(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139044
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】映像記録システム及び作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20241002BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20241002BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20241002BHJP
B60R 1/27 20220101ALN20241002BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/00 C
H04N7/18 U
H04N7/18 J
B60R1/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049825
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多胡 尚
(72)【発明者】
【氏名】日暮 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 毅一
(72)【発明者】
【氏名】坂井 大斗
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 元気
【テーマコード(参考)】
2D015
5C054
【Fターム(参考)】
2D015HA03
5C054CA04
5C054CC02
5C054DA07
5C054FC12
5C054FD02
5C054FD03
5C054FE09
5C054GB02
5C054GB05
5C054GB15
5C054HA18
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】事故又はヒヤリハット事象の振り返りだけなく、防犯目的の監視又は故障箇所の抽出に適した作業機械の映像を記録することを目的とする。
【解決手段】映像記録システム100は、作業機械50の映像記録システムである。映像記録システム100は、作業機械50の車体3,4の前方に設けられたフロント作業装置5に設置されたカメラ22と、カメラ22によって撮影された映像33を記録する映像記録装置24と、を備える。カメラ22は、車体3,4へ向けて設置され、車体3,4を含む範囲を撮影する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の映像記録システムであって、
前記作業機械の車体の前方に設けられたフロント作業装置に設置されたカメラと、
前記カメラによって撮影された映像を記録する映像記録装置と、を備え、
前記カメラは、前記車体へ向けて設置され、前記車体を含む範囲を撮影する
ことを特徴とする映像記録システム。
【請求項2】
前記フロント作業装置は、前記車体に回転可能に支持されたブームと、前記ブームに回転可能に支持されたアームと、前記アームに回転可能に支持されたアタッチメントと、を備え、
前記カメラは、前記ブームに設置されたブームカメラである
ことを特徴とする請求項1に記載の映像記録システム。
【請求項3】
前記車体の後方へ向けて前記車体の後部に設置された後方カメラと、
前記車体の右方へ向けて前記車体の右部に設置された右方カメラと、
前記車体の左方へ向けて前記車体の左部に設置された左方カメラと、
前記フロント作業装置へ向けて前記車体の前部に設置された前方カメラと、
撮影された映像を処理する映像処理装置と、を更に備え、
前記映像処理装置は、前記後方カメラ、前記右方カメラ及び前記左方カメラによって撮影された各映像を合成して俯瞰映像を生成し、
前記映像記録装置は、前記映像処理装置によって生成された前記俯瞰映像、前記前方カメラによって撮影された映像、及び、前記ブームカメラによって撮影された映像を記録する
ことを特徴とする請求項2に記載の映像記録システム。
【請求項4】
前記ブームカメラは、前記ブームの軸線に交差する方向から前記ブームを挟んで設置された複数のブームカメラによって構成され、
前記映像処理装置は、前記ブームの映り込みによって前記車体が映らない一方のブームカメラの映像の死角範囲を、他方のブームカメラの映像によって補完して、前記ブームの映り込みが無い補完映像を生成し、
前記映像記録装置は、前記映像処理装置によって生成された前記補完映像を記録する
ことを特徴とする請求項3に記載の映像記録システム。
