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特開2024-139140運動解析装置、運動解析方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139140
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】運動解析装置、運動解析方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
A61B5/11 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049951
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 佳嗣
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA12
4C038VB14
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】移動中のユーザが行った足を地面に着地させる着地動作が左右何れの足によって行われたかを、ユーザの移動速度にかかわらず精度よく判定できる運動解析装置、運動解析方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】運動解析装置1の前額面角度左右推定部105は、足を地面に着地させる着地動作を繰り返し行いながら移動しているユーザの進行方向に平行な軸周りの腰の回転角度である腰の前額面角度の経時推移を表す前額面角度波形において、着地動作が行われた着地タイミング以後の所定期間に、腰の前額面角度が極大値と極小値との何れになったかを判定することにより左右何れの足が該着地動作を行ったかを推定する。左右判定部107は、前額面角度左右推定部105による推定の結果に基づいて左右何れの足が着地動作を行ったかを判定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足を地面に着地させる着地動作を繰り返し行いながら移動しているユーザの進行方向に平行な軸周りの腰の回転角度である腰の前額面角度の経時推移を表す前額面角度波形において、着地動作が行われた着地タイミング以後の所定期間に、腰の前額面角度が極大値と極小値との何れになったかを判定することにより左右何れの足が該着地動作を行ったかを推定する前額面角度左右推定手段と、
前記前額面角度左右推定手段による推定の結果に基づいて左右何れの足が着地動作を行ったかを判定する左右判定手段と、
を備える、
ことを特徴とする運動解析装置。
【請求項2】
鉛直方向に平行な軸周りの腰の回転角度である腰の水平面角度の経時推移を表す水平面角度波形において、着地タイミング以後に腰の水平面角度が増加したか減少したかを判定することにより左右何れの足が該着地タイミングに着地動作を行ったかを推定する水平面角度左右推定手段をさらに備え、
前記左右判定手段は、前記前額面角度左右推定手段による推定の結果と、前記水平面角度左右推定手段による推定の結果と、に基づいて左右何れの足が着地動作を行ったかを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運動解析装置。
【請求項3】
前記前額面角度左右推定手段は、
左足が着地動作を行ったと推定したことに応答して、該推定の結果を示す該着地動作の前額面角度左右推定スコアを第1の値に決定し、
右足が着地動作を行ったと推定したことに応答して、該推定の結果を示す該着地動作の前額面角度左右推定スコアを、正負の符号が前記第1の値の正負の符号と反対であり、かつ、基準値との差の絶対値が前記第1の値と該基準値との差の絶対値に等しい第2の値に決定し、
前記水平面角度左右推定手段は、
左足が着地動作を行ったと推定したことに応答して、該推定の結果を示す該着地動作の水平面角度左右推定スコアを第3の値に決定し、
右足が着地動作を行ったと推定したことに応答して、該推定の結果を示す該着地動作の水平面角度左右推定スコアを第4の値に決定し、
前記左右判定手段は、着地動作の前額面角度左右推定スコアに、該着地動作の水平面角度左右推定スコアを加算することにより、該着地動作の統合左右推定スコアを算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の運動解析装置。
【請求項4】
前記第1の値と前記第3の値とは互いに等しく、
前記第2の値と前記第4の値とは互いに等しい、
ことを特徴とする請求項3に記載の運動解析装置。
【請求項5】
着地動作ごとに、着地動作が行われた着地タイミングと、前記左右判定手段により算出された着地動作の統合左右推定スコアと、を示す着地動作データを記憶する着地動作データ記憶手段をさらに備え、
前記左右判定手段は、一の着地タイミングに行われた着地動作の統合左右推定スコアに、前記着地動作データに含まれる、基準タイミングより後であり、時系列的に該一の着地タイミングから奇数個前の各着地タイミングに行われた着地動作の統合左右推定スコアを、正負の符号を反転させた後に加算し、前記着地動作データに含まれる、基準タイミングより後であり、時系列的に該一の着地タイミングから偶数個前の各着地タイミングに行われた着地動作の統合左右推定スコアを、正負の符号を反転させることなく加算することにより、該一の着地タイミングに行われた着地動作の累積統合左右推定スコアを算出し、該累積統合左右推定スコアと前記基準値との大小関係に基づいて、左右何れの足が該一の着地タイミングに着地動作を行ったかを判定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の運動解析装置。
【請求項6】
ユーザが停止した停止タイミングを検出する停止タイミング検出手段をさらに備え、
前記左右判定手段は、一の着地タイミングに行われた着地動作の統合左右推定スコアに、前記着地動作データに含まれる、前記停止タイミング検出手段により検出された該一の着地タイミングより前の停止タイミングのうち時系列的に最も後の停止タイミングである前記基準タイミングより後であり、時系列的に該一の着地タイミングから奇数個前の各着地タイミングに行われた着地動作の統合左右推定スコアを、正負の符号を反転させた後に加算し、前記着地動作データに含まれる、前記基準タイミングより後であり、時系列的に該一の着地タイミングから偶数個前の各着地タイミングに行われた着地動作の統合左右推定スコアを、正負の符号を反転させることなく加算することにより、該一の着地タイミングに行われた着地動作の累積統合左右推定スコアを算出する、
ことを特徴とする請求項5に記載の運動解析装置。
【請求項7】
