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特開2024-139097品質管理装置、品質管理方法、および、品質管理プログラム
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  • 特開-品質管理装置、品質管理方法、および、品質管理プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139097
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】品質管理装置、品質管理方法、および、品質管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20241002BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20241002BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B19/418 Z
H01L21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049889
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 悠太郎
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA38
3C100AA57
3C100AA70
3C100BB15
3C100BB27
3C100CC02
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】検査規格値だけでなく、品質検査の蓄積された検査結果により都度更新される管理限界値を基準とする品質検査を実行することで品質を向上させるための管理を行うことができる品質管理装置、品質管理方法、および、品質管理プログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】製品および検査項目を紐付けて設定した検査指示に応じて検出された検査測定値、ならびに、検査統計値データに基づいて、当該検査測定値、および、製品に対する検査項目の合否判定を設定した検査実績データを取得し、検査実績データに基づいて、検査統計値データを更新する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部と制御部とを備えた品質管理装置であって、
前記記憶部は、
製品の各検査項目の品質規格を規定する規格値、および、当該検査項目の品質基準を規定し且つ検査実績により更新される管理限界値を紐付けて設定した検査統計値データを記憶する検査記憶手段、
を備え、
前記制御部は、
前記製品および前記検査項目を紐付けて設定した検査指示に応じて検出された検査測定値、ならびに、前記検査統計値データに基づいて、当該検査測定値、および、前記製品に対する前記検査項目の合否判定を設定した検査実績データを取得する検査実績取得手段と、
前記検査実績データに基づいて、前記検査統計値データを更新する更新手段と、
を備えたことを特徴とする品質管理装置。
【請求項2】
前記検査実績取得手段は、
前記製品および前記検査項目を紐付けて設定した前記検査指示に応じて検出された前記検査測定値、ならびに、前記検査統計値データに基づいて、前記規格値と前記管理限界値との間に前記検査測定値がある場合、当該検査測定値、および、前記製品に対する前記検査項目を警告対象とする前記合否判定を設定した前記検査実績データを取得することを特徴とする請求項1に記載の品質管理装置。
【請求項3】
前記検査実績取得手段は、
前記製品および前記検査項目を紐付けて設定した前記検査指示に応じて検出された前記検査測定値、ならびに、前記検査統計値データに基づいて、上限規格値と下限規格値との間に前記検査測定値がある場合、当該検査測定値、および、前記製品に対する前記検査項目を合格とする前記合否判定を設定した前記検査実績データを取得することを特徴とする請求項1に記載の品質管理装置。
【請求項4】
前記検査実績取得手段は、
前記製品および前記検査項目を紐付けて設定した前記検査指示に応じて検出された前記検査測定値、ならびに、前記検査統計値データに基づいて、前記検査測定値が上部管理限界値を上回る場合、または、前記検査測定値が下部管理限界値を下回る場合、当該検査測定値、および、前記製品に対する前記検査項目を不合格とする前記合否判定を設定した前記検査実績データを取得することを特徴とする請求項1に記載の品質管理装置。
【請求項5】
前記記憶部は、
前記検査項目、統計値計算対象数、および、管理限界定数を紐付けて設定した統計管理マスタ、
を更に備え、
前記検査記憶手段は、
前記製品の前記各検査項目の前記規格値、当該検査項目の前記検査測定値の平均値、前記検査測定値の標準偏差、および、当該検査項目の前記管理限界値を紐付けて設定した前記検査統計値データ、ならびに、前記各製品の前記検査項目、検査日、前記検査測定値、および、前記合否判定を紐付けて設定した検査実績履歴データを記憶し、
前記更新手段は、
前記検査実績データ、前記統計管理マスタ、および、前記検査実績履歴データに基づいて、前記検査測定値の新たな平均値および標準偏差を計算し、当該平均値、当該標準偏差および前記管理限界定数に基づいて、新たな管理限界値を計算し、前記検査統計値データを更新することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の品質管理装置。
【請求項6】
前記更新手段は、
前記検査実績データ、前記統計管理マスタ、および、前記検査実績履歴データに基づいて、前記統計値計算対象数の前記検査測定値の新たな前記平均値および前記標準偏差を計算し、当該平均値から、当該標準偏差と前記管理限界定数との積を差し引いた下部管理限界値、ならびに、当該平均値に、当該標準偏差と前記管理限界定数との積を加えた上部管理限界値を計算し、前記検査統計値データを更新することを特徴とする請求項5に記載の品質管理装置。
