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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139012
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】火災感知端末
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/06 20060101AFI20241002BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G08B17/06 K
G08B17/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049772
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山納 正人
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AA03
5C085AC03
5C085CA30
5C085FA11
5C085FA13
5C085FA21
5G405AA01
5G405AB01
5G405AB02
5G405CA55
5G405CA60
5G405FA06
5G405FA07
5G405FA08
(57)【要約】
【課題】既存の感知器ベースをそのまま活用して同じ種類の感知器のみが取り付けられるようにする。
【解決手段】感知器設置用ベースとガイド片を有する感知器本体とからなる火災感知端末において、感知器本体は取り付けまたは取り外し可能な第1角度位置に対応するガイド片の形成位置および回転動作により感知器本体が感知器設置用ベースに固定される第2角度位置に対応するガイド片の形成位置が感知器の種類ごとに異なるように設定され、感知器設置用ベースは、感知器本体が取り付けられる際にガイド片が係合されかつ第1角度位置に対応するガイド片の位置から第2角度位置に対応するガイド片の位置に至る範囲にガイド片の高さよりも深い切欠き部を有する回転規制手段が設けられており、回転規制手段は第1種類の感知器本体における切欠き部の範囲が第2種類の感知器本体における切欠き部とは異なる範囲に形成されることで非重複範囲を有するようにした。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状の溝を外縁部に有し取付け面に固定可能な感知器設置用ベースと、
回転動作により前記感知器設置用ベースに取り付け可能であり、検出対象に応じて検出手段が異なる種類ごとに外縁部の異なる位置に回転の際の案内部材となるガイド片を有する感知器本体と、からなる火災感知端末であって、
前記感知器本体は、取り付けまたは取り外し可能な第1角度位置に対応する前記感知器設置用ベースにおける前記ガイド片の形成位置および回転動作により前記感知器本体が前記感知器設置用ベースに固定される第2角度位置に対応する前記感知器設置用ベースにおける前記ガイド片の形成位置が、前記種類ごとに異なるように設定され、
前記感知器設置用ベースは、前記感知器本体が取り付けられる際に前記ガイド片が前記溝に係合され、かつ前記第1角度位置に対応する前記ガイド片の位置から前記第2角度位置に対応する前記ガイド片の位置に至る範囲に前記ガイド片の高さよりも深い切欠き部を有するとともに前記溝の幅よりも小さな厚みを有し前記溝に対応して円弧状をなす板状の回転規制手段が前記溝に収納されており、
前記回転規制手段は、第1種類の感知器本体における前記切欠き部の範囲が第2種類の感知器本体における前記切欠き部とは異なる範囲に形成されることで、非重複範囲を有するように設定されている
ことを特徴とした火災感知端末。
【請求項2】
前記回転規制手段は、弾性変形または塑性変形が可能な板状部材であり、火災感知器本体の前記種類に応じて異なる位置に前記切欠き部が位置するように表裏が決定されて前記溝に収納されていることを特徴とした請求項1に記載の火災感知端末。
【請求項3】
前記ガイド片は、回転方向と直交する方向にスリットが設けられることで複数個の爪を有するように形成されており、感知器本体の前記種類に応じて前記複数個の爪のうちいずれか異なる位置の爪が切り離されていることを特徴とした請求項1または2に記載の火災感知端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器と感知器設置用のベースとからなる火災感知端末に関し、特にそれぞれの設置場所において特定種類(検出方式)の感知器のみを設置可能とする火災感知端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災感知器には、煙を感知して火災を検出する煙感知器や熱を感知して火災を検出する熱感知器、炎を感知して火災を検出する赤外線式火災感知器等があり、これらの感知器は一般に、感知器設置用ベース(以下、感知器ベースと称する)を介して建造物の天井面等に設置されている。
