(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139064
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】フィルム剥離装置
(51)【国際特許分類】
B65H 41/00 20060101AFI20241002BHJP
B65H 47/00 20060101ALI20241002BHJP
B65H 3/46 20060101ALI20241002BHJP
H10N 30/05 20230101ALI20241002BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20241002BHJP
【FI】
B65H41/00 A
B65H41/00 B
B65H47/00 A
B65H47/00 B
B65H3/46 J
H10N30/05
H10N30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049856
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】石井 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】福島 岳行
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛之
(72)【発明者】
【氏名】濤川 雄一
【テーマコード(参考)】
3F108
3F343
【Fターム(参考)】
3F108JA02
3F108JA04
3F343FA09
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC02
3F343GD04
3F343HA12
3F343JD26
3F343JD27
3F343KB05
3F343LA04
3F343LA18
3F343MA31
(57)【要約】
【課題】フィルムを容易に剥離することが可能なフィルム剥離装置を提供する。
【解決手段】フィルム剥離装置100は、第1フィルムと第2フィルムとが重なった積層フィルムのうち第1フィルムの面を主面上に固定する部材と、人体の一部を用い積層フィルムから第2フィルムを剥離するときに部材の主面に振動を与える振動器と、振動器に、10kH以上かつ100kHz以下の周波数を有する搬送波を1Hz以上かつ300Hz以下の周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波を供給する駆動装置と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フィルムと第2フィルムとが重なった積層フィルムのうち第1フィルムの面を主面上に固定する部材と、
人体の一部を用い前記積層フィルムから第2フィルムを剥離するときに前記部材の前記主面に振動を与える振動器と、
前記振動器に、10kH以上かつ100kHz以下の周波数を有する搬送波を1Hz以上かつ300Hz以下の周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波を供給する駆動装置と、
を備えるフィルム剥離装置。
【請求項2】
前記信号波は、矩形波またはのこぎり波である請求項1に記載のフィルム剥離装置。
【請求項3】
前記変調波の変調度は、80%以上である請求項2に記載のフィルム剥離装置。
【請求項4】
前記搬送波の周波数は、前記部材の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下である請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルム剥離装置。
【請求項5】
前記振動器は、前記主面に前記振動の定在波を形成する請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルム剥離装置。
【請求項6】
前記部材は板部材であり、
前記振動器は、前記第2フィルムを剥離する領域を挟み対向する位置に設けられた第1圧電素子および第2圧電素子を備える請求項5に記載のフィルム剥離装置。
【請求項7】
前記第1圧電素子および前記第2圧電素子の各々は、圧電体層と、第1方向において前記圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することで前記第1方向に直交する第2方向に伸縮し、
前記第1圧電素子と前記第2圧電素子とは、前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向において、前記領域を挟み対向する請求項6に記載のフィルム剥離装置。
【請求項8】
前記積層フィルムは、樹脂フィルムである請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルム剥離装置。
【請求項9】
