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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139041
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20241002BHJP
   F24C 15/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A47J27/00 103R
A47J27/00 109P
A47J27/00 109S
F24C15/00 M
F24C15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049822
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅家 優
(72)【発明者】
【氏名】折戸 麻結香
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055BA36
4B055BA42
4B055CA36
4B055CD31
4B055CD34
4B055CD51
4B055GD04
(57)【要約】
【課題】キーロック解除状態からキーロック状態へ遷移する過程にあることを使用者に容易に認知させることが可能な加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理器は、少なくともキーロック解除操作を含む所定操作以外の操作を無効とするキーロック状態、キーロック状態が解除されたキーロック解除状態、およびキーロック解除状態からキーロック状態へ遷移する途中であるキーロック有効化操作継続状態の少なくとも3つの状態を識別可能に表示する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーロック機能の有効化の操作を受け付けるキーロック操作キーを含む複数の操作キーと、
少なくともキーロック解除操作を含む所定操作以外の操作を無効とするキーロック状態、前記キーロック状態が解除されたキーロック解除状態、および前記キーロック解除状態から前記キーロック状態へ遷移する途中であるキーロック有効化操作継続状態の少なくとも3つの状態を識別可能に表示する表示部と、を備える加熱調理器。
【請求項2】
前記表示部は、前記キーロック操作キーの操作継続中に相互に異なる少なくとも2つの画面を時系列に表示する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記キーロック解除状態から前記キーロック状態へ遷移するための前記キーロック操作キーの操作継続中に継続的に、または間欠的に音を発し、または振動して報知する報知部を備える請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記報知部は、前記キーロック操作キーの操作継続中に複数回の報知を行う請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記キーロック状態から前記キーロック解除状態へ遷移するキーロック解除時間は、前記キーロック受付時間以下の時間である請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記キーロック状態から前記キーロック解除状態へ遷移するための前記キーロック操作キーの操作継続中に継続的に、または間欠的に音を発し、または振動して報知する報知部を備える請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項7】
外部電源に接続可能な電力線を備え、
待機中、調理中、予約待機中を含む複数の運転状態のうち、予め定める解除運転状態において前記電力線が前記外部電源から切り離された場合には、前記キーロック解除状態を維持し、または前記キーロック解除状態へ遷移する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記複数の運転状態のうち前記解除運転状態を除く非解除運転状態において前記電力線が前記外部電源から切り離された場合には、前記キーロック状態を維持する請求項7に記載の加熱調理器。
【請求項9】
正常、異常、または誤使用を判断可能な診断部を備え、
待機中、調理中、予約待機中を含む複数の運転状態のうち、予め定める解除運転状態において前記診断部が異常または誤使用を判断した場合には、前記キーロック解除状態を維持し、または前記キーロック解除状態へ遷移する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項10】
キーロック操作キーを含む複数の操作キーと、
少なくともキーロック解除操作を含む所定操作以外の操作を無効とするキーロック状態を識別可能な第一画面、および前記キーロック状態が解除されたキーロック解除状態を識別可能な第二画面を表示可能な表示部と、を備え、
前記キーロック状態を識別する前記第一画面を表示する前記表示部は、前記キーロック操作キーを除く前記複数の操作キーが操作された場合には、前記第一画面に含まれる複数の表示要素の少なくとも一部を非表示し、かつ前記キーロック状態を識別する表示要素を点滅表示する動画を表示する加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
キーを操作しても動作を行なわないキーロック機能を有する調理器が知られている。この従来の調理器は、キーの操作を無効にして受け付けないキーロック状態と、このキーロック状態が解除されたキーロック解除状態とを、ホームキーの操作によって切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-19822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キーロック機能は、使用者以外の第三者、例えば、子供やペットが誤ってキーを操作してしまった場合に、調理器の動作を制限する。
【0005】
しかしながら、使用者自身が意図せずキーロックを有効にするキーロック操作キーを操作してしまうことがある。また、子供やペットが使用者の意思に関わりなくキーロック操作キーを操作してしまうことがある。この場合には、調理器は、使用者の意図に反してキーロック状態に遷移してしまう。使用者の意図に反して調理器がキーロック状態に遷移し、かつ使用者がキーロック状態であることを看過してしまった場合には、調理器の故障が疑われかねない。
【0006】
そこで、本発明は、キーロック解除状態からキーロック状態へ遷移する過程にあることを使用者に容易に認知させることが可能な加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る加熱調理器は、キーロック機能の有効化の操作を受け付けるキーロック操作キーを含む複数の操作キーと、少なくともキーロック解除操作を含む所定操作以外の操作を無効とするキーロック状態、前記キーロック状態が解除されたキーロック解除状態、および前記キーロック解除状態から前記キーロック状態へ遷移する途中であるキーロック有効化操作継続状態の少なくとも3つの状態を識別可能に表示する表示部と、を備えている。
また、前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る加熱調理器は、キーロック操作キーを含む複数の操作キーと、少なくともキーロック解除操作を含む所定操作以外の操作を無効とするキーロック状態を識別可能な第一画面、および前記キーロック状態が解除されたキーロック解除状態を識別可能な第二画面を表示可能な表示部と、を備え、前記キーロック状態を識別する前記第一画面を表示する前記表示部は、前記キーロック操作キーを除く前記複数の操作キーが操作された場合には、前記第一画面に含まれる複数の表示要素の少なくとも一部を非表示し、かつ前記キーロック状態を識別する表示要素を点滅表示する動画を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の縦断面図。
図3】本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の制御ブロック図。
図4】本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の上面図。
図5】本実施形態に係る加熱調理器のキーロック有効化動作を模式的に表現するタイミングチャート。
図6】本実施形態に係る加熱調理器のキーロック無効化動作を模式的に表現するタイミングチャート。
図7】本実施形態に係る炊飯器の電源喪失時のキーロック解除動作を模式的に表現する状態遷移図。