また、感知器ベースには、感知器本体の種類(煙、熱ほか)が異なっても取り付けることができるようにするため、感知器本体との接合面に工夫がされているものがある。
【0003】
しかし、感知器ベースを複数種類の感知器に対して共通に使用できるようにすると、部品の共通化によるコスト低減のメリットがある一方、感知器の設置工事の際あるいは感知器の交換作業時や点検時に、一旦取り外した感知器本体を再度ベースに取り付ける際に、種類を間違えて設置してしまうおそれがある。そして、誤った種類の感知器が取り付けられると、期待される条件で火災発生の検出動作をすることができないため、誤報(非火災報)や失報の発生につながりかねない。
例えばオフィスビルの窓際など、温度上昇が頻繁に発生する場所において煙感知器が設置されているにも関わらず、交換作業時に熱感知器が誤って取り付けられると容易に非火災報(誤報)が発生するおそれがある。
【0004】
従来、感知器の設置工事の際における誤った種類の感知器の取付けを防止する技術として、ベースの側に感知器の種類に応じた複数のネジ穴を用意しておき、設置時に施工図面に従い取り付けられるべき感知器の種類に応じたネジ穴を選択してネジを取り付けるようにした技術がある(例えば特許文献1)。
この先行技術によれば、感知器本体に種類に応じて楕円~弧型の穴が空けられていて、ベースに取り付けられたネジの穴が正しければネジが邪魔にならずに嵌め込むことが可能であり、感知器本体を回転させて固定することができるようになる。そのため、最初の設置工事の際に正しくネジ穴と感知器本体の種類の組み合わせを選んでおけば、以後は異なる種類の感知器本体をベースに取り付けることができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭57-7101号公報(実開昭54-120395号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された技術にあっては、最初に感知器を建造物に設置する場合、つまり新築の建造物に感知器を設置する場合は有用であるが、感知器が設置された既設の建造物に適用する場合には、先行技術の感知器ベースに交換する必要があるため、コストアップを招く。また、設置時に施工図面を確認しながら、取り付けられるべき感知器の種類に応じたネジ穴を選択してネジを取り付ける必要があるため、作業効率が悪いという課題がある。
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、既存の感知器ベースをそのまま活用して同じ種類の感知器のみが取り付けられるようにすることができる火災感知端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、
円弧状の溝を外縁部に有し取付け面に固定可能な感知器設置用ベースと、
回転動作により前記感知器設置用ベースに取り付け可能であり、検出対象に応じて検出手段が異なる種類ごとに外縁部の異なる位置に回転の際の案内部材となるガイド片を有する感知器本体と、からなる火災感知端末において、
前記感知器本体は、取り付けまたは取り外し可能な第1角度位置に対応する前記感知器設置用ベースにおける前記ガイド片の形成位置および回転動作により前記感知器本体が前記感知器設置用ベースに固定される第2角度位置に対応する前記感知器設置用ベースにおける前記ガイド片の形成位置が、前記種類ごとに異なるように設定され、
前記感知器設置用ベースは、前記感知器本体が取り付けられる際に前記ガイド片が前記溝に係合され、かつ前記第1角度位置に対応する前記ガイド片の位置から前記第2角度位置に対応する前記ガイド片の位置に至る範囲に前記ガイド片の高さよりも深い切欠き部を有するとともに前記溝の幅よりも小さな厚みを有し前記溝に対応して円弧状をなす板状の回転規制手段が前記溝に収納されており、
前記回転規制手段は、第1種類の感知器本体における前記切欠き部の範囲が第2種類の感知器本体における前記切欠き部とは異なる範囲に形成されることで、非重複範囲を有するように設定されているようにしたものである。
【0008】
上記のような構成を有する火災感知端末によれば、取り付ける感知器本体の種類に応じて、切欠き部の範囲が異なる回転規制手段を感知器設置用ベースの外縁部の溝に係合させることによって、既存の感知器設置用ベースをそのまま活用して同じ種類の感知器のみが取り付けられるようにすることができる。
【0009】
ここで、望ましくは、前記回転規制手段は、弾性変形または塑性変形が可能な板状部材であり、火災感知器本体の前記種類に応じて異なる位置に前記切欠き部が位置するように表裏が決定されて前記溝に収納されているようにする。
