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特開2024-139112湧水観測装置とその設置方法、及び湧水観測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139112
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】湧水観測装置とその設置方法、及び湧水観測方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/00 20060101AFI20241002BHJP
   E02D 1/06 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E02D1/00
E02D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049914
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591247798
【氏名又は名称】原工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平塚 裕介
(72)【発明者】
【氏名】熊本 創
(72)【発明者】
【氏名】原 和之
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 靖昭
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA07
2D043AB01
2D043AC01
2D043BA10
2D043BB02
(57)【要約】
【課題】ボーリング孔を利用した湧水の長期モニタリングに際して、長期モニタリングに要する費用を低減でき、削孔管等を引き抜く際の費用と手間を解消でき、パッカー内の水圧を測定することのできる、湧水観測装置とその設置方法、及び湧水観測方法を提供する。
【解決手段】湧水観測装置100は、パッカー20を備えている二重管ロッド30と、観測計48が取り付けられている流路切替えアダプタ40、第1逆止弁50、水圧測定装置60を備えている流路切替えユニット70と、二重管ロッド30と流路切替えユニット70からなる軸状ユニット80と、水をパッカー20に到達させる第1流路と、湧水を観測計48に到達させる第2流路とを有し、第1逆止弁50は、パッカー20へ送水する際に第1流路を開き、戻り水が戻る際に第1流路を閉じ、二重管ロッド30がボーリング孔Bの孔口B2に取り付けられるプリペンダー15に挿通されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切羽に設けられているボーリング孔に設置されて、該ボーリング孔の先端から湧水を取り込んで湧水観測を行う、湧水観測装置であって、
一端側にパッカーを備えている二重管ロッドと、
前記二重管ロッドの他端に装着され、観測計が取り付けられている流路切替えアダプタ、第1逆止弁、及び水圧測定装置を備えている、流路切替えユニットと、
前記二重管ロッドと前記流路切替えユニットとにより形成される、軸状ユニットと、
前記軸状ユニットの内部に設けられ、送水された水を前記パッカーの内側面に到達させる、第1流路と、
前記二重管ロッドと前記流路切替えユニットの内部に設けられ、前記二重管ロッドの前記一端にある取込開口から取り込んだ湧水を前記観測計に到達させる、第2流路とを有し、
前記水圧測定装置は、前記第1流路を形成する主流路と、該主流路から分岐した枝流路とを備え、該枝流路の途中には第2逆止弁が介在して、前記パッカーへ送水する際に該第2逆止弁が前記枝流路を閉じ、該枝流路にチェック弁が取り付けられて、前記第1流路内の水圧が測定されるようになっており、
前記第1逆止弁は、前記パッカーへ送水する際に前記第1流路を開き、該パッカーから戻り水が戻る際に該第1流路を閉じるようになっており、
前記二重管ロッドが、該ボーリング孔の孔口に取り付けられるプリペンダーに挿通されていることを特徴とする、湧水観測装置。
【請求項2】
前記二重管ロッドの前記他端に対して、前記流路切替えアダプタの一端が接続され、
前記流路切替えアダプタの他端に対して、前記水圧測定装置の一端が接続され、
前記水圧測定装置の他端に対して、前記第1逆止弁が接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の湧水観測装置。
【請求項3】
前記水圧測定装置の外面のうち、前記枝流路に対応する位置には凹部が設けられ、該凹部に該枝流路の開口が臨んでおり、
前記開口に取り付けられている状態での前記チェック弁の高さは、前記凹部の深さ以下に設定されており、
前記水圧測定装置に前記チェック弁が取り付けられて、前記第1流路への追加の送水、もしくは、該第1流路からの排水の少なくとも1つがさらに実行されるようになっていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の湧水観測装置。
【請求項4】
切羽に設けられているボーリング孔の先端から湧水を取り込んで湧水観測を行う、湧水観測方法であって、
一端側にパッカーを備えている二重管ロッドと、観測計が取り付けられている流路切替えアダプタ、第1逆止弁、及び水圧測定装置を備えている流路切替えユニットと、により形成される軸状ユニットと、該軸状ユニットの内部において送水された水を前記パッカーの内側面に到達させる第1流路と、該軸状ユニットの内部に設けられて該二重管ロッドの一端にある取込開口から取り込んだ湧水を前記観測計に到達させる第2流路とを有し、該二重管ロッドを前記ボーリング孔に挿入し、該ボーリング孔の先端近傍に前記パッカーを配設し、前記第1流路を介して送水された水により前記パッカーを膨らませて該パッカーを該ボーリング孔の孔壁に押圧させる、設置工程と、
