(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139102
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】熱交換器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 1/053 20060101AFI20241002BHJP
F28F 1/04 20060101ALI20241002BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F28D1/053 Z
F28F1/04
F28F9/02 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049898
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】木村 安成
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 恒雄
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103AA27
3L103BB39
3L103CC02
3L103CC22
3L103DD08
3L103DD42
(57)【要約】
【課題】熱交換器の部品点数を増加させずに冷媒流路に異物が侵入することを防止できる熱交換器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ラジエター1は、コア部3と、コア部3に設けられ、冷却水が流れる第1冷媒流路5と、コア部3に設けられ、空気が流れる第2冷媒流路7と、を備える。第1冷媒流路5は、上下方向に延在し、前後方向に並ぶように位置する複数の第1主流路51と、複数の第1主流路51の上端部に設けられ、複数の第1主流路51に連通して前後方向に延在する導入チャンバ52と、複数の第1主流路51の下端部に設けられ、複数の第1主流路51に連通して前後方向に延在する排出チャンバ53と、を備える。導入チャンバ52及び排出チャンバ53の少なくとも一方には、上下方向における第1主流路51と反対側の端部から、第1主流路51から遠ざかる方向に向かって上下方向に延出して前後方向に延在する保護部材8が形成されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、
前記コア部に設けられ、第1流体が流れる第1冷媒流路と、
前記コア部に設けられ、第2流体が流れる第2冷媒流路と、を備え、
前記コア部において、前記第1冷媒流路を流れる前記第1流体と前記第2冷媒流路を流れる前記第2流体とが隔壁を介して熱交換を行う、熱交換器であって、
前記第1冷媒流路及び前記第2冷媒流路は、規則的に並んだ管状流路であり、
前記第1冷媒流路は、
第1方向に延在し、前記第1方向と垂直な第2方向に並ぶように位置する複数の第1主流路と、
前記複数の第1主流路の前記第1方向における一方側の第1端部に設けられ、前記複数の第1主流路に連通して前記第2方向に延在する導入チャンバと、
前記複数の第1主流路の前記第1方向における他方側の第2端部に設けられ、前記複数の第1主流路に連通して前記第2方向に延在する排出チャンバと、を備え、
前記導入チャンバ及び前記排出チャンバの少なくとも一方には、
前記第1方向における前記第1主流路と反対側の端部から、前記第1主流路から遠ざかる方向に向かって前記第1方向に延出して前記第2方向に延在する保護部材が形成されている、
熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記第1冷媒流路において、
前記第2方向に並ぶ前記複数の第1主流路、前記導入チャンバ、及び、前記排出チャンバは、前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向に並んで複数列設けられており、
前記第2冷媒流路は、
前記第1方向に延在し、前記第2方向に並ぶように位置する複数の第2主流路を備え、
前記第2方向に並ぶ前記複数の第2主流路は、
前記第1主流路を構成する前記隔壁により囲まれることで形成され、前記第3方向に並んで複数列設けられており、
前記コア部の前記第1方向における前記一方側又は前記他方側の端面には、前記第2方向及び前記第3方向に並んだ複数の前記第2主流路に前記第2流体を導入する導入口が設けられており、
前記コア部の前記第1方向における前記導入口と反対側の端面には、前記第2方向及び前記第3方向に並んだ複数の前記第2主流路を流れた前記第2流体を排出する排出口が設けられており、
前記保護部材は、前記第1方向において前記導入口が設けられている側に形成されている、
熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載の熱交換器であって、
前記保護部材は、前記第1方向において、前記第1主流路から遠ざかる方向に向かうにしたがって、前記第3方向の幅が細くなるテーパ形状を有する、
