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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139098
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ウレタン系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
C09J175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049892
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000222417
【氏名又は名称】トーヨーポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕昭
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EF131
4J040EF301
4J040HD30
4J040HD36
4J040KA14
4J040KA23
4J040KA24
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA35
4J040KA42
4J040LA01
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】 接着対象物へのウレタン系接着剤の溶剤の影響度合いを低下させて、前記ウレタン樹脂の膨潤を抑制することができるウレタン系接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 ウレタンプレポリマーと溶剤とを含み、ウレタンプレポリマーが、末端にイソシアネート基を有し、末端のイソシアネート基が、ジフェニルメタンジイソシアネ-トおよび変性ジフェニルメタンジイソシアネ-トの少なくとも一方に由来し、前記溶剤が、溶解度パラメーターSP値が8.0未満の溶剤を、溶剤全量に対して50重量%以上含んでいることを特徴とするウレタン系接着剤組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマーと溶剤とを含み、
前記ウレタンプレポリマーが、末端にイソシアネート基を有し、
前記末端のイソシアネート基が、ジフェニルメタンジイソシアネ-トおよび変性ジフェニルメタンジイソシアネ-トの少なくとも一方に由来し、
前記溶剤が、溶解度パラメーターSP値が8.0未満の溶剤を、溶剤全量に対して50重量%以上含んでいることを特徴とするウレタン系接着剤組成物。
【請求項2】
前記溶解度パラメーターSP値が8.0未満の溶剤が、脂肪族炭化水素系溶剤および環状炭化水素系溶剤から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項3】
前記溶剤が、前記溶解度パラメーターSP値が8.0未満の溶剤と、溶解度パラメーターSP値が8.0以上の溶剤とを含み、溶剤平均SP値が9.7未満である、請求項1または請求項2に記載のウレタン系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の床仕上げ材の張付けには、ウレタン系接着剤が使用されることがある。なお、床仕上げ材とは、例えば、ビニル系床材、リノリウム系床材、ゴム系床材などの高分子系張り床材,タイルカーペット,木質系床材、人工芝等である。前記ウレタン系接着剤には、ウレタンプレポリマーを良好に溶解させる溶媒が使用されている。例えば、溶剤には、酢酸エチル等が使用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-2748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウレタン系接着剤が付着した接着対象が、ウレタン系接着剤の溶剤によって膨潤する場合がある。例えば、前記接着対象がウレタン樹脂の場合、膨潤が前記接着対象に発生する場合がある。その結果、膨潤した前記接着対象に反りが発生する場合や、複数の前記接着対象を隙間なく並べて接着する際に、前記接着対象と前記接着対象との間に、隙間(目開き)が発生する場合がある。このように、前記接着対象の膨潤を抑制可能なウレタン系接着剤組成物が求められている。
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、ウレタン系接着剤の溶剤の接着対象への影響度合いを低下させて、前記接着対象の膨潤を抑制することができるウレタン系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のウレタン系接着剤組成物は、ウレタンプレポリマーと溶剤とを含み、
前記ウレタンプレポリマーが、末端にイソシアネート基を有し、
