(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139048
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】粗面加工工具
(51)【国際特許分類】
B28D 1/04 20060101AFI20241002BHJP
B24D 5/00 20060101ALI20241002BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B28D1/04
B24D5/00 Z
B24D3/00 320B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049832
(22)【出願日】2023-03-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】394009289
【氏名又は名称】株式会社エアテックジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】長屋 雄貴
【テーマコード(参考)】
3C063
3C069
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB03
3C063BA02
3C063BA12
3C063BB02
3C063BH27
3C063EE26
3C063EE33
3C069AA06
3C069BA02
3C069BA04
3C069BB01
3C069BB04
3C069CA07
3C069DA00
3C069EA02
3C069EA05
(57)【要約】
【課題】被加工面の隅々まで効率良く粗面に加工する粗面加工工具を提供する。
【解決手段】主グリップ1には電動機1aが内蔵されている。ギアボックス2内で回転軸方向が変換された出力駆動軸には回転シャフト3が接続され、回転シャフト3の先端には粗面加工工具5が取り付けられている。
粗面加工工具5は、径がそれぞれ異なる3枚の円板状のカッタ刃5a、5b、5cを有し、これらのカッタ刃5a、5b、5cの周縁にはダイヤモンド砥粒が着設され、裏面には厚みのある段部が付設されていて、段部5bを含む中心部に挿通孔が形成されている。カッタ刃5a、5b、5cは先端側を小径とする径の順に間隔をおいて平行に配列され、ボルト5eが挿通孔に挿通され回転シャフト3に連結されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の駆動により回転する電動工具の回転シャフトに取り付けて使用することにより、被加工面に対して複数条の加工溝を同時に形成する円板状のカッタ刃を備えた粗面加工工具であって、
前記カッタ刃は径が異なる複数枚から成り、前記カッタ刃は間隔をおいて平行に配列され、先端ほど小径となるように配置されていることを特徴とする粗面加工工具。
【請求項2】
前記複数枚のカッタ刃は3枚以上であり、前記カッタ刃の周縁は円錐形の斜面に沿って直線上に位置していることを特徴とする請求項1に記載の粗面加工工具。
【請求項3】
前記円錐形の斜面に沿った直線と中心線とが交差する交差角は、約45度としたことを特徴とする請求項2に記載の粗面加工工具。
【請求項4】
前記複数枚のカッタ刃は等間隔で配列されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の粗面加工工具。
【請求項5】
前記カッタ刃は周縁にダイヤモンド砥粒を着設したことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の粗面加工工具。
【請求項6】
前記カッタ刃は周縁に多数個のダイヤモンド製切削チップを固定したことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の粗面加工工具。
【請求項7】
前記回転シャフトの外周にベアリングを介して副グリップを取り付けたことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の粗面加工工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に付設して使用し、例えばコンクリート構造物のタイル貼付面を粗面加工にして、タイルをモルタルにより強固に接着可能とする粗面加工工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、新設建造物においてコンクリート面に新たなタイルを貼り付ける場合には、タイルに対するモルタルの接着性を考慮して、コンクリート面を粗面に加工することが行われているが、この粗面加工は例えば高圧水などによる相応の施工が可能である。
