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  • 特開-ほうれん草の栽培方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139009
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ほうれん草の栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20241002BHJP
   A01G 22/15 20180101ALI20241002BHJP
【FI】
A01G31/00 601B
A01G31/00 612
A01G22/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049769
(22)【出願日】2023-03-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、人工知能技術適用によるスマート社会の実現/生産性分野委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】デシュムク ビベック バサント
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AA03
2B022AB11
2B314MA17
2B314MA38
2B314MA39
2B314MA40
2B314MA42
2B314NA23
2B314NB13
2B314NC07
2B314PA17
2B314PB02
2B314PC04
2B314PC09
2B314PC10
2B314PD44
2B314PD63
(57)【要約】
【課題】栽培面積当たりの収穫量が多く、栄養素が多いほうれん草の栽培方法を提供する。
【解決手段】培地に保持されたほうれん草の苗に光を照射して、苗の根が養液に浸かった状態で、水耕栽培方式にて苗を栽培する、ほうれん草の栽培方法であって、ほうれん草の苗の株密度が120~300(株/m2)であり、培地の下面と養液の液面との距離が0.5~2.5cmである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地に保持されたほうれん草の苗に光を照射して、前記苗の根が養液に浸かった状態で、水耕栽培方式にて前記苗を栽培する、ほうれん草の栽培方法であって、
前記ほうれん草の前記苗の株密度が120~300(株/m2)であり、
前記培地の下面と前記養液の液面との距離が0.5~2.5cmである、ほうれん草の栽培方法。
【請求項2】
前記養液の電気伝導度は、0.8~2.7dS/mである、請求項1に記載のほうれん草の栽培方法。
【請求項3】
前記光は、白色光である、請求項1に記載のほうれん草の栽培方法。
【請求項4】
明期と、前記明期よりも暗い暗期とを備える栽培サイクルを有する、請求項1に記載のほうれん草の栽培方法。
【請求項5】
前記暗期は、前記明期よりも温度が低い、請求項4に記載のほうれん草の栽培方法。
【請求項6】
前記栽培サイクルは、前記明期と前記暗期との合計を100%とした場合、暗期の割合が40~60%である、請求項4に記載のほうれん草の栽培方法。
【請求項7】
前記明期及び前記暗期の温度は、25℃以下である、請求項4~6のいずれか1項に記載のほうれん草の栽培方法。
【請求項8】
前記ほうれん草の前記苗は、1つの前記培地に、1~5個体保持される、請求項1~5のいずれか1項に記載のほうれん草の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培を用いたほうれん草の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水耕栽培を用いて、ほうれん草等の葉菜類が栽培されている。ほうれん草等の葉菜類の水耕栽培について種々提案されている。
例えば、特許文献1に、長手方向に傾斜勾配を有する葉菜栽培容器の最上流に養水を供給し、栽培容器の最下流から流出させて循環させるほうれん草等の葉菜の水耕栽培方法が記載されている。特許文献1では、栽培容器が、その上面に複数の植栽孔を有し、その底面に長手方向に平行な凹凸溝を有するものであり、ほうれん草等の葉菜を植栽孔に挿通して栽培容器に収容し、葉菜の根部に養水を接触させて栽培する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/073901号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ほうれん草の栽培において、栽培面積当たりの収穫量が多いことが要求されている。さらに、収穫したほうれん草の栄養素についても多いことが要求されている。
しかしながら、上述の特許文献1のほうれん草等の葉菜の水耕栽培方法は、家庭等で簡便に栽培できることを目的としており、栽培面積当たりの収穫量をより多くすることについて考慮されていない。さらには、収穫したほうれん草の栄養素についても考慮されていない。