鉛直方向に平行な軸周りの腰の回転角度である腰の水平面角度の経時推移を表す水平面角度波形において、着地タイミング以後に腰の水平面角度が増加したか減少したかを判定することにより左右何れの足が該着地タイミングに着地動作を行ったかを推定する水平面角度左右推定手段をさらに備え、
前記左右判定手段は、
ユーザの移動速度が速度閾値以上である場合、前記前額面角度左右推定手段による推定の結果と、前記水平面角度左右推定手段による推定の結果と、に基づいて左右何れの足が着地動作を行ったかを判定し、
ユーザの移動速度が前記速度閾値未満である場合、前記前額面角度左右推定手段による推定の結果のみに基づいて左右何れの足が着地動作を行ったかを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運動解析装置。
【請求項8】
足を地面に着地させる着地動作を繰り返し行いながら移動しているユーザの進行方向に平行な軸周りの腰の回転角度である腰の前額面角度の経時推移を表す前額面角度波形において、着地動作が行われた着地タイミング以後の所定期間に、腰の前額面角度が極大値と極小値との何れになったかを判定することにより左右何れの足が該着地動作を行ったかを推定する前額面角度左右推定ステップと、
前記前額面角度左右推定ステップにおける推定の結果に基づいて左右何れの足が着地動作を行ったかを判定する左右判定ステップと、
を含む、
ことを特徴とする運動解析方法。
【請求項9】
コンピュータを、
足を地面に着地させる着地動作を繰り返し行いながら移動しているユーザの進行方向に平行な軸周りの腰の回転角度である腰の前額面角度の経時推移を表す前額面角度波形において、着地動作が行われた着地タイミング以後の所定期間に、腰の前額面角度が極大値と極小値との何れになったかを判定することにより左右何れの足が該着地動作を行ったかを推定する前額面角度左右推定手段、
前記前額面角度左右推定手段による推定の結果に基づいて左右何れの足が着地動作を行ったかを判定する左右判定手段、
として機能させる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動解析装置、運動解析方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中のユーザの体の左右バランスを測定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、走行中のユーザの体の動きを慣性センサにより検出し、この検出の結果に基づいて右足の走行周期と左足の走行周期とを識別し、右足の走行周期におけるユーザの走行状態を示す指標の値と左足の走行周期における該指標の値との差を表す左右差率を算出する運動解析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-32611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の運動解析装置は、慣性センサにより検出された、鉛直方向に平行な軸周りのユーザの角速度であるヨー方向の角速度が正であれば左足の走行周期と判定し、ヨー方向の角速度が負であれば右足の走行周期と判定する。しかしながら、ユーザが低速で走行している場合、左足の走行周期であるにもかかわらずヨー方向の角速度が負になったり、右足の走行周期であるにもかかわらずヨー方向の角速度が正になったりすることがある。この場合、特許文献1に記載の運動解析装置は、左右何れの走行周期であるかを精度よく識別できず、この識別の結果に基づいて算出される左右差率の正確性が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、移動中のユーザが行った足を地面に着地させる着地動作が左右何れの足によって行われたかを、ユーザの移動速度にかかわらず精度よく判定できる運動解析装置、運動解析方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る運動解析装置は、
足を地面に着地させる着地動作を繰り返し行いながら移動しているユーザの進行方向に平行な軸周りの腰の回転角度である腰の前額面角度の経時推移を表す前額面角度波形において、着地動作が行われた着地タイミング以後の所定期間に、腰の前額面角度が極大値と極小値との何れになったかを判定することにより左右何れの足が該着地動作を行ったかを推定する前額面角度左右推定手段と、
前記前額面角度左右推定手段による推定の結果に基づいて左右何れの足が着地動作を行ったかを判定する左右判定手段と、
を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、移動中のユーザが行った足を地面に着地させる着地動作が左右何れの足によって行われたかを、ユーザの移動速度にかかわらず精度よく判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る運動解析装置をユーザに装着した状態を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る前額面角度の方向の規定を説明するための図である。
図3】本発明の実施の形態に係る水平面角度の方向の規定を説明するための図である。
図4】本発明の実施の形態に係る運動解析装置のハードウェア構成を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係る運動解析装置の機能的構成を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る停止タイミングリストの一例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態に係る着地動作リストの一例を示す図
図8】本発明の実施の形態に係る運動解析装置が実行する運動解析処理を説明するためのフローチャート
図9】本発明の実施の形態に係る運動解析装置が実行する前額面角度左右推定処理を説明するためのフローチャート
図10】本発明の実施の形態に係る運動解析装置が実行する水平面角度左右推定処理を説明するためのフローチャート
図11】本発明の実施の形態に係る運動解析装置が実行する左右判定処理を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る運動解析装置、運動解析方法及びプログラムについて、図面を参照しながら説明する。図中、互いに同一の構成には、互いに同一の符号を付す。
【0010】
