(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139103
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】熱交換器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 1/053 20060101AFI20241002BHJP
F28F 1/04 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F28D1/053 Z
F28F1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049899
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 恒雄
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103BB39
3L103CC02
3L103CC22
3L103DD08
3L103DD42
(57)【要約】
【課題】品質が低下することなく容易に大型化することができる熱交換器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ラジエター1は、冷却水が流れる第1冷媒流路5と、空気が流れる第2冷媒流路7と、が設けられたコア部3を備え、冷却水と空気とが隔壁54を介して熱交換を行う。第1冷媒流路5は、上下方向に延在し、前後方向に並ぶ複数の第1主流路51を備える。前後方向に並ぶ複数の第1主流路51は、左右方向に複数列設けられている。第2冷媒流路7は、上下方向に延在し、前後方向に並ぶ複数の第2主流路71を備える。前後方向に並ぶ複数の第2主流路71は、第1主流路51を構成する隔壁54により囲まれることで形成され、左右方向に複数列設けられている。コア部3は、複数のユニット40が接合されて形成され、各ユニット40の各第1主流路51は、上下方向から見た断面において、隔壁54によって閉じた領域となっている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、
前記コア部に設けられ、第1流体が流れる第1冷媒流路と、
前記コア部に設けられ、第2流体が流れる第2冷媒流路と、を備え、
前記コア部において、前記第1冷媒流路を流れる前記第1流体と前記第2冷媒流路を流れる第2流体とが隔壁を介して熱交換を行う、熱交換器であって、
前記第1冷媒流路は、
第1方向に延在し、前記第1方向と垂直な第2方向に並ぶように位置する複数の第1主流路を備え、
前記第2方向に並ぶ前記複数の第1主流路は、前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向に並んで複数列設けられており、
前記第2冷媒流路は、
前記第1方向に延在し、前記第2方向に並ぶように位置する複数の第2主流路を備え、
前記第2方向に並ぶ前記複数の第2主流路は、
前記第1主流路を構成する前記隔壁により囲まれることで形成され、前記第3方向に並んで複数列設けられており、
前記コア部は、複数のユニットが接合されて形成されており、
各々の前記ユニットの各前記第1主流路は、前記第1方向から見た断面において、前記隔壁によって閉じた領域となっている、
熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
一方の前記ユニットの他方の前記ユニットとの接合面には、前記他方の前記ユニットの接合面に向かって突出する位置決め突起が設けられており、
前記他方の前記ユニットの前記一方の前記ユニットとの前記接合面には、前記一方の前記ユニットの前記接合面に設けられた前記位置決め突起が嵌合可能な位置決め孔が設けられており、
前記一方の前記ユニットの前記接合面に設けられた前記位置決め突起が、前記他方の前記ユニットの前記接合面に設けられた前記位置決め孔に嵌合して、前記一方の前記ユニットの前記他方の前記ユニットとの前記接合面と、前記他方の前記ユニットの前記一方の前記ユニットとの前記接合面とが接合する、
熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載の熱交換器であって、
前記第1冷媒流路は、