熱交換器。
【請求項4】
請求項1に記載の熱交換器の製造方法であって、
材料を積層造形することによって、前記第1冷媒流路、前記第2冷媒流路、及び、前記保護部材を備える前記コア部を一体に成形する、
熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度の異なる二流体の間で熱を受け渡す装置として、種々の伝熱方式を用いた熱交換器が普及している。
【0003】
近年においては、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する研究開発が盛んに行われている。熱交換器では、エネルギーの効率化に貢献すべく、熱交換効率の向上が求められている。
【0004】
さらに、最近では、材料を積層造形することによって成形する積層造形法に関する技術が進展し、積層造形法を用いることで、従来の切削、鍛造、打ち抜き加工などでは成形が困難な複雑な三次元形状を有する製品の製造が可能になっている。熱交換器においても、積層造形法で製造することによって、複雑な三次元形状を有する熱交換器の製造が可能となっている。そして、特許文献1には、積層造形法で製造することによって、軽量化やコスト削減だけでなく、新たな機能を有することが可能となった熱交換器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された熱交換器では、特に、熱交換器の内部を流れる冷媒が気体である場合、冷媒とともに異物が熱交換器内に侵入し、異物によって熱交換器の内部が損傷してしまう虞があった。また、熱交換器内への異物の侵入を防止するために、熱交換器の外部に異物の侵入を防止するための部品を設けると、部品点数が増加してしまう、という課題が生じていた。
【0007】
本発明は、熱交換器の部品点数を増加させずに冷媒流路に異物が侵入することを防止できる熱交換器及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
コア部と、
前記コア部に設けられ、第1流体が流れる第1冷媒流路と、
前記コア部に設けられ、第2流体が流れる第2冷媒流路と、を備え、
前記コア部において、前記第1冷媒流路を流れる前記第1流体と前記第2冷媒流路を流れる第2流体とが隔壁を介して熱交換を行う、熱交換器であって、
前記第1冷媒流路及び前記第2冷媒流路は、規則的に並んだ管状流路であり、
前記第1冷媒流路は、
第1方向に延在し、前記第1方向と垂直な第2方向に並ぶように位置する複数の第1主流路と、
前記複数の第1主流路の前記第1方向における一方側の第1端部に設けられ、前記複数の第1主流路に連通して前記第2方向に延在する導入チャンバと、
前記複数の第1主流路の前記第1方向における他方側の第2端部に設けられ、前記複数の第1主流路に連通して前記第2方向に延在する排出チャンバと、を備え、
前記導入チャンバ及び前記排出チャンバの少なくとも一方には、
前記第1方向における前記第1主流路と反対側の端部から、前記第1主流路から遠ざかる方向に向かって前記第1方向に延出して前記第2方向に延在する保護部材が形成されている。
【0009】
また、本発明は、上記した熱交換器の製造方法であって、
材料を積層造形することによって、前記第1冷媒流路、前記第2冷媒流路、及び、前記保護部材を備える前記コア部を一体に成形する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱交換器の部品点数を増加させずに第2冷媒流路に異物が侵入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1のA-A線に沿った断面を露出させた部分斜視図である。
【
図3】
図1のB-B線に沿った断面の一部である部分断面図である。
【
図5】
図4のD領域の上下方向位置H1における断面斜視図の部分拡大図である。
【
図6】
図4のD領域の上下方向位置H2における断面斜視図の部分拡大図である。
【
図7】
図4のD領域の上下方向位置H3における断面斜視図の部分拡大図である。
【
図8】
図4のD領域の上下方向位置H1、H2、H3における断面斜視図をまとめた図である。
【
図9】ラジエター1のコア部3における導入口72近傍の要部斜視図である。
【
図10】
図9のE-E線に沿った断面の一部である部分断面図である。
【
図11】
図9のF-F線に沿った断面の一部である部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の熱交換器の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。熱交換器は、冷却対象である第1流体と、第1流体を冷却する第2流体とが隔壁を介して熱交換を行うための機器である。第1流体と第2流体の性状は、特に限定されず、気体同士、液体同士、気体と液体など、全ての組合せを含む。第1流体及び第2流体は、例えば、水、オイル、有機媒体、空気、ヘリウムガスである。また、熱交換器が搭載される機器は、特に限定されるものではなく、車両、汎用機器、航空機、家電製品などあらゆる製品を含む。なお、以下の実施形態では、本発明の熱交換器の一例として、車両に搭載されるラジエターを例示して説明する。即ち、以下の実施形態において、第1流体は、車両の駆動源を冷却する冷却水であり、第2流体は、空気(走行風)である。