前記水圧測定装置にて前記第1流路を観測する、第1流路観測工程と、
前記第2流路を介して前記ボーリング孔の先端から湧水を取り込み、前記観測計に到達させて湧水観測を行う、湧水観測工程と、
前記第1流路を介して排水して前記パッカーを萎ませ、前記二重管ロッドを前記ボーリング孔から引き抜いて回収する、回収工程とを有することを特徴とする、湧水観測方法。
【請求項5】
切羽にボーリング孔を削孔し、該ボーリング孔に対して湧水観測装置を設置する、湧水観測装置の設置方法であって、
前記切羽にプリペンダーを設置し、該プリペンダーに削孔管を挿通しながら前記ボーリング孔を削孔する、削孔工程と、
前記削孔管を前記ボーリング孔に残置し、該ボーリング孔の内部に前記湧水観測装置の一部を挿入していき、
ここで、前記湧水観測装置は、
一端側にパッカーを備えている二重管ロッドと、
前記二重管ロッドの他端に装着され、観測計が取り付けられている流路切替えアダプタ、第1逆止弁、及び水圧測定装置とを備えている、流路切替えユニットと、
前記二重管ロッドと前記流路切替えユニットとにより形成される、軸状ユニットと、
前記軸状ユニットの内部に設けられ、送水された水を前記パッカーの内側面に到達させる、第1流路と、
前記二重管ロッドと前記流路切替えユニットの内部に設けられ、前記二重管ロッドの前記一端にある取込開口から取り込んだ湧水を前記観測計に到達させる、第2流路とを有し、
前記水圧測定装置は、前記第1流路内の水圧を測定し、
前記第1逆止弁は、前記パッカーへ送水する際に前記第1流路を開き、該パッカーから戻り水が戻る際に該第1流路を閉じるようになっており、
前記削孔管の先端から前記パッカーを張り出させ、該パッカーを膨らませて前記二重管ロッドを前記ボーリング孔に固定することにより前記湧水観測装置を設置し、該削孔管を該ボーリング孔から引き抜いて回収して、湧水観測のために前記二重管ロッドを該ボーリング孔に残置する、設置・回収工程とを有することを特徴とする、湧水観測装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湧水観測装置とその設置方法、及び湧水観測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルの施工においては、切羽前方の湧水区間の湧水量や湧水圧といった湧水の状態を把握し、事前に湧水対策を行うことが肝要である。
この湧水状態の把握方法としては、切羽にボーリング孔(先進ボーリング孔)を設け、先進ボーリング孔を利用して地下水圧等を測定する方法が適用されている。このボーリング孔においては、例えば、その先端の湧水区間(湧水帯)の近傍にてパッカーを膨らませて設置することにより他の区間と区切り、パッカーにより区切られた湧水区間における湧水の水圧等を測定する方法が適用される。
【0003】
ここで、特許文献1には、湧水圧測定装置と湧水圧測定方法が提案されている。この湧水圧測定方法は、アウタービットとインナービットとを備えた二重ビットが先端に固定されている削孔ロッドを使用して、切羽前方に向けてボーリング孔を削孔する削孔工程、削孔ロッドの先端部においてボーリング孔の測定対象区間と非測定対象区間を遮蔽する止水工程、ボーリング孔内に流入する湧水の圧力を測定する測定工程を備えている。
削孔工程では、アウタービットの内空部にインナービットを取り付けた状態で削孔を行い、止水工程では、インナービットをアウタービットから取り外して回収する作業と、パッカー装置をアウタービットの内空部に挿通させてパッカー装置の先端部をボーリング孔内に露出させる作業と、パッカー装置の先端部に設けられたパッカー材を拡張させてパッカー材をボーリング孔の孔壁に密着させる作業とを行う。さらに、測定工程では、パッカー装置の先端から取水管を通して取り込まれた湧水の圧力を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-147751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の地下水圧測定方法によれば、切羽前方の湧水圧を測定した後、速やかに削孔を再開することができる。
ところで、上記する湧水区間における湧水の水圧等の測定が長期(数週間乃至数ヶ月程度)に及ぶ長期モニタリングを実施する場合に、特許文献1に記載される地下水圧測定方法では、削孔管やアウタービットをボーリング孔内に残置させる必要がある。
このように削孔管やアウタービットを長期間残置させることにより、長期損料が発生するといった課題があり、長期モニタリングの終了後に削孔管等を引き抜いて回収するべく、ボーリングマシンを再度設置する必要が生じ、設置コストと手間がかかるといった課題がある。
さらに、長期モニタリングにおいては、パッカーが湧水圧に抗してボーリング孔内における設置姿勢を保持するべく、パッカー内の水圧(ボーリング孔の孔壁を押圧する押圧力)を都度確認することが肝要であるが、パッカー内の水圧を都度測定する手段の開示は特許文献1にない。
【0006】
本発明は、ボーリング孔を利用した湧水の長期モニタリングに際して、長期モニタリングに要する費用を低減でき、長期モニタリングの終了後に削孔管等を引き抜く際の費用と手間を解消でき、パッカー内の水圧を測定することのできる、湧水観測装置とその設置方法、及び湧水観測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による湧水観測装置の一態様は、
切羽に設けられているボーリング孔に設置されて、該ボーリング孔の先端から湧水を取り込んで湧水観測を行う、湧水観測装置であって、
一端側にパッカーを備えている二重管ロッドと、
