(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139049
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂用射出成形機のスクリュ調整方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20241002BHJP
B29C 45/20 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049833
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA36
4F206AM19
4F206AM32
4F206AP062
4F206AR043
4F206AR072
4F206AR12
4F206JA07
4F206JD01
4F206JL07
4F206JL08
4F206JP14
4F206JQ11
4F206JQ57
4F206JQ86
(57)【要約】
【課題】熱硬化性射出成形機においてスクリュの最前進位置を適切に調整することができるスクリュ調整方法を提供する。
【解決手段】シリンダ(18)の先端に設けられているノズル(23)の内周面の先端内面(23a)にスクリュ(19)の先端面(19a)を接触させた状態にするスクリュ・ノズル接触工程と、該スクリュ・ノズル接触工程後にスクリュ(19)を規定長さ後退させるスクリュ規定長後退工程と、を備える。スクリュ規定長後退工程において後退したスクリュ(19)のスクリュ位置を成形サイクルにおけるスクリュの最前進位置として決定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと該シリンダ内に入れられているスクリュとを備えた熱硬化性樹脂用射出成形機におけるスクリュ調整方法であって、
前記シリンダの先端に設けられているノズルの内周面の先端内面に前記スクリュの先端面を接触させた状態にするスクリュ・ノズル接触工程と、
該スクリュ・ノズル接触工程後に前記スクリュを規定長さ後退させるスクリュ規定長後退工程と、を備え、
前記スクリュ規定長後退工程において後退した前記スクリュのスクリュ位置を成形サイクルにおける前記スクリュの最前進位置として決定する、スクリュ調整方法。
【請求項2】
前記規定長さは0.4~0.7mmの範囲にある、請求項1に記載のスクリュ調整方法。
【請求項3】
前記ノズルの前記先端内面は円錐状凹面に形成され、前記スクリュの前記先端面は円錐面に形成され、前記スクリュ・ノズル接触工程は前記円錐状凹面に前記円錐面を接触させた状態にする、請求項1または2に記載のスクリュ調整方法。
【請求項4】
前記スクリュ・ノズル接触工程は、前記シリンダから前記ノズルを取り取り外すノズル取外し工程と、
前記スクリュを前進させた状態にするスクリュ前進工程と、
前記スクリュに前進方向の軸力を印可した状態にして前記ノズルを前記シリンダに取り付けて前記スクリュの後退を検出するスクリュ後退検出工程とからなる、請求項1または2に記載のスクリュ調整方法。
【請求項5】
前記ノズルには雄ネジが形成され、前記シリンダに形成されている雌ネジに螺合させて前記シリンダに取り付けられるようになっており、
前記スクリュ後退検出工程は、第1の工程と、第2の工程とを備え、
前記第1の工程は前記スクリュに第1の軸力を印可した状態にして前記ノズルを第1のトルクで前記シリンダに取り付けるようにし、
前記第2の工程は前記スクリュに前記第1の軸力より強い第2の軸力を印可した状態にして前記第1のトルクより強い第2のトルクにして前記ノズルを前記シリンダに対して締め付けるようにする、請求項4に記載のスクリュ調整方法。
【請求項6】
前記スクリュ後退検出工程における前記スクリュの後退の検出は、前記ノズルを前記シリンダに取り付けるとき前記スクリュに作用する軸力を監視して、軸力の上昇の検出によって実施する、請求項4に記載のスクリュ調整方法。
【請求項7】
前記スクリュ後退検出工程における前記スクリュの後退の検出は、前記スクリュの位置を検出するスクリュ位置検出手段によって実施する、請求項4に記載のスクリュ調整方法。
【請求項8】
水平に設けられているシリンダと、
該シリンダ内で水平方向に駆動されるスクリュと、
前記スクリュを駆動するスクリュ駆動装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置には成形サイクルにおける前記スクリュの最前進位置が設定されており、
前記最前進位置は、前記シリンダの先端に設けられているノズルの内周面の先端内面に前記スクリュの先端面が接触したノズル・スクリュ接触状態から、前記スクリュを規定長さ後退させたスクリュ位置になっている、熱硬化性樹脂用射出装置。