【0013】
図1は、本発明における一実施形態のラジエター1の斜視図である。
図2は、
図1のラジエター1について、
図1のA-A線に沿った断面を露出させた部分斜視図である。
図3の(A)は、
図1のB-B線に沿った断面の一部である部分断面図である。なお、本明細書においては、説明を簡潔且つ明確にするために、
図1に示すように、前後方向、左右方向、上下方向の3方向の直交座標系を用いてラジエター1を説明する。ただし、この方向は、機器にラジエター1が搭載された状態における方向とは無関係あることに留意されたい。図中、上方をU、下方をD、左方をL、右方をR、前方をFr、後方をRrと記載する。
【0014】
ラジエター1は、コア部3と、コア部3に設けられ、冷却水が流れる第1冷媒流路5と、コア部3に設けられ、空気が流れる第2冷媒流路7と、を備えている。ラジエター1では、コア部3において、第1冷媒流路5を流れる冷却水と第2冷媒流路7を流れる空気とが後述する隔壁54を介して熱交換を行う。したがって、従来のプレート式のように平板で流体を分離するもの(伝熱フィンを追加する場合もある)や、フィンチューブ式の様に円管の廻りの平板フィンにより熱伝導を介して熱交換するもの等とは異なる。コア部3には、後面の上部に導入パイプ11が設けられ、前面の下部に排出パイプ13が設けられる。導入パイプ11及び排出パイプ13は、コア部3の第1冷媒流路5に連通する。
【0015】
冷却水は、矢印Pで示すように、コア部3に設けられた導入パイプ11を介して外部からコア部3に導入され、コア部3内の第1冷媒流路5を上方から下方に流れた後、コア部3に設けられた排出パイプ13を介して外部に排出される。一方、空気は、矢印Qで示すように、コア部3の下面からコア部3に導入され、コア部3内の第2冷媒流路7を下方から上方に流れた後、コア部3の上面から排出される。第1冷媒流路5及び第2冷媒流路7は、規則的に並んだ管状流路である。ここで、管状流路とは、円弧又は多角形による閉じた断面形状を持つ配管状の流路を示す。
【0016】
第1冷媒流路5は、
図2に示すように、上下方向に延在し、前後方向に並ぶように位置する複数の第1主流路51と、前後方向に配置された複数の第1主流路51に連通して前後方向に延在する導入チャンバ52と、前後方向に配置された複数の第1主流路51に連通して前後方向に延在する排出チャンバ53と、を備える。第1冷媒流路5は、前後方向に並べて配置された複数の第1主流路51と、この第1主流路51に連通する導入チャンバ52及び排出チャンバ53を1組とした場合、この組が左右方向に複数列設けられる。したがって、
図3の(A)に示すように、上下方向から見た断面において、第1主流路51が碁盤の目状に規則的に配置される。
【0017】
第1主流路51は、
図3の(A)に示す本実施形態では、前後方向に延びる空間と左右方向に延びる空間が十字状に交差した十字形状の流路断面を有する。なお、第1主流路51の形状は、これに限らず、正方形、長方形、ひし形、台形、円形、楕円形、星形、三角形、五角形以上の多角形、その他の幾何学模様など任意の形状をとり得る。
【0018】
導入チャンバ52は、導入パイプ11に連通し、排出チャンバ53は排出パイプ13に連通する。
【0019】
第1主流路51には、
図2に示すように、導入チャンバ52に向かって流路断面の形状が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続される導入側形状変化区間55が上端部に設けられ、排出チャンバ53に向かって流路断面の形状が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続される排出側形状変化区間56が下端部に設けられる。導入側形状変化区間55及び排出側形状変化区間56については後述する。
【0020】
第2冷媒流路7は、
図3の(A)に示すように、第1主流路51を区画形成する隔壁54によって囲まれることで形成される複数の第2主流路71を有する。第2主流路71は、上下方向に延在し、第1冷媒流路5の第1主流路51に囲まれ、前後方向及び左右方向に複数存在する。したがって、複数の第2主流路71は、上下方向から見た断面において、前後方向及び左右方向に碁盤の目状に規則的に配置される。すなわち、第2主流路71は、上下方向に延在し、前後方向に並ぶように位置する複数の第2主流路71を1組とした場合、この組が左右方向に複数列設けられる。
【0021】
コア部3の下端面には、前後方向及び左右方向に碁盤の目状に配列された各第2主流路71に空気を導入する導入口72が形成されている。コア部3の上端面には、前後方向及び左右方向に碁盤の目状に配列された各第2主流路71を流れ空気を排出する排出口73が形成されている。