前記末端のイソシアネート基が、ジフェニルメタンジイソシアネ-トおよび変性ジフェニルメタンジイソシアネ-トの少なくとも一方に由来し、
前記溶剤が、溶解度パラメーターSP値が8.0未満の溶剤を、溶剤全量に対して50重量%以上含んでいることを特徴とする。
【0007】
本発明のウレタン系接着剤組成物において、前記溶解度パラメーターSP値が8.0未満の溶剤が、脂肪族炭化水素系溶剤および環状炭化水素系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0008】
本発明のウレタン系接着剤組成物において、前記溶剤が、前記溶解度パラメーターSP値が8.0未満の溶剤と、溶解度パラメーターSP値が8.0以上の溶剤とを含み、溶剤平均SP値が9.7未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着対象へのウレタン系接着剤の溶剤の影響度合いを低下させて、ウレタン樹脂の膨潤を抑制することができるウレタン系接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ウレタン系接着剤組成物の構成成分>
本発明の実施形態に係るウレタン系接着剤組成物は、ウレタンプレポリマーと溶剤とを含んでいる。前記ウレタンプレポリマーは、末端にイソシアネート基を有し、前記末端のイソシアネート基は、ジフェニルメタンジイソシアネ-トおよび変性ジフェニルメタンジイソシアネ-トの少なくとも一方に由来したものである。そして、前記溶剤は、溶解度パラメーターSP値が8.0未満の溶剤を、溶剤全量に対して50重量%以上含んでいる。
【0011】
従来、ウレタン系接着剤が塗布されると、ウレタン系接着剤に含まれる溶剤による膨潤が発生する材料があった。ウレタン系接着剤によって膨潤する材料での膨潤の発生を防ぐため、本発明者は、溶剤の溶解(膨潤)性に関する溶解度パラメーターSP値に着目した。
【0012】
この構成により、実施形態に係るウレタン系接着剤組成物は、ポリウレタン(ウレタンゴム)のように、従来、ウレタン系接着剤の塗布によって膨潤が発生する材料に対して、膨潤の抑制が可能である。従来のように、膨潤を防ぐために、ウレタン系接着剤の塗布後に、オープンタイムを取り、溶剤が揮発するまで待たなくてもよい。これにより、張り合わせまでの余分な待ち時間をなくすことができ、施工作業性が向上する。また、溶剤揮発を待つ場合、接着剤の乾燥が予想より進み、接着強さが低下する場合もある。しかし、実施形態に係るウレタン系接着剤組成物は、待ち時間が不要なため、待ち時間を設けることによる接着強さの低下のデメリットもない。
【0013】
実施形態に係るウレタン系接着剤組成物は、ポリウレタン(ウレタンゴム)の接着に好適に利用することができる。なお、例えば、ポリウレタン(ウレタンゴム)のSP値は10である。本発明者は、ウレタンプレポリマーを溶解しつつ、硬化後(架橋後)のウレタン(成形物、ウレタンソールなど)の溶解および膨潤を抑制するためには、SP値が8.0未満の溶剤を、溶剤全量に対して50重量%以上含んでいることが重要であることを見出した。
【0014】
ウレタンバッキングを有する人工芝シート、つまり、裏面がウレタンで構成されている人工芝シートを接着する例を説明する。この場合、ウレタン系接着剤組成物は、人工芝接着用組成物として用いられる。従来のウレタン系接着剤は、溶剤がウレタンを溶解させるので、ウレタンを膨潤させやすい傾向がある。人工芝のウレタンバッキングが膨潤すると、人工芝の反りが発生し、人工芝間の接合部分において浮きや、芝部分に目開き(隙間)が発生してしまう場合がある。しかし、実施形態に係るウレタン系接着剤組成物は、ウレタンバッキングの膨潤が抑制されている。さらに、ウレタンバッキングの膨潤を抑制するため、接着剤塗布後、溶剤が揮発するまでの時間が経過してから、張り付けを行う必要があった。しかし、本発明の接着剤によれば、溶剤揮発のための待ち時間(オープンタイム)は必要ない。
【0015】
実施形態に係るウレタン系接着剤組成物には、低温での硬化反応を促進させるための触媒が添加されてもよいし、その他の目的に応じて公知の添加剤が添加されてもよい。以下、上記各成分について詳述する。
【0016】
(1)ウレタンプレポリマー
本発明において、ウレタンプレポリマーは、主鎖成分にイソシアネート基を付加反応させたイソシアネート化合物であり、通常はポリオールとイソシアネート類とを反応させて得られるものである。本発明において、ウレタンプレポリマーは、末端にイソシアネート基を有しており、前記末端のイソシアネート基は、ジフェニルメタンジイソシアネ-トおよび変性ジフェニルメタンジイソシアネ-トの少なくとも一方に由来したものである。この末端のイソシアネート基(NCO)が空気中の水分や被着材表面の吸着水等と反応することによって、ウレタンプレポリマーが硬化する。
【0017】