【請求項9】
前記規定長さは0.4~0.7mmの範囲にある、請求項8に記載の熱硬化性樹脂用射出装置。
【請求項10】
前記ノズルの前記先端内面は円錐状凹面に形成され、前記スクリュの前記先端面は円錐面に形成されている、請求項8または9に記載の熱硬化性樹脂用射出装置。
【請求項11】
型締装置と、
射出装置と、
制御装置と、から構成され、
前記射出装置は、水平に設けられているシリンダと、
該シリンダ内で水平方向に駆動されるスクリュと、
前記スクリュを駆動するスクリュ駆動装置と、を備え、
前記制御装置には成形サイクルにおける前記スクリュの最前進位置が設定されており、
前記最前進位置は、前記シリンダの先端に設けられているノズルの内周面の先端内面に前記スクリュの先端面が接触したノズル・スクリュ接触状態から、前記スクリュを規定長さ後退させたスクリュ位置になっている、熱硬化性樹脂用射出成形機。
【請求項12】
前記規定長さは0.4~0.7mmの範囲にある、請求項11に記載の熱硬化性樹脂用射出成形機。
【請求項13】
前記ノズルの前記先端内面は円錐状凹面に形成され、前記スクリュの前記先端面は円錐面に形成されている、請求項11または12に記載の熱硬化性樹脂用射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂を射出する射出成形機におけるスクリュ調整方法、熱硬化性樹脂用射出装置、および熱硬化性樹脂用射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出材料として熱硬化性樹脂を射出する熱硬化性樹脂用射出成形機は、例えば特許文献1に記載されているように、型締装置と射出装置とから構成されている。射出装置はシリンダと、このシリンダ内に入れられているスクリュと、シリンダを支持すると共にスクリュを駆動するスクリュ駆動装置と、を備えている。シリンダを熱硬化性樹脂がシリンダ内で硬化しない温度に加熱して、スクリュを回転する。そうすると熱硬化性樹脂が溶融して、スクリュの前方に送られてスクリュが後退する。すなわち計量される。スクリュを軸方向に駆動すると、型締装置で型締めされた金型に熱硬化性樹脂が充填される。金型を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる。樹脂が硬化したら金型を開いて成形品を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形サイクルにおいて熱硬化性樹脂を射出するとき、スクリュを最前進位置まで駆動して金型に射出するようにし、樹脂の充填不足等が発生しないようにしている。しかしながら、最前進位置が適切に調整されていないと不都合が生じる。例えば最前進位置が十分に前方に設定されていないとき、スクリュを最前進位置に駆動してもシリンダの先端に設けられているノズルの内部と、スクリュ先端部との間に大きな隙間ができて樹脂の残留量が多くなってしまう。そうすると、次の成形サイクルまでシリンダ内に残留して品質上好ましくない。一方、最前進位置が前方寄りに調整されていると、スクリュを最前進位置に駆動したときにノズル内部の先端内面にスクリュの先端部の先端面が接触してしまう。
【0005】
本開示において、熱硬化性樹脂用射出成形機においてスクリュの最前進位置を適切に調整することができるスクリュ調整方法、スクリュの最前進位置が適切に調整されている熱硬化性樹脂用射出装置、および熱硬化性樹脂用射出成形機を提供する。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、シリンダと該シリンダ内に入れられているスクリュとを備えた熱硬化性樹脂用射出成形機におけるスクリュ調整方法として構成する。スクリュ調整方法は、シリンダの先端に設けられているノズルの内周面の先端内面にスクリュの先端面を接触させた状態にするスクリュ・ノズル接触工程と、該スクリュ・ノズル接触工程後にスクリュを規定長さ後退させるスクリュ規定長後退工程と、を備える。そしてスクリュ規定長後退工程において後退したスクリュのスクリュ位置を成形サイクルにおけるスクリュの最前進位置として決定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、スクリュの最前進位置を適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出成形機の正面図である。
【
図2】本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【
図3A】本実施の形態に係るスクリュ調整方法を実施している本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【
