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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139047
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/108 20060101AFI20241002BHJP
   H02K 7/112 20060101ALI20241002BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20241002BHJP
   F16D 41/067 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H02K7/108
H02K7/112
F16D41/08 Z
F16D41/067
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049831
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 紀男
(72)【発明者】
【氏名】難波 雅史
(72)【発明者】
【氏名】金山 光浩
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB13
5H607CC03
5H607EE03
5H607EE05
5H607EE07
5H607EE12
5H607EE18
(57)【要約】
【課題】コイルに電流を流して生じる磁力により、2つの機構を独立して制御する。
【解決手段】コイル20に三相交流電流を流し、生じた磁力により第1アーマチャ46をティース18に引き寄せる。この第1アーマチャ46の動きにより、第1セレクタブルワンウェイクラッチ(SOWC)42が解放状態となり、サブシャフト34がメインシャフト28と共に回転可能となり、メインシャフト28とサブシャフト34が入出力軸となる。コイル20に零相電流を流し、生じた磁力により第2アーマチャ48をティース18に引き寄せる。この第2アーマチャ46の動きにより、第2SOWC44が解放状態となり、サブシャフト34がメインシャフト28から切断され、メインシャフト28のみが入出力軸となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティースと、前記ティースに巻回されたコイルとを有し、固定部に固定されたステータと、
前記固定部に対して回転可能に支持されたロータと、
前記ロータと同軸に配置され、前記ロータと一体となって回転する第1シャフトと、
前記第1シャフトと同軸に配置され、かつ前記固定部に対して回転可能に支持された第2シャフトであって、前記第1シャフトから独立して回転可能な第2シャフトと、
前記第1シャフトまたは前記第2シャフトを前記固定部に選択的に係止/解放する係止機構と、
前記第1シャフトと前記第2シャフトを選択的に接続/切断する継断機構と、
前記コイルに電力を供給して、前記ロータを回転させる回転磁界と、前記ロータの回転に寄与しない静止磁界とを形成可能な駆動回路と、
を含み、
前記係止機構は前記回転磁界によって係止/解放が制御され、前記継断機構は前記静止磁界によって接続/切断が制御される、
回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記回転磁界の磁束が通る磁路である回転磁界磁路と前記静止磁界の磁束が通る磁路である静止磁界磁路とが一部で異なり、
前記回転電機は、
前記回転磁界磁路の、前記静止磁界磁路と異なる部分の少なくとも一部を形成する第1アーマチャであって、前記回転磁界によって前記ティースに引き寄せられる第1アーマチャと、
前記静止磁界磁路の、前記回転磁界磁路と異なる部分の少なくとも一部を形成する第2アーマチャであって、前記静止磁界によって前記ティースに引き寄せられる第2アーマチャと、
を含み、
前記係止機構は、前記第1アーマチャの動きにより係止/解放が制御され、
前記継断機構は、前記第2アーマチャの動きにより接続/切断が制御される、
回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機であって、
前記係止機構は、前記第1シャフトまたは前記第2シャフトと前記固定部との相対回転によって受動的に係合して相対回転を阻止する状態と、相対回転を許容する状態とを選択可能なセレクタブルワンウェイクラッチを含み、前記第1アーマチャの動きにより前記係止機構の前記セレクタブルワンウェイクラッチの状態が制御され、
