IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-画像形成装置、及びその制御方法 図1
  • 特開-画像形成装置、及びその制御方法 図2
  • 特開-画像形成装置、及びその制御方法 図3
  • 特開-画像形成装置、及びその制御方法 図4
  • 特開-画像形成装置、及びその制御方法 図5
  • 特開-画像形成装置、及びその制御方法 図6
  • 特開-画像形成装置、及びその制御方法 図7
  • 特開-画像形成装置、及びその制御方法 図8
  • 特開-画像形成装置、及びその制御方法 図9
  • 特開-画像形成装置、及びその制御方法 図10
  • 特開-画像形成装置、及びその制御方法 図11
  • 特開-画像形成装置、及びその制御方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138970
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】画像形成装置、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241002BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049711
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 凜太郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将也
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA16
2C056EB07
2C056EB24
2C056EB36
2C056EC07
2C056EC31
2C056FA13
2C056JB04
2C056JB08
(57)【要約】
【課題】ノズル形成面の拭きむらを抑制しつつ、払拭工程をできるだけ迅速に行うことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、ヘッドと、ワイパと、前記ヘッドと前記ワイパとを相対移動させる相対移動機構と、前記相対移動機構を制御するコントローラとを備える。前記コントローラは、前記相対移動機構を制御することで、第1状態から第2状態まで前記ヘッドと前記ワイパとを相対移動させて前記ワイパにより前記ノズル形成面を拭くヘッド清掃工程を実行する。前記ヘッド清掃工程が、前記ワイパがノズル形成領域に接触している期間は前記ヘッドと前記ワイパとの間の相対移動速度を第1定速度とする定速工程と、前記ワイパと前記ノズル形成領域とが離間した後、前記第2状態に至るまでの期間に、前記相対移動速度を第1加速度で加速させ、次いで減速させる加減速工程と、を含む。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが形成されたノズル形成面を有し、該ノズルから液体を吐出して媒体に画像を形成するヘッドであって、前記ノズルが前記ノズル形成面内のノズル形成領域に形成されたヘッドと、
ワイパと、
前記ヘッドと前記ワイパとを第1方向に沿って相対移動させる相対移動機構と、
前記相対移動機構を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記相対移動機構を制御することで、前記ヘッドが前記ワイパに対する前記第1方向の一方に位置する第1状態から前記ヘッドが前記ワイパに対する前記第1方向の他方に位置する第2状態まで前記ヘッドと前記ワイパとを相対移動させて前記ワイパにより前記ノズル形成面を拭くヘッド清掃工程を実行し、
前記ヘッド清掃工程が、
前記ワイパが前記ノズル形成領域に接触している期間は前記ヘッドと前記ワイパとの間の相対移動速度を第1定速度とする定速工程と、
前記ワイパと前記ノズル形成領域とが離間した後、前記第2状態に至るまでの期間に、前記相対移動速度を第1加速度で加速させ、次いで減速させる加減速工程と、を含む画像形成装置。
【請求項2】
前記定速工程において、前記ワイパが前記ノズル形成面に接触している期間は前記ヘッドと前記ワイパとの間の相対移動速度を前記第1定速度とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記定速工程において、前記ワイパと前記ノズル形成領域とが接触した後、前記ワイパが前記ノズル形成領域から離間して所定期間が経過するまで、前記相対移動速度を前記第1定速度とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記ヘッド清掃工程において、前記ヘッドと前記ワイパとが前記第1状態から相対移動を開始した後、前記ワイパが前記ノズル形成領域に接触するまでの期間に、前記相対移動速度を第2加速度で加速させる加速工程、を含む、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2加速度が前記第1加速度よりも大きい請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ヘッドが前記第1方向に移動可能であり、且つ前記ワイパが前記第1方向において固定されており、
前記ヘッドから落下する前記液体を受ける液体受け部であって、前記コントローラが、前記加速工程において、前記第2加速度で前記相対移動速度を加速させる期間に前記ヘッドの下方に位置する液体受け部を更に備える請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記加減速工程において、前記ワイパと前記ノズル形成領域とが離間した後、前記相対移動速度を前記第1加速度で加速させ、次いで第2定速度に維持し、次いで減速させ、
前記第2定速度が前記第1定速度よりも大きい請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ヘッド及び前記ワイパが前記第1状態に至ったことを検知する第1センサと、
前記ヘッド及び前記ワイパが前記第2状態に至ったことを検知する第2センサとを更に備える請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ヘッドは、600dpi以上の解像度を有するラインヘッドである請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記相対移動機構は、前記ヘッド及び/又は前記ワイパを移動させるステッピングモータを有し、
前記コントローラは前記ステッピングモータを制御することにより前記相対移動速度を制御する請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記ヘッドが前記第1方向に移動可能であり、且つ前記ワイパが前記第1方向において固定されている請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記ヘッドは、前記第2状態において前記媒体への画像形成を行う請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記媒体を搬送方向に搬送する搬送機構を更に備え、
前記搬送方向と前記第1方向とが交差し、
前記ヘッドは前記搬送方向に並ぶ複数のヘッドである請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
ノズルが形成されたノズル形成面を有し、該ノズルから液体を吐出して媒体に画像を形成するヘッドであって、前記ノズルが前記ノズル形成面内のノズル形成領域に形成されたヘッドと、
ワイパと、
前記ヘッドと前記ワイパとを第1方向に沿って相対移動させる相対移動機構と、
前記相対移動機構を制御するコントローラとを備える画像形成装置の制御方法であり、
前記コントローラが、前記相対移動機構を制御することで、前記ヘッドが前記ワイパに対する前記第1方向の一方に位置する第1状態から前記ヘッドが前記ワイパに対する前記第1方向の他方に位置する第2状態まで前記ヘッドと前記ワイパとを相対移動させて前記ワイパにより前記ノズル形成面を拭くヘッド清掃工程を実行することを含み、
前記ヘッド清掃工程が、
前記ワイパが前記ノズル形成領域に接触している期間は前記ヘッドと前記ワイパとの間の相対移動速度を第1定速度とする定速工程と、