【請求項5】
前記映像処理装置は、前記複数のブームカメラによって撮影された各映像から物体を検知し、検知された前記物体を強調するマークを前記補完映像上に描画し、
前記映像記録装置は、前記マークが描画された前記補完映像を記録する
ことを特徴とする請求項4に記載の映像記録システム。
【請求項6】
前記映像処理装置は、前記後方カメラ、前記右方カメラ及び前記左方カメラに接続された第1映像処理装置と、前記複数のブームカメラに接続された第2映像処理装置と、によって構成され、
前記第1映像処理装置は、前記俯瞰映像を生成し、
前記第2映像処理装置は、前記補完映像を生成する
ことを特徴とする請求項4に記載の映像記録システム。
【請求項7】
前記作業機械は、前記車体の電力供給源であるバッテリと、前記バッテリから前記車体への電力経路上に設けられたキースイッチと、を備え、
前記ブームカメラ及び前記映像記録装置は、前記バッテリと前記キースイッチとの間の前記電力経路に接続され、前記キースイッチのオンオフ状態に関わらず、前記バッテリから電力供給を受ける
ことを特徴とする請求項3に記載の映像記録システム。
【請求項8】
前記作業機械は、外部のサーバとネットワークを介して無線通信を行う通信装置を備え、
前記通信装置は、前記バッテリと前記キースイッチとの間の前記電力経路に接続され、前記キースイッチのオンオフ状態に関わらず、前記バッテリから電力供給を受け、
前記映像記録装置は、記録された映像を前記通信装置へ出力して、前記サーバへ送信させる
ことを特徴とする請求項7に記載の映像記録システム。
【請求項9】
前記映像記録装置は、外部のモバイル機器との無線通信を行う通信部を備え、
前記通信部は、前記キースイッチのオンオフ状態に関わらず、記録された映像を前記モバイル機器へ送信する
ことを特徴とする請求項7に記載の映像記録システム。
【請求項10】
請求項1に記載の映像記録システムを搭載する作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像記録システム及びこれを搭載する作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械では、作業機械及びその周辺の安全確認を目的として、作業機械の車体に複数のカメラを設置し、撮影された各映像を合成して俯瞰映像を生成してディスプレイ等に表示するモニタシステムが一般的に導入されている。近年、作業機械に設置されたカメラの映像は、自動車と同様に、ドライブレコーダに記録され、後から事故又はヒヤリハット事象の振り返りに利用されている。
【0003】
特許文献1は、油圧ショベルの上部旋回体の左側面、右側面及び後面のそれぞれにカメラを設置し、これらのカメラの画像から俯瞰画像を生成する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業機械に設置されたカメラの映像は、防犯目的の監視用又は故障箇所の抽出用にも利用することができる。この場合、作業機械の車体に搭乗若しくは降機する人物、作業機械の車体に設けられた運転室内の人物、作業機械の原動機の様子、又は、作業機械の排気の様子等が映るよう、作業機械の車体自体が映る映像を撮影し記録することが重要である。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、油圧ショベルの上部旋回体の左側面、右側面及び後面のそれぞれに設置されたカメラが車体自体を撮影していない。特許文献1に開示された俯瞰画像内の車体部分には、車体を模擬したイラストが合成されている。したがって、特許文献1に開示された技術では、作業機械に設置されたカメラの映像を防犯目的の監視用又は故障箇所の抽出用として利用することは困難である。防犯目的の監視用又は故障箇所の抽出用として閲覧したい箇所の全てにカメラを設置することは、ドライブレコーダの入力チャネル数が限られていることから現実的ではない。
【0007】
上記事情に鑑みて、本発明は、事故又はヒヤリハット事象の振り返りだけなく、防犯目的の監視又は故障箇所の抽出に適した作業機械の映像を記録することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の映像記録システムは、作業機械の映像記録システムであって、前記作業機械の車体の前方に設けられたフロント作業装置に設置されたカメラと、前記カメラによって撮影された映像を記録する映像記録装置と、を備え、前記カメラは、前記車体へ向けて設置され、前記車体を含む範囲を撮影することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、事故又はヒヤリハット事象の振り返りだけなく、防犯目的の監視又は故障箇所の抽出に適した作業機械の映像を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施形態1の映像記録システムにおけるカメラの設置位置を示す図。