前記複数の第1主流路の前記第1方向における一方側の第1端部に設けられ、前記複数の第1主流路に連通して前記第2方向に延在する導入チャンバと、
前記複数の第1主流路の前記第1方向における他方側の第2端部に設けられ、前記複数の第1主流路に連通して前記第2方向に延在する排出チャンバと、を備え、
前記第1主流路の前記第1端部には、前記導入チャンバに向かって所定の流路断面の形状が徐々に変化して前記第2方向で隣り合う前記第1主流路と前記第2方向に直線状に接続する導入側形状変化区間が形成されており、
前記第1主流路の前記第2端部には、前記排出チャンバに向かって所定の流路断面の形状が徐々に変化して前記第2方向で隣り合う前記第1主流路と前記第2方向に直線状に接続される排出側形状変化区間が形成されており、
前記一方の前記ユニットの前記他方の前記ユニットとの前記接合面、及び、前記他方の前記ユニットの前記一方の前記ユニットとの前記接合面は、前記第2方向に対して垂直な面となっており、
前記位置決め突起及び前記位置決め孔は、前記導入側形状変化区間及び前記排出側形状変化区間の少なくとも一方に形成されている、
熱交換器。
【請求項4】
請求項1に記載の熱交換器の製造方法であって、
材料を積層造形することによって複数の前記ユニットを成形し、
前記複数のユニットを接合して、前記コア部を形成する、
熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度の異なる二流体の間で熱を受け渡す装置として、種々の伝熱方式を用いた熱交換器が普及している。
【0003】
近年においては、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する研究開発が盛んに行われている。熱交換器では、エネルギーの効率化に貢献すべく、熱交換効率の向上が求められている。
【0004】
さらに、最近では、材料を積層造形することによって成形する積層造形法に関する技術が進展し、積層造形法を用いることで、従来の切削、鍛造、打ち抜き加工などでは成形が困難な複雑な三次元形状を有する製品の製造が可能になっている。熱交換器においても、積層造形法で製造することによって、複雑な三次元形状を有する熱交換器の製造が可能となっている。そして、特許文献1には、積層造形法で製造することによって、軽量化やコスト削減だけでなく、新たな機能を有することが可能となった熱交換器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された熱交換器のように、材料を積層造形することによって成形する積層造形法で熱交換器を製造する場合、複雑な三次元形状を成形することができる一方、積層造形法による製造設備の大きさ等によって大型化には限度があり、また、積層回数が増加して製造時間が非常に長くなってしまう、という課題がある。そのため、熱交換器を複数のユニットに分割して、各ユニットを製造した後、各ユニットを接合して熱交換器を製造する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、この場合、各ユニットを接合する際に位置ずれが生じたり、各ユニットの製造の際に冷却水流路や空気流路の寸法に誤差が生じたりした場合、冷却水流路と空気流路とが連通してしまい、熱交換器の内部で冷却水と空気とが混合してしまう虞がある。
【0008】
本発明は、品質が低下することなく容易に大型化することができる熱交換器及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
コア部と、
前記コア部に設けられ、第1流体が流れる第1冷媒流路と、
前記コア部に設けられ、第2流体が流れる第2冷媒流路と、を備え、
前記コア部において、前記第1冷媒流路を流れる前記第1流体と前記第2冷媒流路を流れる第2流体とが隔壁を介して熱交換を行う、熱交換器であって、
前記第1冷媒流路は、
第1方向に延在し、前記第1方向と垂直な第2方向に並ぶように位置する複数の第1主流路を備え、
前記第2方向に並ぶ前記複数の第1主流路は、前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向に並んで複数列設けられており、
前記第2冷媒流路は、
前記第1方向に延在し、前記第2方向に並ぶように位置する複数の第2主流路を備え、
前記第2方向に並ぶ前記複数の第2主流路は、
