IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダスキンの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138998
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】モップ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/79 20060101AFI20241002BHJP
   A47L 13/20 20060101ALI20241002BHJP
   D06M 11/46 20060101ALI20241002BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
D06M11/79
A47L13/20 C
A47L13/20 Z
D06M11/46
D06M15/263
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049755
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000133445
【氏名又は名称】株式会社ダスキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】中西 蘭
【テーマコード(参考)】
3B074
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AB04
3B074AC00
3B074EE00
4L031AA02
4L031AB01
4L031AB21
4L031BA09
4L031BA20
4L031BA23
4L031DA10
4L033AA02
4L033AB01
4L033AB03
4L033AC11
4L033CA18
(57)【要約】
【課題】払拭性に加えて新規な性能を有するモップを得ること。
【解決手段】多数のパイルからなる払拭部を有するモップを製造する方法において、吸着剤を含む水浴に前記払拭部を浸漬させて攪拌することによって前記払拭部に前記吸着剤を含浸させる、吸着加工工程を、有しており、前記吸着加工工程において、前記吸着剤を含む前記水浴が、合成マイカチタン及びアクリル系樹脂固形分も含んでおり、前記吸着剤量が5~40%o.w.f.に設定されており、前記合成マイカチタン量が0.17~0.77%o.w.f.に設定されており、前記アクリル系樹脂固形分量が0.3~2.9%o.w.f.に設定されている、ことを特徴としている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のパイルからなる払拭部を有するモップにおいて、
パイル表面に合成マイカチタンが付着しており、
前記合成マイカチタンは、前記払拭部の洗浄乾燥中には前記パイル表面から離脱しないが、払拭作業中には前記パイル表面から離脱して被払拭面に移転するように、前記パイル表面に付着している、
ことを特徴とするモップ。
【請求項2】
多数のパイルからなる払拭部を有するモップを製造する方法において、
吸着剤を含む水浴に前記払拭部を浸漬させて攪拌することによって前記払拭部に前記吸着剤を含浸させる、吸着加工工程を、有しており、
前記吸着加工工程において、前記吸着剤を含む前記水浴が、合成マイカチタン及びアクリル系樹脂固形分も含んでおり、前記吸着剤量が5~40%o.w.f.に設定されており、前記合成マイカチタン量が0.17~0.77%o.w.f.に設定されており、前記アクリル系樹脂固形分量が0.3~2.9%o.w.f.に設定されている、
ことを特徴とするモップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝性を呈するとともに被払拭面に光輝性を付与できるモップ、及び、当該モップを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モップのような払拭清掃具においては、払拭性に加えて新規な性能が求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002-519108号公報
【特許文献2】特開2007-77557号公報
【特許文献3】特開2007-77372号公報
【特許文献4】特開2002-121544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モップが新規な意匠性を呈することができれば、更には、モップによって被払拭面に意匠性を付与できれば、モップは新規な性能を有することとなり、その結果、モップに対する消費者の購買意欲が増すことが予想される。
【0005】
本発明は、光輝性を呈するとともに被払拭面に光輝性を付与できるモップ、及び、当該モップを製造する方法、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、多数のパイルからなる払拭部を有するモップにおいて、
パイル表面に合成マイカチタンが付着しており、
前記合成マイカチタンは、前記払拭部の洗浄乾燥中には前記パイル表面から離脱しないが、払拭作業中には前記パイル表面から離脱して被払拭面に移転するように、前記パイル表面に付着している、