本発明の目的は、栽培面積当たりの収穫量が多く、栄養素が多いほうれん草の栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、発明[1]は、培地に保持されたほうれん草の苗に光を照射して、苗の根が養液に浸かった状態で、水耕栽培方式にて苗を栽培する、ほうれん草の栽培方法であって、ほうれん草の苗の株密度が120~300(株/m2)であり、培地の下面と養液の液面との距離が0.5~2.5cmである、ほうれん草の栽培方法である。
発明[2]は、養液の電気伝導度は、0.8~2.7dS/mである、発明[1]に記載のほうれん草の栽培方法である。
発明[3]は、光は、白色光である、発明[1]又は[2]に記載のほうれん草の栽培方法である。
発明[4]は、明期と、明期よりも暗い暗期とを備える栽培サイクルを有する、発明[1]~[3]のいずれか1つに記載のほうれん草の栽培方法である。
発明[5]は、暗期は、明期よりも温度が低い、発明[4]に記載のほうれん草の栽培方法である。
発明[6]は、栽培サイクルは、明期と暗期との合計を100%とした場合、暗期の割合が40~60%である、発明[4]又は[5]に記載のほうれん草の栽培方法である。
発明[7]は、明期及び暗期の温度は、25℃以下である、発明[4]~[6]のいずれか1つに記載のほうれん草の栽培方法である。
発明[8]は、ほうれん草の苗は、1つの培地に、1~5個体保持される、発明[1]~[7]のいずれか1つに記載のほうれん草の栽培方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、栽培面積当たりの収穫量が多く、栄養素が多いほうれん草の栽培方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態のほうれん草の栽培方法に用いられる栽培容器の一例を示す模式的平面図である。
図2】本発明の実施形態のほうれん草の栽培方法に用いられる栽培容器の一例を示す模式的側面図である。
図3】本発明の実施形態のほうれん草の栽培方法に用いられる栽培容器の一例を示す模式的断面図である。
【0008】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のほうれん草の栽培方法を詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態及び図示した内容は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
以下において数値範囲を示す「~」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値εα~数値εβとは、εの範囲は数値εαと数値εβを含む範囲であり、数学記号で示せばεα≦ε≦εβである。
また、各種の数値については、特に記載がなければ、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
【0009】
(ほうれん草)
ほうれん草は本葉と称する緑葉部分を食用にしている野菜である。
ほうれん草としては、例えば、いずれも商品名であるが、アルデバラン、イフリート、カッシーニ、グリーンアップ、クロネ、サンエンジェル、スクープ、スタウト、ソースカイ、チェックメイト、トリトン、ニュートン、ノルディック、ハイドロ、ハイドン、バハムート、ビショップ、フクベイ、ペルセウス、及びルークが挙げられる。このうち、ハイドロ、クロネ、サンエンジェル、グリーンアップ、及びニュートンが好ましい。
【0010】
(ほうれん草の苗)
ほうれん草の苗とは、将来的に移植、すなわち、定植をする目的で育苗されているほうれん草の幼植物体を指す。
定植に供されるほうれん草の苗は、特に限定されるものではなく、本葉が1枚以上で8枚以下の範囲内で展開している苗であることが好ましく、本葉が1枚以上で4枚以下の範囲内で展開している苗であることがより好ましく、本葉が1枚以上で3枚以下の範囲内で展開している苗であることがさらに好ましく、本葉が1枚以上で2枚以下の範囲内で展開している苗であることが特に好ましい。
また、ほうれん草の苗には、収穫直前の段階のものも含まれる。ほうれん草の苗については、将来的に移植、すなわち、定植をすることなく、播種(種まき)の段階から収穫迄が、ほうれん草の苗に含まれる。さらには、播種(種まき)の密度、すなわち、ほうれん草の苗の株密度は、120~300株/m2である。
株密度は1m当たりの株の数のことである。ほうれん草の苗の株密度は、ほうれん草の苗の配置密度を表すものである。なお、平均株間は(1/株密度)0.5で表される。
【0011】
以下、植物の栽培方法について説明する。
まず、植物の栽培方法に用いられる栽培容器について説明する。
<栽培容器の一例>
図1は本発明の実施形態のほうれん草の栽培方法に用いられる栽培容器の一例を示す模式的平面図であり、図2は本発明の実施形態のほうれん草の栽培方法に用いられる栽培容器の一例を示す模式的側面図である。