前記積層フィルムは袋である請求項8に記載のフィルム剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムを剥離する装置として、ローラ等を用いフィルムを剥離する装置が知られている(例えば特許文献1)。振動器に変調波の信号を供給することで、様々な触覚が得られることが知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-147401号公報
【特許文献2】特開平8-314369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2枚のフィルムが重なった積層フィルムから、1枚のフィルムを他方のフィルムから剥離する場合、2枚のフィルムが付着し、1枚のフィルムを他方のフィルムから剥離することが難しいことがある。例えば、スーパマーケット等では、ポリエチレン袋が用いられている。ポリエチレン袋は、2枚のポリエチレンフィルムが重なった積層フィルムである。ユーザは指を用い積層フィルムを掴み、2つのフィルムから1枚のフィルムを剥離しようとするが、1枚のフィルムを積層フィルムから剥離することが難しいことがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、フィルムを容易に剥離することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1フィルムと第2フィルムとが重なった積層フィルムのうち第1フィルムの面を主面上に固定する部材と、人体の一部を用い前記積層フィルムから第2フィルムを剥離するときに前記部材の前記主面に振動を与える振動器と、前記振動器に、10kH以上かつ100kHz以下の周波数を有する搬送波を1Hz以上かつ300Hz以下の周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波を供給する駆動装置と、を備えるフィルム剥離装置である。
【0007】
上記構成において、前記信号波は、矩形波またはのこぎり波である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記変調波の変調度は、80%以上である構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記搬送波の周波数は、前記部材の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記振動器は、前記主面に前記振動の定在波を形成する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記部材は板部材であり、前記振動器は、前記第2フィルムを剥離する領域を挟み対向する位置に設けられた第1圧電素子および第2圧電素子を備える構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第1圧電素子および前記第2圧電素子の各々は、圧電体層と、第1方向において前記圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することで前記第1方向に直交する第2方向に伸縮し、前記第1圧電素子と前記第2圧電素子とは、前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向において、前記領域を挟み対向する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記積層フィルムは、樹脂フィルムである構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記積層フィルムは袋である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フィルムを容易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例1に係るフィルム剥離装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例1における板部材の平面図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係るフィルム剥離装置の断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1における圧電素子の断面図である。
【
図5】
図5(a)は、実施例1におけるフィルムの平面図、
図5(b)は、フィルムの断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1における袋の斜視図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は、実施例1における板部材とフィルムの断面図である。
【
図8】
図8は、実施例1において駆動装置が圧電素子に供給する信号の例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例1において駆動装置が圧電素子に供給する信号の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0018】
