(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139052
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】水処理管理装置および水処理監視方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20241002BHJP
C02F 9/00 20230101ALI20241002BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20241002BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20241002BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20241002BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20241002BHJP
B01D 61/08 20060101ALI20241002BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20241002BHJP
【FI】
C02F1/00 T
C02F1/00 V
C02F9/00
C02F1/42 D
C02F1/32
C02F1/44 J
C02F1/44 A
C02F1/44 D
B01D61/04
B01D61/08
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049837
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】吉永 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇規
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
4D037
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA05
4D006JA58Z
4D006KA01
4D006KA16
4D006KA72
4D006KB04
4D006KB11
4D006KB17
4D006KE22Q
4D006KE23Q
4D006KE30R
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB70
4D006PC02
4D025AA04
4D025AB34
4D025BA08
4D025BA13
4D025BB04
4D025CA01
4D025CA10
4D025DA04
4D025DA05
4D025DA06
4D037AA03
4D037AB02
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
4D037CA03
4D037CA04
4D037CA15
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】超純水製造システムの適切な管理を容易に行う。
【解決手段】被処理水が流入し、流入した被処理水に所定の処理を行う水処理装置と、水処理装置が処理した処理水の水質を測定するTOC計13と、水処理装置が処理した処理水の一部を水処理装置へ供給する供給部とを有し、水処理装置は、流入した被処理水と供給部から供給された処理水とに所定の処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理システムに供給される被処理水の水質を管理する水処理管理装置であって、
前記被処理水が流入し、該流入した被処理水に所定の処理を行う水処理装置と、
前記水処理装置が処理した処理水の水質を測定する測定器と、
前記水処理装置が処理した処理水の一部を前記水処理装置へ供給する供給部とを有し、
前記水処理装置は、前記流入した被処理水と前記供給部から供給された処理水とに前記所定の処理を行う水処理管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理管理装置において、
それぞれが互いに異なる単位操作を行う複数の前記水処理装置が直列に接続され、
前記測定器は、前記複数の水処理装置のうち、最後段に設けられた水処理装置が処理した処理水の水質を測定し、
前記供給部は、前記複数の水処理装置のうち、前記最後段に設けられた水処理装置が処理した処理水の一部を、前記複数の水処理装置のいずれかに供給する水処理管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理管理装置において、