ポリオールとは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、活性水素を有するポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリエーテルトリオール等および、その他変性ポリオールをいう。詳しくは、ポリエーテルグリコールとして、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシブチレンジオール、ポリテトラメチレンジオール等を用いることかできる。ポリエステルグリコールとしては、ポリ(エチレンアジペート)グリコール、ポリ(プロピレンアジペート)グリコール、ポリ(エチレンブチレンアジペート)グリコール、ポリ(ネオペンチルセバケート)グリコール等がある。その他、種々のトリオール、変性ポリオールとして、ヒマシ油変性ポリオール、エポキシ変性ポリオール等がある。これらの分子量としては、数平均分子量で好ましくは200~9,000、より好ましくは500~5,000である。
【0018】
主鎖成分としては、上記したポリオール以外でも端部にイソシアネート基が付加できるもので、ウレタン生成反応を阻害しない構造のものであれば使用できることは言うまでもない。例えば、ポリアミン、ポリアミド等である。
【0019】
このようなウレタンプレポリマーとしては、ポリエーテル系ポリオールまたはポリエステル系ポリオール(2官能または3官能)と、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネートまたはポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートを反応させたプレポリマーを好適に用いることができる。
【0020】
ジフェニルメタンジイソシアネートは、例えば、ミリオネートMT、MT-F、MTNBP、NM等として東ソー株式会社から販売されている。また、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートは、例えば、ミリオネートMR-100、MR-200、MR-400等として東ソー株式会社から、「ルプラネート」(登録商標)M20S等としてBASF社から販売されている。
【0021】
なお、ウレタンプレポリマーを得るために反応させるイソシアネートは、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネートまたはポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートとともに、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネートおよびポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート以外のイソシアネートを含んでもよい。例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、水素添加-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水素添加-キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、水素添加-2,4-トリレンジイソシアネート(水添TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族イソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香脂肪族イソシアネート等、1,4-ジフェニルジイソシアネート、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、O-トリジンジイソシアネート、粗製TDI、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(粗MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等芳香族イソシアネート等の群から選ばれる1または複数のイソシアネートが含まれてもよい。
【0022】
前記ウレタンプレポリマーは、数平均分子量が1,000以上30,000以下の範囲内であることが好ましく、1,200以上20,000以下の範囲内であることがより好ましい。分子量が30,000以下であると、乾燥性が良好となる。分子量が1,000以上なので、発泡の点でも問題がない。
【0023】
例えば、ポリオールがポリプロピレングリコール(分子量約2,000)であり、イソシアネート基付与物質が4,4’-MDIであり、このポリオール100重量部とイソシアネート25重量部を80℃で5時間反応させた、分子量ピークが約2,500のウレタンプレポリマーを用いることができる。なお、未反応のイソシアネートを残存している。
【0024】
