(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139058
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】エレベーター装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/06 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B66B7/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049843
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 知弘
(72)【発明者】
【氏名】大黒屋 篤
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紀幸
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 遼太郎
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BC23
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、ロープ振れ止め装置の設置時の作業性を向上させることにある。
【解決手段】
本発明のエレベーター装置は、主索の振れ止めを行うロープ振れ止め装置200を有するエレベーター装置において、ロープ振れ止め装置200は、昇降路内の構造物210に固定される保持具220を有し、保持具220は、主索を囲むガイド部222と、ガイド部222を開閉する開閉部221と、保持具220を構造物210に固定する固定部223と、を有し、開閉部221は、上方から見た場合に固定部223よりも乗りかご4に近い側に配置され、構造物210に対して着脱可能に設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上機と、前記巻上機に巻き掛けられた主索と、前記巻上機で前記主索を駆動することにより昇降路内を昇降する乗りかごと、前記主索の振れ止めを行うロープ振れ止め装置と、を有するエレベーター装置において、
前記ロープ振れ止め装置は、昇降路内の構造物に固定される保持具を有し、
前記保持具は、前記主索を囲むガイド部と、前記ガイド部を開閉する開閉部と、当該保持具を前記構造物に固定する固定部と、を有し、
前記開閉部は、上方から見た場合に前記固定部よりも前記乗りかごに近い側に配置され、前記構造物に対して着脱可能に設けられていることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーター装置において、
前記構造物は、前記昇降路内において鉛直方向に延在するガイドレールに取付けられた取付腕であることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベーター装置において、
前記開閉部は、ボルトを挿通するボルト挿通穴を有し、
前記保持具は、前記開閉部の前記ボルト挿通穴に挿通したボルトにより、前記取付腕に締結されることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベーター装置において、
前記保持具は、前記ガイド部の一端部に前記開閉部を備えると共に、他端部に前記固定部を備え、
前記固定部は、前記取付腕の背面側から前面側に折り返す折り返し部を有し、
前記取付腕は、前記保持具の前記固定部が挿通する貫通穴と、前記折り返し部の先端部が嵌合する嵌合穴と、を有することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエレベーター装置において、
前記固定部は、前記貫通穴に挿通され、前記折り返し部の前記先端部が前記取付腕の背面側から前記嵌合穴に嵌合されることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項6】
請求項3に記載のエレベーター装置において、
前記保持具は、前記ガイド部の一端部に前記開閉部を備えると共に、他端部に前記固定部を備え、
前記ガイド部は、第1ガイド部と、第2ガイド部と、第3ガイド部と、前記第2ガイド部と前記第3ガイド部とを回動可能に連結するヒンジと、を備え、
前記固定部は、前記取付腕に対して、溶接、締結、またはカシメにより固定され、
前記開閉部、前記第1ガイド部および前記第2ガイド部は、前記第3ガイド部および前記固定部に対して回動可能に構成されることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項7】
請求項2に記載のエレベーター装置において、
前記ガイド部は、第1ガイド部と、第2ガイド部と、第3ガイド部と、を備え、
