端部と、第2輸送管32bの端部とは、図示せぬジョイント部材を介して、相対回動可能に液密に接続されている。
また、第2輸送管32bの端部と、第3輸送管32cの端部とも同様に、図示せぬジョイント部材を介して、相対回動可能に液密に接続されている。
さらに、第3輸送管32cの端部と、第4輸送管32dの端部とも同様に、図示せぬジョイント部材を介して、相対回動可能に液密に接続されている。
【0053】
そして、後述するように、第1輸送管32aにおける、ブーム支持台33側の端部は、当該ブーム支持台33に設けられるブーム側接続配管33cと接続される。
【0054】
ブーム支持台33は、本発明に係る支持台の一例であって、ブーム装置30の基体となるものである。
ブーム支持台33は、最上部のマスト部材片21aの上端部に固定される固定台33aと、固定台33aの上端部において、水平方向に旋回可能に連結される旋回台33bと、これらの固定台33a及び旋回台33bに沿って設けられるブーム側接続配管33cとを有する。
【0055】
固定台33aは、断面視矩形状の略中空角筒部材からなる本体フレーム33a1と、中空円筒部材からなるハウジング部33a2とを有する。
ハウジング部33a2は、本体フレーム33a1の長手方向における一端部に設けられ、軸方向を当該長手方向とした状態で、本体フレーム33a1と一体的に設けられる。
なお、本体フレーム33a1は、上述したマスト部材片21aと略同等の部材からなる。
【0056】
また、本体フレーム33a1の長手方向における他端部には、複数(本実施形態においては8個)の結合ブロック5・5・・・(より具体的には、凹側結合ブロック52・52・・・)が設けられている。
これら複数の凹側結合ブロック52・52・・・は、本体フレーム33a1の他端部における各々の側面において、当該他端部から突出した箇所に凹部52a・52a・・・が位置した状態で、所定間隔を有して配置されている。
【0057】
そして、本体フレーム33a1は、複数の凹側結合ブロック52・52・・・を下方に向けた状態で、マスト部材21(より具体的には、最上部のマスト部材片21a)の上端部に配置される。
また、上述したように、マスト部材21の上端部には、複数の凸側結合ブロック51・51・・・が設けられており、当該凸側結合ブロック51・51・・・と、本体フレーム33a1に設けられる複数の凹側結合ブロック52・52・・・とが互いに嵌合した状態で、上記複数の貫通孔を介して締結部材によって締結されることにより、当該マスト部材21に本体フレーム33a1が固定される。
これにより、ブーム装置30は、マスト装置20の上端部に配置される。
【0058】
旋回台33bは、コ字状に屈曲形成された略板状部材からなり、開口方向を上方に向けた状態で、固定台33aの上面に配置される。
また、旋回台33bは、ハウジング部33b1の内側に嵌設された円環部材(図示せず)を介して、水平方向に旋回可能に固定台33aと連結されている。
【0059】
そして、旋回台33bは、上端部において、回動軸34を介して、第1ブーム片31aの上記基端部と連結される。
また、旋回台33bは、一方の側端部において、第1アクチュエータ31eの一端部(第1ブーム片31a側との反対側の端部)と連結される。
つまり、ブーム支持台33は、回動軸34を介して、ブーム列31の基部(より具体的には、第1ブーム片31aの上記基端部)を起伏可能に軸支する。
【0060】
ブーム側接続配管33cは、上記コンクリートポンプから供給される生コンクリートを、輸送管32へと導くものである。
ブーム側接続配管33cは、略S字状に連結された配管部材によって形成され、固定台33a及び旋回台33bに沿って配置される。
【0061】
具体的には、ブーム側接続配管33cは、固定台33aにおける本体フレーム33a1の一側面に沿って一旦上方に延びた後、水平方向に屈曲して当該本体フレーム33a1の内部に進入し、再び垂直方向に屈曲して上方に延びるとともに、ハウジング部33b1(より具体的には、上記円環部材)の内側を通過して旋回台33bの内側に進入し、さらに、旋回台33bの上端部にて水平方向に屈曲し、当該旋回台33bの外部へと突出するように配置されている。
なお、ブーム側接続配管33cは、ハウジング部33b1の内側に位置する箇所にて二分割されており、図示せぬジョイント部材を介して、回動可能に液密に接続されている。
【0062】
そして、ブーム側接続配管33cは、旋回台33bの上端部側に位置する端部において、図示せぬジョイント部材を介して、輸送管32(より具体的には、第1輸送管32a)の端部と、回動可能に液密に接続される。
また、ブーム側接続配管33cは、本体フレーム33a1の下端部側に位置する端部において、上述したように、ジョイント部材24bを介して、最上部のマスト部材片21aに支持された配管部材24aの上端部と液密に接続される。