図3B】本実施の形態に係るスクリュ調整方法を実施している本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【
図3C】本実施の形態に係るスクリュ調整方法を実施している本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【
図3D】本実施の形態に係るスクリュ調整方法を実施している本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【
図3E】本実施の形態に係るスクリュ調整方法を実施している本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【
図3F】本実施の形態に係るスクリュ調整方法を実施している本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【
図3G】本実施の形態に係るスクリュ調整方法を実施している本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【
図3H】本実施の形態に係るスクリュ調整方法を実施している本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【
図3I】本実施の形態に係るスクリュ調整方法を実施している本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【
図4】本実施の形態に係るスクリュ調整方法のフローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係るスクリュ調整方法を実施しているときに検出されるスクリュの軸力を示すグラフである。
【
図6A】比較例に係るスクリュ調整方法を実施している本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【
図6B】比較例に係るスクリュ調整方法を実施している本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【
図6C】比較例に係るスクリュ調整方法を実施している本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出装置の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0011】
[本実施の形態]
<射出成形機>
本実施の形態に係る熱硬化性樹脂用射出成形機1は、
図1に示されているように、型締装置2、熱硬化性樹脂用射出装置3、等を備えている。型締装置2は次に詳しく説明するように、型盤が上下に駆動されて型開閉する竪型になっている。これに対して熱硬化性樹脂を射出する熱硬化性樹脂用射出装置3は後で説明するように横置き型になっている。熱硬化性樹脂用射出成形機1には、これら装置を制御する制御装置4が設けられている。
【0012】
<型締装置>
本実施の形態において型締装置2は、ベッド7に固定されている固定盤9と、この固定盤9の上方に設けられている上可動盤10と、ベッド7内に設けられている下可動盤11とを備えている。上可動盤10と下可動盤11は複数本の、例えば4本のタイバー12、12、…で連結されている。下可動盤11と固定盤9の間には型締機構が設けられ、本実施の形態において型締機構はトグル機構14からなる。上可動盤10には上側金型15が、そして下可動盤11には下側金型16が設けられている。トグル機構14を駆動すると上側金型15と下側金型16とが型開閉されるようになっている。図に示されていないが上側金型15、下側金型16には温調装置が設けられ、高温にして熱硬化性樹脂を硬化させるようになっている。
【0013】
<熱硬化性樹脂用射出装置>
熱硬化性樹脂用射出装置3は、横置き型からなり、ベッド7に対して設けられている。熱硬化性樹脂用射出装置3は、水平に設けられているシリンダ18と、このシリンダ18に入れられているスクリュ19と、シリンダ18を支持すると共にスクリュ19を駆動するスクリュ駆動装置21と、を備えている。スクリュ駆動装置21は次に詳しく説明する。シリンダ18の先端にはノズル23が、そして後方にはホッパ24がそれぞれ設けられている。ノズル23を金型15、16にタッチすると、熱硬化性樹脂からなる射出材料を金型15、16に射出することができる。
【0014】
<スクリュ駆動装置>
スクリュ駆動装置21は、