ほうれん草は、例えば、図1に示す栽培容器10を用いた水耕栽培方式により栽培される。例えば、栽培容器10の表面11(後述の栽培プレート12の表面12d)の形状は長方形である。なお、栽培容器10のことをパネルともいう。
図1に示す栽培容器10の表面11に、複数のほうれん草の苗Pが、隣り合うほうれん草の苗P同士の間に間隔をあけて配置される。図1では、一部省略しているが、例えば、後述の栽培プレート12の表面12dに、合計120個のほうれん草の苗Pが配置されている。
ほうれん草の苗Pは、直交するX方向及びY方向において、それぞれ等間隔に配置されており、栽培容器10の表面11(パネル表面)を方形格子状に区画した際の四角形の頂点に位置するように、ほうれん草の苗Pが配置されている。図1では、ほうれん草の苗Pに関して言うと、X方向の間隔Dxと、Y方向の間隔Dyとは異なる。ほうれん草の苗Pの間隔については、間隔DxとDyが異なる場合、これらの間隔の平均間隔を、ほうれん草の苗Pの間隔とする。
なお、ほうれん草の苗Pの間隔とは、隣接するほうれん草の苗Pの、地際での主軸間の距離のことである。
【0012】
上述のほうれん草の苗Pの間隔(株間)である間隔Dx及び間隔Dyは、苗Pの株密度によって適宜決定されるものである。苗Pの株密度は120~300(株/m)であることから、ほうれん草の苗Pの間隔Dx(株間)及び間隔Dy(株間)は15cm未満であることが好ましい。なお、ほうれん草の苗Pの間隔が狭くなり過ぎると、収穫しにくくなり、収穫作業性が劣るため、ほうれん草の苗の間隔の下限は3cmであることが好ましい。
ほうれん草の苗Pの配置パターンは、上述の図1に示す長方形に限定されるものではなく、三角形、長方形以外の四角形、五角形、及び六角形等の多角形状でもよい。なお、ほうれん草の苗Pの間隔は、四角形以外の多角形の場合でも、方向により間隔が異なる場合がある。この場合でも、異なる方向の間隔の平均間隔を、ほうれん草の苗Pの間隔とする。上述のように平均株間は(1/株密度)0.5で表される。
【0013】
ほうれん草の苗Pの株密度が120~300(株/m)であると、栽培面積当たりの収穫が収穫量が多く、栄養素が多い。
ほうれん草の苗Pの株密度が120株/m未満であると、栽培面積当たりの収穫が収穫量が少ない。
ほうれん草の苗Pの株密度が300株/mを超えると、1株毎の重量が小さくなり、かつ隣接する株同士が近くにあり収穫しにくくなり、収穫の作業性が悪くなる。
【0014】
図2に示すように栽培容器10の表面11(栽培プレート12の表面12d)の上方に、例えば、光として白色光を出射する光源20が配置される。栽培工程において、光源からの光がほうれん草の苗Pに照射される。栽培工程において、上述のほうれん草の苗に対して、所定の光の光量子束密度(μmol/(m2s))となるように光源20の光量が調整される。
栽培工程において、ほうれん草の苗Pに照射する白色光は、特に限定されるものではなく、太陽光等の自然光でもよく、人工光でもよい。例えば、太陽光の光合成光量子束密度は1000μmol/(m2s)以上あるが、人工光は100~500μmol/(m2s)程度である。
光源20は、例えば、無機又は有機のLED(Light Emitting Diode)、又はレーザー等の半導体発光素子、蛍光灯、水銀灯、希ガスランプ、無電極ランプ等の放電管、白熱灯等のフィラメント発光機、放射光又は蛍光等のエネルギー遷移によるもの等、白色光を出射する装置を利用可能である。なお、光源20は、照射範囲を変えるための機構を有する構成でもよい。光源に、太陽光以外の白色LEDを用いた場合、白色光は人工光である。
【0015】
ここで、図3は本発明の実施形態の植物の栽培方法に用いられる栽培容器の一例を示す模式的側断面図である。図3図1及び図2に示す栽培容器10の部分的に示す断面図である。
栽培容器10は、図3に示すように栽培プレート12と、養液L(液体肥料)が溜められた液槽14とを有する。液槽14は底部15を有する容器である。養液Lは栽培するほうれん草の苗Pの育成に必要な養分を含有する。ほうれん草の苗Pは、栽培容器10の液槽14の養液Lに、ほうれん草の苗Pの根Prが浸かった状態で栽培容器10に入れられて保持されて水耕栽培される。
ほうれん草の苗Pの根Prが養液Lに浸かった状態とは、根Prの少なくとも一部が養液L内にある状態である。根Prは全て養液Lに浸かることはなく、培地13の下面13bと養液Lの液面Lsとは間があいていることが好ましい。
【0016】
栽培プレート12は、ほうれん草の苗Pを複数支持するものである。また、栽培プレート12は、例えば、液槽14の蓋であり、液槽14から取り外し自在である。この構成の場合、収穫時には、栽培プレート12が液槽14から取り外され、液槽14から取り外された状態で栽培プレート12からほうれん草を収穫できる。
栽培プレート12と液槽14とが一体の場合、栽培容器10の状態で、ほうれん草が収穫される。