図1に示す本実施の形態に係る運動解析装置1は、ベルトによってユーザの腰の背面中央部に装着され、歩行中のユーザの体の動きを、内蔵した後述する加速度センサ15及び角速度センサ16により検出する。なお、これは一例に過ぎず、運動解析装置1の装着位置は、ユーザの体の動きを検出可能な任意の位置であってよいし、運動解析装置1の装着方法は、任意である。運動解析装置1は、この検出の結果に基づき、歩行中に繰り返し行われる、足を地面に着地させる着地動作が、左右何れの足によって行われたかを判定する左右判定を行う。運動解析装置1は、この左右判定の結果に基づき、歩行中のユーザの体の左右バランスを示す指標を算出する。
【0011】
理解を容易にするため、ワールド座標系である図1に示すXYZ直交座標系を設定する。X軸は、ユーザの体の左右方向に平行に設定されている。ユーザの左手方向を+X軸方向とする。Y軸は、ユーザが移動する進行方向に平行に設定されている。進行方向の反対方向を+Y軸方向とする。Z軸は、鉛直方向Gに平行に設定されている。鉛直方向上向きを+Z軸方向とする。
【0012】
後述するように、運動解析装置1は、ユーザの体の前額面内における腰の回転角度である腰のY軸周りの回転角度の経時推移と、ユーザの体の水平面内における腰の回転角度である腰のZ軸周りの回転角度の経時推移と、を参酌して左右判定を行う。以下、腰のY軸周りの回転角度を腰の前額面角度と称し、腰のZ軸周りの回転角度を腰の水平面角度と称する。本実施の形態では、図2に示すように、+Y軸方向から見て時計回りの方向を前額面角度αの正の方向とする。また、本実施の形態では、図3に示すように、+Z軸方向から見て反時計回りの方向を水平面角度βの正の方向とする。また、本実施の形態では、+X軸方向から見て時計回りの方向をX軸周りの回転角度の正の方向とする。
【0013】
運動解析装置1は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)であり、各種処理を実行するプロセッサ10と、RAM(Random Access Memory)を備え、データ及びプログラムを一時的に記憶する主記憶部11と、ファームウェア及びデータを記憶するROM(Read Only Memory)12と、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを備え、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを備え、データ及びプログラムを記憶する補助記憶部13と、RTC(Real Time Clock)を備え、計時を行う計時部14と、ユーザの体の加速度を検出する加速度センサ15と、ユーザの体の角速度を検出する角速度センサ16と、ユーザによる入力を受け付ける操作受付部17と、各種画像を表示する表示部18と、外部の機器との間でデータの送受信を行う通信部19と、プロセッサ10~通信部19を相互に接続する、データ及びコマンドの伝送経路であるシステムバス20と、を備える。
【0014】
加速度センサ15は、センサ座標系である図1に示すXsYsZs直交座標系におけるユーザの加速度を検出し、検出結果を表す加速度信号を出力する。具体的に、加速度センサ15は、3軸加速度センサであり、Xs軸方向、Ys軸方向及びZs軸方向のユーザの加速度を検出する。図2に戻り、角速度センサ16は、XsYsZs座標系におけるユーザの腰の角速度を検出し、検出結果を表す角速度信号を出力する。具体的に、角速度センサ16は、3軸角速度センサであり、Xs軸、Ys軸及びZs軸周りのユーザの腰の角速度を検出する。
【0015】
上述したハードウェア構成を備える運動解析装置1は、機能的に、図5に示すように、慣性データ取得部100~左右バランス指標情報出力部110を備える。停止タイミング検出部103は、停止タイミング検出手段の一例である。前額面角度左右推定部105は、前額面角度左右推定手段の一例である。水平面角度左右推定部106は、水平面角度左右推定手段の一例である。左右判定部107は、左右判定手段の一例である。着地動作リスト記憶部108は、着地動作データ記憶手段の一例である。
【0016】
慣性データ取得部100、着地動作検出部102、停止タイミング検出部103、前額面角度左右推定部105、水平面角度左右推定部106、左右判定部107、左右バランス指標算出部109及び左右バランス指標情報出力部110は、プロセッサ10によって実現される。すなわち、プロセッサ10は、補助記憶部13に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの各部として機能する。慣性データ記憶部101、停止タイミングリスト記憶部104及び着地動作リスト記憶部108は、補助記憶部13によって実現される。すなわち、これらの各部は、補助記憶部13の記憶領域に構築される。
【0017】
慣性データ取得部100は、加速度センサ15により出力された加速度信号からX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向におけるユーザの加速度の時系列データを取得する。また、慣性データ取得部100は、角速度センサ16により出力された角速度信号からX軸、Y軸及びZ軸周りのユーザの腰の角速度の時系列データを取得する。慣性データ記憶部101は、慣性データ取得部100により取得された、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のユーザの加速度の時系列データと、X軸、Y軸及びZ軸周りのユーザの腰の角速度の時系列データと、を記憶する。
【0018】
着地動作検出部102は、着地動作が行われた着地タイミングを検出することにより、着地動作を検出する。具体的に、着地動作検出部102は、着地動作検出部102は、Z軸方向のユーザの加速度の経時推移を示すZ軸加速度波形中のZ軸方向の加速度が極大値となるZ軸加速度極大値タイミングを特定し、Y軸方向のユーザの加速度の経時推移を示すY軸加速度波形中において該Z軸加速度極大値タイミングから時間軸の負の方向に走査して、最初にY軸方向の加速度が極大値となるタイミングを着地タイミングとして検出する。なお、ここで述べた着地タイミングの検出方法は一例に過ぎず、着地動作検出部102は、任意の方法で着地タイミングを検出することができる。
【0019】
停止タイミング検出部103は、ユーザが停止した停止タイミングを検出する。停止タイミングリスト記憶部104は、停止タイミング検出部103による検出の結果を表す停止タイミングリストD10を記憶する。停止タイミングリストD10は、図6に例示するように、停止タイミングの識別情報の一例である停止タイミングの名称を表す「停止タイミング名」と、該停止タイミングとして検出された時刻を表す「停止タイミング」と、を互いに対応付けて時系列順に含む。
【0020】