前記複数の水処理装置は、逆浸透膜装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換樹脂充填装置との組み合わせを含み、前記逆浸透膜装置、前記紫外線酸化装置、前記イオン交換樹脂充填装置の順で直列に接続されている水処理管理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の水処理管理装置において、
前記供給部は、前記処理水を加圧する送水ポンプである水処理管理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の水処理管理装置において、
前記供給部は、前記最後段に設けられた水処理装置が処理した処理水の20%以上を、前記水処理装置へ供給する水処理管理装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の水処理管理装置において、
前記水処理装置は、TOC(Total Organic Carbon)成分を前記被処理水から除去する水処理管理装置。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の水処理管理装置において、
前記測定器は、前記水処理装置が処理した処理水の水質として、該処理水のTOC濃度を測定する水処理管理装置。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載の水処理管理装置において、
前記測定器が測定した水質に基づいて、前記水処理システムへの前記被処理水の供給を制御する制御部を有する水処理管理装置。
【請求項9】
水処理システムに供給される被処理水の水質を管理する水処理監視方法であって、
水処理装置が前記被処理水に所定の処理を行い、
前記水処理装置が処理した処理水の水質を測定し、
前記水処理装置が処理した処理水の一部を前記水処理装置へ供給し、
前記水処理装置が、前記被処理水と前記供給された処理水とに前記所定の処理を行う水処理監視方法。
【請求項10】
水処理システムと、
前記水処理システムに供給される被処理水の水質を管理する水処理管理装置とを有し、
前記水処理管理装置は、
前記被処理水が流入し、該流入した被処理水に所定の処理を行う水処理装置と、
前記水処理装置が処理した処理水の水質を測定する測定器と、
前記水処理装置が処理した処理水の一部を前記水処理装置へ供給する供給部と、
前記測定器が測定した値に基づいて、前記水処理システムへの前記被処理水の供給を制御する制御部とを有し、
前記水処理装置は、前記流入した被処理水と前記供給部から供給された処理水とに前記所定の処理を行うシステム。
【請求項11】
水処理システムと、該水処理システムに供給される被処理水の水質を管理する水処理管理装置とを有するシステムにおける方法であって、
前記水処理管理装置に具備された水処理装置が前記被処理水に所定の処理を行い、
前記水処理装置が処理した処理水の水質を測定し、
前記水処理装置が処理した処理水の一部を前記水処理装置へ供給し、
前記測定した水質に基づいて、前記水処理システムへの前記被処理水の供給を制御し、
前記水処理装置が、前記被処理水と前記供給された処理水とに前記所定の処理を行う方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理管理装置および水処理監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原水から超純水を生成する超純水製造システムなどの水処理システムでは、水処理システムに供給される原水の水質に関心を払う必要がある。例えば、超純水製造システムでは、原水に含まれる有機物質(TOC:Total Organic Carbon)を除去するために逆浸透膜(RO)処理や紫外線(UV)酸化処理が行われている。しかしながら、除去の対象となる有機物には、これらの処理によって除去しやすい成分とそうではない成分とが存在する。超純水製造システムに供給される原水としては、これまで、水道水や自来水、工業用水などが使用されてきた。近年では水資源の有効利用を図るため、生活で発生した下水等を処理して再利用する再生水や工場排水等を処理して再利用する回収水が原水として使用されるようになってきている。これらの再生水や回収水の水質は、工業用水などの水質と比較して、不安定となる傾向がある。また、再生水や回収水には、予期しない有機物が突発的に含まれることがある。除去しにくい有機物が原水に混入すると、超純水製造システムの出口から供給される処理水の水質に影響を及ぼすおそれがある。そのため、超純水製造システムにおける原水の水質を監視し、水質に応じて超純水製造システムの運転を適切に管理することの重要性がより高まってきている。