【
図3】実施形態1の映像記録システムの構成を説明する図。
【
図4】実施形態1の映像記録システムによって記録されユーザに閲覧される映像を説明する図。
【
図5】実施形態1の映像記録システムの他の構成を説明する図。
【
図6】実施形態2の映像記録システムにおけるカメラの設置位置を示す図。
【
図7】実施形態2の映像記録システムの構成を説明する図。
【
図8】実施形態2の映像記録システムによって記録されユーザに閲覧される映像を説明する図。
【
図9】実施形態2の映像記録システムの他の構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0012】
[実施形態1]
図1~
図5を用いて、実施形態1の映像記録システム100について説明する。
図1は、作業機械50の外観構成を示す図である。
【0013】
映像記録システム100を搭載する作業機械50は、油圧ショベル又はホイールローダ等の建設機械であってもよい。
図1には、作業機械50の一例として油圧ショベルが示されているが、作業機械50は、作業装置が車体前方または後方に設けられたものであれば、特に限定されない。
【0014】
作業機械50には、エンジン又は電動モータである原動機1と、原動機1によって駆動される油圧ポンプであるメインポンプ2とが搭載されている。作業機械50では、メインポンプ2から供給された作動油によって、下部走行体3と上部旋回体4とフロント作業装置5とがそれぞれ独立して作動する。
【0015】
下部走行体3は、一対の走行体6(
図1では片側のみを示す)から成り、走行油圧モータ7の回転によって作動する。上部旋回体4は、旋回装置8を介して下部走行体3の上部に接続されており、不図示の旋回油圧モータの回転によって作動する。
【0016】
フロント作業装置5は、作業機械50の車体3,4(下部走行体3及び上部旋回体4)の前方に設けられる。フロント作業装置5は、上部旋回体4に搭載される。フロント作業装置5は、上部旋回体4に回転可能に支持されたブーム9と、ブーム9を駆動するブームシリンダ10と、ブーム9に回転可能に支持されたアーム11と、アーム11を駆動するアームシリンダ12と、アーム11に回転可能に支持されたアタッチメントであるバケット13と、バケット13を駆動するバケットシリンダ14と、を含む。各油圧シリンダ10,12,14は、メインポンプ2から供給された作動油によって伸縮し、各回転軸15~17を支点としてブーム9、アーム11及びバケット13をそれぞれ回転させる。これにより、フロント作業装置5は、掘削又は整地等の作業を行う。
【0017】
図2は、実施形態1の映像記録システム100におけるカメラ18~22の設置位置を示す図である。
【0018】
作業機械50には、カメラ18~22が設置されている。カメラ18~22は、後方カメラ18と、右方カメラ19と、左方カメラ20と、前方カメラ21と、ブームカメラ22と、を含む。
【0019】
後方カメラ18は、車体3,4の後方へ向けて車体3,4(
図2では上部旋回体4)の後部に設置されたカメラである。右方カメラ19は、車体3,4の右側方、右下方、又は、右下方を含む右側方等の、車体3,4の右方へ向けて車体3,4(
図2では上部旋回体4)の右部に設置されたカメラである。左方カメラ20は、車体3,4の左側方、左下方、又は、左下方を含む左側方等の、車体3,4の左方へ向けて車体3,4(
図2では上部旋回体4)の左部に設置されたカメラである。後方カメラ18、右方カメラ19及び左方カメラ20は、作業機械50を上空から見下ろした俯瞰映像31の合成元となる映像を撮影するために設置される。
【0020】
前方カメラ21は、フロント作業装置5へ向けて車体3,4(
図2では上部旋回体4)の前部に設置されたカメラである。前方カメラ21は、車体3,4の前方を撮影する。前方カメラ21は、アーム11及びバケット13を含む範囲を撮影する。前方カメラ21は、フロント作業装置5の作業の様子を映す映像を撮影するために設置される。
【0021】
ブームカメラ22は、車体3,4に向けてフロント作業装置5に設置されたカメラである。具体的には、ブームカメラ22は、車体3,4に向けてブーム9に設置される。ブームカメラ22は、作業機械50の駐機時にフロント作業装置5が構える