前記ワイパと前記ノズル形成領域とが離間した後、前記第2状態に至るまでの期間に、前記相対移動速度を加速させ、次いで減速させる加減速工程とを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルを有するヘッドから媒体(用紙等)にインクを吐出して、媒体上に画像を形成する画像形成装置が用いられている。そのような画像形成装置には、ヘッドのノズル形成面(ノズルが形成された面)の払拭を行うためのワイパを備えるものがある。
【0003】
特許文献1は、インク吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッドの吐出口面をワイピングするワイピング機構を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-91887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ノズル形成面をワイパで払拭する払拭工程では、ノズル形成面の拭きむらを抑制しつつ、払拭工程をできるだけ迅速に行うことが求められている。これに対し、特許文献1により拭きむらの抑制と工程の迅速な完了との両方を十分に達成し得るとは言い難い。特に、特許文献1では、ヘッドとワイパとの接触中にワイピング速度の加減速が行われるため、ワイパがヘッドへと与える力(即ち、ワイパとヘッドとの間の接触圧)が変動し、ヘッドに拭きむらが生じる。
【0006】
本発明は、ノズル形成面の拭きむらを抑制しつつ、払拭工程をできるだけ迅速に行うことができる画像形成装置、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、ノズルが形成されたノズル形成面を有し、該ノズルから液体を吐出して媒体に画像を形成するヘッドであって、前記ノズルが前記ノズル形成面内のノズル形成領域に形成されたヘッドと、
ワイパと、
前記ヘッドと前記ワイパとを第1方向に沿って相対移動させる相対移動機構と、
前記相対移動機構を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記相対移動機構を制御することで、前記ヘッドが前記ワイパに対する前記第1方向の一方に位置する第1状態から前記ヘッドが前記ワイパに対する前記第1方向の他方に位置する第2状態まで前記ヘッドと前記ワイパとを相対移動させて前記ワイパにより前記ノズル形成面を拭くヘッド清掃工程を実行し、
前記ヘッド清掃工程が、
前記ワイパが前記ノズル形成領域に接触している期間は前記ヘッドと前記ワイパとの間の相対移動速度を第1定速度とする定速工程と、
前記ワイパと前記ノズル形成領域とが離間した後、前記第2状態に至るまでの期間に、前記相対移動速度を第1加速度で加速させ、次いで減速させる加減速工程と、を含む画像形成装置が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様に従えば、ノズルが形成されたノズル形成面を有し、該ノズルから液体を吐出して媒体に画像を形成するヘッドであって、前記ノズルが前記ノズル形成面内のノズル形成領域に形成されたヘッドと、
ワイパと、
前記ヘッドと前記ワイパとを第1方向に沿って相対移動させる相対移動機構と、
前記相対移動機構を制御するコントローラとを備える画像形成装置の制御方法であり、
前記コントローラが、前記相対移動機構を制御することで、前記ヘッドが前記ワイパに対する前記第1方向の一方に位置する第1状態から前記ヘッドが前記ワイパに対する前記第1方向の他方に位置する第2状態まで前記ヘッドと前記ワイパとを相対移動させて前記ワイパにより前記ノズル形成面を拭くヘッド清掃工程を実行することを含み、
前記ヘッド清掃工程が、
前記ワイパが前記ノズル形成領域に接触している期間は前記ヘッドと前記ワイパとの間の相対移動速度を第1定速度とする定速工程と、
前記ワイパと前記ノズル形成領域とが離間した後、前記第2状態に至るまでの期間に、前記相対移動速度を加速させ、次いで減速させる加減速工程とを含む方法、が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成装置、及びその制御方法によれば、画像形成装置のユーザは、ノズル形成面の拭きむらを抑制しつつ、払拭工程をできるだけ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、プリンタの概略的な構成図である。
図2図2は、プリンタを媒体幅方向に見た概略的な構成図である。
図3図3(a)はヘッドアセンブリの斜視図である。図3(b)はヘッドアセンブリの上面図である。
図4図4は、ヘッドユニット、プラテン、メンテナンスユニットの媒体幅方向におけるそれぞれの位置関係を示す概略図である。なお、ヘッドは搬送方向上流のヘッドのみを図示し、ワイパ、ノズルキャップも当該ヘッドに対応するワイパ、ノズルキャップのみを図示している。
図5図5は第1ワイパ、第2ワイパの斜視図である。
図6図6(a)、図6(b)は、移動機構を搬送方向の下流から見た側面図である。図6(a)はヘッドユニット10がメンテナンス位置にある状態を示し、図6(b)はヘッドユニット10が印刷位置にある状態を示す。
図7図7は、印刷機構を媒体幅方向の右方から見た概略的な側面図である。図7においては、キャリッジ12の搬送方向に沿った湾曲は図示を省略している。
図8図8は、プリンタの電気的構成を示す機能ブロック図である。
図9図9は、ヘッド清掃工程のフローチャートである。
図10図10(a)~図10(f)は、払拭工程におけるヘッドとワイパとの位置関係の変化を示す説明図である。
図11図11は、払拭工程におけるヘッドの移動速度の変動を示すグラフである。
図12図12は、ワイパユニットと、ワイパユニットを媒体幅方向に移動させる移動機構の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
本発明の実施形態であるプリンタ(画像形成装置)100について、図1図11を参照して説明する。
【0012】
[プリンタ100]
図1図2に示す通り、プリンタ100は、ヘッドユニット10、プラテン20、給送シャフト31、巻取シャフト32、搬送ローラ対41、42、インクタンク50、メンテナンスユニット60、移動機構70、コントローラ80、及びこれらを収容する筐体90を主に備える。
【0013】
以下の説明において、搬送ローラ対41、42が並ぶ方向、即ち画像形成時に媒体PMが搬送される方向をプリンタ100の搬送方向と呼ぶ。搬送方向については、媒体PMが搬送される方向の上流、下流をそれぞれ、搬送方向の上流、下流と呼ぶ。また、水平面内において搬送方向と直交する方向、即ち、搬送ローラ対41、42の回転軸の延びる方向を媒体幅方向と呼ぶ。媒体幅方向については、搬送方向の下流から上流を見た際の左、右をそれぞれ、媒体幅方向の左、右と呼ぶ。媒体幅方向は、本発明の「第1方向」の一例である。
【0014】
ヘッドユニット10は、6つのヘッドアセンブリ11と、6つのヘッドアセンブリ11を保持するキャリッジ12とを有する。6つのヘッドアセンブリ11は互いに同一の構造を有する。6つのヘッドアセンブリ11は、搬送方向に6つ並んでキャリッジ12により一体に保持されている。
【0015】
6つのヘッドアセンブリ11の各々は、いわゆるラインタイプのヘッド(ヘッドバー)である。6つのヘッドアセンブリ11の各々は、箱状であり(図3(a))、下面11bに位置した10個のヘッドHDを有する(図3(b))。10個のヘッドHDは互いに同一の構造を有する。
【0016】
10個のヘッドHDは、媒体幅方向に沿って千鳥状(ジグザグ)に位置している。具体的には、10個のヘッドHDは、媒体幅方向に配列されて第1列L1を構成する5つのヘッドHDと、媒体幅方向に配列されて第2列L2を構成する5つのヘッドHDとを含む。第2列L2は、第1列L1の搬送方向下流に位置している。第2列L2を構成するヘッドHDは、第1列L1を構成するヘッドHDに対して、媒体幅方向の右方にシフトして位置している。
【0017】
6つのヘッドアセンブリ11の各々の内部には、インクタンク50から供給されたインクを10個のヘッドHDの各々へ供給する流路(不図示)が形成されている。ヘッドアセンブリ11として、例えば特開2022―154427に記載されたヘッドシステムを用いることができる。
【0018】
