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特開2024-139014撮像装置、外観検査システム、ノイズ除去方法及び撮像システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139014
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】撮像装置、外観検査システム、ノイズ除去方法及び撮像システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/47 20230101AFI20241002BHJP
   H04N 25/707 20230101ALI20241002BHJP
【FI】
H04N25/47
H04N25/707
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049780
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】白島 仁美
(72)【発明者】
【氏名】菅 彰信
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX32
5C024GX02
(57)【要約】
【課題】イベントベースビジョンセンサの暗電流ノイズを除去可能な撮像装置、外観検査システム、ノイズ除去方法及び撮像システムを提供する。
【解決手段】画素ごとに入射光の輝度変化が所定の閾値を超えたことをイベントとして検出するイベントベースビジョンセンサと、イベントが発生しない状況下においてイベント信号を出力した前記イベントベースビジョンセンサの画素を欠陥画素として抽出する欠陥画素抽出部と、を備える撮像装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素ごとに入射光の輝度変化が所定の閾値を超えたことをイベントとして検出するイベントベースビジョンセンサと、
イベントが発生しない状況下においてイベント信号を出力した前記イベントベースビジョンセンサの画素を欠陥画素として抽出する欠陥画素抽出部と、を備える
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記欠陥画素抽出部は、所定期間の間にイベント信号を所定回数以上出力した画素を前記欠陥画素として抽出する
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記欠陥画素抽出部は、所定期間の間にイベント信号を所定の閾値を超える割合で出力する画素を前記欠陥画素として抽出する
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
前記欠陥画素抽出部は、所定期間の間にイベント信号を所定の閾値を超える頻度で出力する画素を前記欠陥画素として抽出する
ことを特徴とする請求項3記載の撮像装置。
【請求項5】
実使用状況下において前記イベントベースビジョンセンサが出力したイベント信号のうちから前記欠陥画素が出力したイベント信号を除去し、ノイズ除去データを生成するノイズ除去データ生成部を更に備える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
請求項5記載の撮像装置と、
前記ノイズ除去データに基づいて検査対象の外観を検査する検査部と、を備える
ことを特徴とする外観検査システム。
【請求項7】
前記欠陥画素抽出部は、検査対象に対する前記撮像装置の相対的な位置が変化しない状況下で前記欠陥画素を抽出する
ことを特徴とする請求項6記載の外観検査システム。
【請求項8】
画素ごとに入射光の輝度変化が所定の閾値を超えたことをイベントとして検出するイベントベースビジョンセンサが出力したイベント信号からノイズを除去する方法であって、
イベントが発生しない状況下においてイベント信号を出力した前記イベントベースビジョンセンサの画素を欠陥画素として抽出する工程と、
実使用状況下において前記イベントベースビジョンセンサが出力したイベント信号のうちから前記欠陥画素が出力したイベント信号を除去し、ノイズ除去データを生成する工程と、を備える
ことを特徴とするノイズ除去方法。
【請求項9】
画素ごとに入射光の輝度変化が所定の閾値を超えたことをイベントとして検出するイベントベースビジョンセンサと、
イベントが発生しない状況下においてイベント信号を出力した前記イベントベースビジョンセンサの画素を欠陥画素として抽出する欠陥画素抽出部と、を備える