【0022】
コア部3の下方から導入口72に導入された空気は、左右方向に複数配列された排出チャンバ53の間の空間を通って、下方から第2冷媒流路7の第2主流路71の下端部に導入される。
【0023】
第2冷媒流路7の第2主流路71に導入された空気は、下方から上方へと向かって流れ、第2主流路71の上端部から左右方向に複数配列された導入チャンバ52の間の空間を通って、排出口73からコア部3の上方に排出される。
【0024】
以下、
図4~
図7を参照しながら、第1冷媒流路5の第1主流路51の上端部に設けられる導入側形状変化区間55について詳細に説明する。第1冷媒流路5の第1主流路51の下端部に設けられる排出側形状変化区間56は、導入側形状変化区間55と同様の構造を有するため、詳細な説明を省略する。
【0025】
第1主流路51の導入側形状変化区間55は、導入チャンバ52に向かって流路断面の形状が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続される。
【0026】
図4は、
図2のD領域をC方向から見た図である。D領域は、第1冷媒流路5及び第2冷媒流路7の上端部に相当する領域である。また、
図5は、
図4の上下方向位置H1における断面斜視図の部分拡大図を示している。同様に、
図6は、
図4の上下方向位置H2における断面斜視図の部分拡大図を示しており、
図7は、
図4の上下方向位置H3における断面斜視図の部分拡大図を示しており、
図8は、
図4のD領域の上下方向位置H1、H2、H3における断面斜視図をまとめた図である。
【0027】
図5に示した部分拡大
図H1は、3つの拡大図のうち、最も下方の上下方向位置H1における拡大図を示しており、導入側形状変化区間55の始点である。上下方向位置H1においては、第1冷媒流路5は、
図3の(A)で示した形状を呈している。即ち、第1冷媒流路5の第1主流路51は、十字形状の流路断面を有している。前後方向及び左右方向で隣り合う第1主流路51とは独立している。
【0028】
図6に示した部分拡大
図H2は、3つの拡大図のうち、中間位置の上下方向位置H2における拡大図を示しており、導入側形状変化区間55の中間部である。上下方向位置H2における流路断面は、上下方向位置H1における十字形状の流路断面(
図5)から、導入チャンバ52(上方)に向かうに従って、前後方向に延在する流路の長さが長くなるとともに幅が広がり、左右方向に延在する流路の長さが短くなるとともに幅が狭くなっている。そして、前後方向で隣り合う第1主流路51との間に次第に連通路Sが設けられる。上下方向位置H2における流路断面は、さらに導入チャンバ52(上方)に向かうに従って、前後方向に延在する流路の長さが長くなるとともに幅が広がり、左右方向に延在する流路の長さが短くなるとともに幅が狭くなる。
【0029】
ここで、第1主流路51の流路断面の断面積は、導入側形状変化区間55において同一である。即ち、導入側形状変化区間55において流路断面の形状は徐々に変化するものの流路断面の断面積は変化しない。そのため、冷却水をさらにスムーズに流すことができ、圧損の発生が抑制される。
【0030】
図7に示した部分拡大
図H3は、3つの拡大図のうち、最も上方の上下方向位置H3における拡大図を示しており、導入側形状変化区間55の終点である。上下方向位置H3における流路断面は、隣り合う第1主流路51と接続され、前後方向に一直線となる。即ち、連通路Sが前後方向に延在する流路と区別不能になるとともに、左右方向に延在する流路が消失する。
図7に示す一直線状の流路は、さらに上方に位置する導入チャンバ52と連通する。
【0031】
このように、導入側形状変化区間55により第1主流路51の流路断面が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続され、導入チャンバ52と連通することで、左右方向で隣り合う導入チャンバ52の間には、前後方向に並ぶように位置する複数の第2主流路71と連通する左右方向所定幅の空間が前後方向に延在する。そして、第2冷媒流路7の第2主流路71から排出された空気は、この空間を通って排出口73から外部に排出されるので、第2冷媒流路7の第2主流路71から排出された空気の流れを阻害しない。したがって、排出口73から第2主流路71への空気の流路空間に導入チャンバ52が配置されていても、空気の流れが妨げられることがない。
【0032】
詳しい説明は省略するが、第1主流路51の排出側形状変化区間56も同様に、排出チャンバ53に向かって流路断面の形状が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続される。このように、排出側形状変化区間56により第1主流路51の流路断面が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続され、排出チャンバ53と連通することで、左右方向で隣り合う排出チャンバ53の間には、前後方向に並ぶように位置する複数の第2主流路71と連通する左右方向所定幅の空間が前後方向に延在する。そして、導入口72から導入された空気は、この空間を通って第2冷媒流路7の第2主流路71に導入されるので、導入口72から導入された空気の流れを阻害しない。したがって、導入口72から第2主流路71への空気の流路空間に排出チャンバ53が配置されていても、空気の流れが妨げられることがない。
