(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138967
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
E05F 15/643 20150101AFI20241002BHJP
F16H 7/02 20060101ALI20241002BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E05F15/643
F16H7/02
B60J5/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049706
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】井出 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 宏
(72)【発明者】
【氏名】西村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭紀
【テーマコード(参考)】
2E052
3J049
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DA04
2E052DB03
2E052DB04
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC01
3J049AA03
3J049BE02
3J049BE10
3J049BH02
3J049BH10
3J049CA04
(57)【要約】
【課題】モータユニットの取付け作業の容易化を適切に図り、生産性の向上や製造コストの低減を促進することが可能なスライドドアを備えた車両構造を提供する。
【解決手段】スライドドア動作装置Bとして、車両1の側部の車室内側の所定位置に取付けられたモータユニットMUと、車両1の側部の外面側において移動部材60が所定の経路で移動可能とされた移動部材動作機構部Cと、を備えており、モータユニットMUおよび移動部材動作機構部Cの被駆動回転部材62には、これらの駆動連結手段として、セレーション軸部37aおよびセレーション孔部62bが設けられている、スライドドアを備えた車両構造Aであって、モータユニットMUが前記所定位置に取付けられておらず、被駆動回転部材62の手前側に配置された状態から被駆動回転部材62側に押されたときに、モータユニットMUをセレーション軸部37aおよびセレーション孔部62bの中心周りに回転させる回転動作手段32,72を、さらに備えている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドドアを車両の側部において移動させるためのスライドドア動作装置を備えており、
このスライドドア動作装置は、
前記側部の車室内側の所定位置に取付けられたモータユニットと、
前記スライドドアに連結されたベルトまたはワイヤ状の移動部材、および前記モータユニットから駆動回転力を受ける被駆動回転部材を有し、かつ前記車両の側部の外面側において前記移動部材が所定の経路で移動可能とされた移動部材動作機構部と、
を備えており、
前記モータユニットおよび被駆動回転部材には、これらの駆動連結手段として、互いに嵌合するセレーション軸部およびセレーション孔部が設けられている、スライドドアを備えた車両構造であって、
前記モータユニットが前記所定位置に取付けられておらず、前記被駆動回転部材の手前側に配置された状態において、前記セレーション軸部および前記セレーション孔部を互いに嵌合させるべく前記モータユニットが前記被駆動回転部材側に押されたときに、前記モータユニットを前記セレーション軸部および前記セレーション孔部の中心周りに回転させる回転動作手段を、さらに備えていることを特徴とする、スライドドアを備えた車両構造。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドドアを備えた車両構造であって、
前記側部の車室内側には、前記被駆動回転部材からその手間側に離間した配置の第1のガイド部、およびこの第1のガイド部よりも前記被駆動回転部材に接近した配置の第2のガイド部が設けられているとともに、
前記モータユニットには、第1および第2の被ガイド部が設けられており、
前記モータユニットが前記所定位置に取付けられていない状態において、前記第1の被ガイド部が前記第1のガイド部に接触するように前記モータユニットが設定されることにより、前記セレーション軸部および前記セレーション孔部は、互いに接近してそれらの中心位置合わせが可能とされており、
前記第1の被ガイド部が前記第1のガイド部に接触した状態において、前記モータユニットが前記被駆動回転部材側に押されると、前記第2の被ガイド部は前記第2のガイド部に接触してその移動ガイドがなされることにより、前記モータユニットが回転するように構成されており、