10個のヘッドHDの各々の下面は、複数のノズルNZが形成されたノズル面NZSである。本実施形態では、10個のヘッドHDのノズル面NZSはヘッドアセンブリ11の下面11bの下方に位置しているが、これには限られない。10個のヘッドHDのノズル面NZSとヘッドアセンブリ11の下面11bとは面一であってもよい。
【0019】
複数のノズルNZの各々は、インクを媒体PMに向けて吐出する微小開口である。説明の都合上、本実施形態のヘッドHDの各々には、36個のノズルNZが形成されているものとする。36個のノズルは、搬送方向に並ぶ4列のノズル列を構成しており、各ノズル列は媒体幅方向に並ぶ9個のノズルNZを含む。各ノズル列あたりの画像形成の解像度は150dpiであり、4列のノズル列を有するヘッドHDの画像形成の解像度は600dpiである。なお、ヘッドHDが有するノズルNZの数は36個よりも多くてもよく、ノズル列の数は4列よりも多くてもよい。また、ヘッドHDの画像形成の解像度は600dpiよりも大きくてもよい。例えば、各ノズル列の解像度を150dpiよりも小さくしつつ、ヘッドHDが有するノズル列の数を増やすことにより、ヘッドHDの画像形成の解像度を大きくしてもよい。以下、ノズル面NZS内のノズルNZが形成された領域(即ち、最外部に位置するノズルNZの外縁を繋ぐことによって得られる輪郭の内部の領域)をノズル形成領域NZAと呼ぶ。
【0020】
10個のヘッドHDの各々の内部には、複数の個別流路(不図示)が形成されている。ヘッドアセンブリ11からヘッドHDへと流れたインクは、複数の個別流路を介して複数のノズルNZの各々へと流れる。複数の個別流路の各々は、ノズルNZの近傍に圧力室(不図示)を有する。各圧力室の上方には駆動素子DE(図8)が位置しており、各駆動素子DEはドライバIC85(図8)を介してコントローラ80に接続されている。
【0021】
キャリッジ12は、図2に示す通り、媒体幅方向に延びる軸を中心として湾曲した板状である。6つのヘッドアセンブリ11の各々は、キャリッジ12に形成された開口部(不図示)にヘッドアセンブリ11の下端部近傍の領域を篏合させた状態で、キャリッジ12により保持されている。
【0022】
キャリッジ12は、6つのヘッドアセンブリ11の各々の上下方向(即ち、各ヘッドアセンブリ11がインクを吐出する方向)が互いに少しずつ異なるように、6つのヘッドアセンブリ11を保持する。したがって、6つのヘッドアセンブリ11の各々は、媒体幅方向に湾曲した搬送路CR(詳細後述)内を搬送される媒体PMに対して垂直にインク滴を吐出する。
【0023】
本実施形態では、6つのヘッドアセンブリ11は、不図示の昇降機構により上下移動可能である。即ち6つのヘッドアセンブリ11は、搬送面CS(図2。詳細後述)に対するノズル面NZSの高さを変更可能である。6つのヘッドアセンブリ11を上下移動させる昇降機構として、例えば特開2022-142275号に記載された移動機構を用いることが出来る。
【0024】
プラテン20は、ヘッドユニット10のヘッドアセンブリ11が媒体PMに向けてインクを吐出する際に、媒体PMを下方より支持する。プラテン20は、図2図4に示す通り、アーチフレーム21と、アーチフレーム21により回転可能に保持された複数のローラ22とを有する。
【0025】
図4に示す通り、アーチフレーム21は、底部21Bと、底部21Bの媒体幅方向の両端部から上方に延びる一対の壁部21Wとを有する。
【0026】
複数のローラ22は互いに同一の形状及び寸法を有する。複数のローラ22は、アーチフレーム21により、各々の回転軸(不図示)を媒体幅方向に一致させて、搬送方向に並んで保持されている。本実施形態では、複数のローラ22は、アーチフレーム21により、各ローラ22の上端部が搬送方向に沿って湾曲する曲面上に位置するように保持されている。複数のローラ22の上端部により、搬送方向に沿って湾曲する搬送面CS(図2)が画定される。
【0027】
図2に示すように、ヘッドユニット10とプラテン20とは、ヘッドアセンブリ11の下面11bと搬送面CSとが対向するように位置している。ヘッドアセンブリ11の下面11bと搬送面CSとの間に、搬送方向に湾曲した搬送路CRが画定される。
【0028】
給送シャフト31は給送モータM31図8)により回転する回転シャフトであり、巻取シャフト32は巻取モータM32図8)により回転するシャフトである。給送シャフト31には画像形成がなされる前の媒体PMがロール状に巻かれた給送ロールPM1が取り付けられる。巻取シャフト32には、画像形成がなされた後の媒体PMがロール状に巻かれた巻取ロールPM2が取り付けられる。
【0029】
給送ロールPM1から送り出された媒体PMは、ヘッドユニット10による画像形成がなされた後、巻取ロールPM2に巻き取られる。媒体PMとして、例えばロール紙を用い得る。
【0030】
搬送ローラ対41、42は、プラテン20を搬送方向に挟むように位置している。搬送ローラ対41、42はそれぞれ、搬送モータM図8)から伝達された駆動力により回転する。搬送ローラ対41、42は、ヘッドユニット10が媒体PMに画像を形成する際に、媒体PMを搬送方向下流に送る。搬送ローラ対41、42が本発明の「搬送機構」の一例である。
【0031】
インクタンク50は、6色(6種類)のインクを収容できるよう6つに区分されている。6色のインクは、管路51を通じてリザーバ52に送られる。管路51、リザーバ52も、6色のインクを流通、収容できるよう6つに区分されている。リザーバ52に送られた各色のインクは、不図示の管路及びポンプを介して、リザーバ52と6つのヘッドアセンブリ11のいずれかとの間で循環される。
【0032】
メンテナンスユニット60は、ヘッドユニット10のメンテナンスを行うための機構である。ヘッドユニット10のメンテナンスは、具体的には例えば、ヘッドHDの払拭、ノズルNZからインクを吐出して異物(気泡、パーティクル等)を取り除くフラッシング、ノズルNZからインクを吸引して異物を取り除くパージング等を含み得る。
【0033】
メンテナンスユニット60は、媒体幅方向にプラテン20と並んだ状態で位置している。本実施形態では、メンテナンスユニット60はプラテン20の左方に位置している。
【0034】
メンテナンスユニット60は、メンテナンスパン(液体受け部)61と、6つのワイパユニット62と、60個のノズルキャップ63とを有する。
【0035】
メンテナンスパン61は、ヘッドユニット10から落下したインクを受け取る平皿状の部材である。メンテナンスパン61は、底部61Bと、底部61Bの周縁部から直立する周壁61Wと、媒体幅方向に延びて周壁61Wの一辺と他辺とを繋ぐ5つの分離壁61Pとを有する。5つの分離壁61Pは搬送方向に並ぶ。
【0036】
底部61Bは、平面視矩形であり、5つの分離壁61Pにより6つの領域A1~A6に区画されている。底部61Bの領域A1~A6は、水平方向に対する傾斜角が互いに少しずつ異なっている。したがって、図4に示すようにヘッドユニット10がメンテナンスパン61の上方に位置した時、底部61Bの領域A1~A6の各々と、当該領域の真上に位置するヘッドアセンブリ11の下面11bとは、互いに平行となる。
【0037】
6つのワイパユニット62の各々は、ヘッドユニット10の6つのヘッドアセンブリ11の各々のヘッドHDの払拭を行う。6つのワイパユニット62は、メンテナンスパン61の底部61Bの領域A1~A6の各々に1つずつ位置している。6つのワイパユニット62は互いに同一の構造を有する。
【0038】
6つのワイパユニット62の各々は、ベース620と、ベース620に支持された第1ワイパ621及び第2ワイパ622とを有する。
【0039】
ベース620は、メンテナンスパン61の底部61Bの領域A1~A6の各々において、媒体幅方向の右端近傍に位置する台状の構造体である。
【0040】
第1ワイパ621は、対応するヘッドアセンブリ11の第1列L1のヘッドHDのノズル面NZSを払拭するワイパである。第2ワイパ622は、対応するヘッドアセンブリ11の第2列L2のヘッドHDのノズル面NZSを払拭するワイパである。
【0041】
第1ワイパ621、第2ワイパ622はそれぞれ、可撓性材料(一例としてゴム)により形成されている。第1ワイパ621と第2ワイパ622とは、互いに同一の形状を有する。
【0042】
