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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139125
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20241002BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241002BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241002BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M50/204 401H
H01M50/249
B60K11/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049932
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 大悟
(72)【発明者】
【氏名】越野 貴大
(72)【発明者】
【氏名】後藤 光晴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直司
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D038AA09
3D038AB01
3D038AC04
3D235AA02
3D235BB45
3D235CC15
3D235DD24
3D235FF06
3D235FF37
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY08
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】車体の凹部の振動、及び、ケース本体と凹部との衝突を低減することができるバッテリパックを提供する。
【解決手段】バッテリパック10は、車両1に搭載され、車体に設けられた凹部6に配置される。バッテリパック10は、バッテリモジュール20と、ケース本体12及びカバー13を有するケース11と、一対のサイドフレーム5にバッテリモジュール20を支持するバッテリブラケット21と、を備える。ケース本体12は、バッテリブラケット21に締結部70で締結され、締結部70には、ケース本体12及びバッテリブラケット21の高さ方向の相対位置を変更可能な移動許容部74が設けられる。ケース本体12は、凹部6と直接的又は間接的に当接するように配置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車体に設けられた凹部に配置されるバッテリパックであって、
バッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールを搭載するケース本体と、前記ケース本体とともに前記バッテリモジュールを収容するカバーと、を有するケースと、
前記凹部を挟むように前記凹部の両側に設けられた前記車体の一対の骨格部材に前記バッテリモジュールを支持するブラケットと、を備え、
前記ケース本体は、前記ブラケットに締結部で締結され、
前記締結部には、前記ケース本体及び前記ブラケットの高さ方向の相対位置を変更可能な移動許容部が設けられ、
前記ケース本体は、前記凹部と直接的又は間接的に当接するように配置される、
バッテリパック。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリパックであって、
前記ケースの内側には、前記バッテリモジュールに沿って設けられ、前記バッテリモジュールを冷却する冷却空気が流れる流路が設けられており、
前記ケース本体の底部には、前記バッテリモジュールの下面に当接して前記流路をシールするシール部材が設けられている、
バッテリパック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバッテリパックであって、
前記ケース本体の底部には、下方に突出して前記凹部に直接的又は間接的に当接する複数の凸部が設けられている、
バッテリパック。
【請求項4】
請求項3に記載のバッテリパックであって、
前記複数の凸部のうち少なくとも一つは、前記バッテリモジュールの長手方向の中央部の下方に設けられている、
バッテリパック。
【請求項5】
請求項3に記載のバッテリパックであって、
前記複数の凸部のうち少なくとも一つは、前記凹部の中央部に直接的に又は間接的に当接するように設けられている、
バッテリパック。
【請求項6】
請求項3に記載のバッテリパックであって、
前記ケース本体の各凸部と前記車体の前記凹部との間には、緩衝材が設けられている、
バッテリパック。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のバッテリパックであって、
前記移動許容部は、
前記ケース本体と前記ブラケットとを締結する締結部材と、
前記ケース本体に設けられ、前記締結部材が挿通された貫通穴と、を有し、
前記貫通穴は、前記高さ方向に長く形成される、
バッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池(バッテリとも称する)に関する研究開発が行われている。
【0003】
車両の駆動源の電動化に伴って、車両にはモータ等に電力を供給するバッテリを収容したバッテリパックが搭載される。例えば、特許文献1には、2つのクロスメンバの間の凹部空間に配置され、固定ボルトによって2つのクロスメンバに固定される電池パックが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-111354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、電池パックをアンダーボデーに離間させる構成を採用している一方で、アンダーボデーの振動を低減させるために、電池パックをアンダーボデーに当接させる構成も想定される。しかしながら、電池パックとアンダーボデーとが当接する構成においては、これらの寸法公差や上下振動等により、電池パックのロアーケースとアンダーボデーとの間の一部に隙間が生じる。当該隙間部分ではロアーケースとアンダーボデーとの衝突による衝撃や打音が発生するので、これらの衝突を低減させる構成について検討の余地があった。
【0006】
本発明は、車体の凹部の振動、及び、ケース本体と凹部との衝突を低減することができるバッテリパックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
車両に搭載され、車体に設けられた凹部に配置されるバッテリパックであって、
バッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールを搭載するケース本体と、前記ケース本体とともに前記バッテリモジュールを収容するカバーと、を有するケースと、
前記凹部を挟むように前記凹部の両側に設けられた前記車体の一対の骨格部材に前記バッテリモジュールを支持するブラケットと、を備え、
前記ケース本体は、前記ブラケットに締結部で締結され、
前記締結部には、前記ケース本体及び前記ブラケットの高さ方向の相対位置を変更可能な移動許容部が設けられ、
前記ケース本体は、前記凹部と直接的又は間接的に当接するように配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車体の凹部の振動、及び、ケース本体と凹部との衝突を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両1の後部座席2の下方に配置された、本発明の一実施形態のバッテリパック10を示す図である。
図2】一対のサイドフレーム5に固定されたバッテリパック10の上面図である。
図3】バッテリパック10の分解斜視図である。
図4】2つのバッテリモジュール20、左側バッテリブラケット22、及び右側バッテリブラケット23の組付け前の斜視図である。
図5】車両1の凹部6に搭載されたバッテリパック10の概略断面図である。
図6】ケース本体12とバッテリブラケット21とを締結する締結部70の拡大断面図である。
図7】移動許容部74によるケース本体12及びバッテリブラケット21の高さ方向の相対位置の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のバッテリパックの一実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0011】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態であるバッテリパック10は、例えば車両1の後部座席2及び荷室4の下方に配置される。車両1の車体は、左右一対のサイドフレーム5と、一対のサイドフレーム5の間に挟まれるようにして設けられた凹部6(図5参照)と、を備える。バッテリパック10は、左右方向の両端部に設けられた車体固定部91、92が一対のサイドフレーム5に固定された状態で、凹部6に配置される。車両1は、例えばハイブリッド車、バッテリ式電気自動車、燃料電池車等の電動車両である。
【0012】
バッテリパック10には吸気ダクト16及び排気ダクト18が接続されている。車室内の冷却空気は、吸気ダクト16からバッテリパック10内に導入されて後述するバッテリモジュール20を冷却した後、排気ダクト18から車室へ排出される。吸気ダクト16は、一端がバッテリパック10の前面右側に設けられた吸気ダクト接続部15に接続される。また、吸気ダクト16の他端には、右方に開口した吸気入口16aが設けられる。排気ダクト18は、一端がバッテリパック10の前面左側に設けられた排気ダクト接続部17に接続され、後部座席2の下方に配置される。
【0013】
図3に示すように、バッテリパック10は、2つのバッテリモジュール20と、バッテリブラケット21と、ファン30と、バッテリECU(Electronic Control Unit)41と、ジャンクションボックス43と、送風流路50と、吸気流路60と、これらを収容するケース11と、を備える。
【0014】