ことを特徴とする撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置、外観検査システム、ノイズ除去方法及び撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被写体に所定のパターンのドット光を照射する光源部、被写体で反射された所定のパターンのドット光を受光し、画素の輝度変化が所定の閾値を超えたことをイベントとして検出するイベント検出センサ、及び、イベント検出センサの画素アレイ部において、所定の画素数以上連続する複数の画素が一定期間内にイベントの発生を検出したとき、このイベントをノイズとして除去する処理を行う信号処理部、を備える物体認識システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/084833号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画素ごとに入射光の輝度変化が所定の閾値を超えたことをイベントとして検出するイベントベースビジョンセンサ(以下、EVSと略記する場合がある)をインライン3次元形状計測に使用して物体の3次元データを取得したとき、イベントが発生していない非計測時において、センサの特定画素にノイズが出ることが確認された。このノイズはセンサ由来の暗電流ノイズと考えられる。真っ暗であっても物理上、光子が飛んでおり、それを出力として拾う場合にこのノイズが発生すると考えられる。このノイズは、予め予想できるものではなく、環境状況や、デバイスの熱雑音(熱的要因やセンサの絶縁不良)にも起因していると考えられる。
【0005】
特許文献1において対象としているノイズは高照度下で発生するフレア等に起因するノイズであるため、ある画素から隣接した画素に注目してノイズか否かの判断をしている。したがって、イベントが発生しない状況下において発生するノイズである暗電流ノイズは除去できない。
【0006】
なお、通常のフレームベースのビジョンセンサは、周りの画素からノイズを補完できるが、EVSでは周りの画素や前のフレームから差分するという方法は利用できない。また、フレームベースのビジョンセンサでは、複数のフレームが積分されて暗電流ノイズが発生するが、フレームベースでないEVSは、暗電流ノイズは消えたり、発生したりする作用を繰り返す。
【0007】
本開示は、上記現状に鑑みてなされたものであり、イベントベースビジョンセンサの暗電流ノイズを除去可能な撮像装置、外観検査システム、ノイズ除去方法及び撮像システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、(1)本開示の第1の態様に係る撮像装置は、画素ごとに入射光の輝度変化が所定の閾値を超えたことをイベントとして検出するイベントベースビジョンセンサと、イベントが発生しない状況下においてイベント信号を出力した前記イベントベースビジョンセンサの画素を欠陥画素として抽出する欠陥画素抽出部と、を備える。
【0009】
(2)上記(1)に記載の撮像装置において、前記欠陥画素抽出部は、所定期間の間にイベント信号を所定回数以上出力した画素を前記欠陥画素として抽出してもよい。
【0010】
(3)上記(1)に記載の撮像装置において、前記欠陥画素抽出部は、所定期間の間にイベント信号を所定の閾値を超える割合で出力する画素を前記欠陥画素として抽出してもよい。
【0011】
(4)上記(3)に記載の撮像装置において、前記欠陥画素抽出部は、所定期間の間にイベント信号を所定の閾値を超える頻度で出力する画素を前記欠陥画素として抽出してもよい。
【0012】
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の撮像装置において、実使用状況下において前記イベントベースビジョンセンサが出力したイベント信号のうちから前記欠陥画素が出力したイベント信号を除去し、ノイズ除去データを生成するノイズ除去データ生成部を更に備えていてもよい。
【0013】
(6)また、本開示の第2の態様に係る外観検査システムは、上記(5)に記載の撮像装置と、前記ノイズ除去データに基づいて検査対象の外観を検査する検査部と、を備える。
【0014】
(7)上記(6)に記載の外観検査システムにおいて、前記欠陥画素抽出部は、検査対象に対する前記撮像装置の相対的な位置が変化しない状況下で前記欠陥画素を抽出してもよい。
【0015】
(8)また、本開示の第3の態様に係るノイズ除去方法は、画素ごとに入射光の輝度変化が所定の閾値を超えたことをイベントとして検出するイベントベースビジョンセンサが出力したイベント信号からノイズを除去する方法であって、イベントが発生しない状況下においてイベント信号を出力した前記イベントベースビジョンセンサの画素を欠陥画素として抽出する工程と、実使用状況下において前記イベントベースビジョンセンサが出力したイベント信号のうちから前記欠陥画素が出力したイベント信号を除去し、ノイズ除去データを生成する工程と、を備える。
【0016】