前記継断機構は、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの相対回転によって受動的に係合して相対回転を阻止する状態と、相対回転を許容する状態とを選択可能なセレクタブルワンウェイクラッチを含み、前記第2アーマチャの動きにより前記継断機構の前記セレクタブルワンウェイクラッチの状態が制御される、
回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機であって、
前記ロータと前記ステータが、前記ロータの回転軸線に沿う方向において対向し、
前記第1アーマチャおよび前記第2アーマチャが前記ステータに関して前記ロータの反対側に位置し、前記ロータの前記回転軸線に沿って動く、
回転電機。
【請求項5】
請求項4に記載の回転電機であって、前記第1アーマチャが、前記第2アーマチャの径方向外側に位置し、前記ティースが、径方向において前記第1アーマチャと第2アーマチャの間に位置している介在部を有する、回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機であって、前記ティースの前記介在部が、前記ロータから離れる向きに突出した山形形状であり、前記山形の一方の斜面が前記第1アーマチャに対向し、他方の斜面が前記第2アーマチャに対向している、回転電機。
【請求項7】
請求項6に記載の回転電機であって、
前記第2シャフトが、前記第1シャフトを囲む円筒部を有し、前記第1シャフトの外周面と前記第2シャフトの前記円筒部の内周面の間に前記継断機構の前記セレクタブルワンウェイクラッチが配置され、
前記固定部には、前記第2シャフトの前記円筒部の外周面と対向する前記内周面が形成され、前記固定部の前記内周面と、前記第2シャフトの前記円筒部の前記外周面との間に前記係止機構の前記セレクタブルワンウェイクラッチが配置された、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関し、回転電機に備わるコイルにより生じた磁力によって回転電機の動作状態を制御する回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機、発電機および電動機と発電機の両方で動作可能な電気機器が知られている。このような電気機器、特に回転動作する機器を以下、回転電機と記す。下記特許文献1-3には、回転電機を動作させる回転磁界を形成するためのコイルに電流を流すことにより生じる磁力によって、ブレーキ機構を制御する回転電機が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-174234号公報
【特許文献2】特開平2-285945号公報
【特許文献3】特開2015-53839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1-3においては、コイルに電流を流すことにより生じる磁力によって動作する機構は1つである。本発明は、コイルの電流により生じる磁力による制御対象の機構を2つとし、かつ2つの機構を独立して制御可能な回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る回転電機は、固定部に固定されたステータと、固定部に対して回転可能に支持されたロータとを含み、ステータは、ティースと、ティースに巻回されたコイルとを有する。さらに、回転電機は、ロータと同軸に配置され、かつロータと一体となって回転する第1シャフトと、第1シャフトと同軸に配置され、かつ固定部に対して回転可能に支持された第2シャフトを含む。第2シャフトは、第1シャフトから独立して回転可能である。さらに、回転電機は、第1シャフトまたは第2シャフトを固定部に選択的に係止/解放する係止機構と、第1シャフトと第2シャフトを選択的に接続/切断する継断機構を含む。さらに、回転電機は、コイルに電力を供給して、ロータを回転させる回転磁界と、ロータの回転に寄与しない静止磁界とを形成可能な駆動回路を含む。回転磁界によって係止機構の係止/解放が制御され、静止磁界によって継断機構の接続/切断が制御される。
【0006】
係止機構と継断機構の動作を別々に制御することができる。
【0007】
上記の回転電機において、回転磁界の磁束が通る磁路である回転磁界磁路と静止磁界の磁束が通る磁路である静止磁界磁路とを一部で異なるものとしてよい。そして、回転電機は、回転磁界磁路の、静止磁界磁路と異なる部分の少なくとも一部を形成する第1アーマチャと、静止磁界磁路の、回転磁界磁路と異なる部分の少なくとも一部を形成する第2アーマチャをと含むものとしてよい。第1アーマチャは回転磁界によってティースに引き寄せられ、第1アーマチャの動きにより係止機構の係止/解放が制御される。また、第2アーマチャは静止磁界によってティースに引き寄せられ、第2アーマチャの動きにより継断機構の接続/切断が制御される。
【0008】