ケース11は、バッテリパック10の外観を構成し、バッテリモジュール20等を収容する。ケース11は、ケース本体12と、ケース本体12を上方から覆うカバー13と、を有する。ケース本体12は、底部111と、側壁113と、側壁113の上端に設けられたフランジ部115と、を有し、トレイ形状を有する。カバー13は、外縁部がシール部材12a(図5参照)を介してケース本体12の外縁部に対向して配置され、各種部品が搭載されたケース本体12を上方から覆う。ケース本体12の詳細については後述する。
【0015】
2つのバッテリモジュール20は、ケース本体12の左側に配置される。各バッテリモジュール20は、バッテリセル(不図示)が左右方向に複数積層されて構成され、左右方向が長手方向となる直方体形状を有する。2つのバッテリモジュール20は、不図示の電気接続部材を介して互いに電気的に接続される。バッテリモジュール20に蓄えた電力は、車両1の駆動源となるモータ等に供給される。
【0016】
バッテリブラケット21は、2つのバッテリモジュール20に取り付けられる。バッテリブラケット21は、左右両端部において、車体のサイドフレーム5に固定される車体固定部91、92を有する。車体固定部91、92は、ボルト挿通穴を有し、ボルト等によりバッテリパック10をサイドフレーム5に対して固定する固定点である。バッテリブラケット21は、車体のサイドフレーム5に対して2つのバッテリモジュール20を一体的に支持する。
【0017】
バッテリブラケット21は、左側バッテリブラケット22と、右側バッテリブラケット23と、を有する。
【0018】
左側バッテリブラケット22は、バッテリモジュール20の左側端部に取り付けられ、車体固定部91を有する。右側バッテリブラケット23は、バッテリモジュール20の右側端部に取り付けられ、車体固定部92を有する。車体固定部91、92は、ケース11の外側に配置される。
【0019】
図3及び図4に示すように、右側バッテリブラケット23は、第1ブラケット231と、第2ブラケット232と、第3ブラケット233と、を有する。第1ブラケット231は、後側のバッテリモジュール20に取り付けられる。第1ブラケット231には、2つのバッテリモジュール20の間に形成される送風流路50の流入口である開口23aが設けられている。第2ブラケット232は、前側のバッテリモジュール20に取り付けられる。第3ブラケット233は、第1ブラケット231及び第2ブラケット232の右側に配置され、第1ブラケット231及び第2ブラケット232に連結される。第3ブラケット233は、車体のサイドフレーム5に固定される車体固定部92を有する。また、第3ブラケット233は、ファン30を下方から支持する。
【0020】
このようにして、2つのバッテリモジュール20は、バッテリブラケット21により一体的に一対のサイドフレーム5に支持される。また、詳細は後述するが、ケース本体12は、バッテリブラケット21に締結部70で締結され、サイドフレーム5に支持されたバッテリモジュール20を下方から収容する。
【0021】
なお、本実施形態では、バッテリブラケット21は、左側バッテリブラケット22及び右側バッテリブラケット23により構成されたが、これに限られず、一つのブラケットにより構成されてもよい。また、右側バッテリブラケット23は、第1ブラケット231、第2ブラケット232、及び第3ブラケット233により構成されたが、これに限られず、例えば一つのブラケットや二つのブラケットにより構成されてもよい。
【0022】
図3に戻り、ファン30は、バッテリモジュール20よりも上流側に配置されており、バッテリパック10の外部から冷却空気を吸気し、バッテリモジュール20に冷却空気を送風する。ファン30は、例えばシロッコファンである。ファン30は、下方に開口した吸込口と、遠心方向に設けられた吹出口と、を有する。吸込口は吸気流路60に接続され、吹出口は送風ダクト33を介して送風流路50に接続される。
【0023】
ファン30は、吸込口に連通する開口が設けられた右側バッテリブラケット23の第3ブラケット233により支持される。第3ブラケット233は、吸込口が下方を向いた状態でファン30を下方から支持する。第3ブラケット233は、ケース11と共に吸気流路60を区画形成する。
【0024】
バッテリECU41は、バッテリモジュール20の充電及び放電を制御する制御装置であり、プロセッサ、メモリ、インターフェース等を備える。バッテリECU41は、ファン30及び右側バッテリブラケット23の上方に設けられたECUブラケット42に載置される。
【0025】
ジャンクションボックス43は、バッテリモジュール20と外部機器(不図示)とを電気的に接続し、バッテリモジュール20の充電電力及び放電電力が流れる配線部品を含む。ジャンクションボックス43は、バッテリモジュール20の上面に取り付けられたジャンクションボックスブラケット53に載置される。ジャンクションボックスブラケット53は、送風流路50の上方に配置されて送風流路50の上面を構成する。
【0026】
2つのバッテリモジュール20は、前後方向に離間して配置され、これらの間には送風流路50が形成される。送風流路50は、ファン30から送風された冷却空気が流れる流路である。送風流路50は、隣り合うバッテリセルの間に形成されたセル間流路(不図示)に連通し、送風流路50を流れる冷却空気がセル間流路に供給される。セル間流路に冷却空気が流れることにより、バッテリモジュール20は冷却される。