かかる構成によれば、回転規制手段が変形可能であるため、表裏を変えて感知器設置用ベースの外縁部の溝に係合させることによって、異なる検出手段を有する2種類の感知器本体のいずれか一方の種類の感知器本体のみを感知器設置用ベースに取付け可能にすることができる。従って、回転規制手段を1種類用意しておけば良い。
【0010】
前記回転規制手段は、剛性材料で形成された円弧状をなす板状部材であり、火災感知器本体の前記種類に応じて異なる範囲に前記切欠き部が設けられているものが前記溝に収納されているようにしても良い。
【0011】
また、前記ガイド片は、回転方向と直交する方向にスリットが設けられることで複数個の爪を有するように形成されており、感知器本体の前記種類に応じて前記複数個の爪のうちいずれか異なる位置の爪が切り離されているようにしても良い。
かかる構成によれば、既存の火災感知器に複数の爪を有するガイド片が底板に形成されているものがある場合に、既存の火災感知器の構成を変更することなく異なる検出手段を有する複数種類の感知器本体のいずれか一の種類の感知器本体のみを感知器設置用ベースに取付け可能にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る火災感知端末によれば、既存の感知器ベースをそのまま活用して同じ種類の感知器のみが取り付けられるようにすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の火災感知端末を構成する感知器ベースの構成例を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態の火災感知端末を構成する感知器本体の底壁裏面の構成例を示す斜視図である。
図3】実施形態の火災感知器本体の底壁裏面に設けられるガイド片の構成例を示す側面図である。
図4】実施形態の感知器ベースの周縁部の溝に挿入される回転規制手段の構成例を示すもので、(A)は1の種類の感知器用回転規制手段の側面図、(B)は他の種類の感知器用回転規制手段の側面図である。
図5図4(A)に示す回転規制手段を備えた感知器ベースに第1の種類の感知器本体を嵌合する様子を示すもので、(A)は第1の種類の感知器本体を嵌合する前の状態を示す側面図、(B)は第1の種類の感知器本体を嵌合して回転させた状態を示す側面図、(C)は第2の種類の感知器本体と感知器ベースとの関係を示す側面図である。
図6図4(B)に示す回転規制手段を備えた感知器ベースに第2の種類の感知器本体を嵌合する様子を示すもので、(A)は第2の種類の感知器本体を嵌合する前の状態を示す側面図、(B)は第2の種類の感知器本体を嵌合して回転させた状態を示す側面図、(C)は第1の種類の感知器本体と感知器ベースとの関係を示す側面図である。
図7】実施形態の変形例の火災感知端末に設けるガイド片と回転規制手段の構成を示すもので、(A)は第3の種類の感知器本体を嵌合する前の状態を示す側面図、(B)は第3の種類の感知器本体を嵌合して回転させた状態を示す側面図、(C)は第1の種類の感知器本体と感知器ベースとの関係を示す側面図、(D)は第2の種類の感知器本体と感知器ベースとの関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る火災感知端末の実施形態について図面を参照しながら説明する。
本発明に係る火災感知端末は、火災感知器本体(以下、感知器本体と記す)と感知器設置用ベース(感知器ベース)とにより構成される。図1は、本実施形態の火災感知端末を構成する感知器ベース10の構成を、図2図1の感知器ベース10に結合される感知器本体20の底板の構成を示す。
なお、上記感知器ベース10に取り付けられる感知器本体20は、温度センサ(例えば、サーミスタ)を備えた熱感知器、光電素子を備えた煙感知器、赤外線センサを備えた炎感知器などどのような検知方式の感知器であっても良い。
【0015】
なお、図2は感知器本体20の底板の天井側の面の構成を、図1は感知器ベース10の天井と反対側の面の構成を示している。つまり、図2において感知器本体20の底板の見えている面が、図1において感知器ベース10の見えている面に接合した状態で両者が結合される。ここで、感知器ベース10が取付け面としての天井面に固定される場合、感知器本体20は、感知器ベース10を介して天井面に設置されることとなる。
【0016】
本発明の特徴を説明する前に、図1に示す感知器ベース10の構成と、図2に示す感知器本体20の底板の構成について説明する。
感知器ベース10の底板は、合成樹脂で形成されており、図1に示されているように、高さの小さい有底円筒状をなすベース本体11と、該ベース本体11の内側の円形状をなす底板11a上に放射状に並んで配設された接続端子12A~12Fと、接続端子12A~12Fを上記底板11a上に固定するためのビス13A~13Fと、配線の芯線を端子12A~12Fに電気的に接続するためのビス14A~14Fおよびセフティワッシャ15A~15Fを備える。