図1は、実施例1に係るフィルム剥離装置の斜視図である。
図2は、実施例1における板部材12の平面図である。
図3は、実施例1に係るフィルム剥離装置の断面図であり、
図2のA-A断面に相当する。板部材12において、フィルム32が引き出される方向を-X方向(第3方向)、板部材12の厚さ方向をZ方向(第1方向)、X方向およびZ方向に直交する方向をY方向(第2方向)とする。ここで、第1方向、第2方向および第3方向が直交(略直交)するとは、幾何学的な直交に限らず、各方向のなす角度が70°~110°でもよく、80°~100°でもよい。
【0019】
図1から
図3に示すように、実施例1のフィルム剥離装置100では、板部材12が筐体20にはめ込まれている。筐体20の+X方向における端部のY方向における両側に、+Z方向に伸びる側壁22が固定されている。2つの側壁22の間には、ローラ24および26a~26dが設けられている。ローラ24は、フィルムローラであり、フィルム32が巻かれたフィルムロール30が設置されている。ローラ26a~26dはテンションローラであり、フィルム32を引き出すときに、フィルム32に張力を加える。
【0020】
板部材12は平板状であり、平面形状は長方形である。板部材12の上面(+Z側面)は、主面13である。主面13は、ほぼ平面である。主面13は曲面を含んでいてもよい。板部材12のX方向における中央部の領域16に板部材12を貫通する複数の孔14が設けられている。孔14は、フィルム32を真空吸着させる。板部材12のX方向における両端部の下面(主面13と反対の面、-Z側の面)に圧電素子10aおよび10bが固定されている。圧電素子10aおよび10bは、例えば樹脂接着剤または金属接合材を用い板部材12に固定されている。圧電素子10aおよび10bは、駆動装置62に電気的に接続されている。
【0021】
筐体20は、平面形状が長方形の平板部分を有し、平板部分の周縁部は、+Z方向に屈曲している。屈曲した部分は、板部材12をX方向およびY方向において囲み、板部材12のX側およびY側の側壁に接して設けられている。筐体20と板部材12との間には空気等の気体からなる空間28が形成される。不図示のポンプが排気路21から空間28内の空気を吸引する。空間28内は陰圧となり、孔14は、板部材12上のフィルム32を真空吸着し、固定する。
【0022】
ローラ24に巻き付けられているフィルムロール30が取り付けられている。フィルム32は、フィルムロール30からローラ26a~26dを介し板部材12の主面13上に引き出される。引き出されたフィルム32は、孔14の吸引により板部材12の主面13に固定される。
【0023】
板部材12、筐体20、側壁22、ローラ24および26a~26dは、例えば金属または樹脂であり、一例としてアクリル樹脂である。板部材12、筐体20、側壁22、ローラ24および26a~26dの材料、形状および寸法は適宜設計できる。
【0024】
図4は、実施例1における圧電素子の断面図である。
図4に示すように、圧電素子10aおよび10bでは、複数の圧電体層41からなる圧電体40、複数の第1電極42および複数の第2電極44を備えている。複数の第1電極42および複数の第2電極44はZ方向において互い違いに設けられている。1つの圧電体層41は、Z方向において1つの第1電極42と1つの第2電極44とに挟まれている。
【0025】
圧電体40の-Y側および+Y側の側面に、それぞれ外部電極43および45が設けられている。外部電極43には第1電極42が電気的に接続される。外部電極45には第2電極44が電気的に接続される。外部電極43は、圧電体40の上面(+Z側の面)に回り込んで設けられている。外部電極45は、圧電体40の上面(+Z側の面)および下面(-Z側の面)に回り込んで設けられている。圧電体40の上面の外部電極45と最上層の第1電極42とは最上層の圧電体層41を挟んで設けられ、圧電体40の下面の外部電極45と最下層の第1電極42とは最下層の圧電体層41を挟んで設けられている。
図4では、圧電体層41が8層設けられており、各圧電体層41は、第1電極42と第2電極44、または第1電極42と外部電極45とに挟まれている。
【0026】
外部電極43および45は、ケーブルを介し駆動装置62に電気的に接続されている。圧電素子10aおよび10bのように、平面形状がY方向に長い短冊状の場合、駆動装置62が外部電極43と45との間に電圧を印加することで、圧電体40は、矢印56のようにY方向に伸縮する。このように、圧電素子10aおよび10bは長方形状であり、圧電体層41と、Z方向において圧電体層41を挟む第1電極42および第2電極44と、を備え、第1電極42と第2電極44との間に電圧を印加することで長方形状の長辺の延伸するY方向に伸縮する振動モードを横変位型モードまたはd31モードという。
【0027】