【0027】
送風流路50は、ケース11、左側バッテリブラケット22、右側バッテリブラケット23、及びジャンクションボックスブラケット53により区画形成される。
【0028】
ケース11の底部111には、上面視で四角リング形状を有するシール部材55が設けられている。シール部材55は、気体が不透過な材料で形成されており、例えばゴム発泡体である。シール部材55の前部551の上面には、前側に配置されたバッテリモジュール20が載置され、シール部材55の後部552の上面には、後側に配置されたバッテリモジュール20が載置される。これにより、冷却空気は送風流路50からバッテリモジュール20の下方の空間に漏れずにセル間流路に供給される。
【0029】
また、図示は省略するが、左側バッテリブラケット22、右側バッテリブラケット23、及びジャンクションボックスブラケット53には、2つのバッテリモジュール20に当接するシール部材が設けられており、冷却空気が送風流路50外に漏れることが抑制される。
【0030】
吸気流路60は、バッテリパック10の内側に設けられ、吸気ダクト接続部15とファン30の吸込口とを接続し、ファン30により車室から吸気された冷却空気が流れる流路である。
【0031】
ケース11は、吸気流路60を区画形成する吸気流路形成部64を有する。吸気流路形成部64は、ケース11の底部111から立設された立壁部を有する。吸気流路形成部64は、上面視で略U字形状を有し、吸気ダクト接続部15に連続して設けられている。第3ブラケット233は、不図示のシール部材(例えばゴム発泡体)を介して立壁部に上方から取り付けられる。このようにして、吸気流路60は、ケース本体12、第3ブラケット233、及びシール部材により区画形成される。なお、吸気流路60は、吸気ダクト接続部15とファン30の吸込口とを接続する吸気ダクトを設けることにより構成されてもよい。
【0032】
続いて、ケース本体12の詳細について、図5から図7を参照して説明する。図5は、車両1の凹部6に配置されたバッテリパック10の概略断面図である。なお、図5では、前述したファン30、バッテリECU41、ジャンクションボックス43、送風流路50、及び吸気流路60の図示を省略している。
【0033】
バッテリパック10は、車体固定部91、92において一対のサイドフレーム5に固定され、且つ、ケース本体12が車体の凹部6と直接的又は間接的に当接するように設けられる。バッテリパック10は重量物であり、ケース本体12が車体の凹部6に当接して設けられることにより、車両1の走行時における車体の凹部6の面振動が低減される。
【0034】
より詳細に説明すると、ケース本体12の底部111には、下方に突出して車体の凹部6に当接する複数の(本実施形態では3つの)凸部111aが設けられている。各凸部111aは、車両1の前後方向に延在する。ケース本体12は底部111に設けられた複数の凸部111aで凹部6に当接するので、ケース本体12と凹部6とが精度良く当接される。
【0035】
各凸部111aは、バッテリモジュール20の長手方向の両端部の間に位置する。特に、複数の凸部111aのうち少なくとも一つ(本実施形態では3つの凸部111aのうち真ん中の凸部111a)は、バッテリモジュール20の長手方向の中央部の下方に設けられることが好ましい。これにより、ケース本体12のうち、重量物であるバッテリモジュール20により最も下方へ押し込まれる部分を、より確実に車体の凹部6に当接させることができる。なお、凸部111aの一部は、バッテリモジュール20の長手方向の両端部の外側に位置してもよい。
【0036】
また、複数の凸部111aのうち少なくとも一つ(本実施形態では3つの凸部111aのうち真ん中の凸部111a)は、車体の凹部6の中央部に当接するように設けられることが好ましい。車体の凹部6の中央部は、凹部6のうち振動の振幅が最も大きい部分であり、凹部6の中央部にケース本体12を確実に当接させることにより、車体の凹部6の振動をより低減できる。
【0037】
車体の凹部6には、上方に突出した複数の(本実施形態では3つの)凸部6aが設けられている。各凸部6aは、ケース本体12の各凸部111aに対向する位置に設けられており、車両1の前後方向に延在する。
【0038】
ケース本体12の各凸部111aと車体の凹部6に設けられた各凸部6aとの間には、緩衝材14が設けられている。緩衝材14は、例えばフェルト等の不織布であり、ケース本体12の各凸部111aに接着等により設けられる。バッテリパック10が車体の凹部6に配置されるとき、ケース本体12の凸部111aは、車体の凹部6に設けられた凸部6aと緩衝材14を介して間接的に当接する。緩衝材14は、車両1の走行時にバッテリパック10と車体とが上下方向に相対振動するとき、ケース本体12の凸部111aと車体の凸部6aとの衝突による衝撃を吸収する。
【0039】