【0063】
[懸吊装置6の構成]
次に、懸吊装置6の構成について、
図2(b)、
図3(a)、
図5及び
図6を用いて詳細に説明する。
【0064】
懸吊装置6は、本発明に係る懸吊手段の一例であって、前述したように、例えばディストリビュータ1の盛替えを行う場合において、取り外された複数の固定部材13・13・・・(
図2を参照)を纏めて懸吊し、これら複数の固定部材13・13・・・を上層階へと吊り上げて移動させる装置である。
【0065】
なお、懸吊装置6によって懸吊される対象物は、固定部材13に限定されるものではなく、例えば、マスト装置20に設けられるマスト側接続配管24と、上記コンクリート圧送管(図示せず)との間に設けられ、当該マスト側接続配管24及びブーム側接続配管33c(
図4を参照)を介してブーム装置30の輸送管32に接続される、延長用配管(図示せず)などの別部品についても、懸吊装置6によって懸吊可能である。
【0066】
懸吊装置6は、
図6に示すように、マスト装置20に対して着脱可能に取り付けられるアーム部材61と、アーム部材61によって支持されるウインチ62と、アーム部材61とウインチ62とを互いに連結する連結部材63とを有する。
【0067】
アーム部材61は、一方に延びる部材からなるアーム本体61aと、アーム本体61aの長手方向の一端部に設けられる連結部61bと、アーム本体61aの長手方向の他端側、且つ当該長手方向との直交方向の一端側に設けられる取付け部61cとを有する。
また、アーム部材61は、当該アーム本体61aと取付け部61cとの間を連結して補強する第1補強部61dと、連結部61bと取付け部61cとの間を連結して補強する第2補強部61eとを有する。
【0068】
ここで、本実施形態においては、例えば、一対の直角三角形状の枠体部材が、互いに対向し、且つ各々の底辺部位を、アーム本体61aの長手方向に沿わせた状態で、当該アーム本体61aの両側面に固定されており、第1補強部61dは、当該枠体部材における一辺部位(当該底辺部位と直交する部位)によって構成され、また、第2補強部61eは、当該枠体部材における斜辺部位によって構成されている。
【0069】
そして、
図5に示すように、連結部61bは、上記一対の枠体部材とアーム本体61aとを、当該アーム本体61aの長手方向との直交方向に向かって同時に貫通する、第1貫通孔61b1を有する。
また、取付け部61cは、上記一対の枠体部材を第1貫通孔61b1と平行に各々貫通する、一対の第2貫通孔61c1・61c1を有する。
【0070】
アーム部材61は、
図6に示すように、取付け部61cの第2貫通孔61c1(
図5を参照)を介して、ボルト等の締結部材64を用いて、マスト装置20(より具体的には、マスト部材片21a)のフック部21a2と着脱可能に連結される。
なお、上記フック部21a2は、ディストリビュータ1による生コンクリートの供給作業(打設作業)が一旦開始されると、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合も含めて、少なくとも当該打設作業が終了するまでの間、使用されることがない。
これにより、懸吊装置6は、マスト装置20におけるマスト部材片21aの側面(前側面21a1)より、アーム部材61(より具体的には、アーム本体61a)が水平方向に延びた状態で、当該マスト装置20に設けられる。
【0071】
このように、本実施形態において、マスト装置20のマスト部材片21aには、前述したように、横臥した状態で懸吊される際に用いられる、前側面21a1より突出したフック部21a2が設けられており、懸吊装置6は、当該フック部21a2に設けられる構成となっている。
【0072】
このような構成を有することにより、本実施形態における懸吊装置6によれば、マスト装置20に取り付けるための取付け構造を、他に別途設ける必要も無く、当該懸吊装置6を構成する部品点数を削減することができる。
【0073】
また、
図2(b)に示すように、平面視において、ベース本体11における角筒部11aの軸心G(即ち、マスト装置20の軸心G)から、マスト装置20に設けられたアーム部材61の延び方向の端面(より具体的には、アーム本体61aの長手方向の一端面61a1(
図6を参照))までの離間寸法L1は、当該軸心Gから、ベース本体11における上側軸受部11e(または下側軸受部11f)の外側端面までの離間寸法L2に比べて、小さくなるように設定されている(L1<L2)。
つまり、平面視において、マスト装置20に設けられたアーム部材61の延び方向の端面(一端面61a1)は、ベース装置10のベース本体11における外縁に比べて、マスト装置20の軸心G側に位置するように設定されている。