(9)また、本開示の第4の態様に係る撮像システムは、画素ごとに入射光の輝度変化が所定の閾値を超えたことをイベントとして検出するイベントベースビジョンセンサと、イベントが発生しない状況下においてイベント信号を出力した前記イベントベースビジョンセンサの画素を欠陥画素として抽出する欠陥画素抽出部と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、イベントベースビジョンセンサの暗電流ノイズを除去可能な撮像装置、外観検査システム、ノイズ除去方法及び撮像システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1に係る撮像装置の構成の一例を説明するブロック図である。
図2】実施形態1に係るイベントベースビジョンセンサの構成の一例を説明する模式図である。
図3】実施形態2に係る撮像装置の構成の一例を説明するブロック図である。
図4】実施形態2に係る撮像装置の動作(ノイズ除去方法)の一例を説明するフローチャートである。
図5】実施形態2に係る欠陥画素抽出部による処理の一例を説明するフローチャートである。
図6】実施形態2に係る欠陥画素抽出部による処理の他の例を説明するフローチャートである。
図7】実施形態3に係る外観検査システムの構成の一例を説明するブロック図である。
図8】実施形態4に係る外観検査システムの構成の一例を模式的に示す斜視図である。
図9】実施形態4に係る外観検査システムの構成の他の例を模式的に示す斜視図である。
【0019】
以下、図面を参照して、本開示に係る撮像装置、撮像システム、外観検査システム及びノイズ除去方法の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
また、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。また、構造を説明する図面には、互いに直交するXYZ座標系を適宜示している。
【0021】
(実施形態1)
図1を用いて、実施形態1に係る撮像装置の構成について説明する。図1は、実施形態1に係る撮像装置の構成の一例を説明するブロック図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る撮像装置1は、イベントベースビジョンセンサ(EVS)10及び欠陥画素抽出部21を備えている。
【0023】
EVS10は、画素ごとに入射光の輝度変化が所定の閾値を超えたことをイベントとして検出する。入射光の強度変化を検出しなかった(輝度変化が所定の閾値を超えなかった)画素はイベント信号を生成しないため、EVS10においてイベント信号は時間非同期的に生成される。イベント信号は、画像信号の一種であり、イベント信号に基づいて画像を生成することができる。イベント信号は、例えば、当該イベントが検出された時刻を示すタイムスタンプと、当該画素の識別情報(例えば画素の座標)と、輝度変化の極性(上昇又は低下)とを示す情報である。
【0024】
図2は、実施形態1に係るイベントベースビジョンセンサの構成の一例を説明する模式図である。
【0025】
図2に示すように、EVS10は、画像のピクセルに対応する画素11で構成される画素アレイ12と、画素アレイ12に接続された処理回路13とを含んでいてもよい。各画素11は、受光素子を含み、入射する光の強度変化、より具体的には輝度変化を検出したときにイベント信号を生成する。イベント信号は、処理回路13から出力される。
【0026】
欠陥画素抽出部21は、イベントが発生しない状況下においてイベント信号を出力したEVS10の画素を欠陥画素として抽出(特定)する処理を行う。イベントが発生しない状況下において出力されたイベント信号は、センサ由来の暗電流ノイズと考えられるため、実使用状況下において欠陥画素が出力したイベント信号を暗電流ノイズとして除去することができる。
【0027】
ここで、イベントが発生しない状況下(以下、イベント非発生下ともいう)とは、原理的にはEVS10の各画素がイベントを検出し得ない状況下を意味する。具体的には、例えば、撮像装置1の撮像領域(EVS10の画角)内に動体が存在しない状況下や、EVS10に光が入射しないようにEVS10をカバー等で被覆した状況下、撮像装置1が暗室内に置かれた状況下等が挙げられる。
【0028】
欠陥画素が出力したイベント信号の輝度変化の極性は特に限定されず、輝度変化が上昇した場合と低下した場合のいずれであってもよい。ただし、イベント非発生下において輝度変化が上昇した場合又は低下した場合のいずれか一方のイベント信号を出力した画素のみを欠陥画素として抽出してもよい。この場合、欠陥画素に該当し得る輝度変化の極性(上昇又は低下)は、全画素で共通で設定されてもよいし、画素ごとに設定されてもよい。
【0029】
欠陥画素抽出部21は、例えば、(1)イベント非発生下において所定期間の間にイベント信号を所定回数以上出力した画素を欠陥画素として抽出してもよいし、(2)イベント非発生下において所定期間の間にイベント信号を所定の閾値を超える割合で出力する画素を欠陥画素として抽出してもよい。
【0030】
上記(1)の態様において、所定回数は適宜設定可能であり、1回でもよいし、2回以上の回数であってもよい。1回以上の画素を欠陥画素とする場合は、暗電流ノイズを最も有効に除去することができる。