前記保持具の前記固定部は、前記第1ガイド部と前記第3ガイド部とを接続する接続部を構成するように設けられ、
前記固定部は、前記取付腕に対して、溶接、締結、またはカシメにより固定され、
前記第1ガイド部および前記第3ガイド部は、前記固定部から垂直に、かつ前記取付腕から離れる方向に立ち上がるように構成され、
前記第1ガイド部はボルトを挿通するボルト挿通孔を有し、
前記第3ガイド部は、前記ボルトが螺合するタップ穴を有し、
前記ボルトは、前記開閉部を構成すると共に、前記第2ガイド部を構成することを特徴とするエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター装置に係わり、特にエレベーター装置のロープ振れ止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「保持具の一端はナットによって常に取付腕に取付けておくとともに、他端は上記一端のナットを緩め又は締めることによって、上記取付腕に着脱できる構成とした」ロープ振れ止め装置が記載されている(第6頁参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたロープ振れ止め装置は、保持具を固定するナットが、作業者から見て取付腕の背面側に位置しているため、例えば、保持具を固定するナットの視認性を良くするなど、設置時の作業性を向上させたいという要求に対する配慮が十分ではなかった。
【0005】
本発明の目的は、ロープ振れ止め装置の設置時の作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のエレベーター装置は、
巻上機と、前記巻上機に巻き掛けられた主索と、前記巻上機で前記主索を駆動することにより昇降路内を昇降する乗りかごと、前記主索の振れ止めを行うロープ振れ止め装置と、を有するエレベーター装置において、
前記ロープ振れ止め装置は、昇降路内の構造物に固定される保持具を有し、
前記保持具は、前記主索を囲むガイド部と、前記ガイド部を開閉する開閉部と、当該保持具を前記構造物に固定する固定部と、を有し、
前記開閉部は、上方から見た場合に前記固定部よりも前記乗りかごに近い側に配置され、前記構造物に対して着脱可能に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、設置時の作業性を向上させたロープ振れ止め装置を有するエレベーター装置を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のロープ振れ止め装置が搭載されたエレベーター装置の一実施例を示す概略側面図。
【
図3】本発明のロープ振れ止め装置の第1実施例に係る取付腕および保持具の形状を示す斜視図。
【
図5】
図3に示す保持具の取付状態(固定状態)を示す平面図。
【
図6】本発明のロープ振れ止め装置の第2実施例に係る取付腕および保持具の形状を示す平面図。
【
図7】本発明のロープ振れ止め装置の第3実施例に係る取付腕および保持具の形状を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例について、図面を用いて説明する。
【0010】
[実施例1]
図1および
図2を用いて、本発明の一実施例に係るエレベーター装置100について説明する。
図1は、本発明のロープ振れ止め装置10が搭載されたエレベーター装置100の一実施例を示す概略側面図である。
図2は、
図1に示すエレベーター装置100の概略平面図である。
【0011】
本実施例のエレベーター装置100は、昇降路1の下部に巻上機2を設置する機械室無しエレベーター装置で、巻上機2と巻上機2に巻掛けられる主索3と、主索3を巻掛けている乗りかご4および釣合おもり5と、昇降路1に鉛直方向に延在するガイドレール6と、を備える。巻上機2の動力を伝えられた主索3により、乗りかご4および釣合おもり5は、昇降路1内を昇降する。すなわち本実施例のエレベーター装置は、巻上機2と、巻上機2に巻き掛けられた主索3と、巻上機2で主索3を駆動することにより昇降路1内を昇降する乗りかご4と、主索3の振れ止めを行うロープ振れ止め装置200と、を有する。
【0012】
「昇降機耐震設計・施工指針2009年版」では、「巻上機が昇降路下部に設置される場合等は、その巻上機から昇降路上部までの主索についても、昇降路全高が30mを超えるものにおいて、少なくとも主索間隔の中央付近にロープガイドを設ける」ことが規定されている。つまり、
図1および
図2の構造を有するエレベーター装置において、昇降路全高が30mを超え、かつ「昇降機耐震設計・施工指針2009年版」への適合が求められた場合は、昇降路中間部にロープガイド(ロープ振れ止め装置)を設ける必要がある。
【0013】
図1および