【0074】
このような構成を有することにより、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合において、各階層に設けられる開口部を介して、当該ディストリビュータ1をクレーン等によって吊り上げて、次の上層階へと移動させる際に、懸吊装置6のアーム部材61が、当該上層階の床面と干渉するのを抑制することができる。
【0075】
なお、
図6に示すように、アーム本体61aの上記長手方向の他端側には、弾性部材等からなる緩衝部材65が設けられており、当該緩衝部材65をマスト部材片21aの前側面21a1に当接することにより、ウインチ62によって複数の固定部材13・13・・・を懸吊する際の衝撃等を緩衝可能な構成となっている。
【0076】
ウインチ62は、複数の固定部材13・13・・・を上昇方向及び下降方向に懸吊可能な、十分な定格荷重を保証し、且つ後述するように、ベース装置10におけるアウトリガ12の上方まで、これら複数の固定部材13・13・・・を上昇可能な、市販の電動式ウインチを採用することができる。
【0077】
連結部材63は、例えば市販のシャックル等を採用することができ、アーム部材61における連結部61bの第1貫通孔61b1(
図5を参照)を介して、ボルト等の締結部材66を用いて、当該アーム部材61と着脱可能に連結される。
【0078】
そして、連結部材63にウインチ62を掛止させることにより、当該ウインチ62は、アーム部61と連結される。
換言すると、連結部材63は、アーム部材61の延び方向の一端部(より具体的にはアーム本体61aの上記一端部)において、ウインチ62を連結させる。
【0079】
以上のような構成からなる懸吊装置6は、
図3(a)に示すように、所望の床面Fにディストリビュータ1が配置された状態において、ベース装置10が固定される当該床面Fに対して、少なくとも、アウトリガ12の上方まで複数の固定部材13・13・・・を纏めて懸吊可能な、所定高さHの位置に設けられる。
【0080】
このような構成を有することにより、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合、懸吊装置6によって固定部材13を懸吊した状態で、当該固定部材13を取り外すことができ、また、当該固定部材13を用いてアウトリガ12を挟持させ、ベース装置10を移動先の床面Fに固定することができ、当該ベース装置10の脱着作業及び固定作業を容易に行うことができる。
また、懸吊装置6によって懸吊することにより、これら複数の固定部材13・13・・・や上記別部品等を、床面F上において容易に移動させることができる。
【0081】
なお、懸吊装置6の個数については、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合の状況に応じて適宜設定可能であり、例えば、マスト装置20に設けられる全てのフック部21a2・21a2・・・に対して設けられていてもよく、或いは、所定のフック部21a2にのみ設けられていてもよい。
つまり、懸吊装置6は、少なくとも1つのフック部21a2に設けられていればよい。
【0082】
また、懸吊装置6は、マスト装置20に設けられる任意のフック部21a2に設けることが可能であり、後述するように、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合において、所定の床面Fから次の上層階の床面Fまで、複数の固定部材13・13・・・を昇降可能な位置に設けられていてもよく、或いは、当該上層階に対して、さらに次の上層階の床面Fまで、複数の固定部材13・13・・・を昇降可能な位置に設けられていてもよい。
【0083】
さらに、懸吊装置6の構成については、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、アーム部材61を有することなく、マスト装置20のフック部21a2に対して直接的に連結される連結部材63、及び当該連結部材63に掛止されるウインチ62によって構成されていてもよい。
【0084】
また、懸吊装置6が設けられる部位については、フック部21a2に限定されるものではなく、他に別途、マスト装置20等に新たに追加して設けられていてもよい。
この場合、新たに設けられる部位については、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合において、少なくとも、所定の床面Fから次の上層階の床面Fまで、複数の固定部材13・13・・・等を昇降可能な位置に、懸吊装置6を支持することが可能な位置であれば、何れの箇所に設けられていてもよい。