図5に戻り、前額面角度左右推定部105は、左右何れの足が着地動作を行ったかを腰の前額面角度αの経時推移に基づいて推定する。左足が地面に着地すると、腰の左右方向の端部のうち左側の端部が挙上し、腰が、Y軸の周りで、+Y軸方向から見て時計回りに回転する。これにより、腰の前額面角度αの経時推移を示す前額面角度波形において、着地タイミング以後に腰の前額面角度αが極大値となる。少なくとも、前額面角度波形において、着地タイミングに対応する基準区間内で腰の前額面角度αが極大値となる。例えば、着地タイミングに対応する基準区間は、該着地タイミングを始点とし、該着地タイミングと時系列的に該着地タイミングから1個後の着地タイミングとの真ん中のタイミングを終点とする区間である。なお、ここで述べた基準区間の設定方法は一例に過ぎず、着地タイミングに対応する基準区間は、任意に設定できる。基準区間は、所定期間の一例である。以下、時系列的に一の着地タイミングから1個後の着地タイミングを、該一の着地タイミングの次の着地タイミングと称する。右足が地面に着地すると、腰の右側端部が挙上し、腰が、Y軸の周りで、+Y軸方向から見て反時計回りに回転する。これにより、前額面角度波形において、着地タイミング以後に腰の前額面角度αが極小値となる。少なくとも、前額面角度波形において、着地タイミングに対応する基準区間内で腰の前額面角度αが極小値となる。
【0021】
前額面角度左右推定部105は、着地タイミングに対応する基準区間の前額面角度波形において腰の前額面角度αが極大値と極小値との何れになったかを判定することにより、前額面角度波形において該着地タイミング以後に腰の前額面角度αが極大値と極小値との何れになったかを判定し、左右何れの足が該着地タイミングに着地動作を行ったかを推定する。前額面角度左右推定部105は、推定の結果を示す前額面角度左右推定スコアを決定する。
【0022】
水平面角度左右推定部106は、左右何れの足が着地動作を行ったかを腰の水平面角度βの経時推移に基づいて推定する。歩行中、左足が地面に着地すると、その直後に右足が踏み出され、腰が、Z軸の周りで、+Z軸方向から見て反時計回りに回転する。これにより、腰の水平面角度βの経時推移を示す水平面角度波形において、着地タイミング以後に腰の水平面角度βが増加する。少なくとも、水平面角度波形において、着地タイミングに対応する第2基準区間内で腰の水平面角度βが増加する。歩行中、右足が地面に着地すると、その直後に左足が踏み出され、腰が、Z軸の周りで、+Z軸方向から見て時計回りに回転する。これにより、水平面角度波形において、着地タイミング以後に腰の水平面角度βが減少する。少なくとも、水平面角度波形において、着地タイミングに対応する第2基準区間内で腰の水平面角度βが減少する。
【0023】
例えば、着地タイミングに対応する第2基準区間は、該着地タイミングから該着地タイミングの次の着地タイミングまでの区間においてZ座標が最も小さくなるタイミングとZ座標が最も大きくなるタイミングとの真ん中のタイミングを始点とする区間である。着地タイミングに対応する第2基準区間の終点は、例えば、該着地タイミングから該着地タイミングの次の着地タイミングまでの区間においてZ座標が最も大きくなるタイミングと、該次の着地タイミングから時系列的に該着地タイミングから2個後の着地タイミングまでの区間においてZ座標が最も小さくなるタイミングと、の真ん中のタイミングである。なお、ここで述べた第2基準区間の設定方法は一例に過ぎず、着地タイミングに対応する基準区間は、任意に設定できる。腰のZ座標が最も小さくなるタイミングは、鉛直方向Gにおける腰の位置が最も低くなるタイミングであり、腰のZ座標が最も大きくなるタイミングは、鉛直方向Gにおける腰の位置が最も高くなるタイミングである。
【0024】
水平面角度左右推定部106は、着地タイミングに対応する第2基準区間の水平面角度波形において腰の水平面角度βが増加したか減少したかを判定することにより、水平面角度波形において該着地タイミング以後に腰の水平面角度βが増加したか減少したかを判定し、左右何れの足が該着地タイミングに着地動作を行ったかを推定する。水平面角度左右推定部106は、推定の結果を示す水平面角度左右推定スコアを決定する。
【0025】
左右判定部107は、前額面角度左右推定部105による推定の結果と、水平面角度左右推定部106による推定の結果と、を統合して左右判定を行う。具体的に、左右判定部107は、前額面角度左右推定スコアを水平面角度左右推定スコアに加算することにより、これらの推定の結果を統合した結果を示す統合左右推定スコアを算出し、この統合左右推定スコアに基づいて左右判定を行う。左右判定部107は、互いに異なる2種類の方法による推定の結果を統合して左右判定を行うことで、1種類の左右推定の結果のみに基づいて左右判定を行う場合よりも左右判定の精度を向上させることができる。さらに、左右判定部107は、前額面角度左右推定部105による推定の結果を参酌して左右判定を行うことにより、ユーザの移動速度にかかわらず、精度よく左右判定を行うことができる。
【0026】
具体的に、ユーザが低速(例えば、0.2m/s)で歩行している場合、着地タイミングに対応する第2基準区間の水平面角度波形において腰の水平面角度βの顕著な増減が生じないことがある。この場合、水平面角度左右推定部106による推定の精度が低下してしまう虞がある。しかし、このような場合であっても、この着地タイミングに対応する基準区間の前額面角度波形においては、腰の前額面角度αが極値となる可能性が高い。ユーザが低速で歩行しており、水平面角度βの顕著な増減が生じない場合であっても前額面角度αが極値となる可能性が高いことから、前額面角度左右推定部105による推定は、水平面角度左右推定部106による推定に比べて、ユーザの低速歩行に対してロバストである。従って、左右判定部107は、前額面角度左右推定部105による推定の結果に基づいて左右判定を行うことにより、ユーザが低速で歩行している場合であっても精度よく左右判定を行うことができる。
【0027】
着地動作リスト記憶部108は、着地動作リストD11を記憶する。着地動作リストD11は、着地動作検出部102により検出された着地動作ごとに、前額面角度左右推定部105による推定の結果と、水平面角度左右推定部106による推定の結果と、左右判定部107による左右判定の結果と、を時系列順に示す。着地動作リストD11は、着地動作データの一例である。具体的に、着地動作リストD11は、図7に例示するように、着地動作の識別情報の一例である着地動作の名称を表す「着地動作名」と、該着地動作の着地タイミングとして検出された時刻を表す「着地タイミング」と、該着地動作の前額面角度左右推定スコアを表す「前額面角度左右推定スコア」と、該着地動作の水平面角度左右推定スコアを表す「水平面角度左右推定スコア」と、該着地動作の統合左右推定スコアを表す「統合左右推定スコア」と、該着地動作の左右判定の結果を表す「左右判定結果」と、を互いに対応付けて時系列順に含む。「左右判定結果」には、左右判定部107による左右判定の結果に応じて、左足が着地動作を行ったと判定されたことを表す「左足」と、右足が着地動作を行ったと判定されたことを表す「右足」と、左右判定が行われなかったことを表す「判定なし」と、の何れかが登録される。