図8】本実施形態に係る加熱調理器の異常時または故障時とキーロック無効化動作との関係の一例を示す図。
図9】本実施形態に係る加熱調理器のキーロック顕示動作を模式的に表現する状態遷移図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る加熱調理器の実施形態について図1から図9を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号が付されている。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の斜視図である。
【0011】
図2は、本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の縦断面図である。
【0012】
なお、図1は、本実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器1の右斜め前上方から炊飯器1を見た斜視図である。つまり、図1では炊飯器1の正面、右側面、および上面は見えていて、炊飯器1の背面、左側面、および底面は隠れている。
【0013】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る炊飯器1は、上方へ開放された鍋収容部2を有する矩形状の本体3と、鍋収容部2に収容される鍋5と、本体3の上面に覆い被さって鍋収容部2を開閉可能に閉じる蓋体6と、蓋体6を本体3に開閉可能に支持するヒンジ機構7と、外部電源、例えば商用交流電源のコンセントに接続可能な電力線8と、を備えている。蓋体6を本体3の上方へ開くと、鍋5を鍋収容部2から取り出すことができる。
【0014】
炊飯器1は、鍋5に収容された被炊飯物である水や米を加熱して炊飯し、炊飯したご飯(米飯)を加熱コイル11で加熱して保温する。炊飯器1は、複数の炊飯コースから択一的に選択される炊飯コースで被炊飯物を炊飯する。
【0015】
それぞれの炊飯コースは、鍋5内の被炊飯物を所定の圧力で加圧して加熱する。それぞれの炊飯コースは、米の種類や使用者の好みの炊上りに応じて設定される加熱工程を有している。それぞれの加熱工程は、例えば、鍋5に投入された米の吸水を促進させるひたし炊き工程と、被炊飯物の温度を短時間で沸点まで上昇させる沸騰加熱工程と、被炊飯物の沸騰を継続させる沸騰継続工程と、ご飯を焦がさない程度の高温に維持するむらし工程と、を含んでいる。炊飯器1は、炊飯コースとは別に、または炊飯コースに連続して鍋5内のご飯を所定の保温温度に保つ保温工程を実行することもできる。
【0016】
炊飯器1は、予め定める加熱パターンで鍋5に収容された被炊飯物以外の被調理物を加熱する調理コースを実行することもできる。被調理物は、特に断りのない限り被炊飯物を含む。
【0017】
鍋5は、底を有する容器であって、被炊飯物である水や米を収容する。鍋5は、熱伝導性の高いアルミニウム製の主材と、主材の外周面下部から底面を覆うように接合される発熱体と、を有している。発熱体の素材は、例えばフェライト系ステンレス製の磁性金属板である。
【0018】
鍋5は、径方向外側へ突出して外周面の全周を巡るフランジ部12を備えている。
【0019】
本体3の平面形状は、矩形状である。本体3は、蓋体6より下方の炊飯器1の正面、背面、左側面、右側面、および底面を画定している。本体3は、本体3の底面を画定する底板15と、底板15の上方を覆って本体3の上面の一部と側面とを画定する上枠16と、上枠16に一体成型される椀状の内枠17と、本体3の上面の残部を画定する外枠18と、を備えている。
【0020】
底板15、上枠16、および外枠18は、本体3の外郭である。底板15および上枠16は、合成樹脂、例えばポリプロピレン(Polypropylene、PP)の成型品である。外枠18は、金属材料、例えばステンレスの成形品である。
【0021】
上枠16、および内枠17は、鍋収容部2を画定している。内枠17は、鍋収容部2の底板に相当する。内枠17は、合成樹脂、例えばポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate、PET)の成型品である。
【0022】
また、本体3は、外郭と鍋収容部2との間に区画される制御部収容室19を有している。本体3の外郭は、制御部収容室19に外気を導く通気口21を有している。通気口21は、本体3の底面または側面に配置されていることが好ましい。
【0023】
本体3は、制御部収容室19に収容される加熱制御回路板22を備えている。加熱制御回路板22は、マイクロプロセッサー、およびマイクロプロセッサーが実行する各種演算プログラム、パラメーターなどのデジタル情報を記憶する記憶装置を備えている。記憶装置は、予め設定される複数の炊飯モードに関連する種々の設定(引数)を記憶している。
【0024】
また、本体3は、加熱制御回路板22のマイクロプロセッサーに取り付けられる放熱器23と、放熱器23に空気を吹き掛ける冷却ファン25と、を備えている。
【0025】
放熱器23の材料は、熱伝導性の良好な材料、例えばアルミニウムである。冷却ファン25は、放熱器23の下方または側方に配置されている。放熱器23と冷却ファン25とを組み合わせた冷却性能は、マイクロプロセッサーの温度を使用温度範囲内に保つよう設定されている。冷却ファン25と本体3の通気口21とは、鍋5を挟むように配置されることが好ましい。そのような配置の関係は、製品の小型化に寄与する。
【0026】
さらに、本体3は、内枠17の外面に設けられる加熱コイル11と、内枠17の底面中央部に設けられて鍋5の温度を検知する鍋温度センサー26と、鍋収容部2の上端に設けられる環状のフランジヒーター27と、を備えている。
【0027】
加熱コイル11は、鍋収容部2に収容された鍋5の外周面下部から底面に対向するよう配置されている。加熱コイル11は、交番磁界を発生させて鍋5の発熱体を電磁誘導加熱する。
【0028】
鍋温度センサー26は、鍋5の温度を検知するサーミスターを有している。鍋温度センサー26は、ばね力によって鍋5の底面に押し当てられている。鍋温度センサー26が検出する鍋5の温度は、加熱コイル11による鍋5の加熱温度の管理にもっぱら利用される。
【0029】
フランジヒーター27は、環状に敷設されるコードヒーターと、コードヒーターを覆う、熱伝導性の高い金属材料製、例えばアルミニウム製の金属板部28と、を備えている。 コードヒーターの最外径寸法は、鍋5のフランジ部12の最外径寸法より小さい。つまり、鍋収容部2に収容された鍋5のフランジ部12は、コードヒーターに覆い被さるように配置される。
【0030】
金属板部28は、本体3を閉じる蓋体6と本体3との隙間Gを塞ぐように設けられている。
【0031】
本体3は、鍋5のフランジ部12の下面を金属板部28の上面に接触させて、金属板部28から吊り下げるような状態で鍋収容部2に鍋5を収容している。鍋5が鍋収容部2に収容されている状態では、鍋5のフランジ部12と鍋収容部2の上端とは、ほぼ隙間なく接している。
【0032】
なお、金属板部28は、鍋5のフランジ部12の周方向における一部の範囲に、フランジ部12に非接触な溝部を有している。この溝部は、鍋収容部2から離れるように鍋収容部2の上端から延びている。この溝部は、金属板部28と鍋5のフランジ部12との間に隙間を隔てる。この隙間は、鍋5の外面に水分が付着した状態で鍋5加熱された場合に、鍋収容部2と鍋5との間に発生する蒸気を排出する通路の役割を担う。
【0033】
ヒンジ機構7は、本体3と蓋体6とを揺動可能に連結するヒンジシャフト31と、鍋収容部2を閉じる蓋体6がヒンジシャフト31を中心にして本体3の上方へ向かって開くよう蓋体6にばね力を作用させるヒンジバネ32と、を備えている。ヒンジシャフト31は、本体3の背面上部の近傍に配置されている。
【0034】
蓋体6の平面形状は、本体3を覆い隠す矩形状である。蓋体6は、本体2より上方の炊飯器1の正面、背面、左側面、右側面、および上面を画定している。蓋体6は、炊飯器1の頂部に配置される外蓋35と、外蓋35と本体3との間に配置される外蓋カバー36と、外蓋カバー36に設けられる金属製の放熱板37と、放熱板37に設けられる蓋ヒーター38と、外蓋カバー36に着脱自在に取り付けられて放熱板37の下方に着脱可能に装着される内蓋ユニット39と、を備えている。
【0035】
内蓋ユニット39は、放熱板37の下方に配置されて放熱板37に接触する金属製の内蓋41と、内蓋41の外周に設けられる蓋パッキン42と、内蓋41と蓋パッキン42とを一体化するパッキンベース43と、を備えている。
【0036】
放熱板37および内蓋41は、陽極酸化処理されたアルミニウム製の板材、またはステンレスの板材の成形品である。内蓋41は、蓋体6の底面に相当する。内蓋41は、鍋5の上方開口部と実質的に同径の円盤形状を有している。
【0037】