前記二重管ロッドの他端に装着され、観測計が取り付けられている流路切替えアダプタ、第1逆止弁、及び水圧測定装置を備えている、流路切替えユニットと、
前記二重管ロッドと前記流路切替えユニットとにより形成される、軸状ユニットと、
前記軸状ユニットの内部に設けられ、送水された水を前記パッカーの内側面に到達させる、第1流路と、
前記二重管ロッドと前記流路切替えユニットの内部に設けられ、前記二重管ロッドの前記一端にある取込開口から取り込んだ湧水を前記観測計に到達させる、第2流路とを有し、
前記水圧測定装置は、前記第1流路を形成する主流路と、該主流路から分岐した枝流路とを備え、該枝流路の途中には第2逆止弁が介在して、前記パッカーへ送水する際に該第2逆止弁が前記枝流路を閉じ、該枝流路にチェック弁が取り付けられて、前記第1流路内の水圧が測定されるようになっており、
前記第1逆止弁は、前記パッカーへ送水する際に前記第1流路を開き、該パッカーから戻り水が戻る際に該第1流路を閉じるようになっており、
前記二重管ロッドが、該ボーリング孔の孔口に取り付けられるプリペンダーに挿通されていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、一端側にパッカーを備えている二重管ロッドと、観測計が取り付けられている流路切替えアダプタ、第1逆止弁、及び水圧測定装置からなる流路切替えユニットとを有し、二重管ロッドと流路切替えユニットからなる軸状ユニットの内部にパッカーの内側面に送水する第1流路が設けられ、水圧測定装置の備える主流路と枝流路のうち、枝流路の途中に第2逆止弁が介在し、第1流路を介してパッカーへ送水する際には第2逆止弁が枝流路を閉じ、枝流路に取り付けられているチェック弁を介して第1流路内の水圧が測定され、ボーリング孔から削孔管やアウタービットを引き抜いた状態(削孔管等が存在しない状態)で湧水観測を行うことから、ボーリング孔を利用した湧水の長期モニタリングに際して、長期モニタリングに要する費用を低減でき、長期モニタリングの終了後に削孔管等を引き抜く際の費用と手間を解消でき、パッカー内の水圧を測定することができる。
また、第1逆止弁が、パッカーへ送水する際に第1流路を開き、パッカーから戻り水が戻る際に第1流路を閉じることにより、パッカー装置への必要量の送水と、パッカーが開いた後のパッカー圧の維持の双方を図ることができる。
さらに、二重管ロッドが、ボーリング孔の孔口に取り付けられるプリペンダーに挿通されていることにより、ボーリング孔と二重管ロッドとの間の隙間から湧水が孔外へ噴出することを防止できる。
【0009】
ここで、軸状ユニットを構成する各構成要素の並びは、二重管ロッド、流路切替えアダプタ、第1逆止弁、及び水圧測定装置の並びや、二重管ロッド、流路切替えアダプタ、水圧測定装置、及び第1逆止弁の並びなど、様々な並びがあり得る。さらに、流路切替えアダプタの内部に第1逆止弁が含まれ、従って双方が一体とされている形態等であってもよく、流路切替えアダプタ、第1逆止弁、及び水圧測定装置の2つもしくは全部が一体とされている形態であってもよい。
また、観測計にて観測(測定)される湧水の状態を示す物理量には、湧水量や湧水圧が含まれる。また、本態様では、観測計に到達させた湧水の物理量を測定することの他にも、湧水の濁度等の水質観察や地下水位観察等も「観察」に含まれるものとし、従って、湧水の物理量や水質等が観察対象となる。観測計による観測データ(計測データ)は、軸状ユニットを回収した後にデータ取得されてもよいし、観測計から無線通信によって、計測実施者等の携帯する携帯端末、トンネルの坑外にある管理施設にあるコンピュータ等、様々な携帯端末やコンピュータに対してリアルタイムに送信されてもよい。
また、二重管ロッドは、1本でも複数本でもよく、ボーリング孔の長さに応じて、例えば複数の二重管ロッドが順次継ぎ足されてもよい。
【0010】
本態様の湧水観測装置は、長さが1000m程度の超長尺ボーリング孔や、長さが100m程度の中尺ボーリング孔、長さが30m程度の短尺ボーリング孔といった様々な長さのボーリング孔に適用可能であるが、湧水の長期モニタリングを要する中尺ボーリング孔や超長尺ボーリング孔への適用に好適である。
【0011】
また、本発明による湧水観測装置の他の態様は、
前記二重管ロッドの前記他端に対して、前記流路切替えアダプタの一端が接続され、
前記流路切替えアダプタの他端に対して、前記水圧測定装置の一端が接続され、
前記水圧測定装置の他端に対して、前記第1逆止弁が接続されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、二重管ロッド、流路切替えアダプタ、水圧測定装置、及び第1逆止弁がこの順に並んで相互に接続されていることにより、第1流路を介したパッカー内への送水と、取込開口から取り込んだ湧水の第2流路を介した観測計への送水の双方を、相互に分離された2系統の流路にて実現することができる。
【0013】
また、本発明による湧水観測装置の他の態様は、
前記水圧測定装置の外面のうち、前記枝流路に対応する位置には凹部が設けられ、該凹部に該枝流路の開口が臨んでおり、
前記開口に取り付けられている状態での前記チェック弁の高さは、前記凹部の深さ以下に設定されており、
前記水圧測定装置に前記チェック弁が取り付けられて、前記第1流路への追加の送水、もしくは、該第1流路からの排水の少なくとも1つがさらに実行されるようになっていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、水圧測定装置の外面における枝流路に対応する位置に凹部が設けられ、凹部に枝流路の開口が臨んでいて、開口に取り付けられている状態でのチェック弁の高さ(張り出し高さ)が凹部の深さ以下に設定されていることにより、軸状ユニットをボーリング孔に挿入する際に、軸状ユニットから外側へ張り出しているチェック弁が他の機器等に干渉することを防止できる。