また、ポリオールがポリプロピレングリコール(分子量約2,000)であり、イソシアネート基付与物質が2,4’-MDIおよび4,4’-MDIであり、このポリオール混合物100重量部とイソシアネート混合物25重量部を80℃で5時間反応させた、分子量ピークが約2,500のウレタンプレポリマーが用いられてもよい。なお、未反応のイソシアネートは残存している。
【0025】
(2)溶剤
本発明のウレタン系接着剤組成物は、溶解度パラメーターSP値が8.0未満の溶剤を、溶剤全量に対して50重量%以上含んでいる。本発明における溶解度パラメーターSP値は、Hildebrandの溶解度パラメーター(単位:(cal/cm)1/2)である。本明細書において、特に断りがない限り、SP値は、25℃、1気圧におけるSP値である。なお、以下に例示する化合物および商品名の溶解度パラメーターは、一例である。
【0026】
溶解度パラメーターSP値が8.0未満の溶剤としては、イソパラフィン(軽質イソパラフィン、第4類第2石油類、SP値7.4~7.6)、メチルシクロヘキサン(SP値7.8)、イソプロピルエーテル(第4類第1石油類、SP値6.9)、ノルマルヘキサン(第4類第1石油類、SP値7.3)、ノルマルパラフィン(第4類第2または第3石油類、SP値7.8~7.9)、イソヘキサン(第4類第1石油類、SP値7.1)、ナフテン類(第4類第2石油類、SP値7.8~7.9)、アルキルベンゼン類(第4類第3石油類、SP値7.2~7.6)、ノニルベンゼン(第4類第3石油類、SP値7.9)等が挙げられる。ここで、第4類において、第1石油類は引火点が21℃未満、第2石油類は引火点が21℃以上70℃未満、第3石油類は引火点が70℃以上200℃未満、第4石油類は引火点が200℃以上である。一般的には、引火点が低いほど、乾燥性は良好になる。本発明において、溶解度パラメーターSP値が8.0未満の溶剤は、脂肪族炭化水素系溶剤および環状炭化水素系溶剤から選ばれる少なくとも1種であると、基材の膨潤を抑制し、揮発性が良くなるため好ましく、引火点が70℃以上200℃未満の範囲内の炭酸エステル、脂肪酸エステル等が好ましい。
【0027】
例えば、イソパラフィン系炭化水素溶剤としては、IPソルベント1620(出光興産株式会社製炭化水素溶剤(軽質イソパラフィン)、SP値7.4)、アイソゾール200(ENEOS株式会社製、第4類第1石油類、SP値7.4)、アイソゾール300(ENEOS株式会社製、第4類第2石油類、SP値7.5)、アイソゾール400(ENEOS株式会社製、第4類第3石油類、SP値7.6)を用いることができる。また、例えば、ノルマルパラフィン系溶剤としては、ノルマルパラフィンシリーズ(ENEOS株式会社製、第4類第2または第3石油類、SP値7.8~7.9)を用いることができる。また、例えば、ナフテン系溶剤としては、ナフテゾールLL(JXTGエネルギー株式会社、第4類第2石油類、SP値7.8)、ナフテゾールL(JXTGエネルギー株式会社、第4類第2石油類、SP値7.9)を用いることができる。実施形態に係るウレタン系接着剤組成物は、これらの溶剤から選ばれる少なくとも1種の溶剤を含む。
【0028】
本発明のウレタン系接着剤組成物においては、溶剤として、溶解度パラメーターSP値が8.0未満の溶剤を50重量%以上含んでいるが、残りの溶剤としては、溶解度パラメーターSP値が8.0以上の溶剤を含んでいてもよい。その場合、溶剤平均SP値は9.7未満であることが好ましく、より好ましくは9.0未満である。ここで、溶剤平均SP値とは、各溶剤の容積分率と、その溶剤の溶解度パラメーターSP値とを掛けあわせて合計した値である。溶解度パラメーターSP値が8.0以上の溶剤としては、一般的なウレタンを希釈できる溶剤である酢酸エチル(SP値9.1)、炭酸ジメチル(SP値9.9)等を使用可能である。このような溶剤を含有させる場合には、被着体(接着対象物)であるポリウレタンを若干膨潤させるが、溶剤平均SP値を9.7未満としつつ、50重量%以下の含有量であれば、膨潤は許容範囲内に抑制される。さらに、溶剤平均SP値が9.7未満になるようにすれば、低温における硬化性を良好にすることができるので好ましい。
【0029】
(3)添加剤
本発明のウレタン系接着剤組成物は、本発明の趣旨を損なわない範囲で充填剤、硬化触媒、希釈剤(溶解度パラメーターSP値が8.0以上の溶剤等)、安定剤、顔料、酸化防止剤その他の添加剤を含有させてもよい。
【0030】
充填剤としては、炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、マイカ、酸化チタン、ゼオライト、珪藻土、シリカ等があげられ、単独または混合して使用することができる。炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム等が挙げられる。シリカおよび表面処理炭酸カルシウムは、チクソ性付与剤として用いることができる。
【0031】