【0017】
上記接続端子12A~12Fは、それぞれ反L字状の形状を有しており、短い方の辺と長い方の辺との交差部に上記ビス13A~13Fが挿通される挿通孔が形成され、短い方の辺に上記ビス14A~14Fが挿通される挿通孔が形成されている。
上記底板11aの周囲には外周壁11bが設けられ、この外周壁11bの内側には、外周壁11bと僅かな隙間を有して同一高さの内側壁11cが形成されており、感知器の円弧状の壁体の一部が周壁11bと内側壁11cとの間に入ることで円周方向に回動可能なガイドとして機能し、ベースと感知器の取付け位置(所定部位)では、円弧状の壁体全体が外周壁11bと内側壁11cとの間に全体が収まる。
なお、感知器の円弧状の壁体の一部が周壁11bと内側壁11cとの間に入った状態では、感知器側の端子とベース側の端子が接触しない状態である。円弧状の壁体全体が外周壁11bと内側壁11cとの間に全体が収まった状態は感知器の端子とベースの端子が接触手前の状態で、そこから回転させることで端子間の接続(電気的な接続)がされるとともに感知器ベースに感知器が結合された状態となる。
【0018】
また、ベース本体11の底板11a上には、上記内側壁11cよりも高さの低い円弧状の端子支持用リブ11e1,11e2が形成されており、この端子支持用リブ11e1,11e2に、上記接続端子12A~12Fの長い方の辺が接触するように接続端子12A~12Fが配設されている。これにより、接続端子12A~12Fの長い方の辺とベース本体11の底板11aの内表面との間に隙間が形成され、これらの隙間に感知器側の端子22A~22F(図2参照)が入り込んで接触し、電気的な接続がなされるように構成されている。なお、図1には、6本の端子22A~22Fを持つ例を示しているが、感知器として利用しない端子、例えば端子22Dを利用しない場合は、その端子自体を設置しなくてもよい。
【0019】
感知器本体20の底板21には、図2に示されているように、図1の感知器ベース10に設けられている接続端子12A~12Fに接続される外部端子22A~22Fが設けられている。外部端子22A~22Fは、互いに近づく方向へ折曲された接触片を有する内側端子と外側端子とを備えており、接触片同士が重なるように配置され、内側端子と外側端子の接触片間に感知器ベース10の接続端子12E-12Fが挿入されることで、感知器本体20と感知器ベース10の対応する端子間が電気的に接続される。
【0020】
また、底板21の周縁部には、感知器ベース10の周縁部の外周壁11bと内側壁11cとの隙間に入る円弧状のガイド片23が設けられており、このガイド片23を感知器ベース10の外周壁11bと内側壁11cとの隙間に所定部位に嵌合させてから、感知器本体20全体を回転させると、底板21が本体ケースと共に回転する。これにより、外部端子22A~22Fが接続端子12E-12Fと底板11aとの間に入り込むことで、感知器本体20が感知器ベース10に結合されると同時に、対応する端子間が電気的に接続される。また、ガイド片23は円弧の対向する位置にも設けられており、所定位置以外の位置ではベース側の端子12と感知器側の端子22が接触しない距離で外周壁11bと内側壁11cとの隙間を回動可能となるように設計されている。
【0021】
ここで、上記所定部位とは、図1に示す破線Aで囲まれた部分であり、ガイド片23をこの部位に差し込むと、外部端子22A~22Fの先端が、対応する接続端子12A~12Fの側方に位置するため、感知器本体20を少し回転させると、外部端子22A~22Fが接続端子12E-12Fと底板11aとの間に入り込むこととなる。
なお、感知器ベース10の接続端子12E-12Fには、天井裏に配設されている配線が接続される。また、感知器本体20はセンサおよび回路基板を内蔵しており、火災を検出すると、外部端子22A~22Fおよび接続端子12E-12Fを介して、検出信号を図示しない火災受信機へ送出する。
【0022】
本実施形態の火災感知端末は、感知器本体20の底板21の上記ガイド片23を利用して、特定の種類の感知器以外の感知器を感知器ベース10に取り付けることができないようにするものである。
具体的には、感知器本体20の底板21にある円弧状のガイド片23を、図3(A)に拡大して示すように、2つのスリット23aを設けることで、3個の爪23bを有するように構成する。そして、取付け可能にしたい感知器の種類に応じて、図3(B),(C)に示すように、3個の爪23bのうち左右のいずれか1個の爪を折って切り離す。
【0023】
一方、感知器ベース10側に関しては、周縁部にある外周壁11bと内側壁11cとの隙間よりも小さな厚みを有するとともに、図4(A)に示すように、深さDで長さLを有する切欠き31aが形成された長方形をなす板状の回転規制部材31と、図4(B)に示すように、回転規制部材31とは異なる位置に切欠き32aを有し対称的な形状をなす回転規制部材32とを用意する。
