(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139135
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】埋設物予防保全システム及び埋設物予防保全方法
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20241002BHJP
H02G 9/02 20060101ALI20241002BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20241002BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20241002BHJP
G01V 1/00 20240101ALI20241002BHJP
G08B 21/24 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G01H9/00 E
H02G9/02
H02G1/06
G02B6/00 B
G01V1/00 A
G08B21/24
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049945
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】593027716
【氏名又は名称】株式会社エステック
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椙島 正樹
【テーマコード(参考)】
2G064
2G105
2H038
5C086
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064BA02
2G064BC12
2G064BD02
2G064DD02
2G105AA01
2G105BB01
2G105CC01
2G105EE02
2G105HH04
2G105LL02
2H038AA02
2H038AA03
2H038AA07
2H038CA68
5C086BA22
5C086CA23
5C086CB35
5C086DA08
5C086DA18
5C086GA01
5G352CA08
5G352CD10
5G369AA06
5G369AA16
5G369BA01
(57)【要約】
【課題】地中埋設物の外傷を防止するために、簡易な構成で掘削位置を精度高く検出すること。
【解決手段】地中に埋設される長尺の埋設物と、埋設物とともに地中に埋設され、埋設物の延在方向に沿って配設される光ファイバーと、光ファイバーの一端部に接続され、一端部から光が入射された光ファイバーの一端部から出射される後方錯乱光に基づいて掘削の振動を判別する監視装置と、掘削の振動の発生箇所に対応する埋設物の部位を掘削位置として報知する報知部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設される長尺の埋設物と、
前記埋設物とともに地中に埋設され、前記埋設物の延在方向に沿って配設される光ファイバーと、
前記光ファイバーの一端部に接続され、前記一端部から光が入射された前記光ファイバーの前記一端部から出射される後方錯乱光に基づいて掘削の振動を判別する監視装置と、
前記掘削の振動の発生箇所に対応する前記埋設物の部位を掘削位置として報知する報知部と、
を有する、
埋設物予防保全システム。
【請求項2】
前記埋設物は、電力ケーブルであり、
前記光ファイバーは前記電力ケーブルに隣接配置されている、
請求項1記載の埋設物予防保全システム。
【請求項3】
前記監視装置は、前記後方錯乱光に基づいて取得した前記光ファイバーの光伝搬状態を示す波形と、前記掘削に関する振動を示す波形とを比較して、前記掘削の振動を判別する、
請求項2記載の埋設物予防保全システム。
【請求項4】
前記掘削の振動は、掘削時に発生する音であり、
前記監視装置は、前記音により前記光ファイバーにおいて前記音が発生した箇所に対応する前記埋設物の部位を判定する、
請求項1記載の埋設物予防保全システム。
【請求項5】
前記監視装置は、前記後方錯乱光に基づいて前記掘削による前記地中の温度変化を監視する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の埋設物予防保全システム。
【請求項6】
地中に埋設された埋設物への掘削による外傷を防止する埋設物予防保全方法であって、
前記地中埋設物の全長に亘って光ファイバーが配設され、
前記光ファイバーの一端部から光を入射することにより前記一端部から出射する後方錯乱光に基づいて、掘削の振動を判別し、判別した掘削の振動の発生箇所に対応する前記埋設物の部位を掘削位置として報知する、