圧電体層41の材料としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸バリウム系材料(BaTiO3、BaはCaでもよく、TiはZrでもよい)、チタン酸ビスマス系材料(BiTiO3、Biの一部がNaでもよい)、ニオブ酸アルカリ系材料(NaNbO3、NaはLiまたはKでもよい)を用いることができる。第1電極42、第2電極44、外部電極43および45の材料としては、例えばAg、Pd、Pt、Cu、NiおよびAu等の金属を用いることができる。圧電素子10aおよび10bは、表面に第1電極42および第2電極44が形成された圧電体シートを積層し、焼結することにより形成される焼結体からなるチップである。
【0028】
図2において、駆動装置62が圧電素子10aおよび10bに信号を供給すると、板部材12はY方向に伸縮する。圧電素子10aおよび10bに信号の位相を同位相、または適切な位相関係とすることで、圧電素子10aと10bとの間に振動の定在波が形成される。
【0029】
図5(a)は、実施例1におけるフィルムの平面図、
図5(b)は、フィルムの断面図である。
図5(a)に示すように、フィルム32は、複数の袋34が連結されており、袋34の間に破線状の切り込み線35が設けられている。フィルム32の一端を引っ張ることで、フィルム32は、切り込み線35から破断される。これにより、1つの袋に分離される。
図5(b)に示すように、フィルム32は、フィルム32aと32bとが積層されている。
【0030】
図6は、実施例1における袋の斜視図である。
図6に示すように、袋34では、フィルム32aおよび32bの平面形状は長方形である。フィルム32aと32bとは長方形の3辺が接合されており、長方形の短辺の1つの1辺は接合されていない。これにより、フィルム32aと32bとを引き離すと、フィルム32aと32bとの間が空洞37となる。フィルム32aと32bとは静電気等により密着されている。フィルム32aおよび32bは、例えば樹脂フィルムまたは金属フィルムであり、一例としてポリエチレンフィルムである。フィルム32aおよび32bの各々の厚さは、例えば0.001mm以上かつ0.1mmである。
【0031】
図7(a)および
図7(b)は、実施例1における板部材とフィルムの断面図である。
図7(a)に示すように、板部材12の主面13の領域16にフィルム32のうちフィルム32aの下面が例えば真空吸着により固定されている。ユーザは指38の先端をフィルム32bの上面に接触させる。駆動装置62が圧電素子10aおよび10bに信号を供給し、領域16に振動の定在波が形成されている。指38に振動が伝わる。駆動装置62が圧電素子10aおよび10bに供給する信号を後述するような駆動信号とすると、指38を動かすと、指38の先端に引っ掛かりのような感触が得られる。
【0032】
図7(b)に示すように、指38を動かすと、フィルム32bと32aとがずれ、フィルム32bがフィルム32aから剥がれる。ユーザが指38でフィルム32bを掴み引っ張ると、フィルム32bはフィルム32aから剥離される。これにより、
図6のような、袋34を形成することができる。
【0033】
図8は、実施例1において駆動装置が圧電素子に供給する信号の例を示す図である。
図8における横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。搬送波の周期T1(周波数f1)の信号は搬送波64である。変調波66の包絡線65は信号波に対応する。信号波は周期T2(周波数f2)である。搬送波64としては正弦波を用いるが、図の簡略化のため搬送波64として三角波を図示している。また、周期T1は周期T2に比べ非常に小さいが、理解しやすいように
図8では周期T1を大きく図示している。変調波66では、搬送波64が信号波により振幅変調されている。搬送波64は正弦波であり、信号波は矩形波である。
【0034】
図9は、実施例1において駆動装置が圧電素子に供給する信号の別の例を示す図である。信号波の波形は、急峻な立ち上がりと徐々に下がる立ち下がりを有するのこぎり波(下降ランプ波ともいう)である。その他の構成は、
図8と同じであり、説明を省略する。
【0035】
図8および
図9において、変調波66における包絡線65の最も大きい振幅をA1、包絡線65の最も小さい振幅をA2としたとき、変調度MをM=(A1-A2)/(A1+A2)と定義する。
【0036】
[実験]
搬送波64の周波数f1を板部材12および筐体20の共振周波数に設定して、信号波の周波数f2を変えて、フィルム32bをフィルム32aから剥離する実験を行った。板部材12および筐体20の共振周波数は30.7kHzであり、フィルム32a、32bの材料はポリエチレンである。変調波66の変調度Mは100%とした。
【0037】
周波数f1を30.7kHzとし、周波数f2を1Hz~10Hzとすると、指38には、人の脈動のような振動を感じる。周波数f2を10Hz~100Hzとすると、フィルム32bの剥離は容易である。周波数f2を100Hz~300Hzとすると、細かい振動を感じる。一例として、フィルム32として、厚さが0.01mm未満の袋を用いた場合、周波数f2を16Hzとすると、最もフィルム32bの剥離が容易となった。フィルム32として、厚さが0.02mm程度の袋を用いた場合、周波数f2を61Hzとすると、最もフィルム32bの剥離が容易となった。
【0038】
信号波の波形を変え、フィルムを剥がす実験を行ったところ、