前記回転動作手段は、前記第2の被ガイド部および前記第2のガイド部により構成されている、スライドドアを備えた車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドアを備えた自動車などの車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スライドドアを備えた車両構造の一例として、特許文献1に記載の車両構造がある。
同文献に記載の車両構造においては、車両側部に設けられた乗降用の開口部を開閉するためのスライドドアが具備されている。このスライドドアは、いわゆる自動開閉動作が可能であり、そのための手段として、モータユニットを駆動源とするスライドドア動作装置が具備されている。
【0003】
このスライドドア動作装置は、スライドドアに所定の連結部を介して連結され、かつモータユニットを駆動源として移動するベルト(移動部材)が所定の経路で移動可能とされたベルト動作機構部(移動部材動作機構部)を備えている。このベルト動作機構部は、車両の側部の外面側に設けられているのに対し、モータユニットは、前記側部の内面側である車室内側に取付けられている。モータユニットからベルト動作機構部への駆動力伝達手段としては、モータユニットの出力軸にセレーション軸部を設け、かつベルト動作機構部に具備されている所定のプーリ(被駆動回転部材)には、前記セレーション軸部に嵌合するセレーション孔部を設ける手段が採用されている。このような手段によれば、モータユニットからベルト動作機構部への駆動力伝達手段を、比較的簡易な構成とすることが可能である。
【0004】
しかしながら、前記従来技術おいては、次に述べるように、改善の余地があった。
【0005】
すなわち、モータユニットの取付け作業は、車両の内面側において行なわれる。ただし、ベルト動作機構部(移動部材動作機構部)は、車両の側部の外面側に設けられている。このため、モータユニットのセレーション軸部の嵌合対象であるベルト動作機構部の所定のプーリに設けられているセレーション孔部は、モータユニットの取付け作業を行なう場合に、その作業場所から遠い配置になる場合がある。このような場合、モータユニットの取付け作業を行なう際に、セレーション軸部をセレーション孔部に適切に嵌合させる作業は容易ではなくなり、モータユニットの取付け作業性は悪いものとなる。セレーション軸部およびセレーション孔部を適切かつ円滑に嵌合させるには、その嵌合初期にセレーション軸部をセレーション孔部に相対させて回転させる必要がある(セレーション軸部およびセレーション孔部の嵌合方向(軸長方向)において、それらの凸部どうしが当接状態にあると、セレーション軸部をセレーション孔部内に円滑に差し込むことは困難である)。したがって、モータユニットの取付け作業性は、一層悪いものとなる。
また、車両の側部は、たとえばサイドアウタパネルとその車幅方向内側(車室内側)に位置するサイドインナパネルとから構成されているのが一般的である。このような場合、サイドアウタパネルにモータユニットを取付ける作業は、サイドインナパネルに設けられた開口部を介して、サイドインナパネルよりもさらに車室内側の場所から行なうこととなるため、前記取付け作業性はさらに悪いものとなる。
車両の製造作業の容易化を図り、生産性の向上や製造コストの低減を促進する上では、前記した不具合を適切に解消することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、スライドドア動作装置を構成する移動部材動作機構部の駆動源として利用されるモータユニットの取付け作業の容易化を適切に図り、生産性の向上や製造コストの低減を促進することが可能なスライドドアを備えた車両構造を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供されるスライドドアを備えた車両構造は、スライドドアを車両の側部において移動させるためのスライドドア動作装置を備えており、このスライドドア動作装置は、前記側部の車室内側の所定位置に取付けられたモータユニットと、前記スライドドアに連結されたベルトまたはワイヤ状の移動部材、および前記モータユニットから駆動回転力を受ける被駆動回転部材を有し、かつ前記車両の側部の外面側において前記移動部材が所定の経路で移動可能とされた移動部材動作機構部と、を備えており、前記モータユニットおよび被駆動回転部材には、これらの駆動連結手段として、互いに嵌合するセレーション軸部およびセレーション孔部が設けられている、スライドドアを備えた車両構造であって、前記モータユニットが前記所定位置に取付けられておらず、前記被駆動回転部材の手前側に配置された状態において、前記セレーション軸部および前記セレーション孔部を互いに嵌合させるべく前記モータユニットが前記被駆動回転部材側に押されたときに、前記モータユニットを前記セレーション軸部および前記セレーション孔部の中心周りに回転させる回転動作手段を、さらに備えていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、モータユニットを車両の側部の車室内側の所定位置に取付ける場合には、モータユニットおよび移動部材動作機構部の被駆動回転部材に設けられているセレーション軸部とセレーション孔部とを互いに嵌合させるべく、モータユニットを被駆動回転部材に向けてその手前側から押すと、回転動作手段の作用により、モータユニットは、セレーション軸部およびセレーション孔部の中心周りに回転する。