【0085】
[盛替え時の作業手順]
次に、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合の作業手順について、
図7及び
図8を用いて説明する。
【0086】
<固定部材13の個数が1セットの場合>
先ず、1基のディストリビュータ1に対して用意されている固定部材13の個数が、アウトリガ12の個数と同等(本実施形態においては、4個)である場合について、
図7を用いて説明する。
なお、以下の説明においては、4個の固定部材13・13・13・13を、適宜「1セット」の固定部材13・13・13・13と記載する。
【0087】
図7(a)において、第1階層(例えば、本実施形態においては6階)の床面F1に固定された、ディストリビュータ1による打設作業が終了すると、当該ディストリビュータ1は、ワイヤ等を介して図示せぬクレーンによって懸吊され、ブーム列31を起立させた状態で一時的に保持される。
また、床面F1にベース装置10を固定していた、1セットの固定部材13・13・13・13は、作業者の手によって取り外される。
【0088】
そして、取り外された1セットの固定部材13・13・13・13は、床面F1上に一旦載置されるとともに、各アウトリガ12は、収納位置P1(
図2(b)を参照)に変位され、ベース本体11内に収納される。
【0089】
各アウトリガ12がベース本体11内に収納されると、
図7(b)に示すように、ディストリビュータ1は、上記クレーンによって、第1階層(6階)の次の上層階である第2階層(例えば、本実施形態においては7階)まで吊り上げられる(移動される)。
【0090】
その後、各アウトリガ12を再び展開することにより、ディストリビュータ1は、当該アウトリガ12を介して、第2階層(7階)の床面F2上に載置された状態となる。
【0091】
一方、本実施形態においては、例えば、最下部のマスト部材片21aにおけるフック部21a2(
図3を参照)を介して、懸吊装置6が設けられており、作業者は、第2階層(7階)においてディストリビュータ1を上記クレーンにて吊り上げた状態を維持したまま、当該懸吊装置6を用いて、床面F1上に載置された1セットの固定部材13・13・13・13を、第2階層(7階)まで吊り上げる。
【0092】
そして、作業者は、第2階層(7階)まで吊り上げられた固定部材13を用いて、アウトリガ13を介して、床面F2に再びベース装置10を固定する。
また、作業者は、上記クレーンからのディストリビュータ1の解放作業や、前述した延長用配管(図示せず)等の接続作業などの各種作業を行う。
これにより、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合の一連の作業手順は終了する。
そして、さらに、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合は、再び上記手順を繰り返す。
【0093】
<固定部材13の個数が2セットの場合>
次に、1基のディストリビュータ1に対して用意されている固定部材13の個数が、2セットである場合について、
図8を用いて説明する。
【0094】
図8(a)において、第1階層(例えば、本実施形態においては6階)の床面F1に固定された、ディストリビュータ1による打設作業が終了すると、当該ディストリビュータ1は、ワイヤ等を介して図示せぬクレーンによって懸吊され、ブーム列31を起立させた状態で一時的に保持される。
また、床面F1にベース装置10を固定していた、1セットの固定部材13・13・13・13(以下、適宜「固定部材13X」と記載する)は、作業者の手によって取り外される。
【0095】
そして、取り外された1セットの固定部材13X・13X・13X・13Xは、床面F1上に一旦載置されるとともに、各アウトリガ12は、収納位置P1(
図2(b)を参照)に変位され、ベース本体11内に収納される。
【0096】
なお、本実施形態においては、さらに1セットの固定部材13・13・13・13(以下、適宜「固定部材13Y」と記載する)が別途設けられており、これら1セットの固定部材13Y・13Y・13Y・13Yは、第1階層の次の上層階である第2階層(例えば、本実施形態においては7階)の床面F2上に、予め載置されている。
【0097】
各アウトリガ12がベース本体11内に収納されると、
図8(b)に示すように、ディストリビュータ1は、上記クレーンによって第2階層(7階)まで吊り上げられる(移動される)。
【0098】
その後、各アウトリガ12を再び展開することにより、ディストリビュータ1は、当該アウトリガ12を介して、第2階層(7階)の床面F2上に載置された状態となり、作業者は、上記1セットの固定部材13Y・13Y・13Y・13Yを用いて、床面F2に再びベース装置10を固定する。