特許文献1には、ユースポイントへ超純水を供給するメインの超純水製造システムとは別に設けられたサブの超純水製造システムの処理水TOC値に基づいて、メインの超純水製造システムへの被処理水の供給を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術において、メインの超純水製造システムとサブの超純水製造システムとが等価であって互いに同等の水質の超純水を生成するように構成されている。そのため、被処理水の評価(管理)を行うためのシステムの規模が大きくなってしまい、コストが増大し、また、設置場所の確保が困難になってしまう。また、メインの超純水製造システムとサブの超純水製造システムとが互いに等価であるために、サブの超純水製造システムにおける滞留時間をメインの超純水製造システムにおける処理時間と比較して大きく短縮することができない。その結果、原水での急激な水質変化に対応できなくなってしまう。このように、超純水製造システムの適切な管理を容易に行うことができないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、超純水製造システムの適切な管理を容易に行うことができる水処理管理装置および水処理監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水処理管理装置は、
水処理システムに供給される被処理水の水質を管理する水処理管理装置であって、
前記被処理水が流入し、該流入した被処理水に所定の処理を行う水処理装置と、
前記水処理装置が処理した処理水の水質を測定する測定器と、
前記水処理装置が処理した処理水の一部を前記水処理装置へ供給する供給部とを有し、
前記水処理装置は、前記流入した被処理水と前記供給部から供給された処理水とに前記所定の処理を行う。
【0007】
また、本発明の水処理監視方法は、
水処理システムに供給される被処理水の水質を管理する水処理監視方法であって、
水処理装置が前記被処理水に所定の処理を行い、
前記水処理装置が処理した処理水の水質を測定し、
前記水処理装置が処理した処理水の一部を前記水処理装置へ供給し、
前記水処理装置が、前記被処理水と前記供給された処理水とに前記所定の処理を行う。
【0008】
また、本発明のシステムは、
水処理システムと、
前記水処理システムに供給される被処理水の水質を管理する水処理管理装置とを有し、
前記水処理管理装置は、
前記被処理水が流入し、該流入した被処理水に所定の処理を行う水処理装置と、
前記水処理装置が処理した処理水の水質を測定する測定器と、
前記水処理装置が処理した処理水の一部を前記水処理装置へ供給する供給部と、
前記測定器が測定した値に基づいて、前記水処理システムへの前記被処理水の供給を制御する制御部とを有し、
前記水処理装置は、前記流入した被処理水と前記供給部から供給された処理水とに前記所定の処理を行う。
【0009】
また、本発明の方法は、
水処理システムと、該水処理システムに供給される被処理水の水質を管理する水処理管理装置とを有するシステムにおける方法であって、
前記水処理管理装置に具備された水処理装置が前記被処理水に所定の処理を行い、
前記水処理装置が処理した処理水の水質を測定し、
前記水処理装置が処理した処理水の一部を前記水処理装置へ供給し、
前記測定した水質に基づいて、前記水処理システムへの前記被処理水の供給を制御し、
前記水処理装置が、前記被処理水と前記供給された処理水とに前記所定の処理を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、超純水製造システムの適切な管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の水処理管理装置の第1の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図1に示した水処理管理装置におけるTOC計が測定したTOC濃度の使用例を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本発明の水処理管理装置の実施例1および実施例2のための構成を示す図である。
【
図4】比較例1で用いた水処理管理装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】比較例3で用いた水処理管理装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
【0013】
図1は、本発明の水処理管理装置の第1の実施の形態を示す図である。水処理管理装置100は、供給される被処理水を評価するシステムである。本形態における水処理管理装置100は