希釈剤のうち、溶解度パラメーターSP値が8.0以上の溶剤としては、炭酸ジメチル(第4類第1石油類、SP値9.9)、プロピレンカーボネート(第4類第3石油類、SP値13.3)等が挙げられる。プロピレンカーボネートを添加すると、作業性が良好になり、好ましい。溶解度パラメーターSP値が8.0以上の溶剤は、溶剤全量に対して50重量%未満で添加することができる。
【0032】
硬化触媒としては、金属系触媒としては、ジブチルチンジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第1スズ、テトラ-n-ブチルチン等を使用することができる。アミン系触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、モルホリノエーテル系、イミダゾール系等を使用することができる。アミン系触媒は、金属系触媒に比べて、低温硬化性が良好であるため、アミン系触媒を用いることが好ましい。なお、本発明のウレタン系接着剤組成物において、硬化触媒は、全量に対して0.1質量%以上2.0質量%未満の範囲内を占めていることが好ましい。なお、触媒が少なすぎれば、硬化が弱く、触媒が多すぎれば、貯蔵安定性が阻害される。この触媒添加量の範囲は、硬化触媒として3級アミンである2,2-ジモルホリノジエチルエーテルが用いられる際に、硬化および貯蔵安定性の両点で問題がなく、特に有効である。
【0033】
その他添加剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、乾燥剤、粘着付与剤等があげられ、単独または混合して使用することができる。
【0034】
本発明の接着剤の接着対象として特に好適であるのは、ウレタンバッキングを有する人工芝である。人工芝の場合、接着剤の塗布量が、例えば1500g/m程度と多い(他の用途の場合は350g/m程度)。それにもかかわらず、塗布の翌日には砂を入れることが多いため、冬場の低温下においても、翌日には硬化していることが望まれる。人工芝以外の構造物においても、設計上、膨潤に起因する構造上のズレを抑制したい場合があり、長尺塩化ビニルシート、ゴムタイル、リノリュームシート、コンポジションタイル、ホモジニアスタイル、コルクタイル、木質フローリング等にも用いることができる。
【0035】
<ウレタン系接着剤組成物の製造方法>
ウレタン系接着剤組成物の製造方法には、公知の方法を用いてもよく、製造されたウレタン系接着剤組成物が本発明の目的を損なわない限りにおいて、特に限定されない。本発明の実施の形態に係るウレタン系接着剤組成物は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
【0036】
例えば、所定量のポリオールと、所定量のジフェニルメタンジイソシアネ-トおよび変性ジフェニルメタンジイソシアネ-トの少なくとも一方を含むイソシアネートと、を反応容器に入れた後、加熱することにより、ウレタンプレポリマーが生成される。ウレタンプレポリマーの生成では、前記イソシアネートの有するイソシアネート基が、前記ポリオールの有する水酸基に対して過剰となる条件で、反応が進められる。前記反応は通常50~120℃、好ましくは70~110℃の温度で行われる。反応時間は通常1~15時間である。
【0037】
得られたウレタンプレポリマーに、チクソ性付与剤、充填剤、硬化触媒を加えて均一に撹拌し、溶剤を加えて粘度を調整し、ポリウレタン系接着剤を得た。混合物(接着剤)の粘度が、10,000~30,000mPa・s(25℃)になるように添加量を調整した。
【0038】
なお、前記ウレタンプレポリマーは、無溶剤で製造可能ではある。しかし、ポリオールとイソシアネートとを溶剤中で反応させることによって、前記ウレタンプレポリマーを製造することが可能である。また、ウレタンプレポリマーを製造する際に使用するポリオールとイソシアネートとの配合は、イソシアネートが有するイソシアネート基とポリオールが有する水酸基との当量比(NCО基/ОH基)が、1.1~5.0の範囲内であることが好ましく、1.5~2.0の範囲内であることがより好ましい。
【実施例0039】
以下、本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
実施例および比較例で使用したウレタンプレポリマーは、次のとおりである。
[ウレタンプレポリマー]
ポリオール:ポリプロピレングリコール(分子量約2000)
イソシアネート基付与物質:2,4’-MDI
4,4’-MDI
このポリオール混合物100重量部とイソシアネート混合物25重量部を80℃で5時間反応させて、分子量ピークが約2500の物質が得られた。当然、未反応のイソシアネートは残存している。
【0041】
[実施例1]
1.ウレタン系接着剤組成物の作製
50質量部のウレタンプレポリマー、22質量部の重質炭酸カルシウム(充填剤、丸尾カルシウム社製「スーパーSS」)、13質量部の表面処理炭酸カルシウム(チクソ性付与剤、丸尾カルシウム社製「カルファイン200M」)、0.4質量部の2,2-ジモルホリノジエチルエーテル(硬化触媒)、および、15質量部の「アイソゾール200」(脂肪族炭化水素系溶媒、ENEOS株式会社製イソパラフィン系炭化水素溶剤、SP値7.4)を混合し、本実施例のウレタン系接着剤組成物を得た。
