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  • 特開-自動排水装置 図1
  • 特開-自動排水装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138996
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】自動排水装置
(51)【国際特許分類】
   E03B 7/12 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
E03B7/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049751
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】小仲 正純
(57)【要約】
【課題】自動排水装置を寒冷地でも凍結深度よりも浅い位置に設置できるようにする。
【解決手段】捨水配管5に介設される接続配管11と熱交換するための直管状のヒートパイプ18を、その一端が接続配管11の外壁に接続され、接続配管11から真下に延びる姿勢で設けて、冬季で地中の温度が地表より高いときは、ヒートパイプ18の下端部(他端部)で吸収された熱が上端部(一端部)で放熱されて接続配管11の外壁に伝達され、接続配管11全体および自動排水装置1内の滞留水が温められて凍結を防止できるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上水道の水道本管から排水系までの捨水配管の途中で地中に埋設され、自動的に上水道の水を排水系に捨水する自動排水装置において、
前記捨水配管の水道本管側の管路と前記排水系側の管路との間に介設される接続配管を備え、
前記接続配管と熱交換するためのヒートパイプが、その一端を接続配管の外壁に接続され、他端が一端よりも下方に位置する姿勢で設けられていることを特徴とする自動排水装置。
【請求項2】
前記ヒートパイプは、直管状に形成され、前記接続配管から真下に延びるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の自動排水装置。
【請求項3】
前記接続配管の少なくとも一部に保温材が被せられていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水道の捨水配管の途中に設けられ、自動的に上水道の水を捨水する自動排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上水道の水(以下、「水道水」ともいう。)は、浄水場で注入された塩素が配水管網全体で遊離残留塩素として保持されており、衛生性を確保するため、管路末端部での残留塩素濃度を0.1mg/L以上とすることが義務付けられている。しかし、上水道の管路末端部等で水道水が滞留した場合には、時間の経過とともに残留塩素濃度が低下して水質が劣化することが問題となる。
【0003】
水道水の水質劣化に対する対策として、多くの事業体では、水道本管の管路末端部や管網の滞留部等から排水溝等の排水系まで捨水配管を設け、捨水、すなわち捨水配管から排水系への常時排水や、捨水配管に設けた排水バルブを作業員が開閉することによる定期排水を行っている。しかし、常時排水は無収水量の増加や水資源の損失が問題となり、定期排水は、作業員が排水バルブの設置場所に赴いて排水バルブの開閉作業を行う必要があるため、作業員の労務負担の問題がある。
【0004】
上記の常時排水や定期排水の問題を解決するため、捨水配管の途中に、電磁弁等の排水バルブと、その排水バルブの開閉をタイマ等で制御するコントローラとを備えた自動排水装置を設置し、任意のタイミングで自動的に捨水を行えるようにすることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7050833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような自動排水装置は、冬季にも使用されるため、冬季に凍結のおそれのある地域に設置する場合には凍結防止対策を施しておく必要がある。その凍結防止対策は、寒冷地以外では、一般に、自動排水装置が収納される量水器ボックスやマンホールの蓋の内側面に保温材を取り付けて、外部冷気の侵入を防ぐようにしている。
【0007】