【0003】
しかし、既設の構造物に接着したタイルの一部が部分的に剥落した場合には、大掛かりな粗面加工作業は適しない。この部分に新たなタイルをモルタルにより接着して補修するに際しては、タイルが剥落したコンクリート面のみに、接着を強固にするために筋目などの粗面加工を施す。この部分的な粗面加工のためには、例えば電動工具のカッタ刃によりコンクリート面に加工溝を形成することがよく行われている。
【0004】
この場合に通常では、
図6に示すように、コンクリート面S上のタイルが脱落した個所に、新たなタイルを貼るための前工程として、脱落した部分のコンクリート面Sを粗面にするために、円板状のカッタ刃Cを回転させて加工溝Gを形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、通常のカッタ刃Cの径はタイルTの厚みよりも十分に大きいので、カッタ刃Cを既存のタイルTに近付けて作業をすると、既存のタイルTをカッタ刃Cにより傷を付けてしまう虞れがある。従って、脱落した部分のコンクリート面Sのみを対象として、加工溝Gを形成することはなかなか困難で、既存のタイルTの近傍のコンクリート面Sに対しては、カッタ刃Cにより満足すべき加工ができない。従って、既存のタイルTの近傍のコンクリート面Sにおいては、新しいタイルの接着強度が十分に得られないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題を解消するために、被加工面の狭い個所に対しても、カッタ刃による粗面加工を可能とする粗面加工工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る粗面加工工具は、電動機の駆動により回転する電動工具の回転シャフトに取り付けて使用することにより、被加工面に対して複数条の加工溝を同時に形成する円板状のカッタ刃を備えた粗面加工工具であって、前記カッタ刃は径が異なる複数枚から成り、前記カッタ刃は間隔をおいて平行に配列され、先端ほど小径となるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る粗面加工工具によれば、被加工面の隅々までカッタ刃の回転による粗面加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】粗面加工工具により形成した加工溝の説明図である。
【
図6】従来のカッタ刃による粗面加工の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を
図1~
図5に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例の手動電動工具の側面図であり、主グリップ1の上部にはギアボックス2が設けられている。主グリップ1内には電動機1aが内蔵され、主グリップ1の内表面に操作スイッチ1bが設けられている。また、電動機1aには外部から電源コード1cを介して商用電源が接続されている。なお、電動機1aの駆動源として、商用電源の代りに主グリップ1内にバッテリを設けることもできる。
【0011】
ギアボックス2内には、電動機1aの回転軸方向を変換し、回転比を調整する図示しないギア機構が内蔵され、ギア機構の出力駆動軸2aには
図2に示す棒状の回転シャフト3がねじ部により軸線を合わせて連結されている。なお実施例では、回転シャフト3は主グリップ1に対して直交する方向に向けられているが、回転シャフト3は主グリップ1と直線状に位置するようにしてもよい。
【0012】
回転シャフト3は大径部3aと小径部3bから成る段付きの棒状体であり、大径部3aの端部には駆動軸2aがねじ込まれるねじ穴3cが穿孔され、先端側の小径部3bの端部には、後述する粗面加工工具のボルトがねじ込まれるねじ穴3dが形成されている。また、小径部3bの中間にはリング溝3eが周設されている。
【0013】
駆動軸2aにねじ結合により固定される回転シャフト3の中間部の外周には、副グリップ4が主グリップ1と平行に取り付けられている。副グリップ4は軸受部4aを介して回転シャフト3の小径部3bの周囲に回転自在に連結されている。軸受部4a内には複数個の鋼球から成るベアリング4bが収納され、軸受部4aは小径部3bにベアリング4bを圧入することにより、軸受部4aは回転シャフト3の大径部3aとリング溝3eの間に取り付けられている。また、副グリップ4の本体4cは軸受部4aの一部にねじ軸をねじ込むことにより固定されている。そして、リング溝3eにはC字状のリングストッパ3fが嵌合されている。