【請求項7】
前記更新手段は、
前記検査実績データ、前記統計管理マスタ、および、前記検査実績履歴データに基づいて、前記合否判定が不合格ではない前記統計値計算対象数の前記検査測定値の新たな前記平均値および前記標準偏差を計算し、当該平均値、当該標準偏差および前記管理限界定数に基づいて、新たな前記管理限界値を計算し、前記検査統計値データを更新することを特徴とする請求項5に記載の品質管理装置。
【請求項8】
前記検査統計値データは、
更に、前記製品の工程能力指数が紐付けて設定され、
前記更新手段は、
更に、前記規格値、前記平均値および前記標準偏差に基づいて、新たな工程能力指数を計算し、前記検査統計値データを更新することを特徴とする請求項5に記載の品質管理装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記検査統計値データおよび前記検査実績履歴データを参照可能に設定し、且つ、前記規格値を変更可能に設定した検査統計値照会画面を表示させる画面表示手段、
を更に備えたことを特徴とする請求項5に記載の品質管理装置。
【請求項10】
記憶部と制御部とを備えた品質管理装置に実行させるための品質管理方法であって、
前記記憶部は、
製品の各検査項目の品質規格を規定する規格値、および、当該検査項目の品質基準を規定し且つ検査実績により更新される管理限界値を紐付けて設定した検査統計値データを記憶する検査記憶手段、
を備え、
前記制御部において実行される、
前記製品および前記検査項目を紐付けて設定した検査指示に応じて検出された検査測定値、ならびに、前記検査統計値データに基づいて、当該検査測定値、および、前記製品に対する前記検査項目の合否判定を設定した検査実績データを取得する検査実績取得ステップと、
前記検査実績データに基づいて、前記検査統計値データを更新する更新ステップと、
を含むことを特徴とする品質管理方法。
【請求項11】
記憶部と制御部とを備えた品質管理装置に実行させるための品質管理プログラムであって、
前記記憶部は、
製品の各検査項目の品質規格を規定する規格値、および、当該検査項目の品質基準を規定し且つ検査実績により更新される管理限界値を紐付けて設定した検査統計値データを記憶する検査記憶手段、
を備え、
前記制御部において、
前記製品および前記検査項目を紐付けて設定した検査指示に応じて検出された検査測定値、ならびに、前記検査統計値データに基づいて、当該検査測定値、および、前記製品に対する前記検査項目の合否判定を設定した検査実績データを取得する検査実績取得ステップと、
前記検査実績データに基づいて、前記検査統計値データを更新する更新ステップと、
を実行させるための品質管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質管理装置、品質管理方法、および、品質管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被検査物に対する検査の検査規格値の更新があった場合、記憶部に適用予定規格として登録し、更新の適用日が到来した際に、記憶部に記憶された検査規格値を更新することで、更新後の新たな検査規格値を適用した検査を可能とする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-134560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の発明においては、各種検査項目に標準の検査規格値を定めて品質管理を行っているが、品質の要求レベルが上がり、取り扱い製品が多様化しているため、標準の検査規格値だけの管理では、異常値を検出して傾向分析を行うことが難しいという課題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、検査規格値だけでなく、品質検査の蓄積された検査結果により都度更新される管理限界値を基準とする品質検査を実行することで品質を向上させるための管理を行うことができる品質管理装置、品質管理方法、および、品質管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る品質管理装置は、記憶部と制御部とを備えた品質管理装置であって、前記記憶部は、製品の各検査項目の品質規格を規定する規格値、および、当該検査項目の品質基準を規定し且つ検査実績により更新される管理限界値を紐付けて設定した検査統計値データを記憶する検査記憶手段、を備え、前記制御部は、前記製品および前記検査項目を紐付けて設定した検査指示に応じて検出された検査測定値、ならびに、前記検査統計値データに基づいて、当該検査測定値、および、前記製品に対する前記検査項目の合否判定を設定した検査実績データを取得する検査実績取得手段と、前記検査実績データに基づいて、前記検査統計値データを更新する更新手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る品質管理装置において、前記検査実績取得手段は、前記製品および前記検査項目を紐付けて設定した前記検査指示に応じて検出された前記検査測定値、ならびに、前記検査統計値データに基づいて、前記規格値と前記管理限界値との間に前記検査測定値がある場合、当該検査測定値、および、前記製品に対する前記検査項目を警告対象とする前記合否判定を設定した前記検査実績データを取得することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る品質管理装置において、前記検査実績取得手段は、前記製品および前記検査項目を紐付けて設定した前記検査指示に応じて検出された前記検査測定値、ならびに、前記検査統計値データに基づいて、上限規格値と下限規格値との間に前記検査測定値がある場合、当該検査測定値、および、前記製品に対する前記検査項目を合格とする前記