このため、セレーション軸部とセレーション孔部とは、それらの凸部どうしが当接したまま嵌合困難な状態になることはなく、それらを円滑に嵌合させ得ることとなる。したがって、モータユニットの取付け作業の容易化が図られ、車両の生産性の向上や製造コストの低減を適切に促進することが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記側部の車室内側には、前記被駆動回転部材からその手間側に離間した配置の第1のガイド部、およびこの第1のガイド部よりも前記被駆動回転部材に接近した配置の第2のガイド部が設けられているとともに、前記モータユニットには、第1および第2の被ガイド部が設けられており、前記モータユニットが前記所定位置に取付けられていない状態において、前記第1の被ガイド部が前記第1のガイド部に接触するように前記モータユニットが設定されることにより、前記セレーション軸部および前記セレーション孔部は、互いに接近してそれらの中心位置合わせが可能とされており、前記第1の被ガイド部が前記第1のガイド部に接触した状態において、前記モータユニットが前記被駆動回転部材側に押されると、前記第2の被ガイド部は前記第2のガイド部に接触してその移動ガイドがなされることにより、前記モータユニットが回転するように構成されており、前記回転動作手段は、前記第2の被ガイド部および前記第2のガイド部により構成されている。
【0012】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、モータユニットを車両の側部の車室内側の所定位置に取付ける場合に、車室
内側に設けられている第1のガイド部に対し、モータユニットの第1の被ガイド部を接触させることにより、モータユニットと移動部材動作機構部の被駆動回転部材のセレーション軸部とセレーション孔部とを互いに接近させ、かつそれらの中心位置合わせを行なうことが可能である。第1のガイド部は、被駆動回転部材からその手間側に離間した配置であって、第2のガイド部よりも手前側に位置しているため、モータユニットの取付け作業を行なう作業者に近く、作業者にとって見易い配置とすることが可能である。したがって、第1のガイド部に第1の被ガイド部を接触させる作業を容易とし、セレーション軸部とセレーション孔部との中心位置合わせ作業の容易化を図ることが可能である。
また、第1の被ガイド部が第1のガイド部に接触した状態において、モータユニットを被駆動回転部材側に押すと、前記回転動作手段を構成する第2の被ガイド部と第2のガイド部との作用によってモータユニットを、セレーション軸部およびセレーション孔部の中心周りに回転させることができる。
このようなことから、前記構成によれば、モータユニットおよび移動部材動作機構部の被駆動回転部材に設けられているセレーション軸部とセレーション孔部の中心位置合わせ作業から、モータユニットを回転させてそれらセレーション軸部とセレーション孔部とを適切に嵌合させ終わる迄の一連の作業を、容易かつ適切に、短時間で行なうことが可能となり、生産性向上や製造コスト低減などを図る上で、一層好ましい。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るスライドドアを備えた車両構造の一例を示す要部概略側面図である。
【
図2】
図1に示す車両構造のスライドドアを省略した状態での車両外部からの要部概略分解斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III要部概略分解断面図である。
【
図6】(a)は、
図5とは異なる部分の要部概略断面図であり、(b)は、(a)の要部分解概略断面図(モータユニットの取付け前状態の断面図)である。
【
図7】(a)は、
図6(a)のモータユニットを透視した状態での矢視VIIaの概略図であり、(b)は、
図6(b)のモータユニットを透視した状態での矢視VIIbの概略図である。
【
図8】
図5に示す車両構造のモータユニットの取付けが行なわれる前の取付け途中状態の一例を示す要部概略断面図である。
【
図9】
図5に示す車両構造の要部分解概略斜視図であり、(a)は、モータユニットを示し、(b)は、モータユニットの取付け対象の領域を示している。
【
図10】(a)は、
図9(a)の矢視Xaの正面図であり、(b)は、(a)の要部拡大斜視図である。