上記の回転電機において、係止機構は、第1シャフトまたは第2シャフトと固定部との相対回転によって受動的に係合して相対回転を阻止する状態と、相対回転を許容する状態とを選択可能なセレクタブルワンウェイクラッチを含んでよい。第1アーマチャの動きにより係止機構のセレクタブルワンウェイクラッチの状態が制御される。また、継断機構は、第1シャフトと第2シャフトとの相対回転によって受動的に係合して相対回転を阻止する状態と、相対回転を許容する状態とを選択可能なセレクタブルワンウェイクラッチを含んでよい。第2アーマチャの動きにより継断機構のセレクタブルワンウェイクラッチの状態が制御される。
【0009】
上記の回転電機は、ロータとステータが、ロータの回転軸線に沿う方向において対向するアキシャルモータであってよく、第1アーマチャおよび第2アーマチャがステータに関してロータの反対側に位置し、ロータの前記回転軸線に沿って動くものであってよい。
【0010】
上記の回転電機において、第1アーマチャが、第2アーマチャの径方向外側に位置してよく、ティースが、径方向において第1アーマチャと第2アーマチャの間に位置している介在部を有するものとしてよい。
【0011】
上記の回転電機において、ティースの介在部が、ロータから離れる向きに突出した山形形状であってよく、山形の一方の斜面が第1アーマチャに対向し、他方の斜面が第2アーマチャに対向してよい。
【0012】
上記の回転電機において、第2シャフトが、第1シャフトを囲む円筒部を有してよく、第1シャフトの外周面と第2シャフトの円筒部の内周面の間に継断機構のセレクタブルワンウェイクラッチが配置されてよい。また、固定部に、第2シャフトの円筒部の外周面と対向する内周面が形成されてよく、固定部の内周面と、第2シャフトの円筒部の外周面との間に係止機構のセレクタブルワンウェイクラッチが配置されてよい。
回転電機。
【発明の効果】
【0013】
回転磁界により係止機構の動作を制御し、静止磁界によって継断機構の動作を制御することで、回転電機の2つの入出力軸の一方から入出力するか、両方から入出力するかなどの出力態様を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の回転電機の概略構成を示す一部破断斜視図である。
図2】本実施形態の回転電機の回転軸線を含む断面を示す断面図である。
図3】第1セレクタブルワンウェイクラッチおよびその周囲の詳細断面図である。
図4】第1セレクタブルワンウェイクラッチおよびその周囲の部品の分解斜視図である。
図5】セレクタブルワンウェイクラッチの動作説明図であり、係止状態を示す図である。る。
図6】セレクタブルワンウェイクラッチの動作説明図であり、解放状態を示す図である。
図7】第2セレクタブルワンウェイクラッチおよびその周囲の詳細断面図である。
図8】本実施形態の回転電機の回路構成を示す図である。
図9】回転磁界を形成する三相磁束の磁路を示す図である。
図10】静止磁界を形成する零相磁束の磁路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1および図2は、本実施形態の回転電機10を示す図であり、図1は一部を断面で表した斜視図、図2は回転電機10の入出力軸の回転軸線Aを含む断面を示す断面図である。以下では、回転軸線Aに沿う方向を回転軸線方向、回転軸線Aを中心とする円周に沿う方向を周方向、回転軸線Aに直交する方向を径方向と記す。以下では、回転電機10が電動機として動作する場合を用いて説明する。
【0016】
回転電機10は、回転磁界を形成するステータ12と、ステータ12が形成した回転磁界と相互作用して回転軸線A回りに回転するロータ14を含む。ステータ12は、ハウジング16に固定され、ハウジング16はさらに外部に固定されている。ステータ12は、周方向に沿って間隔を空けて配列されたティース18と、ティース18に巻回されたコイル20を含む。ステータ12は、全体として略ドーナツ形状となっている。コイル20は、U相、V相およびW相の3相のコイルを有し、U相コイル、V相コイル、W相コイルが順に周方向に配列されている。各相のコイルに120°位相が異なる電流、すなわち三相交流電流を通電することにより、回転磁界が形成される。
【0017】
ロータ14は、ロータ部材22の一部と永久磁石24から形成される。ロータ部材22は、ロータ部材円筒部26と、ロータ部材円筒部26の端部に設けられたロータ部材円板部27を有する。ロータ部材円筒部26は、回転軸線Aを中心線とする円筒形状であり、略ドーナツ形状のステータ12の径方向内側に位置する。ロータ部材円板部27は、回転軸線Aを中心線とする円板、より詳しくは、ロータ部材円筒部26の内径と同一内径の中心孔が形成された円環板形状である。ロータ部材円板部27は、回転軸線方向において、ステータ12、特にティース18と対向している。ロータ部材円板部27の、ティース18と対向する面に、永久磁石24が固定されている。永久磁石24は、極性が交互となるように周方向に沿って配列されている。ロータ部材円板部27と永久磁石24がロータ14を形成する。回転電機10は、磁気的に相互作用するステータ12とロータ14が回転軸線方向において対向する、いわゆるアキシャルモータの構成を有する。