埋設物予防保全方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中埋設物の外傷を防止可能な埋設物予防保全システム及び埋設物予防保全方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に埋設された電力ケーブルが間違って掘削されることを防ぐため、埋設場所を示す警報テープを用いる方法の他、光ファイバーを用いて振動を測定する方法が知られている。
【0003】
埋設場所を示す警報テープを利用する方法は、事後的に警報することであることに対し、光ファイバーを用いて振動を測定する方法では、現状の埋設場所をモニタリングできるので予め現場状況を予測して、早期警報することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、光を基本モードで伝搬するシングルモード光ファイバーと、シングルモード光ファイバーに接続され、光を高次モードで伝搬するマルチモード光ファイバーとを用いて、誤った埋設物の掘削を防止する警報装置が開示されている。
【0005】
この装置では、マルチモード光ファイバーが曲がっている場合では、高次モードで伝搬され、反射部で反射してシングルモード光ファイバーに戻る光を測定して、シングルモード光ファイバーとマルチモード光ファイバーとが配置される周囲の振動を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1では、シングルモード光ファイバーとマルチモード光ファイバーを用いて、夫々の伝搬する光を光電エミッタ及び光電受信器で測定してシングルモード及びマルチモード光ファイバーの夫々における警報を発している。
【0008】
しかしながら、従来の方法では、シングルモード光ファイバーとマルチモード光ファイバーの周囲のすべての振動を検出するので、実際に地中埋設物のどの場所で掘削が行われているか正確ではなく検出精度は十分でなかった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、地中埋設物の外傷を防止するために、簡易な構成で埋設物に対応する掘削位置を精度高く正確に検出して報知できる埋設物予防保全システム及び埋設物予防保全方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る埋設物予防保全システムの一態様は、
地中に埋設される長尺の埋設物と、
前記埋設物とともに地中に埋設され、前記埋設物の延在方向に沿って配設される光ファイバーと、
前記光ファイバーの一端部に接続され、前記一端部から光が入射された前記光ファイバーの前記一端部から出射される後方錯乱光に基づいて掘削の振動を判別する監視装置と、 前記掘削の振動の発生箇所に対応する前記埋設物の部位を掘削位置として報知する報知部と、
を有する構成を採る。
【0011】
本発明に係る埋設物予防保全方法の一態様は
地中に埋設された埋設物への掘削による外傷を防止する埋設物予防保全方法であって、
前記地中埋設物の全長に亘って光ファイバーが配設され、
前記光ファイバーの一端部から光を入射することにより前記一端部から出射する後方錯乱光に基づいて、掘削の振動を判別し、判別した掘削の振動の発生箇所に対応する前記埋設物の部位を掘削位置として報知するようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で埋設物に対応する掘削位置を精度高く正確に検出して報知できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る埋設物予防保全システムの全体構成を示す模式図である。
【
図3】外傷予防のための掘削に関する振動特性を有する音の波形を示す図である。
【
図4】埋設物予防保全システムにおいて予防保全を行う場合の一例を示す図である。
【
図5】埋設物予防保全システムにおいて測定された波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
<埋設物予防保全システムの全体構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る埋設物予防保全システムの全体構成を示す模式図であり、
図2は、
図1に示す地中ケーブルの断面図である。
【0016】
図1に示す埋設物予防保全システム1は、地中に埋設される埋設物としての電力ケーブル2とともに光ファイバー3を設置し、光ファイバー3自体をセンサーとして用いることにより、掘削作業(掘削工事)に関係する振動(特に音)を監視する。これにより、地中埋設物(電力ケーブル2)が、水道、ガス等の掘削工事により外部から損傷を受ける可能性がある場合に、その部位を正確に検出でき、それを報知し警告して、埋設物(電力ケーブル2)を保護して安全を守る。