図2に示すような姿勢(以下「駐機姿勢」とも称する)において、ブーム9の車体3,4よりも高い位置に設置される。例えば、ブームカメラ22は、ブーム9の先端部、すなわちブーム9のアーム11側の端部に設置される。ブームカメラ22は、車体3,4を含む範囲を撮影する。ブームカメラ22は、車体3,4全体を高所から見下ろした映像を撮影するために設置される。
【0022】
図3は、実施形態1の映像記録システム100の構成を説明する図である。
【0023】
映像記録システム100は、カメラ18~22と、カメラ18~22の少なくとも1つによって撮影された映像を処理する映像処理装置23と、カメラ18~22によって撮影された映像を記録する映像記録装置24と、を備える。
【0024】
後方カメラ18、右方カメラ19及び左方カメラ20によって撮影された各映像は、映像処理装置23へ入力される。前方カメラ21及びブームカメラ22によって撮影された各映像は、映像記録装置24へ直接入力される。映像処理装置23は、後方カメラ18、右方カメラ19及び左方カメラ20によって撮影された各映像を合成して俯瞰映像31を生成し、映像記録装置24へ出力する。
【0025】
映像記録装置24は、映像処理装置23によって生成された俯瞰映像31、前方カメラ21によって撮影された映像32(以下「前方カメラ映像32」とも称する)、及び、ブームカメラ22によって撮影された映像33(以下「ブームカメラ映像33」とも称する)を記録する。
【0026】
映像記録装置24は、外部のモバイル機器25との無線通信を行う通信部24aを備える。通信部24aは、映像記録装置24に記録された各映像31~33をモバイル機器25へ送信する。モバイル機器25は、通信部24aから送信された各映像31~33を表示し、作業現場を管理する現場管理者又は周辺作業者等のユーザに閲覧させることができる。なお、通信部24aは、作業機械50の運転室内のディスプレイと有線通信又は無線通信を行うことができ、映像記録装置24に記録された各映像31~33を、当該ディスプレイに表示させ、作業機械50のオペレータ等のユーザに閲覧させることもできる。
【0027】
映像記録装置24は、外部のサーバ27とネットワークを介して無線通信を行う作業機械50の通信装置26に接続されている。映像記録装置24は、映像記録装置24に記録された各映像31~33を通信装置26へ出力する。通信装置26は、映像記録装置24から出力された各映像31~33を任意のタイミングでサーバ27へ送信する。
【0028】
サーバ27は、複数の作業機械50のそれぞれに設置されたカメラ18~22の各映像31~33を蓄積する。サーバ27には、ネットワークを介してPC28が接続されている。PC28は、作業現場から離れた遠隔地に位置しており、サーバ27に蓄積された各映像31~33を表示し、遠隔地から当該各映像をユーザに閲覧させることができる。
【0029】
映像記録システム100の各構成要素は、車体3,4の電力供給源であるバッテリ29に接続され、バッテリ29から供給された電力によって作動する。バッテリ29から車体3,4への電力経路40上には、作業機械50の起動又は作動停止させるキースイッチ30が設けられている。
【0030】
映像処理装置23は、車体3,4を制御する他の制御装置と同様に、キースイッチ30の下流側の電力経路40に接続されている。映像処理装置23は、キースイッチ30がオン状態の場合、バッテリ29から電力供給を受ける。後方カメラ18、右方カメラ19及び左方カメラ20は、映像処理装置23に接続されている。後方カメラ18、右方カメラ19及び左方カメラ20は、キースイッチ30がオン状態の場合、映像処理装置23から電力供給を受ける。
【0031】
映像記録装置24及び通信装置26は、バッテリ29とキースイッチ30との間の電力経路40に接続されている。映像処理装置23及び通信装置26は、キースイッチ30のオンオフ状態に関わらず、バッテリ29から電力供給を受ける。前方カメラ21及びブームカメラ22は、映像記録装置24に接続されている。前方カメラ21及びブームカメラ22は、キースイッチ30のオンオフ状態に関わらず、映像記録装置24から電力供給を受ける。
【0032】
これにより、映像記録システム100は、キースイッチ30がオフ状態であっても、ブームカメラ22を作動させ、ブームカメラ22の映像33を映像記録装置24にて記録することができる。加えて、映像記録システム100は、キースイッチ30がオフ状態であっても、映像記録装置24に記録された各映像31~33をモバイル機器25及びサーバ27の少なくとも1つに送信することができる。
【0033】
図4は、実施形態1の映像記録システム100によって記録され、ユーザに閲覧される映像31~33を説明する図である。
【0034】