合否判定を設定した前記検査実績データを取得することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る品質管理装置において、前記検査実績取得手段は、前記製品および前記検査項目を紐付けて設定した前記検査指示に応じて検出された前記検査測定値、ならびに、前記検査統計値データに基づいて、前記検査測定値が上部管理限界値を上回る場合、または、前記検査測定値が下部管理限界値を下回る場合、当該検査測定値、および、前記製品に対する前記検査項目を不合格とする前記合否判定を設定した前記検査実績データを取得することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る品質管理装置において、前記記憶部は、前記検査項目、統計値計算対象数、および、管理限界定数を紐付けて設定した統計管理マスタ、を更に備え、前記検査記憶手段は、前記製品の前記各検査項目の前記規格値、当該検査項目の前記検査測定値の平均値、前記検査測定値の標準偏差、および、当該検査項目の前記管理限界値を紐付けて設定した前記検査統計値データ、ならびに、前記各製品の前記検査項目、検査日、前記検査測定値、および、前記合否判定を紐付けて設定した検査実績履歴データを記憶し、前記更新手段は、前記検査実績データ、前記統計管理マスタ、および、前記検査実績履歴データに基づいて、前記検査測定値の新たな平均値および標準偏差を計算し、当該平均値、当該標準偏差および前記管理限界定数に基づいて、新たな管理限界値を計算し、前記検査統計値データを更新することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る品質管理装置において、前記更新手段は、前記検査実績データ、前記統計管理マスタ、および、前記検査実績履歴データに基づいて、前記統計値計算対象数の前記検査測定値の新たな前記平均値および前記標準偏差を計算し、当該平均値から、当該標準偏差と前記管理限界定数との積を差し引いた下部管理限界値、ならびに、当該平均値に、当該標準偏差と前記管理限界定数との積を加えた上部管理限界値を計算し、前記検査統計値データを更新することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る品質管理装置において、前記更新手段は、前記検査実績データ、前記統計管理マスタ、および、前記検査実績履歴データに基づいて、前記合否判定が不合格ではない前記統計値計算対象数の前記検査測定値の新たな前記平均値および前記標準偏差を計算し、当該平均値、当該標準偏差および前記管理限界定数に基づいて、新たな前記管理限界値を計算し、前記検査統計値データを更新することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る品質管理装置において、前記検査統計値データは、更に、前記製品の工程能力指数が紐付けて設定され、前記更新手段は、更に、前記規格値、前記平均値および前記標準偏差に基づいて、新たな工程能力指数を計算し、前記検査統計値データを更新することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る品質管理装置において、前記制御部は、前記検査統計値データおよび前記検査実績履歴データを参照可能に設定し、且つ、前記規格値を変更可能に設定した検査統計値照会画面を表示させる画面表示手段、を更に備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る品質管理方法は、記憶部と制御部とを備えた品質管理装置に実行させるための品質管理方法であって、前記記憶部は、製品の各検査項目の品質規格を規定する規格値、および、当該検査項目の品質基準を規定し且つ検査実績により更新される管理限界値を紐付けて設定した検査統計値データを記憶する検査記憶手段、を備え、前記制御部において実行される、前記製品および前記検査項目を紐付けて設定した検査指示に応じて検出された検査測定値、ならびに、前記検査統計値データに基づいて、当該検査測定値、および、前記製品に対する前記検査項目の合否判定を設定した検査実績データを取得する検査実績取得ステップと、前記検査実績データに基づいて、前記検査統計値データを更新する更新ステップと、を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る品質管理プログラムは、記憶部と制御部とを備えた品質管理装置に実行させるための品質管理プログラムであって、前記記憶部は、製品の各検査項目の品質規格を規定する規格値、および、当該検査項目の品質基準を規定し且つ検査実績により更新される管理限界値を紐付けて設定した検査統計値データを記憶する検査記憶手段、を備え、前記制御部において、前記製品および前記検査項目を紐付けて設定した検査指示に応じて検出された検査測定値、ならびに、前記検査統計値データに基づいて、当該検査測定値、および、前記製品に対する前記検査項目の合否判定を設定した検査実績データを取得する検査実績取得ステップと、前記検査実績データに基づいて、前記検査統計値データを更新する更新ステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各種検査測定値の結果より統計値を都度再計算し、検査結果の登録時にその統計値を利用して合否を自動判定することで、品質の運用負荷を低減させるとともに品質向上をすることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、平均値および標準偏差といった実績データの蓄積を行った上で、その合格範囲をパラメータ化することにより、検査規格値を柔軟に判断することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、検査実績の登録を行う際の統計値データを算出することで、統計値を基にした検査項目の合否の自動判定をすることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、製造品に限らず、入荷品に対する検査業務にも適用することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、検査統計値には各種値の片側規格または両側規格を算出し、工程能力評価にも活用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態における品質管理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態における品質管理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、本実施形態における品質管理処理の一例を示す図である。