【0017】
埋設物予防保全システム1は、一例として、地中12に敷設された電力ケーブル2と、電力ケーブル2に沿って配置される光ファイバー3と、監視装置70と、切り替えスイッチ(切換SW)72と、報知部74とを有する。
【0018】
地中の埋設物としての電力ケーブル2は、例えば、地中に埋設されるOFケーブル等の電力ケーブル(送電線)である。電力ケーブル2は、例えば、変電所と、電力供給先との間に敷設された電力ケーブルの一部であり、
図1は、マンホール6、7間に架設された部分の電力ケーブル2を示す。
【0019】
電力ケーブル2(2-1~2-6)は、光ファイバー3(3-1~3-6)とともに筒状の管路5内に配設されている。
図1及び
図2では、複数の電力ケーブル2-1~2-6が配線され、電力ケーブル2-1~2-6の夫々が管路5内に、光ファイバー3とともに配線されている。
【0020】
光ファイバー3は、埋設物予防保全システム1では損傷防止用のセンサーとして用いられ、地中に敷設された電力ケーブル2に沿って配置されている。光ファイバー3は、電力ケーブル2の数に対応して配設されていることが好ましく、例えば、複数本の電力ケーブル2が配設されていれば、これら電力ケーブル2毎に、電力ケーブル2の夫々に沿って隣接して光ファイバー3が配設される。
図3に示すように埋設物予防保全システム1のケーブル部では、管路5の夫々に光ファイバー3-1~3-6が挿通されているが、これら光ファイバー3-1~3-6のうち、光ファイバー3-3、3-4をセンサーとして適宜使用してよい。また、それ以外を通信用のものとして用いてもよい。なお、光ファイバー3は予防保全のセンサー用と通信用とを兼用にして、いずれかに適宜選択的に用いるようにしてもよい。
【0021】
光ファイバー3は、既設の電力ケーブルとともに敷設され、通信信号等を送受する既設の光ファイバーを適宜使用することができる。既設の光ファイバー3を使用することにより、埋設物予防保全システム1を構築するために、新たに光ファイバーを敷設する手間を省くことができる。
【0022】
光ファイバー3は、一端部側で、切換スイッチ72を介して監視装置70が接続され、監視装置70により光を入射されるとともに、監視装置70により、光の伝搬状態を監視される。
【0023】
管路5は、電力ケーブル2及び光ファイバー3を敷設する際に電力ケーブル2及び光ファイバー3を保護するものであり、地中に配管されて内部に、電力ケーブル2及び光ファイバー3の配設空間を形成する。管路5は、例えば、鉄筋コンクリート管である。また、管路5は、コンクリートブロックにより複数一体として形成されてもよい。管路5は、筒状の複数の管路を一体にコンクリートブロックとして構成して、長手方向に延在する複数の中空部内に、電力ケーブル2-1~2-6、光ファイバー3-1~3-6を夫々組として配設してもよい。
【0024】
図2に示すように電力ケーブル2(2-1~2-6)は、複数の管路5内に夫々配線されており、電力ケーブル2に沿って光ファイバー3が配線されている。
【0025】
光ファイバー3(3-1~3-6)は、管路5内で、電力ケーブル2の全長に亘って電力ケーブル2とともに配設されている。
【0026】
切替スイッチ72は、監視装置70と、光ファイバー3との接続を切り替え自在であり、この切替スイッチ72の切換により、どの電力ケーブル2(2-1~2-6)に対応する光ファイバー3を選択して、監視装置70に接続する。監視装置70は、どの電力ケーブル2―1~2-6を監視するかを選択する。
【0027】
監視装置70は、光ファイバー3内の光の伝搬状態を監視する。具体的には、監視装置70は、光ファイバー3の一端部から光を入射し、光ファイバー3が直線でない場合等も含めて一端部に戻る錯乱光に基づいて、光の周波数特性、ひずみ、強度を測定して監視し、掘削に関する振動(特に掘削工事で発する音)を検出する。
【0028】
監視装置70は、例えば、OTDR(Optical Time Domain Reflectometry)を用いて、光ファイバー3による光センシングを行う。
【0029】
監視装置70は、光ファイバー3に一端部3aから光を入射する光源部、カプラ、カプラを介して一端部からの後方錯乱光を検出する光検出器、光検出器の検出結果を計測、解析等を行うCPU、記憶部等を有する。なお、CPUは、後方錯乱光に基づいて光ファイバー3を分布計測した波形を取得する。
【0030】
監視装置70は、光を一端部側から入射した光ファイバー3において、一端部側に戻る錯乱光(後方錯乱光)をモニタリングし、光ファイバー3の全長に亘って、長手方向の温度、歪みの分布計測を行っている。