蓋パッキン42は、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴムの成型品である。蓋パッキン42は、蓋体6が閉じられると鍋5と内蓋41との隙間を塞ぐシール材である。蓋パッキン42は、蓋体6が閉じている状態で鍋5のフランジ部12の上面に接触する。
【0038】
内蓋ユニット39が取り付けられた蓋体6が閉じられると、蓋パッキン42は、鍋5のフランジ部12の上面に押し当てられ、内蓋ユニット39は、鍋5の上方開口部を隙間なく覆い、鍋5を加熱した際に発生する蒸気を密閉する。
【0039】
蓋ヒーター38は、例えばコードヒーターである。蓋ヒーター38は、放熱板37を加熱することにより、放熱板37に接触している内蓋41を加熱する。
【0040】
また、蓋体6は、蓋体6の上面後半部に着脱可能に装着されて鍋5内の被炊飯物から発生する蒸気を炊飯器1の外部に排出する蒸気口ユニット45と、鍋5内の蒸気を蒸気口ユニット45へ導く蒸気排出通路46と、蒸気排出通路46における気体の流通を許可または遮断する調圧弁47と、を備えている。
【0041】
蒸気排出通路46は、蒸気口ユニット45と調圧弁47とを繋いでいる。
【0042】
調圧弁47は、例えば電磁弁である。調圧弁47を開くと鍋5内と炊飯器1の外部とが繋がり、鍋5内で発生した蒸気が炊飯器1の外部へ放出される。調圧弁47を閉じると、鍋5内と炊飯器1の外部との繋がりが断たれて蒸気排出通路46を通じた気体の出入りが制限される。
【0043】
さらに、蓋体6は、蓋体6を閉じた状態で鍋5内を減圧する減圧ポンプ48を備えている。
【0044】
減圧ポンプ48の吸い込み側は、内蓋41の減圧孔49に接続されている。減圧ポンプ48は、減圧孔49から鍋5内の気体を炊飯器1の外部へ排出して鍋5の内圧を減圧する。鍋5の内圧を減圧する場合には、鍋5が鍋収容部2に収容され、蓋体6が閉じられ、かつ調圧弁47が閉じられている。鍋5の内圧を減圧状態から大気圧に回復させる場合には、減圧ポンプ48が停止され、調圧弁47が開かれる。そうすると鍋5内と炊飯器1の外部とが繋がって外気が鍋5内に流れ込む。減圧ポンプ48と減圧孔49とを繋ぐ通路は、気体の流通を許可または遮断する開閉弁を備えていても良い。
【0045】
また、蓋体6は、蓋体6の上面前半部に設けられる蓋開ボタン51と、入出力装置としての操作パネル52と、を備えている。
【0046】
蓋開ボタン51が操作されると、鍋収容部2を閉じる蓋体6と本体3とのロックが解除される。蓋体6と本体3とのロックが解除されると、ヒンジバネ32のばね力がヒンジシャフト31を回転中心に蓋体6を開く。
【0047】
操作パネル52は、種々の情報を表示する表示部55と、それぞれ別個の操作を受け付ける複数の操作キー56と、を備えている。表示部55は、例えば液晶パネル(Liquid Crystal Display、LCD)である。
【0048】
表示部55は、例えば現在時刻、選択中の炊飯コース、および現在実行中の行程を含む種々の情報を表示する。
【0049】
表示部55および複数の操作キー56は、蓋体6の内部に収容される入出力制御回路板61に設けられている。入出力制御回路板61は、マイクロプロセッサーと、マイクロプロセッサーが実行する各種演算プログラム、パラメーターなどのデジタル情報を記憶する記憶装置と、計時機能を有するリアルタイムクロック(real-time clock、RTC)と、を備えている。記憶装置は、予め設定される複数の炊飯モードに関連する種々の設定(引数)を記憶している。リアルタイムクロックは、炊飯器1の現在時刻を刻む時計の機能、および計時機能を有している。リアルタイムクロックは、加熱制御回路板22および入出力制御回路板61のいずれか一方にあれば良い。
【0050】
図3は、本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の制御ブロック図である。
【0051】
図1および図2に加えて図3に示すように、本実施形態に係る炊飯器1は、入出力制御回路板61と加熱制御回路板22とを連携させて動作する。入出力制御回路板61および加熱制御回路板22は、双方方向に制御信号を入出力し合う。入出力制御回路板61は、加熱制御回路板22へ加熱制御信号を出力し、加熱制御回路板22は、入出力制御回路板61へ表示制御信号を出力する。
【0052】
入出力制御回路板61は、内蓋41の温度を検出する蓋温度センサー62と、報知部63と、を備えている。また、入出力制御回路板61のマイクロプロセッサーは、所定のプログラムを実行することで入出力制御部65として機能する。
【0053】
入出力制御部65の入力は、それぞれの操作キー56が出力する操作信号、および加熱制御回路板22が出力する表示制御信号である。これら入力に基づいて、入出力制御部65は、表示部55の表示動作を制御し、報知部63の動作を制御し、加熱制御回路板22へ加熱制御信号を出力する。
【0054】
入出力制御部65は、それぞれの操作キー56が出力する操作信号に対応する制御信号を生成する入力信号生成部66と、表示部55の表示動作を制御する表示制御部67と、入力信号生成部66および表示制御部67と連携して操作キー56で選択できる種々の条件の提示、選択、および設定を可能にする条件設定部68と、を含んでいる。
【0055】
条件設定部68は、例えば調理コースおよび炊飯コースを含む複数のコースを順次に提示し、所望のコースの選択および設定を可能にする。
【0056】
加熱制御回路板22の記憶装置は、例えば米の種類、炊き方、かたさなど、操作キー56で選択できる種々の条件に対応する炊飯コースを記憶している。表示部55は、記憶装置が記憶する炊飯コースの種々の条件を表示し、操作キー56でそれら条件を選択する操作を受け付けることで、適宜に炊飯コースおよび調理コースの選択、および設定が行われる。
【0057】
蓋温度センサー62は、例えば半導体温度センサーである。蓋温度センサー62が検出する内蓋41の温度は、蓋ヒーター38による内蓋41の加熱温度の管理にもっぱら利用される。蓋温度センサー62は、入出力制御回路板61の雰囲気温度を検知する。蓋温度センサー62の検知温度、つまり入出力制御回路板61の雰囲気温度は、内蓋41の温度、放熱板37の温度、および外蓋カバー36の温度に相関する。つまり、蓋温度センサー62の検知温度から内蓋41の温度が推測できる。
【0058】
報知部63は、点灯または点滅する光源、例えばランプ、または発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)であり炊飯器1の使用者の視覚に訴えるもの、電気的に合成された音声やブザー音などを発する発音器など炊飯器1の使用者の聴覚に訴えるもの、バイブレーターなど炊飯器1の使用者の触覚に訴えるもの、の少なくともいずれか1つである。
【0059】
蓋温度センサー62、表示部55、および入出力制御部65として機能するプロセッサーを入出力制御回路板61に実装することによって、炊飯器1の部品点数が削減される。また、入出力制御回路板61内で蓋温度センサー62、表示部55、および入出力制御部65として機能するプロセッサーを配線することができるため、入出力制御回路板61の回路構成が簡略化され、また費用を低減できる。
【0060】
操作パネル52は、電子部品である表示部55、複数の操作キー56、および入出力制御回路板61に埃や水が付着することを防止する。
【0061】
また、炊飯器1は、蓋体6の内部に設けられて蓋体6の開閉を検知する蓋開閉センサー69と、蓋体6の内部に設けられて鍋5の内圧を検出する圧力センサー79と、を備えている。
【0062】
蓋開閉センサー69は、ヒンジ機構7の近傍に配置されていることが好ましい。蓋開閉センサー69は、蓋体6の開閉に基づく検知信号を入出力制御回路板61へ出力できる限り、光学式、機械式、磁石式など、どのような検知方式のセンサーでも良い。
【0063】
本体3の加熱制御回路板22は、鍋温度センサー26が検出する温度および蓋温度センサー62が検出する温度に基づいて、炊飯時や保温時に加熱コイル11、フランジヒーター27および蓋ヒーター38を加熱調整して鍋5の温度や内蓋41の温度を制御する。
【0064】
加熱制御回路板22の入力は、鍋温度センサー26が出力する温度検知信号と、入出力制御部65が中継する、蓋温度センサー62が出力する温度検知信号と、入出力制御部65が出力する加熱制御信号と、である。
【0065】
これら入力に基づいて、加熱制御回路板22は、炊飯時および保温時に鍋5を加熱する加熱コイル11と、内蓋41を加熱する蓋ヒーター38と、鍋5のフランジ部12を加熱するフランジヒーター27と、をそれぞれ制御する。
【0066】
加熱制御回路板22は、鍋温度センサー26が出力する温度検知信号に基いて主に加熱コイル11を制御して鍋5の底部の温度を管理し、フランジヒーター27を制御して鍋5のフランジ部12の温度を管理する。加熱制御回路板22は、蓋温度センサー62が出力する温度検知信号に基いて主に蓋ヒーター38を制御して内蓋41の温度を管理する。