【0015】
また、水圧測定装置にチェック弁が取り付けられ、チェック弁に圧力計が取り付けられて第1流路内の水圧とパッカー内の水圧が測定されることの他に、第1流路への追加の送水や、第1流路からの排水がさらに実行されることにより、水圧測定装置に対して様々な機能を持たせることができる。
例えば、第1流路内の水圧測定の結果、パッカーに要求される水圧が不十分である場合は、チェック弁に対して送水手段を接続し、第1流路に追加の送水を実行してパッカー内の水圧を高めることができる。
また、湧水観測が終了した後、排水してパッカーを萎ませて、軸状ユニットを回収する際は、凹部に設置されているチェック弁の内部にある第2逆止弁を開放することにより、枝流路を介し、チェック弁を介して排水することが可能になる。
【0016】
また、本発明による湧水観測方法の一態様は、
切羽に設けられているボーリング孔の先端から湧水を取り込んで湧水観測を行う、湧水観測方法であって、
一端側にパッカーを備えている二重管ロッドと、観測計が取り付けられている流路切替えアダプタ、第1逆止弁、及び水圧測定装置を備えている流路切替えユニットと、により形成される軸状ユニットと、該軸状ユニットの内部において送水された水を前記パッカーの内側面に到達させる第1流路と、該軸状ユニットの内部に設けられて取込開口から取り込んだ湧水を前記観測計に到達させる第2流路とを有し、該二重管ロッドを前記ボーリング孔に挿入し、該ボーリング孔の先端近傍に前記パッカーを配設し、前記第1流路を介して送水された水により前記パッカーを膨らませて該パッカーを該ボーリング孔の孔壁に押圧させる、設置工程と、
前記水圧測定装置にて前記第1流路を観測する、第1流路観測工程と、
前記第2流路を介して前記ボーリング孔の先端から湧水を取り込み、前記観測計に到達させて湧水観測を行う、湧水観測工程と、
前記第1流路を介して排水して前記パッカーを萎ませ、前記二重管ロッドを前記ボーリング孔から引き抜いて回収する、回収工程とを有することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、ボーリング孔から削孔管やアウタービットを引き抜いた状態(削孔管等が存在しない状態)で湧水観測を行うとともに、水圧測定装置にて第1流路とパッカー内を観測する(例えばパッカー内の水圧を測定する)ことにより、ボーリング孔を利用した湧水の長期モニタリングに際して、長期モニタリングに要する費用を低減でき、長期モニタリングの終了後に削孔管等を引き抜く際の費用と手間を解消でき、パッカー内の水圧を測定することができる。ここで、第1流路観測工程と湧水観測工程は、同時並行にて行われてもよいし、交互に行われてもよい。
【0018】
また、本発明による湧水観測装置の設置方法の一態様は、
切羽にボーリング孔を削孔し、該ボーリング孔に対して湧水観測装置を設置する、湧水観測装置の設置方法であって、
前記切羽にプリペンダーを設置し、該プリペンダーに削孔管を挿通しながら前記ボーリング孔を削孔する、削孔工程と、
前記削孔管を前記ボーリング孔に残置し、該ボーリング孔の内部に前記湧水観測装置の一部を挿入していき、
ここで、前記湧水観測装置は、
一端側にパッカーを備えている二重管ロッドと、
前記二重管ロッドの他端に装着され、観測計が取り付けられている流路切替えアダプタ、第1逆止弁、及び水圧測定装置とを備えている、流路切替えユニットと、
前記二重管ロッドと前記流路切替えユニットとにより形成される、軸状ユニットと、
前記軸状ユニットの内部に設けられ、送水された水を前記パッカーの内側面に到達させる、第1流路と、
前記二重管ロッドと前記流路切替えユニットの内部に設けられ、前記二重管ロッドの前記一端にある取込開口から取り込んだ湧水を前記観測計に到達させる、第2流路とを有し、
前記水圧測定装置は、前記第1流路内の水圧を測定し、
前記第1逆止弁は、前記パッカーへ送水する際に前記第1流路を開き、該パッカーから戻り水が戻る際に該第1流路を閉じるようになっており、
前記削孔管の先端から前記パッカーを張り出させ、該パッカーを膨らませて前記二重管ロッドを前記ボーリング孔に固定することにより前記湧水観測装置を設置し、該削孔管を該ボーリング孔から引き抜いて回収して、湧水観測のために前記二重管ロッドを該ボーリング孔に残置する、設置・回収工程とを有することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、削孔管にてボーリング孔を削孔し、湧水観測を行う二重管ロッドをボーリング孔に挿入してパッカーを膨らませることにより固定し、削孔管をボーリング孔から引き抜いて回収し、湧水観測のための二重管ロッドをボーリング孔に残置するとともに、軸状ユニットを構成する水圧測定装置が第1流路内とパッカー内の水圧を測定することにより、ボーリング孔を利用した湧水の長期モニタリングに際して、長期モニタリングに要する費用を低減でき、長期モニタリングの終了後に削孔管等を引き抜く際の費用と手間を解消でき、パッカー内の水圧を測定することができる。
さらに、二重管ロッドが、ボーリング孔の孔口に取り付けられるプリペンダーに挿通された状態で設置されていることにより、ボーリング孔と二重管ロッドとの間の隙間から湧水が孔外へ噴出することを防止しながら、長期モニタリングを行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の湧水観測装置とその設置方法、及び湧水観測方法によれば、ボーリング孔を利用した湧水の長期モニタリングに際して、長期モニタリングに要する費用を低減でき、長期モニタリングの終了後に削孔管等を引き抜く際の費用と手間を解消でき、パッカー内の水圧を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る湧水観測装置の設置方法における、削孔工程を説明する工程図である。