モバイル機器25及びPC28の少なくとも1つに表示される映像31~33は、
図4に示すように、映像処理装置23によって生成された俯瞰映像31、前方カメラ21によって撮影された前方カメラ映像32、及び、ブームカメラ22によって撮影されたブームカメラ映像33である。俯瞰映像31、前方カメラ映像32及びブームカメラ映像33は、互いに同期して、モバイル機器25等の同一画面に同時に表示可能である。
【0035】
俯瞰映像31は、ユーザが車体3,4の周辺の様子を俯瞰的に閲覧したい場合に利用される。例えば、俯瞰映像31は、オペレータが作業中に車体3,4の周辺の安全を確認する用途に適している。例えば、俯瞰映像31は、現場管理者等が事故又はヒヤリハット事象を振り返る用途に適している。俯瞰映像31の中央には、車体3,4を模擬したイラストAが合成されている。
【0036】
前方カメラ映像32は、ユーザがフロント作業装置5の様子、特にアーム11及びバケット13の様子を閲覧したい場合に利用される。例えば、前方カメラ映像32は、現場管理者等が作業の進捗を確認する用途に適している。
【0037】
ブームカメラ映像33は、実際の車体3,4全体を高所から見下ろした映像であり、ユーザが車体3,4全体の様子を閲覧したい場合に利用される。例えば、ブームカメラ映像33は、俯瞰映像31と同様に、現場管理者等が事故又はヒヤリハット事象を振り返る用途に適している。例えば、ブームカメラ映像33は、車体3,4に搭乗若しくは降機する人物、車体3,4に設けられた運転室内の人物、原動機1の様子、又は、作業機械50の排気の様子等を、現場管理者等が監視する用途に適している。すなわち、ブームカメラ映像33は、現場管理者が車体3,4を防犯のために監視したり、故障箇所を抽出したりする用途に適している。特に、ブームカメラ22、映像記録装置24及び通信装置26がキースイッチ30のオンオフ状態に関わらず作動可能なことから、ブームカメラ映像33は、作業機械50の駐機時にも記録及び閲覧可能である。よって、ブームカメラ映像33は、防犯のために駐機時の車体3,4を監視する用途として特に適している。
【0038】
図5は、実施形態1の映像記録システム100の他の構成を説明する図である。
【0039】
図3に示す映像記録システム100において、後方カメラ18、右方カメラ19及び左方カメラ20は、映像処理装置23から電力供給を受けていた。前方カメラ21及びブームカメラ22は、映像記録装置24から電力供給を受けていた。
【0040】
しかしながら、実施形態1の映像記録システム100は、
図5に示すように、後方カメラ18、右方カメラ19、左方カメラ20及び前方カメラ21は、映像処理装置23に並列して、キースイッチ30の下流側の電力経路40に接続され、バッテリ29から電力供給を受けてもよい。ブームカメラ22は、映像記録装置24及び通信装置26に並列して、バッテリ29とキースイッチ30との間の電力経路40に接続され、バッテリ29から電力供給を受けてもよい。
【0041】
以上のように、実施形態1の映像記録システム100は、作業機械50の映像記録システムである。映像記録システム100は、作業機械50の車体3,4の前方に設けられたフロント作業装置5に設置されたカメラ22と、カメラ22によって撮影された映像33を記録する映像記録装置24と、を備える。カメラ22は、車体3,4へ向けて設置され、車体3,4を含む範囲を撮影する。
【0042】
これにより、映像記録システム100は、防犯目的の監視又は故障箇所の抽出を行うべく閲覧したい箇所の全てにカメラを設置しなくても、実際の車体3,4全体が映った映像33を撮影し記録することができる。したがって、映像記録システム100は、車体3,4に搭乗若しくは降機する人物、車体3,4に設けられた運転室内の人物、原動機1の様子、又は、作業機械50の排気の様子等が映った映像33を、現場管理者等のユーザに閲覧させることができる。よって、映像記録システム100は、事故又はヒヤリハット事象の振り返りだけなく、防犯目的の監視又は故障箇所の抽出に適した作業機械50の映像33を記録することができる。
【0043】
更に、実施形態1の映像記録システム100において、フロント作業装置5は、車体3,4に回転可能に支持されたブーム9と、ブーム9に回転可能に支持されたアーム11と、アーム11に回転可能に支持されたアタッチメントであるバケット13と、を備える。カメラ22は、ブーム9に設置されたブームカメラ22である。
【0044】