図8のように信号波が矩形波の場合、指38にはコツコツという振動が伝わり、フィルム32bを容易に剥離することができた。
図9のようなのこぎり波の場合、矩形波ほどではないが、指38にはコツコツという振動が伝わり、フィルム32bを剥離することができた。信号波の波形が、徐々に上がる立ち上がりと急峻な立ち下がりを有するのこぎり波(上昇ランプ波ともいう)の場合、下降ランプ波に比べると、フィルム32bの剥離は難しかった。信号波の波形が正弦波の場合、フィルム32bの剥離は難しかった。
【0039】
以上のように、信号波の波形が急峻な立ち上がりを有すると、フィルム32bに指38が引っ掛かり、フィルム32bを剥離しやすい。信号波の波形が急峻な立ち下がりを有しても、信号波の波形が急峻な立ち上がりを有する場合ほどではないもの、フィルム32bに指38が引っ掛かり、フィルム32bを剥離しやすい。
【0040】
実施例1によれば、
図7(a)のように、板部材12(部材)は、フィルム32a(第1フィルム)と32b(第2フィルム)とが重なったフィルム32(積層フィルム)のうちフィルム32aの面を主面13上に固定する。振動器である圧電素子10aおよび10bは、指38を用いフィルム32からフィルム32bを剥離するときに主面13に振動を与える。このようなフィルム剥離装置100において、駆動装置62は、圧電素子10aおよび10bに、10kH以上かつ100kHz以下の周波数f1を有する搬送波64を1Hz以上かつ300Hz以下の周波数f2を有する信号波により振幅変調させた変調波66を供給する。これにより、フィルム32bをフィルム32aから容易に剥離することができる。フィルム32からフィルム32bを剥離するときには、ユーザは、手などの人体の一部を用いればよい。
【0041】
搬送波64の周波数f1は、20kHz以上かつ70kHz以下が好ましい。信号波の周波数f2は、10Hz以上かつ100Hz以下が好ましい。
【0042】
信号波の波形は限定されないが、信号波は、矩形波またはのこぎり波であることが好ましい。これにより、指38にコツコツといった振動が伝わり、指38がフィルム32bに引っ掛かりやすくなる。よって、フィルム32bの剥離が容易となる。
【0043】
矩形波およびのこぎり波は、立ち上がり時間および立ち下り時間が周期T2より十分に小さい波形である。矩形波およびのこぎり波の立ち上がり時間および立ち下り時間は、例えば周期T2の1/25倍以下であり、1/100倍以下である。なお、立ち上がり時間および立ち下り時間の定義は、日本工業規格JIS C 161-02-05が準用される。すなわち、立ち上がり時間および立ち下り時間は、包絡線65の電圧が振幅A1のときと振幅A2のときの電圧の差に対し10%の電圧のときの時間と90%の電圧のときの時間との差である。
【0044】
指38にコツコツとした振動を伝えるためには、変調波66の変調度は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0045】
搬送波64の周波数を板部材12および筐体20の共振周波数とすると、指38がフィルム32bに接触して静止している場合には、あまり振動は伝わらないが、フィルム32bに接触した状態で指38を動かすと、強い振動が伝わる。このような現象は発明者らがはじめて見出した現象である。このため、指38をフィルム32bに接触させ、動かすことで、指38にフィルム32bが引っ掛かり、フィルム32bを容易に剥離することができる。
【0046】
搬送波64の周波数は、共振周波数の近傍の周波数でもよい。例えば、搬送波64の周波数は、板部材12および筐体20の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下の範囲が好ましく、0.9倍以上かつ1.1倍以下がより好ましい。
【0047】
板部材12の主面13には、振動の定在波を形成しなくてもよい。しかし、主面13に定在波を形成しない場合、例えば圧電素子から離れると振動が弱くなる。よって、板部材12の主面13には、振動の定在波を形成することが好ましい。
【0048】
振動器としては、圧電素子10aおよび10bを用いてもよい。圧電素子10aおよび10bが振動を発生させることで、より強い振動を発生させることができる。圧電素子10a(第1圧電素子)および圧電素子10b(第2圧電素子)を、フィルム32bを剥離する領域16を挟み対向する位置に設ける。これにより、領域16に定在波を形成することができる。
【0049】
圧電素子10aおよび10b各々は、Y方向に伸縮し、X方向において、領域16を挟み対向する。これにより、領域16に振動の定在波を形成することができる。
【0050】
フィルム32が樹脂フィルムの場合、静電気等によりフィルム32aと32bとが付着しやすい。よって、フィルム剥離装置100を用いることが好ましい。
【0051】
フィルム32が袋34である場合には、
図6のように、フィルム32aと32bとを引き離して使用する。よって、フィルム剥離装置100を用いることが好ましい。
【0052】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。