図2図1に続いて、実施形態に係る湧水観測装置の設置方法における、設置・回収工程を説明する工程図である。
図3図2のIII部の拡大図であって、パッカーが萎んだ状態から膨らんだ状態へ変化する態様と、二重管ロッドの取込開口から湧水を取り込んでいる態様をともに示す図である。
図4】流路切替えユニットを構成する、流路切替えアダプタと水圧測定装置と第1逆止弁の内部構造を説明する図である。
図5図4のV-V矢視図であって、流路切替えアダプタにおける第1流路と第2流路の配置を横断面で見た図である。
図6A】チェック弁の拡大図である。
図6B】チェック弁にソケットと流路開放バルブが取り付けられている拡大図である。
図7図2に続いて、設置・回収工程を説明する工程図であって、実施形態に係る湧水観測方法における、設置工程をともに説明する図であり、さらに、実施形態に係る湧水観測装置の一例をともに示す図である。
図8】実施形態に係る湧水観測方法における、第1流路観測工程と湧水観測工程を説明する工程図である。
図9図8に続いて、実施形態に係る湧水観測方法における、回収工程を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態に係る湧水観測装置とその設置方法、及び湧水観測方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0023】
[実施形態に係る湧水観測装置とその設置方法、及び湧水観測方法]
図1乃至図9を参照して、実施形態に係る湧水観測装置とその設置方法、及び湧水観測方法の一例について説明する。
ここで、図1は、実施形態に係る湧水観測装置の設置方法における、削孔工程を説明する工程図であり、図2は、実施形態に係る湧水観測装置の設置方法における、設置・回収工程を説明する工程図である。また、図3は、図2のIII部の拡大図であって、パッカーが萎んだ状態から膨らんだ状態へ変化する態様と、二重管ロッドの取込開口から湧水を取り込んでいる態様をともに示す図である。また、図4は、流路切替えユニットを構成する、流路切替えアダプタと水圧測定装置と第1逆止弁の内部構造を説明する図であり、図5は、図4のV-V矢視図であって、流路切替えアダプタにおける第1流路と第2流路の配置を横断面で見た図である。また、図6Aは、チェック弁の拡大図であり、図6Bは、チェック弁にソケットと流路開放バルブが取り付けられている拡大図である。また、図7は、図2に続いて、設置・回収工程を説明する工程図であって、実施形態に係る湧水観測方法における、設置工程をともに説明する図であり、さらに、実施形態に係る湧水観測装置の一例をともに示す図である。さらに、図8は、実施形態に係る湧水観測方法における、第1流路観測工程と湧水観測工程を説明する工程図であり、図9は、図8に続いて、実施形態に係る湧水観測方法における、回収工程を説明する工程図である。
【0024】
以下で説明する湧水観測装置とその設置方法、及び湧水観測方法は、山岳トンネルの施工において、切羽前方の湧水区間(湧水帯)の湧水量や湧水圧といった湧水の状態を把握するための装置とその設置及び観測方法であり、観測結果に基づいて、次のトンネル掘削に際して事前に実施される湧水対策の有無を決定したり、周辺環境への影響を考察する際に供される観測結果を取得するためのものである。例えば、山岳トンネルの施工中に高圧で大量の湧水が発生する場合は、切羽崩落をはじめとするトンネル施工への影響は勿論のこと、周辺環境への影響(地盤沈下、地下水位低下等)が大きくなり得ることから、必要な対策が必須となる。
【0025】
湧水観測に際してトンネルの切羽に施工するボーリング孔(先進ボーリング孔)には、長さ1000m程度の超長尺ボーリング孔や、長さが100m程度の中尺ボーリング孔、長さが30m程度の短尺ボーリング孔があるが、実施形態に係る湧水観測方法の際に施工されるボーリング孔にはいずれの形態が適用されてもよい。
【0026】
ここで、超長尺ボーリング孔を用いた湧水観測では、湧水の有無の他、湧水の位置などが調査されるが、湧水帯に近づくまでに例えば数ヶ月を要し、調査に際して大掛かりな設備を要する。これに対して、中尺ボーリング孔や短尺ボーリング孔を用いた湧水観測では、実施形態に係る湧水観測装置の備えるパッカーを用いて湧水圧や湧水量を精度よく測定でき、地山の透水性の確認と切羽が到達した際の湧水量の予測が可能になる。
【0027】
例えば、中尺ボーリング孔や超長尺ボーリング孔を用いた湧水観測では、湧水区間における湧水の水圧等の測定が長期に及ぶ長期モニタリングが実施され得るが、その際には、ボーリング孔を削孔した削孔管やアウタービットをボーリング孔内に残置させる必要がある。このように削孔管やアウタービットを長期間残置させることにより、長期損料が発生するといった課題があり、長期モニタリングの終了後に削孔管等を引き抜いて回収するべく、ボーリングマシンを再度設置する必要が生じ、設置コストと手間がかかるといった課題がある。
【0028】
そこで、以下で説明する実施形態に係る湧水観測装置や湧水観測方法は、ボーリング孔を利用した湧水の長期モニタリングに際して、長期モニタリングに要する費用を低減でき、長期モニタリングの終了後に削孔管等を引き抜く際の費用と手間を解消できる装置及び方法であることから、例えば中尺ボーリング孔を用いた湧水観測に好適となる。
【0029】
まず、図1図2、及び図7を順に参照するとともに、適宜図3乃至図6を参照することにより、実施形態に係る湧水観測装置の設置方法と、ボーリング孔に設置された実施形態に係る湧水観測装置の一例について説明する。