【0067】
加熱制御回路板22は、蒸気排出通路46の調圧弁47の開閉、および減圧ポンプ48の動作をそれぞれ制御する。
【0068】
加熱制御回路板22のマイクロプロセッサーは、所定のプログラムを実行することで炊飯制御部75および保温制御部76として機能する。
【0069】
炊飯制御部75は、操作パネル52に炊飯開始が入力されると、ひたし炊き工程、沸騰加熱工程、沸騰継続工程、およびむらし工程を順次に実行して、ご飯を炊き上げる。また、炊飯制御部75は、操作パネル52に調理開始が入力されると、調理工程を順次に実行する。
【0070】
保温制御部76は、保温工程を実行する。保温工程は、鍋5内のご飯を所定の保温温度に保つ単純保温工程、および鍋5内の所定の保温温度より低温なご飯を所定の保温温度に再加熱する再加熱保温工程を実行する。
【0071】
炊飯器1は、正常、異常、または誤使用を判断可能な診断部78を備えている。診断部78は、加熱制御回路板22のマイクロプロセッサーで実行される炊飯制御部75、および保温制御部76の一部であっても良いし、それらとは別個に実行される単独のプログラムであっても良い。診断部78は、入出力制御回路板61のマイクロプロセッサーで実行される入出力制御部65の一部であっても良いし、それらとは別個に実行される単独のプログラムであっても良い。診断部78は、入出力制御回路板61および加熱制御回路板22の少なくとも一方に実装される論理回路を含むハードウェアであっても良い。
【0072】
加熱制御回路板22の記憶装置は、調圧弁34および減圧ポンプ48の駆動タイミングを様々に組み合わせた加減圧類型、および加熱コイルの通電時間と出力とを様々に組み合わせた通電類型、炊飯コースおよび調理コースにおける、それら類型の実行タイミングの組み合わせを記憶している。
【0073】
炊飯器1による炊飯動作の一例を説明する。
【0074】
被炊飯物が鍋5内に入れられる。次いで被炊飯物を収容した鍋5が本体3の鍋収容部2に収容され、蓋体6が閉じられる。
【0075】
炊飯器1の電源プラグが商用交流電源のコンセントに差し込まれると、炊飯器1は炊飯や保温を実行していない初期状態で起動する。初期状態は、待機状態、または停止状態とも呼ばれる。待機状態で操作キー56が操作される都度に、操作された操作キー56に対応する操作信号が入力信号生成部66に入力される。条件設定部68は、入力信号生成部66と連携してコースの設定を変更し、表示制御部67と連携して変更された設定を表示部55に表示させる。表示部55は、操作された操作キー56に対応する現在のコース設定を炊飯器1の使用者に視覚的に提示する。
【0076】
コースの決定に対応する操作キー56が操作されると、コースの決定に対応する操作信号が入力信号生成部66に入力される。条件設定部68は、表示部55に表示されているコースを記憶装置に記憶し、選択されたコースに対応する加熱パターンを加熱制御回路板22へ出力する。加熱制御回路板22の炊飯制御部75は、入力された加熱パターンに沿ってひたし炊き工程、沸騰加熱工程、沸騰継続工程、およびむらし工程を実行する。
【0077】
ひたし炊き工程では、炊飯制御部75は、調圧弁47、および減圧ポンプ48を制御して鍋5の内圧を減圧する。具体的には、ひたし炊き工程が開始されると、炊飯制御部75は、調圧弁47を閉じて蒸気排出通路46における気体の流通を遮断し、減圧ポンプ48を動作させて鍋5内の気体を炊飯器1の外部へ排気する。炊飯制御部75は、減圧ポンプ48を動作させ、密閉した鍋5の内部の空気を減圧ポンプ48で抜き取る真空引きを行なう。炊飯制御部75は、圧力センサー79が出力する鍋5の内圧検知信号に基づいて鍋5内の内圧が所定の値以下に維持されるように減圧ポンプ48を制御する。つまり、ひたし炊き工程の全期間に亘って、鍋5の内圧は、大気圧よりも低い減圧状態に保たれる。
【0078】
炊飯制御部75は、鍋温度センサー26が出力する温度検知信号検知に基づいて加熱コイル11の通電をスイッチングして鍋5を加熱し、米の吸水を促進させる。このとき、鍋5の温度が所定の温度に到達するまでに要する時間、および加熱量から被炊飯物の炊飯量を推定する。ひたし炊き工程は、予め定める所定の時間が経過すると終了する。
【0079】
沸騰加熱工程では、炊飯制御部75は、被炊飯物の沸騰が検知されるまで、加熱コイル11を連続通電する。鍋5内の被炊飯物は、ひたし炊き工程よりも強く加熱され、被炊飯物の温度は、短時間で沸騰温度まで上昇する。また、炊飯制御部75は、減圧ポンプ48を停止させ、調圧弁47を閉じた状態で維持する。そのため、ひたし炊き行程から沸騰加熱工程に移行した後も、鍋5の内圧は、水分の気化、および微少漏洩により徐々に上昇するものの、沸騰加熱工程の初期段階においては減圧状態に維持される。減圧ポンプ48と減圧孔49との間を繋ぐ通路に開閉弁が設けられている場合には、この開閉弁を閉じることが好ましい。鍋5の内圧が大気圧よりも減圧されていることで、米は、短時間に芯まで吸水し、水は、摂氏100度以下の温度で沸騰する。米の糊化温度とされる摂氏60度から摂氏100度で被炊飯物を沸騰させることによって、水の内部から生じる泡で米が舞い、米の加熱ムラが防がれる。
【0080】
次いで、炊飯制御部75は、鍋5の底部の温度が所定温度、例えば摂氏100度に達すると鍋5内の被炊飯物が減圧環境下で沸騰したものと判断し、減圧ポンプ48を停止させたまま、調圧弁47を開放する。そうすると、鍋5の内圧は、直ちに大気圧まで回復する。
【0081】
その後、炊飯制御部75は、鍋5の底部の温度が所定温度以上、例えば摂氏90度以上になり、かつ内蓋41の温度が所定温度以上、例えば摂氏90度以上になると、調圧弁47を閉じ、減圧ポンプ48をさせて加圧下における被炊飯物の沸騰検知を開始する。炊飯制御部75は、鍋5の底部の単位時間あたりの温度上昇率、および内蓋41の単位時間あたりの温度上昇率を監視し、それら温度上昇率が所定の上昇率以下になると被炊飯物が沸騰したものと判断する。
【0082】
なお、炊飯制御部75は、蓋温度センサー62が検知する入出力制御回路板61の雰囲気温度から内蓋41の温度を推測する。
【0083】
沸騰継続工程では、炊飯制御部75は、加熱コイル11の通電およびフランジヒーター27の通電をスイッチングして鍋5の底部の温度を所定の温度以上、例えば摂氏98度以上に維持し、蓋ヒーター38を連続通電して内蓋41の温度を所定の温度以上、例えば摂氏98度以上に維持する。
【0084】
炊飯制御部75は、鍋5の底部の温度上昇率が所定の上昇率以上になる、または鍋5内の余剰な水分が無くなるドライアップ温度、例えば摂氏120度に達すると、被炊飯物の炊き上がりを判断して沸騰継続工程を終える。
【0085】
むらし工程では、炊飯制御部75は、内蓋41の温度に基づいて蓋ヒーター38の通電をスイッチングし、内蓋41への露付きを防止する。また、炊飯制御部75は、鍋5の底部の温度に基づいて加熱コイル11の通電をスイッチングし、被炊飯物の温度を管理する。むらし工程は、予め定められる所定の時間継続する。むらし工程が終了すると、炊飯制御部75は、炊飯動作を完了し、保温制御部76は、保温工程を開始する。
【0086】
炊飯動作を終えた加熱制御回路板22は、炊飯動作の終了に対応する表示制御信号を出力する。この表示制御信号が入力された入出力制御回路板61は、表示部55の表示動作を制御し、報知部63の報知動作を制御して炊飯工程の完了を使用者に知らせる。
【0087】
保温制御部76は、ご飯の温度が炊き立ての温度、実質的に摂氏100度から保温温度、実質的に摂氏73度に低下するまでフランジヒーター27を発熱させ、摂氏73度で保温温度が安定した後にもフランジヒーター27を発熱させる。フランジヒーター27は、本体3の金属板部28から本体3と蓋体6との隙間Gへ熱を放射し、隙間Gから侵入する外気による保温温度の低下を抑制し、かつ鍋5を加熱する。保温制御部76は、鍋5の底部の温度が一定になるように加熱コイル11の出力を調整する。
【0088】
炊飯器1は、鍋5内のご飯を再加熱することもできる。炊飯器1は、鍋5内のご飯を再加熱する期間にもフランジヒーター27を発熱させ、ご飯の再加熱によって発生する蒸気が鍋5の内面上部に結露することを防止する。
【0089】
図4は、本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の上面図である。
【0090】
図4に示すように、本実施形態に係る炊飯器1の表示部55は、複数の表示要素81を含んでいる。図4では、表示部55で表示可能なすべての表示要素81が図示されている。
【0091】
複数の表示要素81は、文字、文字列、数字、アイコン、および7セグメントディスプレイによって表現される。複数の表示要素81は、時計用表示要素81a、お米表示要素81b、炊き方表示要素81c、および予約表示要素81dを含んでいる。複数の表示要素81は、時計用表示要素81a、お米表示要素81b 、炊き方表示要素81c、および予約表示要素81dを含んでいる。