図5に示す通り、第1ワイパ621、第2ワイパ622はそれぞれ略矩形板状であり、搬送方向に延びる上端621a、622a及び下端621b、622bを有する。第1ワイパ621、第2ワイパ622の媒体幅方向の厚さは、上端621a、622aに近づくに従って小さくなる。
【0043】
ベース620は、第1ワイパ621の下端621bを保持している。第1ワイパ621の上端621aは、対応するヘッドアセンブリ11のノズル面NZSよりも上方に位置する。また、第1ワイパ621の上端621aの上流端、下流端はそれぞれ、対応するヘッドアセンブリ11の第1列L1のヘッドHDの上流端、下流端よりも上流、下流に位置する。
【0044】
ベース620は、第1ワイパ621の搬送方向の下流且つ媒体幅方向の右方において第2ワイパ622の下端622bを保持している。第2ワイパ622の上端622aは、対応するヘッドアセンブリ11のノズル面NZSよりも上方に位置する。また、第2ワイパ622の上端622aの上流端、下流端はそれぞれ、対応するヘッドアセンブリ11の第2列L2のヘッドHDの上流端、下流端よりも上流、下流に位置する。第1ワイパ621の上端621aと第2ワイパ622の上端622aとはそれぞれ搬送方向に沿って延びており、互いに平行である。
【0045】
第1ワイパ621と第2ワイパ622とは、媒体幅方向において位置が固定されている。媒体幅方向における第1ワイパ621と第2ワイパ622との距離は、第2列L2のヘッドHDの第1列L1のヘッドHDに対するシフト量に等しい。
【0046】
60個のノズルキャップ63は、インクの乾燥防止等のために、ヘッドユニット10の60個のヘッドHDをそれぞれ覆う。60個のノズルキャップ63は互いに同一の構造を有する。60個のノズルキャップ63は、メンテナンスパン61の底部61Bに位置している。具体的には、領域A1~A6の各々のワイパユニット62の左方に、10個のノズルキャップ63が、媒体幅方向に沿って千鳥状に位置している。
【0047】
ヘッドユニット10がメンテナンスパン61の上方に位置した時(図4)、各ノズルキャップ63は対応するヘッドHDの真下に位置する。この状態において、不図示の昇降機構により6つのヘッドアセンブリ11が上下移動し、ノズルキャップ63がヘッドHDに当接してヘッドHDのノズルNZを覆うカバー状態と、ノズルキャップ63がヘッドHDから離間した非カバー状態との間で変位する。
【0048】
移動機構70は、ヘッドユニット10を、印刷を実行するための印刷位置と、メンテナンスを実行するためのメンテナンス位置との間で変位させる機構である。印刷位置にあるヘッドユニット10は、図4(破線)及び図6(b)に示されている。メンテナンス位置にあるヘッドユニット10は、図4(実線)及び図6(a)に示されている。
【0049】
移動機構70は主に、ラックギア71、一対の被ガイド部72、一対のガイドレール73、移動モータ74、ピニオンギア75、印刷位置センサ761、及びメンテナンス位置センサ762を含む。
【0050】
図6(a)、図6(b)、図7に示す通り、ラックギア71は、ヘッドユニット10のキャリッジ12の下面12bの搬送方向下流端において、且つそのギア歯の並ぶ方向が媒体幅方向に沿った状態で位置している。
【0051】
図6(a)、図6(b)、図7に示す通り、一対の被ガイド部72は、ヘッドユニット10のキャリッジ12の下面12bに位置している。一方の被ガイド部72は下面12bの搬送方向上流端の近傍に位置しており、他方の被ガイド部72は下面12bの搬送方向下流端の近傍に位置している。一対の被ガイド部72の各々は長尺部材であり、長手方向に直交する断面の形状は凹部72Rを有する略C字状である。一対の被ガイド部72はそれぞれ、長尺方向が媒体幅方向と平行となるように位置している。
【0052】
図6(a)、図6(b)、図7に示す通り、一対のガイドレール73は、ヘッドユニット10の下方に位置している。一方のガイドレール73はヘッドユニット10の搬送方向上流端の近傍に位置しており、他方のガイドレール73はヘッドユニット10の搬送方向下流端の近傍に位置している。一対のガイドレール73の各々は長尺部材であり、長手方向に直交する断面の形状は基部73BとT字状の凸部73Pとを有する。一対のガイドレール73はそれぞれ、長尺方向が媒体幅方向と平行となるように位置している。
【0053】
図7に示す通り、一対の被ガイド部72と一対のガイドレール73とはそれぞれ、ガイドレール73の凸部73Pを被ガイド部72の凹部72Rに位置させ且つ係合している。
【0054】
図7に示す通り、ヘッドユニット10の搬送方向の下流に移動モータ74が位置している。移動モータ74は、媒体幅方向においては、印刷位置とメンテナンス位置との間で移動するヘッドユニット10の可動範囲MR(図6(a)、図6(b))の略中央部に位置している。本実施形態では、移動モータ74としてステッピングモータを用いている。
【0055】
ピニオンギア75は、移動モータ74の回転軸に固定されている。図6(a)、図6(b)、図7に示す通り、ピニオンギア75は、キャリッジ12が有するラックギア71と篏合している。
【0056】
印刷位置センサ761はヘッドユニット10が印刷位置に至ったことを検知するセンサであり、メンテナンス位置センサ762はヘッドユニット10がメンテナンス位置に至ったことを検知するセンサである。
【0057】
図6(a)、図6(b)に示す通り、印刷位置センサ761はヘッドユニット10の可動範囲MRの右端近傍に位置しており、メンテナンス位置センサ762はヘッドユニット10の可動範囲MRの左端近傍に位置している。印刷位置センサ761、メンテナンス位置センサ762はそれぞれ、光学式、接触式等の任意のセンサであってよい。
【0058】
移動モータ74の駆動によりピニオンギア75が回転すると、ピニオンギア75とラックギア71との篏合により、ヘッドユニット10が媒体幅方向に沿って移動する。ヘッドユニット10は、被ガイド部72がガイドレール73に支持且つ案内された状態で、媒体幅方向に移動する。
【0059】
コントローラ80は、プリンタ100の各部を全体的に制御する。コントローラ80は、PC等の外部装置(不図示)とデータ通信可能に接続されており、当該外部装置から送られた印刷データに基づいてプリンタ100の各部を制御することにより、印刷データに応じた画像を媒体PMに形成する。
【0060】
図8に示す通り、コントローラ80は、CPU81、ROM82、RAM83、EEPROM84を有する。ROM82はコントローラ80の動作に必要な各種データ等を記憶している。RAM83はCPU81の作業用メモリである。EEPROM84は、CPU81によって実行される制御プログラム等を記憶している。
【0061】
コントローラ80はASIC(不図示)を介して、ヘッドHDのドライバIC85、給送モータM31、巻取モータM32、搬送モータM、移動モータ74、印刷位置センサ761、メンテナンス位置センサ762に電気的に接続されている。
【0062】
[印刷方法]
プリンタ100を用いた媒体PMへの印刷(画像形成)は、次のようにして行われる。
【0063】
プリンタ100による媒体PMへの印刷においては、コントローラ80がプリンタ100の各部を制御して、媒体PMを搬送方向に搬送する搬送工程と、ヘッドユニット10から媒体PMにインクを吐出する吐出工程とをプリンタ100に実行させる。
【0064】
搬送工程においては、コントローラ80は、給送モータM31、巻取モータM32、及び搬送モータMを駆動することにより、給送シャフト31、巻取シャフト32、及び搬送ローラ対41、42を回転させ、媒体PMを搬送方向下流に送る。
【0065】
吐出工程においては、コントローラ80が、PC等の外部装置から受け取った印刷データに応じた態様で駆動素子DEを駆動することで、ヘッドHDから、搬送路CR内において搬送面CSに支持された媒体PMに向けて、インク滴が吐出される。当該インク滴が媒体PMに着弾することにより、媒体PM上に印刷データに応じた画像が形成される。
【0066】
コントローラ80は、プリンタ100に搬送工程と吐出工程とを並行して実行させることにより、媒体PM上に画像を形成していく。
【0067】
[メンテナンス方法]
次に、プリンタ100において、ヘッドユニット10のメンテナンスを行う方法について説明する。ここでは特に、メンテナンスユニット60のワイパユニット62によりヘッドユニット10のヘッドHDの払拭(清掃)を行うヘッド清掃工程について説明する。
【0068】