これにより、映像記録システム100は、駐機姿勢において車体3,4よりも高い位置に配置されるブーム9にカメラ22が設置されるので、駐機姿勢において車体3,4全体を高所から見下ろした映像33を撮影及び記録することができる。加えて、映像記録システム100は、カメラ22が高所に設置されることから、いたずら等のカメラ22に危害を加えことを難しくすることができる。更に、映像記録システム100は、車体3,4に対するブーム9の回転角度を調整することによって、車体3,4に対するカメラ22の向きを容易に調整できるので、所望の撮影範囲の映像33を容易に撮影及び記録することができる。更に、映像記録システム100は、アーム11又はバケット13に設置されるよりも車体3,4に対するカメラ22の変位を小さくすることができるので、撮影範囲を大きく変化させずに安定した映像33を撮影及び記録することができる。
【0045】
更に、実施形態1の映像記録システム100は、車体3,4の後方へ向けて車体3,4の後部に設置された後方カメラ18と、車体3,4の右方へ向けて車体3,4の右部に設置された右方カメラ19と、車体3,4の左方へ向けて車体3,4の左部に設置された左方カメラ20と、フロント作業装置5へ向けて車体3,4の前部に設置された前方カメラ21と、撮影された映像を処理する映像処理装置23と、を更に備える。映像処理装置23は、後方カメラ18、右方カメラ19及び左方カメラ20によって撮影された各映像を合成して俯瞰映像31を生成する。映像記録装置24は、映像処理装置23によって生成された俯瞰映像31、前方カメラ21によって撮影された前方カメラ映像32、及び、ブームカメラ22によって撮影されたブームカメラ映像33を記録する。
【0046】
これにより、映像記録システム100は、事故又はヒヤリハット事象の振り返りに適した俯瞰映像31だけでなく、作業進捗の確認に適した前方カメラ映像32と、防犯目的の監視又は故障箇所の抽出に適したブームカメラ映像33とを、撮影及び記録することができる。よって、映像記録システム100は、事故又はヒヤリハット事象の振り返りに適した作業機械50の映像31、及び、防犯目的の監視又は故障箇所の抽出に適した作業機械50の映像33だけでなく、作業の進捗確認に適した作業機械50の映像32を用途別に記録することができる。
【0047】
更に、実施形態1の映像記録システム100において、作業機械50は、車体3,4の電力供給源であるバッテリ29と、バッテリ29から車体3,4への電力経路40上に設けられたキースイッチ30と、を備える。ブームカメラ22及び映像記録装置24は、バッテリ29とキースイッチ30との間の電力経路40に接続され、キースイッチ30のオンオフ状態に関わらず、バッテリ29から電力供給を受ける。
【0048】
これにより、映像記録システム100は、キースイッチ30のオンオフ状態に関わらず、ブームカメラ22及び映像記録装置24を作動させることができる。したがって、映像記録システム100は、ブームカメラ22によって撮影されたブームカメラ映像33を、作業機械50の駐機時にも撮影及び記録することができる。よって、映像記録システム100は、事故又はヒヤリハット事象の振り返りだけでなく、防犯のために駐機時の車体3,4を監視する用途として特に適した作業機械50の映像33を記録することができる。
【0049】
更に、実施形態1の映像記録システム100において、作業機械50は、外部のサーバ27とネットワークを介して無線通信を行う通信装置26を備える。通信装置26は、バッテリ29とキースイッチ30との間の電力経路40に接続され、キースイッチ30のオンオフ状態に関わらず、バッテリ29から電力供給を受ける。映像記録装置24は、記録された映像31~33を通信装置26へ出力して、サーバ27へ送信させる。
【0050】
これにより、映像記録システム100は、キースイッチ30のオンオフ状態に関わらず、通信装置26を作動させることができる。したがって、映像記録システム100は、映像記録装置24に記録された映像31~33を、作業機械50の駐機時にもサーバ27へ送信することができる。よって、映像記録システム100は、映像記録装置24に記録された映像31~33を、遠隔地のPC28において閲覧可能とすることができる。
【0051】
更に、実施形態1の映像記録システム100において、映像記録装置24は、外部のモバイル機器25との無線通信を行う通信部24aを備える。通信部24aは、記録された映像31~33をモバイル機器25へ送信する。
【0052】
これにより、映像記録システム100は、キースイッチ30のオンオフ状態に関わらず、映像記録装置24に記録された映像31~33を、作業機械50の駐機時にもモバイル機器25へ送信することができる。したがって、映像記録システム100は、映像記録装置24に記録された映像31~33を、作業現場をはじめとする所望の場所において閲覧可能とすることができる。
【0053】