図1に示すように、RO10と、UV11と、CP12と、TOC計13と、ポンプ14と、バルブ15,16,17,18とを有する。RO10と、UV11と、CP12とが直列に接続されている。RO10と、UV11と、CP12と、ポンプ14と、バルブ15,18とから評価用純水製造部110を構成する。RO10、UV11およびCP12のそれぞれは、それぞれが流入された被処理水に対して所定の処理(単位操作)を実行する水処理装置である。特に、RO10、UV11およびCP12のそれぞれは、除去することが難しいTOC成分を除くTOC成分を被処理水から除去する。以下の説明において、ROにおける逆浸透膜処理やUVにおける紫外線酸化処理では除去することが難しいTOC成分、特に、一般的な紫外線酸化処理によって分解除去することが難しいTOC成分のことを難分解性TOC(Total Organic Carbon)成分と呼ぶ。例えば、尿素は、逆浸透膜処理や一般的な紫外線酸化処理では除去が難しいことが知られており、難分解性TOC成分に分類される。尿素以外にも難分解性TOC成分として振る舞う有機物の存在が知られている。難分解性TOC成分が原水に混入すると、超純水製造システムなどの水処理システムの出口での処理水質に影響を及ぼす恐れがある。また、難分解性TOC成分でなくても、それが原水に含まれていることで処理水質に大きな影響を与える有機物質がある。例えば、トルエンやキシレンなどの揮発性有機物質(VOC:Volatile Organic Compound)、クロロホルム、ブロモホルムなどのトリハロメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、低分子アルコールなどは、それらが原水中に含まれている濃度が高い場合には、逆浸透膜処理や紫外線酸化処理によっては完全には処理しきれず、水処理システムの処理水質に影響を及ぼす可能性があることが知られている。
【0014】
RO10は、供給された被処理水を濃縮して、濃縮水と透過水とを排出する逆浸透膜装置である。RO10から排出された濃縮水は排水され、透過水は後段のUV11へ送液される。なお、バルブ18を開くことで、RO10から処理された透過水の一部が排水される。RO10は、前段の逆浸透膜の透過水を後段の逆浸透膜へ供給する複数の逆浸透膜からなる多段構成のものであっても良い。RO10に用いられる逆浸透膜の種類は、特に限定しない。RO10に用いられる逆浸透膜として、例えば、ポンプ14における省エネルギーの観点から、超低圧逆浸透膜あるいは低圧逆浸透膜を用いることが好ましい。RO10は、15~50%の回収率で運転することが好ましい。
【0015】
UV11は、RO10から処理された透過水に対して、紫外線酸化処理を行う紫外線酸化装置である。UV11における紫外線照射量は、特に限定しない。UV11は、例えば0.05~3kWh/m3の照射量となるように調整されても良い。ポンプ14を用いてCP12の出口水がUV11へ供給される場合、UV11は、RO10から処理された透過水とポンプ14を用いて供給されてきた処理水とに対して紫外線酸化処理を行う。
【0016】
CP12は、UV11が処理した処理水が供給されてイオン交換処理を行うイオン交換樹脂充填装置である。CP12として、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とが混床で充填されたカートリッジポリッシャー(CP)(非再生型イオン交換装置とも呼ぶ)が用いられている。CP12の出口水が、評価用純水製造部110の出口水となる。
【0017】
TOC計13は、CP12の下流側に設けられ、CP12が処理した処理水の水質を測定する測定器である。具体的には、TOC計13は、CP12の出口水、つまり評価用純水製造部110の出口水のTOC濃度を測定する。なお、TOC計13は、CP12の下流側に限らず、評価用純水製造部110の任意の測定ポイント(複数でも可)における処理水の水質を測定することもできる。TOC計13は、測定したTOC濃度の値を出力する。出力方法は、他の装置への送信でも良いし、ディスプレイでの表示や、紙等の媒体への印刷等でも良く、特に規定しない。TOC計13が出力した値に基づいて、評価用純水製造部110を構成する水処理装置(本形態においては、RO10、UV11およびCP12)が除去できなかった難分解性TOC成分の検知が行われる。一般的に、被処理水に含まれるTOC成分には、RO10、UV11およびCP12が除去しやすい易分解性TOC成分と、RO10、UV11およびCP12が除去しにくい難分解性TOC成分とが含まれる。そのため、TOC成分を検出するTOC計13をRO10、UV11およびCP12の後段に設けることで、難分解性TOC成分の検知が容易になる。この検知を行う主体は、当該値を取得した制御装置(不図示)でも良い。例えば、TOC計13が出力した値を取得した制御装置は、取得した値とあらかじめ設定された基準値とを比較して、比較の結果に基づいて、評価用純水製造部110の出口水に難分解性TOC成分が含まれるかどうかを判定(検知)しても良い。または、制御装置は、取得した値の増減の度合いに基づいて、評価用純水製造部110の出口水に難分解性TOC成分が含まれるかどうかを判定(検知)しても良い。