なお、回転規制部材31と32は、対称的な形状でなくても良い。また、図5(B)に示すように、切欠き31aの深さDは爪23bの高さHよりも少し大きく、長さLは爪23b2個分の幅よりも少し大きくなるように設定される。切欠き32aも同様である。
なお、前述のようにベースと感知器の取付け位置(所定部位)では円弧状の壁体全体が外周壁11bと内側壁11cとの間に収まるが、所定部位以外では外周壁11bと内側壁11cの間の溝は浅くなっているため円弧状の壁は収めることができず、結果として感知器は特定の向きでのみ取り付けることが可能である。
そこで、回転規制部材31と32を外周壁11bと内側壁11cの間の溝に収めた際に、回転規制部材31と32が、浅くなっている溝と深さが揃うよう高さを定めるのが好適である。こうすることで、作業員が取り付けにあたって特定の向きを見つけようと試行錯誤して回転させる際に引っ掛かりを感じずに済むという効果がある。
【0024】
また、回転規制部材31と32は、プラスチックや金属板のような剛性のある材料で形成しても良いが、本実施形態においてはゴムのような弾性変形可能な材料で形成されている。ゴムの代わりに軟質塩化ビニールのような変形可能な樹脂やアルミニウム、鉛のような塑性変形可能な金属の板あるいは粘土を用いて、回転規制部材31と32を形成しても良い。回転規制部材31,32を弾性変形または塑性変形が可能な材料で形成する場合、例えば回転規制部材31,32の下縁部に沿って外周壁11bと内側壁11cとの隙間よりも若干大きな肉厚部を設けることよって、感知器ベース10に挿入された回転規制部材31,32の抜け止めを行うことができる。
【0025】
さらに、回転規制部材31と32は対称的な形状であるため、これらを弾性変形または塑性変形が可能な材料で形成する場合、回転規制部材31を裏返しにすることで,回転規制部材32として使用することができ、部品点数およびコストを減らすことができる。
一方、回転規制部材31,32を剛性材料で形成する場合には、感知器ベース10の周縁部の外周壁11bに対応して円弧状をなすように形成するとともに、異なる位置に切欠き31aと32aを有する回転規制部材31と32を用意する必要がある。また、剛性材料からなる回転規制部材31,32を挿入する場合には、回転規制部材31,32を接着剤等により感知器ベース10の周縁部の隙間に固定する必要がある。
【0026】
次に、一例として第1の種類の感知器(例えば煙感知器)のガイド片23として、図3(B)に示すように、左側の爪23bを切り離したものを使用し、第2の種類の感知器(例えば熱感知器)のガイド片23として、図3(C)に示すように、右側の爪23bを切り離したものを使用した場合について説明する。
図5(A),(B)には、第1の種類の感知器(例えば煙感知器)のガイド片23に、左側の爪23bを切り離したものを使用した場合におけるガイド片23と回転規制部材31との関係が示されている。このうち、図5(A)はガイド片23を回転規制部材31の切欠き31aに嵌合させる直前の状態を、図5(B)はガイド片23を回転規制部材31の切欠き31aに嵌合させて周方向へ回転させた状態を示している。
【0027】
図5(B)から分かるように、回転規制部材31を感知器ベース10の周壁の隙間(所定位置に対応した凹部)に挿入した場合、第1の種類の感知器はガイド片23が回転規制部材31と干渉しないため、所定の位置までガイド片23を嵌め込むことができ、さらに回転させるとベースと感知器の端子間の接続をすることができる。
一方、周壁11b,11cの隙間の所定位置に対応した凹部に回転規制部材31が挿入された感知器ベース10に第2の種類の感知器を嵌合させようとした場合には、図5(C)に示すように、ガイド片23の爪23bの位置と切欠き31aの位置が合致しないため、ガイド片23が回転規制部材31と干渉してしまい、嵌合させることができないようになる。
【0028】
図6(A),(B)には、右側の爪23bを切り離した第2の種類の感知器(例えば熱感知器)のガイド片23と回転規制部材32との関係が示されている。このうち、図6(A)はガイド片23を回転規制部材32の切欠き32aに嵌合させる直前の状態を、図6(B)はガイド片23を回転規制部材32の切欠き32aに嵌合させて周方向へ回転させた状態を示している。
【0029】
図6(B)から分かるように、回転規制部材32を感知器ベース10の周壁の隙間に挿入した場合、第2の種類の感知器はガイド片23が回転規制部材32と干渉しないため、所定の位置まで回転させることができる。
一方、周壁の隙間に回転規制部材32が挿入された感知器ベース10に第1の種類の感知器を嵌合させようとした場合には、図6(C)に示すように、ガイド片23の爪23bの位置と切欠き32aの位置が合致しないため、ガイド片23が回転規制部材32と干渉してしまい、嵌合させることができないようになる。