【0018】
ロータ14と一体に、回転電機10の入出力軸であるメインシャフト28が設けられている。メインシャフト28は、ハウジング16に軸受等によって回転可能に支持されている。メインシャフト28はロータ14と同軸に配置され、ロータ部材円筒部26を貫通するメインシャフト軸部30と、メインシャフト軸部30にフランジ状に設けられたメインシャフトフランジ部32を有する。メインシャフトフランジ部32は、ロータ部材円板部27に隣接して配置され、ロータ部材円板部27と結合している。メインシャフト軸部30は、ロータ部材円筒部26の、ロータ部材円板部27が設けられた側とは反対側の端から突出している。
【0019】
回転電機10は、メインシャフト28に加え、入出力軸としてサブシャフト34を含む。サブシャフト34は、メインシャフト28と同軸に、すなわち回転軸線Aが中心線となるように、メインシャフト28と回転軸線方向に並んで配置されている。サブシャフト34は、ハウジング16に軸受等を介して回転可能に支持されている。サブシャフト34は、ハウジング16の、メインシャフト28が突出する端面とは反対側の端面から突出している。サブシャフト34は、サブシャフト軸部36と、サブシャフト円筒部38を有する。サブシャフト軸部36は、ハウジング16の端面から突出するように配置されている。サブシャフト円筒部38は、概略円筒形状であって、サブシャフト軸部36の、ハウジング16内の端からメインシャフト軸部30に向けて延び、メインシャフト軸部30の端部周囲を囲んでいる。
【0020】
メインシャフト28とロータ部材円筒部26は、ロータ14と同軸に配置され、ロータ14と一体となって回転してロータの回転力を出力する第1シャフトを形成する。また、サブシャフト34は、第1シャフトと同軸に配置され、第1シャフトから独立して回転可能な第2シャフトである。
【0021】
ハウジング16には、サブシャフト円筒部38の外周面の一部と対向する内周面40が形成されている。この内周面40とサブシャフト円筒部38の間に第1セレクタブルワンウェイクラッチ42が配置されている。第1セレクタブルワンウェイクラッチ42は、サブシャフト34がハウジング16に対して固定された係止状態と、回転可能な解放状態とを選択的に作り出すことができる。セレクタブルワンウェイクラッチの動作については後述する。以下、セレクタブルワンウェイクラッチをSOWCと記す。
【0022】
サブシャフト円筒部38の内周面とメインシャフト軸部30の外周面の互いに対向する部分の間に第2SOWC44が配置されている。第2SOWC44は、メインシャフト28とサブシャフト34が一体に回転する接続状態と、相対回転可能な切断状態とを選択的に作り出すことができる。
【0023】
回転軸線Aの方向において、ステータ12の、ロータ14とは反対側に第1アーマチャ46と第2アーマチャ48が配置されている。第1アーマチャ46は回転軸線Aを中心線とする略円環板形状であり、周方向に配列されたティース18の端面に対向するように配置されている。第1アーマチャ46は、一般的なアキシャルモータのバックヨークに相当する。第1アーマチャ46の、ティース18とは反対側の面に第1制御プレート50が固定されている。第1制御プレート50は円環板形状であり、内周縁がサブシャフト円筒部38の外周面とスプライン結合している。第1制御プレート50は、回転についてはサブシャフト34と一体に回転する一方、回転軸線方向についてはサブシャフト34とは独立して移動可能である。第1アーマチャ46と第1制御プレート50は、サブシャフト円筒部38のスプラインに案内されて回転軸線方向に沿って若干の移動が可能である。第1制御プレート50の移動によって、第1SOWC42の状態が制御される。
【0024】
第2アーマチャ48は、ロータ部材円筒部26の端に隣接して配置されている。第2アーマチャ48は、回転軸線Aを中心線とする円環形状であり、外周にティース18の一部と対向する面を有する。第2アーマチャ48は、フランジ付のスリーブ52を介してメインシャフト軸部30に支持されている。第2アーマチャ48は、スリーブ52と一体となっている。スリーブ52は、メインシャフト28とスプライン結合しており、メインシャフト28と共に回転する一方、回転軸線方向には、メインシャフト28に対して相対移動が可能である。スリーブ52の、メインシャフト軸部30とは反対側の端にフランジが設けられており、このフランジに隣接して第2制御プレート54が配置されている。第2アーマチャ48は、スリーブ52および第2制御プレート54と共に、回転軸線方向に沿って若干の動きが可能である。この、第2アーマチャ48等の移動によって、第2SOWC44の状態が制御される。