【0018】
制御部23は、TOC計13が測定した水質の値に基づいて、水処理システムへの被処理水の供給を制御する。具体的には、制御部23は、TOC計13から濃度値を取得し、取得した濃度値に基づいてバルブ19の開閉を制御する。なお、TOC計13は水処理管理装置100の任意の箇所に設けることができるが、制御部23はCP12の後段に設けられたTOC計13が測定したTOCの値に基づいてバルブ19の開閉を制御する。
【0019】
ポンプ14は、バルブ15が開かれた状態で、CP12が処理した処理水の一部を加圧してUV11へ供給する送水ポンプである。ポンプ14が処理水を供給する水処理装置は、RO10、UV11、CP12のいずれでも良い。送水ポンプに用いるポンプ14の種類は、特に限定しない。ポンプ14として、定量ポンプを用いることが好ましい。(ポンプ14によって送水される水量/評価用純水製造部110での処理水量)×100[%]の算出式を用いて算出される循環率は、20%以上が好ましく、より好ましくは50%以上が好ましい。また循環率の上限値は、100%に近い値であって、例えば、96.3%であっても良い。このようにCP12が処理した処理水の一部を循環させることで、易分解性TOC成分の除去精度を向上させ、TOC計13における難分解性TOC成分の検知精度を向上させることができる。
【0020】
バルブ15は、開閉することで、CP12が処理した処理水のポンプ14側への通液を制御する。ポンプ14とバルブ15とで、供給部を構成する。バルブ16は、開閉することで、CP12が処理した処理水のTOC計13側への通液を制御する。バルブ17は、開閉することで、CP12の出口水、つまり評価用純水製造部110の出口水の排水を制御する。バルブ18は、開閉することで、RO10から処理された透過水の排水を制御する。バルブ19は、開閉することで、水槽200への被処理水の供給を制御する。水槽200は、バルブ19が開かれた状態で被処理水が供給され、貯留されるタンクである。水槽200に貯留された被処理水は、メインの超純水製造システムである水処理システムへ供給される。
【0021】
水処理管理装置100に供給される被処理水に対する前処理として、カートリッジフィルターや活性炭に対する通水処理や、酸やアルカリなどの薬品添加処理を行っても良い。
【0022】
以下に、
図1に示した水処理管理装置100におけるTOC計13が測定したTOC濃度の使用例を説明する。
図2は、
図1に示した水処理管理装置100におけるTOC計13が測定したTOC濃度の使用例を説明するためのフローチャートである。
【0023】
まず、水処理管理装置100への通水を開始した後(ステップS1)、TOC計13が測定している評価用純水製造部110の出口水の水質が安定したかどうかが判定される(ステップS2)。この判定は、評価用純水製造部110の出口水の水質が安定するまでの時間としてあらかじめ設定されている時間が経過したかどうかの判定でも良い。この場合、時間の経過をカウントするために、タイマ等が使用されても良い。また、この判定は、TOC計13が測定している値の変化が小さくなった(例えば、時間に対する測定値の変化率が所定の範囲内になった)かどうかの判定でも良い。なお、このときバルブ16の状態は、開状態であることは言うまでもない。
【0024】
TOC計13が測定している評価用純水製造部110の出口水の水質が安定したと判定されると、制御部23は、TOC計13が測定した値に基づいて、バルブ19の開閉を制御し、水処理システムへの被処理水の供給が制御される(ステップS3)。制御部23は、TOC計13から濃度値を取得し、取得した濃度値に基づいてバルブ19の開閉を制御する。例えば、制御部23は、取得した濃度値が所定の閾値を超える値である場合、バルブ19を閉じて、被処理水の水処理システムへの供給を停止する。また、制御部23は、取得した濃度値が所定の閾値を下回った場合、バルブ19を開けて、被処理水の水処理システムへの供給を開始する。
【0025】