【0031】
上記(2)の態様によれば、暗電流ノイズを相対的に多く出力する画素のみを欠陥画素とし、暗電流ノイズを相対的に少なく出力する画素は通常の有効画素としてそのイベント信号を使用できることから、影響の大きい暗電流ノイズを除去しつつ、有効な画素数を確保することができる
【0032】
なお、上記(2)の態様において、「割合」とは、イベント非発生下において所定期間の間に当該画素がイベント信号をどの程度多く(頻繁に)出力したかを示す指標であり、割合が大きいほど当該画素がイベント信号をより多く(より頻繁に)出力したことを示す。
【0033】
上記(2)の態様において、欠陥画素抽出部21は、例えば、(2A)イベント非発生下において所定期間の間にイベント信号を所定の閾値を超える頻度で出力する画素を欠陥画素として抽出してもよいし、(2B)イベント非発生下において所定期間の間にイベント信号を所定の閾値を超える出現割合で出力する画素を欠陥画素として抽出してもよい。上記(2A)の態様によれば、環境に起因する暗電流ノイズを効果的に除去することができる。
【0034】
上記(2A)の態様において、欠陥画素抽出部21は、具体的には、下記式に従って頻度(出現頻度)を算出してもよい。
頻度=出現回数/測定時間
【0035】
なお、ここで、出現回数とは、イベント非発生下において着目する画素が所定期間の間にイベント信号を出力した回数を意味し、測定時間とは、上記所定期間に相当する。
【0036】
上記(2B)の態様において、欠陥画素抽出部21は、具体的には、下記式に従って出現割合を算出してもよい。
出現割合=ある座標での出現回数/出現回数の合計
【0037】
なお、ここで、ある座標での出現回数とは、イベント非発生下において着目する画素が所定期間の間にイベント信号を出力した回数を意味し、出現回数の合計とは、イベント非発生下において所定期間の間にイベント信号を出力した全画素のイベント信号の出力回数の合算値を意味する。
【0038】
撮像装置1は、欠陥画素抽出部21によって抽出された欠陥画素に係る情報を記憶するために、半導体メモリ(RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory))、ハードディスク等の記憶装置から構成される記憶部を備えていてもよい。
【0039】
欠陥画素を抽出(特定)するための所定期間は、適宜設定可能であるが、例えば、5秒以上、10秒以下であることが好ましい。
【0040】
欠陥画素抽出部21による処理は、後述する制御部を構成するCPU(Central Processing Unit)において、所定のソフトウエアプログラムを実行することによって、実行されてもよい。
【0041】
(実施形態2)
図3を用いて、実施形態2に係る撮像装置の構成について説明する。図3は、実施形態2に係る撮像装置の構成の一例を説明するブロック図である。
【0042】
図3に示すように、本実施形態に係る撮像装置2は、上述のEVS10及び欠陥画素抽出部21に加えて、ノイズ除去データ生成部22を備えている。撮像装置2は、制御部20及び記憶部30を備えていてもよく、制御部20が欠陥画素抽出部21及びノイズ除去データ生成部22を有していてもよい。
【0043】
制御部20は、撮像装置2の各部を制御するものであり、CPU、当該CPUによって制御される各種ハードウェア(例えばFPGA(Field Programmable Gate Array))等を備えるコンピュータシステムとして構成される。制御部20は、そのCPUにおいて、所定のソフトウエアプログラムを実行することによって、各種の処理を実現する。
【0044】
記憶部30は、半導体メモリ(RAMやROM)、ハードディスク等の記憶装置から構成されており、紙葉類識別装置200を制御するための各種のプログラムや情報(データ)を記憶している。
【0045】
記憶部30には、欠陥画素抽出部21によって抽出された欠陥画素に係る情報である欠陥画素情報31が記憶されている。欠陥画素情報31は、具体的には、欠陥画素が出力したイベント信号に含まれる情報であり、例えば、タイムスタンプ、欠陥画素の識別情報(例えば座標)、輝度変化の極性等が含まれる。
【0046】
ノイズ除去データ生成部22は、実使用状況下においてEVS10が出力したイベント信号のうちから欠陥画素が出力したイベント信号を除去し、ノイズ除去データを生成する処理を行う。これにより、暗電流ノイズが除かれたイベント信号を3次元形状計測等の各種の計測や検査、解析に用いることができるため、当該計測等の精度の向上が可能である。
【0047】
このノイズ除去データ生成部22によるノイズ除去処理は、実使用状況下において出力されたイベント信号の画素(その座標)と、欠陥画素(その座標)とのマッチングだけで実行することができる。すなわち、通常のフレームベースのビジョンセンサにおけるノイズ除去処理のような四則演算が不要であるため、処理が軽い。
【0048】