【0042】
2.ウレタン系接着剤組成物の物性評価
(1)張り合わせてから2時間後の膨潤(浮き、反り)の評価
a.試験片の作製
25℃の温度環境下にて、実施例1のウレタン系接着剤組成物をフレキシブルボードの平面に450g/mの塗布量で塗布し、直後に、縦25mm、横175mmの大きさのウレタン樹脂製シートを張り合わせた。フレキシブルボードは、JIS A 5430の規格に準拠している。ウレタン樹脂製シートは、トーヨーポリマー社製の一液型ウレタン樹脂組成物であるポリネート977を乾燥させて得られた厚さ0.5mmのフィルム状ウレタン樹脂である。フレキシブルボードにウレタン樹脂製シートを張り合わせた後、25℃の温度環境下にて、2時間放置した。
【0043】
b.測定方法
25℃の温度環境下にて、2時間放置した試験片を水平な平面に載置し、前記平面に対して直交する方向でのウレタン樹脂製シートの形状の変化量、すなわち、ウレタン樹脂製シートの反りを金属直定規で測定した。
本測定においては、次の基準で判定を行った。
A:1.5mm未満
B:1.5mm以上2mm未満
C:2mm以上
【0044】
シートに浮きが生じると、シートを隙間なく並べても、接合部(シートとシートの間)に隙間が発生してしまう。人工芝のような施工物の場合、2mm以上の浮きは目立ち、美観の低下につながる。また、2mm以上の浮きは、接着後の押圧によって、修正しづらい場合がある。このように、本評価において、浮きは、2mm未満が望ましく、さらに1.5mm未満が望ましい。
【0045】
本実施例にかかるウレタン系接着剤組成物では浮きが1.5mm未満であり、本評価では「A」と判定された。
【0046】
(2)硬化性(25℃)評価
a.試験片の作製
25℃の温度環境下にて、フレキシブルボードの平面に、実施例1のウレタン系接着剤組成物を450g/mの塗布量で塗布し、直後に、縦25mm、横175mmの大きさの前記ウレタン樹脂製シートを張り合わせた。フレキシブルボードとウレタン樹脂製シートを張り合わせた後、25℃の温度環境下で16時間放置した。
【0047】
b.測定方法
25℃の温度環境下にて16時間放置した試験片において、フレキシブルボードからシートの一部を剥がし、フレキシブルボードまたはシートに残った接着剤組成物の皮膜を針で引掻き、皮膜の状態を測定した(JIS K 5600-1-1 参照)。
本測定においては、次の基準で判定を行った。
硬化性〇:半硬化状態(皮膜に針の傷が残るが、引張られない)
硬化性△:指触乾燥状態(皮膜が針で引張られる)
【0048】
本実施例にかかるウレタン系接着剤組成物では、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、本評価では「〇」と判定された。
【0049】
(3)硬化性(5℃)評価
a.試験片の作製
5℃の温度環境下にて、フレキシブルボードの平面に、実施例1のウレタン系接着剤組成物を450g/mの塗布量で塗布し、直後に、縦25mm、横175mmの大きさのウレタン樹脂製シートを張り合わせた。フレキシブルボードとウレタン樹脂製シートを張り合わせた後、5℃の温度環境下で16時間放置した。
【0050】
b.測定方法
5℃の温度環境下にて16時間放置した試験片において、フレキシブルボードからシートの一部を剥がし、フレキシブルボードまたはシートに残った接着剤組成物の皮膜を針で引掻き、皮膜の状態を測定した(JIS K 5600-1-1 参照)。
本測定においては、次の基準で判定を行った。
硬化性〇:半硬化状態(皮膜に針の傷が残るが、引張られない)
硬化性△:指触乾燥状態(皮膜が針で引張られる)
本実施例にかかるウレタン系接着剤組成物では、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、本評価では「〇」と判定された。
【0051】
(4)総合判定
張り合わせてから2時間後の膨潤(浮き、反り)評価がAまたはBであり、かつ、25℃での硬化性評価が「〇」のものを「G」とし、それ以外を「NG」と判定した。本実施例では、「G」と判定された。
【0052】
[実施例2]
1.ウレタン系接着剤組成物の作製
50質量部のウレタンプレポリマー、22質量部の重質炭酸カルシウム(充填剤、丸尾カルシウム社製「スーパーSS」)、13質量部の表面処理炭酸カルシウム(チクソ性付与剤、丸尾カルシウム社製「カルファイン200M」)、0.4質量部の2,2-ジモルホリノジエチルエーテル(硬化触媒)、10質量部の「アイソゾール200」(脂肪族炭化水素系溶媒、ENEOS株式会社製イソパラフィン系炭化水素溶剤、SP値7.4)、および、5質量部のプロピレンカーボネート(溶媒、SP値13.3)を混合し、実施例1と同様に、ウレタン系接着剤組成物を得た。
【0053】
2.ウレタン系接着剤組成物の物性評価