【0030】
図1に示すように、地山Gの任意の計画施工位置まで施工が進んで切羽Kが設けられており、切羽Kよりも100m程度前方には、湧水帯Wが存在している。そこで、まず、切羽Kにおける削孔位置に、施工対象のボーリング孔Bの径よりも拡径した口元管14を削孔挿入することにより、口元拡径孔B1の内部に口元管14を設置し、孔口B2にある口元管14に対してプリペンダー15を設置する。
【0031】
次いで、先端にアウタービット12を備えた削孔管10をプリペンダー15の中空に挿通し、不図示のボーリングマシンにより削孔管10をX1方向に回転させながら、地山GをX2方向へ削孔していくことにより、湧水帯Wに通じるボーリング孔Bを施工する(以上、削孔工程)。
【0032】
次に、削孔管10を切羽K側へX3方向に所定距離引き戻すことにより、ボーリング孔Bの前方にパッカー20を固定するためのスペースSを形成する。
【0033】
スペースSを形成した後、削孔管10の後端に別途のプリペンダー17を設置し、プリペンダー17の中空に対して、所定長さの二重管ロッドの継ぎ足し管30Aを順次継ぎ足しながらX4方向に挿入していく。
【0034】
ここで、先頭の継ぎ足し管30Aの外周には、萎んだ状態のパッカー20が取り付けられている。パッカー20を備えた先頭の継ぎ足し管30AがスペースSに到達するまで継ぎ足し管30Aを継ぎ足していくことにより、切羽Kから湧水帯Wの近傍までの長さを有する、二重管ロッド30が形成される。
【0035】
二重管ロッド30の一端33には、湧水を取り込む取込開口が設けられている。一方、二重管ロッド30の他端34には、流路切替えユニット70を取り付け、二重管ロッド30と流路切替えユニット70とにより、軸状ユニット80を形成する。
【0036】
ここで、図3に示すように、二重管ロッド30は、外管31と内管32とを有し、外管31と内管32の間には、パッカー20の内側へ送水するための第1流路37が設けられている。一方、内管32の内部は、取込開口33から取り込んだ湧水を、観測計48(図4参照)に到達させる第2流路38を形成する。
【0037】
図3に示すように、先頭の継ぎ足し管30Aの一端33において、外管31と内管32の間の隙間に環状の閉塞キャップ35が嵌め込まれ、第1流路37を流通した水が漏れ出ることを防止している。
【0038】
外管31のうち、パッカー20に対応する位置には、導入孔31aが開設されており、第1流路37をY5方向に流通する水が、導入孔31aを介してパッカー20の内部へY6方向に供給されることにより、萎んだ状態の実線で示すパッカー20は、Y7方向に膨らんで一点鎖線の膨らんだ状態となり、ボーリング孔Bの孔壁を押圧して二重管ロッド30をボーリング孔Bの内部に固定することができる。
【0039】
二重管ロッド30がボーリング孔Bの内部に固定された後、二重管ロッド30の取込開口33から第2流路38へY10方向に湧水を取り込み、取り込んだ湧水を第2流路38にてY11方向に流通させ、流路切替えアダプタ40に取り付けられている観測計48(図4参照)に到達させることにより、湧水観測が行われる。
【0040】
図2に戻り、流路切替えユニット70は、二重管ロッドの他端34に装着される流路切替えアダプタ40と、水圧測定装置60と、第1逆止弁50とを有する。
【0041】
ここで、図4図5を参照して、流路切替えアダプタ40と、水圧測定装置60と、第1逆止弁50の内部構造を説明する。
【0042】
二重管ロッド30の他端34には、流路切替えアダプタ40を構成する本体管41の先端41aが嵌め込まれるようになっている。
【0043】
流路切替えアダプタ40は、本体管41を有する。図4図5に示すように、本体管41の中央には、二重管ロッド30の第2流路38に連通する第2流路43が設けられ、その周囲には、二重管ロッド30の第1流路37に連通する複数(図示例は7本)の第1流路45が設けられている。
【0044】
本体管41の先端側にはOリングからなるシール材44が設けられており、本体管41の先端41aに対して二重管ロッド30の後端34が嵌め込まれ、シール材44と摺接しながら双方の接続が行われる。
【0045】
本体管41において、第2流路43はその端部で屈曲して、本体管41の側面の一部に臨んで取り付け口43aを形成する。この取り付け口43aには、導入管46の一端が取り付けられ、導入管46の他端に観測計48が装着される。
【0046】
二重管ロッド30の第2流路38を介して第2流路43に流入してきた湧水は、第2流路43をY12方向に流通し、導入管46へY13方向に導入された後、観測計48に到達する。観測計48は、湧水圧を測定する圧力計や、湧水量を測定する流量計等であり、流入してきた湧水の湧水圧や湧水量といった物理量が測定される。また、図示を省略するが、例えば導入管46の途中に湧水吐出口が設けられ、湧水を吐出させてその濁度を含む水質を視認できるように構成されてもよい。
【0047】
観測計48が不図示の通信手段を備えている場合は、通信手段を介して計測管理者等の携帯する携帯端末や、トンネル坑外の管理施設にあるコンピュータ等に対して、観測データがリアルタイムに送信される。
【0048】
一方、水圧測定装置60から送水された水は、本体管41にある複数の第1流路45に流入し、各第1流路45をY4方向に流通して、二重管ロッド30の第1流路37に送られる。
【0049】
流路切替えアダプタ40の後端41bに対して、水圧測定装置60を構成する本体管61の先端61aが嵌め込まれるようになっている。
【0050】
水圧測定装置60は、本体管61を有する。本体管61の先端側にはOリングからなるシール材65が設けられており、本体管61の先端61aに対して流路切替えアダプタ40の後端41bが嵌め込まれ、シール材65と摺接しながら双方の接続が行われる。