【0028】
図5に戻り、左右バランス指標算出部109は、左右判定部107による左右判定の結果に基づいて、歩行中のユーザの体の左右バランスを表す指標の一例である、下記の数式1で表されるピッチ左右差率を算出する。数式1中、Aは、ピッチ左右差率を表し、Bは、左足のピッチの平均値を表し、Cは、右足のピッチの平均値を表す。ピッチは、単位時間(本実施の形態では、1分間)あたりの歩数であり、歩行中のユーザの運動状態を表す指標の一例である。
A=B/C ・・・(数式1)
【0029】
左右バランス指標算出部109は、着地動作リストD11を参照し、右足が着地動作を行った着地タイミングから、左足が着地動作を行った、該着地タイミングの次の着地タイミングまでの時間の平均値を算出し、この平均値で上述した単位時間を除算することにより、左足のピッチの平均値Bを算出する。同様に、左右バランス指標算出部109は、左足が着地動作を行った着地タイミングから、右足が着地動作を行った、該着地タイミングの次の着地タイミングまでの時間の平均値を算出し、この平均値で上述した単位時間を除算することにより、右足のピッチの平均値Cを算出する。左右バランス指標算出部109は、算出した左足のピッチの平均値Bと右足のピッチの平均値Cとを上記の数式1に代入することにより、ピッチ左右差率Aを算出する。
【0030】
左右バランス指標情報出力部110は、左右バランス指標算出部109により算出されたピッチ左右差率Aを示す左右バランス指標情報を出力する。具体的に、左右バランス指標情報出力部110は、左右バランス指標情報を表す画像を表示部18に表示する。
【0031】
以下、上述したハードウェア構成及び機能的構成を備える運動解析装置1が実行する運動解析処理について説明する。ユーザは静止しており、運動解析装置1は、ユーザの腰の背中側中央部に装着されているものとする。慣性データ記憶部101には、データが記憶されていないものとする。停止タイミングリスト記憶部104に記憶された停止タイミングリストD10と、着地動作リスト記憶部108に記憶された着地動作リストD11と、にはデータが登録されていないものとする。この状態において、ユーザが、操作受付部17を操作することにより運動解析処理の開始を指示すると、プロセッサ10が、図8のフローチャートに示す運動解析処理を開始する。なお、ユーザは、運動解析処理の開始を指示した後に歩き始めるものとする。
【0032】
図8のフローチャートに示す運動解析処理が開始されると、プロセッサ10が、主記憶部11が備えるRAMの記憶領域に設けられた、ユーザが静止しているか否かを示す静止フラグをクリアしてオフ状態にセットする初期化処理を実行する(ステップS101)。続いて、慣性データ取得部100が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のユーザの加速度の時系列データと、X軸、Y軸及びZ軸周りのユーザの腰の角速度の時系列データと、の取得を開始する(ステップS102)。
【0033】
以後、慣性データ取得部100は、予め設定されたサンプリング周期(本実施の形態では、5ミリ秒)が経過するごとに、加速度センサ15から出力された加速度信号と、角速度センサ16から出力された角速度信号と、をサンプリングする。慣性データ取得部100は、取得した加速度信号を、サンプリング時刻を示すデータに対応付けることによりXs軸方向、Ys軸方向及びZs軸方向のユーザの加速度の時系列データを生成し、取得した角速度信号を、サンプリング時刻を示すデータに対応付けることによりXs軸、Ys軸及びZs軸周りのユーザの腰の角速度の時系列データを生成する。
【0034】
慣性データ取得部100は、重力方向に対するZs軸の傾斜を推定し、Zs軸を重力方向に平行になるように回転させることにより、取得したXsYsZs座標系における加速度及び角速度の時系列データをXYZ座標系における加速度及び角速度の時系列データへ座標変換する。この際、慣性データ取得部100は、加速度センサ15の3軸出力と、角速度センサ16の3軸出力と、をカルマンフィルタ又はローパスフィルタに入力することにより、地面に対する、加速度の3軸データと、角速度の3軸データと、を算出して重力方向の推定を行う。慣性データ取得部100は、上述の座標変換により得られたX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の加速度の時系列データと、X軸、Y軸及びZ軸周りの角速度の時系列データと、を慣性データ記憶部101に逐次格納する。
【0035】
次に、プロセッサ10は、操作受付部17がユーザによる運動解析処理の終了指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103でNoと判定された場合(ステップS103;No)、停止タイミング検出部103が、ユーザが静止しているか否かを判定する(ステップS104)。具体的に、停止タイミング検出部103は、Y軸方向の加速度の時系列データを慣性データ記憶部101から読み出し、積分することによりY軸方向のユーザの速度の時系列データを取得し、取得した速度の時系列データが示す現在のY軸方向のユーザの速度が0でなければ、ユーザが静止していないと判定する(ステップS104;No)。続いて、停止タイミング検出部103は、静止フラグがオン状態であるか否かを判定する(ステップS105)。ステップS105でNoと判定された場合(ステップS105;No)、処理はステップS112へ移る。ステップS105でYesと判定すると(ステップS105;Yes)、停止タイミング検出部103は、静止フラグをクリアしてオフ状態にセットする(ステップS106)。その後、処理はステップS112へ移る。
【0036】
ステップS104において、現在のY軸方向のユーザの速度が0であれば、停止タイミング検出部103は、ユーザが静止していると判定し(ステップS104;Yes)、静止フラグがオン状態であるか否かを判定する(ステップS107)。ステップS107でYesと判定された場合(ステップS107;Yes)、処理はステップS112へ移る。ステップS107でNoと判定すると(ステップS107;No)、停止タイミング検出部103は、静止フラグをオン状態にセットし(ステップS108)、現在時刻を停止タイミングとして検出する(ステップS109)。このような構成により、停止タイミング検出部103は、歩行していたユーザが静止したタイミングを停止タイミングとして検出する。なお、ここで述べた停止タイミングの検出方法は一例に過ぎず、停止タイミング検出部103は、任意の方法により停止タイミングを検出することができる。ステップS109において、停止タイミング検出部103は、停止タイミングリストD10に新たな行を追加し、検出した停止タイミングに名称を付し、追加した行の「停止タイミング名」にこの名称を登録し、追加した行の「停止タイミング」にこの停止タイミングを登録する。