しかし、寒冷地の場合は、上記のような保温材の取付けのみでは凍結を防止することが困難なので、自動排水装置を凍結深度よりも深い位置に埋設する必要がある。このため、凍結深度よりも浅い位置に設置する場合に比べて、自動排水装置を設置する際の施工費が高くなり、設置後にメンテナンスを行うときの作業性が劣るという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、自動排水装置を寒冷地でも凍結深度よりも浅い位置に設置できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、上水道の水道本管から排水系までの捨水配管の途中で地中に埋設され、自動的に上水道の水を排水系に捨水する自動排水装置において、前記捨水配管の水道本管側の管路と前記排水系側の管路との間に介設される接続配管を備え、前記接続配管と熱交換するためのヒートパイプが、その一端を接続配管の外壁に接続され、他端が一端よりも下方に位置する姿勢で設けられている構成(構成1)を採用した。また、他端が凍結深度より深い位置まで達しているとより効果的である。
【0010】
上記構成1の自動排水装置では、冬季で地中の温度が地表より高いときは、ヒートパイプの他端部で吸収された熱が一端部で放熱されて接続配管の外壁に伝達され、接続配管全体および自動排水装置内の滞留水が温められることによって凍結を防止できるので、寒冷地でも凍結深度よりも浅い位置に設置することができる。
【0011】
上記構成1において、前記ヒートパイプは、直管状に形成され、前記接続配管から真下に延びるように配置されていることが好ましい(構成2)。
【0012】
上記構成1または2において、前記接続配管の少なくとも一部に保温材が被せられている構成とすれば、凍結防止効果をさらに高めることができる(構成3)。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動排水装置は、上述したように、接続配管の外壁にヒートパイプを接続することにより凍結を防止できるようにしたものであるから、寒冷地でも凍結深度よりも浅い位置に設置でき、設置時の施工費の低減および設置後のメンテナンス性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の自動排水装置の設置状態の説明図
図2図1の自動排水装置のコントローラボックスを除いた外観斜視図
図3図1の自動排水装置のヒートパイプ接続部付近の断面図
図4】第2実施形態の自動排水装置のコントローラボックスを除いた設置状態の平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図3は第1実施形態を示す。この実施形態の自動排水装置1は、図1に示すように、量水器ボックス2に収納された状態で、上水道の水道本管3の管路末端部等から排水系としての排水溝4までの捨水配管5の途中に設けられて、自動的に水道水を排水溝4に捨水するものである。
【0016】
前記水道本管3の管路末端部および捨水配管5は地中に埋設されており、量水器ボックス2も上面の蓋2aを地表に露出させた状態で埋設されている。なお、捨水配管5は、図1の例ではサドル付き分水栓6を介して水道本管3と接続されているが、サドル付き分水栓以外の方法で接続される場合もある。
【0017】
量水器ボックス2は、一般家庭用の小型のもので、蓋2aを開けることにより、収納した自動排水装置1のメンテナンスを行うことができる。また、量水器ボックス2の側面には、自動排水装置1の捨水配管5との接続部を通す開口が設けられているが、その開口は土止め板で塞がれて、量水器ボックス2の埋設時に土等が内部に入り込まないようになっている。
【0018】
そして、この自動排水装置1は、図1および図2に示すように、接続配管11とその途中に組み込まれる逆止弁付き止水栓12、採水バルブ13、量水器14および電磁弁15を予め組み立てた状態でユニット化した配管ユニット16と、コントローラボックス17と、2本の直管状のヒートパイプ18とを備えている。
【0019】
電磁弁15およびコントローラボックス17は、JIS規格における保護等級でのIP67に相当する防塵防水性能を有している。また、図示は省略するが、コントローラボックス17には、電磁弁15を制御するコントローラと、そのコントローラへ電力を供給する電源部が内蔵されている。そして、接続配管11の上流端および下流端の接続部11a、11bをそれぞれ量水器ボックス2の左右の側面の底部近傍から突出させた状態で、量水器ボックス2内に配置されるようになっている。
【0020】
配管ユニット16は、接続配管11の上流側(図2の左側)の接続部11aが捨水配管5の水道本管3側の管路に接続され、下流側(図2の右側)の接続部11bが捨水配管5の排水溝4側の管路に接続されるようになっている。
【0021】
接続配管11は、両接続部11a、11bの間の部分が、上流側の接続部11aから平面視で略矩形を描くように折れ曲がったうえ、その矩形のわずかに上方を通って下流側の接続部11bにつながっており、その途中に上流側から順に逆止弁付き止水栓12、採水バルブ13、量水器14および電磁弁15が組み込まれている。
【0022】
コントローラボックス17は、図1に示すように、配管ユニット16の上方で採水バルブ13と接触しない位置に配置されている。なお、コントローラボックス17は、量水器ボックス2内に収納できればその配置位置に制約はない。そして、コントローラボックス17内のコントローラが、タイマ制御により所定のタイミングで電磁弁15を開閉して、水道本管3の管路末端部の水道水を排水溝4に捨水するようになっている。