【
図12】
図11に示すベルト動作機構部の一部の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1に示すスライドドアを備えた車両構造A(以下、「車両構造A」と適宜略称する)においては、車両1の側部に設けられた乗降用の開口部10を開閉すべく車両前後方向に往復移動可能とされたスライドドア11が具備されている。このスライドドア11の前部の上端部近傍ならびに下端部近傍、および後部の上下高さ方向中間部には、アッパローラ
12a、ロアローラ12b、および
図4を参照して後述するセンタローラ28,29が取付けられている。これらのローラ12a,12b,28,29は、車体に設けられて車両前後方向に延びるアッパ、ロア、およびセンタのスライドレール14a,14b,2に嵌入保持され、これらのスライドレール14a,14b,2に沿って移動可能である。
【0017】
車両構造Aは、スライドドア11を車両1の側部において車両前後方向に移動させるための手段として、スライドドア動作装置Bを具備している。
図2~
図6によく表われているように、このスライドドア動作装置Bは、前記したセンタのスライドレール2に加え、ベルト動作機構部C、その駆動源としてのモータユニットMU、およびモータユニット取付け用の補助部材4を備えている。
【0018】
スライドレール2は、
図2および
図4によく表われているように、車両1の側部を構成するサイドアウタパネル15(リアサイドアウタパネル)の外面部に、たとえば複数のボルト・ナット9a,9bを利用して取付けられており、かつ車両前後方向に延びている。このスライドレール2の前部寄り領域は、湾曲しているが、これは、
図1に示した乗降用の開口部10の後縁部10aの形状に対応したものである。このスライドレール2は、底壁部20、側壁部21、および上壁部22を有し、かつ車幅方向外方側が開口した断面略コ字状である。
【0019】
スライドレール2には、このスライドレール2内を転動可能なセンタローラ28,29が取付けられた屈曲状のブラケットアーム27が付属して取付けられており、このブラケットアーム27にスライドドア11が取付けられる。このことにより、スライドドア11の後部の上下高さ方向中間部は、ブラケットアーム27を介してスライドレール2に支持されて移動ガイドされる。ブラケットアーム27には、後述するように、ベルト動作機構部Cのブラケットアーム67が連結されており、ベルト動作機構部Cが駆動されると、これに伴ってスライドドア11が車両前後方向に移動する。
【0020】
ベルト動作機構部Cは、スライドドア11を車両前後方向に移動させるべく前記したブラケットアーム67を車両前後方向に移動させるための機構部であり、ブラケットアーム67が取付けられたベルト60、このベルト60を一定の経路で循環移動可能とすべるための複数のプーリ61~63、およびこれら複数のプーリ61~63を支持するフレーム64を備えている。
これらのうち、ベルト動作機構部C、ベルト60は、本発明でいう「移動部材動作機構部」、「移動部材」の具体例にそれぞれ相当する。
【0021】
フレーム64は、
図2,
図3によく表われているように、サイドアウタパネル15の外面側であって、スライドレール2の上側に重なるようにして配され、固定されている。この固定は、たとえばフレーム64の前後両端部に設けられたブラケット部76a,76bを、スライドレール2の前後両端部のブラケット部26a,26bにボルト締結するなどして図られている。
【0022】
ベルト60は、たとえば無端状の歯付きベルトである。複数のプーリ61~63は、ベルト60に対応する歯付きプーリである。これら複数のプーリ61~63は、
図3によく表われているように、前側および後側の一対のプーリ61、モータユニットMUから駆動力を受けるドライブプーリ62、およびその左右両横の一対のスナブプーリ63である(
図11,
図12も参照)。ベルト60は、前側および後側のプーリ61間に掛け廻され、それらの相互間において正逆両方向に循環移動可能である。
【0023】
なお、
図2に示すように、ベルト動作機構部Cの上側には、カバー部材68が取付けられ、ベルト動作機構部C内が雨水などに濡れることの防止が図られている。また、
図1に
示すように、車両1の側部の外面側には、ベルト動作機構部Cおよびスライドレール2を覆うボディサイドカバー19(
図1,
図2のみに示し、他の図では省略)が取付けられる。このことにより、ベルト動作機構部Cおよびスライドレール2が設けられた箇所の保護、および車両1の見栄え向上が図られる。
【0024】
ベルト動作機構部Cは、既述したように、サイドアウタパネル15の外面側に配されているのに対し、モータユニットMUは、サイドアウタパネル15の内側の車室内側に配されている。モータユニットMUからベルト動作機構部Cへの駆動力伝達を図るための具体的な構成を、以下に説明する。
【0025】
