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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139003
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】タイヤ研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/08 20060101AFI20241002BHJP
   B24B 21/02 20060101ALI20241002BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B24B55/08 A
B24B21/02
B29D30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049762
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】599078163
【氏名又は名称】三重電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【弁理士】
【氏名又は名称】保立 浩一
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
3C047FF09
3C047FF17
3C047KK01
3C158AA05
3C158AA19
3C158AB01
3C158AB04
3C158AC05
3C158CA01
3C158CB04
3C158CB10
4F215AH20
4F215VA17
4F215VA18
4F215VC30
4F215VN01
4F215VP17
4F501TA14
4F501TA15
4F501TB26
4F501TG01
4F501TL16
4F501TV21
(57)【要約】
【課題】 研磨カスの飛散が抑制され、作業後の清掃が容易なタイヤ研磨装置を提供する。
【解決手段】 タイヤTが組み込まれたホイールWが装着された水平な姿勢のシャフト1がタイヤ用回転駆動源により回転し、上下に配された一対のプーリ31,32に張架された研磨ベルト2がベルト用回転駆動源により回転しながらタイヤTに接触してタイヤTが研磨される。下プーリ32の下方には、スクレーパー7が設けられていて先端が研磨ベルト2に接近しており、研磨ベルト2に付着している研磨カスCを落下させて周囲に飛散しないようにする。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールに組み込まれたされたタイヤの表面を研磨するタイヤ研磨装置であって、
タイヤが組み込まれたホイールが装着される水平な姿勢のシャフトと、
シャフトを回転させるタイヤ用回転駆動源と、
上下に配され、シャフトと平行な回転軸の周りに回転可能な一対のベルトプーリと、
一対のベルトプーリに張架されて上下方向に長い周回軌道に沿って周回する無終端の研磨ベルトと、
少なくとも一方のベルトプールを駆動して研磨ベルトを周回させるベルト用回転駆動源と、
ベルト用回転駆動源によって周回するベルトが、タイヤ用回転駆動源によって回転しているタイヤに接触した状態とするためのベルト制御機構と
を備えており、
周回する研磨ベルトが回転しているタイヤに接触することで研磨ベルトに付着したタイヤの破片を研磨ベルトから剥離させるスクレーパーが設けられており、
スクレーパーは、周回する研磨ベルトに先端が接近した状態となるよう取り付けられた板状の部材であり、
スクレーパーは、下側のベルトプーリの下方位置で先端が研磨ベルトに接近するよう取り付けられていることを特徴とするタイヤ研磨装置。
【請求項2】
前記研磨ベルトの周回の向きにおける前記スクレーパーの背後の空間からの研磨カスの飛散を防止する横板が設けられており、
横板は、前記スクレーパーの側端部から前記背後の空間の側に向けて延設された部材であることを特徴とする請求項1記載のタイヤ研磨装置。
【請求項3】
前記スクレーパーの先端が前記研磨ベルトに接近する位置は、前記研磨ベルトの周回軌道の最下点の直下の位置であることを特徴とする請求項1又は2記載のベルト研磨装置。
【請求項4】