前記第1主流路を構成する前記隔壁により囲まれることで形成され、前記第3方向に並んで複数列設けられており、
前記コア部は、複数のユニットが接合されて形成されており、
各々の前記ユニットの各前記第1主流路は、前記第1方向から見た断面において、前記隔壁によって閉じた領域となっている。
【0010】
また、本発明は、
上記した熱交換器の製造方法であって、
材料を積層造形することによって複数の前記ユニットを成形し、
前記複数のユニットを接合して、前記コア部を形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各ユニットを接合する際に位置ずれが生じたり、各ユニットの製造の際に第1主流路の寸法に誤差が生じたりした場合でも、第1主流路を流れる第1冷媒と第2主流路を流れる第2冷媒とが混合しないように各ユニットを接合できるので、品質が低下することなく熱交換器を容易に大型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1のA-A線に沿った断面を露出させた部分斜視図である。
【
図3】
図1のB-B線に沿った断面の一部である部分断面図である。
【
図5】
図4のD領域の上下方向位置H1における断面斜視図の部分拡大図である。
【
図6】
図4のD領域の上下方向位置H2における断面斜視図の部分拡大図である。
【
図7】
図4のD領域の上下方向位置H3における断面斜視図の部分拡大図である。
【
図8】
図4のD領域の上下方向位置H1、H2、H3における断面斜視図をまとめた図である。
【
図9】
図1のラジエター1において、前後方向に3つのユニット40が接合されてコア部3が形成されている部分の分解斜視図である。
【
図10】
図1のラジエター1における複数のユニット40の接合面近傍のB-B線に沿った断面の一部である部分断面図である。
【
図11】(a)は、
図9の第1ユニット41の接合面411に形成された位置決め突起40a近傍の部分斜視図であり、(b)は、
図9の第2ユニット42の接合面421に形成された位置決め孔40b近傍の部分斜視図であり、(c)は、
図9の第1ユニット41と第2ユニット42とが接合した状態における、第1ユニット41の接合面411に形成された位置決め突起40a、及び、第2ユニット42の接合面421に形成された位置決め孔40b近傍の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の熱交換器の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。熱交換器は、冷却対象である第1流体と、第1流体を冷却する第2流体とが隔壁を介して熱交換を行うための機器である。第1流体と第2流体の性状は、特に限定されず、気体同士、液体同士、気体と液体など、全ての組合せを含む。第1流体及び第2流体は、例えば、水、オイル、有機媒体、空気、ヘリウムガスである。また、熱交換器が搭載される機器は、特に限定されるものではなく、車両、汎用機器、航空機、家電製品などあらゆる製品を含む。なお、以下の実施形態では、本発明の熱交換器の一例として、車両に搭載されるラジエターを例示して説明する。即ち、以下の実施形態において、第1流体は、車両の駆動源を冷却する冷却水であり、第2流体は、空気(走行風)である。
【0014】
図1は、本発明における一実施形態のラジエター1の斜視図である。
図2は、
図1のラジエター1について、
図1のA-A線に沿った断面を露出させた部分斜視図である。
図3の(A)は、
図1のB-B線に沿った断面の一部である部分断面図である。なお、本明細書においては、説明を簡潔且つ明確にするために、
図1に示すように、前後方向、左右方向、上下方向の3方向の直交座標系を用いてラジエター1を説明する。ただし、この方向は、機器にラジエター1が搭載された状態における方向とは無関係あることに留意されたい。図中、上方をU、下方をD、左方をL、右方をR、前方をFr、後方をRrと記載する。
【0015】
ラジエター1は、コア部3と、コア部3に設けられ、冷却水が流れる第1冷媒流路5と、コア部3に設けられ、空気が流れる第2冷媒流路7と、を備えている。ラジエター1では、コア部3において、第1冷媒流路5を流れる冷却水と第2冷媒流路7を流れる空気とが後述する隔壁54を介して熱交換を行う。したがって、従来のプレート式のように平板で流体を分離するもの(伝熱フィンを追加する場合もある)や、フィンチューブ式の様に円管の廻りの平板フィンにより熱伝導を介して熱交換するもの等とは異なる。コア部3には、後面の上部に導入パイプ11が設けられ、前面の下部に排出パイプ13が設けられる。導入パイプ11及び排出パイプ13は、コア部3の第1冷媒流路5に連通する。