また、実施形態1の作業機械50は、映像記録システム100を搭載する作業機械である。映像記録システム100は、作業機械50の車体3,4の前方に設けられたフロント作業装置5に設置されたカメラ22と、カメラ22によって撮影された映像33を記録する映像記録装置24と、を備える。カメラ22は、車体3,4へ向けて設置され、車体3,4を含む範囲を撮影する。
【0054】
これにより、作業機械50は、事故又はヒヤリハット事象の振り返りだけなく、防犯目的の監視又は故障箇所の抽出に適した作業機械50の映像33を記録することができる。
【0055】
[実施形態2]
図6~
図9を用いて、実施形態2の映像記録システム100について説明する。実施形態2の映像記録システム100において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0056】
実施形態1の映像記録システム100では、ブームカメラ22が設置されたブーム9がブームカメラ映像33に映り込む可能があり、ブーム9の裏側が死角となる可能性がある。実施形態2の映像記録システム100は、この死角を解消するためにブームカメラ22を複数設置する。
【0057】
図6は、実施形態2の映像記録システム100におけるカメラ18~22bの設置位置を示す図である。
【0058】
ブームカメラ22は、ブーム9の軸線に交差する方向からブーム9を挟んで設置された複数のブームカメラ22a,22bによって構成されてもよい。例えば、複数のブームカメラ22a,22bの一方は、ブーム9の左面に設置され、他方はブーム9の右面に設置されてもよい。例えば、複数のブームカメラ22a,22bの一方は、ブーム9の上面に設置され、他方はブーム9の下面に設置されてもよい。
【0059】
図6の例では、一方のブームカメラ22aがブーム9の上面に設置され、他方のブームカメラ22bがブーム9の下面に設置されている。この場合、ブームカメラ22aによって撮影された映像33の下側の範囲は、ブーム9が映り込んで死角となる。ブームカメラ22bによって撮影された映像33の上側の範囲は、ブーム9が映り込んで死角となる。
【0060】
図7は、実施形態2の映像記録システム100の構成を説明する図である。
図7では、キースイッチ30の図示を省略している。
図8は、実施形態2の映像記録システム100によって記録されユーザに閲覧される映像31,32,36を説明する図である。
【0061】
複数のブームカメラ22a,22bによって撮影された各映像33は、後方カメラ18、右方カメラ19及び左方カメラ20によって撮影された映像と同様に、映像処理装置23に入力される。
【0062】
実施形態2の映像処理装置23は、俯瞰映像31だけでなく、補完映像36を生成する。具体的には、実施形態2の映像処理装置23は、ブーム9の映り込みによって車体3,4が映らない一方のブームカメラ22aの映像33の死角範囲を、他方のブームカメラ22bの映像33によって補完して、ブーム9の映り込みが無い補完映像36を生成する。実施形態2の映像処理装置23は、信号線34を介して俯瞰映像31を映像記録装置24へ出力すると共に、信号線34とは別の信号線35を介して、補完映像36を映像記録装置24へ出力する。
【0063】
実施形態2の映像記録装置24は、映像処理装置23によって生成された俯瞰映像31及び補完映像36、並びに、前方カメラ21によって撮影された前方カメラ映像32を記録する。
【0064】
これにより、実施形態2の映像記録システム100は、ブームカメラ映像33に映り込んだブーム9の死角を解消し、実際の車体3,4全体が明瞭に映った補完映像36を記録することができる。したがって、実施形態2の映像記録システム100は、事故又はヒヤリハット事象の振り返りだけなく、防犯目的の監視又は故障箇所の抽出に更に適した明瞭な作業機械50の映像36を記録することができる。
【0065】
なお、実施形態2の映像記録システム100においても、実施形態1と同様に、キースイッチ30のオンオフ状態に関わらずバッテリ29から電力供給を受けるよう、映像処理装置23、映像記録装置24及び通信装置26が、
図7に示すように、キースイッチ30を介さずにバッテリ29に接続されていてもよい。
【0066】
また、実施形態2の映像記録システム100において、複数のブームカメラ22a,22bは、ステレオカメラとして構成されていてもよい。実施形態2の映像処理装置23は、ステレオマッチング等の画像処理機能を含む画像認識機能を有する。実施形態2の映像処理装置23は、
図8に示すように、複数のブームカメラ22a,22bによって撮影された各映像33を比較して、各映像33から車体3,4及びその周辺に存在する物体37を検知することができる。