図2のエレベーター装置100において、ロープ振れ止め装置200は、ガイドレール6に固定されている取付腕210と、取付腕210に固定されている保持具220と、を含んで構成される。取付腕210は一端部がガイドレール6に固定され、他端部が水平方向に張り出すように、片持ち状にガイドレール6に支持される。保持具220は、主索3の長手方向に垂直な平面(水平面)上において、取付腕210と共に、主索3を取り囲むように取付腕210に取り付けられる。本実施例では、保持具220は主索3を3方で囲み、1方は取付腕210で囲む構成である。
【0014】
取付腕10はガイドレール6に固定する構成とすることで、建屋への加工をせずに既設のエレベーター装置にロープ振れ止め装置200を追加設置することができる。ただし、取付腕210を昇降路1にアンカーボルトなどの方法で固定することも可能である。
【0015】
なお取付腕210は、
図2に示すように、乗りかご4と対向する側の面を前面210a、昇降路1の壁面1aと対向する側の面を後面210bまたは背面210bと呼ぶ。本実施例では、取付腕210は、その前面210aがガイドレール6の背面に当接するように、ガイドレール6に固定される。
【0016】
図3は、本発明のロープ振れ止め装置200の第1実施例に係る取付腕210および保持具220の形状を示す斜視図である。
取付腕210は、保持具220が固定される昇降路1内の構造物であり、保持具220との締結に用いるタップ穴211と、保持具220のガイド部222および固定部(カギ形状部)223が挿通する貫通穴212と、固定部223の先端部223bが嵌合される嵌合穴213と、を備える。すなわち本実施例では、取付腕210は、タップ穴211を構成する第1貫通穴、貫通穴212を構成する第2貫通穴、および嵌合穴213を構成する第3貫通穴の3つの貫通穴(貫通孔)を有する。
【0017】
保持具220は、一端部に構成された開閉部221と、他端部に構成された固定部223と、主索3が挿通される空間224を形成するガイド部222と、を有する。開閉部221はガイド部222(空間224)の開閉を行い、ガイド部222は主索3が挿通する空間224を形成し、主索3を囲繞する。固定部223は保持具220を取付腕210に固定する部位を構成する。
【0018】
なお本実施例では、空間224はガイド部222と取付腕210とにより囲まれており、空間224はガイド部222と取付腕210とにより形成される。ガイド部222は、開閉部221と固定部223との間に構成される。また、開閉部221、ガイド部222および固定部223は一体となって、一つの部材として構成される。
【0019】
開閉部221は、第1ガイド部222aの、取付腕210側の端部から、第3ガイド部222cの側とは反対側に向かって延設されている。開閉部221は、取付腕210とのボルト締結に用いる穴(ボルト挿通穴)221aを有し、取付腕210と当接した状態でボルト230(
図5参照)により締結される。開閉部221は、取付腕210の前面210aの側に、着脱可能に結合される。
【0020】
ガイド部222は、第1ガイド部222aと、第2ガイド部222bと、第3ガイド部222cと、を有する。第1ガイド部222aおよび第3ガイド部222cは、取付腕210から立ち上がるように設けられる立設部を構成する。第2ガイド部222bは、2つの立設部222a,222cの間を接続する架設部を構成する。第1ガイド部222aは、開閉部221の端部から連続して、取付腕210に対して離れる側(方向)に向かって延設される。第2ガイド部222bは、第1ガイド部222aの端部から連続して、第3ガイド部222cの側(方向)に向かって延設され、第3ガイド部222cに接続される。第3ガイド部222cは、第2ガイド部222bの端部から連続して、取付腕210に対して近づく側(方向)に向かって延設され、固定部223に接続される。
【0021】
ガイド部222は、取付腕210と共に、主索3が挿通される空間224を形成し、空間224に挿通された主索3を取り囲む。本実施例では、第1ガイド部222aは開閉部221に対して垂直に屈曲するような形状を成し、第2ガイド部222bは第1ガイド部222aに対して垂直に屈曲するような形状を成し、第3ガイド部222cは第2ガイド部222bに対して垂直に屈曲するような形状を成す。これにより、空間224は、主索3の挿通方向(主索3の長手方向)から見て、矩形形状を成す。しかし、空間224の形状は矩形形状に限定される訳ではなく、主索3が挿通され、主索3の振れを制限できる形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0022】
ガイド部222が取付腕210に固定された状態(以下、固定状態という)において、保持具220の開閉部221及びガイド部222は、取付腕210の前面210a側に配置される。ガイド部222の固定状態において、ガイド部222の第3ガイド部222cは、取付腕210の前面210a側から第2貫通穴212に挿通され、その一部が取付腕210の背面210b側に位置する。なお、ガイド部222の固定状態においては、ガイド部222は取付腕210と共に主索3を囲繞する。このため、ガイド部222の固定状態は、主索3の囲繞状態と呼ぶ場合もある。