前記スクレーパーの先端が前記研磨ベルトに接近する位置は、前記下側のベルトプーリの回転軸を中心としてその直下の方向を0度とし、タイヤが位置する側を-、これとは反対側を+とした場合、-15度から+30度の角度の範囲内の位置であることを特徴とする請求項1又は2記載のベルト研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、タイヤを研磨する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幾つかの異なる目的で、タイヤの表面を意図的に研磨することが必要になる場合があり、特許文献1に示されたようなタイヤ研磨装置が知られている。タイヤ研磨の目的としては、例えばスタッドレスタイヤのグリップ力回復の目的が挙げられる。スタッドレスタイヤについては、使用により表面の粗さが低下し、まだ十分に溝が残っているにも関わらずグリップ力が低下し、廃棄をせざるを得ない場合がある。このような場合でも、表面を粗く研磨すればグリップ力が回復できるので、タイヤ研磨装置が使用される。
また、別の目的として、タイヤ研磨装置は、タイヤの性能評価の目的でも使用される。新品のタイヤについて、長距離走行後のタイヤの状態を再現するため、タイヤ研磨装置を使用してタイヤを研磨し、例えば残存溝深さ2mmという状態を再現し、その上で、タイヤのグリップ力等の各性能を評価する試験が行われている。
【0003】
尚、スタッドレスタイヤのグリップ力を回復させる装置は、タイヤを粗くするベルトを使用するものであり、厳密には「研磨」とはいえないが、広く解釈してタイヤ研磨装置と称している。また、タイヤの性能評価のための装置は、タイヤを削ってトレッドの溝深さを浅くする装置であり、「研削」と表現できるものであるが、この明細書においてはタイヤ研磨装置と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-196347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたようなタイヤ研磨装置では、研磨中のタイヤから放出されるタイヤの形成材料(ゴムの粉末や破片)が放出される。以下、この放出物を研磨カスと呼ぶ。
研磨カスは四方八方に飛散するため、研磨量が多くなると、作業終了後の清掃が非常に面倒になる。タイヤから直接放出される研磨カスは、研磨ベルトとタイヤとの接触箇所の真下付近に放出されるが、いったん研磨ベルトに付着した研磨カスは、研磨ベルトの移動(周回)に伴って移動し、ランダムな位置でランダムな方向に放出され易い。
本願の発明は、このような課題を解決するために為されたものであり、研磨カスの飛散が抑制され、作業後の清掃が容易なタイヤ研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この明細書において開示されたタイヤ研磨装置は、ホイールに組み込まれたタイヤの表面を研磨するタイヤ研磨装置であって、
タイヤが組み込まれたホイールが装着される水平な姿勢のシャフトと、
シャフトを回転させるタイヤ用回転駆動源と、
上下に配され、シャフトと平行な水平方向の回転軸の周りに回転可能な一対のベルトプーリと、
一対のベルトプーリに張架されて上下方向に長い周回軌道に沿って周回する無終端の研磨ベルトと、
少なくとも一方のベルトプーリを駆動して研磨ベルトを周回させるベルト用回転駆動源と、
ベルト用回転駆動源によって周回するベルトが、タイヤ用回転駆動源によって回転しているタイヤに接触した状態とするためのベルト制御機構と
を備えている。
そして、周回する研磨ベルトが回転しているタイヤに接触することで研磨ベルトに付着したタイヤの破片を研磨ベルトから剥離させるスクレーパーが設けられており、
スクレーパーは、周回する研磨ベルトに先端が接近した状態となるよう取り付けられた板状の部材であり、
スクレーパーは、下側のベルトプーリの下方位置で先端が研磨ベルトに接近するよう取り付けられている。
また、このタイヤ研磨装置において、スクレーパーの先端が研磨ベルトに接近する位置は、研磨ベルトの周回軌道の最下点の直下の位置であり得る。