【0037】
ステップS112において、プロセッサ10は、ステップS113~S118の処理を前回実行してから、予め設定した処理周期(本実施の形態では、60秒)が経過したか否かを判定する(ステップS112)。なお、ステップS113~S118の処理が未だ実行されていない場合、運動解析処理が開始されてから処理周期が経過したか否かを判定する。ステップS112でNoと判定されると(ステップS112;No)、処理はステップS103へ戻る。ステップS112でYesと判定されると(ステップS112;Yes)、着地動作検出部102が、現在よりも処理周期だけ前の時刻から現在までの処理期間に行われた着地動作を、該着地動作の着地タイミングを検出することにより検出する(ステップS113)。具体的に、着地動作検出部102は、慣性データ記憶部101に記憶された、Z軸方向及びY軸方向の加速度の時系列データを読み出し、読み出した時系列データからZ軸加速度波形及びY軸加速度波形を生成する。着地動作検出部102は、上述した処理期間のZ軸加速度波形においてZ軸方向の加速度が極大値となるZ軸加速度極大値タイミングを特定し、処理期間のY軸加速度波形において、特定されたZ軸加速度極大値タイミングから時間軸の負の方向に走査して、最初にY軸方向の加速度が極大値となるタイミングを着地タイミングとして検出する。
【0038】
ステップS113において、着地動作検出部102は、着地動作リストD11に新たな行を追加し、検出した着地動作に名称を付与し、追加した行の「着地動作名」にこの名称を登録し、該着地タイミングを追加した行の「着地タイミング」に登録する。なお、この時点において、追加された行の「前額面角度左右推定スコア」、「水平面角度左右推定スコア」、「統合左右推定スコア」及び「左右判定結果」には、データが未だ登録されていない。
【0039】
次に、プロセッサ10は、着地動作リストD11に登録されている「左右判定結果」にデータが未だ登録されていない着地動作のうち時系列的に最も前の着地動作を対象着地動作に指定し、該着地動作の着地タイミングを対象着地タイミングに指定する(ステップS114)。続いて、プロセッサ10は、時系列的に対象着地タイミングから2個後の着地タイミングが着地動作リストD11に登録されているか否かを判定することにより、対象着地タイミングに対応する第2基準区間を設定可能であるか否かを判定する(ステップS115)。ステップS115でNoと判定されると(ステップS115;No)、処理はステップS103へ戻る。ステップS115でYesと判定されると(ステップS115;Yes)、前額面角度左右推定部105が、前額面角度左右推定処理を実行する(ステップS116)。
【0040】
図9のフローチャートに示す前額面角度左右推定処理が開始されると、前額面角度左右推定部105は、慣性データ記憶部101に記憶された、Y軸周りのユーザの腰の角速度の時系列データを読み出し、積分することにより、Y軸周りの腰の回転角度である腰の前額面角度αの時系列データを取得し、この腰の前額面角度αの時系列データから前額面角度波形を生成する(ステップS201)。続いて、前額面角度左右推定部105は、対象着地タイミングから次の着地タイミングまでの区間の前額面角度波形における前額面角度αの最大値と最小値との差を算出し、この差が予め設定された基準閾値より大きいか否かを判定する(ステップS202)。本実施の形態において、基準閾値は、実験により求められた、被験者が通常速度(本実施の形態では、0.8m/s)で歩行している際の一の着地タイミングから次の着地タイミングまでの区間の前額面角度波形における前額面角度αの最大値と最小値との差の平均値の30%の値に設定されている。なお、これは一例に過ぎず、基準閾値は、任意に設定することができる。ステップS202でNoと判定すると(ステップS202;No)、前額面角度左右推定部105は、対象着地動作の前額面角度左右推定スコアを、対象着地動作を対象とする推定が行われなかったことを示す0に決定して着地動作リストD11中の対象着地動作に対応する「前額面角度左右推定スコア」に登録する(ステップS208)。その後、処理は運動解析処理へリターンする。このような構成によれば、対象着地タイミングから対象着地タイミングの次の着地タイミングまでの区間の前額面角度波形において前額面角度αの顕著な増減が生じていないにも関わらず、該前額面角度波形に基づいて前額面角度左右推定部105が推定を行うことで推定精度が低下し、左右判定部107による左右判定の精度が低下する可能性を抑制できる。
【0041】
ステップS202でYesと判定すると(ステップS202;Yes)、前額面角度左右推定部105は、対象着地タイミングに対応する基準区間を設定する(ステップS203)。続いて、前額面角度左右推定部105は、ステップS203で設定された基準区間内の前額面角度波形において前額面角度αが極値となるタイミングを全て検出し(ステップS204)、ステップS204で前額面角度αが極値となるタイミングが検出されたか否かを判定する(ステップS205)。ステップS205でNoと判定すると(ステップS205;No)、前額面角度左右推定部105は、対象着地動作の前額面角度左右推定スコアを0に決定する(ステップS208)。ステップS205でYesと判定すると(ステップS205;Yes)、前額面角度左右推定部105は、対象着地タイミングに対応する基準区間の前額面角度波形に含まれる極値のうち、対象着地タイミングにおける前額面角度αとの差の絶対値が最も大きい極値を基準極値に指定する(ステップS206)。
【0042】
続いて、前額面角度左右推定部105は、ステップS206で指定された基準極値が極大値と極小値との何れであるかに応じて、左右何れの足が対象着地動作を行ったかを推定し、対象着地動作の前額面角度左右推定スコアを決定する(ステップS207)。具体的に、基準極値が極大値であれば、前額面角度左右推定部105は、対象着地タイミングに対応する基準区間の前額面角度波形において腰の前額面角度αが極大値になった(すなわち、前額面角度波形において対象着地タイミング以後に腰の前額面角度αが極大値になった)と判定し、左足が対象着地動作を行ったと判定する。これに応答して、前額面角度左右推定部105は、対象着地動作の前額面角度左右推定スコアを、左足が対象着地動作を行ったと推定されたことを示す+1に決定する。+1は、第1の値の一例である。基準極値が極小値であれば、前額面角度左右推定部105は、対象着地タイミングに対応する基準区間の前額面角度波形において腰の前額面角度αが極小値になった(すなわち、前額面角度波形において対象着地タイミング以後に腰の前額面角度αが極小値になった)と判定し、右足が対象着地動作を行ったと判定する。これに応答して、前額面角度左右推定部105は、対象着地動作の前額面角度左右推定スコアを、右足が対象着地動作を行ったと推定されたことを示す-1に決定する。-1は、第2の値の一例である。前額面角度左右推定部105は、ステップS207で決定した前額面角度左右推定スコアを、着地動作リストD11中の対象着地動作に対応する「前額面角度左右推定スコア」に登録する。