ワイパユニット62によるヘッドHDの払拭(清掃)は、媒体PMへの画像形成前、媒体PMへの画像形成後等の、任意のタイミングで実行し得る。ここでは、媒体PMへの画像形成後にヘッドHDの払拭を行い、その後、画像形成を開始する場合を例として説明する。
【0069】
図9に示す通り、ヘッド清掃工程は、ヘッドユニット10をメンテナンス位置まで退避させる退避工程S1と、メンテナンス位置にあるヘッドユニット10を印刷位置まで移動させながらワイパユニット62によるヘッドHDの払拭を行う払拭工程S2とを含む。
【0070】
コントローラ80は、プリンタ100のユーザ等から、PC等の外部装置を介して清掃工程を行う旨の指示を受けたことに基づいて、退避工程S1を実行する。
【0071】
退避工程S1において、コントローラ80は、ヘッドユニット10の不図示の昇降機構を用いて、ヘッドアセンブリ11を上方にシフトさせる。その後、コントローラ80は、移動モータ74を駆動してヘッドユニット10を印刷位置からメンテナンス位置まで移動させる。
【0072】
コントローラ80は、印刷位置センサ761の位置に応じて規定される右端基準位置(即ち、当該位置にヘッドユニット10が位置する際に印刷位置センサ761が検出信号を出力する位置)、メンテナンス位置センサ762の位置に応じて規定される左端基準位置(即ち、当該位置にヘッドユニット10が位置する際にメンテナンスセンサ位置762が検出信号を出力する位置)、及びステッピングモータである移動モータ74のステップ数から特定されるキャリッジ12の移動量に基づいて、媒体幅方向におけるヘッドユニット10の位置を特定する。コントローラ80は、具体的には例えば、移動モータ74のステップ数に基づいて特定されるヘッドユニット10の右端基準位置からの移動量が所定値以上であり、且つヘッドユニット10を検知したことを示す信号がメンテナンス位置センサ762から出力された場合にヘッドユニット10がメンテナンス位置に至ったと判定する。
【0073】
コントローラ80は、ヘッドユニット10がメンテナンス位置に至った後、不図示の昇降機構を制御して、ヘッドアセンブリ11を下方にシフトさせる。このようにして、コントローラ80は、ワイパユニット62とヘッドHDとを接触させることなく、ヘッドユニット10を印刷位置からメンテナンス位置まで移動させる。
【0074】
払拭工程S2において、コントローラ80は、移動モータ74を駆動して、ヘッドユニット10をメンテナンス位置から印刷位置まで移動させる。払拭工程S2は具体的には、接触前加速工程S21、定速工程S22、追加定速工程S23、離間後加速工程S24、離間後定速工程S25、離間後減速工程S26、アプローチ工程S27を含む。接触前加速工程S21が本発明の「加速工程」の一例である。離間後加速工程S24、離間後定速工程S25、及び離間後減速工程S26が本発明の「加減速工程」の一例である。
【0075】
接触前加速工程S21では、コントローラ80は、移動モータ74を制御してヘッドユニット10を加速度aで加速させる。加速度aが本発明の「第2加速度」の一例である。これにより、メンテナンス位置にあるヘッドユニット10(図10(a))は加速しながら右方に移動し、ヘッドHDが第1ワイパ621、第2ワイパ622のわずかに左方に位置する状態に至る(図10(b))。
【0076】
以下、接触前加速工程S21が実行されている期間を、接触前加速期間と呼ぶ。接触前加速期間は、図11のグラフにおいては時刻0~時刻tまでの期間である。接触前加速期間において、6つのヘッドアセンブリ11の各々は、図10(a)に示す位置(メンテナンス位置)から図10(b)に示す位置まで移動する。
【0077】
定速工程S22では、コントローラ80は、移動モータ74を制御してヘッドユニット10を速度vで定速移動させる。速度vが本発明の「第1定速度」の一例である。これにより、ヘッドユニット10は右方に定速で移動し、第1ワイパ621が第1列L1の右端のヘッドHDに接触した後、第1列の5つのヘッドHDを払拭して第1列L1の左端のヘッドHDの左端部に至り、第2ワイパ622が第2列L2の右端のヘッドHDに接触した後、第2列の5つのヘッドHDを払拭して第2列L2の左端のヘッドHDの左端部に至る(図10(d))。なお、上述の通り、媒体幅方向における第1ワイパ621と第2ワイパ622との離間距離は、第2列L2のヘッドHDの第1列L1のヘッドHDに対するシフト量に等しい。したがって、第1ワイパ621の第1列L1のヘッドHDへの接触と、第2ワイパ622の第2列L2のヘッドHDへの接触とは同時に生じる。また、第1ワイパ621の第1列L1の左端のヘッドHDの左端部への到達と、第2ワイパ622の第2列L2の左端のヘッドHDの左端部への到達とは同時に生じる。即ち、定速工程S22は、第1ワイパ621、第2ワイパ622がヘッドHDに接触する直前の短期間、及び第1ワイパ621、第2ワイパ622の少なくとも一方がヘッドHDのノズル形成面NZSに接触している期間中に実行される。
【0078】
以下、定速工程S22が実行されている期間を、定速期間と呼ぶ。定速期間は、図11のグラフにおいては時刻t~時刻tまでの期間である。定速期間において、6つのヘッドアセンブリ11の各々は、図10(b)に示す位置から、図10(c)に示す位置を経て、図10(d)に示す位置まで移動する。本実施形態では、定速期間は、第1ワイパ621、第2ワイパ622がヘッドHDに接触する直前の短期間、及び第1ワイパ621、第2ワイパ622の少なくとも一方がヘッドHDのノズル面NZSに接触している期間を含む。
【0079】
定速工程S22の実行中に、第1ワイパ621は、上端621aが下端621bよりも媒体幅方向の右方に位置するように湾曲した状態で、上端621aを第1列L1のヘッドHDのノズル面NZSに当接する。同様に第2ワイパ622は、上端622aが下端622bよりも媒体幅方向の右方に位置するように湾曲した状態で、上端622aを第2列L2のヘッドHDのノズル面NZSに当接する。これにより、ノズル面NZSが、第1ワイパ621、第2ワイパ622により払拭される。
【0080】
追加定速工程S23では、コントローラ80は、移動モータ74を制御してヘッドユニット10を速度vで定速移動させる。これにより、ヘッドユニット10は右方に定速で移動し、第1ワイパ621が第1列L1の左端のヘッドHDの左端部のわずかに左方に至り、第2ワイパ622が第2列L2の左端のヘッドHDの左端部のわずかに左方に至る(図10(e))。
【0081】
以下、追加定速工程S22が実行されている期間を、追加定速期間と呼ぶ。追加定速期間は、図11のグラフにおいては時刻t~時刻tまでの期間である。追加定速期間において、6つのヘッドアセンブリ11の各々は、図10(d)に示す位置から、図10(e)に示す位置まで移動する。
【0082】
離間後加速工程S24では、コントローラ80は、移動モータ74を制御してヘッドユニット10を加速度aで加速させる。加速度aが本発明の「第1加速度」の一例である。これにより、ヘッドユニット10は加速しながら右方に移動する。本実施形態では、加速度aは、ヘッドHDのノズルNZに形成されたメニスカスを壊さない程度の値であり、接触前加速工程S21における加速度aよりも小さい。以下、離間後加速工程S24が行われている期間を離間後加速期間と呼ぶ。離間後加速期間は、図11のグラフにおいては時刻t~時刻tまでの期間である。
【0083】
離間後定速工程S25では、コントローラ80は、移動モータ74を制御してヘッドユニット10を速度vで定速移動させる。速度vが本発明の「第2定速度」の一例である。これにより、ヘッドユニット10は右方に定速移動する。本実施形態では、速度vは、定速工程S22及び追加定速工程S23における速度vよりも大きい。速度vは、移動モータ74の性能に応じた最高速度、即ち移動モータ74に脱調や過負荷が生じない範囲の最高速度とし得る。以下、離間後定速工程S25が行われている期間を離間後定速期間と呼ぶ。離間後定速期間は、図11のグラフにおいては時刻t~時刻tまでの期間である。
【0084】
離間後減速工程S26では、コントローラ80は、移動モータ74を制御してヘッドユニット10を加速度a(負値)で減速させる。これにより、ヘッドユニット10は減速しながら右方に移動する。加速度aは、ヘッドHDのノズルNZに形成されたメニスカスを壊さない程度の値である。加速度aの大きさ(絶対値)は加速度aの大きさ(絶対値)と同一であってもよく、異なっていてもよい。以下、離間後減速工程S26が行われている期間を離間後減速期間と呼ぶ。離間後減速期間は、図11のグラフにおいては時刻t~時刻tまでの期間である。