図4図4は、本実施形態における合否判定の一例を示す図である。
図5図5は、本実施形態における品質管理処理の一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態における品質管理処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は本実施形態により限定されるものではない。
【0020】
[1.概要]
まず、本発明の概要を説明する。
【0021】
従来、製造業においては、品質管理が重要であったが、品質基準の管理コストの多さが課題となっていた。特に、従来、取扱製品が多様化し、高機能材や薬品など品質の要求レベルが高く、手作業の伴う製造工程が存在する場合に手作業における品質の管理強化が必要となっている製造業においては、より一層の品質管理強化が求められていた。このため、従来は、各製品に品質基準を設け、システムで運用する場合、常に品質基準の見直し、管理が必要となっていた。また、従来の運用では、一度基準が設けられると品質基準をわずかに満たす、質の悪い合格品の発生も許容されており、品質を向上させるための管理を行うことはできていなかった。
【0022】
そこで、本実施形態においては、検査時に各種測定値を内部的に保持して統計値を管理し、検査業務時に統計値を元に合否を自動判定し、統計値計算時に計算対象レコード数および上下限の品質範囲を商品毎および検査項目毎に設定し、検査統計値の照会を可能とすることで、システムによる品質基準の自動更新により品質の運用負荷を低減させると伴に、品質向上を可能とする仕組みを提供している。
【0023】
[2.構成]
本実施形態に係る品質管理装置100の構成の一例について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態における品質管理装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図1に示すように、品質管理装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、品質管理装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0025】
品質管理装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。品質管理装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0026】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、品質管理装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、品質管理装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。
【0027】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(タッチパネルを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、およびマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114またはプリンタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0028】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブル、およびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。記憶部106は、検査データベース106aと統計管理マスタ106bとを備えている。
【0029】
検査データベース106aは、製品の検査データを記憶する。ここで、検査データベース106aは、製品の各検査項目の品質規格を規定する規格値、および、当該検査項目の品質基準を規定し且つ検査実績により更新される管理限界値を紐付けて設定した検査統計値データを記憶していてもよい。また、検査データベース106aは、製品の各検査項目の規格値、当該検査項目の検査測定値の平均値、検査測定値の標準偏差、および、当該検査項目の管理限界値を紐付けて設定した検査統計値データ、ならびに、各製品の検査項目、検査日、検査測定値、および、合否判定を紐付けて設定した検査実績履歴データを記憶していてもよい。また、検査統計値データは、製品の工程能力指数が紐付けて設定されていてもよい。ここで、工程能力指数は、Cp(Process Capability Index)、または、Cpk(Process Capability Index based on Katayori)であってもよい。
【0030】
統計管理マスタ106bは、検査項目、統計値計算対象数、および、管理限界定数を紐付けて設定したマスタである。
【0031】
制御部102は、品質管理装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。制御部102は、機能概念的に、検査実績取得部102aと更新部102bと画面表示部102cとを備えている。