図2に示されているように、フレーム28を備えている。フレーム28は、前プレート30と、後プレート31と、射出プレート32とを備えている。前プレート30と後プレート31とは複数本たとえば4本のガイドロッド34、34、…によって連結されており、射出プレート32は、これらのガイドロッド34、34、…に貫通されている。つまり射出プレート32はガイドロッド34、34、…にガイドされて前後進するようになっている。このようなフレーム28の前プレート30に中空のノーズ部36が設けられている。シリンダ18は、このノーズ部36に対しボルト等により固定されている。
【0015】
射出プレート32には回転軸38が設けられている。回転軸38はその一方の端部において射出プレート32に回転可能に支持され、前プレート30を貫通して前方に伸びている。スクリュ19は、この回転軸38の他方の端部にカップリング40を介して接続されている。射出プレート32には可塑化モータ42が設けられ、回転伝達機構43を介して回転軸38を回転するようになっている。つまり、可塑化モータ42を回転すると回転軸38とスクリュ19とが回転することになる。
【0016】
射出プレート32と後プレート31の間にはボールねじ機構45が設けられている。具体的には射出プレート32にボールナット46が固定され、後プレート31にボールねじ47が回転可能に設けられている。後プレート31には射出モータ49が設けられ、回転伝達機構50を介してボールねじ47を回転するようになっている。したがって、射出モータ49を回転するとボールねじ47が回転してボールねじ機構45が伸縮する。すなわち射出プレート32が前後進してスクリュ19が前後進することになる。
【0017】
射出プレート32とボールナット46の間にはロードセル52が設けられている。これによってスクリュ19に作用する軸力が検出されるようになっている。後で説明するが、本実施の形態に係るスクリュ調整方法ではスクリュ19の後退を検出するようになっている。ロードセル52によって検出される軸力の変化からスクリュ19の後退を検出することができる。
【0018】
射出モータ49にはエンコーダが設けられており、このエンコーダによって射出モータ49の回転位置が検出される。したがってボールねじ機構45の伸縮の大きさが検出され、スクリュ19のスクリュ位置が検出されるようになっている。つまりスクリュ位置検出手段になっている。このスクリュ位置検出手段によってスクリュ19の後退を検出するようにしてもよい。
【0019】
<スクリュ調整方法>
本実施の形態に係るスクリュ調整方法を説明する。本実施の形態に係るスクリュ調整方法は、成形サイクルにおけるスクリュ19の最前進位置を適切に調整する調整方法になっている。最前進位置は射出完了時におけるスクリュ19のスクリュ位置であり、適切な最前進位置に調整すると、射出完了時にノズル23の内周面の先端内面と、スクリュ19の先端部の先端面とが、規定の隙間だけ空いた状態になる。射出完了時にシリンダ18内に残留する熱硬化性樹脂を少なくできると共に、ノズル23の先端内面とスクリュ19の先端部の先端面との接触による発熱が防止され、熱硬化性樹脂の品質劣化を防止できる。好ましい規定の隙間は0.4~0.7mmである。なお、ノズル23の先端内面23aとスクリュ19の先端部の先端面19aは
図3Aに示されている。本実施の形態において先端内面23aは円錐状凹面に、先端面19aは円錐面に形成されている。
【0020】
本実施の形態に係るスクリュ調整方法は、
図4に示されているにように、最初にスクリュ後退(ステップS01)を実施する。制御装置4(
図1参照)を操作すると、
図3Aに示されているように、射出モータ49が駆動されてスクリュ19が後退する。次いで
図4に示されているように、ノズル取外し(ステップS02)を実施する。オペレータは
図3Bに示されているように、ノズル23をシリンダ18から取り外す。ノズル23の外周面は雄ネジが形成され、シリンダ18の先端部は雌ネジが形成されている。ノズル23を回転して取り外す。なお、ステップS01を事前に実施するのは、ステップS02のノズル23の取外しにおいてノズル23の先端内面23aとスクリュ19の先端部の先端面19aがぶつかって、傷がつくことを防止するためである。
【0021】
図4に示されているように、スクリュ前進(ステップS03)を実施する。制御装置4(
図1参照)を操作すると、
図3Cに示されているように、射出モータ49が駆動され、スクリュ19が前進する。これによってスクリュ19の先端部の先端面19aがシリンダ18の先端から露出する。スクリュ19は、先端面19aの露出が十分になるように前進する。
【0022】
制御装置4(