ことを特徴としている。
【0007】
本発明の第2態様は、多数のパイルからなる払拭部を有するモップを製造する方法において、
吸着剤を含む水浴に前記払拭部を浸漬させて攪拌することによって前記払拭部に前記吸着剤を含浸させる、吸着加工工程を、有しており、
前記吸着加工工程において、前記吸着剤を含む前記水浴が、合成マイカチタン及びアクリル系樹脂固形分も含んでおり、前記吸着剤量が5~40%o.w.f.に設定されており、前記合成マイカチタン量が0.17~0.77%o.w.f.に設定されており、前記アクリル系樹脂固形分量が0.3~2.9%o.w.f.に設定されている、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1態様のモップによれば、自ら光輝性を呈することができるとともに、被払拭面に光輝性を付与できる。
【0009】
本発明の第2態様のモップの製造方法によれば、上記第1態様のモップを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[モップ]
本発明のモップは、多数のパイルからなる払拭部を有している。一般に、多数のパイルは、キャンバスの裏面に設けられている。払拭部のパイル表面には、合成マイカチタンが付着している。合成マイカチタンは、光輝剤として用いられている。合成マイカチタンは、払拭部の洗浄乾燥中にはパイル表面から離脱しないが、払拭作業中にはパイル表面から離脱して被払拭面に移転するように、パイル表面に付着している。
【0011】
本発明のモップによれば、払拭部が、パイル表面に付着している合成マイカチタンによって、光輝性を呈することができる。また、払拭部によって清掃された被払拭面が、払拭部のパイル表面から移転して来た合成マイカチタンによって、光輝性を呈することができる。すなわち、本発明のモップは、自ら光輝性を呈することができるとともに、被払拭面に光輝性を付与できる。
【0012】
よって、本発明のモップによれば、モップとして新規な意匠性を呈することができるとともに、被払拭面に意匠性を付与することができる。したがって、本発明のモップは、払拭性に加えて新規な性能を有することができ、その結果、モップに対する消費者の購買意欲が増すことができる。なお、合成マイカチタンは、重金属含有量が比較的少ないため、使用に際しての社会的懸念が小さい。
【0013】
[モップの製造方法]
上記構成のモップの製造方法について説明する。この製造方法は、吸着剤を含む水浴にモップの払拭部を浸漬させて攪拌することによって払拭部に吸着剤を含浸させる、吸着加工工程を、有している。そして、当該吸着加工工程において、吸着剤を含む水浴が、合成マイカチタン及びアクリル系樹脂固形分も含んでおり、吸着剤量が5~40%o.w.f.に設定されており、合成マイカチタン量が0.17~0.77%o.w.f.に設定されており、アクリル系樹脂固形分量が0.3~2.9%o.w.f.に設定されている。
【0014】
すなわち、上記製造方法においては、モップの払拭部のパイルを構成する繊維の重量に対して、吸着剤、合成マイカチタン、及びアクリル系樹脂固形分を、所定の割合に設定している。
【0015】
特に、所定の割合のアクリル系樹脂固形分が、合成マイカチタンのパイル表面への付着具合を所望の付着具合に規制していると考えられる。所望の付着具合とは、合成マイカチタンが「払拭部の洗浄乾燥中にはパイル表面から離脱しないが、払拭作業中にはパイル表面から離脱して被払拭面に移転する」ような付着具合である。
【0016】
したがって、本発明のモップの製造方法によれば、自ら光輝性を呈することができるとともに被払拭面に光輝性を付与できるモップを、得ることができる。
【0017】
[実施例及び比較例]
(実施例1)
多数の綿パイル(1.5s/2)からなる払拭部を有するモップである。このモップは、吸着剤を含む水浴にモップの払拭部を浸漬させて攪拌することによって払拭部に吸着剤を含浸させる、吸着加工工程を、経て、得た。そして、本実施例では、その吸着加工工程において、吸着剤を含む水浴に、合成マイカチタン及びアクリル系樹脂固形分も含め、吸着剤量、合成マイカチタン量、及びアクリル系樹脂固形分量を、下記のように設定した。
・吸着剤量…5%o.w.f.
・合成マイカチタン量…0.17%o.w.f.
・アクリル系樹脂固形分量…0.64%o.w.f.
【0018】
吸着剤、合成マイカチタン、及びアクリル系樹脂は、具体的には、下記のものを用いた。なお、合成マイカチタンは、ルチル型である。
・吸着剤…鉱物油96重量%に、界面活性剤、抗菌防カビ剤などを添加して、得た。
・合成マイカチタン…商品名「TWINCLE PEARL」(日本光研工業株式会社製)、粒径40-200μm、平均粒径90μm
・アクリル系樹脂…商品名「サンアクリルR-10」(株式会社村山化学研究所製)
【0019】
(実施例2-12)
吸着剤量、合成マイカチタン量、及びアクリル系樹脂固形分量を、表1に示すように適宜変更し、その他は実施例1と同じとして、実施例2-12のモップを得た。
【0020】
【表1】
【0021】
(比較例1-6)
吸着剤量、合成マイカチタン量、及びアクリル系樹脂固形分量を、表2に示すように適宜変更し、その他は実施例1と同じとして、比較例1-6のモップを得た。
【0022】
【表2】