【0092】
時計用表示要素81aは、現在時刻、予約時刻、予想される炊飯所要時間、炊飯完了までの残り時間など時間を表示する表示要素81である。お米表示要素81b は、白米、コシヒカリ、ひとめぼれ、玄米など、お米の種類を表示する表示要素81である。炊き方表示要素81cは、エコ炊飯、本かまど、ねらい炊きなど、炊き方を表示する表示要素81である。それぞれの炊き方は、相互に異なる温度パターンの設定を有している。予約表示要素81dは、予約炊飯の設定時、および予約炊飯時に表示される。
【0093】
複数の操作キー56は、表示部55に覆い被さるタッチセンサー82を含んでいる。タッチセンサー82は、接触型であっても良いし、非接触型であっても良い。
【0094】
また、複数の操作キー56は、保温キー91と、予約キー92と、炊飯キー93と、炊き方キー95と、を含んでいる。さらに、複数の操作キー56は、上向き三角形「△」の記載を有する進むキー96と、下向き三角形「▽」の記載を有する戻るキー97と、切キー98と、お米キー99と、を含んでいる。
【0095】
保温キー91、予約キー92、炊飯キー93、および炊き方キー95は、表示部55の右側に整列している。進むキー96、戻るキー97、切キー98、およびお米キー99は、表示部55の左側に整列している。
【0096】
タッチセンサー82を除く複数の操作キー56は、押し込まれると操作信号を出力するスイッチ、例えばタクトスイッチである。説明の便宜のため、タッチセンサー82を除く操作キー56を、以下、押込キー56と呼ぶ、
複数の押込キー56は、相互に異なる操作信号に対応付けられている。それぞれの押込キー56は、操作信号に対応する名称が記載された意匠面を有している。
【0097】
切キー98は、炊飯や保温の中止を意図して操作される。切キー98が操作されると、炊飯器1は、炊飯動作や保温工程を中止して待機状態に遷移する。
【0098】
炊き方キー95は、被炊飯物の炊き方の選択を意図して操作され、お米キー99は、米の種類の選択を意図して操作される。それら2つの操作キー95、99によって、お米の種類と炊き方とを好適に組み合わせた炊飯コースを設定することができる。
【0099】
炊飯キー93は、炊飯の開始を意図して操作される。炊飯キー93が操作されると、炊飯器1は、炊飯動作を開始する。
【0100】
炊き方キー95、お米キー99、および炊飯キー93は、組み合わせて操作される。つまり、炊き方キー95およびお米キー99が操作されることでコースが選択され、その後に炊飯キー93が操作されることで選択されたコースによる調理が開始する。
【0101】
進むキー96、および戻るキー97は、現在時刻、炊飯動作の予約時刻、調理時間など時の設定を意図して操作される。
【0102】
例えば進むキー96を所定の時間、例えば2秒以上長押し操作することで炊飯器1は、時刻合わせ可能な時刻合わせモードに遷移する。時刻合わせモードでは、表示部55は、現在時刻を点滅表示し、点滅表示中の現在時刻は、進むキー96が操作される都度1分進み、戻るキー97が操作される都度1分戻る。また、点滅表示中の現在時刻は、進むキー96が操作された状態が所定の時間継続すると10分単位で進み、戻るキー97が操作された状態が所定の時間継続すると10分単位で戻る。切キー98が操作されると現在時刻の点滅表示が止み、時刻合わせモードが終了する。
【0103】
予約キー92は、炊飯の予約を意図して操作される。予約キー92が操作されると、炊飯器1は、炊飯の予約を設定可能な予約モードに遷移する。予約モードの炊飯器1は、炊飯キー93の第一表示灯101を点滅し、表示部55に予約設定を行うための画面を表示する。また、予約モードの炊飯器1は、予約時刻の設定、およびコースの選択を受け付ける。予約時刻は、進むキー96が操作される都度10分単位で進み、戻るキー97が操作される都度10分単位で戻る。コースは、炊き方キー95およびお米キー99の操作によって選択される。予約モードで炊飯キー93が操作されると、予約キー92の第二表示灯102が点灯して予約が確定する。炊飯器1は、予約時刻に被炊飯物が炊き上がるように炊飯制御部75を動作させる。表示部55は、炊飯制御部75の動作が開始するまで予約待機中であることを識別可能に表示する。予約待機中画面は、例えば炊き上げを開始するまでの残り時間を含む。
【0104】
保温キー91は、保温を意図して操作される。保温キー91が操作されると、炊飯器1は、保温工程を開始する。
【0105】
タッチセンサー82は、平面に配列される複数のキー要素を備えている。それぞれのキー要素は、例えば導電性ポリマーを用いた透明電極部と、入出力制御回路板61に接続される接点部と、透明電極部と接点部とを繋ぐパターン配線と、を備えている。タッチセンサー82は、表示部55の真上に覆い被さっている。表示部55が表示するいずれかの表示要素81に指先を押さえつける、接する、または近づけることで、その表示要素81の真上に配置されるキー要素が操作される。このキー要素が受け付ける操作は、その真下に表示されている表示部55の表示要素の選択として入出力制御回路板61へ出力される。
【0106】
炊飯器1は、表示部55に加えて、炊飯キー93に配置される第一表示灯101と、予約キー92に配置される第二表示灯102と、保温キー91に配置される第三表示灯103と、を備えている。それらの表示灯101、102、103は、炊飯器1の現在の状態を表示する。表示灯101、102、103は、点灯または点滅する光源であり、例えばランプ、または発光ダイオードである。保温キー91の第三表示灯103は、保温工程の実行中に点灯する。予約キー92の第二表示灯102は、予約が確定して炊飯動作を待機している状態で点灯する。炊飯キー93の第一表示灯101は、炊飯動作中に点灯する。
【0107】
なお、表示部55や表示灯101、102、103の表示態様は、加熱調理器の仕様に応じて適宜変更される。
【0108】
そして、本実施形態に係る炊飯器1の複数の操作キー56は、キーロック機能の有効化および無効化の操作を受け付けるキーロック操作キー105を含んでいる。
【0109】
キーロック機能が無効化されたキーロック解除状態の炊飯器1は、キーロック操作キー105がキーロック受付時間Tc1以上継続して操作されると、キーロック機能を有効化する処理を行ってキーロック状態へ遷移する。キーロック状態の炊飯器1は、操作キー56が操作されてもその操作を無効とする。キーロック状態の場合には、入出力制御部65は、操作キー56から入力される操作信号に応じた機能を実行しない。キーロック受付時間Tc1は、例えば3秒間である。また、キーロック操作キー105の操作継続時間がキーロック受付時間Tc1未満であってキーロック解除状態からキーロック状態へ遷移する途中の炊飯器1の動作を、キーロック有効化動作と呼ぶ。
【0110】
一方、キーロック機能が有効化されたキーロック状態の炊飯器1は、キーロック操作キー105がキーロック解除時間Tc2以上継続して操作されると、キーロック機能を無効化する処理を行ってキーロック解除状態へ遷移する。キーロック解除時間Tc2は、キーロック受付時間Tc1と同じであっても良いし、異なっていても良い。キーロック解除時間Tc2は、キーロック受付時間Tc1以下であることが好ましい。説明の便宜のため、キーロック解除時間Tc2は、キーロック受付時間Tc1と同じ3秒間とする。また、キーロック操作キー105の操作継続時間がキーロック解除時間Tc2未満であってキーロック状態からキーロック解除状態へ遷移する途中の炊飯器1の動作を、キーロック無効化動作と呼ぶ。
【0111】
また、説明の便宜のため、戻るキー97がキーロック操作キー105を兼務するものとする。戻るキー97は、時の設定に用いられる一方、時の設定が行われていない状況下でキーロック操作キー105として機能する。
【0112】
なお、キーロック操作キー105は、タッチセンサー82、保温キー91、予約キー92、炊飯キー93、炊き方キー95、進むキー96、戻るキー97、切キー98、およびお米キー99以外の単一の機能を有する単独の操作キー56であっても良い。キーロック操作キー105は、タッチセンサー82、保温キー91、予約キー92、炊飯キー93、炊き方キー95、進むキー96、戻るキー97、切キー98、およびお米キー99から2つ以上の操作キー56を同時に操作すること、または予め定める順序で操作することで代えることもできる。「2つ以上の操作キー56を同時に操作する」とは、2つ以上の操作キー56が全く同時に操作される場合だけでなく、操作の開始時期は異なるが、操作されている時間が重なる場合を含む。
【0113】
入出力制御部65は、キーロック操作キー105の操作信号に基づいてキーロック機能、キーロック有効化動作、およびキーロック無効化動作を実行する。