【0033】
また、導入側形状変化区間55及び排出側形状変化区間56で、流路断面の断面積を同一に維持したまま形状のみを変化させることで、冷却水の圧損が増加することも回避される。
【0034】
図9から
図11に示すように、排出チャンバ53には、保護部材8が形成されている。
【0035】
保護部材8は、排出チャンバ53の下端部から下方に向かって上下方向に延出して、略薄板状に前後方向に延在する。保護部材8の下端は、コア部3の下端面と同一平面状に位置するように形成されている。
【0036】
したがって、第2冷媒流路7に異物が侵入することを保護部材8で防止できる。また、第2冷媒流路7に異物が侵入するための保護部材をコア部3と別体に設ける必要がなく、ラジエター1の部品点数を削減できる。これにより、ラジエター1の部品点数を増加させずに第2冷媒流路7に異物が侵入することを防止できる。
【0037】
導入口72から空気が第2冷媒流路7に導入されるため、排出口73からよりも導入口72からの方が、第2冷媒流路7に塵芥や小石等の異物が侵入しやすい。
【0038】
本実施形態では、保護部材8は、空気を第2冷媒流路7の第2主流路71に導入する導入口72が設けられている側に形成されている。
【0039】
これにより、保護部材8によって、第2冷媒流路7に異物が侵入することをより効果的に防止できる。
【0040】
また、
図11に示すように、保護部材8は、下方に向かうにしたがって、左右方向の幅が細くなるテーパ形状を有している。
【0041】
これにより、導入口72から左右方向に並んで形成される複数の保護部材8の間を通って第2主流路71に導入される空気の流れを阻害することなく、複数の保護部材8を設けることができる。
【0042】
本実施形態のラジエター1は、材料を積層造形することによってコア部3を成形する。材料を積層造形することによって成形する積層造形法は、三次元形状を造形する方法の1つである。積層造形法は、三次元モデルに基づいて、三次元モデルの連続する断面にそれぞれ対応する材料の層を1層ずつ積層して、三次元形状の部材を作成する製造方法である。積層造形法は、3Dプリンティング技術としても知られている。材料のブロックから削り出して最終製品を作成する従来の切削加工とは異なり、積層造形法は、材料を積層していくことで最終製品を形成するので、複雑な三次元形状を成形することができる。なお、積層造形法は、付加製造法、アディティブマニュファクチャリング、AM技術(additive manufacturing)とも呼ばれている。
【0043】
積層造形法において、積層する材料には、金属、セラミック、樹脂等を用いることができる。本実施形態では、コア部3は、金属で形成されている。なお、コア部3は、セラミック、樹脂等で形成されていてもよい。
【0044】
本実施形態では、コア部3の下端面から、材料を積層造形することによってコア部3を成形する。より詳細には、コア部3の下端面から、材料を積層造形することによって、第1冷媒流路5、第2冷媒流路7、及び、保護部材8を備えるコア部3を成形する。
【0045】
一般に、積層造形法において、空間の上に材料を積層することはできないので、材料を積層する下端面から上方に所定距離を空けた位置から材料を積層する場合、下端面と同一平面から材料を積層してサポート部を形成し、サポート部の上面に材料を積層して造形する。この場合、造形後にサポート部を除去する必要がある。
【0046】
本実施形態では、排出チャンバ53の下端部から保護部材8が下方に向かって上下方向に延出して、略薄板状に前後方向に延在しており、保護部材8の下端がコア部3の下端面と同一平面状に位置している。
【0047】
したがって、積層造形法でコア部3を成形する際、コア部3の下端面から保護部材8を積層造形し、排出チャンバ53の下方にサポート部を形成せずに、保護部材8の上端から排出チャンバ53を形成することができる。これにより、サポート部を形成せずにコア部3を成形することができるので、コア部3の成形後にサポート部を除去する工程を不要とすることができ、製造性が向上する。さらに、コア部3の成形後にサポート部を除去する工程を不要とすることができることによって、サポート部を除去する工程で排出チャンバ53等、ラジエター1の構成部品が損傷することを防止できるので、ラジエター1の品質向上を図ることができる。
【0048】
なお、コア部3だけでなく、積層造形法で導入パイプ11及び排出パイプ13をコア部3と一体に製造してもよい。コア部3と、導入パイプ11及び排出パイプ13とを別々に製造した場合には、コア部3に対し導入パイプ11及び排出パイプ13を組み付ける工程が必要であったが、積層造形法で一体に製造することで、この工程が省略される。なお、所定の粉末材料は、樹脂であってもよく、金属であってもよい。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0050】