【0023】
固定部223は、第3ガイド部222cの端部から連続して、開閉部221および第1ガイド部222aの側とは反対側に向かって延伸し、さらに取付腕210の背面210b側から前面210a側にカギ状に折り返す、折り返し部(カギ形状部)を構成する。すなわち固定部(折り返し部)223は、第3ガイド部222cの端部から、開閉部221および第1ガイド部222aの側とは反対側に向かって折り返す。
【0024】
固定部223の先端部223bは、ガイド部222の固定状態において、嵌合穴(第3貫通穴)213に嵌合される。固定部223は、先端部223bとガイド部222の第3ガイド部222cとを接続する接続部223aを有する。本実施例では、接続部223aは、ガイド部222の固定状態において、取付腕210の背面210bに位置し、取付腕210の背面210bに対して並設された状態になる。
【0025】
固定部223は、先端部223bを嵌合穴213に嵌合して取付腕210に係止される係止部を構成し、係止部223が嵌合穴213に係止されることで、保持具220を取付腕210の長手方向に対して着脱可能に固定する。なお本実施例では、開閉部221、ガイド部222、及び固定部223の間に形成される各部の曲げ角度は、直角に設定されている。すなわち、ガイド部222が取付腕210と共に形成する空間224は、上述した様に、主索3の挿通方向から見て、矩形形状を成す。しかしこの曲げ角度は、取付腕210に固定した際に主索3を噛み込むような隙間が生じなければ、直角でなくてもよい。従って、空間224の形状は矩形形状に限定される訳ではなく、主索3が挿通され、主索3の振れを制限できる形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0026】
また本実施例では、第1貫通穴211はタップ穴として設けられ、このタップ穴211にボルト230(
図5参照)が螺合される。締結されるボルト230(
図5参照)を螺合する際に、取付腕210の前面210a側からボルト230を締め付けることで、組立作業を行うことができる。すなわち、取付腕210の背面210b側にナットを設ける必要がなく、ボルト230の締結作業において、取付腕210の背面210b側での操作が不要になる。この場合、ボルト230は、開閉部221の開閉を操作する開閉操作部材を構成し、特にボルト230の頭部は工具で操作される開閉操作部を構成する。
【0027】
本実施例におけるロープ振れ止め装置200の設置手順を、
図4および
図5を用いて説明する。
図4は、
図3に示す保持具220の取付過程を示す平面図である。
図5は、
図3に示す保持具220の取付状態(固定状態)を示す平面図である。
【0028】
図4では、保持具220を取付腕210に取付ける過程を示しており、
図5では、保持具220の取付が完了した状態を示している。本実施例では、乗りかご4のかご上から保持具220の取付を行う。
【0029】
保持具220は、開閉部221が乗りかご4に近い側、固定部223が乗りかご4から遠い側となるように、取付腕210に取り付けられる。まず、固定部223を、第2貫通穴212に挿入する。このとき、保持具220は、
図4に示すように、取付腕210に対して斜めの向きとなるようにし、取付腕210と開閉部221との間に生じる隙間S1より、主索3をガイド部222の内側へ遊びがある状態で挿入(遊挿)する。
【0030】
次に、
図5に示すように、固定部223の先端部223bを嵌合穴213に引っかける。このとき、先端部223bを嵌合穴213に完全に挿入して、固定部223の接続部223aが取付腕210の背面210bに当接するようにすると、保持具220の固定をより強固なものとすることができる。最後に、タップ穴211と穴(ボルト挿通穴)221aとを用いて、ボルト230で取付腕210と保持具220とを締結する。
【0031】
図5に示すように、開閉部221は、昇降路1を上方から見た場合に固定部223よりも乗りかご4に近い側に配置され、取付腕(昇降路1内の構造物)210に対して着脱可能に設けられている。この場合、開閉部221は、少なくとも取付腕210の長手方向において、固定部223よりも乗りかご4に近い側に配置される。
【0032】
開閉部221を乗りかご4に近い側とすることで、保持具220の設置位置が乗りかご4から離れている場合でも、ボルト230を視認することができる。特に、開閉操作部となるボルト230の頭部が乗りかご4に近い側に配置されることで、より視認性を向上することができる。これにより、設置時の作業性を向上させることができ、トルクレンチ等を用いた適正締付トルクによる固定が容易となり、製品安全性を向上することができる。また、取付腕210にタップ穴211を備えた構成とすることで、取付腕11の正面側からボルト230を締結することができる。これにより、電動ドライバ等の電動工具を使用することができ、作業性を向上することができる。さらに、ガイド部222の内側にシリコンゴムなどの低摩擦弾性材による保護を施すことで、主索3に、乗りかご4および釣合いおもり5の昇降、または地震等による水平方向の振れが生じ、ガイド部222の内側に接触した場合でも、衝撃音を抑制することができる。