【0014】
この構成により、使用中に回転シャフト3が回転しても、副グリップ4は軸受部4a内のベアリング4bの存在により、この回転に追従して回転することはない。また、軸受部4aは大径部3aとリングストッパ3fとの間に挟まれているので、副グリップ4が回転シャフト3に対して軸方向に移動することもない。
【0015】
回転シャフト3の先端には、
図3に示す使い捨ての粗面加工工具5が取り付けられている。この粗面加工工具5は、径がそれぞれ異なる複数枚の、好ましくは3枚程度の鋼板製の円板状のカッタ刃5a、5b、5cを有し、これらのカッタ刃5a、5b、5cの裏面には、それぞれ所定の厚みの段部5dが一体に付設されており、段部5bを含む中心部に挿通孔5fが形成されている。なお、段部5dはカッタ刃5a、5b、5cと一体でなくとも、別個のワッシャ等を組合わせて段部とすることもできる。
【0016】
カッタ刃5a、5b、5cは先端側を小径とする径の順に並べられ、頭部付きのボルト5eが各挿通孔5fに挿通され、ボルト5eの先端は回転シャフト3のねじ穴3dにねじ込まれて固定されており、粗面加工工具5は
図1に示すように組み付けられる。
【0017】
粗面加工工具5において、カッタ刃5a、5b、5cは段部5dの厚みにより等間隔で平行に積層され、3枚のカッタ刃5a、5b、5cは大略的に先端が小さい円錐形状に並設され、カッタ刃5a、5b、5cの周縁は円錐形の斜面に沿って、線分Lで示すように直線上に位置している。なお、各カッタ刃5a、5b、5c同士の間隔は必ずしも等間隔でなくともよい。
【0018】
各カッタ刃5a、5b、5cには、その周縁に例えばダイヤモンドの砥粒5gが着設され、カッタ刃5a、5b、5cの周縁は砥粒5gによる切削性を有している。
【0019】
この粗面加工工具5の寸法を例示すると、各カッタ刃5a、5b、5cの厚みは1mm、カッタ刃5a、5b、5cの直径はそれぞれ20、24、28mm、段部5dの厚みは2mm、砥粒5gの厚みは1mmである。
【0020】
使用に際しては、作業者は粗面加工工具5を回転シャフト3に組み付けてから、例えば主グリップ1を右手で持ち、左手を副グリップ4に添え、主グリップ1の操作スイッチ1bを押して電動機1aを回転駆動し、回転シャフト3を介して粗面加工工具5を回転する。なお、副グリップ4は必要に応じて、取り付けるようにしてもよい。
【0021】
駆動軸2aは回転シャフト3にねじ込まれ、粗面加工工具5は回転シャフト3にねじ込まれて固定されているが、これらのねじ込み方向は駆動軸2aの回転方向に対して緩むことのない方向とされている。
【0022】
図4に示すように、加工すべきコンクリート面Sに、粗面加工工具5の3枚のカッタ刃5a、5b、5cが共に接触するようにあてがい、カッタ刃5a、5b、5cをコンクリート面Sに押し付けながら回転方向に移動する。このカッタ刃5a、5b、5cの回転による切削によって、
図5に示すように、コンクリート面S上に3条1組の加工溝Gによる筋目が同時に形成される。この作業において、カッタ刃5a、5b、5cの円錐形の斜面に沿った線分Lと中心線とが交差する交差角を例えば約45度とすると、主グリップ1から粗面加工工具5に力を伝達し易い。
【0023】
また、粗面加工工具5を何れの方向に向けても作業可能とするには、カッタ刃5a、5b、5cの周縁に沿った円錐形の斜辺である線分Lが、主グリップ1、副グリップ4と交叉しないようにすることが好ましい。そのためには、線分Lの中心線に対する角度を大きくするとか、回転シャフト3を長くするとかの対策が考えられる。
【0024】
作業中に、作業者は左手で握った副グリップ4により、回転シャフト3を補助的に支持しているので、回転シャフト3が振れることなく、加工面の目的の位置に的確に粗面加工工具5を案内して加工することが可能である。更に、粗面加工工具5は先端のカッタ刃5a、5b、5cほどその径が小さいために、コンクリート面Sの狭い個所まで入り込ませることができ、既存のタイルTの位置に応じて、カッタ刃5a、5b、5cの向きを変えて切削することにより、隅部に対しても粗面加工が可能となる。
【0025】