【0025】
第1アーマチャ46と第2アーマチャ48は同軸に配置され、第1アーマチャ46が第2アーマチャ48の径方向外側に配置されている。径方向において、第1アーマチャ46と第2アーマチャ48の間に、ティース18の一部が介在している。この部分をティース介在部56と記す。ティース介在部56も円環形状であって、第1アーマチャ46と第2アーマチャ48の間を周方向に沿って延びている。ティース介在部56は、ティース18の、コイル20が巻回する部分の内周面18aよりも径方向内側に延びている。また、ティース介在部56は、ロータ14とは反対側に向かって突出した山形形状であってよい。山形形状の頂点は、ティースの内周面18aと径方向において同位置に配置されてよい。ティース介在部56の山形の2つの斜面56a,56bのうち、径方向外側の斜面56aに対向する面が第1アーマチャ46に設けられている。これにより、第1アーマチャ46の、周方向に直交する断面は台形となっている。第2アーマチャ48にも、ティース介在部56の山形の斜面56bに対向する面が形成されている。第2アーマチャ48も、周方向に直交する断面が台形となっている。
【0026】
バッテリなどの電源58からの電力が、駆動回路60を介してコイル20に供給される。
【0027】
図3は、第1SOWC42およびその周囲を拡大して示す斜視断面図である。図4は、第1SOWC42およびこれに関連する部品の分解斜視図である。第1SOWC42は、インナリング62、アウタリング64、および複数のボール66を有する。アウタリング64は、インナリング62と同軸に、かつ径方向外側に配置され、インナリング62とアウタリング64の間においてボール66が周方向に配列されている。インナリング62は、キー67によりサブシャフト34に対して回り止めされている。アウタリング64は、ハウジング16に固定されている。第1SOWC42は、さらに円環形状のボールホルダ68と、円環形状の制御リング70とを含む。ボールホルダ68は、インナリング62と一体となって回転する。また、ボールホルダ68には、回転軸線方向における一方の側縁から切り込まれたボール収容部68aが形成されており、ボール収容部68aは周方向に沿って配列されている。1つのボール収容部68aに1つのボール66が収容され、ボール66同士の間隔が維持されている。制御リング70は、第1制御プレート50に固定され、第1制御プレート50と一体となって回転し、また回転軸線方向に沿って移動する。制御リング70にも周方向に配列されたボール収容部70aが形成され、ボール収容部70aは、ボールホルダ68のボール収容部68aとは反対向きに開口している。制御リング70においても、1つのボール収容部70aに1つのボール66が収容されている。ボール66は、回転軸線方向の両側からボールホルダ68と制御リング70に挟まれるように保持されている。インナリング62の外周面には、それぞれは回転軸線方向に沿って延びる溝62aが周方向に配列されている。溝62aの断面形状は略V字形であり、以降、溝62aをV溝62aと記す。
【0028】
図3に示されるように、サブシャフト円筒部38の端面には押さえプレート72が固定され、回転軸線方向において、押さえプレート72と第1制御プレート50の間に戻しスプリング74が配置されている。戻しスプリング74は、第1制御プレート50を介して制御リング70を図3において右方向に付勢している。
【0029】
図5および図6は、第1SOWC42の動作説明図である。図5,6の(a)は、ボール66、ボールホルダ68および制御リング70を径方向外側から見た状態を示す図であり、(b)は、回転軸線方向から見た図である。各図の左右方向が周方向であり、1つのボール66と、このボール66に関連する部分のみが示されている。また、説明のために、各部品の形状、特に隙間の大きさが強調されている。
【0030】
図5は、第1SOWC42がインナリング62とアウタリング64の相対回転を阻止している係止状態を示し、図6は、相対回転を許容する解放状態を示している。相対回転が阻止される図5の状態では、ボールホルダ68と制御リング70が形成する隙間が大きく、ボール66の可動範囲d1は大きい。図5の(b)に破線で示すようにボール66がV溝62aの底に位置していれば、ボール66と、インナリング62およびアウタリング64との隙間があり、インナリング62とアウタリング64は相対移動が可能である。この状態からインナリング62が図において右へ動くと、ボール66はインナリング62に対して左に動き、V溝62aの斜面を登る。これにより、ボール66は、図5に示されるように、インナリング62とアウタリング64の隙間の狭い部分で両者に挟まれてつっかえ、インナリング62のそれ以上の動きが阻止される。インナリング62が逆向きに動く場合も同様である。