【0033】
[実施例2]
図6を用いて本発明の第2実施例を説明する。本実施例は、第1実施例の変形例で、第1実施例と同様の効果を得ることができる。また、第1実施例と同様な構成が多数存在するため、同様な構成には第1実施例と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。以下、第1実施例と異なる構成について説明する。
【0034】
第1実施例では、取付腕210と保持具220は完全に分離できる構成であったが、本実施例では、保持具220の一端を、取付腕210に予め固定する点が、第1実施例と比較した場合の変更点である。
【0035】
図6は、本発明のロープ振れ止め装置200の第2実施例に係る取付腕210および保持具220の形状を示す平面図である。
取付腕210は、保持具220との締結に用いるタップ穴211を備える。本実施例の取付腕210はタップ穴211を構成する第1貫通穴を有し、第1実施例の第2貫通穴212および第3貫通穴213は設けられていない。
【0036】
保持具220は、一端部に構成された開閉部221と、ガイド部222と、他端部に構成された固定部223と、を有する。
【0037】
開閉部221は、第1実施例の開閉部221と同様に構成され、取付腕210と当接し、取付腕210とのボルト締結に用いる穴(ボルト挿通穴)221aを有する。開閉部221は、取付腕210の前面210aの側に着脱可能に固定される。
【0038】
ガイド部222は、第1ガイド部222aと、第2ガイド部222bと、第3ガイド部222cと、を備える。第1ガイド部222aは、開閉部221の端部から連続して、取付腕210に対して離れる側(方向)に向かって延設される。第2ガイド部222bは、第1ガイド部222aの端部から連続して、第3ガイド部222cの側(方向)に向かって延設され、第3ガイド部222cに接続される。第3ガイド部222cは、第2ガイド部222bの端部から取付腕210に対して近づく側(方向)に向かって延設され、第2固定部223に接続される。
【0039】
本実施例では、開閉部221、第1ガイド部222aおよび第2ガイド部222bは一体となって、一つの部材として構成される。第3ガイド部222cおよび固定部223は一体となって、一つの部材として構成される。第2ガイド部222bと第3ガイド部222cとは、第2ガイド部222bと第3ガイド部222cとを回動可能に連結するヒンジ231を介して接続される。これにより、開閉部221、第1ガイド部222aおよび第2ガイド部222bは、第3ガイド部222cおよび固定部223に対して、ヒンジ231を介して回動可能に構成される。
【0040】
ガイド部222は、取付腕210と共に、主索3が挿通される空間224を形成し、空間224に挿通された主索3を取り囲む。本実施例では、固定部223は空間224の内側に配置され、ガイド部222の一部を構成している。固定部223は空間224の外側に配置されるように構成されてもよい。固定部223を空間224の内側に配置することにより、取付腕210に対する保持具220の配置スペースを小さくすることができる。
【0041】
固定部225は、空間224の内側で取付腕210と当接し、取付腕210に溶接により固定されている。このために固定部223は、開閉部221と異なり、取付腕210から取り外すことができない。
【0042】
なお、開閉部221、第1ガイド部222a、第2ガイド部222b、第3ガイド部222c、および固定部223の間に形成される各部の曲げ角度は、直角に設定されている。しかしこの曲げ角度は、取付腕210に固定した際に主索3を噛み込むような隙間が生じなければ、直角でなくてもよい。
【0043】
本実施例におけるロープ振れ止め装置200は、次の手順で設置される。
まず、ヒンジ231を開き、取付腕210と第1固定部221との間に生じる隙間より、主索3を第1ガイド部222a、第2ガイド部222bおよび第3ガイド部222cの内側の空間224へ遊挿する。次に、ヒンジ231を閉じて、第1固定部221を取付腕210に当接させる。最後に、タップ穴211と穴(ボルト挿通穴)221aとを用いて、ボルト230で取付腕210と保持具220とを締結する。
【0044】
図6に示すように、本実施例の固定部223を、取付腕210に予め固定した状態で設置作業を行うことで、作業工数を削減することができる。
【0045】