そして、カッタ刃5a、5b、5cにより、既存のタイルTを損傷する虞れは少ない。このようにして、加工溝Gの加工を繰り返すことにより、コンクリート面S上には多数条の筋目が得られる。
【0026】
使用により粗面加工工具5のカッタ刃5a、5b、5cが摩耗して切削能力が低下すると、ボルト5eを緩めてカッタ刃5a、5b、5cを回転シャフト3から取り外して、新しいカッタ刃5a、5b、5cに交換すればよい。この場合に、全てのカッタ刃5a、5b、5cを交換してもよいが、損傷の程度が大きいカッタ刃5a、5b、5cのみを交換することもできる。
【0027】
なお、上述の実施例においては、各カッタ刃5a、5b、5cの周縁を砥粒5gによる研削部としたが、多数個のダイヤモンドによる切削チップを周縁に取り付けたカッタ刃として、切削チップにより加工溝Gを切削してもよい。
【0028】
また実施例においては、粗面加工工具5のカッタ刃5a、5b、5cは作業時にボルト5eで締め付けて組み付けるようにしている。しかし、予め粗面加工工具5として一体に組み立てておき、交換等の際には粗面加工工具5ごと回転シャフト3に対して、取り付け、取り外しをすることもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 主グリップ
1a 電動機
1b 操作スイッチ
1c 電源コード
2 ギアボックス
2b 駆動軸
3 回転シャフト
3a 大径部
3c 小径部
3e リング溝
4 副グリップ
4a 軸受部
4b ベアリング
5 粗面加工工具
5a、5b、5c カッタ刃
5d 段部
5e ボルト
5g 砥粒
G 加工溝
S コンクリート面
T タイル
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主グリップと、該主グリップの上部に設けたギアボックスと、該ギアボックス内に内蔵されたギア機構の出力駆動軸に連結し、前記グリップの長手方向に対して直交する直交方向に向けられた棒状の回転シャフトとを備え、
前記回転シャフトの先端に、径が異なる複数枚から成る円板状のカッタ刃を取り付け、
該カッタ部によって被加工面に対して複数条の加工溝を同時に形成する粗面加工を可能とする粗面加工工具であって、
前記カッタ刃は間隔をおいて前記長手方向と平行に配列され、先端ほど小径となるように配置されており、
前記長手方向が上下方向になるように配置した際に、前記カッタ刃の上端は何れも前記ギアボックスの上端よりも下方に位置することを特徴とする粗面加工工具。
【請求項2】
前記複数枚のカッタ刃は3枚以上であり、前記カッタ刃の周縁は円錐形の斜面に沿って直線上に位置していることを特徴とする請求項1に記載の粗面加工工具。
【請求項3】
前記円錐形の斜面に沿った直線と中心線とが交差する交差角は、約45度としたことを特徴とする請求項2に記載の粗面加工工具。
【請求項4】
前記複数枚のカッタ刃は等間隔で配列されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の粗面加工工具。
【請求項5】
前記カッタ刃は周縁にダイヤモンド砥粒を着設したことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の粗面加工工具。
【請求項6】
前記カッタ刃は周縁に多数個のダイヤモンド製切削チップを固定したことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の粗面加工工具。
【請求項7】
前記回転シャフトの外周にベアリングを介して副グリップを取り付けたことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の粗面加工工具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る粗面加工工具は、主グリップと、該主グリップの上部に設けたギアボックスと、該ギアボックス内に内蔵されたギア機構の出力駆動軸に連結し、前記グリップの長手方向に対して直交する直交方向に向けられた棒状の回転シャフトとを備え、前記回転シャフトの先端に、径が異なる複数枚から成る円板状のカッタ刃を取り付け、該カッタ部によって被加工面に対して複数条の加工溝を同時に形成する粗面加工を可能とする粗面加工工具であって、前記カッタ刃は間隔をおいて前記長手方向と平行に配列され、先端ほど小径となるように配置されており、前記長手方向が上下方向になるように配置した際に、前記カッタ刃の上端は何れも前記ギアボックスの上端よりも下方に位置することを特徴とする。