【0016】
冷却水は、矢印Pで示すように、コア部3に設けられた導入パイプ11を介して外部からコア部3に導入され、コア部3内の第1冷媒流路5を上方から下方に流れた後、コア部3に設けられた排出パイプ13を介して外部に排出される。一方、空気は、矢印Qで示すように、コア部3の下面からコア部3に導入され、コア部3内の第2冷媒流路7を下方から上方に流れた後、コア部3の上面から排出される。第1冷媒流路5及び第2冷媒流路7は、規則的に並んだ管状流路である。ここで、管状流路とは、円弧又は多角形による閉じた断面形状を持つ配管状の流路を示す。
【0017】
第1冷媒流路5は、
図2に示すように、上下方向に延在し、前後方向に並ぶように位置する複数の第1主流路51と、前後方向に配置された複数の第1主流路51に連通して前後方向に延在する導入チャンバ52と、前後方向に配置された複数の第1主流路51に連通して前後方向に延在する排出チャンバ53と、を備える。第1冷媒流路5は、前後方向に並べて配置された複数の第1主流路51と、この第1主流路51に連通する導入チャンバ52及び排出チャンバ53を1組とした場合、この組が左右方向に複数列設けられる。したがって、
図3の(A)に示すように、上下方向から見た断面において、第1主流路51が碁盤の目状に規則的に配置される。
【0018】
第1主流路51は、
図3の(A)に示す本実施形態では、前後方向に延びる空間と左右方向に延びる空間が十字状に交差した十字形状の流路断面を有する。なお、第1主流路51の形状は、これに限らず、正方形、長方形、ひし形、台形、円形、楕円形、星形、三角形、五角形以上の多角形、その他の幾何学模様など任意の形状をとり得る。
【0019】
導入チャンバ52は、導入パイプ11に連通し、排出チャンバ53は排出パイプ13に連通する。
【0020】
第1主流路51には、
図2に示すように、導入チャンバ52に向かって流路断面の形状が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続される導入側形状変化区間55が上端部に設けられ、排出チャンバ53に向かって流路断面の形状が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続される排出側形状変化区間56が下端部に設けられる。導入側形状変化区間55及び排出側形状変化区間56については後述する。
【0021】
第2冷媒流路7は、
図3の(A)に示すように、第1主流路51を区画形成する隔壁54によって囲まれることで形成される複数の第2主流路71を有する。第2主流路71は、上下方向に延在し、第1冷媒流路5の第1主流路51に囲まれ、前後方向及び左右方向に複数存在する。したがって、複数の第2主流路71は、上下方向から見た断面において、前後方向及び左右方向に碁盤の目状に規則的に配置される。すなわち、第2主流路71は、上下方向に延在し、前後方向に並ぶように位置する複数の第2主流路71を1組とした場合、この組が左右方向に複数列設けられる。
【0022】
コア部3の下端面には、前後方向及び左右方向に碁盤の目状に配列された各第2主流路71に空気を導入する導入口72が形成されている。コア部3の上端面には、前後方向及び左右方向に碁盤の目状に配列された各第2主流路71を流れ空気を排出する排出口73が形成されている。
【0023】
コア部3の下方から導入口72に導入された空気は、左右方向に複数配列された排出チャンバ53の間の空間を通って、下方から第2冷媒流路7の第2主流路71の下端部に導入される。
【0024】
第2冷媒流路7の第2主流路71に導入された空気は、下方から上方へと向かって流れ、第2主流路71の上端部から左右方向に複数配列された導入チャンバ52の間の空間を通って、排出口73からコア部3の上方に排出される。
【0025】
以下、
図4~
図7を参照しながら、第1冷媒流路5の第1主流路51の上端部に設けられる導入側形状変化区間55について詳細に説明する。第1冷媒流路5の第1主流路51の下端部に設けられる排出側形状変化区間56は、導入側形状変化区間55と同様の構造を有するため、詳細な説明を省略する。