栽培プレート12は、ほうれん草の苗Pの培地13を保持する複数の保持部12aと、各保持部12aの底12bに設けられた貫通孔12cとを有する。保持部12aは栽培プレート12の表面12d側に開口12eを有する。例えば、保持部12aはカップ状であり、保持部12aの開口12eから培地13が挿入されて保持される。開口12eは、例えば、栽培プレート12を表面12dから見た場合の輪郭形状が円形である。
【0017】
ほうれん草の苗Pにおいて、培地13の下面13bと養液Lの液面Lsとの距離δは0.5~2.5cmである。上述の距離δは0.5~1cmであることが好ましい。
上述の距離δが0.5~2.5cmであると、栽培面積当たりの収穫量が多く、栄養素も多くなる。
距離δが0.5cm未満では、ほうれん草の苗Pの根Prが養液Lに浸かりすぎて、根Prが不健康な状態となり、結果として栽培面積当たりの収穫量が少なくなり、かつ栄養素も少なくなる。
距離δが2.5cmを超えると、ほうれん草の苗Pの根Prが養液Lに十分に浸からずに根Prが枯れたりすることがおきる。
上述の培地13の下面13bと養液Lの液面Lsとの距離δは、養液Lが入った状態で栽培容器10の一部を部分的に切除して、養液Lがこぼれないようにして、培地13の下面13bと養液Lの液面Lsを露出させた状態で、定規、又はノギス等で測定される。
上述の培地13の下面13bと養液Lの液面Lsとの距離δは、培地13の下面13bの液面Lsに対する位置、及び養液Lの量のうち、少なくとも一方により調整できる。
【0018】
[ほうれん草の栽培方法]
以下、ほうれん草の栽培方法について説明する。
ほうれん草の栽培方法は、培地に保持されたほうれん草の苗に光を照射して、ほうれん草の苗の根が養液に浸かった状態で、水耕栽培方式にてほうれん草の苗を栽培する栽培方法である。
ほうれん草の栽培方法では、ほうれん草の苗の株密度が120~300(株/m2)であり、培地の下面と養液の液面との距離が0.5~2.5cmである。これにより、栽培面積当たりの収穫量が多く、栄養素が多いほうれん草を得ることができる。
【0019】
養液Lは、水等の溶媒に各種の養分を添加して溶解させ、育成対象の植物の種類に応じて各成分の濃度等が調整されたものである。養液L中の成分としては、窒素(具体的には、アンモニア性窒素、又は硝酸性窒素)、リン酸(P)、加里(KO)、石灰(CaO)、苦土(MgO)、マンガン(MnO)、ホウ素(B)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)及びモリブデン(Mo)等が挙げられる。
【0020】
図3に示すように、栽培容器10内の養液Lにほうれん草の苗Pの根Prが浸かった状態で、かつほうれん草の苗Pの葉茎部分が栽培容器10の外側に出た状態のほうれん草の苗Pを栽培容器10にて育成させる。以下では、栽培容器10内の養液Lにほうれん草の苗Pの根Prが浸かった状態でほうれん草の苗Pを栽培容器10にて育成させる期間が、ほうれん草の苗Pの育成期間である。
なお、ほうれん草の苗Pの育成期間中、ほうれん草の苗Pが配置された栽培容器10を、駆動装置(図示せず)によって回転又は揺動させてもよい。これにより、栽培容器10内の養液Lに流れが生じて養液Lが攪拌されるために、栽培容器10内において根Pr周辺での養液Lの濃度低下を抑えることができるので、ほうれん草の苗Pが根Prから養液L中の養分を適切に吸収するため、ほうれん草の苗Pを良好に育成させることができる。
また、ほうれん草の栽培では、養液Lの濃度が一定になるように制御することが好ましい。養液Lの濃度の制御については後に説明する。
【0021】
栽培容器10は、上述のように栽培プレート12と液槽14とで構成されており、栽培容器10の内部は、これらの壁によって囲まれて閉空間となっている。この閉空間内に養液Lが所定量溜められており、厳密には栽培容器10内で滞留している。ここで、養液Lが栽培容器10内で滞留しているとは、栽培容器10内で養液Lを循環させずに留めておくことを意味する。なお、栽培容器10内の養液Lがほうれん草の苗Pに吸収される分、及び、栽培容器10から自然に蒸発する分については許容することとする。
以上のように、栽培容器10内において養液Lが溜められる空間が閉空間となっていることで、養液Lへの光の照射に起因する藻の発生を良好に抑えることができる。
【0022】
栽培プレート12には、図3に示すように保持部12aが設けられており、保持部12aの開口12eは、例えば、栽培プレート12の表面12d側から見た場合の輪郭形状が円形である。保持部12aに開口12eから培地13が収納されて、ほうれん草の苗Pは培地13とともに保持部12aに保持される。培地13によりほうれん草の苗Pが安定して保持部12aに保持される。
【0023】
栽培容器10の形状については、図1に示す形状に限定されるものではない。栽培容器10のサイズについても、特に限定されるものではないが、収穫するために、例えば、人が運搬可能なサイズであることが好ましい。