また、このタイヤ研磨装置において、スクレーパーの先端が研磨ベルトに接近する位置は、下側のベルトプーリの回転軸を中心としてその直下の方向を0度とし、タイヤが位置する側を-、これとは反対側を+とした場合、-15度から+30度の角度の範囲内の位置であり得る。
【発明の効果】
【0007】
以下に説明する通り、開示された発明に係るタイヤ研磨装置によれば、スクレーパーによって研磨ベルト上の研磨カスが効率良く集塵される。このため、研磨作業後の装置内の清掃が容易となる。
また、スクレーパーの側端部から背後の空間の側に向けて延設された横板が設けられている構成によれば、横板によって横方向への研磨カスの飛散も抑制されているため、研磨カスが周囲の部材に拡散付着することが格段に少なくなり、清掃がさらに容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るタイヤ研磨装置の斜視概略図である。
図2】研磨ユニットの斜視概略図である。
図3】プーリ位置変更機構の構成及びその動作について示した側面概略図である。
図4】スクレーパーの形状及び取付位置について示した概略図であり、(1)は正面概略図、(2)は側面概略図である。
図5】スクレーパーの作用について示した正面断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、実施形態に係るタイヤ研磨装置の斜視概略図である。タイヤ研磨装置は、タイヤTが組み込まれたホイールWが装着されるシャフト1を備えている。図1に示すように、シャフト1は、水平な姿勢となっている。シャフト1の一端は、タイヤ駆動用ボックス10内に設けられた不図示のタイヤ用回転駆動源に固定されており、水平な回転軸(シャフト1の中心軸)の回りに回転するようになっている。尚、シャフト1のタイヤ用回転駆動源に固定された部位よりも先端側には、円盤状の当て板11が固定されている。タイヤ用回転駆動源は、モーター、プーリ、ベルト等を含んでおり、シャフト1を例えば1~8rpm程度の低速で回転させるものとなっている。
【0010】
シャフト1の他端は開放端となっており、ホイールWのセンターボアに挿入されるようになっている。図1に示すように、シャフト1の他端側の周面はねじ切り面となっており、このねじ切り面に螺合するハンドルネジ12が用意されている。ハンドルネジ12は、円環状の主部と、主部から放射状に延びる複数本のハンドルとから成っている。主部の内周面には、シャフト1に螺合するねじ切り面となっている。図1に示すように、シャフト1をセンターボアに通してホイールWを装着した後、ホイールWを当て板11に押し当て、この状態でハンドルネジ12をシャフト1に嵌め込んで螺合させることにより、ホイールWはシャフト1に固定されるようになっている。
尚、ホイールWのセンターボアの径は品種によって若干異なっている。シャフト1は、センターボアが最も小さい品種に適合する外形となっており、センターボアが大きいホイールWについては、ハブリングやスペーサーを適宜使用してホイールWがシャフト1に十分に固定された状態とされる。この他、シャフト1の他端側に向けて徐々に外径が小さくなっている(テーパー状の)円環状のスペーサーを当て板11とホイールWの間に介在させ、種々のセンターボアの径に対応させる場合もある。
【0011】
そして、装置は、シャフト1に装着されたホイールWに組み込まれたタイヤTに当接してタイヤTを研磨する研磨ベルト2を含む研磨ユニット20を備えている。図2は、研磨ユニット20の斜視概略図である。
図2に示すように、研磨ベルト2は、輪っか状の無終端のものであり、一対のプーリ31,32に張架されるものである。一対のプーリ31,32は、上下に配設されている。研磨ベルト2は、一対のプーリ31,32によって形成される周回軌道上を周回するものである。以下、上側のプーリ31を上プーリと呼び、下側のプーリ32を下プーリと呼ぶ。尚、この例では一対のプーリ31,32は同じ大きさであるが、異なる大きさとされる場合もある。
【0012】
この例では、上プーリ31は従動プーリとなっており、下プーリ32が駆動プーリとなっている。下プーリ32には、ベルト用回転駆動源を含むベルト回転機構4が連結されている。上プーリ31は、水平な従動軸を含む上プーリホルダー311によって軸支されている。下プーリ32も、ベルト駆動用ボックス321内のベルト用回転駆動源に連結された水平駆動軸(不図示)によって軸支されている。上プーリ31の従動軸及び下プーリ32の駆動軸は互いに平行であり、同一鉛直面上に位置している。