【0085】
アプローチ工程S27では、コントローラ80は、移動モータ74を制御してヘッドユニット10を速度vで定速移動させる。これにより、ヘッドユニット10は右方に定速移動し、印刷位置に至る。本実施形態では、速度vは、定速工程S22及び追加定速工程S23における速度vよりも小さい。以下、アプローチ工程S27が行われている期間をアプローチ期間と呼ぶ。アプローチ期間は、図11のグラフにおいては時刻t~時刻tまでの期間である。
【0086】
離間後加速期間、離間後定速期間、離間後減速期間、及びアプローチ期間において、ヘッドユニット10は、図10(e)に示す位置から図10(f)に示す位置(印刷位置)まで移動する。コントローラ80は、移動モータ74のステップ数に基づいて特定されるヘッドユニット10の移動量と印刷位置センサ761の出力とに基づいて、ヘッドユニット10が印刷位置に至ったと判定する。具体的には例えば、コントローラ80は、移動モータ74のステップ数に基づいて特定されるヘッドユニット10の左端基準位置からのステップ数が所定値以上であり、且つヘッドユニット10を検知したことを示す信号が印刷位置センサ761から出力された場合にヘッドユニット10が印刷位置に至ったと判定する。
【0087】
以上により、ヘッド清掃工程が完了する。コントローラ80は、ヘッド清掃工程の完了後、印刷工程(搬送工程及び吐出工程)を再開する。
【0088】
本実施形態のプリンタ100、及びヘッド清掃工程の有利な効果を以下にまとめる。
【0089】
本実施形態のプリンタ100のコントローラ80が、ヘッド清掃工程の定速工程S22において、ヘッドユニット10を定速移動させることで、第1ワイパ621、第2ワイパ622によりヘッドHDが払拭される。即ち、コントローラ80は、第1ワイパ621、第2ワイパ622がヘッドHDのノズル面NZSに接触している期間中はヘッドユニット10を定速で移動させる。仮に、第1ワイパ621、第2ワイパ622がヘッドHDのノズル面NZSに接触している期間中にヘッドユニット10の加減速を行うと、第1ワイパ621、第2ワイパ622がヘッドHDに与える力(第1ワイパ621、第2ワイパ622とヘッドHDとの間の接触圧)が変動し、ヘッドHDのインクや異物の拭きとりにおいて拭きむらが生じてしまう。これに対し、ヘッドユニット10の速度を、第1ワイパ621、第2ワイパ622がヘッドHDのノズル面NZSに接触している期間中は定速とすることで、第1ワイパ621、第2ワイパ622とヘッドHDとの間の接触圧の変動が抑制され、拭きむらの発生が抑制される。これにより、より良好にノズル面NZSを払拭することができる。
【0090】
本実施形態のプリンタ100のコントローラ80は、ヘッド清掃工程の定速工程S22を行った後、離間後加速工程S24及び離間後減速工程S26を行ってヘッドユニット10を印刷位置まで移動させる。これによりノズル面NZSの払拭を終えたヘッドユニット10が迅速に印刷位置まで移動されるため、ヘッド清掃工程(払拭工程)を迅速に行うことができる。このように、加減速を行って移動時間の短縮を実現することは、キャリッジ12が複数のヘッドアセンブリ11を保持しておりヘッドユニット10の重量が大きい態様、換言すればヘッドユニット10を常に高速度で移動させることが難しい態様において特に有利である。
【0091】
即ち、ヘッドユニット10の重量が大きい態様では、キャリッジが比較的軽量である態様(例えば、キャリッジが媒体幅方向に移動しながらインクを吐出して画像形成を行うキャリッジ等)と比較して、ヘッドをワイパで払拭した後の移動速度が1/2以下程度までしか上げられないことが多い。キャリッジが比較的軽量であり、常に比較的高い速度で移動させることの出来る態様において離間後加速工程S24と離間後減速工程S26を行っても移動時間短縮の効果は得られる。しかしながら、常時の移動速度を上げることが難しい態様において離間後加速工程S24と離間後減速工程S26を行う方が、これらの工程を行うことにより短縮される時間は大きい。
【0092】
本実施形態のプリンタ100のコントローラ80は、ヘッド清掃工程の定速工程S22を行った後、追加定速工程S23を実行する。したがって、定速工程S22の後に直ちにヘッドユニット10の加速を開始する態様に比べて、ヘッドHDとの当接により湾曲した第1ワイパ621、第2ワイパ622の形状回復(即ち、上端621a、622aが下端621b、622bの真上に位置する状態の回復)の速度を小さくすることができる。このように、第1ワイパ621、第2ワイパ622の形状回復の速度を小さくすることで、形状回復に伴うインクの飛散を抑制することができる。
【0093】
第1ワイパ621、第2ワイパ622の形状回復に伴いインクが飛散した場合、プリンタ100の内部の汚れ、飛散したインクのミスト化等が生じる。プリンタ100の内部が汚れると、例えば作業者がプリンタ100の内部を点検する場合等に作業者に汚れが付着する。また、ミスト化が生じるとプリンタ100の内部をミスト化したインクが漂い、予期しない不具合を引き起こし得る。したがって、第1ワイパ621、第2ワイパ622の形状回復に伴うインクの飛散を抑制は、装置内部の汚れの抑制、ミスト化の抑制という観点からも好ましい。
【0094】
また、本実施形態のプリンタ100では、コントローラ80は、ステッピングモータである移動モータ74のステップ数に基づいて媒体幅方向におけるヘッドユニット10の位置を特定しており、特定された位置と実際の位置との間に多少の誤差が生じ得る。したがって、コントローラ80が定速工程S22の直後にヘッドユニット10の加速を開始する場合、コントローラ80が特定した位置に誤差が含まれていれば、ノズル面NZSの払拭中にも関わらずヘッドユニット10の加速が開始されるという事態が生じ得る。この点、追加定速工程S23を実行することで、このような事態の発生を抑制し得る。
【0095】
なお、ヘッドHDとヘッドアセンブリ11の下面11bとが面一である場合は、追加定速工程S23を、第1ワイパ621及び第2ワイパ622が下面11bから離間するまで継続してもよい。
【0096】
本実施形態のプリンタ100のコントローラ80は、離間後加速工程S24を実行したのち、離間後定速工程S25を実行し、その後に離間後減速工程S26を実行する。したがって、例えば離間後加速工程S24の直後に離間後減速工程S26を実行する場合に比較して加速度の変化率を小さくすることができ、ヘッドHDのノズルNZのメニスカスの破壊を抑制することができる。
【0097】
本実施形態のプリンタ100のコントローラ80は、ヘッド清掃工程において、接触前加速工程S21での加速度aを、離間後加速工程S24での加速度aよりも大きい値に設定している。したがって、メンテナンス位置から移動を開始したヘッドユニット10のヘッドHDを、より迅速に第1ワイパ621、第2ワイパ622に接触させることができる。なお、ヘッドユニット10を加速度aで移動することによりヘッドHDのノズルNZのメニスカスが壊れた場合であっても、その後の定速工程S22における払拭によりメニスカスが再形成される。
【0098】
また、本実施形態のプリンタ100では、接触前加速工程S21が実行されている接触前加速期間(図10(a)、図10(b))においては、ヘッドユニット10の各ヘッドHDの下方に、メンテナンスパン61が位置している。ヘッドユニット10を加速度aよりも大きい値である加速度aで移動させることにより、ヘッドユニット10のヘッドHDから意図しないインク滴の落下が生じる可能性が高まるが、そのようなインク滴の落下が生じた場合も、メンテナンスパン61により落下したインク滴を受け取ることができる。
【0099】