被処理水の水質評価に用いられる評価用システムは、被処理水が供給されるメインの純水製造システムに対して被処理水が与える影響を迅速かつ少量の被処理水量で簡便に評価できることが必要である。そのため、評価用システムはメインの純水製造システムと比較して、限りなく小型の構成とすることが求められる。しかしながら、小型の構成とすることにより、評価用システムの仕様はメインの純水製造システムの仕様とは異ならざるを得なくなる。その結果、メインの純水製造システムが除去できるTOCを評価用システムでは除去できず、評価用システムで得られる水質がメインの純水製造システムで得られる水質よりも低くなるおそれがある。その結果、適切な評価および管理が困難となる。
【0026】
そこで、本形態における水処理管理装置は、被処理水に対して所定の操作を行う水処理装置が処理した処理水の一部を、再度水処理装置へ戻して供給する。水処理装置は、被処理水と戻入された処理水とを処理して排出する。つまり、水処理装置が処理した処理水の一部を循環させ、残りを排水させ、その水質を測定する。これにより、メインの超純水製造システムよりも小型で、且つ構成する水処理装置の数が少ない水処理管理装置であっても、メインの超純水製造システムから排出される処理水と同等の水質を持つ処理水を取得することができる。取得した処理水の水質を測定することで、メインの超純水製造システムから排出される処理水の水質を管理することができる。また、被処理水が供給されてから処理水の水質を測定するまでの経路が短いため、メインの超純水製造システムにおける処理時間よりも短い時間で水質を測定することができる。このように本形態における水処理管理装置においては、超純水製造システムの適切な管理を容易に行うことができる。
(他の実施の形態)
【0027】
水処理管理装置が監視する水質項目とその管理レベルに応じて、電気式脱イオン水製造装置(EDI装置)を設けても良い。電気式脱イオン水製造装置は、例えば、イオン交換樹脂の交換頻度の低減のためにカートリッジポリッシャーの代わりに配置したり、紫外線照射装置におけるTOC除去効率の向上のために逆浸透膜装置と紫外線照射装置との間に配置したりすることができる。また、被処理水の温度を調整するための熱交換器を設けても良い。さらに、被処理水に含まれる気体を除去するための脱気装置を設けても良い。脱気装置として、例えば脱酸素膜装置を用いることができる。脱気装置が設置される位置については限定しないが、紫外線酸化装置の前段に設置することが好ましい。
(実施例)
<実施例1>
【0028】
図3は、本発明の水処理管理装置の実施例1および実施例2のための構成を示す図である。実施例1では、第1の実施の形態における水処理管理装置100を用いて、メインの超純水製造システムである水処理システム300に供給される被処理水を評価した。供給される被処理水は、TOC濃度が100~200ppb(μg/L)のものを使用した。また、水処理管理装置100内のRO10として、回収率が50%であり、単位膜面積・1日当たりの膜ろ過水量が0.6m/dであり、膜面積は3.5m
2のものを使用した。また、UV11として、紫外線照射量が0.4kWh/m
3である低圧紫外線酸化装置を使用した。また、CP12として、通液速度が60(L/L-R)/hのものを使用した。また、TOC計13として、オンラインTOC濃度計500RLeを使用した。これらの装置は一例であり、仕様が同様である他の装置を使用しても良い。水処理システム300は
図3に示すように、活性炭装置であるAC30と、逆浸透膜装置であるRO31と、脱気装置であるDG32と、イオン交換装置であるIER33と、一次純水タンクであるタンク34と、紫外線酸化装置であるUV35と、イオン交換樹脂充填装置であるCP36と、限外ろ過膜装置であるUF37とを有する。水処理システム300は、これらの構成要素が互いに直列に接続されている。UF37が処理した処理水が、超純水としてユースポイントへ供給される。また、UF37が処理した処理水の一部がタンク34に戻される。AC30、RO31、DG32およびIER33から一次純水システム310を構成する。タンク34、UV35、CP36およびUF37から二次純水システム320を構成する。
【0029】
実施例1では、ポンプ14を用いて、CP12の出口水のうち20%をUV11の入口に戻して通水処理を行った。このとき、UV11への被処理水の供給量が、以下に説明する比較例1におけるUV11への供給量と同じになるようにバルブ18の開度を調節した。
<実施例2>
【0030】
実施例2のための構成は実施例1のための構成と同じであり、
図3に示した構成である。実施例2では、ポンプ14を用いて、CP12の出口水のうち50%をUV11の入口に戻して通水処理を行った。このとき、UV11への被処理水の供給量が、以下に説明する比較例1におけるUV11への供給量と同じになるようにバルブ18の開度を調節した。
<比較例1>
【0031】
比較例1のための構成は、