なお、緩衝材14は、車体の凸部6aに接着等により設けられてもよい。また、緩衝材14を設けず、ケース本体12の凸部111aと車体の凸部6aとを直接的に当接させてもよい。本明細書では、ケース本体12の凸部111aが車体の凹部6に設けられた凸部6aに緩衝材14を介して間接的に当接すること、及びケース本体12の凸部111aが車体の凹部6に設けられた凸部6aに直接的に当接することを、単に「ケース本体12が車体の凹部6に当接する」とも表現することがある。
【0040】
ケース本体12の側壁113には、ケース本体12とバッテリブラケット21とを締結する締結部70が設けられている。締結部70は、バッテリパック10の左右両側に設けられており、ケース本体12と左側バッテリブラケット22とを締結する左側締結部70Lと、ケース本体12と右側バッテリブラケット23とを締結する右側締結部70Rと、を含む。左側締結部70L及び右側締結部70Rはそれぞれ同一の構成を有する。
【0041】
図6に示すように、締結部70は、バッテリブラケット21に設けられたボルト穴71と、ケース本体12に設けられ、ケース本体12の高さ方向に長い長穴形状を有する長穴72と、ボルト穴71及び長穴72に挿入され、ケース本体12とバッテリブラケット21とを締結するボルト73と、を有する。
【0042】
ボルト73は、例えば段付きボルトである。ボルト73は、先端に設けられ、ボルト穴71にねじ込まれる雄ネジ部731と、長穴72に挿通され、雄ネジ部731よりも大径である大径部732と、を有する。バッテリブラケット21のボルト穴71に雄ネジ部731がねじ込まれることにより、ボルト73がバッテリブラケット21に対して固定され、ケース本体12とバッテリブラケット21とが締結される。
【0043】
ケース本体12に設けられた長穴72は、高さ方向に長く、且つ、ボルト穴71に固定されたボルト73が挿通される貫通穴である。
【0044】
長穴72及びボルト73は、ケース本体12が高さ方向にスライド移動することを許容する移動許容部74を構成する。移動許容部74は、ケース本体12及びバッテリブラケット21の高さ方向の相対位置を変更させる。ケース本体12は、長穴72の上端がボルト73の大径部732に当接する位置と、長穴72の下端がボルト73の大径部732に当接する位置と、の間を可動域として、バッテリブラケット21に対して移動可能となる。
【0045】
図7の(a)に示すように、バッテリパック10を車体の凹部6に配置するとき、バッテリパック10及び凹部6の寸法公差により、ケース本体12と凹部6との間の一部領域に隙間Gが生じることがある。本実施形態では、締結部70に移動許容部74が設けられているので、図7の(b)に示すように、重量物であるバッテリモジュール20がケース本体12を下方へ押し込むときケース本体12が下方へスライド移動し、ケース本体12が車体の凹部6に対して押し当てられ、隙間Gが埋まる。このように、ケース本体12と車体の凹部6とをしっかりと当接させるので、隙間Gが生じている場合と比較すると、車両1の走行時の上下振動に伴うケース本体12と車体の凹部6との衝突を低減することができる。また、隙間Gがケース本体12と車体の凹部6との上下方向の相対振動に起因する場合であっても、移動許容部74により隙間Gを埋めることができる。
【0046】
また、バッテリモジュール20とケース本体12の底部111との間には、送風流路50をシールするシール部材55が設けられており、シール部材55の反力により、底部111が下方へ押し込まれる。ケース本体12の底部111と車体の凹部6とを全体的に当接させずに離間して設けられたバッテリパックの場合、シール部材55の反力により底部111が下方へ膨らみ、バッテリモジュール20の下面とシール部材55との間に隙間が生じ得る。この隙間から冷却空気が漏れ、シール部材55のシール性能が低下する。一方で、本実施形態では、ケース本体12が車体の凹部6に当接して設けられているので、シール部材55の反力によっても底部111が下方へ膨らむことがなく、バッテリモジュール20の下面とシール部材55との間に隙間が生じることを抑制できる。よって、本実施形態のバッテリパック10によれば、車体の凹部6の面振動を低減させ、且つ、シール部材55のシール性能を向上させることができる。
【0047】
特に、前述のとおり、ケース本体12に設けられた各凸部111aはバッテリモジュール20の長手方向の両端部の間に位置しているので、バッテリモジュール20の下方においてケース本体12を車体の凹部6に確実に当接させることができる。よって、バッテリモジュール20の下面とシール部材55との間に隙間が生じることをより抑制することができる。
【0048】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0049】
例えば、前述した実施形態では、ケース本体12の底部111と車体の凹部6との当接部に、それぞれ凸部111aと凸部6aとを設けたが、これに限られない。ケース本体12の凸部111a及び車体の凸部6aのうちいずれか一方を設けない構成であってもよいし、いずれも設けない構成であってもよい。
【0050】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0051】
(1) 車両(車両1)に搭載され、車体に設けられた凹部(凹部6)に配置されるバッテリパック(バッテリパック10)であって、