【0031】
監視装置70は、後方錯乱光として、光ファイバー3中に入射した光と同じ波長の散乱光であるレーリー散乱と、入射した光とは別の波長の散乱光であるラマン散乱及びブリルアン散乱とを観測し、夫々の強度、周波数の性質により光ファイバー3のセンシングを行う。
例えば、レーリー錯乱により光ファイバー3の曲がりを計測でき、ラマン錯乱により温度を計測でき、ブリルアン錯乱により歪みを計測できる。
【0032】
監視装置70は、後方錯乱光に基づいて、光ファイバー3の長手方向に延在する部位の夫々の状態を波形として取得し、この波形を、光ファイバー3に沿って同様に配設されている電力ケーブル2の波形として監視し、掘削工事に関する音を検出する。
【0033】
監視装置70は、光ファイバー3を用いて取得した波形において、掘削工事に関する音を含む振動を監視し、光ファイバー3に対応して配設された電力ケーブル2のどの部位で掘削工事が行われているかを判別する。これは、電力ケーブル2が損傷する可能性のある部位を検出することでもある。
【0034】
監視装置70は、光ファイバー3を用いて取得した波形をモニタリングし、外傷が発生しうるノイズ、つまり、掘削工事に関して発生する騒音を検出する。監視装置70は、掘削工事において発生する音、例えば、車両、重機、機器の駆動、道具による作業等により発生する音の振動特性を波形データとして備える。
【0035】
図3は、外傷予防のための掘削に関する振動特性を有する音の波形を示す図である。
監視装置70は、外傷の可能性の判別に用いる波形(音)の一例として、
図3Aはトラックを示す波形(音)であり、走行時の波形である。また、
図3Bは、小型車両(小型トラック)を示す波形(音)であり、走行時の波形である。
図3Cは、クローラ車両を示す波形(音)であり、
図3Dは、重機(例えば、バックホー)を示す波形(音)である。また、
図3Eは、スコップでの掘削作業を示す波形(音)である。また、これら以外にも、工事で使用される機器、重機、車両等の波形(音)を有する。
【0036】
監視装置70は、取得した波形と、予め格納された波形(音)データとを比較して、埋設された電力ケーブル2に外傷を付与する恐れのあるノイズ(掘削工事のノイズ)が発しているかを監視する。
【0037】
なお、埋設物予防保全システム1では、音以外に、電力ケーブル2の発熱状態も着眼しており、監視装置70は、掘削により一部の砂が取り除かれた状態が連続することで発生する土中温度変化(温度勾配)も合せて検出する。すなわち、監視装置70は、光ファイバー3の後方錯乱光により、地中の掘削による地中温度の変化、つまり、掘削箇所での温度変化を検出する。
【0038】
これにより、監視装置70は、振動、振動のうち特に温度勾配、音から、検出された位置での土砂の掘削音を精度よく検出できる。埋設物予防保全システム1では、監視装置70は、外傷を発生させるノイズ(音の波形)であると判定した場合、報知部74を介して、ノイズ発生部位で作業をする作業者に警告して、停止させ、電力ケーブル2の損傷を防止する。
【0039】
報知部74は、監視装置70と無線通信であり、無線通信等を用いてもよいが、有線通信であってもよい。報知部74は、監視装置70から離れた工事現場に位置させれば、監視装置70の判定、あるいは、監視す値70が発する警告を工事現場にいるユーザに迅速に報知できる。このように埋設物予防保全システム1は、工事中断も迅速に行うことができ、埋設物である電力ケーブルの保全を確保できる。
また、監視装置70が報知機能を有してもよい。
【0040】
<埋設物予防保全システム1による電力ケーブルの予防保全>
図4は、埋設物予防保全システムにおいて予防保全を行う場合の一例を示す図であり、
図5は、埋設物予防保全システムにおいて測定された波形の一例を示す図である。
図5において縦軸は振幅の強さ、横軸は時間=監視装置70からの距離と示し、監視装置70は、リアルタイムで光ファイバーにおける光の伝搬状態つまり電力ケーブルに作用する各種の振動を検出(検知)し監視している。
【0041】
図4に示すように、埋設物予防保全システム1において、地中12に電力ケーブル2が埋設された地面30において、例えば、重機(バックホウ)9により水道、ガス等の他企業工事が行われるとする。このとき、電力ケーブル2の周辺では、重機9の駆動、掘削等により、振動(具体的には、工事の際に発する音であり掘削音も含む)Kが発生する。
【0042】
すると、光ファイバー3の一端部3aに接続された監視装置70では、光源により光ファイバー3に一端部3aから光を入射し、光ファイバー3内を通り一端部3aから出射する後方錯乱光を光検出器で検出する。これにより、監視装置70は、電力ケーブル2の状態を示す波形として、