また、作業者は、上記クレーンからのディストリビュータ1の解放作業を行う。
【0099】
一方、本実施形態においては、例えば、最上部のマスト部材片21aにおけるフック部21a2(
図3を参照)を介して、懸吊装置6が設けられている。
即ち、
図8(a)に示すように、第1階層(6階)の床面F1にベース装置10が固定された状態において、懸吊装置6は、第1階層(6階)の次の上層階である第2階層(7階)の床面F2に比べて、上方に設けられている。
【0100】
そして、
図8(b)に示すように、床面F2にベース装置10が固定された後、作業者は、当該懸吊装置6を用いて、床面F1上に載置された1セットの固定部材13X・13X・13X・13Xを、第2階層(7階)の次の上層階である第3階層(8階)まで吊り上げ、当該第3階層の床面F3上に載置する。
つまり、懸吊装置6によって、第1階層(6階)の床面F1上にて用いられていた複数の固定部材13X・13X・13X・13Xを、第2階層(7階)の次の上層階である第3階層(8階)へと、階を飛ばして吊り上げて運ぶことができる。
【0101】
また、作業者は、前述した延長用配管(図示せず)等の接続作業などの各種作業を行う。
これにより、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合の一連の作業手順は終了する。
そして、さらに、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合は、再び上記手順を繰り返す。
【0102】
以上のように、本実施形態におけるディストリビュータ1は、ベース装置(ベース部)10と、ベース装置(ベース部)10に起立した状態で支持されるマスト装置(マスト部)20と、マスト装置(マスト部)20の上端部に配置されるブーム装置(ブーム部)30とを備える装置である。
ここで、ブーム装置(ブーム部)30は、直列且つ互いに屈曲揺動可能に連結された複数のブーム片(第1ブーム片31a、第2ブーム片31b、第3ブーム片31c、及び第4ブーム片31d)からなるブーム列31と、ブーム列31に沿って設けられる輸送管32と、ブーム列31の基部を起伏可能に軸支するブーム支持台(支持台)33とを有しており、ディストリビュータ1は、輸送管32を介して、所望の場所に生コンクリートを供給するディストリビュータ1である。
【0103】
そして、ベース装置(ベース部)10は、ベース本体(本体部)11と、ベース本体(本体部)11の周縁より水平方向に展開可能に設けられる、少なくとも1つ以上(本実施形態においては4個)のアウトリガ12・12・12・12と、これらのアウトリガ12・12・12・12を、床面Fとの間で各々挟持することにより、ベース装置(ベース部)10を当該床面Fに固定する、少なくともアウトリガ12と同等数(本実施形態においては4個)の固定部材13・13・13・13とを有し、ディストリビュータ1は、複数の固定部材13・13・13・13を懸吊可能な懸吊装置(懸吊手段)6をさらに備える構成となっている。
【0104】
このような構成を有することにより、ディストリビュータ1の盛替えを行う場合、クレーン等によって、ディストリビュータ1の本体を、次の上層階へと吊り上げて移動させた後、懸吊装置6によって、取り外された複数の固定部材13・13・13・13や、ブーム装置30の輸送管32に接続される延長用配管等の別部品を、当該上層階へと吊り上げて移動させることができる。
従って、作業者の人力によって、複数の固定部材13・13・13・13や上記別部品を、上層階へと持ち運ぶ手間を極力省くことができ、ディストリビュータの盛替え時における作業者の負担を、軽減することができる。
【0105】
以上、本発明を具現化する一実施形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内の全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0106】
1 ディストリビュータ
10 ベース装置(ベース部)
11 ベース本体(本体部)
12 アウトリガ
13 固定部材
20 マスト装置(マスト部)
21a1 前側面(側面)
21a2 フック部
30 ブーム装置(ブーム部)
31 ブーム列
31a 第1ブーム片(ブーム片)
31b 第2ブーム片(ブーム片)
31c 第3ブーム片(ブーム片)
31d 第4ブーム片(ブーム片)
32 輸送管
33 ブーム支持台(支持台)
6 懸吊装置(懸吊手段)
61 アーム部材
61a1 一端面(端面)
62 ウインチ
63 連結部材
F 床面
F1 第1階層の床面
F2 第2階層の床面
G 軸心
H 所定高さ