【0114】
ところで、使用者自身が意図せずキーロック操作キー105を操作してしまうことがある。例えば、蓋体6の開閉時にキーロック操作キー105にキーロック受付時間Tc1以上触れてしまうような状況である。また、子供やペットが使用者の意思に関わりなくキーロック操作キー105を操作してしまうことがある。それらのようなキーロック操作キー105の操作が行われた場合には、炊飯器1は、使用者の意図に反してキーロック状態へ遷移してしまう。
【0115】
そこで、本実施形態に係る炊飯器1の表示部55は、少なくともキーロック解除操作を含む所定操作以外の操作を無効とするキーロック状態、キーロック状態が解除されたキーロック解除状態、およびキーロック操作キー105の操作継続時間がキーロック受付時間Tc1未満であってキーロック解除状態からキーロック状態へ遷移する途中であるキーロック有効化操作継続状態の少なくとも3つの状態を識別可能に表示する。
【0116】
図5は、本実施形態に係る加熱調理器のキーロック有効化動作を模式的に表現するタイミングチャートである。
【0117】
図5に示すように、本実施形態に係る炊飯器1の表示部55は、キーロック状態を識別する表示として鍵アイコン111を表示する。また、表示部55は、キーロック解除状態を識別する表示画面として鍵アイコン111を非表示にする。キーロック状態およびキーロック解除状態において、表示部55は、炊飯動作中、保温工程中、予約待機中、停止中(待機中)など、炊飯器1の現在の動作状態を表現する少なくとも1つの表示要素81を含んでいる。現在の動作状態を表現する少なくとも1つの表示要素81を、説明の便宜のために現在状態表示要素112と呼ぶ。つまり、キーロック状態の表示部55は、ロック画面SL(第一画面)のように鍵アイコン111と現在状態表示要素112とを同時に表示し、キーロック解除状態の表示部55は、アンロック画面SUL(第二画面)のように鍵アイコン111を表示せずに現在状態表示要素112を表示する。
【0118】
さらに、表示部55は、キーロック有効化操作継続状態を識別する表示としてキーロック遷移中アイコン113を表示する。キーロック有効化操作継続状態において、表示部55は、全ての現在状態表示要素112を表示しても良いし、現在状態表示要素112の一部を表示しても良いし、遷移途中画面SW1、SW2のように全ての現在状態表示要素112を非表示にしても良い。つまり、キーロック有効化操作継続状態の表示部55は、現在状態表示要素112の有無にかかわらずキーロック遷移中アイコン113を表示する。
【0119】
また、表示部55は、キーロック操作キー105の操作継続中、つまりキーロック受付時間Tc1が経過する間に、相互に異なる少なくとも2つの遷移途中画面SW1、SW2を時系列に表示する。この2つの画面SW1、SW2の時系列な表示は、見る者に動画A(アニメーション)として認識される。動画Aは、単に遷移途中画面SW1、SW2のいずれか一方を表示部55に表示し続ける場合に比べて、表示部55を見ている者の注意を引きやすい。
【0120】
一方の遷移途中画面SW1は、キーロック遷移中アイコン113として、例えば⊂アイコン115を表示し、他方の遷移途中画面SW2は、キーロック遷移中アイコン113として、例えば∩アイコン116を表示する。2つの遷移途中画面SW1、SW2は、等間隔、または不等間隔で交互に表示部55に表示される。キーロック受付時間Tc1が例えば3秒間で、遷移途中画面SW1、SW2が1秒ごとに表示される場合には、表示部55は、キーロック操作キー105の操作開始から1秒後に一方の遷移途中画面SW1を表示し、キーロック操作キー105の操作開始から2秒後に他方の遷移途中画面SW2を表示する。
【0121】
なお、⊂アイコン115および∩アイコン116は、表示部55の現在状態表示要素112の1つである7セグメントディスプレイを用いて表現される。キーロック遷移中アイコン113は、⊂アイコン115および∩アイコン116に限られず、キーロック受付時間Tc1の進行を表現できる範囲で複数の現在状態表示要素112を適宜用いて良い。
【0122】
また、表示部55は、炊飯器1がキーロック状態に遷移した直後、キーロック操作キー105が未だ操作されている状態でロック完了画面SLCを表示する。ロック完了画面SLCは、ロック画面SLとの違いを容易に識別できるよう、鍵アイコン111のみを表示することが好ましいが、ロック画面SLの表示される現在状態表示要素112の一部を含んでいても良い。
【0123】
報知部63は、キーロック操作キー105のキーロック機能の有効化のための操作継続中に継続的に、または間欠的に音を発し、または振動して炊飯器1がキーロック有効化動作の実行中であることを報知する。報知部63の報知動作は、遷移途中画面SW1、SW2の表示タイミングに同期していても良いし、非同期であっても良い。一例として、報知部63は、遷移途中画面SW1、SW2のそれぞれの表示タイミングにビープ音を1回発し、キーロック機能が有効化するタイミングでビープ音を2回発する。報知部63は、ビープ音に代えて、またはビープ音に同期させて蓋体6を振動させても良い。つまり、報知部63は、キーロック受付時間Tc1に少なくとも2回の報知を行う。
【0124】
つまり、キーロック解除状態の入出力制御部65は、キーロック操作キー105の操作が開始されると計時を開始し、操作継続時間に基づいてキーロック有効化操作継続状態であることを表示し、または表示および報知し、操作継続時間がキーロック受付時間Tc1以上になるとキーロック機能を有効化する。
【0125】
図5に示すように、表示部55にキーロック有効化操作継続状態を表示する炊飯器1は、意図的なキーロック操作キー105の操作、および意図しないキーロック操作キー105の操作のどちらであっても、キーロック操作キー105が操作されていること、炊飯器1がキーロック解除状態からキーロック状態へ遷移する過程であることを、キーロック操作キー105を操作している者に認知させる。
【0126】
また、図5に示すように、表示部55に報知部63を加えてキーロック有効化操作継続状態を表現する炊飯器1は、意図的な操作、および意図しない操作の何れに係わらず、キーロック操作キー105が操作されていること、炊飯器1がキーロック解除状態からキーロック状態へ遷移する過程であることを、キーロック操作キー105を操作している者に、より容易に認知させる。
【0127】
図6は、本実施形態に係る加熱調理器のキーロック無効化動作を模式的に表現するタイミングチャートである。
【0128】
図6に示すように、本実施形態に係る炊飯器1の表示部55は、キーロック操作キー105の操作継続時間がキーロック解除時間Tc2未満であってキーロック状態からキーロック解除状態へ遷移する途中であるキーロック無効化操作継続状態を識別可能に表示する。表示部55は、キーロック操作キー105の操作継続中、つまりキーロック解除時間Tc2が経過する間に、相互に異なる少なくとも2つの遷移途中画面SW2、SW1を時系列に表示する。キーロック無効化動作における2つの画面SW2、SW1の時系列な表示は、キーロック有効化動作における2つの画面SW1、SW2の時系列な表示の逆順であることが好ましい。つまり、キーロック解除時間Tc2が例えば3秒間で、遷移途中画面SW2、SW1が1秒ごとに表示される場合には、表示部55は、キーロック操作キー105の操作開始から1秒後に一方の遷移途中画面SW2を表示し、キーロック操作キー105の操作開始から2秒後に他方の遷移途中画面SW1を表示する。
【0129】
報知部63は、キーロック操作キー105のキーロック機能の無効化のための操作継続中に継続的に、または間欠的に音を発し、または振動して炊飯器1がキーロック無効化動作中であることを報知する。報知部63の報知動作は、遷移途中画面SW2、SW1の表示タイミングに同期していても良いし、非同期であっても良い。一例として、報知部63は、遷移途中画面SW2、SW1のそれぞれの表示タイミングに短いビープ音を2回発し、キーロック機能が無効化するタイミングで長いビープ音を1回発する。報知部63は、ビープ音に代えて、またはビープ音に同期させて蓋体6を振動させても良い。つまり、報知部63は、キーロック解除時間Tc2に少なくとも2回の報知を行う。
【0130】
つまり、キーロック状態の入出力制御部65は、キーロック操作キー105の操作が開始されると計時を開始し、操作継続時間に基づいてキーロック無効化操作継続状態であることを表示し、または表示および報知し、操作継続時間がキーロック解除時間Tc2以上になるとキーロック機能を無効化する。
【0131】
図6に示すように、表示部55でキーロック無効化動作を表現する炊飯器1は、意図的な操作、および意図しない操作の何れに係わらず、キーロック操作キー105が操作されていること、炊飯器1がキーロック状態からキーロック解除状態へ遷移する過程であることを、キーロック操作キー105を操作している者に認知させる。