本実施形態のプリンタ100は、ヘッドユニット10を移動させる移動機構70の移動モータ74としてステッピングモータを用いている。そして、印刷位置センサ761、メンテナンス位置センサ762の位置に応じて規定されるヘッドユニット10の基準位置(即ち、当該位置にヘッドユニット10が位置する場合に各センサが検知信号を出力する位置)と、ステッピングモータのステップ数とに基づいて、媒体幅方向におけるヘッドユニット10の位置を制御している。このように、ステッピングモータを用いることは、本実施形態のようにヘッドユニット10の重量が大きい場合はサーボモータを用いる態様よりも低コストである。また、ステッピングモータを用いることで、ブラシ付きモータ、ブラシレスモータを用いる態様よりも高い精度で位置制御を行うことができる。さらに、ステッピングモータとセンサとの組み合わせを用いることで、エンコーダを用いる態様と比較して、より低コストで十分なトルク及び位置精度を実現でき、且つインクの吐出に伴い生じるミストの影響を低減できる。本実施形態のようにヘッドHDの解像度が600dpi以上である場合、液滴のサイズがドット間を埋めるためにもインク滴(液滴)のサイズが小さくなる傾向にあるため、ヘッドHDからのインクの吐出によりミストが生じやすい。したがって、ミストの影響を低減できることは、ヘッドHDの解像度が600dpi以上である態様において特に好ましい。
【0100】
<変形例>
上記の実施形態において、次の変形態様を用いることもできる。
【0101】
上記実施形態のプリンタ100は、ヘッドユニット10を媒体幅方向に移動させる移動機構70を備えているがこれには限られない。プリンタ100は、ヘッドユニット10を媒体幅方向に移動させる移動機構70に代えて、或いはこれに加えて、ワイパユニット62を媒体幅方向に移動させる移動機構を備えてもよい。この場合、ワイパユニット62は、メンテナンスパン61から分離した構造であってもよい。
【0102】
具体的には例えば、メンテナンスユニット60においてワイパユニット62を省略し、図12に示すワイパユニット65、及び移動機構700を備えてもよい。
【0103】
ワイパユニット65は、搬送方向を長手方向とする平面視矩形のホルダ650と、ホルダ650により保持された6つの第1ワイパ621及び6つの第2ワイパ622とを有する。6つの第1ワイパ621及び6つの第2ワイパ622の形状、及びヘッドユニット10に対する位置関係は、上記実施形態における6つの第1ワイパ621及び6つの第2ワイパ622の形状、及びヘッドユニット10に対する位置関係と同一であってよい。
【0104】
移動機構700は、ラックギア701、一対の被ガイド部702、一対のガイドレール703、移動モータ704、及びピニオンギア705を主に有する。
【0105】
ラックギア701はワイパユニット65の搬送方向下流において、そのギア歯が媒体幅方向に沿った状態で位置している。
【0106】
一対の被ガイド部702は、ワイパユニット65のホルダ650の下面の、搬送方向の上流端及び下流端に位置している。一対の被ガイド部702は、長手方向の寸法が小さいことを除いて、上記実施形態の一対の被ガイド部72と同一の構造を有する。
【0107】
一対のガイドレール703は、ワイパユニット65のホルダ650の搬送方向上流端及び下流端の下方に位置している。一対のガイドレール703は、上記実施形態の一対のガイドレール73と同一の構造を有する。一対の被ガイド部702と一対のガイドレール703とは、上記実施形態の被ガイド部72とガイドレール73との係合と同じ態様により係合している。
【0108】
移動モータ704は、ワイパユニット65のホルダ650の搬送方向下流端に位置している。移動モータ704の具体例は、ステッピングモータである。移動モータ704の回転軸にはピニオンギア705が固定されている。ピニオンギア705はラックギア701に嵌合している。
【0109】
コントローラ80は移動モータ704を制御することにより、ワイパユニット65の媒体幅方向の位置、移動速度等を制御する。コントローラ80が移動モータ704を駆動すると、ピニオンギア705とラックギア701に嵌合によりホルダ650は媒体幅方向に移動する。
【0110】
上記実施形態の移動機構70、及び変形例の移動機構700において、移動モータ74、704として、ステッピングモータ以外のモータ、例えば、ブラシ付きモータ、ブラシレスモータ、サーボモータ等を用いてもよい。また、ヘッドユニット10、ワイパユニット65の位置制御のためにエンコーダを用いてもよい。
【0111】
上記実施形態の移動機構70及び変形例の移動機構700は、ラックアンドピニオンと電動モータによりヘッドユニット10、ワイパユニット65を移動させるがこれには限られない。ヘッドユニット10及び/又はワイパユニット65を移動させる機構としては、無端ベルトを用いる機構、油圧アクチュエータを用いる機構など、任意のスライド機構を用い得る。
【0112】
上記実施形態の移動機構70、変形例の移動機構700、及びこれらの組合せ等の、ヘッドとワイパとを相対移動させる機構が本発明の相対移動機構の一例である。上記実施形態の移動機構70、変形例の移動機構700等は、搬送方向に交差する任意の方向、或いは搬送方向にヘッドとノズルとを相対移動させる構成であってもよい。
【0113】
上記実施形態のプリンタ100において、メンテナンスユニット60は、メンテナンスパン61、ノズルキャップ63の少なくとも一方を有さなくてもよい。
【0114】
上記実施形態のヘッド清掃工程において、コントローラ80は、追加定速工程S23を省略してもよい。この場合は、定速工程S22の後、直ちに離間後加速工程S24を実行してもよい。或いは、接触前加速工程S21の後、第1ワイパ621、第2ワイパ622がヘッドHDに接触する前に、ヘッドユニット10の速度vでの定速度移動を開始してもよい。
【0115】
上記実施形態のヘッド清掃工程において、コントローラ80は、離間後定速工程S25を省略してもよい。この場合は、離間後加速工程S24の後、直ちに離間後減速工程S26を実行してもよい。
【0116】
上記実施形態のヘッド清掃工程において、コントローラ80は、第1ワイパ621、第2ワイパ622が媒体幅方向の右端のヘッドHDのわずかに右側に位置する時点から、第1ワイパ621、第2ワイパ622が媒体幅方向の左端のヘッドHDの左端部に至る時点まで、定速工程S22を実行する。しかしながらこれには限られない。コントローラ80は、第1ワイパ621、第2ワイパ622が媒体幅方向の右端のヘッドHDの右端部に接触した時点から定速工程S22を開始してもよい。また、コントローラ80は、第1ワイパ621、第2ワイパ622が媒体幅方向の右端のヘッドHDのノズル形成領域NZAの右端部に接触した時点から、第1ワイパ621、第2ワイパ622が媒体幅方向の左端のヘッドHDのノズル形成領域NZAの左端部に至る時点まで、定速工程S22を実行してもよい。これにより、定速期間を短縮できると共に、接触前加速期間及び離間後加速期間を長くすることができ、ヘッドユニット10のメンテナンス位置から印刷位置への移動をより迅速に行うことができる。この場合、接触前加速工程S21では、コントローラ80は、第1ワイパ621、第2ワイパ622が媒体幅方向の右端のヘッドHDのノズル形成領域NZAの右端部に接触する時点よりも前にヘッドユニット10の加速を行ってもよい。また、追加定速工程S23では、コントローラ80は、第1ワイパ621、第2ワイパ622が媒体幅方向の左端のヘッドHDのノズル形成領域NZAの左端部から離間して所定期間が経過するまで速度vでの定速度移動を続けてもよい。
【0117】
上記実施形態のヘッド清掃工程において、接触前加速工程S21における加速度aは、離間後加速工程S24における加速度aよりも大きいが、これには限られない。加速度aと加速度aとは等しくてもよく、加速度aが加速度aよりも小さくてもよい。
【0118】
上記実施形態のヘッド清掃工程においては、コントローラ80は、ヘッドユニット10をメンテナンス位置から印刷位置に移動する過程において払拭工程S2を実行しているがこれには限られない。コントローラ80は、ヘッドユニット10を印刷位置からメンテナンス位置に移動する過程において払拭工程S2を実行してもよい。この場合の制御の態様は、ヘッドユニット10と第1ワイパ621及び第2ワイパ622との相対移動の方向が異なるのみで、実質的に実施形態における制御の内容と同一である。ヘッドユニット10がメンテナンス位置にある状態が本発明の「第1状態」の一例であり、ヘッドユニット10が印刷位置にある状態が本発明の「第2状態」の一例である。また、ヘッドユニット10がメンテナンス位置にある状態が本発明の「第2状態」の他の一例であり、ヘッドユニット10が印刷位置にある状態が本発明の「第1状態」の他の一例である。
【0119】