【0032】
検査実績取得部102aは、製品の検査測定値、および、製品に対する検査項目の合否判定を設定した検査実績データを取得する。ここで、検査実績取得部102aは、製品および検査項目を紐付けて設定した検査指示に応じて検出された検査測定値、ならびに、検査統計値データに基づいて、当該検査測定値、および、製品に対する検査項目の合否判定を設定した検査実績データを取得してもよい。また、検査実績取得部102aは、製品および検査項目を紐付けて設定した検査指示に応じて検出された検査測定値、ならびに、検査統計値データに基づいて、規格値と管理限界値との間に検査測定値がある場合、当該検査測定値、および、製品に対する検査項目を警告対象とする合否判定を設定した検査実績データを取得してもよい。また、検査実績取得部102aは、製品および検査項目を紐付けて設定した検査指示に応じて検出された検査測定値、ならびに、検査統計値データに基づいて、上限規格値と下限規格値との間に検査測定値がある場合、当該検査測定値、および、製品に対する検査項目を合格とする合否判定を設定した検査実績データを取得してもよい。また、検査実績取得部102aは、製品および検査項目を紐付けて設定した検査指示に応じて検出された検査測定値、ならびに、検査統計値データに基づいて、検査測定値が上部管理限界値を上回る場合、または、検査測定値が下部管理限界値を下回る場合、当該検査測定値、および、製品に対する検査項目を不合格とする合否判定を設定した検査実績データを取得してもよい。
【0033】
更新部102bは、各種データを更新する。ここで、更新部102bは、検査実績データに基づいて、検査統計値データを更新してもよい。また、更新部102bは、検査実績データ、統計管理マスタ106b、および、検査実績履歴データに基づいて、検査測定値の新たな平均値および標準偏差を計算し、当該平均値、当該標準偏差および管理限界定数に基づいて、新たな管理限界値を計算し、検査統計値データを更新してもよい。また、更新部102bは、検査実績データ、統計管理マスタ106b、および、検査実績履歴データに基づいて、統計値計算対象数の検査測定値の新たな平均値および標準偏差を計算し、当該平均値から、当該標準偏差と管理限界定数との積を差し引いた下部管理限界値、ならびに、当該平均値に、当該標準偏差と管理限界定数との積を加えた上部管理限界値を計算し、検査統計値データを更新してもよい。また、更新部102bは、検査実績データ、統計管理マスタ106b、および、検査実績履歴データに基づいて、合否判定が不合格ではない統計値計算対象数の検査測定値の新たな平均値および標準偏差を計算し、当該平均値、当該標準偏差および管理限界定数に基づいて、新たな管理限界値を計算し、検査統計値データを更新してもよい。また、更新部102bは、規格値、平均値および標準偏差に基づいて、新たな工程能力指数を計算し、検査統計値データを更新してもよい。
【0034】
画面表示部102cは、各種画面を表示させる。ここで、画面表示部102cは、検査統計値データおよび検査実績履歴データを参照可能に設定し、且つ、規格値を変更可能に設定した検査統計値照会画面を表示させてもよい。
【0035】
[3.具体例]
本実施形態の具体例について、図2から図6を参照して説明する。
【0036】
[品質管理処理]
ここで、図2を参照して、本実施形態における品質管理処理の一例について説明する。図2は、本実施形態における品質管理装置100の処理の一例を示すフローチャートである。
【0037】
図2に示すように、検査実績取得部102aは、ユーザにより入力装置112を介して入力された製品、ロット番号および検査項目を紐付けて設定した検査指示に応じて検出された検査測定値、ならびに、検査データベース106aに記憶された検査統計値データに基づいて、当該検査測定値、および、製品に対する検査項目の合否判定を設定した検査実績データを取得する(ステップSA-1)。
【0038】
そして、更新部102bは、検査実績データ、統計管理マスタ106b、および、検査データベース106aに記憶された検査実績履歴データに基づいて、合否判定が不合格ではない統計値計算対象数の検査測定値の新たな平均値および標準偏差を計算し、当該平均値から、当該標準偏差と管理限界定数との積を差し引いた下部管理限界値、ならびに、当該平均値に、当該標準偏差と管理限界定数との積を加えた上部管理限界値を計算し、規格値、当該平均値および当該標準偏差に基づいて、新たな工程能力指数を計算し、検査データベース106aに記憶された検査統計値データを更新する(ステップSA-2)。
【0039】
そして、画面表示部102cは、検査データベース106aに記憶された検査統計値データおよび検査実績履歴データを参照可能に設定し、且つ、検査データベース106aに記憶された規格値を変更可能に設定した検査統計値照会画面を出力装置114に表示させ(ステップSA-3)、処理を終了する。
【0040】
ここで、図3から図6を参照して、本実施形態における品質管理処理の一例について説明する。図3図5および図6は、本実施形態における品質管理処理の一例を示す図である。
【0041】
図3に示すように、本実施形態においては、商品別且つ検査項目別に計算された検査統計値、および、過去の検査データを元に計算された検査統計値を設定した検査統計値データが保持されており、ユーザにより検査統計値データを元に規格値の範囲内に収まっているかの検査依頼を行う検査指示が検査指示入力画面に入力され、検査測定値が検出された際に、ユーザにより検査指示番号が検査実績画面に設定された場合、検査指示番号を元に対象の検査測定値が規格範囲内であるか否かの判定:「合格」、「警告」または「不合格」が表示される。ここで、本実施形態における検査統計値データにおいては、管理限界値を元に下限規格値および上限規格値が設定されてもよく、手動で自社の規格値が設定されてもよい。また、本実施形態における検査指示入力画面には、マスタ登録値である規格値が表示され、統計値で最新化される基準値である管理限界値が表示されてもよい。