【0026】
第1主流路51の導入側形状変化区間55は、導入チャンバ52に向かって流路断面の形状が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続される。
【0027】
図4は、
図2のD領域をC方向から見た図である。D領域は、第1冷媒流路5及び第2冷媒流路7の上端部に相当する領域である。また、
図5は、
図4の上下方向位置H1における断面斜視図の部分拡大図を示している。同様に、
図6は、
図4の上下方向位置H2における断面斜視図の部分拡大図を示しており、
図7は、
図4の上下方向位置H3における断面斜視図の部分拡大図を示しており、
図8は、
図4のD領域の上下方向位置H1、H2、H3における断面斜視図をまとめた図である。
【0028】
図5に示した部分拡大
図H1は、3つの拡大図のうち、最も下方の上下方向位置H1における拡大図を示しており、導入側形状変化区間55の始点である。上下方向位置H1においては、第1冷媒流路5は、
図3の(A)で示した形状を呈している。即ち、第1冷媒流路5の第1主流路51は、十字形状の流路断面を有している。前後方向及び左右方向で隣り合う第1主流路51とは独立している。
【0029】
図6に示した部分拡大
図H2は、3つの拡大図のうち、中間位置の上下方向位置H2における拡大図を示しており、導入側形状変化区間55の中間部である。上下方向位置H2における流路断面は、上下方向位置H1における十字形状の流路断面(
図5)から、導入チャンバ52(上方)に向かうに従って、前後方向に延在する流路の長さが長くなるとともに幅が広がり、左右方向に延在する流路の長さが短くなるとともに幅が狭くなっている。そして、前後方向で隣り合う第1主流路51との間に次第に連通路Sが設けられる。上下方向位置H2における流路断面は、さらに導入チャンバ52(上方)に向かうに従って、前後方向に延在する流路の長さが長くなるとともに幅が広がり、左右方向に延在する流路の長さが短くなるとともに幅が狭くなる。
【0030】
ここで、第1主流路51の流路断面の断面積は、導入側形状変化区間55において同一である。即ち、導入側形状変化区間55において流路断面の形状は徐々に変化するものの流路断面の断面積は変化しない。そのため、冷却水をさらにスムーズに流すことができ、圧損の発生が抑制される。
【0031】
図7に示した部分拡大
図H3は、3つの拡大図のうち、最も上方の上下方向位置H3における拡大図を示しており、導入側形状変化区間55の終点である。上下方向位置H3における流路断面は、隣り合う第1主流路51と接続され、前後方向に一直線となる。即ち、連通路Sが前後方向に延在する流路と区別不能になるとともに、左右方向に延在する流路が消失する。
図7に示す一直線状の流路は、さらに上方に位置する導入チャンバ52と連通する。
【0032】
このように、導入側形状変化区間55により第1主流路51の流路断面が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続され、導入チャンバ52と連通することで、左右方向で隣り合う導入チャンバ52の間には、前後方向に並ぶように位置する複数の第2主流路71と連通する左右方向所定幅の空間が前後方向に延在する。そして、第2冷媒流路7の第2主流路71から排出された空気は、この空間を通って排出口73から外部に排出されるので、第2冷媒流路7の第2主流路71から排出された空気の流れを阻害しない。したがって、排出口73から第2主流路71への空気の流路空間に導入チャンバ52が配置されていても、空気の流れが妨げられることがない。
【0033】
詳しい説明は省略するが、第1主流路51の排出側形状変化区間56も同様に、排出チャンバ53に向かって流路断面の形状が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続される。このように、排出側形状変化区間56により第1主流路51の流路断面が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続され、排出チャンバ53と連通することで、左右方向で隣り合う排出チャンバ53の間には、前後方向に並ぶように位置する複数の第2主流路71と連通する左右方向所定幅の空間が前後方向に延在する。そして、導入口72から導入された空気は、この空間を通って第2冷媒流路7の第2主流路71に導入されるので、導入口72から導入された空気の流れを阻害しない。したがって、導入口72から第2主流路71への空気の流路空間に排出チャンバ53が配置されていても、空気の流れが妨げられることがない。