図1参照)を操作して、スクリュ調整モードを選択する。そうすると、制御装置4は、次に説明するステップS04を自動的に開始する。そして、ステップS08の完了によりオペレータが作業の完了を制御装置4に通知するまで、順次所定のステップを実行する。制御装置4においてスクリュ調整モードを選択すると、制御装置4は第1の軸力印可(ステップS04)を実施する。具体的には、射出モータ49を比較的小さなトルクによるトルク制御を開始して、スクリュ19に前進方向の弱い軸力、すなわち第1の軸力を発生させた状態にする。第1の軸力は例えば、約100Nに調整されている。この様子が
図3Dに示されている。
【0023】
スクリュ19に第1の軸力が印可された状態で、
図4に示されているように、ノズル取り付け(ステップS05)を実施する。すなわち、オペレータは、
図3Eに示されているように、シリンダ18の先端にノズル23を取り付ける。ノズル23の取り付けは、どのような手段によって実施してもよいが、ノズル23を手で回転させるようにすることが好ましい。取り付け当初は比較的小さなトルクでノズル23をシリンダ18に取り付けることができ、効率がよいからである。ノズル23を回転していくと、やがてノズル23の先端内面23aにスクリュ19の先端部の先端面19aが接触する。そうするとノズル23を回転するのに必要なトルクが一時的に増加する。しかしながら、スクリュ19に印可されている第1の軸力は比較的小さいので、ノズル23は若干回転させることができる。ノズル23とシリンダ18の間に小さな隙間54が空いている状態が示されている。
【0024】
制御装置4は、
図4に示されているように、スクリュ19の後退を監視する(ステップS06)。スクリュ19の後退は色々な方法で検出することができる。例えば、ロードセル52によって測定される軸力の変化を検出する方法である。他の方法は、射出モータ49のエンコードを監視してスクリュ19の後退の有無を監視する方法である。ノズル23の先端内面23aとスクリュ19の先端部の先端面19aとが接触すると軸力の変化が検出される。接触した後でノズル23を回転するとスクリュ19が後退してエンコードによって検出される。いずれの方法で検出するようにしてもよい。制御装置4はスクリュ19の後退を監視して、後退が検出されない間(NO)、オペレータによるステップS05の実行を継続させる。スクリュ19の後退が検出されたら(YES)、制御装置4は次のステップS07を実施する。
【0025】
制御装置4は、第2の軸力印可(ステップS07)を実施する。射出モータ49のトルク制御を若干高いトルクに上げ、スクリュ19に前進方向の若干強い軸力、すなわち第2の軸力を発生させた状態にする。第2の軸力は第1の軸力より大きく、例えば、約20kNに調整されている。この様子が
図3Fに示されている。スクリュ19に第2の軸力が印可されると、手によるノズル23の回転・締め付けが不可能になる。オペレータは、スパナを使用してノズル23を締め付ける(ステップS08)。ノズル23の先端内面23aとスクリュ19の先端部の先端面19aとが接触した状態でノズル23を締め付けるので、ノズル23の締め付けによりスクリュ19も後退する。
【0026】
図5のグラフには、ステップS05~ステップS08において、ロードセル52において検出されるスクリュ19の軸力が示されている。すなわち、最初にスクリュ19に第1の軸力を印可した状態で、ノズル23を手回しして取り付けると、ロードセル52において第1の軸力に近い軸力が検出される。ノズル23の雄ネジを締め付けていくと、やがて符号56に示されているように、軸力が高くなる。すなわちノズル23の先端内面23aとスクリュ19の先端部の先端面19aとが接触した状態になる。既に説明したように、制御装置4は第2の軸力に切り換える。その後、スパナによりノズル23を締め付けるとやがて締め付けができなくなる。すなわち締付完了位置に達する様子が示されている。
【0027】
図3Gには、ノズル23の締め付けが完了し締付完了位置に達した状態が示されている。オペレータは、制御装置4(
図1参照)において操作し、作業の完了を制御装置4に教える。制御装置4は、
図4に示されているようにステップS09を実行する。すなわちスクリュ規定長さ後退を実行する。具体的には、射出モータ49を駆動してスクリュ19を規定長さだけ後退させる。規定長さは、0.4~0.7mmが好ましく、例えば0.5mm後退させる。この様子が、
図3Hに示されている。後退させた長さが符号58に示されている。制御装置4は、現在のスクリュ19のスクリュ位置を最前進位置として記憶する。スクリュ調整モードを完了する。
【0028】
なお制御装置4は、スクリュ調整モードの完了にあたって確認操作を行うようにしてもよい。具体的には、ステップS09を完了した後に射出モータ49を駆動して、
図3Iに示されているように、スクリュ19を規定長さ59だけ前方に駆動する。駆動して、ノズル23の先端内面23aとスクリュ19の先端部の先端面19aとの接触を確認する。接触はロードセル52によって検出される。確認後、