【0132】
また、図6に示すように、表示部55に報知部63を加えてキーロック無効化動作を表現する炊飯器1は、意図的な操作、および意図しない操作の何れに係わらず、キーロック操作キー105が操作されていること、炊飯器1がキーロック状態からキーロック解除状態へ遷移する過程であることを、キーロック操作キー105を操作している者により容易に認知させる。
【0133】
図7(a)から図7(c)は、本実施形態に係る炊飯器の電源喪失時のキーロック解除動作を模式的に表現する状態遷移図である。
【0134】
図7(a)から図7(c)に示すように、本実施形態に係る炊飯器1の表示部55は、例えば待機中、調理中、予約待機中を含む複数の運転状態のうち、予め定める解除運転状態において電力線8が外部電源から切り離された場合には、キーロック解除状態を維持し、またはキーロック解除状態へ遷移する。
【0135】
つまり、図7(a)に示すように、入出力制御部65は、キーロック状態、かつ解除運転状態で炊飯器1が電源を喪失した場合には、電源再投入時にキーロック機能を無効化してキーロック解除状態へ遷移する。電源喪失前の表示部55は、ロック画面SLを表示し、電源再投入後の表示部55は、アンロック画面SULを表示する。
【0136】
また、図7(b)に示すように、入出力制御部65は、キーロック状態、かつ非解除運転状態で炊飯器1が電源を喪失した場合には、電源再投入時にキーロック状態を維持する。電源喪失前の表示部55、および電源再投入後の表示部55は、どちらもロック画面SLを表示する。
【0137】
さらに、図7(c)に示すように、入出力制御部65は、キーロック解除状態で炊飯器1が電源を喪失した場合には、電源喪失前の運転状態が解除運転状態であったか非解除運転状態であったかに関わりなく、自らキーロック機能を有効化することなく、電源再投入時にキーロック解除状態を維持する。電源喪失前の表示部55、および電源再投入後の表示部55は、どちらもアンロック画面SULを表示する。
【0138】
入出力制御回路板61の記憶装置は、電源喪失前に炊飯器1がキーロック状態およびキーロック解除状態の何れであったか、また電源喪失前に炊飯器1の運転状態が解除運転状態および非解除運転状態の何れであったか、記憶している。
【0139】
解除運転状態は、炊飯器1の使用者が意図的に電力線8を外部電源から切り離すことが想定される運転状態であって、少なくとも待機状態(初期状態、停止状態)、単純保温工程、および再加熱保温工程を含む保温工程の実行状態を含む。使用者の意図に反して炊飯器1がキーロック状態に遷移してしまい、使用者がキーロック機能の無効化を所望しているにも係わらず、その操作方法を失念したような状況において、外部電源から電力線8を離脱することで、使用者は、意図的に炊飯器1のキーロック機能を無効化できる。
【0140】
非解除運転状態は、炊飯器1の使用者の意図に反して電力線8が外部電源から切り離されることが想定される運転状態であって、解除運転状態から除外される運転状態である。非解除運転状態の炊飯器1は、電源喪失前後でキーロック状態を維持する。非解除運転状態は、少なくとも、いずれかの炊飯コースの実行状態、つまり炊飯動作の実行状態、いずれかの調理コースの実行状態、および予約待機状態を含む。使用者が意図的にキーロック機能を有効化して炊飯器1をキーロック状態に遷移させ、使用者の意図に反して炊飯器1の電源が喪失、例えば停電してしまった状況において、炊飯器1は、使用者の意図に反するキーロック機能の無効化を回避し、使用者の意図に沿って電源再投入後もキーロック状態を維持する。
【0141】
ただし、非解除運転状態であっても、鍋5の内圧が大気圧以上に加圧されている状況下では、電源再投入時にキーロック機能が無効化されてキーロック解除状態へ遷移することが好ましい。鍋5の加圧中に電源喪失した後、電源再投入後に炊飯器1のキーロック状態が維持されていると不都合になるので、これを回避する。
【0142】
図8は、本実施形態に係る加熱調理器の異常時または故障時とキーロック無効化動作との関係の一例を示す図である。
【0143】
図8に示すように、本実施形態に係る炊飯器1の診断部78が判断する異常は、少なくともヒーター回路故障、およびセンサー回路故障を含んでいる。ヒーター回路故障は、加熱コイル11、フランジヒーター27、または蓋ヒーター38が供給電力(入力)に対して充分に発熱しない、または異常加熱してしまう状況である。ヒーター回路故障の判断は、鍋温度センサー26が検知する鍋5の温度、および蓋温度センサー62が検知する内蓋41の温度に基づいて行われる。センサー回路故障は、鍋温度センサー26が検知する鍋5の温度、または蓋温度センサー62が検知する内蓋41の温度が異常値を示す状況である。
【0144】
診断部78が判断する誤使用は、少なくとも冷却ファン25に繋がる通気口21の閉塞、鍋5と鍋収容部2との間における異物の挟み込み、鍋5の未収容を含んでいる。冷却ファン25に繋がる通気口21が閉塞しているか否かは、加熱制御回路板22に実装される、例えばパワー半導体のような素子の温度とその継続時間によって判断できる。異物が挟み込まれているか否かは、加熱コイル11で鍋5を加熱した際の単位時間あたりの温度上昇率によって判断できる。鍋5が収容されているか否かは、加熱コイル11に流れる電流値の大小によって判断できる。
【0145】
そして、炊飯器1は、運転状態のうち、予め定める第二解除運転状態において診断部78が異常または誤使用を判断した場合には、キーロック解除状態を維持し、またはキーロック解除状態へ遷移する。
【0146】
ヒーター回路故障、および通気口21の閉塞の場合には、第二解除運転状態は、例えば、炊飯コースまたは調理コースの実行状態、予約待機状態、および保温工程の実行状態である。待機状態では、ヒーター回路故障、および通気口21の閉塞の判断は行われていない。
【0147】
センサー回路故障の場合には、例えば、待機状態、炊飯コースまたは調理コースの実行状態、予約待機状態、および保温工程の実行状態である。
【0148】
鍋5と鍋収容部2との間の異物の挟み込みの場合には、第二解除運転状態は、炊飯コースまたは調理コースの実行状態である。待機状態、予約待機状態、および保温工程の実行状態では、異物の挟み込みの判断は行われていない。
【0149】
鍋5の未収容の場合には、第二解除運転状態は、例えば、炊飯コースまたは調理コースの実行状態、および予約待機状態である。待機状態では、鍋5の未収容の判断は行われていない。
【0150】
保温工程では、炊飯器1から鍋5が一時的に取り出される可能性がある。ご飯を鍋5から別な容器へ移し替えるような状況が、これに相当する。したがって、鍋5の未収容の場合であっても、保温工程の実行状態は、第二解除運転状態から除かれる。
【0151】
以上のように、炊飯器1は、診断部78が異常、または保温工程における鍋5の未収容を除く誤使用を判断した場合には、キーロック機能を無効化してキーロック解除状態へ遷移する。そうすることで、炊飯器1は、異常が判断された場合、または誤って使用されている場合に、キーロック状態、つまり操作不能な状態に陥ることを回避する。
【0152】
一方、保温工程における鍋5の未収容が判断される状況は、操作キー56の操作の必要性は少ない。そこで、そのような状況を第二解除運転状態から除外することで、炊飯器1は、誤使用判断下であっても使用者の意図に反するキーロック機能の無効化を回避し、使用者の意図に沿ってキーロック状態を維持する。
【0153】
図9は、本実施形態に係る加熱調理器のキーロック顕示動作を模式的に表現する状態遷移図である。
【0154】
図9に示すように、本実施形態に係る炊飯器1の表示部55は、少なくともキーロック解除操作を含む所定操作以外の操作を無効とするキーロック状態を識別可能なロック画面SLと、キーロック解除状態を識別可能なアンロック画面SULと、を表示する。
【0155】
キーロック状態の炊飯器1の表示部55は、複数の操作キー56が操作されていない場合には、鍵アイコン111を含むロック画面SLの表示を継続する。そして、ロック画面SLを表示する表示部55は、キーロック操作キー105を除く複数の操作キー56が操作された場合には、ロック画面SLに含まれる複数の表示要素81の少なくとも一部を非表示し、かつキーロック状態を識別する表示要素81である鍵アイコン111を点滅表示するロック顕示動画AAを表示する。
【0156】
つまり、表示部55は、キーロック操作キー105を除く複数の操作キー56が操作された場合には、鍵アイコン111が際立って視認されるロック顕示動画AAを表示する。そうすることで、炊飯器1は、使用者が失念していようが不知であろうが、キーロック状態であることを使用者に顕示して、操作キー56の入力に関連する故障を疑う余地を取り除く。
【0157】