実施例1と同様にして、得られたウレタン系接着剤組成物の物性評価を行った。本例に係るウレタン系接着剤組成物による張り合わせてから2時間後の膨潤(浮き、反り)は1.5mm未満であり、「A」と判定された。硬化性(25℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。硬化性(5℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。したがって、総合判定は「G」であった。
【0054】
[実施例3]
1.ウレタン系接着剤組成物の作製
50質量部のウレタンプレポリマー、22質量部の重質炭酸カルシウム(充填剤、丸尾カルシウム社製「スーパーSS」)、13質量部の表面処理炭酸カルシウム(チクソ性付与剤、丸尾カルシウム社製「カルファイン200M」)、0.4質量部の2,2-ジモルホリノジエチルエーテル(硬化触媒)、10質量部の「アイソゾール200」(脂肪族炭化水素系溶媒、ENEOS株式会社製イソパラフィン系炭化水素溶剤、SP値7.4)、および、5質量部の炭酸ジメチル(溶媒、SP値9.9)を混合し、実施例1と同様に、ウレタン系接着剤組成物を得た。
【0055】
2.ウレタン系接着剤組成物の物性評価
実施例1と同様にして、得られたウレタン系接着剤組成物の物性評価を行った。本例に係るウレタン系接着剤組成物による張り合わせてから2時間後の膨潤(浮き、反り)は1.5mm以上2mm未満であり、「B」と判定された。硬化性(25℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。硬化性(5℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。したがって、総合判定は「G」であった。
【0056】
[実施例4]
1.ウレタン系接着剤組成物の作製
50質量部のウレタンプレポリマー、22質量部の重質炭酸カルシウム(充填剤、丸尾カルシウム社製「スーパーSS」)、13質量部の表面処理炭酸カルシウム(チクソ性付与剤、丸尾カルシウム社製「カルファイン200M」)、0.4質量部の2,2-ジモルホリノジエチルエーテル(硬化触媒)、および、15質量部のメチルシクロヘキサン(溶媒、SP値7.8)を混合し、実施例1と同様に、ウレタン系接着剤組成物を得た。
【0057】
2.ウレタン系接着剤組成物の物性評価
実施例1と同様にして、得られたウレタン系接着剤組成物の物性評価を行った。本例に係るウレタン系接着剤組成物による張り合わせてから2時間後の膨潤(浮き、反り)は1.5mm未満であり、「A」と判定された。硬化性(25℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。硬化性(5℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。したがって、総合判定は「G」であった。
【0058】
[実施例5]
1.ウレタン系接着剤組成物の作製
50質量部のウレタンプレポリマー、22質量部の重質炭酸カルシウム(充填剤、丸尾カルシウム社製「スーパーSS」)、13質量部の表面処理炭酸カルシウム(チクソ性付与剤、丸尾カルシウム社製「カルファイン200M」)、0.4質量部の2,2-ジモルホリノジエチルエーテル(硬化触媒)、7.5質量部の「アイソゾール200」(脂肪族炭化水素系溶媒、ENEOS株式会社製イソパラフィン系炭化水素溶剤、SP値7.4)、および、7.5質量部の炭酸ジメチル(溶媒、SP値9.9)を混合し、実施例1と同様に、ウレタン系接着剤組成物を得た。
【0059】
2.ウレタン系接着剤組成物の物性評価
実施例1と同様にして、得られたウレタン系接着剤組成物の物性評価を行った。本例に係るウレタン系接着剤組成物による張り合わせてから2時間後の膨潤(浮き、反り)は1.5mm以上2mm未満であり、「B」と判定された。硬化性(25℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。硬化性(5℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。したがって、総合判定は「G」であった。
【0060】
[実施例6]
1.ウレタン系接着剤組成物の作製
50質量部のウレタンプレポリマー、22質量部の重質炭酸カルシウム(充填剤、丸尾カルシウム社製「スーパーSS」)、13質量部の表面処理炭酸カルシウム(チクソ性付与剤、丸尾カルシウム社製「カルファイン200M」)、0.4質量部の2,2-ジモルホリノジエチルエーテル(硬化触媒)、7.5質量部の「アイソゾール200」(脂肪族炭化水素系溶媒、ENEOS株式会社製イソパラフィン系炭化水素溶剤、SP値7.4)、および、7.5質量部のプロピレンカーボネート(溶媒、SP値13.3)を混合し(溶剤平均SP値は9.7)、実施例1と同様に、ウレタン系接着剤組成物を得た。
【0061】
2.ウレタン系接着剤組成物の物性評価