【0051】
水圧測定装置60は、本体管61の内部に、第1流路を形成する主流路62と、主流路62から分岐した枝流路63とを備え、本体管61の外面のうち、枝流路63に対応する位置には凹部64が設けられ、凹部64に枝流路63の開口63aが臨んでいる。
【0052】
図4に示すように、開口63aには、チェック弁66が取り付けられるようになっている。ここで、凹部64の深さはt1であり、チェック弁66の高さt2は、深さt1以下に設定されている。このことにより、軸状ユニット80をボーリング孔Bに挿入する際に、開口63aにチェック弁66が取り付けられている状態でも、チェック弁66が他の機器等に干渉することが防止できる。
【0053】
次に、図6A図6Bを参照して、チェック弁と、これに装着されるソケット及び流路開放バルブについて説明する。
【0054】
図6Aに示すように、枝流路63の開口63aに取り付けられるチェック弁66は、弁本体66aを貫通する流路66bに、バネ66eによって常時は流路66bを閉塞する方向(図示例は上方)に付勢されている第2逆止弁66cを備えている。第2逆止弁66cの外周にOリングからなるシール材66dが取り付けられており、シール材66dが流路66bの壁面と当接することにより流路66bが閉塞される。
【0055】
水圧測定装置60が、パッカー20内の水圧(壁面への押圧力)の測定や、パッカー20への追加の送水、パッカー20からの排水を行わず、不図示の送水手段からの送水にてパッカー20を膨らませる際は、枝流路63がチェック弁66にて閉塞されることにより、主流路62が構成要素となっている第1流路の液密性が担保され、パッカー20へY3方向に送水することができる。
【0056】
一方、パッカー20内の水圧の測定や、パッカー20への追加の送水、パッカー20からの排水を行う際は、図6Bに示すように、チェック弁66に対してソケット67を嵌め込み、ソケット67に対して流路開放バルブ68を取り付けることにより、チェック弁66の流路66bのシール材66dによる閉塞を開放して、Y14方向への水の流れを生じさせる。
【0057】
より具体的には、流路開放バルブ68の先端には押し込みピン68aが取り付けられており、ソケット67に流路開放バルブ68を取り付けた際に、バネ66eにて付勢されている第2逆止弁66cを押し込みピン68aがバネ66eの付勢に抗してZ1方向に押し込むことにより、第2逆止弁66cが主流路62側へZ2方向に移動してチェック弁66の流路66bが開放され、主流路62とチェック弁66の流路66b、ソケット67の内部と流路開放バルブ68の内部が相互に流体連通する。
【0058】
パッカー20内の水圧を測定する際は、流路開放バルブ68に対して圧力計49(図8参照)が取り付けられる。また、パッカー20への追加の送水を行う際は、流路開放バルブ68を介して不図示の送水手段から追加の送水が行われる。さらに、パッカー20からの排水を行う際は、主流路62を流通する水を流路開放バルブ68を介してY14方向に排水する。
【0059】
水圧測定装置60の後端61bには、第1逆止弁50を構成する本体管51の先端51aが嵌め込まれるようになっている。
【0060】
第1逆止弁50は、本体管51を有する。本体管51の中央には、中空52bを内部に備えた弁座52が設けられており、中空52bの開口52aと連通する第1流路53が本体管51の先端51aに連通している。
【0061】
本体管51の先端側にはOリングからなるシール材51cが設けられており、本体管51の先端51aに対して水圧測定装置60の後端61bが嵌め込まれ、シール材51cと摺接しながら双方の接続が行われる。
【0062】
第1流路53の外周側には、バネ54が設けられていて、バネ54にてゴム球55が弁座52の開口52aを閉塞するように付勢されている。弁座52の中空52bには第1流路53が連通しており、第1逆止弁50の後端51bに対して中空を有する押し込み管70等が接続されるようになっている。不図示の送水手段から送水された水は、第1逆止弁50の第1流路53にY1方向に流入する。
【0063】
流入した水の水圧がバネ54の付勢力を上回った段階でゴム球55がY2方向に移動して開口52aが開放され、開口52aを介して水が水圧測定装置60側の第1流路53をY2方向に流通して、水圧測定装置60の第1流路62に流入することになる。
【0064】
ボーリング孔内においてパッカー20が十分に膨らみ、軸状ユニット80のボーリング孔への設置が完了した段階で、送水手段からの送水が停止される。この送水の停止により、ゴム球55を後方から押し出す力が無くなり、ゴム球55はバネ54による付勢力にて移動して弁座52の開口52aが閉塞される。
【0065】
この開口52aの閉塞により、Y15方向の戻り水が開口52aを介して排水されることが防止され、このことによって各部材の第1流路に充満している水を保持することができ、膨らんでボーリング孔の孔壁を押圧しているパッカー20の押圧力を保持することが可能になる。
【0066】
図7に示すように、切羽Kに設置されているプリペンダー15に挿通されている削孔管10の内部に配設されている二重管ロッド30を、パッカー20を介してボーリング孔Bに設置し、かつ削孔管10の後端に設置されている別途のプリペンダー17に対して二重管ロッド30の他端34側を挿通し、当該他端34に流路切替えユニット70を取り付けることにより、2つのプリペンダー15,17にてボーリング孔Bからの湧水の噴出を防止する。
【0067】