なお、本実施形態に係る加熱調理器は、炊飯器1に限られず、電子レンジ、IHクッキングヒーター、電気圧力鍋などの操作キー56を有する調理器であっても良い。
【0158】
以上のように構成される本実施形態に係る加熱調理器は、キーロック状態、キーロック解除状態、およびキーロック有効化操作継続状態の少なくとも3つの状態を識別可能に表示する表示部55を備えている。そのため、加熱調理器は、意図する操作、および意図しない操作の何れに係わらず、キーロック操作キー105が操作されていること、炊飯器1がキーロック解除状態からキーロック状態へ遷移する過程であることを、キーロック操作キー105を操作している者に認知させることができる。
【0159】
したがって、キーロック機能の有効化を意図している炊飯器1の使用者は、そのためのキーロック操作キー105の操作が炊飯器1に確かに受け付けられていることを視覚で知ることができる。また、キーロック機能の有効化を意図していない者は、意図しないキーロック操作キー105の操作が炊飯器1に受け付けられていることを視覚で知り、キーロック操作キー105の操作を速やかに中止して、キーロック機能の有効化を回避することができる。
【0160】
また、本実施形態に係る加熱調理器は、キーロック操作キー105の操作継続中に、相互に異なる少なくとも2つの遷移途中画面SW1、SW2を時系列に表示する表示部55を備えている。そのため、加熱調理器は、意図する操作、および意図しない操作の何れに係わらず、キーロック操作キー105が操作を受け付けていることを、キーロック操作キー105を操作している者に容易に認知させることができる。
【0161】
したがって、キーロック機能の有効化または無効化を意図している炊飯器1の使用者は、そのためのキーロック操作キー105の操作が炊飯器1に確かに受け付けられていることを動画Aで知ることができる。また、キーロック機能の有効化または無効化を意図していない者は、意図しないキーロック操作キー105の操作が炊飯器1に受け付けられていることを動画Aで知り、キーロック操作キー105の操作を速やかに中止して、キーロック機能の有効化または無効化を回避することができる。一般に動画Aは、遷移途中画面SW1、SW2のいずれか一方を表示し続ける場合に比べてキーロック操作キー105を操作する者の注意を引きやすい。
【0162】
さらに、本実施形態に係る加熱調理器は、キーロック操作キー105の操作継続中に継続的に、または間欠的に音を発し、または振動して報知する報知部63を備えている。そのため、加熱調理器は、意図する操作、および意図しない操作の何れに係わらず、キーロック操作キー105が操作を受け付けていることを、キーロック操作キー105を操作している者に容易に認知させることができる。
【0163】
したがって、キーロック機能の有効化または無効化を意図している炊飯器1の使用者は、そのためのキーロック操作キー105の操作が炊飯器1に確かに受け付けられていることを聴覚および触覚の少なくとも一方で知ることができる。また、キーロック機能の有効化または無効化を意図していない者は、意図しないキーロック操作キー105の操作が炊飯器1に受け付けられていることを聴覚および触覚の少なくとも一方で知り、キーロック操作キー105の操作を速やかに中止して、キーロック機能の有効化または無効化を回避することができる。キーロック操作キー105は表示部55の近傍に配置されているものの、視線によっては表示部55の表示内容が見逃される虞がある。聴覚および触覚によるキーロック操作キー105の操作の報知は、キーロック操作キー105を操作する者に、より容易に認知される。
【0164】
また、本実施形態に係る加熱調理器は、キーロック操作キー105の操作継続中に少なくとも2回の報知を行う報知部63を備えている。そのため、加熱調理器は、キーロック機能の有効化または無効化に係わらず、キーロック操作キー105を意図せず操作している者に、キーロック操作キー105が操作されていることを容易に認知させることができる。キーロック操作キー105を意図せず操作している者は、単発の報知を認知したとしても、その報知の意味するところに気付かない虞がある。そこで、加熱調理器は、少なくとも2回の報知を行うことによって、キーロック操作キー105を意図せず操作している者に、報知の重要性を認知させる。
【0165】
さらに、本実施形態に係る加熱調理器は、キーロック受付時間Tc1以下に設定されるキーロック解除時間Tc2の間、キーロック操作キー105の操作が継続すると、キーロック状態からキーロック解除状態へ遷移する。つまり、加熱調理器は、キーロック機能の有効化よりも、キーロック機能の無効化を速やかに行う。そのため、加熱調理器は、一定程度の時間、継続して操作キー56を操作する予定が無いと推定されるキーロック状態への遷移に比べて、操作キー56の速やかな操作の意図が推定されるキーロック解除状態への遷移を速やかに実行して使用者の利便に適う。
【0166】
また、本実施形態に係る加熱調理器は、停止、調理中、調理予約待機中を含む複数の運転状態のうち、予め定める解除運転状態において電力線8が外部電源から切り離された場合には、キーロック解除状態を維持し、またはキーロック解除状態へ遷移する。そのため、加熱調理器は、キーロック機能を無効化するための操作方法を使用者が失念したような状況において、使用者が意図的に電力線8を電源から切り離すことでキーロック機構を無効化することが可能であって、使用者の利便に適う。
【0167】
さらに、本実施形態に係る加熱調理器は、複数の運転状態のうち解除運転状態を除く非解除運転状態において電力線8が外部電源から切り離された場合には、キーロック状態を維持する。加熱調理器が電源喪失するケースは、先に説明したとおり使用者の意図に依拠するものと、停電のように使用者の意図に依拠しないものがある。そのため、加熱調理器は、非解除運転状態の電源喪失を使用者の意図に依拠しないものとして扱い、キーロック状態を維持することで、キーロック機能の有効化を所望する使用者の意図に沿い、利便に適う。
【0168】
また、本実施形態に係る加熱調理器は、停止、調理中、調理予約待機中を含む複数の運転状態のうち、予め定める第二解除運転状態において診断部78が異常または誤使用を判断した場合には、キーロック解除状態を維持し、またはキーロック解除状態へ遷移する。そのため、加熱調理器は、速やかな操作を必要とするような状況下で操作キー56が操作不能になることを回避できる。
【0169】
さらに、本実施形態に係る加熱調理器は、キーロック操作キー105を除く複数の操作キー56が操作された場合には、ロック画面に含まれる複数の表示要素81の少なくとも一部を非表示し、かつキーロック状態を識別する鍵アイコン111を点滅表示する動画を表示する表示部55を備えている。そのため、キーロック状態の加熱調理器は、使用者が任意の操作キー56を操作した際に、キーロック機能が有効化されていることを使用者に容易に認識させることができる。
【0170】
したがって、本実施形態に係る炊飯器1によれば、キーロック解除状態からキーロック状態へ遷移する過程にあることを使用者に容易に認知させることができる。
【0171】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0172】
1…炊飯器、2…鍋収容部、3…本体、5…鍋、6…蓋体、7…ヒンジ機構、8…電力線、11…加熱コイル、12…フランジ部、15…底板、16…上枠、17…内枠、18…外枠、19…制御部収容室、21…通気口、22…加熱制御回路板、23…放熱器、25…冷却ファン、26…鍋温度センサー、27…フランジヒーター、28…金属板部、31…ヒンジシャフト、32…ヒンジバネ、35…外蓋、36…外蓋カバー、37…放熱板、38…蓋ヒーター、39…内蓋ユニット、41…内蓋、42…蓋パッキン、43…パッキンベース、45…蒸気口ユニット、46…蒸気排出通路、47…調圧弁、48…減圧ポンプ、49…減圧孔、51…蓋開ボタン、52…操作パネル、55…表示部、56…操作キー、56…押込キー、61…入出力制御回路板、62…蓋温度センサー、63…報知部、65…入出力制御部、66…入力信号生成部、67…表示制御部、68…条件設定部、69…蓋開閉センサー、75…炊飯制御部、76…保温制御部、78…診断部、79…圧力センサー、81…表示要素、81a…時計用表示要素、81b…お米表示要素、81c…炊き方表示要素、81d…予約表示要素、82…タッチセンサー、91…保温キー、92…予約キー、93…炊飯キー、95…炊き方キー、96…進むキー、97…戻るキー、98…切キー、99…お米キー、101…第一表示灯、102…第二表示灯、103…第三表示灯、105…キーロック操作キー、111…鍵アイコン、112…現在状態表示要素、113…キーロック遷移中アイコン、115…⊂アイコン、116…∩アイコン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9