【0034】
また、導入側形状変化区間55及び排出側形状変化区間56で、流路断面の断面積を同一に維持したまま形状のみを変化させることで、冷却水の圧損が増加することも回避される。
【0035】
図9に示すように、コア部3は、複数のユニット40が接合されて形成されている。
図9では、前後方向に3つのユニット40が接合されてコア部3が形成されている部分について示している。本実施形態では、後側から前側に向かって第1ユニット41、第2ユニット42、第3ユニット43の順に並んで前後方向に接合されている。各ユニット40の接合面同士の間にロウシート6を介在させ、各ユニット40の接合面同士をロウシート6でロウ付けすることによって、複数のユニット40を接合する。
【0036】
各ユニット40は、材料を積層造形することによって成形される。材料を積層造形することによって成形する積層造形法は、三次元形状を造形する方法の1つである。積層造形法は、三次元モデルに基づいて、三次元モデルの連続する断面にそれぞれ対応する材料の層を1層ずつ積層して、三次元形状の部材を作成する製造方法である。積層造形法は、3Dプリンティング技術としても知られている。材料のブロックから削り出して最終製品を作成する従来の切削加工とは異なり、積層造形法は、材料を積層していくことで最終製品を形成するので、複雑な三次元形状を成形することができる。なお、積層造形法は、付加製造法、アディティブマニュファクチャリング、AM技術(additive manufacturing)とも呼ばれている。
【0037】
積層造形法において、積層する材料には、金属、セラミック、樹脂等を用いることができる。本実施形態では、各ユニット40は、金属で形成されている。なお、各ユニット40は、セラミック、樹脂等で形成されていてもよい。
【0038】
図10に示すように、各ユニット40の各第1主流路51は、上下方向から見た断面において、隔壁54によって閉じた領域となっている。そして、各ユニット40の隣接するユニット40との接合面において、各第1主流路51を構成する閉じた領域を形成する隔壁54同士がロウシート6によって接合している。
【0039】
なお、
図10に示すように、コア部3は、前後方向に加えて左右方向にも前後方向と同様に複数のユニット40が接合されて形成されている。
【0040】
これにより、隔壁54によって閉じた空間となっている各第1主流路51同士が接合されて各ユニット40が接合されるので、各ユニット40を接合する際に位置ずれが生じたり、各ユニット40の製造の際に第1主流路51の寸法に誤差が生じたりした場合でも、第1主流路51と第2主流路71とが連通しない。そのため、第1主流路51を流れる冷却水と第2主流路71を流れる空気とが混合しない。したがって、各ユニット40を接合する際に位置ずれが生じたり、各ユニット40の製造の際に第1主流路51の寸法に誤差が生じたりした場合でも、第1主流路51を流れる冷却水と第2主流路71を流れる空気とが混合しないように各ユニット40を接合できるので、品質が低下することなくラジエター1を容易に大型化することができる。
【0041】
特に、材料を積層造形することによって成形する積層造形法によってコア部3を一体に形成する場合、設備の大きさ等によって大型化には限度があり、また、製造時間が非常に長くなってしまう。
【0042】
本実施形態では、材料を積層造形することによって成形する積層造形法によって複数のユニット40を成形し、その後、複数のユニット40を接合してコア部3を形成することができるので、材料を積層造形することによって成形する積層造形法を用いて、複雑な形状を成形可能としつつ、製造時間を短縮し、且つ、設備の制限によらずに大型化のコア部3を形成できる。
【0043】
図11は、第1ユニット41の第2ユニット42との接合面411と、第2ユニット42の第1ユニット41との接合面421の拡大図である。
【0044】