すなわち、ベルト動作機構部Cのドライブプーリ62は、本発明でいう「被駆動回転部材」の一例に相当し、モータユニットMUの出力回転軸37から駆動力を受ける。このドライブプーリ62およびその左右両横の一対のスナブプーリ63は、他のプーリ61とは異なり、いわゆる横向き姿勢(回転中心軸線が略水平に延びる姿勢)でフレーム64に回転可能に設けられている。ベルト60は、ドライブプーリ62に対して適切に巻き掛けられるように、それらの周辺部において部分的に捩じられる(
図3,
図12を参照)。
【0026】
図5,
図8によく表われているように、ドライブプーリ62は、その一側面部に突設された突出筒部62a、およびこの突出筒部62aの内側先端寄り領域に設けられたセレーション孔部62bを具備している。一方、ベルト動作機構部Cのフレーム64のうち、ドライブプーリ62およびその周辺部に対向する領域には、側板部7が取付けられており、かつの側板部7には、突出筒部62aの外周囲に位置する略円筒状の突出筒部70が設けられている(
図11も参照)。
【0027】
サイドアウタパネル15のうち、ドライブプーリ62に対向する箇所には、開口部15aが設けられている。突出筒部62a,70は、その開口部15aから車室内側に進入するように設定されている。
図示説明は省略するが、サイドアウタパネル15と側板部7との相互間に、合成ゴム製などのシート状のシール材を介装し、このシール材によって開口部15aの隙間を塞ぎ、車室内への水入りを防止する構成を採用することもできる。
【0028】
モータユニットMUは、
図9,
図10によく表われているように、モータMやその付属品を一纏めに保持するユニットケース33が、ブラケット3に取付けられた構成である。ブラケット3は、金属板にプレス加工を施して製作されたものであり、モータMをたとえばビス39を用いて取付けるための複数の領域Sa、およびこのモータユニットMU自体をサイドアウタパネル15に取付けるための複数の領域Sbを有している。各領域Sbには、溶接ナット38aが溶接されてネジ孔部38が設けられ、後述するボルト98によるボルト締結が可能とされている。
【0029】
モータMの出力回転軸37には、先に述べたセレーション孔部62bに嵌合可能なセレーション軸部37aが設けられている。また、出力回転軸37のセレーション軸部37aよりも先端寄り部分には、セレーション軸部37aよりも小径であって、セレーション孔部62bとの中心位置合わせを行なうのに適する非セレーション軸部37bが設けられている。
【0030】
モータユニット取付け用の補助部材4は、先のブラケット3と同様に、金属板にプレス加工を施して製作されたものである。この補助部材4は、サイドアウタパネル15の内面側のうち、ドライブプーリ62や側板部7に対応する箇所に、溶接などの手段を用いて取付けられ、それらの箇所を補強する役割を果たす。
【0031】
モータユニットMUは、補助部材4の車室内側を向く前面部に対面接触するように取付けられる。したがって、補助部材4の前面部は、本発明でいう「前記側部の車室内側の所定位置」の一例に相当する。
モータユニットMUの補助部材4への取付けは、ベルト動作機構部Cのフレーム64、側板部7、サイドアウタパネル15、および補助部材4を貫通し、モータユニットMUのネジ孔部38に螺合される複数のボルト98を用いて図られる。
【0032】
車両構造Aにおいては、モータユニットMUを補助部材4の前面部に取付ける際に、モータユニットMUのセレーション軸部37aと、ベルト動作機構部Cのドライブプーリ62のセレーション孔部62bとの嵌合作業を容易にするための手段が設けられている。以下、これについて説明する。なお、
図5に示すように、サイドアウタパネル15の車室内側には、サイドインナパネル16が位置しており、モータユニットMUの取付けは、サイドインナパネル16に設けられた開口部16a(上下幅Haの部分)を介して行なわれることとなる。
【0033】
補助部材4には、一対の第1のガイド部41が設けられ、かつ側板部7の突出筒部70には、第2のガイド部72が設けられている。これに対応し、モータユニットMUのブラケット3には、一対の第1の被ガイド部31、および第2の被ガイド部32が設けられている。
第2のガイド部72および第2の被ガイド部32の組み合わせは、本発明でいう「回転動作手段」の一例に相当する。
【0034】
より具体的に説明すると、補助部材4の下部には、この補助部材4の手前側(車室内側)に突出する突出部40が設けられており、この突出部40に、車両前後方向に離間した配置で一対の第1のガイド部41が設けられている。各第1のガイド部41は、上下高さ方向に起立する起立壁部41aと、その上端に繋がった略水平状の水平板部41bとを含んでいる。突出部40のうち、第1のガイド部41よりも奥部側は、水平板部41bよりも高さが低くされた凹部40aとして形成されている。この凹部40aは、後述するように、モータユニットMUが回転する際に、このモータユニットMUと突出部40との干渉を回避するのに役立つ部分である。