栽培容器10の材料についても、特に限定されるものではないが、養液Lへの光の照射に起因する藻の発生を抑える目的から、可視光に対する透過率が10%以下である材料からなる栽培容器10(栽培プレート12及び液槽14)を用いて、ほうれん草の苗Pを育成することが好ましい。
栽培容器10(栽培プレート12及び液槽14)の材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタクリル樹脂(PMMA)、及びポリエチレンテレフタラート(PET)等のプラスチックが好ましい。
透過率は、公知の測定方法、例えば、積分球付きの分光光度計を用いた測定方法によって測定可能であり、具体的には、積分球の開口に測定対象の材料を配置し、測定光を開口から積分球内に入射させ、球内にて直進又は散乱した光を検出することで透過率を測定することができる。
【0024】
栽培容器10(栽培プレート12)の表面色についても、特に限定されるものではないが、栽培容器10にて光を反射させてほうれん草の苗Pの葉茎部分に効果的に光を照射する目的から、白色等のように光に対する反射能が比較的高い色が好ましい。また、透過率を下げることを優先する場合には、栽培容器10の表面色を黒、青、赤、緑及び黄色等とすること好ましく、栽培容器10の表面に対して、染料又は顔料によって光を吸収する加工がなされることが好ましい。
【0025】
栽培容器10の栽培プレート12には保持部12aが設けられており、ほうれん草の苗Pの根Pr(図3参照)が保持部12aの開口から栽培容器10の内部に入り込んで貫通孔12cを通って栽培容器10内の養液Lに浸かっている。
【0026】
より詳しく説明すると、ほうれん草の苗Pは培地13によって保持されている。培地13は、保持部材に相当し、ほうれん草の苗Pを保持する。培地13は、カップ状の保持部12aに収容されている。保持部12aの底12bには貫通孔12cが設けられており、貫通孔12cを通じて培地13の下面13bが露出している。ほうれん草の苗Pの根Prは、図3に示すように露出した培地13の下面13bから突出して延びている。培地13の下面13bから突出したほうれん草の苗Pの根Prが栽培容器10内の養液Lが浸っている。ほうれん草の苗Pの根Prが養液Lに浸かった状態で、ほうれん草の苗Pが栽培される。
他方、ほうれん草の苗Pの茎の基部(根に近い部分)が培地13内に埋まっており、培地13の上面の上方で、ほうれん草の苗Pの葉PLが展開している。培地13の上面よりも上側にある、ほうれん草の苗Pの葉の部分は、保持部12aの開口から栽培プレート12の外側に出ている。このような状態でほうれん草の苗Pが培地13に保持されている。
【0027】
培地13は、保持部12aの開口12eの入れやすいように、保持部12aよりも柔らかいもので構成されていることが好ましい。この場合、培地13は、例えば、ウレタン、ロックウール又はスポンジ等で構成される。
上述のように保持部12aの開口12eは、例えば、栽培プレート12を表面12dから見た場合の輪郭形状が円形である。培地13は、例えば、栽培プレート12を表面12dから見た場合の輪郭形状が四角である。保持部12aの開口12eに培地13を入れた場合、開口12eと培地13との間に隙間(図示せず)ができる。この隙間から、培地13の下面13bと養液Lの液面Lsとの間に空気が入り込むことができる。
【0028】
栽培容器10は、図1に示すように、複数のほうれん草の苗Pが間隔をあけて配置される。
図3に示すように、栽培容器10では、ほうれん草の苗Pを1個体、栽培するに当たり、1個の保持部12a(培地13)が用いられる。ここで、「個体」とは、ほうれん草の苗Pの個体数(本数)を表す単位であり、1個体とは、ほうれん草の苗Pの1本に相当する。なお、1個の保持部12a(培地13)を用いて栽培されるほうれん草の苗Pは、1個体であってもよく、2個体以上であってもよいが、1~5個体が好ましい。なお、1つの保持部12a(培地13)に、ほうれん草の苗Pが2個体以上ある場合でも、本発明では、1株として扱う。すなわち、本発明では、ほうれん草の苗Pの個体数によらず、1つの保持部12a(培地13)を1株とする。
【0029】
ほうれん草の栽培方法において、例えば、明期と、明期よりも暗い暗期とを備える栽培サイクルを有する。
本明細書において、「明期」とは、光合成が可能な程度の光強度条件下に植物が置かれる継続した期間を意味する。ここで、光合成が可能な程度の光強度条件としては、光強度(光合成光量子束密度)が、約100~1500μmol/(ms)の範囲にあることを例示できる。
また、「暗期」とは、自然条件下の夜に相当する期間であり、本明細書においては、明期以外の期間を意味する。具体的には、通常、光強度が0μmol/(ms)の条件下に植物が置かれる継続した期間を「暗期」とするが、例えば、ハウス内で栽培を行う場合には、月の影響等を考慮し、光強度が5μmol/(ms)以下の条件下に植物が置かれる継続した期間を「暗期」として例示できる。
【0030】
「栽培サイクル」は、連続する1回の明期と1回の暗期とを繰り返し単位として、上述の繰り返し単位が繰り返されることをいう。