図11に示すように、第1ユニット41の第2ユニット42との接合面411、及び、第2ユニット42の第1ユニット41との接合面421は、前後方向に対して垂直な面となっている。本実施形態では、第1ユニット41の第2ユニット42との接合面411は、第1ユニット41の前面であり、第2ユニット42の第1ユニット41との接合面421は、第2ユニット42の後面である。
【0045】
第1ユニット41の第2ユニット42との接合面411には、第2ユニット42の第1ユニット41との接合面421に向かって突出する位置決め突起40aが設けられている。他方、第2ユニット42の第1ユニット41との接合面421には、第1ユニット41の接合面411に設けられた位置決め突起40aが嵌合可能な位置決め孔40bが設けられている。位置決め突起40aは、第2ユニット42の接合面421に向かって突出するピン形状を有しており、位置決め孔40bは、位置決め突起40aが嵌合可能な窪み形状を有している。
【0046】
そして、第1ユニット41の第2ユニット42との接合面411と、第2ユニット42の第1ユニット41との接合面421との間に、ロウシート6を介在させ、第1ユニット41の接合面411に設けられた位置決め突起40aが、第2ユニット42の接合面421に設けられた位置決め孔40bに嵌合して、第1ユニット41の第2ユニット42との接合面411と、第2ユニット42の第1ユニット41との接合面421とが、ロウシート6によって接合する。
【0047】
第1ユニット41と第2ユニット42とを接合する際、第1ユニット41の接合面411に設けられた位置決め突起40aが、第2ユニット42の接合面421に設けられた位置決め孔40bに嵌合することにより、第1ユニット41と第2ユニット42との位置ずれを容易に防止することができる。これにより、第1ユニット41と第2ユニット42との位置ずれを容易に防止して接合できる。
【0048】
さらに、第1ユニット41の接合面411に設けられた位置決め突起40a、及び、第2ユニット42の接合面421に設けられた位置決め孔40bは、前述した導入側形状変化区間55の領域に形成されている。
【0049】
前後方向から見た断面において、導入側形状変化区間55を形成する領域の隔壁54の左右方向幅は、第1主流路51を形成する領域の隔壁54の左右方向幅よりも大きくなっている。
【0050】
したがって、隔壁54の左右方向幅の大きい領域に位置決め突起40a及び位置決め孔40bを設けることによって、コア部3を大型化することなく、且つ、容易に位置決め突起40a及び位置決め孔40bを設けることができる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0052】
例えば、上記実施形態では、箱型形状のコア部3を有するラジエター1を例示したが、コア部3は、積層造形法により3次元的に湾曲したような複雑な形状を有していてもよい。
【0053】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0054】
(1) コア部(コア部3)と、
前記コア部に設けられ、第1流体(冷却水)が流れる第1冷媒流路(第1冷媒流路5)と、
前記コア部に設けられ、第2流体(空気)が流れる第2冷媒流路(第2冷媒流路7)と、を備え、
前記コア部において、前記第1冷媒流路を流れる前記第1流体と前記第2冷媒流路を流れる前記第2流体とが隔壁(隔壁54)を介して熱交換を行う、熱交換器(ラジエター1)であって、
前記第1冷媒流路は、
第1方向(上下方向)に延在し、前記第1方向と垂直な第2方向(前後方向)に並ぶように位置する複数の第1主流路(第1主流路51)を備え、
前記第2方向に並ぶ前記複数の第1主流路は、前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向に並んで複数列設けられており、
前記第2冷媒流路は、
前記第1方向に延在し、前記第2方向に並ぶように位置する複数の第2主流路(第2主流路71)を備え、
前記第2方向に並ぶ前記複数の第2主流路は、
前記第1主流路を構成する前記隔壁により囲まれることで形成され、前記第3方向に並んで複数列設けられており、
前記コア部は、複数のユニット(ユニット40)が接合されて形成されており、
各々の前記ユニットの各前記第1主流路は、前記第1方向から見た断面において、前記隔壁によって閉じた領域となっている、
熱交換器。
【0055】