また本実施例では、第1実施例と同様に、開閉部221は、昇降路1を上方から見た場合に固定部223よりも乗りかご4に近い側に配置され、取付腕(昇降路1内の構造物)210に対して着脱可能に設けられている。この場合、開閉部221は、少なくとも取付腕210の長手方向において、固定部223よりも乗りかご4に近い側に配置される。
【0046】
開閉部221を固定部223に対して乗りかご4に近い側とすることで、保持具220の設置位置が乗りかご4から離れている場合でも、ボルト230を視認することができる。特に、開閉操作部となるボルト230の頭部が乗りかご4に近い側に配置されることで、より視認性を向上することができる。
【0047】
取付腕210と固定部223との固定は、溶接固定に替えてボルト・ナットによる締結固定や、リベット等によるカシメ固定としてもよい。カシメ固定の場合、溶接固定の場合と同様に、固定部223は取付腕210から取り外すことができない。一方、ボルト・ナットによる締結固定の場合、固定部223は取付腕210に対して着脱可能になる。しかし、主索3をガイド部222の内側へ遊挿する際には、ガイド部222(空間224)の開閉は開閉部221で行い、固定部223は取付腕210に対して固定された状態を維持する。
【0048】
[実施例3]
最後に、
図7を用いて本発明の第3の実施例を説明する。本実施例も、第1実施例の変形例で、第1実施例と同様の効果を得ることができる。また、第1の実施例と同様な構成が多数存在するため、同様な構成には第1実施例と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。以下、第1実施例と異なる構成について説明する。
【0049】
第1および第2実施例では、取付腕210と保持具220とによって、閉じた主索挿入空間224を形成するものであったが、本実施例では、保持具220に備えられた開口部232にボルト233を挿入することによって、閉じた主索挿入空間224を形成する点が、第1および第2実施例と比較した場合の変更点である。
【0050】
図7は、本発明のロープ振れ止め装置200の第3実施例に係る取付腕210および保持具220の形状を示す平面図である。
本実施例の取付腕210では、第1および第2実施例で説明した第1貫通穴211、第2貫通穴212および第3貫通穴213は設けられていない。
【0051】
保持具220は、ガイド部222(空間224)の開閉を行う開閉部221と、主索3を囲むガイド部222と、保持具220を取付腕210に固定する固定部223と、を有する。ガイド部222は、第1ガイド部222aと、第2ガイド部222bと、第3ガイド部222cと、を有する。固定部223は、第1ガイド部222aと第3ガイド部222cとを接続する接続部を構成し、取付腕210の前面210aに固定される。本実施例の場合も、第2実施例と同様に、固定部223は空間224の内側に配置され、ガイド部222の一部を構成する。
【0052】
第1ガイド部222aは、ボルト233の取付に用いる穴(ボルト挿通穴)222a1を有する。第3ガイド部222cは、第1ガイド部222aと対向する位置に、タップ穴222c1を有する。
【0053】
本実施例では、第2ガイド部222bはボルト233で構成され、ボルト233は第1ガイド部222aのボルト挿通穴222a1を挿通し、第3ガイド部222cのタップ穴222c1に螺合される。
【0054】
ボルト233が第3ガイド部222cのタップ穴222c1との螺合を解除されると、第1ガイド部222aと第3ガイド部222cとの間に、ガイド部222の開口部222dが形成される。主索3は、開口部222dを通して、ガイド部222の内側に形成される空間224に入れられる。このため、本実施例では、ボルト233は第2ガイド部222bを構成すると共に、第1および第2実施例の開閉部221を構成する。
【0055】
第1ガイド部222aおよび第3ガイド部222cは、固定部223から垂直に、取付腕210から離れる方向に立ち上がる立設部を構成する。ボルト233は第1ガイド部222aおよび第3ガイド部222cと直交するように、第1ガイド部222aおよび第3ガイド部222cに螺合される。固定部223、第1ガイド部222a、第2ガイド部222bおよび第3ガイド部222cの各部の交差角度は、直角に設定されている。しかしこの交差角度は、主索3を噛み込むような隙間が生じなければ、直角でなくてもよい。
【0056】
本実施例では、固定部223は取付腕210に溶接により固定されている。固定部223の取付腕210への固定は、溶接固定に替えてボルト・ナットによる締結固定や、リベット等によるカシメ固定としてもよい。本実施例の場合も、固定部223は空間224の内側に配置され、取付腕210に対する保持具220の配置スペースを小さくすることができる。
【0057】