【0031】
制御リング70を回転軸線方向に沿って図5,6の(a)において上方に移動させると、ボールホルダ68と制御リング70が形成する隙間が小さくなり、ボール66の可動範囲d2が小さくなる。ボール66は、V溝62aの底の位置に保持され、インナリング62とアウタリング64に挟まれることがなくなる。これにより、インナリング62の動きが許容される。制御リング70の回転軸線方向に沿う動きは、第1制御プレート50を介して第1アーマチャ46の動きによって制御される。
【0032】
第1SOWC42は、制御リング70がステータ12から遠い位置にあるとき(図3において右側)係止状態となり、ステータ12に近い位置にあるとき(図3において左側)解放状態となる。第1SOWC42は、サブシャフト34をハウジング16に対して選択的に係止状態と解放状態にする係止機構である。
【0033】
SOWCを含め、ワンウェイクラッチは、係合状態を維持するための外部からの力を必要としない。第1SOWC42のように、制御リング70のわずかな動きで、係止状態と解放状態が選択でき、弱い力で係合力を得ることができる。
【0034】
図7は、第2SOWC44およびその周囲を拡大して示す斜視断面図である。第2SOWC44の基本的な構成は、第1SOWC42と同様である。メインシャフト28上にシャフトリンク76が配置され、キー78によってメインシャフト28に対して回り止めされている。シャフトリンク76の外周面とサブシャフト円筒部38の内周面との間に、第2SOWC44が配置されている。第2SOWC44のインナリング80は、シャフトリンク76上に固定されており、アウタリング82はサブシャフト円筒部38に固定されている。インナリング80とアウタリング82の間には複数のボール66が周方向に並べられて配置されている。また、第1SOWC42と同様、各ボール66は、ボールホルダ84と制御リング86の収容部に収容されている。制御リング86とサブシャフト円筒部38の間に押圧スプリング88が配置され、押圧スプリング88は制御リング86を第2制御プレート54に向けて付勢している。また、スリーブ52とメインシャフト28の間に戻しスプリング90が配置され、スリーブ52を第2SOWC44に向けて付勢している。第2SOWC44の動作は、第1SOWC42と同様であるので、説明を省略する。第2SOWC44のインナリング80とアウタリング82の相対回転を阻止する係止状態と、許容する解放状態は、第2アーマチャ48の回転軸線方向に沿う動きにより制御される。
【0035】
第2SOWC44は、制御リング86がステータ12から遠い位置にあるとき(図7において右側)係止状態となり、ステータ12に近い位置にあるとき(図7において左側)解放状態となる。第2SOWC44は、メインシャフト28とサブシャフト34を選択的に切断状態と接続状態にする継断機構である。
【0036】
図8は、回転電機10の駆動用の回路構成を示す図である。回転電機のステータのU相コイル20U、V相コイル20V、W相コイル20Wに三相電力を供給する駆動回路60は、一般的な6アームのインバータで構成される。3相のコイル20U,20V,20Wの中性点Nを、抵抗92を介して接地している。これにより、コイル20U,20V,20Wに共通の電圧を印加し、三相の交流電流に重畳して、直流のつまり零相の電流を流すことができる。
【0037】
図9および図10は磁束を示す図であり、図9は三相電流による磁束、図10は零相電流による磁束である。三相電流による磁束を三相磁束Φa、零相電流による磁束を零相磁束Φdと記す。三相磁束Φaにより形成される磁界は回転磁界であり、ロータ14の永久磁石24に対する進角を制御されながら同期して回転する磁界である。このため、三相磁束Φaは、ティース18にN極を向けた永久磁石24と、これに隣接するS極を向けた永久磁石24とを結ぶ磁気抵抗が最小の経路、すなわち最短経路を通る。三相磁束Φaは、図9のように、ティース18にN極を向けた永久磁石24から出て、ティース18を通って第1アーマチャ46に抜け、第1アーマチャ46から別のティース18を通ってティース18にS極を向けた永久磁石24に向かい、さらにロータ部材円板部27を通って元の永久磁石24に戻る。この三相磁束Φaにより、第1アーマチャ46がティース18に向けて引き寄せられる。
【0038】
零相磁束Φdは、周方向に一様であり、全てのティース18でその向きが同じである。