メンテナンス位置センサ762が本発明の「第1センサ」の一例であり、印刷位置センサ761が本発明の「第2センサ」の一例である。また、印刷位置センサ761が本発明の「第1センサ」の他の一例であり、メンテナンス位置センサ762が本発明の「第2センサ」の他の一例である。
【0120】
以上、ヘッドユニット10からインクを吐出して媒体PMに画像形成する場合を例として実施形態及び変形例を説明した。ヘッドユニット10は、画像形成のために任意の液体を吐出する液体吐出システムであってよく、画像を形成される媒体PMは、例えば用紙、布、樹脂等であってもよい。また、プリンタ100はシリアルヘッド型のプリンタであっても良い。
【0121】
本明細書に記載の実施形態は、全ての点で例示であって、限定的なものではないと考えられるべきである。例えば、ヘッドユニット10が有するヘッドアセンブリ11の数、構成等、ヘッドアセンブリ11が有するヘッドHDの数、構成等は変更し得る。プリンタ100が同時に印刷可能な色の数も限定はされず、単色印刷のみが可能な構成であってもよい。また、ヘッドHDが有する個別流路の数、位置等、ノズルNZの数、ノズル列の数も適宜変更し得る。ヘッドHDによる画像形成の解像度も任意であり、例えば600dpi以下であってよく、1200dpi以上であってもよい。
【0122】
メンテナンスユニット60が有するワイパユニット62の数及び位置、第1ワイパ621、第2ワイパ622の数及び位置も、ヘッドユニット10が有するヘッドアセンブリ11の数、構成等、ヘッドアセンブリ11が有するヘッドHDの数、構成等に応じて変更され得る。
【0123】
各実施形態及び変形例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができる。
【0124】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【0125】
(付記)
上記実施形態及びその変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0126】
(項目1)
ノズルが形成されたノズル形成面を有し、該ノズルから液体を吐出して媒体に画像を形成するヘッドであって、前記ノズルが前記ノズル形成面内のノズル形成領域に形成されたヘッドと、
ワイパと、
前記ヘッドと前記ワイパとを第1方向に沿って相対移動させる相対移動機構と、
前記相対移動機構を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記相対移動機構を制御することで、前記ヘッドが前記ワイパに対する前記第1方向の一方に位置する第1状態から前記ヘッドが前記ワイパに対する前記第1方向の他方に位置する第2状態まで前記ヘッドと前記ワイパとを相対移動させて前記ワイパにより前記ノズル形成面を拭くヘッド清掃工程を実行し、
前記ヘッド清掃工程が、
前記ワイパが前記ノズル形成領域に接触している期間は前記ヘッドと前記ワイパとの間の相対移動速度を第1定速度とする定速工程と、
前記ワイパと前記ノズル形成領域とが離間した後、前記第2状態に至るまでの期間に、前記相対移動速度を第1加速度で加速させ、次いで減速させる加減速工程と、を含む画像形成装置。
【0127】
(項目2)
前記定速工程において、前記ワイパが前記ノズル形成面に接触している期間は前記ヘッドと前記ワイパとの間の相対移動速度を前記第1定速度とする項目1に記載の画像形成装置。
【0128】
(項目3)
前記コントローラは、前記定速工程において、前記ワイパと前記ノズル形成領域とが接触した後、前記ワイパが前記ノズル形成領域から離間して所定期間が経過するまで、前記相対移動速度を前記第1定速度とする項目1又は2に記載の画像形成装置。
【0129】
(項目4)
前記コントローラは、前記ヘッド清掃工程において、前記ヘッドと前記ワイパとが前記第1状態から相対移動を開始した後、前記ワイパが前記ノズル形成領域に接触するまでの期間に、前記相対移動速度を第2加速度で加速させる加速工程、を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【0130】
(項目5)
前記第2加速度が前記第1加速度よりも大きい項目4に記載の画像形成装置。
【0131】
(項目6)
前記ヘッドが前記第1方向に移動可能であり、且つ前記ワイパが前記第1方向において固定されており、
前記ヘッドから落下する前記液体を受ける液体受け部であって、前記コントローラが、前記加速工程において、前記第2加速度で前記相対移動速度を加速させる期間に前記ヘッドの下方に位置する液体受け部を更に備える項目4又5に記載の画像形成装置。
【0132】
(項目7)
前記コントローラは、前記加減速工程において、前記ワイパと前記ノズル形成領域とが離間した後、前記相対移動速度を前記第1加速度で加速させ、次いで第2定速度に維持し、次いで減速させ、
前記第2定速度が前記第1定速度よりも大きい項目1~6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【0133】
(項目8)
前記ヘッド及び前記ワイパが前記第1状態に至ったことを検知する第1センサと、
前記ヘッド及び前記ワイパが前記第2状態に至ったことを検知する第2センサとを更に備える項目1~7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【0134】
(項目9)
前記ヘッドは、600dpi以上の解像度を有するラインヘッドである項目1~8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【0135】
(項目10)
前記相対移動機構は、前記ヘッド及び/又は前記ワイパを移動させるステッピングモータを有し、
前記コントローラは前記ステッピングモータを制御することにより前記相対移動速度を制御する項目1~9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【0136】
(項目11)
前記ヘッドが前記第1方向に移動可能であり、且つ前記ワイパが前記第1方向において固定されている項目1~10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【0137】
(項目12)
前記ヘッドは、前記第2状態において前記媒体への画像形成を行う項目1~11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【0138】
(項目13)
前記媒体を搬送方向に搬送する搬送機構を更に備え、
前記搬送方向と前記第1方向とが交差し、
前記ヘッドは前記搬送方向に並ぶ複数のヘッドである項目1~12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【0139】
(項目14)
ノズルが形成されたノズル形成面を有し、該ノズルから液体を吐出して媒体に画像を形成するヘッドであって、前記ノズルが前記ノズル形成面内のノズル形成領域に形成されたヘッドと、
ワイパと、
前記ヘッドと前記ワイパとを第1方向に沿って相対移動させる相対移動機構と、
前記相対移動機構を制御するコントローラとを備える画像形成装置の制御方法であり、
前記コントローラが、前記相対移動機構を制御することで、前記ヘッドが前記ワイパに対する前記第1方向の一方に位置する第1状態から前記ヘッドが前記ワイパに対する前記第1方向の他方に位置する第2状態まで前記ヘッドと前記ワイパとを相対移動させて前記ワイパにより前記ノズル形成面を拭くヘッド清掃工程を実行することを含み、
前記ヘッド清掃工程が、
前記ワイパが前記ノズル形成領域に接触している期間は前記ヘッドと前記ワイパとの間の相対移動速度を第1定速度とする定速工程と、
前記ワイパと前記ノズル形成領域とが離間した後、前記第2状態に至るまでの期間に、前記相対移動速度を加速させ、次いで減速させる加減速工程とを含む方法。
【符号の説明】
【0140】
10 ヘッドユニット
11 ヘッドアセンブリ
12 キャリッジ
60 メンテナンスユニット
61 メンテナンスパン
62 ワイパユニット
621 第1ワイパ
622 第2ワイパ
70 移動機構
71 ラックギア
74 移動モータ
75 ピニオンギア
761 印刷位置センサ
762 メンテナンス位置センサ
80 コントローラ
100 プリンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12