例えば、上記実施形態では、箱型形状のコア部3を有するラジエター1を例示したが、コア部3は、積層造形法により3次元的に湾曲したような複雑な形状を有していてもよい。
【0051】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0052】
(1) コア部(コア部3)と、
前記コア部に設けられ、第1流体(冷却水)が流れる第1冷媒流路(第1冷媒流路5)と、
前記コア部に設けられ、第2流体(空気)が流れる第2冷媒流路(第2冷媒流路7)と、を備え、
前記コア部において、前記第1冷媒流路を流れる前記第1流体と前記第2冷媒流路を流れる前記第2流体とが隔壁(隔壁54)を介して熱交換を行う、熱交換器(ラジエター1)であって、
前記第1冷媒流路及び前記第2冷媒流路は、規則的に並んだ管状流路であり、
前記第1冷媒流路は、
第1方向(上下方向)に延在し、前記第1方向と垂直な第2方向(前後方向)に並ぶように位置する複数の第1主流路(第1主流路51)と、
前記複数の第1主流路の前記第1方向における一方側の第1端部(上端部)に設けられ、前記複数の第1主流路に連通して前記第2方向に延在する導入チャンバ(導入チャンバ52)と、
前記複数の第1主流路の前記第1方向における他方側の第2端部(下端部)に設けられ、前記複数の第1主流路に連通して前記第2方向に延在する排出チャンバ(排出チャンバ53)と、を備え、
前記導入チャンバ及び前記排出チャンバの少なくとも一方には、
前記第1方向における前記第1主流路と反対側の端部から、前記第1主流路から遠ざかる方向に向かって前記第1方向に延出して前記第2方向に延在する保護部材(保護部材8)が形成されている、
熱交換器。
【0053】
(1)によれば、第2冷媒流路に異物が侵入することを保護部材で防止できる。また、第2冷媒流路に異物が侵入するための保護部材をコア部と別体に設ける必要がなく、熱交換器の部品点数を削減できる。これにより、熱交換器の部品点数を増加させずに第2冷媒流路に異物が侵入することを防止できる。
【0054】
(2) (1)に記載の熱交換器であって、
前記第1冷媒流路において、
前記第2方向に並ぶ前記複数の第1主流路、前記導入チャンバ、及び、前記排出チャンバは、前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向(左右方向)に並んで複数列設けられており、
前記第2冷媒流路は、
前記第1方向に延在し、前記第2方向に並ぶように位置する複数の第2主流路(第2主流路71)を備え、
前記第2方向に並ぶ前記複数の第2主流路は、
前記第1主流路を構成する前記隔壁により囲まれることで形成され、前記第3方向に並んで複数列設けられており、
前記コア部の前記第1方向における前記一方側又は前記他方側の端面には、前記第2方向及び前記第3方向に並んだ複数の前記第2主流路に前記第2流体を導入する導入口(導入口72)が設けられており、
前記コア部の前記第1方向における前記導入口と反対側の端面には、前記第2方向及び前記第3方向に並んだ複数の前記第2主流路を流れた前記第2流体を排出する排出口(排出口73)が設けられており、
前記保護部材は、前記第1方向において前記導入口が設けられている側に形成されている、
熱交換器。
【0055】
(2)によれば、保護部材によって、第2冷媒流路に異物が侵入することをより効果的に防止できる。
【0056】
(3) (2)に記載の熱交換器であって、
前記保護部材は、前記第1方向において、前記第1主流路から遠ざかる方向に向かうにしたがって、前記第3方向の幅が細くなるテーパ形状を有する、
熱交換器。
【0057】
(3)によれば、導入口から複数の保護部材の間を通って第2主流路に導入される空気の流れを阻害することなく、複数の保護部材を設けることができる。
【0058】
(4) (1)に記載の熱交換器の製造方法であって、
材料を積層造形することによって、前記第1冷媒流路、前記第2冷媒流路、及び、前記保護部材を備える前記コア部を一体に成形する、
熱交換器の製造方法。
【0059】
(4)によれば、材料を積層造形することによってコア部を成形する際、サポート部を形成せずにコア部を成形することができるので、コア部の成形後にサポート部を除去する工程を不要とすることができ、製造性が向上する。さらに、コア部の成形後にサポート部を除去する工程を不要とすることができることによって、サポート部を除去する工程で熱交換器の構成部品が損傷することを防止できるので、熱交換器の品質向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ラジエター(熱交換器)
3 コア部
5 第1冷媒流路
51 第1主流路
52 導入チャンバ
53 排出チャンバ
54 隔壁
7 第2冷媒流路
71 第2主流路
72 導入口
73 排出口
8 保護部材