図5に示す光ファイバー3におけるリアルタイムの波形15を取得する。
【0043】
監視装置70は、光ファイバー3を用いて取得したリアルタイムの波形(
図5参照)15においてノイズ15aを検出すると、波形15と、予め設定して格納された掘削工事を示す波形(
図3参照)を比較して、ノイズが掘削工事により発生する振動であると判別する。
【0044】
さらに、監視装置70は、別の工事で発する音が含まれることを判別できれば、更に、ノイズ発生位置における掘削工事の位置の精度を上げることができる。
【0045】
また、監視装置70は、後方錯乱光或いは波形15から、掘削により一部の土砂が取り除かれた状態が連続する(時系列的に続く)ことによる土中温度変化(温度勾配)を検出する。
【0046】
このように、監視装置70は、音と温度変化とにより、掘削工事の位置をピンポイントで絞り、適確に正確に判別できる。なお、監視装置70における音や温度変化による掘削工事の位置の判別は、AI的に行われてもよい。これにより、掘削工事の位置の判別を容易に簡単に精度良く行うことができ、掘削工事の位置での作業者、管理者に対して、無線等により、地中に電力ケーブル2が埋設されていることを警告できる。これにより工事を中止、工事内容の変更等の対策を講じて、地中の電力ケーブル2を外傷させないように対応できる。
【0047】
<作用効果>
埋設物予防保全システム1は、地中に埋設される長尺の電力ケーブル2及び光ファイバー3と、監視装置70とを有する。光ファイバー3は、電力ケーブル2とともに管路5内に配設されて地中に埋設され、電力ケーブル2の延在方向に沿って配設されている。監視装置70は、光ファイバー3の一端部3aに接続され、一端部3aから光が入射された光ファイバー3の一端部3aから出射される後方錯乱光を監視し、後方錯乱光に基づいて地中を掘削する振動を判別する。そして、判別した掘削振動の発生箇所に対応する電力ケーブル2の部位を検出できる。
このように埋設物予防保全システム1は、簡易な構成で、電力ケーブル2(地中埋設物)に対応する掘削位置を、精度高く正確に検出して報知することができる。
【0048】
埋設物予防保全システム1によれば、従来は事後保全であった地中埋設物であった電力ケーブルの外傷防止を予防的に行うことができる。
【0049】
また、埋設物予防保全システム1によれば、振動(音)に加え、温度変化を示す土中音の変化を検出(検知)することで、正確な掘削位置の精度を向上できる。
また、24時間連続で監視して、光ファイバーにおける光伝搬の状況変化を常に記憶し学習し、データベースとして格納し、生じた事象に応じたデータを適宜用いて、特定箇所を判別する際のサンプルを多くして掘削工事の判別精度が向上する。
【0050】
なお、光ファイバー3は、既に埋設済みのものがあれば、既設の光ファイバーとともに既設済のケーブルを用いたシステムを用いて埋設物予防保全システム1を構築することができる。
【0051】
埋設物予防保全システム1によれば、切換スイッチ72により、監視線路を切替えることで、一つのシステムで多くの送電線路である電力ケーブル2-1~2-6を監視できる。
【0052】
また、埋設物予防保全システム1が電力ケーブル2-1~2-6に異常を検知した場合、24時間指定された箇所及び連絡機器(携帯等)に情報を発信するように構成すれば、迅速に応動要請が可能となる。
なお、埋設物予防保全システム1における電力ケーブルは、海底に敷設される電力ケーブルとしてもよい。
【0053】
更に、埋設物予防保全システム1によれば、例えば、地中埋設物である電力ケーブルに外傷がある場合、これに対応した位置での光ファイバー3の屈曲を判別することにより、ピンポイントで電力ケーブルの外傷位置を検出できる。これにより、補修施工する際に余計な箇所での作業が不要となり、補修施工の簡素化及び省力化を図ることができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る埋設物予防保全システムは、地中埋設物の外傷を防止するために、簡易な構成で埋設物のどの箇所でも掘削位置を精度高く正確に検出して報知できる効果を有し、地中ケーブルに用いるものとして有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 埋設物予防保全システム
2、2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6 電力ケーブル
3、3-1、3-2、3-3、3-4、3-5、3-6 光ファイバー
3a 一端部
5 管路
6、7 マンホール
9 重機
12 地中
15 波形
15a ノイズ
30 地面
70 監視装置
72 切換スイッチ
74 報知部
K 振動