零相磁束Φdにより形成される磁界は回転しない静止磁界であり、ロータ14の回転に寄与しない。零相磁束Φdは、ロータ14から出て、ティース18、特にティース介在部56を通って第2アーマチャ48に抜け、ロータ部材円筒部26またはメインシャフト28を通ってロータ14に戻る。この零相磁束Φdにより、第2アーマチャ48がティース18に向けて引き寄せられる。
【0039】
上記のように三相磁束Φaと零相磁束Φdが通る磁路は一部で異なっている。具体的には、三相磁束Φaは、ティース18を通過した後、周方向に沿って延びる。一方、零相磁束Φdは、ティース18を通過した後、径方向に沿って内側に延びる。第1アーマチャ46と第2アーマチャ48はそれぞれ、三相磁束Φaが通る磁路と零相磁束Φdが通る磁路の異なる部分の一部を形成している。三相磁束Φaは第1アーマチャ46を通り、零相磁束Φdは、第2アーマチャ48を通る。これにより、2つのアーマチャ46,48を別々に動作させることができる。
【0040】
回転電機10の動作について説明する。コイル20に通電しない状態では、第1アーマチャ46は、戻しスプリング74の付勢力により、ステータ12から遠い位置にあり、第1SOWC42は、係止状態にある。これにより、サブシャフト34がハウジング16に対して係止される。また、コイル20に通電しない状態で、第2アーマチャ48は、戻しスプリング90の付勢力により、ステータ12から遠い位置にあり、第2SOWC44は、係止状態にある。これにより、メインシャフト28とサブシャフト34が接続された状態となり、メインシャフト28はサブシャフト34を介してハウジング16に対して固定される。このように、コイル20に通電しない状態では、メインシャフト28およびサブシャフト34は制止または拘束された状態にある。
【0041】
コイル20に三相電流を流すと、三相磁束Φaが発生し、第1アーマチャ46がティース18に引き寄せられ、ステータ12に近い位置となる。ただし、ティース18には接触しない。この第1アーマチャ46の動きにより、第1SOWC42は、解放状態となり、サブシャフト34は、ハウジング16に対して回転可能となる。三相磁束Φaによってロータ14が回転し、メインシャフト28が回転する。さらに、第2SOWC44によってメインシャフト28と接続状態にあるサブシャフト34も回転する。三相電流を流すことにより、メインシャフト28およびサブシャフト34が出力軸となる。
【0042】
コイル20に、三相電流に重畳して零相電流を流すと、零相磁束Φdにより、第2アーマチャ48がティース18に引き寄せられ、ステータ12に近い位置となる。ただし、ティース18には接触しない。この第2アーマチャ48の動きにより、第2SOWC44は、解放状態となり、メインシャフト28とサブシャフト34が切断される。この結果、サブシャフト34からは出力されず、メインシャフト28のみが出力軸となる。
【0043】
三相電流および零相電流を止めると、第1アーマチャ46および第2アーマチャ48は、戻しスプリング74,90の付勢力でステータ12から遠い位置に向かい、第1SOWC42および第2SOWC44が係止状態となる。
【0044】
以上、アキシャル型の回転電機について説明したが、ロータとステータが径方向に対向するラジアル型の回転電機にも採用可能である。また、零相磁束は、永久磁石の有無とは関係なく発生させることができるので、永久磁石を有さない誘導機や同期機などの回転電機であっても、コイルによってN極とS極を交互に生じさせるための磁路と、コイルによって一方の極のみを生じさせるための磁路とを異ならせることにより、上述の実施形態と同様に2つの軸の制御が可能となる。
【0045】
上記では、SOWCを用いた係止機構および継断機構について説明したが、摩擦を利用したクラッチ、ブレーキや、2つの部材の凹凸のかみ合わせを利用したクラッチ、ブレーキを係止機構および継断機構に採用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 回転電機、12 ステータ、14 ロータ、16 ハウジング(固定部)、18 ティース、20 コイル、22 ロータ部材、24 永久磁石、26 ロータ部材円筒部(第1シャフト)、27 ロータ部材円板部、28 メインシャフト(第1シャフト)、30 メインシャフト軸部、32 メインシャフトフランジ部、34 サブシャフト(第2シャフト)、36 サブシャフト軸部、38 サブシャフト円筒部、40 内周面、42 第1セレクタブルワンウェイクラッチ(第1SOWC)、44 第2セレクタブルワンウェイクラッチ(第2SOWC)、46 第1アーマチャ、48 第2アーマチャ、50 第1制御プレート、54 第2制御プレート、56 ティース介在部、A 回転軸線、Φa 三相磁束、Φd 零相磁束。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10