図3に示した実施例1のための構成における水処理管理装置100が、後述する水処理管理装置102に置き換わった構成である。比較例1では、水処理管理装置102を用いて、メインの超純水製造システムである水処理システム300に供給される被処理水を評価した。水処理システム300は、実施例1~3で使用したものと同じものである。
【0032】
図4は、比較例1で用いた水処理管理装置102の構成の一例を示す図である。比較例1で用いた水処理管理装置102は
図4に示すように、第1の実施の形態における水処理管理装置100の構成から循環経路を削除した構成である。つまり、水処理管理装置102においては、CP12が処理した処理水すべてが排水され、UV11へ供給されることは無い。RO10に供給された被処理水が、RO10、UV11およびCP12それぞれにおいて順次処理され、TOC計13にて水質が測定され、外部へ排出される。
<比較例2>
【0033】
比較例2は、実施例1の構成と同じ構成において、ポンプ14を用いて、CP12の出口水のうち10%をUV11の入口に戻して通水処理を行った。このとき、UV11への被処理水の供給量が、比較例1におけるUV11への供給量と同じになるようにバルブ18の開度を調節した。
<比較例3>
【0034】
比較例3のための構成は、
図3に示した実施例1のための構成における水処理管理装置100が、後述する水処理管理装置103に置き換わった構成である。比較例3では、水処理管理装置103を用いて、メインの超純水製造システムである水処理システム300に供給される被処理水を評価した。水処理システム300は、実施例1~3で使用したものと同じものである。
【0035】
図5は、比較例3で用いた水処理管理装置103の構成の一例を示す図である。比較例3で用いた水処理管理装置103には
図5に示すように、第1の実施の形態に示した水処理管理装置100の構成に加えて、RO10とUV11との間にタンク21およびポンプ22が設けられている。タンク21は、RO10からの透過水と、ポンプ14が送水するCP12が処理した処理水の一部とが所定の時間、貯留される。タンク21に貯留された処理水は、ポンプ22を用いてUV11へ送水される。
図5に示した構成において、バルブ15およびバルブ17の開度を調節して、CP12の出口水のうち50%をタンク21に戻して通水処理を行った。このとき、UV11への被処理水の供給量が、比較例1におけるUV11への供給量と同じになるようにポンプ22の吐出し量を調節した。このとき、タンク21に貯留されている貯留水が所定の量を下回らないように、バルブ18の開度を調整した。
<結果>
【0036】
実施例1~3および比較例1~3それぞれにおける、TOC計13が測定したTOC濃度と、測定値の安定に要した時間と、水処理システム300が処理可能なTOC濃度との関係を表1に示す。
【0037】
【0038】
表1に示した結果から、水処理システム300が処理して排出する超純水のTOC濃度が0.5ppb未満である。一方、比較例1では、水処理管理システムのTOC計13が測定した値が5ppbである。そのため、比較例1の水処理管理装置の構成では、水処理システム300が処理して排出する超純水と同等の水質の処理水を得ることができない。つまり、比較例1の水処理管理装置の構成では、水処理システム300に供給される被処理水を正確に管理することができない。
【0039】
実施例1では、TOC計13が測定した値が1ppbである。この結果から、CP12の出口水のうち20%をUV11へ戻して、UV11およびCP12が再度処理することで、比較例1では処理できなかったTOC成分を除去することができることがわかる。実施例2では、CP12の出口水のうちUV11へ戻す処理水の割合を実施例1よりも高くすることで、より効率的にTOC成分を除去することができることがわかる。
【0040】
また、比較例3では、TOC計13が測定したTOC濃度を下げることができるが、RO10が処理した透過水とCP12が処理した処理水とがタンク21で滞留するため、TOC計13が測定したTOC濃度が安定するまで長時間を要した。
【0041】
このように、本発明においては、水処理管理装置の処理水の一部を水処理管理装置内のいずれかの単位操作の入口に供給する。これにより、水処理管理装置における滞留時間(被処理水が水処理管理装置に供給されてから排出されるまでの時間)をメインの水処理システムにおける滞留時間よりも短縮することができる。また、水処理管理装置はメインの水処理システムに比べて小型の構成でありながらもメインの水処理システムの水質と同等の水質を得ることができる。そのため、対象となる供給水を適切に評価でき、安定した水処理システムの管理ができる。
【符号の説明】
【0042】
10 RO
11 UV
12 CP
13 TOC計
14,22 ポンプ
15~19 バルブ
23 制御部
100 水処理管理装置
110 評価用純水製造部
200 水槽