【0035】
一対の第1の被ガイド部31は、モータユニットMUのブラケット3の下部に、逆T字状の領域34を設けることにより構成されており、車両前後方向に離間した配置で設けられている。各第1の被ガイド部31は、上下高さ方向に起立する起立壁部31aと、その上端に繋がった略水平状の水平板部31bとを含んでいる。
なお、本実施形態においては、前記逆T字状の領域34は、ブラケット3の他の部分とは別体とされ、他の部分に対してビス39aなどを用いて連結されている。このような構成によれば、ブラケット3の全体を一枚の金属板からプレス加工する場合と比べて材料取りの効率がよく、製造コストを低減するのに好ましい。また、第1の被ガイド部31の仕様を、様々な状況に応じて適宜に変更するのにも適する。ただし、これに限定されないことは言う迄もない。
【0036】
前記した第1のガイド部41、および第1の被ガイド部31によれば、
図7(b),
図8に示すように、一対の第1の被ガイド部31を第1のガイド部41上に載せると、モータユニットMUの上下高さ方向の配置、および車両前後方向の配置が規定される。このことにより、セレーション軸部37aとセレーション孔部62bとが互いに接近し、かつそれらの中心位置合わせがなされた状態が得られる。また、その際には、
図6(b)を参照して後述する状態、すなわち第2の被ガイド部32と第2のガイド部72とが位置合わせされた状態も得られるようになっている。
【0037】
一方、モータユニットMUのブラケット3のうち、出力回転軸37の近傍箇所には、車幅方向外方側に起立する起立片部32aが設けられ、かつその先端部が屈曲している。この屈曲部分が、第2の被ガイド部32である。これに対し、突出筒部70の外周面には、上下2つの凸状リブ73,74に挟まれて形成された凹溝部が形成されており、この凹溝部が第2のガイド部72である。この第2のガイド部72には、第2の被ガイド部32が進入可能である。
【0038】
この第2のガイド部72を構成する下側の凸状リブ74は、
図6(b)によく表われているように、前側水平部74a、傾斜部74b、および奥側係合部74cを有している。傾斜部74bは、車幅方向外方側に進むほど高さが高くなるように側面視後上がりの傾斜状部分である。奥側係合部74cは、傾斜部74bよりもさらに車幅方向外方側に繋がった部分であり、傾斜部74bの最上高さ箇所よりも高さが低く、傾斜部74bを係入保持可能とされた部分である。
図6(b)に示すように、第2の被ガイド部32が、第2のガイド部72に対向接近した状態において、モータユニットMUを第2のガイド部72側に前進させると、第2の被ガイド部32は第2のガイド部72内に進入する。
その後、第2の被ガイド部32が、第2のガイド部72の傾斜部74bの位置まで進行すると、第2の被ガイド部32は上向きの力を受けるため、モータユニットMUの全体が、出力回転軸37周り(セレーション軸部37aおよびセレーション孔部62bの中心周り)に回転する。その際には、
図7(a)に示すように、一対の第1のガイド部41のうち、下降する側の一方は、凹部40a内に進入するため、モータユニットMUの第1の被ガイド部31と補助部材4の突出部40との不当な干渉は適切に回避される。
【0039】
また、第2の被ガイド部32が傾斜部74bを越えて奥側係合部74c上まで到達すると、前記したモータユニットMUの回転は停止する。また、モータユニットMUが元の角度に戻ることも阻止され、モータユニットMUを本来意図する所定の姿勢に適切に維持させることが可能である。ここで、本来意図する所定の姿勢とは、複数のボルト98を用いてモータユニットMUを補助部材4の前面部に適切に取付け得る姿勢であり、
図5,
図6(a),
図7(a)などに示す姿勢である。
【0040】
なお、突出筒部70の外周面のうち、第2のガイド部72の反対側には、この第2のガイド部72と対称(いわゆる前後勝手違い)のガイド部72’が設けられている。本実施形態におけるスライドドア動作装置Bは、車両1の左側のスライドドア11に適用されているが、これとは異なり、スライドドア動作装置Bを、右側のスライドドアに適用する場合には、前記したガイド部72’を、本実施形態の第2のガイド部72に相当する部位として利用可能となる。
【0041】
次に、前記した車両構造Aの作用について説明する。
【0042】
車両構造Aの製造に際して、モータユニットMUの取付けを図るには、
図5に示したように、車室内において作業者がモータユニットMUを、サイドインナパネル16の開口部16aから補助部材4側に接近させていく。その際、モータユニットMUの一対の第1の被ガイド部31を、補助部材4の一対の第1のガイド部41上に載せ、
図6(b),
図7(b),
図8に示したような状態に設定する。ここで、第1のガイド部41は、補助部材4から車室内側に突出した突出部40に設けられており、モータユニットMUの取付け作業者の手前側に近い配置(開口部16aに近い配置)となっている。したがって、前記設定作業は、より容易となる。