【0023】
(比較例7-8)
合成マイカチタンの代わりに天然マイカチタンを光輝剤として用いるとともに、吸着剤量、天然マイカチタン量、及びアクリル系樹脂固形分量を、表3に示すように適宜変更し、その他は実施例1と同じとして、比較例7-8のモップを得た。なお、用いた天然マイカチタンの平均粒径は23μmであった。
【0024】
【表3】
【0025】
(比較例9-10)
合成マイカチタンの代わりにガラスビーズを光輝剤として用いるとともに、吸着剤量、ガラスビーズ量、及びアクリル系樹脂固形分量を、表4に示すように適宜変更し、その他は実施例1と同じとして、比較例9-10のモップを得た。なお、ガラスビーズとしては、直径0.2mmの球体を用いた。
【0026】
【表4】
【0027】
(性能評価)
実施例1-12及び比較例1-10の各モップについて、下記のような性能評価を行った。その結果は、表5に示されるとおりであった。
【0028】
【表5】
【0029】
(1)水浴加工性
吸着剤と光輝剤との水浴加工性について、下記の試験を行って、評価した。
【0030】
<試験>
パイルの繊維5gと、表1-4に示される所定量の、吸着剤、光輝剤、及びアクリル系樹脂固形分とを、三角フラスコ内に投入して攪拌し、吸着剤がエマルジョン化した後に水浴が透明になるか否かを、目視で確認した。
【0031】
なお、所定量の、光輝剤及びアクリル系樹脂固形分は、表1-4に示されるように、それらに対して、所定量の、沈降防止剤及び消泡剤と、必要な場合は水とを、添加して、分散剤として、投入した。
【0032】
<評価>
「ほぼ透明になった」場合を「○」とし、「若干、白濁が残った」場合を「△」とし、「白濁したまま」の場合を「×」とした。評価が「○」又は「△」である場合は、「加工性は良好であり、実使用可能である」と認定できる。
【0033】
(2)ダスト捕集性
モップの払拭部のダスト捕集性について、下記の試験を行って、評価した。
【0034】
<試験>
JIS試験用紛体の2種の砂埃をモデルダストとして使用して、各モップの払拭部のパイルによるモデルダストの捕集率を求めた。
【0035】
<評価>
「捕集率が40%を越えた」場合を「○」とし、「捕集率が40%以下」の場合を「△」とし、「光輝剤及びアクリル系樹脂固形分を添加しなかった場合のパイルと同程度の捕集率」である場合を「×」とした。評価が「○」又は「△」である場合は、「ダスト捕集性は良好であり、モップ本来の払拭性も良好である」と認定できる。
【0036】
(3)吸着剤移転性
モップの払拭部によって清掃された被払拭面に対する、払拭部の吸着剤の移転性を、下記の試験を行って、評価した。
【0037】
<試験>
セラミックタイルからなる床面(被払拭面)に、払拭部のパイルを押し当てて、50回往復移動させた。この作動の前後における床面表面の「つや」の変化を目視で確認した。
【0038】
<評価>
「つやの変化がない」場合を「無」とし、「つやが僅かに曇る」場合を「有」とした。評価が「無」である場合は、「モップ本来の払拭性は良好である」と認定できる。
【0039】
(4)光輝性
吸着加工工程を経て得たモップの、払拭部のパイル表面に対する、光輝剤の付着性を、下記の試験を行って、評価した。
【0040】
<試験>
吸着加工工程において光輝剤の一部に赤色を呈する光輝剤を用いてモップを得た。そして、払拭部の外観を目視で観察するとともに、L色空間におけるa値をカラーメーターにより測定した。
【0041】
<評価>
表6に示されるとおりである。パイル表面に対する光輝剤の付着を、目視で確認できる場合は、「払拭部が光輝性を呈している」と認定できる。
【0042】
【表6】
【0043】
(5)光輝付与性
モップの払拭部によって払拭清掃された被払拭面に対する、光輝剤の付着性を、下記の試験を行って、評価した。
【0044】
<試験>
セラミックタイルからなる床面(被払拭面)に、払拭部のパイルを押し当てて、50回往復移動させた。この作動の前後における床面表面の外観の変化を、目視で確認した。
【0045】
<評価>
「明らかな変化を確認できる」場合を「◎」とし、「僅かな変化を確認できる」場合を「○」とし、「変化を認識しにくい」場合を「△」とし、「変化を全く確認できない」場合を「×」とした。評価が「◎」又は「○」ある場合は、「被払拭面に光輝性が付与されている」と認定できる。
【0046】
(考察)
表5に示されるように、実施例1-12では、上述した5つの性能の全てにおいて満足できる評価が得られている。これに対して、比較例1ではダスト捕集性が劣っており、比較例2、7-10では光輝性及び光輝付与性が劣っており、比較例3では光輝付与性が劣っており、比較例4-5では水浴加工性及びダスト捕集性が劣っており、比較例6では吸着剤移転性が劣っている。したがって、上述した5つの性能の全てにおいて満足できる評価を得るためには、吸着剤量を5~40%o.w.f.に設定し、合成マイカチタン量を0.17~0.77%o.w.f.に設定し、アクリル系樹脂固形分量を0.3~2.9%o.w.f.に設定する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のモップの製造方法は、自ら光輝性を呈することができるとともに被払拭面に光輝性を付与できるモップを、得ることができるので、産業上の利用価値が大である。