【0067】
実施形態2の映像処理装置23は、検知された物体37に関する情報を、補完映像36に対応付ける。物体37に関する情報とは、物体37の種別、サイズ及び位置(物体37までの距離を含む)等の情報である。更に、実施形態2の映像処理装置23は、検知された物体37を強調するマーク38を補完映像36上に描画する。そして、実施形態2の映像処理装置23は、マーク38が描画された補完映像36を映像記録装置24に出力する。実施形態2の映像記録装置24は、マーク38が描画された補完映像36を記録する。
【0068】
これにより、実施形態2の映像記録システム100は、物体37を自動的に検知することができると共に、検知された物体37をユーザが把握し易い形式に補完映像36を処理して記録することができる。したがって、実施形態2の映像記録システム100は、事故又はヒヤリハット事象の振り返りだけなく、防犯目的の監視又は故障箇所の抽出に更に適した明瞭な補完映像36を記録することができる。
【0069】
図9は、実施形態2の映像記録システム100の他の構成を説明する図である。
図9では、キースイッチ30の図示を省略している。
【0070】
図7に示す映像記録システム100において、複数のブームカメラ22a,22bは、後方カメラ18、右方カメラ19及び左方カメラ20が接続された映像処理装置23に接続されていた。補完映像36は、俯瞰映像31を生成する映像処理装置23によって生成されていた。
【0071】
しかしながら、実施形態2の映像記録システム100では、
図9に示すように、映像処理装置23が、後方カメラ18、右方カメラ19及び左方カメラ20に接続された第1映像処理装置231と、複数のブームカメラ22a,22bに接続された第2映像処理装置232と、によって構成されていてもよい。第1映像処理装置231は、後方カメラ18、右方カメラ19及び左方カメラ20によって撮影された各映像を合成して俯瞰映像31を生成する。第2映像処理装置232は、複数のブームカメラ22a,22bによって撮影された各映像33を合成して、補完映像36を生成する。
【0072】
これにより、実施形態2の映像記録システム100は、補完映像36を生成する第2映像処理装置232及びカメラ22a,22bを、俯瞰映像31を生成する第1映像処理装置231及びカメラ18~20とは別系統として構成することができる。したがって、実施形態2の映像記録システム100は、カメラ22a,22bによって撮影された各映像33と、カメラ18~20によって撮影された各映像とを並列に処理して、補完映像36及び俯瞰映像31を生成することができる。よって、実施形態2の映像記録システム100は、事故又はヒヤリハット事象の振り返りだけなく、防犯目的の監視又は故障箇所の抽出に適した明瞭な映像36を迅速に生成し記録することができる。
【0073】
なお、実施形態2の映像記録システム100では、補完映像36を生成する第2映像処理装置232及びカメラ22a,22b並びに映像記録装置24及び通信装置26だけが、キースイッチ30を介さずにバッテリ29に接続されていてもよい。
【0074】
これにより、実施形態2の映像記録システム100は、作業機械50の駐機時にも補完映像36を生成及び記録し、モバイル機器25及びサーバ27の少なくとも1つに送信することができる。したがって、実施形態2の映像記録システム100は、事故又はヒヤリハット事象の振り返りだけでなく、防犯のために駐機時の車体3,4を監視する用途として特に適した作業機械50の明瞭な映像36を記録することができる共に、駐機時であってもユーザに閲覧可能とすることができる。
【0075】
また、実施形態1及び2の映像記録システム100は、作業機械50に搭載されていた。しかしながら、映像記録システム100の一部は、作業機械50に搭載されていなくてもよい。例えば、映像処理装置23は、サーバ27に搭載されていてもよい。
【0076】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【符号の説明】
【0077】
3,4…車体、5…フロント作業装置、9…ブーム、11…アーム、13…バケット、18…後方カメラ、19…右方カメラ、20…左方カメラ、21…前方カメラ、22,22a,22b…ブームカメラ、23…映像処理装置、231…第1映像処理装置、232…第2映像処理装置、24…映像記録装置、24a…通信部、25…モバイル機器、26…通信装置、27…サーバ、28…PC、29…バッテリ、30…キースイッチ、31…俯瞰映像、32…前方カメラ映像、33…ブームカメラ映像、36…補完映像、37…物体、38…マーク、40…電力経路