ここで、実使用状況とは、撮像装置2がその目的(用途)のために実際に使用される状況を意味する。実使用状況は、欠陥画素を抽出するためのイベントが発生しない状況と同一の環境であることが好ましく、イベント非発生下において欠陥画素を抽出した後、速やかに実使用状況に移行することが好ましい。
【0049】
なお、ノイズ除去データ生成部22によるノイズ除去処理は、EVS10の全画素エリアを対象としてもよいし、一部の画素エリアのみを対象としてもよい。また、例えば用途に応じて、ノイズ除去処理される対象の画素エリアが複数の画素エリアから選択されてもよい。更に、ユーザの選択により欠陥画素の選別が行われてもよい。すなわち、ユーザがノイズ除去処理を行う欠陥画素を指定してもよく、ノイズ除去データ生成部22は、指定された欠陥画素が出力したイベント信号だけを除去してもよい。
【0050】
次に、図4を用いて、本実施形態に係る撮像装置2の動作、特にノイズ除去方法について説明する。図4は、実施形態2に係る撮像装置の動作(ノイズ除去方法)の一例を説明するフローチャートである。
【0051】
図4に示すように、まず、欠陥画素抽出部21が、イベント非発生下においてイベント信号を出力したEVS10の画素を欠陥画素として抽出する(ステップS11)。
【0052】
次に、ノイズ除去データ生成部22が、実使用状況下においてEVS10が出力したイベント信号のうちから欠陥画素が出力したイベント信号を除去し、ノイズ除去データを生成し(ステップS12)、撮像装置2の動作が終了する。
【0053】
欠陥画素抽出部21は、図5に示すフローに従って欠陥画素を抽出する処理を実行してもよい。図5は、実施形態2に係る欠陥画素抽出部による処理の一例を説明するフローチャートである。
【0054】
この場合、欠陥画素抽出部21は、まず、イベント非発生下で所定期間の間にイベント信号を出力した画素の識別情報(例えば座標)と、そのイベント信号の出力回数、すなわち出現回数を記憶部30に記憶する(ステップS21)。
【0055】
次に、欠陥画素抽出部21は、出現回数が所定回数以上、例えば1回以上の画素を欠陥画素として特定し(ステップS22)、欠陥画素抽出処理を終了する。
【0056】
欠陥画素抽出部21は、図6に示すフローに従って欠陥画素を抽出する処理を実行してもよい。図6は、実施形態2に係る欠陥画素抽出部による処理の他の例を説明するフローチャートである。
【0057】
この場合、欠陥画素抽出部21は、まず、イベント非発生下で所定期間の間にイベント信号を出力した画素の識別情報(例えば座標)と、そのイベント信号の出力回数、すなわち出現回数を記憶部30に記憶する(ステップS31)。
【0058】
次に、欠陥画素抽出部21は、イベント非発生下で所定期間の間に出力されたイベント信号の割合を算出する(ステップS32)。例えば、上記式で表される頻度又は出現割合を算出する。
【0059】
次に、欠陥画素抽出部21は、所定の閾値を超える割合でイベント信号を出力した画素を欠陥画素として特定し(ステップS33)、欠陥画素抽出処理を終了する。
【0060】
なお、欠陥画素抽出部21により欠陥画素の抽出を行うタイミングは、任意に設定することができ、例えば、所定のインターバル毎に行ってもよいし、撮像対象のロット毎に行ってもよい。このように欠陥画素の抽出をやり直した場合は、その都度、記憶部30の欠陥画素情報も更新される。
【0061】
(実施形態3)
図7を用いて、実施形態3に係る外観検査システムの構成について説明する。図7は、実施形態3に係る外観検査システムの構成の一例を説明するブロック図である。
【0062】
図7に示すように、本実施形態に係る外観検査システム61は、上述の撮像装置2に加えて、検査部70を備えている。
【0063】
撮像装置2は、上述のようにノイズ除去データを生成し、検査部70に出力する。
【0064】
検査部70は、撮像装置2から入力されたノイズ除去データに基づいて検査対象の外観を検査する。したがって、暗電流ノイズが除かれたノイズ除去データに基づいて3次元形状計測や2次元形状計測等、検査対象(例えば部品)の外観検査を行うことができるため、外観検査精度の向上が可能である。
【0065】
撮像装置2の欠陥画素抽出部は、検査対象に対する撮像装置2の相対的な位置が変化しない状況下で欠陥画素を抽出してもよい。すなわち、イベントが発生しない状況が、検査対象に対して撮像装置2を相対的に移動させない状況であってもよい。この場合、例えば、検査対象及び撮像装置2をいずれも同じ速度で同じ方向に移動させてもよいが、検査対象及び撮像装置2をいずれも静止した状態とすることが好ましい。
【0066】
(実施形態4)
図8を用いて、実施形態4に係る外観検査システムの構成について説明する。図8は、実施形態4に係る外観検査システムの構成の一例を模式的に示す斜視図である。
【0067】
図8に示すように、本実施形態に係る外観検査システム62は、レーザ光源81と、コリメートレンズ82と、光学フィルタ83と、レンズ84と、EVS(図示せず)を有するカメラ85と、搬送機構86と、制御部及び記憶部(いずれも図示せず)等とを備えている。