(1)によれば、隔壁によって閉じた空間となっている各第1主流路同士が接合されて各ユニットが接合されるので、各ユニットを接合する際に位置ずれが生じたり、各ユニットの製造の際に第1主流路の寸法に誤差が生じたりした場合でも、第1主流路と第2主流路とが連通しない。そのため、第1主流路を流れる第1冷媒と第2主流路を流れる第2冷媒とが混合しない。したがって、各ユニットを接合する際に位置ずれが生じたり、各ユニットの製造の際に第1主流路の寸法に誤差が生じたりした場合でも、第1主流路を流れる第1冷媒と第2主流路を流れる第2冷媒とが混合しないように各ユニットを接合できるので、品質が低下することなく熱交換器を容易に大型化することができる。
【0056】
(2) (1)に記載の熱交換器であって、
一方の前記ユニットの他方の前記ユニットとの接合面(接合面411)には、前記他方の前記ユニットの前記一方の前記ユニットとの接合面(接合面421)に向かって突出する位置決め突起(位置決め突起40a)が設けられており、
前記他方の前記ユニットの前記一方の前記ユニットとの前記接合面には、前記一方の前記ユニットの前記接合面に設けられた前記位置決め突起が嵌合可能な位置決め孔(位置決め孔40b)が設けられており、
前記一方の前記ユニットの前記接合面に設けられた前記位置決め突起が、前記他方の前記ユニットの前記接合面に設けられた前記位置決め孔に嵌合して、前記一方の前記ユニットの前記他方の前記ユニットとの前記接合面と、前記他方の前記ユニットの前記一方の前記ユニットとの前記接合面とが接合する、
熱交換器。
【0057】
(2)によれば、2つのユニットを接合する際、一方のユニットの接合面に設けられた位置決め突起が、他方のユニットの接合面に設けられた位置決め孔に嵌合することにより、2つのユニットの位置ずれを容易に防止することができる。これにより、複数のユニットの位置ずれを容易に防止して接合できる。
【0058】
(3) (2)に記載の熱交換器であって、
前記第1冷媒流路は、
前記複数の第1主流路の前記第1方向における一方側の第1端部(上端部)に設けられ、前記複数の第1主流路に連通して前記第2方向に延在する導入チャンバ(導入チャンバ52)と、
前記複数の第1主流路の前記第1方向における他方側の第2端部(下端部)に設けられ、前記複数の第1主流路に連通して前記第2方向に延在する排出チャンバ(排出チャンバ53)と、を備え、
前記第1主流路の前記第1端部には、前記導入チャンバに向かって所定の流路断面の形状が徐々に変化して前記第2方向で隣り合う前記第1主流路と前記第2方向に直線状に接続する導入側形状変化区間(導入側形状変化区間55)が形成されており、
前記第1主流路の前記第2端部には、前記排出チャンバに向かって所定の流路断面の形状が徐々に変化して前記第2方向で隣り合う前記第1主流路と前記第2方向に直線状に接続される排出側形状変化区間(排出側形状変化区間56)が形成されており、
前記一方の前記ユニットの前記他方の前記ユニットとの前記接合面、及び、前記他方の前記ユニットの前記一方の前記ユニットとの前記接合面は、前記第2方向に対して垂直な面となっており、
前記位置決め突起及び前記位置決め孔は、前記導入側形状変化区間及び前記排出側形状変化区間の少なくとも一方に形成されている、
熱交換器。
【0059】
(3)によれば、隔壁の幅が大きい導入側形状変化区間及び排出側形状変化区間の少なくとも一方に位置決め突起及び位置決め孔を設けることによって、コア部を大型化することなく、且つ、容易に位置決め突起及び位置決め孔を設けることができる。
【0060】
(4) (1)に記載の熱交換器の製造方法であって、
材料を積層造形することによって複数の前記ユニットを成形し、
前記複数のユニットを接合して、前記コア部を形成する、
熱交換器の製造方法。
【0061】
(4)によれば、材料を積層造形することによって複数のユニットを成形し、その後、複数のユニットを接合してコア部を形成することができるので、材料を積層造形することによって複雑な形状を成形可能としつつ、製造時間を短縮し、且つ、設備の制限によらずに大型化のコア部を形成できる。
【符号の説明】
【0062】
1 ラジエター(熱交換器)
3 コア部
40 ユニット
411 接合面
421 接合面
5 第1冷媒流路
51 第1主流路
52 導入チャンバ
53 排出チャンバ
54 隔壁
55 導入側形状変化区間
56 排出側形状変化区間
7 第2冷媒流路
71 第2主流路