【0030】
以上説明したように、上記実施形態の火災感知端末においては、感知器本体20の底壁21にあるガイド片23に対して、3個の爪23bのうち、感知器の種類に応じて異なる位置のものを切り離すとともに、取り付け可能にしたい感知器の種類に応じて切欠きの位置が異なる回転規制部材を感知器ベース10の周壁の隙間に挿入するようにしたことで、2種類の感知器のうちいずれか一の感知器本体のみを感知器ベース10に取り付けることができるようにすることができる。
【0031】
次に、上記実施形態において、回転規制部材31、32を塑性変形可能な材料として紙粘土を用いて形成する場合における回転規制部材の形成の仕方について説明する。
この場合、先ず感知器ベース10の外周壁11bと内側壁11cとの隙間の所定部位(図5図6において回転規制部材31、32が挿入されている部位)に、乾燥硬化する前の柔らかな状態の紙粘土を、切欠きのない状態になるように充填する。
【0032】
次に、一部の爪を切り離したガイド片23を感知器ベース10の周壁の隙間の紙粘土が充填されている部位に挿入させてから感知器本体20を回転させる。すると、外周壁11bと内側壁11cとの隙間に充填されている紙粘土が変形して切欠きが形成される。また、ガイド片23を周方向へ移動させる際に紙粘土の一部が隙間の上方へ飛び出すが、飛び出した紙粘土はヘラ等で除去する。その後、感知器本体20を逆方向へ回転させてからガイド片23を外周壁11bと内側壁11cとの隙間から引き抜く。そして、所定時間放置して紙粘土を乾燥硬化させる。
このようにすることによって、上記実施形態における回転規制部材31、32と同様な機能を有する回転規制部を、感知器ベース10の外周壁11bと内側壁11cとの隙間内に形成することができる。
【0033】
(変形例)
次に、上記実施形態の火災感知端末の変形例について、図7を用いて説明する。
上記実施形態の火災感知端末においては、2種類の感知器のうちいずれか一方の種類の感知器のみを感知器ベース10に取り付けることができるようにしたのに対し、本変形例は3種類の感知器のうちいずれか一種類の感知器のみを感知器ベース10に取り付けることができるようにするものである。なお、本変形例においては、第1種類の感知器と第2種類の感知器に関しては、上記実施形態と同様であるので図示及び説明を省略する。
【0034】
本変形例は、第3種類の感知器の底壁21にあるガイド片23に関して、図7(A)に示すように、3個の爪23bのうち、真ん中の位置のものを切り離すとともに、感知器ベース10の周壁の隙間に挿入する回転規制部材33として、左右に切欠き33a,33bを設けたもの用意しておくようにしたものである。
上記のように構成された回転規制部材33を使用することによって、真ん中の爪が切り離されたガイド片23を有する第3種類の感知器を感知器ベースに嵌合させる場合には、図7(B)に示すように、ガイド片23が回転規制部材33と干渉しないため、ガイド片23を感知器ベース10の周壁の隙間に挿入して回転させることができる。
【0035】
一方、左側の爪が切り離されたガイド片23を有する第1種類の感知器を感知器ベースに嵌合させる場合には、図7(C)に示すように、ガイド片23が回転規制部材33と干渉するため、ガイド片23を感知器ベース10の周壁の隙間に挿入して回転させることができない。また、右側の爪が切り離されたガイド片23を有する第2種類の感知器を感知器ベースに嵌合させる場合にも、図7(D)に示すように、ガイド片23が回転規制部材33と干渉するため、ガイド片23を感知器ベース10の周壁の隙間に挿入させ回転させることができない。従って、回転規制部材33を挿入した感知器ベースには、第3種類の感知器のみを嵌合させることができるようになる。
【0036】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、前記実施形態において、回転規制手段31~33を弾性変形または塑性変形可能な材料で形成した場合に、表面と裏面にそれぞれ異なる色をつける、あるいは感知器の種類を示す異なる文字を表面と裏面に印字しておくことによって、いずれの面を外側にして感知器ベースの周縁部の溝に収納するか容易に認識できるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 感知器ベース(感知器設置用ベース)
11 ベース本体
11a 底板
11b 外周壁
11c 内側壁
12A~12F 接続端子
13A~13F 固定用ビス
14A~14F 配線接続用ビス
15A~15F セフティワッシャ
20 感知器本体(火災感知器本体)
21 底板
21a 突起
22A~22F 外部端子
23 ガイド片
23a スリット
23b 爪
31~33 回転規制部材
31a~33c 切欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7