【0068】
レーザ光源81は、治具(図示せず)によって下方(-Z方向)を向くように固定されており、偏向レンズやシリンダーレンズによってコリメート又は集束されたシングルラインビームを照射する。すなわち、レーザ光源81から照射されたレーザ光は、コリメートレンズ82の表面にて1本の直線状のビームを形成する。レーザ光源81から照射されるレーザ光の波長は、適宜設定可能であり、例えば可視光領域内の特定の波長であってもよい。
【0069】
コリメートレンズ82は、レーザ光源81の下方(-Z方向)に固定されており、レーザ光源81から照射されたレーザ光をコリメートする。
【0070】
コリメートレンズ82を通過したコリメート光は、ベルトコンベア等の搬送機構86によって等速で所定の方向(例えば-X方向)に搬送されている検査対象(例えば部品P)の表面に照射される。
【0071】
光学フィルタ83は、レーザ光源81から照射されるレーザ光の波長帯域を選択的に透過するバンドパスフィルタであり、レンズ84に固定されている。
【0072】
レンズ84は、検査対象の表面で反射し、光学フィルタ83を通過したレーザ光をカメラ85内のEVSの画素アレイ上に結像する。レンズ84は、EVS10をカメラ85に固定されている。
【0073】
カメラ85は、コリメート光の照射位置に対して斜め上方に固定されており、レンズ84を通過した光を受光し、イベント信号を検出する。
【0074】
制御部は、外観検査システム62の各部を制御するものであり、CPU、当該CPUによって制御される各種ハードウェア(例えばFPGA)等を備えるコンピュータシステムとして構成される。制御部は、そのCPUにおいて、所定のソフトウエアプログラムを実行することによって、各種の処理を実現する。
【0075】
制御部は、実施形態2に係る制御部20と同様であり、イベント非発生下においてイベント信号を出力したEVSの画素を欠陥画素として抽出し、実使用状況下においてEVSが出力したイベント信号のうちから欠陥画素が出力したイベント信号を除去し、ノイズ除去データを生成する。
【0076】
また、制御部は、生成したノイズ除去データに基づき、三角計測法の原理を利用して検査対象の3次元形状を計測する。そして、計測した検査対象の3次元形状の欠陥の有無を判定する。
【0077】
記憶部は、半導体メモリ(RAMやROM)、ハードディスク等の記憶装置から構成されており、外観検査システム62を制御するための各種のプログラムや情報(データ)を記憶している。
【0078】
外観検査システム62によれば、検査対象の3次元形状を精度よく計測でき、検査対象の外観検査を高精度で行うことが可能である。
【0079】
図9は、実施形態4に係る外観検査システムの構成の他の例を模式的に示す斜視図である。
【0080】
図9に示すように、外観検査システム62は、カメラ85及びレーザ光源81に接続されたリンク機構90を更に備えていてもよい。
【0081】
リンク機構90は、例えば、カメラ85に接続された板金91と、レーザ光源81に接続された板金92と、板金91及び92を互いに固定するネジ等の固定具93と、を有している。
【0082】
検査対象を搬送機構86により搬送すると一般に振動が発生するが、レーザ光源81とカメラ85が互いに振動の影響を受け、撮像位置がずれるおそれがある。この振動によるズレは、レーザ光源81の位置がずれているのか、カメラ85のEVSの位置がずれているのか分からない。それに対して、リンク機構90を設けることで振動によるズレが発生しても、撮像位置の調整がし易くなる。
【0083】
なお、実施形態1、2では、撮像装置を一つの装置として構成する場合について説明したが、撮像装置の各機能を適宜複数の装置に分散したシステムにより実現してもよい。例えば、EVSと、欠陥画素抽出部及びノイズ除去データ生成部とが互いに異なる装置に設けられてもよい。
【0084】
以上、図面を参照しながら実施形態を説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。また、各実施形態の構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本開示は、EVSの暗電流ノイズを除去するのに有用な技術である。
【符号の説明】
【0086】
1、2:撮像装置
10:イベントベースビジョンセンサ(EVS)
11:画素
12:画素アレイ
13:処理回路
20:制御部
21:欠陥画素抽出部
22:ノイズ除去データ生成部
30:記憶部
31:欠陥画素情報
61、62:外観検査システム
70:検査部
81:レーザ光源
82:コリメートレンズ
83:光学フィルタ
84:レンズ
85:カメラ
86:搬送機構
90:リンク機構
91、92:板金
93:固定具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9