次いで、第1逆止弁50に送水管90を設置し、送水管90を介して軸状ユニット80の第1流路へY1方向に送水することにより、二重管ロッド30の第1流路37を介してパッカー20の内部へY6方向に水が供給される。この供給により、パッカー20がY7方向に膨らみ、ボーリング孔Bの孔壁を所定の押圧力にて押圧することによって、二重管ロッド30がスペースSにおける孔壁に固定され、二重管ロッド30と流路切替えユニット70とにより形成される軸状ユニット80がボーリング孔Bに設置される。
【0068】
次いで、二重管ロッド30をボーリング孔Bに残置した状態で、プリペンダー15から削孔管10を引き抜いて回収することにより、湧水観測装置100が形成される(以上、設置・回収工程)。
【0069】
図示する湧水観測装置100とその設置方法によれば、削孔管10にてボーリング孔Bを削孔し、湧水観測を行う二重管ロッド30をボーリング孔Bに挿入してパッカー20を膨らませることにより固定し、削孔管10をボーリング孔Bから引き抜いて回収し、湧水観測のための二重管ロッド30をボーリング孔Bに残置するとともに、軸状ユニット80を構成する水圧測定装置60が第1流路内とパッカー内の水圧を測定することにより、ボーリング孔Bを利用した湧水の長期モニタリングに際して、長期モニタリングに要する費用を低減でき、長期モニタリングの終了後に削孔管10等を引き抜く際の費用と手間を解消でき、パッカー20内の水圧を測定できる。
【0070】
次に、図7乃至図9を参照して、実施形態に係る湧水観測方法の一例について説明する。図7を参照して既に説明した、湧水観測装置の設置方法における設置・回収工程は、実施形態に係る湧水観測方法の設置工程となる。
【0071】
次に、図8に示すように、流路切替えアダプタ40に観測計48を設置し、取込開口33から二重管ロッド30の第2流路38へY10方向に取り込んだ湧水を、第2流路38にてY11方向に流通させ、流路切替えアダプタ40の第2流路43を介して観測計48に導くことにより、湧水の湧水圧や湧水量等を測定する。尚、観測計48に到達させた湧水の濁度等の水質観察や地下水位観察等も行うことができる(以上、湧水観測工程)。
【0072】
一方、一定時間の湧水観測の後、パッカー20内の水圧が所定の水圧を維持しているか否かを確認するべく、水圧測定装置60の枝流路63の開口63aに取り付けられているチェック弁66に対して、ソケット67を取り付け、ソケット67に対して流路開放バルブ68を取り付け、流路開放バルブ68に対して圧力計49を取り付ける。そして、圧力計49により、第1流路とこれに連通するパッカー20内の水圧を測定する。
【0073】
測定の結果、仮にパッカー20内の水圧が所定の水圧未満となっている場合は、流路開放バルブ68に対して不図示の送水管や送水バルブを取り付け、パッカー20に対して追加の送水を行うことにより、パッカー20の水圧を所定の水圧に調整する。このことにより、湧水圧を受けるパッカー20のボーリング孔Bに対する固定姿勢を保持することができる。
【0074】
図示例では、切羽Kに設置されるプリペンダー15に別途の圧力計49Aが設置され、ボーリング孔Bの口元部における水圧等も計測される(以上、第1流路観測工程)。
【0075】
ここで、上記する第1流路観測工程と湧水観測工程は、同時並行にて行われてもよいし、交互に行われてもよい。また、図示を省略するが、流路開放バルブ68には、複数方向弁(2方向弁や3方向弁)が設置され、各方向弁に対して圧力計49や送水管等が予め設置され、水圧測定の際は送水管に通じる方向弁(送水バルブ)を閉じるように構成されてもよい。
【0076】
長期モニタリングの終了後、図9に示すように、水圧測定装置60の流路開放バルブ68を介してパッカー20内の水をY16方向に排水することにより、パッカー20をY17方向に萎ませ、ボーリング孔Bへの固定を解除した後、軸状ユニット80をX5方向に引き抜いて回収する(以上、回収工程)。
【0077】
図示する湧水観測方法によれば、ボーリング孔Bから削孔管10を引き抜いた状態(削孔管10が存在しない状態)で湧水観測を行うとともに、水圧測定装置60にて第1流路とパッカー20内を観測する(パッカー20内の水圧を測定する)ことにより、ボーリング孔Bを利用した湧水の長期モニタリングに際して、長期モニタリングに要する費用を低減でき、長期モニタリングの終了後に削孔管10を引き抜く際の費用と手間を解消でき、パッカー内の水圧を測定することができる。
【0078】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0079】
10:削孔管
12:アウタービット
14:口元管
15,17:プリペンダー
20:パッカー
30:二重管ロッド
30A:二重管ロッド(継ぎ足し管)
31:外管
31a:導入孔
32:内管
33:一端(取込開口)
34:他端(後端)
35:閉塞キャップ
37:第1流路
38:第2流路
40:流路切替えアダプタ
41:本体管
41a:先端
41b:後端
43:第2流路
43a:取り付け口
44:シール材
45:第1流路
46:導入管
48:観測計
49,49A:圧力計
50:第1逆止弁
51:本体管
51a:先端
51b:後端
51c:シール材
52:弁座
52a:開口
52b:中空
53:第1流路
54:バネ
55:ゴム球
60:水圧測定装置
61:本体管
61a:先端
61b:後端
62:主流路(第1流路)
63:枝流路
63a:開口
64:凹部
65:シール材
66:チェック弁
66a:弁本体
66b:流路
66c:第2逆止弁
66d:シール材
66e:バネ
67:ソケット
68:流路開放バルブ
68a:押し込みピン
70:流路切替えユニット
80:軸状ユニット
90:送水管
100:湧水観測装置
G:地山
B:ボーリング孔(先進ボーリング孔)
B1:口元拡径孔
B2:孔口
K:切羽
W:湧水帯(湧水)
S:スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9