【0013】
また、研磨ベルト2の着脱の際に操作されるプーリ位置変更機構5が設けられている。図3は、プーリ位置変更機構5の構成及びその動作について示した側面概略図である。
図2及び図3に示すように、プーリ位置変更機構5は、上板部511及び下板部512とから成るコ状のフレーム51と、フレーム51内で昇降する昇降ブロック52と、昇降ブロック52に下端が固定され、上板部511の挿通孔を通して挿通されて上方に延びる2本の支柱53と、昇降ブロック52と下板部512との間に設けられたコイルスプリング54と、昇降ブロック52に連結されたカム55と、カム55に連結されたアーム56と、アーム56の先端に設けられたハンドル部57とを備えている。
【0014】
2本の支柱53の先端は、上プーリホルダー311の下面に固定されており、上プーリホルダー311を支えている。昇降ブロック52の下面には、2本のスプリングロッド58が固定されている。コイルスプリング54は、2本のスプリングロッド58のそれぞれに設けられており、スプリングロッド58の周囲において上下方向に弾性を作用させるものとなっている。各コイルスプリング54は、下板部512と昇降ブロック52との間に挟まれた状態で設けられており、昇降ブロック52を上側に押し上げるよう弾性を作用させるものとなっている。各スプリングロッド58は、下板部512に設けられた不図示の挿通孔を通して下方に突出しており、昇降ブロック52とともに昇降可能となっている。スプリングロッド58は、コイルスプリング54が外れないように係止するためのものである。
【0015】
カム55は、側面で見るとほぼ長方形のブロック状の部材である。カム55は、回転軸を介して昇降ブロック52に連結されており、回転軸の回りの回転により長手方向が水平になる状態と長手方向が垂直になる状態を取り得るものとなっている。アーム56の先端は、カム55の長手方向の端部に連結されている。アーム56の他端は、ハンドル部57となっている。
【0016】
研磨ベルト2を張架する場合、一対のプーリ31,32の間隔を予め狭めておく。即ち、ハンドル部57を持って、図3(1)に示すようにほぼ水平な状態になるまでアーム56を回転させて持ち上げる。この際、アーム56の先端に連結されているカム55が回転し、長手方向が垂直方向になる。カム55は、長手方向の中央の位置で昇降ブロック52に連結されており、長手方向が垂直方向となった姿勢のカム55は上側の上板部511によって上側の変位が規制されているので、相対的に昇降ブロック52が押し下げられる状態となる。この際、昇降ブロック52は、各コイルスプリング54を圧縮する。即ち、アーム56を持ち上げる人の力は、カム55及び昇降ブロック52を介してコイルスプリング54を圧縮するよう作用する。尚、2本のスプリングロッド58も昇降ブロックとともに下降位置にある。
【0017】
図3(1)の状態で研磨ベルト2を上プーリ31に被せ、下側を下プーリ32の下側に回して装着する。そして、ハンドル部57を持ってアーム56を回転させて押し下げ、図3(3)に示すようにアーム56がほぼ垂直な姿勢になるようにする。これにより、カム55が90度回転し、長手方向が水平方向に向く姿勢となる。カム55は、長手方向の面が上板部511に当接して上側への変位が規制された状態となる。このカム55の姿勢変化に伴い、昇降ブロック52が上昇し、昇降ブロック52に固定されている2本の支柱53も上昇する。このため、上プーリホルダー311で保持されている上プーリ31も上昇する。これにより、上プーリ31と下プーリ32の離間距離が長くなり、研磨ベルト2が張った状態となる。昇降ブロック52の上昇は上板部511で規制されており、研磨ベルト2が最適な張力となるように上板部511の位置や支柱53の長さが選定されている。尚、スプリングロッド58も昇降ブロック52とともに上昇する。
【0018】
このような研磨ユニット20には、回転するタイヤTに研磨ベルト2を接触させるベルト制御機構6が設けられている。この実施形態では、ベルト制御機構6は、研磨作業を容易にする機能も有している。ベルト制御機構6は、タイヤTに研磨ベルト2を接触させるための機構であるが、研磨ユニット20全体をタイヤTの幅方向(シャフト1が延びる方向)に移動させたり、垂直な回転軸の回りに回転させたり(首振り)する機能を有している。