なお、連続する1回の明期と1回の暗期との合計は、本明細書において特に断りのない場合、24時間である。この場合、繰り返し単位は24時間である。24時間が1日に対応する。
栽培サイクルは、明期と暗期との合計を100%とした場合、暗期の割合が40~60%であることが好ましく、暗期の割合が45~55%であることがより好ましい。すなわち、24時間のうち、暗期が9.6~14.4時間であることが好ましく、暗期が10.8~13.2時間であることがより好ましい。
上述のように、暗期の割合が40~60%であると、花芽がつきにくく、かつ、栽培日数が短くなる。
【0031】
また、明期及び暗期の温度は、25℃以下であることが好ましく、24℃以下であることがより好ましい。明期及び暗期の温度は25℃以下であると、病害の発生がしずらく、栽培効率も高くなる。
【0032】
光が照射されている期間(明期)と、光が照射されていない期間(暗期)とでは、光が照射されていない期間(暗期)の温度を、光が照射されている期間(明期)の温度よりも低くすることが好ましい。これにより、収穫したほうれん草の栄養素として、例えば、抗酸化物質としてのビタミンCが増加する。このようにして、栄養素が多いほうれん草を得ることができる。
暗期の温度を、光が照射されている明期の温度よりも低くすることにより、暗期においてストレスがかかるため、ビタミンCが増えると考えられる。
また、上述のようにストレスがかかることにより、肥料(養液)の吸収が低下する。これにより、収穫したほうれん草では、硝酸イオンの含有量の増加が抑制される。なお、硝酸イオン(窒素成分)は、「苦味」又は「えぐ味」を生じさせるものである。硝酸イオンの含有量が多いと「苦味」又は「えぐ味」を強く感じやすくなる。一方、硝酸イオンの含有量の増加が抑制されると、「苦味」又は「えぐ味」が低減される。
【0033】
上述の暗期が明期よりも温度が低いとは、明期と暗期との温度差が2℃以上あることをいう。明期と暗期との温度差は、3℃以上がさらに好ましく、4℃以上がよりさらに好ましく、栄養素が増える観点で5℃以上が最も好ましい。また、明期と暗期との温度差の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、18℃である。
また、暗期の温度は、25℃以下が好ましく、24℃以下がより好ましい。暗期の温度が25℃以下であれば、暗期においてストレスがかかるため、収穫したほうれん草の栄養素として、例えば、ビタミンCが増加する。このようにして、栄養素が多いほうれん草を得ることができる。
暗期の温度と明期の温度とは、室内栽培であれば、室内の温度である。路地栽培であれば、外気温である。いずれも温度計で測定できる。
暗期を明期よりも温度を低くする方法としては、例えば、栽培室の空調の設定温度を低くすることが挙げられる。
【0034】
栽培容器10の形状については、図3に示す形状に限定されるものではない。栽培容器10のサイズについても、特に限定されるものではないが、運搬可能なサイズであることが好ましい。栽培容器10の構造についても、特に限定されず、栽培プレート12を液槽14に対して分離可能としたが、栽培プレート12がそれ以外の部分から分離可能な構造でもよく、栽培プレート12とそれ以外の部分とが一体化した構造でもよい。また、開口12eの形状及び個体数についても、株密度が120~300株/mであれば、特に限定されるものではない。
【0035】
<栽培条件等>
水耕栽培方式では、栽培容器10に供給する養液の液温が10℃以上30℃以下であることが好ましく、18℃以上28℃以下が好ましく、20℃以上23℃以下がより好ましい。上述の液温内であれば、植物の根部の栄養吸収に障害が起き、生育が大幅に悪くなることを防止することができる。
養液の制御は、養液の電気伝導度(EC;Electric Conductivity)による濃度制御が一般的であり、養液の電気伝導度を養液濃度の目安として使用する。養液の電気伝導度(EC)が高すぎる場合は栄養過剰による形態異常や、根域の浸透圧ストレスによる生育量低下を引き起こすことがある。養液の電気伝導度(EC)は0.8dS/m~2.7dS/mであることが好ましく、1.0dS/m~2.4dS/mであることがより好ましい。また、ほうれん草の成長促進の点から、養液のpHを5以上7以下で栽培することが好ましい。
養液の電気伝導度の制御方法としては、例えば、養液の電気伝導度(EC)を測定して、測定値が電気伝導度(EC)の目標値を0.1下回ったら濃度の濃い養液(液体肥料)を目標値になるまで加え、測定値が電気伝導度(EC)の目標値を0.1上回ったら水を目標値になるまで加えた。
【0036】
水耕栽培方式を、ビニールハウス等の室内で行う場合、室内温度は、一般的な植物の水耕栽培方式を行う温度であり、10℃以上30℃以下が好ましく、15℃以上25℃以下がより好ましく、20℃以上23℃以下がさらに好ましい。
室内の相対湿度は一般的な植物の水耕栽培方式を行う相対湿度であり、40%以上90%以下が好ましく、50%以上80%以下がより好ましく、65%以上75%以下がさらに好ましい。