実施例1と同様にして、得られたウレタン系接着剤組成物の物性評価を行った。本例に係るウレタン系接着剤組成物による張り合わせてから2時間後の膨潤(浮き、反り)は1.5mm以上2mm未満であり、「B」と判定された。硬化性(25℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。したがって、総合判定は「G」であった。また、実施例6は、硬化性(5℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が指触乾燥状態であり、「△」と判定され、溶剤平均SP値が9.7未満であれば、低温における硬化性がより良好となることを示している。
【0062】
[比較例1]
1.ウレタン系接着剤組成物の作製
50質量部のウレタンプレポリマー、22質量部の重質炭酸カルシウム(充填剤、丸尾カルシウム社製「スーパーSS」)、13質量部の表面処理炭酸カルシウム(チクソ性付与剤、丸尾カルシウム社製「カルファイン200M」)、0.4質量部の2,2-ジモルホリノジエチルエーテル(硬化触媒)、5質量部の「アイソゾール200」(脂肪族炭化水素系溶媒、ENEOS株式会社製イソパラフィン系炭化水素溶剤、SP値7.4)、および、10質量部の炭酸ジメチル(溶媒、SP値9.9)を混合し、実施例1と同様に、ウレタン系接着剤組成物を得た。
【0063】
2.ウレタン系接着剤組成物の物性評価
実施例1と同様にして、得られたウレタン系接着剤組成物の物性評価を行った。本例に係るウレタン系接着剤組成物の張り合わせてから2時間後の膨潤(浮き、反り)は2mm以上(具体的には、3mm)であり、「C」と判定された。硬化性(25℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。硬化性(5℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。したがって、総合判定は「NG」であった。
【0064】
[比較例2]
1.ウレタン系接着剤組成物の作製
50質量部のウレタンプレポリマー、22質量部の重質炭酸カルシウム(充填剤、丸尾カルシウム社製「スーパーSS」)、13質量部の表面処理炭酸カルシウム(チクソ性付与剤、丸尾カルシウム社製「カルファイン200M」)、0.4質量部の2,2-ジモルホリノジエチルエーテル(硬化触媒)、5質量部の「アイソゾール200」(脂肪族炭化水素系溶媒、ENEOS株式会社製イソパラフィン系炭化水素溶剤、SP値7.4)、および、10質量部のプロピレンカーボネート(溶媒、SP値13.3)を混合し、実施例1と同様に、ウレタン系接着剤組成物を得た。
【0065】
2.ウレタン系接着剤組成物の物性評価
実施例1と同様にして、得られたウレタン系接着剤組成物の物性評価を行った。本例に係るウレタン系接着剤組成物の張り合わせてから2時間後の膨潤(浮き、反り)は2mm以上(具体的には、4mm)であり、「C」と判定された。硬化性(25℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。硬化性(5℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が指触乾燥状態であり、「△」と判定された。したがって、総合判定は「NG」であった。
【0066】
[比較例3]
1.ウレタン系接着剤組成物の作製
50質量部のウレタンプレポリマー、22質量部の重質炭酸カルシウム(充填剤、丸尾カルシウム社製「スーパーSS」)、13質量部の表面処理炭酸カルシウム(チクソ性付与剤、丸尾カルシウム社製「カルファイン200M」)、0.4質量部の2,2-ジモルホリノジエチルエーテル(硬化触媒)、7.5質量部の炭酸ジメチル(溶媒、SP値9.9)、および、7.5質量部のプロピレンカーボネート(溶媒、SP値13.3)を混合し、実施例1と同様に、ウレタン系接着剤組成物を得た。
【0067】
2.ウレタン系接着剤組成物の物性評価
実施例1と同様にして、得られたウレタン系接着剤組成物の物性評価を行った。本例に係るウレタン系接着剤組成物の張り合わせてから2時間後の膨潤(浮き、反り)は2mm以上(具体的には、4mm)であり、「C」と判定された。硬化性(25℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が半硬化状態であり、「〇」と判定された。硬化性(5℃)は、塗布後16時間後の接着剤の皮膜が指触乾燥状態であり、「△」と判定された。したがって、総合判定は「NG」であった。
【0068】
実施例および比較例について、各例の組成および評価結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
以上のように、本発明では、オープンタイムによる待ち時間を増加させることなく、接着対象物であるウレタン樹脂への溶剤の影響度合いを低下させて、前記ウレタン樹脂の膨潤を抑制することができるウレタン系接着剤組成物が得られることがわかる。