【0023】
2本のヒートパイプ18は、図1および図2に示すように、1本が採水バルブ13の組込位置で、もう1本が電磁弁15の上流側近傍で、それぞれ一端が接続配管11の外壁の下面側に接続され、接続配管11から真下に延びるように配置されている。
【0024】
ヒートパイプ18の接続配管11への接続構造は、電磁弁15の上流側近傍では、図3に示すように、接続配管11の途中に、分岐部11dの内周にめねじが形成されたT字管11cを用い、そのT字管11cの分岐部11dの奥側を適宜な手段で塞いだうえで、分岐部11dへヒートパイプ18の一端に形成されたおねじ部をねじ込んでいる。
【0025】
また、図示は省略するが、採水バルブ13の組込位置では、下向きの分岐部の内周にめねじが形成された十字管を用い、図3と同様に、その下向きの分岐部の奥側を塞いで、ヒートパイプ18の一端のおねじ部をねじ込んでいる。
【0026】
ヒートパイプ18は、両端が閉塞された金属製パイプ18aの内壁に沿うように毛細管構造(ウィック)18bを設け、パイプ18a内に作動液を密封した公知のものである。そして、図3に示すように、上下方向を向く姿勢で地中に埋設されることにより、冬季で地中の温度が地表より高いときは、下端部(他端部)が地熱を吸収する受熱部、上端部(一端部)が接続配管11に熱を与える放熱部となって作動する。すなわち、作動液が受熱部で地熱によって蒸発して気体となり、パイプ18aの中心部を上昇した気体が放熱部で放熱することにより凝縮して液体に戻り、受熱部へ流下するという現象の繰り返しで、地熱を搬送して接続配管11に伝達するようになっている。なお、放熱部から受熱部への作動液の移動は、ウィック18bの毛細管現象によって非常に高速かつ連続的に行われる。
【0027】
この自動排水装置1は、上述したように、冬季で地中の温度が地表より高いときには、ヒートパイプ18の受熱部で吸収された熱が放熱部で放熱されて接続配管11の外壁に伝達されるので、接続配管11全体および装置内の滞留水が温められ、凍結を防止することができる。そして、これにより、寒冷地でも凍結深度よりも浅い位置に設置でき、凍結深度よりも深い位置に設置する場合に比べて、設置時の施工費の低減、設置後のメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0028】
また、ヒートパイプ18は装置全体のコンパクトな形状を維持したまま取り付けられるので、装置全体として、ヒートパイプ18の取り付けによって設置の自由度が損なわれることもない。
【0029】
図4は第2実施形態を示す。なお、第1実施形態と同じ機能を有する部品には同じ符号をつけて説明を省略する。この第2実施形態の自動排水装置7は、第1実施形態のものとほぼ同じ構成でマンホール8内に収納されており(コントローラボックス17およびヒートパイプ18は図示省略)、接続配管11の全体に保温材19が被せられている。その保温材19は、接続配管11の各部位の形状に応じて複数に分割されており、接続配管11の直管部には周方向の一箇所が切断されたものが、その他の曲管部等には2つ割れのものが用いられている。そして、図示は省略するが、必要に応じてビニルテープ等を巻き付けて脱落を防止している。
【0030】
この第2実施形態では、上述のように、接続配管11にヒートパイプ18を接続したうえ、接続配管11全体に保温材19を被せているので、第1実施形態よりも凍結防止効果を高めることができる。なお、保温材19を被せる位置は、接続配管11の一部でもよいが、図4の例のように接続配管11全体とすることが望ましい。
【0031】
また、上記第1実施形態の量水器ボックス2の蓋2aや、第2実施形態のマンホール8の蓋の内側面に保温材を取り付けることにより、外部冷気の侵入を防いで、凍結防止効果をさらに高めることもできる。
【0032】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
例えば、ヒートパイプの接続配管への接続位置や本数は、各実施形態のものに限らず、装置全体へ熱が行き渡るように、ヒートパイプの熱交換性能、装置の使用環境、装置の構造等を考慮して、適宜決定すればよい。
【0034】
また、ヒートパイプは、各実施形態のように直管状のものを接続配管から真下に延びるように配置することが望ましいが、形状は直管状に限定されず、一端を接続配管の外壁に接続され、他端が一端よりも下方に位置する姿勢で設けられていればよい。
【符号の説明】
【0035】
1、7 自動排水装置
2 量水器ボックス
3 水道本管
4 排水溝(排水系)
5 捨水配管
8 マンホール
11 接続配管
12 逆止弁付き止水栓
13 採水バルブ
14 量水器
15 電磁弁
16 配管ユニット
17 コントローラボックス
18 ヒートパイプ
19 保温材
図1
図2
図3
図4