【0037】
植物群落内の相対湿度は密植されていない状態では、上述のように相対湿度65%以上75%以下に調整することが好ましい。一方、植物が成長してくると密植状態になるため植物群落内の相対湿度が非常に高くなる。そのため、植物群落内の相対湿度は、好ましくは50%以上95%以下、より好ましくは60%以上80%以下、さらに好ましくは65%以上75%以下に維持する。
【0038】
植物の成長を促進するために、炭酸ガス濃度を高めることも好適に用いられる。炭酸ガス濃度は経済性及び生育への好影響の観点から、400体積ppm以上1600体積ppm以下が好ましい。より好ましくは600体積ppm以上1400体積ppm以下であり、さらに好ましくは700体積ppm以上1300体積ppm以下である。低すぎる場合は栄養不足による生育量低下を引き起こすことがある。
【0039】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のほうれん草の栽培方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例0040】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の例に示す材料、試薬、物重量とその割合、及び、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の例に限定されるものではない。
【0041】
以下、本発明のほうれん草の栽培方法ついて、より具体的に説明する。
以下の条件で育苗したほうれん草の苗に対して光照射を行い、水耕栽培方式にて栽培した。
ほうれん草の種子を、培地として市販の水耕栽培方式用ウレタンスポンジに一穴1粒で播種し、1日間の暗期処理後に光強度140μmol/(m2s)の白色蛍光灯下において日照16時間/日で播種から15日間育苗を行った。養液は播種後3日目から水で潅水し、播種後7日目からは大塚A処方(葉菜類用栽培養液、OATアグリオ株式会社)から調製した養液の電気伝導度(EC)=1.2dS/m、pH=6.0で潅水した。
【0042】
[例1]
上述の方法で播種から15日間かけて育苗したほうれん草の苗を、栽培容器(パネル)に定植し、播種後31日間(定植後16日間)栽培した。例1は、1つの培地に、ほうれん草の苗が1個体ある。
なお、栽培プレートの外形は長方形であり、栽培プレートのサイズは1200mm(縦)×600mm(横)である。すなわち、栽培プレートのサイズは、図1に示すY方向の長さLyが1200mmであり、X方向の長さLxが600mmである。
例1では、培地の下面と養液の液面との距離δ(図3参照)を1.0cmとした。
栽培は、室内で行い、明期の温度を23℃、暗期の温度を16℃とし、相対湿度は70%、炭酸ガス濃度は1000体積ppmに設定した。また、養液は養液循環装置により制御し、養液の電気伝導度(EC)=1.2dS/m、pH=6.0、養液の温度を22℃に設定し、ほうれん草の苗の株密度を97株/m2として、合計70株定植した。
【0043】
定植後、以下の条件で光照射を行った。
光源に、白色光源(人工光)として菱電商事株式会社製PGL-NE-200NWBを用いた。
光の光量子束密度を250μmol/(m2s)とした。光量子束密度は、LI-COR製光量子計LI-250Aを用いて測定した。
また、栽培サイクルとしては、24時間を1サイクルとし、明期を12時間、暗期を12時間とした。
【0044】
例1では、定植後16日目の収穫サイズに達したほうれん草を収穫し、1パネル当たりのほうれん草の総重量を測定した。また、1つのパネルのほうれん草の株数で、1パネル当たりのほうれん草の総重量を除して、1株当たり(1つの培地当たり)のほうれん草の重量を求めた。
【0045】
[例2]
例2は、例1に比して、ほうれん草の苗の株密度を149株/m2として、合計107株定植した以外は、例1と同じとした。
[例3]
例3は、例1に比して、ほうれん草の苗の株密度を167株/m2として、合計120株定植した以外は、例1と同じとした。
[例4]
例4は、例1に比して、ほうれん草の苗の株密度を206株/m2として、合計148株定植した以外は、例1と同じとした。
[例5]
例5は、例1に比して、ほうれん草の苗の株密度を222株/m2として、合計160株定植した以外は、例1と同じとした。
【0046】
[例6]
例6は、例1に比して、ほうれん草の苗の株密度を278株/m2として、合計200株定植した以外は、例1と同じとした。
[例7]
例7は、例4に比して、上述の養液の電気伝導度(EC)を0.7dS/mとした以外は、例4と同じとした。
[例8]
例8は、例4に比して、上述の養液の電気伝導度(EC)を2.2dS/mとした以外は、例4と同じとした。
[例9]
例9は、例4に比して、上述の養液の電気伝導度(EC)を3.0dS/mとした以外は、例4と同じとした。
【0047】
[例10]
例10は、例4に比して、上述の距離δを0cmとした以外は、例4と同じとした。
[例11]