図3Hに示されているように規定長さ58だけ後退させる。このような確認操作をすることにより、より精度良くスクリュ19の位置を調整することができる。制御装置4はスクリュ調整モードを完了する。
【0029】
本実施の形態に係るスクリュ調整方法は、ノズル23の先端内面23aにスクリュ19の先端面19aを接触させた状態にするスクリュ・ノズル接触工程と、スクリュ19を規定長さ後退させるスクリュ規定長後退工程とから構成されている。上で説明したステップS01~ステップS08はスクリュ・ノズル接触工程に該当し、ステップS09がスクリュ規定長後退工程に該当している。このように構成されているので、本実施の形態に係るスクリュ調整方法は調整がシンプルで優れている。スクリュ・ノズル接触工程においてスクリュ19に作用させる軸力を2段階、つまり第1、第2の軸力に切り換えながら、ノズル23をシリンダ18に取り付け、そして締め付けるので、ノズル23の先端内面23aとスクリュ19の先端面19aの接触が保証される。つまり、スクリュ19の最前進位置を精度良く調整することができることが保証される。
【0030】
<比較例に係るスクリュ調整方法>
本実施の形態に係るスクリュ調整方法と異なるが、スクリュ19の最前進位置を調整する方法は、他にも考えられる。比較例に係るスクリュ調整方法として、例えば次のようにして、最前進位置を調整することができる。まず、
図6Aに示されているように、射出モータ49を駆動してスクリュ19を前進させ、ノズル23の先端内面23aとスクリュ19の先端部の先端面19aとを接触させる。この状態にして、射出プレート32がこれ以上前進しないように、前プレート30と射出プレート32の間にストッパ60を設ける。あるいはストッパ60を前プレート30に設けておき、ストッパ60の長さ調整をするようにしてもよい。このときのスクリュ19のスクリュ位置を最前進位置として制御装置4(
図1参照)に設定する。
【0031】
次いで、
図6Bに示されているように、カップリング40を取外してスクリュ19と回転軸38とを切り離し、シリンダ18をノーズ部36から取り外す。シリンダ18が取り外されたノーズ部36にシム61を取り付ける。最後に、
図6Cに示されているように、シリンダ18についてシム61を介してノーズ部36に取り付け、スクリュ19と回転軸38とをカップリング40により接続する。ストッパ60を取り外す。比較例に係るスクリュ調整方法を完了する。
【0032】
比較例に係るスクリュ調整方法を実施すると、制御装置4に設定されている最前進位置にスクリュ19を前進させても、シム61の厚さだけノズル23の先端内面23aとスクリュ19の先端部の先端面19aと間に隙間が確保されることになる。すなわちシム61の厚さを規定長さに調整しておけば、適切に最前進位置を調整できる。しかしながら、シリンダ18をノーズ部36から取り外し、シム61を取り付けて再度シリンダ18を取り付ける必要があり、作業が煩雑になっている。本実施の形態に係るスクリュ調整方法の方が優れていると言える。
【0033】
<本実施の形態の変形例>
本実施の形態は色々な変形が可能である。例えば、スクリュ19の位置検出手段として射出モータ49のエンコーダを利用することを説明した。しかしながら、例えば、磁歪式リニアポジションセンサ等を射出プレート32と他のプレート、例えば前プレート30の間に取り付けるようにすれば、これによってスクリュ19の位置を検出することができる。また、スクリュ19に作用させる軸力を2段階、つまり第1、第2の軸力に切り換えながら、ノズル23をシリンダ18に取り付けるように説明したが、軸力を1段階だけで実施してもよい。あるいは3段階以上に切り換えるようにしてもよい。
【0034】
型締装置2についても変形が可能である。本実施の形態において型締装置2は竪型であるように説明したが、横置き型であってもよい。同様に、熱硬化性樹脂用射出装置3も横置き型であるように説明したが、竪型であってもよい。
【0035】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 熱硬化性樹脂用射出成形機 2 型締装置
3 熱硬化性樹脂用射出装置 4 制御装置
7 ベッド 9 固定盤
10 上可動盤 11 下可動盤
12 タイバー 14 トグル機構
15 上側金型 16 下側金型
18 シリンダ 19 スクリュ
19a 先端面
21 スクリュ駆動装置 23 ノズル
23a 先端内面
24 ホッパ 28 フレーム
30 前プレート 31 後プレート
32 射出プレート 34 ガイドロッド
36 ノーズ部 38 回転軸
40 カップリング 42 可塑化モータ
43 回転伝達機構 45 ボールねじ機構
46 ボールナット 47 ボールねじ
49 射出モータ 50 回転伝達機構
52 ロードセル