図3に示すように、研磨ユニット20は、垂直な姿勢の側部ベース盤201を備えており、側部ベース盤201に上プーリホルダー311を支持したフレーム51や、下プーリ32を回転させるベルト回転機構4等が固定されている。側部ベース盤201の下端から下プーリ32の側に延びるようにして下部ベース盤202が固定されており、下部ベース盤202には、ベルト制御機構6を構成するクランク61が固定されている。ベルト制御機構6については、特開2007-196347号公報にも開示されており、同様の機構を採用することができるので、詳細な説明及び図示は割愛する。
【0019】
このようなタイヤ研磨装置を使用して研磨を行う場合、タイヤTが組み込まれたホイールWをシャフト1がセンターボアに挿通されるようにしてホイールWをシャフト1に装着し、ハンドルネジ12をシャフト1に螺合させて当て板11とハンドルネジ12で挟み込んでホイールWを固定する。その上で、タイヤ用回転駆動源及びベルト用回転駆動源を動作させる。そして、ベルト制御機構6を操作し、回転しているタイヤTに周回している研磨ベルト2を任意の位置及び姿勢で接触させる。その状態を保ち、任意の量の研磨を行わせる。研磨が終了したら、研磨ベルト2をタイヤTから離間した状態とし、タイヤ用回転駆動源及びベルト用回転駆動源を停止させる。そして、ハンドルネジ12を回りして取り外し、ホイールWをシャフト1から引き抜いて取り外す。
【0020】
尚、タイヤTの回転の向きと研磨ベルト2の回転の向きを同じにしてすれ違うような状態で研磨ベルト2をタイヤTに接触させる場合が多いが、逆向きの場合もある。いずれの場合も、研磨ベルト2は、タイヤTに接触する際に上から下に移動していく向きである。いずれの場合も、タイヤTの回転速度は研磨ベルト2に比べてかなり遅い。回転速度の一例を示すと、タイヤTの回転は1~8rpm程度であり、研磨ベルト2の回転は500~1500rpm程度である。研磨ベルト2の回転速度は、荒削りの場合には速く、仕上げ削りの場合には遅くする。中削りの場合には中間の速さである。また、研磨ベルト2の回転の向きはタイヤTと接触した後に下方に向かう向きであるが、一方向にのみ回転させていると、研磨後にバリが残留する場合があるので、最後の仕上げのバリ取りの際に逆向きに研磨ベルト2を周回させることもある。
【0021】
このようなタイヤ研磨装置において、上述したように研磨作業の際に研磨カスが発生する。実施形態のタイヤ研磨装置は、研磨カスの飛散を抑制し、作業後の清掃を容易にするため、スクレーパー7を設けている。スクレーパーは、「スクレイパー」と表記されたり、「スクレーパ」や「スクレパー」と表記されたりすることもあるが、この明細書では、「スクレーパー」と表記する。
スクレーパー7は、研磨ベルト2に付着した研磨カスの飛散を抑制し、一定した場所に放出されるようにする部材である。スクレーパー7は、研磨ベルト2に接触して研磨ベルト2を擦るように使用されるものではないので、通常の用例とは異なるが、この明細書においては「スクレーパー」という名称を採用する。
【0022】
図4は、スクレーパー7の形状及び取付位置について示した概略図である。図4(1)は、正面概略図、(2)は側面概略図である。
図3図4に示すように、スクレーパー7は、板状の部材であり、この例では垂直な姿勢で取り付けられている。スクレーパー7の先端は、研磨ベルト2の周回軌道に接近している。より具体的には、スクレーパー7の先端は、周回軌道の最下端の位置の直下となっている。研磨ベルト2とスクレーパー7との離間距離(図4にdで示す)は、1~3mm程度である。
【0023】
また、この実施形態では、スクレーパー7に延設された部材として横板71が設けられている。横板71は、スクレーパー7が設けられた位置の後方(周回軌道における後方)の空間を覆う状態で設けられた部材である。下プーリ32の一方の側には、ベルト回転機構4を収容したベルト駆動用ボックス321が設けられている。横板71は、下側の他方の側において遮蔽する姿勢となっている。スクレーパー7と横板71は直角に連結されており、平面視ではL次状となっている。尚、図3に示すように、横板71の上端縁は、下プーリ32に沿って湾曲した円弧状となっている。この円弧状の部分は、下プーリ32の円弧と同軸になっている。横板71の上端円弧状部分も、スクレーパー7と同様に、1~3mm程度の小さい距離で研磨ベルト2に接近している。尚、横板71はスクレーパー7の一端に固定されており、スクレーパー7の他端はベルト駆動用ボックス321に固定されている。