【0042】
ここで、図4を参照して、本実施形態における合否判定の一例について説明する。図4は、本実施形態における合否判定の一例を示す図である。
【0043】
図4に示すように、本実施形態においては、管理限界値範囲外の検査測定値が「不合格」と判定され、管理限界値範囲内且つ規格値範囲外の検査測定値が「警告」と判定され、規格値範囲内の検査測定値が「合格」と判定されてもよい。
【0044】
そして、図5に示すように、本実施形態においては、統計管理マスタ106bに設定された統計値計算ロット数を元に、今回の検査結果を含め直近50ロットから検査統計値データが更新される。ここで、本実施形態における検査統計値明細データ(検査実績履歴データ)においては、統計値計算から除外する除外フラグが設定されていてもよい。また、本実施形態における検査統計値明細データにおいては、合否判定=「不合格」の場合、除外フラグが「除外」と設定されてもよい。また、本実施形態における検査統計値明細データにおいては、合否判定=「合格」となっている検査結果に対して、手動で除外フラグが「除外」と設定されることで、統計値計算から外されてもよい。また、本実施形態における検査統計値データにおいて、「下部管理限界値=平均値-下部管理限界定数×標準偏差」、「上部管理限界値=平均値+上部管理限界定数×標準偏差」、「規格値(Cp)=(上限規格値-下限規格値)/(6×標準偏差)」、「規格値(Cpk)=(上限規格値-下限規格値)/(3×標準偏差)」、「上限規格値=検査データベース106aの登録値」、および、「下限規格値=検査データベース106aの登録値」であってもよい。また、本実施形態においては、「Cp≧1.67」の場合、十分すぎる工程能力(コストダウン検討可能)、「1.67>cp≧1.33」の場合、十分である工程能力、「1.33>cp≧1.00」の場合、ほぼ良好である工程能力、「1.00>cp≧0.67」の場合、不足している工程能力、「0.67>cp」の場合、非常に不足している工程能力と評価されてもよい。
【0045】
そして、図6に示すように、本実施形態においては、統計値データおよび統計値明細データを設定した検査統計値照会画面が表示され、管理限界値を参考に規格値が設定可能であり、システム外にエクセル(登録商標)形式で出力・分析させることが可能である。
【0046】
[4.国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
本実施形態により、業務効率化や企業の適切な経営判断を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標8及び9に貢献することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態により、廃棄ロス削減や、ペーパレス・電子化を推進することに寄与することができるので、SDGsの目標12、13及び15に貢献することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態により、統制、ガバナンス強化に寄与することができるので、SDGsの目標16に貢献することが可能となる。
【0049】
[5.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0050】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0051】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0052】
また、品質管理装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0053】
例えば、品質管理装置100が備える処理機能、特に制御部102にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて品質管理装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0054】
また、このコンピュータプログラムは、品質管理装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0055】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0056】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、本実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0057】
記憶部106に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0058】
また、品質管理装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、品質管理装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0059】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、高機能材等の品質管理の基準が厳しい薬品業界、または、化学業界等の業界において有用である。
【符号の説明】
【0061】
100 品質管理装置
102 制御部
102a 検査実績取得部
102b 更新部
102c 画面表示部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 検査データベース
106b 統計管理マスタ
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ
300 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6