例11は、例4に比して、上述の距離δを2cmとした以外は、例4と同じとした。
[例12]
例12は、例4に比して、上述の距離δを3cmとした以外は、例4と同じとした。
[例13]
例13は、例4に比して、上述の明期の温度を26℃とした以外は、例4と同じとした。
[例14]
例14は、例4に比して、上述の明期の温度を20℃とした以外は、例4と同じとした。
[例15]
例15は、例4に比して、上述の暗期の温度を23℃とした以外は、例4と同じとした。
【0048】
[例16]
例16は、例4に比して、上述の暗期の時間を9時間とし、暗期の割合を38%にした以外は、例4と同じとした。
[例17]
例17は、例4に比して、上述の明期の時間を9時間とした以外は、例4と同じとした。
[例18]
例18は、例4に比して、上述の水耕栽培方式用ウレタンスポンジ(培地)に一穴2粒で播種し、1つの培地にほうれん草の苗を2個体設けた以外は、例4と同じとした。
[例19]
例19は、例4に比して、上述の水耕栽培方式用ウレタンスポンジ(培地)に一穴3粒で播種し、1つの培地にほうれん草の苗を3個体設けた以外は、例4と同じとした。
[例20]
例20は、例4に比して、上述の水耕栽培方式用ウレタンスポンジ(培地)に一穴4粒で播種し、1つの培地にほうれん草の苗を4個体設けた以外は、例4と同じとした。
[例21]
例21は、例4に比して、上述の水耕栽培方式用ウレタンスポンジ(培地)に一穴5粒で播種し、1つの培地にほうれん草の苗を5個体設けた以外は、例4と同じとした。
[例22]
例22は、例1に比して、ほうれん草の苗の株密度を320株/m2として、合計230株定植した以外は、例1と同じとした。
【0049】
例1~22について、収穫時に、ほうれん草の根の状態を目視にて観察した。観察の結果を下記根の評価基準で評価した。その結果を下記表1に示す。
根の評価基準
A:根が白い
B:根がうすい褐色
C:根が茶色い
D:根が枯れている。
【0050】
例1~22について、収穫したほうれん草の1株の重量と、栽培面積当たりの重量とを測定した。その結果を下記表1に示す。
収穫したほうれん草の1株の重量は、秤を用いて測定した。
栽培面積当たりの重量については、まず、栽培プレートの総重量を計測し、栽培プレートの総重量から、予め測定しておいた栽培プレートの重量及び培地の重量を引いて、ほうれん草全体の重量を得た。このほうれん草全体の重量を栽培面積(1m)に換算して、栽培面積当たりの重量を求めた。
栽培面積当たりの重量の測定結果を下記栽培面積当たりの重量の評価基準で評価した。その結果を下記表1に示す。
栽培面積当たりの重量の評価基準
A:6000g/m以上(6kg/m以上)
B:5000g/m以上6000g/m未満(5kg/m以上6kg/m未満)
C:5000g/m未満(5kg/m未満)
【0051】
例1~22について、収穫したほうれん草のビタミンCの含有量を求めた。収穫したほうれん草のビタミンCの含有量は、RQフレックス(メルク株式会社製)を用いて測定した。その結果を下記表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示す例1~22において、株密度が120~300(株/m2)であり、培地の下面と養液の液面との距離δが0.5~2.5cmにある例2~9、11、13~21は、例1、10及び12に比して、栽培面積当たりの収穫量が多く、さらにはビタミンCの含有量が多く、栄養素が多かった。
例1は、株密度が120(株/m2)未満であり、栽培面積当たりの収穫量が少なかった。
例22は、株密度が300(株/m2)を超えており、1株毎の重量が小さく収穫量が少なかった。また、根の色も茶色であり、根の状態が悪い。
例10は、距離δが0.5cm未満であり、結果として栽培面積当たりの収穫量が少なくなり、かつ栄養素(ビタミンCの含有量)も少なかった。
例12は、距離δが2.5cmを超えており、ほうれん草の苗の根が養液Lに十分に浸からずに根が枯れた。結果として栽培面積当たりの収穫量が少なかった。また、例12は根の状態が悪くビタミンCの含有量を測定しなかった。
【0054】
例4と例7~9とを比較すると、養液の電気伝導度(EC)が好ましい範囲にある例4は栽培面積当たりの収穫量が多く、栄養素(ビタミンCの含有量)も多かった。
例4と例13及び14とを比較すると、明期の温度が低い方が栄養素(ビタミンCの含有量)が多かった。
例4と例15とを比較すると、暗期の温度が低い方が、ビタミンCの含有量が多い。
例4と例16及び例17とを比較すると、暗期の時間が短い方が栽培面積当たりの収穫量が多かった。
例4と例18~21とを比較すると、ほうれん草の苗の個体数が多い方が1株毎の重量が多く収穫量が増えた。
【符号の説明】
【0055】
10 栽培容器
11 表面
12 栽培プレート
12a 保持部
12b 底
12c 貫通孔
12d 表面
12e 開口
13 培地
13b 下面
14 液槽
15 底部
Dx、Dy 間隔
L 養液
Ls 液面
Lx、Ly 長さ
P 苗
PL 葉
Pr 根
図1
図2
図3