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  • 特開-雄型係合部材及び雄型スナップボタン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013901
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】雄型係合部材及び雄型スナップボタン
(51)【国際特許分類】
   A44B 17/00 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A44B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116318
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】397004836
【氏名又は名称】武田精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】武田 一寿
【テーマコード(参考)】
3B100
【Fターム(参考)】
3B100CB02
3B100CC01
(57)【要約】
【課題】雌雄のスナップボタンを取り付けるシート間の距離の縮小を図りながら、スナップファスナー取付け機を用いたシートへの取付けをも可能とする雄型係合部材及び雄型スナップボタンを提供すること。
【解決手段】雌型スナップボタン1の係合雌部5に着脱自在に係合する係合雄部14を有する雄型スナップボタン11を構成する雄型係合部材12であって、一端側に前記係合雄部14が、他端側にかしめ用突起15がそれぞれ設けられ、前記係合雄部14は一端側に向かって開放された凹入空間14aを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌型スナップボタンの係合雌部に着脱自在に係合する係合雄部を有する雄型スナップボタンを構成する雄型係合部材であって、
一端側に前記係合雄部が、他端側にかしめ用突起がそれぞれ設けられ、前記係合雄部は一端側に向かって開放された凹入空間を有する雄型係合部材。
【請求項2】
請求項1に記載の雄型係合部材と、該雄型係合部材の前記かしめ用突起がかしめ止めされる保持部材とを具備する雄型スナップボタン。
【請求項3】
前記保持部材が、雄型スナップボタンの係合雄部に係合する係合雌部又は雌型スナップボタンの係合雌部に係合する係合雄部を有する請求項1に記載の雄型スナップボタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スナップファスナーを構成する相互に係脱自在な雌雄のスナップボタンのうちの雄型スナップボタンと、雄型スナップボタンを構成する雄型係合部材とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の合成樹脂製スナップファスナーとして、図4図5(A)に示すように、相互に係脱自在である雌型スナップボタン1及び雄型スナップボタン51を備えたものが知られている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
雌型スナップボタン1は、雌型係合部材(ソケット、バネとも呼ばれる)2と、これを保持する雌側の保持部材(ヘッド、アタマ、リベットとも呼ばれる)3とを有する。雌型係合部材2は、リング板状の基板4の外縁から略筒状の係合雌部5をその一面側に突出させ、その突出方向先端側には外向きフランジ6を連設し、外向きフランジ6の外縁には折り返し部7を設けて構成してある。保持部材3は、略円板状を呈する頭部8の一面側中央部にかしめ用突起9を突設して構成してある。
【0004】
このように構成した雌型スナップボタン1は、例えば衣服や小物を構成する生地等であるシートS1に刺し通したかしめ用突起9を基板4の中央開口4aに挿入した状態で、かしめ用突起9の先端側に打撃を加えて拡径変形させ、かしめ用突起9を基板4にかしめ止めすることにより、シートS1に取り付けられる。
【0005】
一方、雄型スナップボタン51は、雄型係合部材(スタッド、ゲンコとも呼ばれる)52と、これを保持する雄側の保持部材(ポスト、ホソ、リベットとも呼ばれる)53とを有する。雄型係合部材52は、略円板状の基板54の一面側に、基板54よりも小径である略筒状の係合雄部55を同心状に突出させて構成してある。保持部材53は、略円板状を呈する頭部56の一面側中央部にかしめ用突起57を突設して構成してある。
【0006】
このように構成した雄型スナップボタン51は、例えば衣服や小物を構成する生地等であるシートS2に刺し通したかしめ用突起57を、基板54の中央に設けた中央開口54aに挿入した状態で、かしめ用突起57の先端側に打撃を加えて拡径変形させ、かしめ用突起57を基板54にかしめ止めすることにより、シートS2に取り付けられる。なお、中央開口54aは係合雄部55よりも小径としてある。
【0007】
そして、シートS1に取り付けた雌型スナップボタン1の係合雌部5内に、シートS2に取り付けた雄型スナップボタン51の係合雄部55を進入させることにより、係合雌部55は係合雄部5に離脱可能に係合する。なお、この係合のための構造は種々のものがあり、例えば、係合雌部5の内周面に設けたその開放端(外向きフランジ6)側ほど小径となる部位に、係合雄部55の外周面に設けたその先端側(基板54から遠ざかる)ほど大径となる部位が係合するものや、係合雌部5の内周面に設けた内向きに膨出する膨出部に、係合雄部55の外周面に設けた外向きに膨出する膨出部が係合するもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4725738号公報