【0024】
尚、装置は、研磨ユニット20等を収容した外カバー8を備えている。外カバー8は、開閉される側板部81を含んでおり、車輪の装着や取り外しの際に開閉される。図1では示されていないが、外カバー8は上部開閉蓋を含んでおり、研磨作業の際には上側も上部開閉扉で閉じられる。
尚、装置の底部ベース板82には、図1に示すように、漏斗状に形成された集塵部821が設けられている。集塵部821の下側には、不図示の排出トレーが設けられており、集塵部821を通って研磨カスがたまるようになっている。排出トレーは、集塵部821から引き出せるようになっており、たまった研磨カスを廃棄する際に引き出される。
【0025】
図5は、スクレーパー7の作用について示した正面断面概略図である。図5中に拡大して示すように、研磨ベルト2の表面に付着残留した研磨カスCは、研磨ベルト2の周回移動に伴ってスクレーパー7を臨む位置に達する。この際、研磨ベルト2は、この位置では下プーリ32の曲率に応じて湾曲しているので、図5中に拡大して示すように、研磨カスCの研磨ベルト2への接触面積は小さくなっている。このため、スクレーパー7の先端に僅かに触れただけで研磨カスCは研磨ベルト2から離間して落下し、集塵部821に達する。このため、研磨ベルト2に付着しながら周回してランダムに周囲に研磨カスCが飛散してしまうのが抑制される。
【0026】
また、研磨ベルト2から横方向(下プーリ32の回転軸の方向)に飛散する研磨カスは、横板71に当たって下方に落下し、集塵部821に達する。このため、外カバー8の内面等の周囲の部材の表面に拡散してしまうのが抑制される。この実施形態では、横板71がスクレーパー7の背後(研磨ベルトの移動方向における背後)の空間を仕切っているため、より効果が大きくなっている。即ち、スクレーパー7に引っ掛かって研磨ベルト7から離間した研磨カスCは、斜め後方に飛散する場合があるが、この方向に飛散する研磨カスCは横板71に当たって集塵部821に落下する。
【0027】
このように実施形態のタイヤ研磨装置によれば、スクレーパー7によって研磨ベルト2上の研磨カスが効率良く集塵される上、横板71によって横方向への研磨カスの飛散も抑制されている。このため、研磨カスが周囲の部材に拡散付着することが格段に少なくなり、研磨作業後の装置内の清掃が容易となる。
尚、図2に示すように、この実施形態では、張架された研磨ベルト2の背後(タイヤTに接触する側とは反対側)には、ベルトカバー21が設けられている。ベルトカバー21も、研磨カスの飛散を抑制し、装置内の清掃を容易にしている。
【0028】
上記構成において、スクレーパー7は、下プーリ32の回転軸の直下の位置でなくとも、多少前後した位置に配置されていても良い。但し、上記説明から解るようにスクレーパー7の位置は、下プーリ32において研磨ベルト2が湾曲している位置から外れないようにしておくことが好ましい。また、下プーリ32上の周回軌道を進むにつれて研磨カスは研磨ベルト2から少しずつ離間すると考えられるから、直下の位置よりもあまり手前の位置にしないようにすることが好ましい。これらを考慮すると、図4(2)に示すように、直下の位置を基準にした時計回りの角度で表現すると、スクレーパー7は、+15度から-30度の範囲内の位置に配置することが好ましい。
尚、スクレーパー7の姿勢は、研磨ベルト2に対して垂直(下プーリ32の回転軸を中心とする径方向)に配置することが好ましい。下プーリ32の回転軸の直下の位置でない場合、スクレーパー7は、径方向に沿った斜めの姿勢となる。但し、先端が上記角度範囲内に位置している状態において鉛直に配置する場合もあり得る。
【符号の説明】
【0029】
1 シャフト
2 研磨ベルト
20 研磨ユニット
31 上プーリ
32 下プーリ
4 ベルト回転機構
5 プーリ位置変更機構
6 ベルト制御機構
7 スクレーパー
71 横板
図1
図2
図3
図4
図5