本実施例におけるロープ振れ止め装置200は、次の手順で設置される。まず、開口部222dより、主索3を保持具23(ガイド部222)の内側に遊挿する。次に、ボルト233を、ボルト挿通穴222a1に第1ガイド部222aの外側から挿入し、タップ穴222c1に螺合して第3ガイド部222cと締結する。
【0058】
図7に示すように、本実施例の固定部223を、取付腕210に予め固定した状態で設置作業を行うことで、部品点数を削減することができる。また本実施例では、第1および第2実施例と同様に、開閉部221は、昇降路1を上方から見た場合に固定部223よりも乗りかご4に近い側に配置され、取付腕(昇降路1内の構造物)210に対して着脱可能に設けられている。この場合、開閉部221は、少なくとも取付腕210の長手方向に垂直な方向において、固定部223よりも乗りかご4に近い側に配置される。
【0059】
開閉部221を乗りかご4に近い側(手前側)とすることで、保持具220の設置位置が乗りかご4から離れている場合でも、ボルト233を視認することができる。特に、開閉操作部となるボルト233の頭部が乗りかご4に近い側に配置されることで、より視認性を向上することができる。
【0060】
上述した本発明に係る各実施例のエレベーター装置は、下記特徴を有する。
(1)巻上機2と、巻上機2に巻き掛けられた主索3と、巻上機2で主索3を駆動することにより昇降路1内を昇降する乗りかご4と、主索3の振れ止めを行うロープ振れ止め装置200と、を有するエレベーター装置において、
ロープ振れ止め装置200は、昇降路1内の構造物210に固定される保持具220を有し、
保持具220は、主索3を囲むガイド部222と、ガイド部222を開閉する開閉部221と、保持具220を構造物210に固定する固定部223と、を有し、
開閉部221は、上方から見た場合に固定部223よりも乗りかご4に近い側に配置され、構造物210に対して着脱可能に設けられている。
【0061】
(2)構造物210は、昇降路1内において鉛直方向に延在するガイドレール6に取付けられた取付腕である。
【0062】
(3)開閉部221は、ボルト230を挿通するボルト挿通穴221aを有し、
保持具220は、開閉部221のボルト挿通穴221aに挿通したボルト230により、取付腕210に締結される。
【0063】
(4)保持具220は、ガイド部222の一端部に開閉部221を備えると共に、他端部に固定部223を備え、
固定部223は、取付腕210の背面210b側から前面210a側に折り返す折り返し部223a,223bを有し、
取付腕210は、保持具220の固定部221が挿通する貫通穴212と、折り返し部223a,223bの先端部223bが嵌合する嵌合穴213と、を有する。
【0064】
(5)固定部223は、貫通穴212に挿通され、折り返し部223a,223bの先端部223bが取付腕210の背面210b側から嵌合穴213に嵌合される。
【0065】
保持具220は、ガイド部222の一端部に開閉部221を備えると共に、他端部に固定部223を備え、
ガイド部222は、第1ガイド部222aと、第2ガイド部222bと、第3ガイド部222cと、第2ガイド部222bと第3ガイド部222cとを回動可能に連結するヒンジ231と、を備え、
固定部223は、取付腕210に対して、溶接、締結、またはカシメにより固定され、
開閉部221、第1ガイド部222aおよび第2ガイド部222bは、第3ガイド部222cおよび固定部223に対して回動可能に構成される。
【0066】
(7)ガイド部222は、第1ガイド部222aと、第2ガイド部222bと、第3ガイド部222cと、を備え、
保持具220の固定部223は、第1ガイド部222aと第3ガイド部222cとを接続する接続部を構成するように設けられ、
固定部223は、取付腕210に対して、溶接、締結、またはカシメにより固定され、
第1ガイド部222aおよび第3ガイド部222cは、固定部223から垂直に、かつ取付腕210から離れる方向に立ち上がるように構成され、
第1ガイド部222aはボルト233を挿通するボルト挿通孔222a1を有し、
第3ガイド部222cは、ボルト233が螺合するタップ穴222c1を有し、
ボルト233は、開閉部221を構成すると共に、第2ガイド部222bを構成する。
【0067】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…昇降路、2…巻上機、3…主索、4…乗りかご、6…ガイドレール、200…ロープ振れ止め装置、210…昇降路1内の構造物(取付腕)、210a…取付腕210の前面、210b…取付腕210の背面、212…貫通穴、213…嵌合穴、220…保持具、221…開閉部、221a…ボルト挿通穴、222…ガイド部、222a…第1ガイド部、222a1…ボルト挿通孔、222b…第2ガイド部、222c…第3ガイド部、222c1…タップ穴、223…固定部、223a,223b…折り返し部、223b…折り返し部223a,223bの先端部、230…ボルト、231…ヒンジ、233…ボルト。