【特許文献2】実用新案登録第3186877号公報
【特許文献3】特許第4706843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記従来のスナップファスナーでは、図5(A)に示すように、両スナップボタン1、51(係合雌部5、係合雄部55)を係合させたときに、雌型スナップボタン1を取り付けてあるシートS1と、雄型スナップボタン51を取り付けてあるシートS2との間には、雌型係合部材2及び雄型係合部材52が存在するので、両シートS1,S2は必ず離れることになる。そして、例えば、両シートS1,S2が衣服の生地である場合、両シートS1,S2間の距離Dが大きいと、衣服内に着用している下着等がその隙間から見えてしまう懸念がある。
【0010】
そこで、雄型係合部材52の基板54において係合雄部55よりも外周側に延びる鍔部54bを無くし、図5(B)に示すように構成すれば、鍔部54bが両シートS1,S2の接近を妨げなくなるので、距離Dを小さくすることができる。しかし、この場合、例えば特許文献3に示されているようなスナップファスナー取付け機を用いて雄型スナップボタン51をシートS2に取り付けることができなくなる恐れがある。
【0011】
すなわち、上記スナップファスナー取付け機は、図6に示すように、受け台58上に保持部材53を載置し、打込み具59のチャック60で雄型係合部材52を保持し、受け台58と打込み具59の間に衣服の端縁などのシートS2を配した状態で打込み具59を下降させる。このとき、チャック60はガイドパンチ61と共に雄型係合部材52の鍔部54aを挟持した状態で下降するのであり、やがて、保持部材53のかしめ用突起57は、シートS2を貫通し、雄型係合部材52の中央開口54aを経てその上方に一部が突出した状態となる。そして、この状態のかしめ用突起57の先端部をかしめパンチ62で打撃して拡径変形させると、雄型係合部材52と保持部材53とはシートS2を挟んだ状態でかしめ止めされ、つまりはシートS2に取り付けられた状態になる。
【0012】
そのため、図5(B)に示すように鍔部54bを無くすと、打込み具59(チャック60とガイドパンチ61)によって雄型係合部材52を保持することができず、シートS2への雄型スナップボタン51の取付けが不可能になる恐れがある。
【0013】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、雌雄のスナップボタンを取り付けるシート間の距離の縮小を図りながら、スナップファスナー取付け機を用いたシートへの取付けをも可能とする雄型係合部材及び雄型スナップボタンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る雄型係合部材は、雌型スナップボタンの係合雌部に着脱自在に係合する係合雄部を有する雄型スナップボタンを構成する雄型係合部材であって、一端側に前記係合雄部が、他端側にかしめ用突起がそれぞれ設けられ、前記係合雄部は一端側に向かって開放された凹入空間を有する(請求項1)。
【0015】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る雄型スナップボタンは、請求項1に記載の雄型係合部材と、該雄型係合部材の前記かしめ用突起がかしめ止めされる保持部材とを具備する(請求項2)。
【0016】
上記雄型スナップボタンにおいて、前記保持部材が、雄型スナップボタンの係合雄部に係合する係合雌部又は雌型スナップボタンの係合雌部に係合する係合雄部を有していてもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では、雌雄のスナップボタンを取り付けるシート間の距離の縮小を図りながら、スナップファスナー取付け機を用いたシートへの取付けをも可能とする雄型係合部材及び雄型スナップボタンが得られる。
【0018】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の雄型係合部材では、従来の雄型係合部材が有する鍔部を無くすことができ、これにより、雌雄のスナップボタンを取り付けるシートどうしの接近を鍔部が妨げなくなるので、シート間の距離の縮小を図ることができる。しかも、係合雄部に設けた凹入空間を雄型係合部材の保持に利用することにより、スナップファスナー取付け機を用いたシートへの取付けが可能となる。
【0019】
請求項3に係る発明の雄型スナップボタンでは、保持部材が有する係合雄部又は係合雌部を、他の雌型又は雄型のスナップボタンに着脱自在に係合させることができるので、その用途の拡大にも資するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態に係る雄型スナップボタンを含むスナップファスナーの構成部材を説明する斜視図である。
図2】(A)は使用状態の前記スナップファスナーの縦断端面図、(B)及び(C)は各々前記スナップファスナーの変形例の縦断端面図である。
図3】スナップファスナー取付け機を用いて図1に示す雄型スナップボタンを取り付ける方法を示す縦断端面図である。
図4】従来の雄型スナップボタンを含むスナップファスナーの構成部材を説明する斜視図である。
図5】(A)は使用状態の前記従来のスナップファスナーの縦断端面図、(B)は前記従来のスナップファスナーの仮想変形例の縦断端面図である。
図6】スナップファスナー取付け機を用いて図4に示す従来の雄型スナップボタンを取り付ける方法を示す縦断端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0022】