【0043】
ステップS207の後、処理は図8のフローチャートに示す運動解析処理へリターンする。図8に示すように、ステップS116の前額面角度左右推定処理に続いて、水平面角度左右推定部106が、水平面角度左右推定処理を実行する(ステップ117)。
【0044】
図10のフローチャートに示す水平面角度左右推定処理が開始されると、水平面角度左右推定部106は、慣性データ記憶部101に記憶された、Z軸周りのユーザの腰の角速度の時系列データを読み出し、積分することにより、Z軸周りの腰の回転角度である腰の水平面角度βの時系列データを取得し、この腰の水平面角度βの時系列データから水平面角度波形を生成する(ステップS301)。続いて、水平面角度左右推定部106は、慣性データ記憶部101に記憶された、Z軸方向のユーザの加速度の時系列データを読み出し、積分することにより、Z軸方向のユーザの速度の時系列データを取得し、このZ軸方向のユーザの速度の時系列データを積分することによりユーザの腰のZ座標の時系列データを取得し、この腰のZ座標の時系列データから腰のZ軸位置波形を生成する(ステップS302)。
【0045】
続いて、水平面角度左右推定部106は、対象着地タイミングから次の着地タイミングまでの区間の水平面角度波形における水平面角度βの最大値と最小値との差を算出し、この差が予め設定された第2基準閾値より大きいか否かを判定する(ステップS303)。本実施の形態において、第2基準閾値は、実験により求められた、被験者が通常速度で歩行している際の一の着地タイミングから次の着地タイミングまでの区間の水平面角度波形における水平面角度βの最大値と最小値との差の平均値の30%の値に設定されている。なお、これは一例に過ぎず、第2基準閾値は、任意に設定することができる。ステップS303でNoと判定すると(ステップS303;No)、水平面角度左右推定部106は、対象着地動作の水平面角度左右推定スコアを、対象着地動作を対象とする推定が行われなかったことを示す0に決定して着地動作リストD11中の対象着地動作に対応する「水平面角度左右推定スコア」に登録する(ステップS307)。その後、処理は運動解析処理へリターンする。このような構成によれば、対象着地タイミングから対象着地タイミングの次の着地タイミングまでの区間の水平面角度波形において水平面角度βの顕著な増減が生じていないにも関わらず、該区間の水平面角度波形に基づいて水平面角度左右推定部106が推定を行うことで推定精度が低下し、左右判定部107による左右判定の精度が低下する可能性を抑制できる。
【0046】
ステップS303でYesと判定すると(ステップS303;Yes)、水平面角度左右推定部106は、対象着地タイミングに対応する第2基準区間を設定する(ステップS304)。続いて、水平面角度左右推定部106は、水平面角度波形中、ステップS304で設定された第2基準区間の始点における水平面角度βと終点における水平面角度βとが互いに異なるか否かを判定する(ステップS305)。ステップS305でNo(第2基準区間の始点の水平面角度βと終点の水平面角度βとが互いに等しい)と判定すると(ステップS305;No)、水平面角度左右推定部106は、対象着地動作の水平面角度左右推定スコアを0に決定する(ステップS307)。
【0047】
ステップS305でYes(第2基準区間の始点の水平面角度βと終点の水平面角度βとが互いに異なる)と判定すると(ステップS305;Yes)、水平面角度左右推定部106は、対象着地タイミングに対応する第2基準区間内の水平面角度波形において水平面角度βが増加しているか減少しているかに応じて、左右何れの足が対象着地動作を行ったかを推定し、対象着地動作の水平面角度左右推定スコアを決定する(ステップS306)。具体的に、対象着地タイミングに対応する第2基準区間の終点の水平面角度βが該第2基準区間の始点の水平面角度βよりも大きければ、水平面角度左右推定部106は、該第2基準区間の水平面角度波形において腰の水平面角度βが増加した(すなわち、水平面角度波形において対象着地タイミング以後に腰の水平面角度βが増加した)と判定し、左足が対象着地動作を行ったと判定する。これに応答して、水平面角度左右推定部106は、対象着地動作の水平面角度左右推定スコアを、左足が対象着地動作を行ったと推定されたことを示す+1に決定する。+1は、第3の値の一例である。対象着地タイミングに対応する第2基準区間の終点の水平面角度βが該第2基準区間の始点の水平面角度βよりも小さければ、水平面角度左右推定部106は、該第2基準区間の水平面角度波形において腰の水平面角度βが減少した(すなわち、水平面角度波形において対象着地タイミング以後に腰の水平面角度βが減少した)と判定し、右足が対象着地動作を行ったと判定する。これに応答して、水平面角度左右推定部106は、対象着地動作の水平面角度左右推定スコアを、右足が対象着地動作を行ったと推定されたことを示す-1に決定する。-1は、第4の値の一例である。水平面角度左右推定部106は、ステップS306で決定した水平面角度左右推定スコアを、着地動作リストD11中の対象着地動作に対応する「水平面角度左右推定スコア」に登録する。
【0048】
ステップS306の後、処理は図8のフローチャートに示す運動解析処理へリターンする。図8に示すように、ステップS117の水平面角度左右推定処理に続いて、左右判定部107が、左右判定処理を実行する(ステップS118)。
【0049】
図11のフローチャートに示す左右判定処理が開始されると、左右判定部107が、着地動作リストD11に登録された対象着地動作の前額面角度左右推定スコアに、着地動作リストD11に登録された対象着地動作の水平面角度左右推定スコアを加算することにより、対象着地動作の統合左右推定スコアを算出する(ステップS401)。左右判定部107は、ステップS401で算出した統合左右推定スコアを、着地動作リストD11中の対象着地動作に対応する「統合左右推定スコア」に登録する。
【0050】