バッテリモジュール(バッテリモジュール20)と、
前記バッテリモジュールを搭載するケース本体(ケース本体12)と、前記ケース本体とともに前記バッテリモジュールを収容するカバー(カバー13)と、を有するケース(ケース11)と、
前記凹部を挟むように前記凹部の両側に設けられた前記車体の一対の骨格部材(一対のサイドフレーム5)に前記バッテリモジュールを支持するブラケット(バッテリブラケット21)と、を備え、
前記ケース本体は、前記ブラケットに締結部(締結部70)で締結され、
前記締結部には、前記ケース本体及び前記ブラケットの高さ方向の相対位置を変更可能な移動許容部(移動許容部74)が設けられ、
前記ケース本体は、前記凹部と直接的又は間接的に当接するように配置される、
バッテリパック。
【0052】
(1)によれば、ケース本体は車体に設けられた凹部と当接するように配置されているので、凹部の振動を低減できる。また、バッテリパック及び凹部の寸法公差や上下振動に起因して、ケース本体と凹部との間の一部に隙間が生じ得るが、ケース本体とブラケットとの締結部に移動許容部が設けられているので、ケース本体及びブラケットを高さ方向に相対移動させることにより当該隙間を埋めることができる。これにより、ケース本体と凹部とをしっかりと当接させることができる。よって、車両走行時の上下振動に伴うケース本体と凹部との衝突を低減することができる。
【0053】
(2) (1)に記載のバッテリパックであって、
前記ケースの内側には、前記バッテリモジュールに沿って設けられ、前記バッテリモジュールを冷却する冷却空気が流れる流路(送風流路50)が設けられており、
前記ケース本体の底部(底部111)には、前記バッテリモジュールの下面に当接して前記流路をシールするシール部材(シール部材55)が設けられている、
バッテリパック。
【0054】
(2)によれば、バッテリモジュールが載置された状態のシール部材がケース本体の底部に設けられているので、シール部材の反力によりケース本体は下方へ押し込まれる。しかしながら、ケース本体は車体に設けられた凹部と当接するように配置されているので、ケース本体が下方に膨張してシール部材のシール性能が低下することを抑制できる。よって、バッテリモジュールの冷却性能を向上させることができる。
【0055】
(3) (1)又は(2)に記載のバッテリパックであって、
前記ケース本体の底部には、下方に突出して前記凹部に直接的又は間接的に当接する複数の凸部(凸部111a)が設けられている、
バッテリパック。
【0056】
(3)によれば、ケース本体の底部に複数の凸部が設けられているので、ケース本体と凹部とを精度良く当接させることができる。
【0057】
(4) (3)に記載のバッテリパックであって、
前記複数の凸部のうち少なくとも一つは、前記バッテリモジュールの長手方向の中央部の下方に設けられている、
バッテリパック。
【0058】
(4)によれば、ケース本体のうち、重量物であるバッテリモジュールにより最も下方へ押し込まれる部分を、確実に車体の凹部に当接させることができる。よって、ケース本体の変形を抑制できる。
【0059】
(5) (3)又は(4)に記載のバッテリパックであって、
前記複数の凸部のうち少なくとも一つは、前記凹部の中央部に直接的に又は間接的に当接するように設けられている、
バッテリパック。
【0060】
(5)によれば、ケース本体の凸部は、車体の凹部のうち振動の振幅が最も大きい中央部に当接するので、車体の凹部の振動をより低減できる。
【0061】
(6) (3)から(5)のいずれかに記載のバッテリパックであって、
前記ケース本体の各凸部と前記車体の前記凹部との間には、緩衝材(緩衝材14)が設けられている、
バッテリパック。
【0062】
(6)によれば、車両の走行時の上下振動によりケース本体の凸部と車体の凹部との間に隙間が生じ、ケース本体の凸部と車体の凹部とが衝突する場合であっても、緩衝材により衝突時の衝撃を吸収することができる。
【0063】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載のバッテリパックであって、
前記移動許容部は、
前記ケース本体と前記ブラケットとを締結する締結部材(ボルト73)と、
前記ケース本体に設けられ、前記締結部材が挿通された貫通穴(長穴72)と、を有し、
前記貫通穴は、前記高さ方向に長く形成される、
バッテリパック。
【0064】
(7)によれば、締結部材が挿通されたケース本体の貫通穴が締結部材に対して高さ方向に相対移動することで、ケース本体及びブラケットの高さ方向の相対位置を変更することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 車両
6 凹部
10 バッテリパック
11 ケース
111 底部
111a 凸部
12 ケース本体
13 カバー
14 緩衝材
20 バッテリモジュール
21 バッテリブラケット(ブラケット)
50 送風流路(流路)
55 シール部材
70 締結部
72 長穴(貫通穴)
73 ボルト(締結部材)
74 移動許容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7