図1図2(A)に示すスナップファスナーは合成樹脂製(本例ではポリエステル製であるが、これに限らず、ポリブチレンテレフタレートやポリアセタール製等であってもよい)であり、相互に係脱自在である雌型スナップボタン1及び雄型スナップボタン11を備える。なお、図1図2(A)に示す雌型スナップボタン1は、上述した図4図5(A)に示す雌型スナップボタン1と同一であり、その説明は同じ内容の繰り返しになるため省略する。
【0023】
雄型スナップボタン11は、雄型係合部材12と、これを保持する雄側の保持部材13とを有する。
【0024】
雄型係合部材12は、一端側に略筒状の係合雄部14が、他端側にかしめ用突起15がそれぞれ設けられている。具体的には、略円板状の基板16の周縁部からその一面側に係合雄部14を突出させるとともに、基板16の他面側中央部にかしめ用突起15を突設してある。そして、このように構成した雄型係合部材12では、係合雄部14は一端側に向かって開放された凹入空間14aを有することになる。
【0025】
また、保持部材13は、略円板状の基板17の一面側の周縁部から径外方向に向かって延びる外向きフランジ18を設けて構成してある。
【0026】
このように構成した雄型スナップボタン11は、例えば衣服や小物を構成する生地等であるシートS2に刺し通したかしめ用突起15を、基板17の中央に設けた中央開口17aに挿入した状態で、かしめ用突起15の先端側に打撃を加えて拡径変形させ、かしめ用突起15を基板17(保持部材13)にかしめ止めすることにより、シートS2に取り付けられる。
【0027】
そして、図2(A)に示すように、シートS1に取り付けた雌型スナップボタン1の係合雌部5内に、シートS2に取り付けた雄型スナップボタン11の係合雄部14を進入させることにより、係合雌部14は係合雄部5に離脱可能に係合する。なお、この係合のための構造は種々のものが考えられ、例えば、係合雌部5の内周面に設けたその開放端(外向きフランジ6)側ほど小径となる部位に、係合雄部14の外周面に設けたその先端側(基板16から遠ざかる)ほど大径となる部位が係合するものや、係合雌部5の内周面に設けた内向きに膨出する膨出部に、係合雄部14の外周面に設けた外向きに膨出する膨出部が係合するもの等であってもよい。
【0028】
上記のように構成した本例の雄型スナップボタン11(雄型係合部材12)では、従来の雄型係合部材52が有する鍔部54b(図4図5(A)参照)を無くすことができ、これにより、雌雄のスナップボタン1、11を取り付けるシートS1,S2どうしの接近を鍔部54bが妨げなくなるので、シートS1,S2間の距離D(図5(A)参照)の縮小を図ることができる。
【0029】
しかも、図5(B)に示す例では、雌雄のスナップボタン1,51を係合させたときに、かしめ用突起57がシートS1,S2間でかしめ用突起9に対向するので、このかしめ用突起57が距離Dの縮小を妨げる要因になり得るが、本例では、図2(A)に示すように、雌雄のスナップボタン1,11を係合させたときに、かしめ用突起15の拡径変形した先端部はシートS1,S2間に収まらずその外側に露出することになるので、かしめ用突起15が距離Dの縮小を妨げ難いという利点もある。加えて、かしめ用突起9の拡径変形した先端部は係合雄部14の凹入空間14a内に収まるようにしてあることから、本例の雄型係合部材12(雄型スナップボタン11)は距離Dの縮小化に極めて有効であるといえる。
【0030】
また、図3に示すように、雄型係合部材12を受け台58上に載置し、この際、係合雄部14に設けた凹入空間14a内に進入する保持部58aを受け台58に設け、凹入空間14aを受け台58による雄型係合部材12の保持に利用しつつ、保持部材13をチャック60で保持させることにより、スナップファスナー取付け機を用いて雄型スナップボタン11をシートS2に取り付けることができる。なお、このスナップファスナー取付け機を用いて雄型スナップボタン11をシートS2に取り付ける方法の詳細は、図6を用いて説明したスナップファスナー取付け機を用いて雄型スナップボタン51をシートS2に取り付ける方法と同様であり、繰り返しを避けるため、その説明を省略する。
【0031】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。
【0032】
例えば、図2(A)に示す保持部材13が、雄型スナップボタンの係合雄部に係合する係合雌部又は雌型スナップボタンの係合雌部に係合する係合雄部を有するようにしてもよい。具体的に例示すれば、図2(B)に示すように、保持部材13が、雌型係合部材2と同様の構成を有するようにしてもよいし、図2(C)に示すように、保持部材13が、雄型係合部材52(図4図5(A)参照)と同様の構成を有するようにしてもよい。このように構成すれば、保持部材13が有する係合雄部又は係合雌部を、他の雌型又は雄型のスナップボタンに着脱自在に係合させることができるので、その用途の拡大にも資するものとなる。
【符号の説明】
【0033】
1 雌型スナップボタン
2 雌型係合部材
3 保持部材
4 基板
4a 中央開口
5 係合雌部
6 外向きフランジ
7 折り返し部
8 頭部
9 かしめ用突起
11 雄型スナップボタン
12 雄型係合部材
13 保持部材
14 係合雄部
14a 凹入空間
15 かしめ用突起
16 基板
17 基板
17a 中央開口
18 外向きフランジ
51 雄型スナップボタン
52 雄型係合部材
53 保持部材
54 基板
54a 中央開口
54b 鍔部
55 係合雄部
56 頭部
57 かしめ用突起
58 受け台
58a 保持部
59 打込み具
60 チャック
61 ガイドパンチ
62 かしめパンチ
D 距離
S1 シート
S2 シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6