【0043】
前記した設定によれば、セレーション軸部37aとセレーション孔部62bとを互いに接近させ、かつそれらの中心位置合わせが行なわれる。この状態において、第1の被ガイ
ド部31を第1のガイド部41に対してスライドさせるようにモータユニットMUを補助部材4側に押すと、まず出力回転軸37の非セレーション軸部37bを、セレーション孔部62b内に進入させて、それらの中心位置合わせがズレないようにすることが可能である。
【0044】
次いで、モータユニットMUを補助部材4側にさらに押すと、
図6,
図7(a)を参照して説明したとおり、第2の被ガイド部32が第2のガイド部72に進入し、その傾斜部74bのガイド作用によって、モータユニットMUは出力回転軸37周り(セレーション軸部37aおよびセレーション孔部62bの中心周り)に回転する。このような回転が行なわれると、セレーション軸部37aとセレーション孔部62bとは、それらの凸部どうしが当接したまま嵌合困難な状態となることはなく、それらを円滑に嵌合させ得ることとなる。第2のガイド部72は、セレーション孔部62bに近い箇所に設けられているため、第2のガイド部72のガイド作用によって、モータユニットMUをセレーション孔部62bやセレーション軸部37aの中心周りに回転させる際の精度が高められる効果も期待できる。また、第2の被ガイド部32を第2のガイド部72の奥側係合部74c上に配置させて係合させておけば、モータユニットMUの姿勢を安定させておくことができるため、モータユニットMUのボルト締結作業も容易化される。
【0045】
前記したように、本実施形態の車両構造Aによれば、モータユニットMUのセレーション軸部37aと、ドライブプーリ62のセレーション孔部62bとの中心位置合わせ作業に加え、モータユニットMUを回転させることによってセレーション軸部37aとセレーション孔部62bとを円滑に嵌合させることが可能となる。したがって、
図5に示したように、モータユニットMUの取付け作業を、サイドインナパネル16の開口部16aから行なわねばならないような場合には、好適である。本実施形態によれば、モータユニットMUの取付け作業の容易・迅速化が図られるため、生産性向上や製造コスト低減などを図る上で、好ましい。
【0046】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るスライドドアを備えた車両構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0047】
上述の実施形態においては、本発明でいう移動部材動作機構部が、ベルト動作機構部Cとして構成され、移動部材として、歯付きのベルト60が用いられている。ただし、本発明はこれに限定されない。ベルトは、歯付きベルトに限らず、他の種類のベルト、たとえばチェーンベルトなどであってもよい。また、移動部材は、ベルトに代えて、ワイヤ状のもの(ワイヤそのもの、あるいはワイヤに類するもの)であってもよい。
本発明でいう移動部材動作機構部の被駆動回転部材(モータユニットから駆動回転力を受ける部材)としては、歯付きプーリであるドライブプーリ62に代えて、他の部材とすることも可能である。
上述の実施形態においては、セレーション軸部がモータユニット側、セレーション孔部がモータユニットの取付け対象側とされているが、これらを反対とすることも可能である。
【0048】
上述の実施形態においては、補助部材4の前面部が、本発明でいう「前記側部の車室内側の所定位置」とされているが、補助部材4を省略した状態で、モータユニットMUをサイドアウタパネル15に直接取付けた構成とすることも可能である。
本発明でいう第1の被ガイド部、第2の被ガイド部は、モータユニットMUのブラケット3に設けることに代えて、モータユニットMUのブラケット以外の部分に設けた構成とすることも可能である。
本発明でいう第1のガイド部、および第2のガイド部は、補助部材4の下部や側板部7
の突出筒部70に限定されず、他の部材または部位に設けることもできる。
上述した実施形態においては、複数の部材の連結手段として、ボルト・ナットや溶接手段が用いられているが、これら以外の種々の連結手段を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
A スライドドアを備えた車両構造
B スライドドア動作装置
C ベルト動作機構部(移動部材動作機構部)
M モータ
MU モータユニット
1 車両
11 スライドドア
15 サイドアウタパネル
2 スライドレール
3 ブラケット(モータユニットの)
31 第1の被ガイド部
32 第2の被ガイド部
37a セレーション軸部
4 補助部材
41 第1のガイド部
60 ベルト(移動部材)
62 ドライブプーリ(被駆動回転部材)
62b セレーション孔部
72 第2のガイド部