続いて、左右判定部107は、ステップS402~S406の処理を実行することにより、ステップS116及びS117で行われた対象着地動作を対象とする推定の結果と、着地動作リストD11に記録された、対象着地動作より前に行われた着地動作を対象とする過去の推定の結果と、を統合して対象着地動作の左右判定を行う。歩行中、ユーザは左足と右足を交互に踏み出すことから、左右判定部107は、過去の推定の結果を参酌することにより、この規則性を利用して、左右判定の精度を向上させることができる。
【0051】
但し、歩行していたユーザが一旦停止した場合、再び歩き出した際、停止する以前に最後に踏み出した足と反対側の足を踏み出すときもあれば、同じ側の足を踏み出すときもある。つまり、ユーザが停止したタイミングの前後では、上述した規則性が成立しない虞がある。このため、左右判定部107は、統合する過去の推定の結果の範囲を、対象着地タイミングに対応する基準停止タイミングより後に行われた着地動作を対象とする推定の結果に限定する。対象着地タイミングに対応する基準停止タイミングは、停止タイミング検出部103により検出された対象着地タイミングより前の停止タイミングのうち時系列的に最も後の停止タイミングである。基準停止タイミングは、基準タイミングの一例である。これにより、左右判定の精度の低下を抑制し、ユーザの停止に対してロバストに左右判定を行うことができる。
【0052】
具体的に、ステップS402において、左右判定部107は、停止タイミングリスト記憶部104に記憶された停止タイミングリストD10を参照することにより、対象着地タイミングに対応する基準停止タイミングを特定する(ステップS402)。続いて、左右判定部107は、ステップS402で特定した基準停止タイミングより後であり、対象着地タイミングより前の着地タイミングが着地動作リストD11に登録されているか否かを判定する(ステップS403)。ステップS403でNoと判定されると(ステップS403;No)、処理はステップS410へ移る。ステップS403でYesと判定すると(ステップS403;Yes)、左右判定部107は、対象着地動作を対象とする推定の結果と過去の推定の結果とを統合した結果を示す、対象着地動作の累積統合左右推定スコアを算出する(ステップS404)。
【0053】
具体的に、左右判定部107は、着地動作リストD11に登録された、基準停止タイミングより後であり、対象着地タイミングより前の着地タイミングに行われた着地動作を特定する。左右判定部107は、特定した着地動作のうち時系列的に対象着地タイミングから奇数個前の各着地タイミングに行われた着地動作の統合左右推定スコアを、着地動作リストD11を参照することにより特定し、特定した統合左右推定スコアを、正負の符号を反転させた後にステップS401で算出した対象着地動作の統合左右推定スコアに加算する。続いて、左右判定部107は、特定した着地動作のうち時系列的に対象着地タイミングから偶数個前の各着地タイミングに行われた着地動作の統合左右推定スコアを、着地動作リストD11を参照することにより特定し、特定した統合左右推定スコアを、正負の符号を判定させることなく、上記加算により得られた値に加算する。これにより、対象着地動作の累積統合左右推定スコアが算出される。
【0054】
続いて、左右判定部107は、ステップS404で算出された対象着地動作の累積統合左右推定スコアが0であるか否かを判定する(ステップS405)。ステップS405でNoと判定すると(ステップS405;No)、左右判定部107は、累積統合左右推定スコアと0との大小関係に応じて、左右何れの足が対象着地動作を行ったかを判定し、該判定の結果を示すデータを、着地動作リストD11中の対象着地動作に対応する「左右判定結果」に登録する(ステップS406)。具体的に、左右判定部107は、対象着地動作の累積統合左右推定スコアが0より大きければ、左足が対象着地動作を行ったと判定し、「左右判定結果」に「左足」と登録し、対象着地動作の累積統合左右推定スコアが0より小さければ、右足が対象着地動作を行ったと判定し、「左右判定結果」に「右足」と登録する。0は、基準値の一例である。ステップS406の後、処理は運動解析処理へリターンする。
【0055】
ステップS405でYesと判定すると(ステップS405;Yes)、左右判定部107は、ステップS402で特定した基準停止タイミングより後であり、対象着地タイミングより前の着地タイミングに行われた、統合左右推定スコアが0ではない着地動作が着地動作リストD11に登録されているか否かを判定する(ステップS407)。ステップS407でNoと判定されると(ステップS407;No)、処理はステップS410へ移る。ステップS407でYesと判定すると(ステップS407;Yes)、左右判定部107は、着地動作リストD11に登録された、基準停止タイミングより後であり、対象着地タイミングより前の着地タイミングに行われた、統合左右推定スコアが0ではない着地動作のうち、時系列的に最も後の着地タイミングに行われた着地動作を基準着地動作に指定する(ステップS408)。
【0056】
続いて、左右判定部107は、ステップS408で指定した基準着地動作の左右判定の結果と、この基準着地動作が行われた着地タイミングが、時系列的に対象着地タイミングから奇数個前の着地タイミングと偶数個前の着地タイミングとの何れであるかと、に応じて、左右何れの足が対象着地動作を行ったかを判定する(ステップS409)。具体的に、左右判定部107は、着地動作リストD11を参照することにより、基準着地動作の左右判定の結果を特定する。そして、基準着地動作が時系列的に対象着地タイミングから奇数個前の着地タイミングであれば、左右判定部107は、左右の足のうち基準着地動作を行った方と反対の方の足が対象着地動作を行ったと判定する。基準着地動作が時系列的に対象着地タイミングから偶数個前の着地タイミングであれば、左右判定部107は、左右の足のうち基準着地動作を行った方と同じ方の足が対象着地動作を行ったと判定する。左右判定部107は、ステップS409の判定の結果を示すデータを、着地動作リストD11中の対象着地動作に対応する「左右判定結果」に登録する。ステップS409の後、処理は運動解析処理へリターンする。
【0057】
このように、左右判定部107は、ステップS405でNoと判定された場合、すなわち累積統合左右推定スコアと0との大小関係に基づいて左右判定を行うことができない場合、ステップS407~S409の処理を実行することにより、着地動作リストD11に記録された、対象着地動作より前に行われた着地動作を対象とする過去の左右判定の結果を参酌し、上述した、歩行中、ユーザが左足と右足とを交互に踏み出すという規則性を利用して左右判定を行う。この際、上述したように、ユーザが停止したタイミングの前後では、この規則性が成立しない虞があるため、左右判定部107は、参酌する過去の左右判定の結果の範囲を、対象着地タイミングに対応する基準停止タイミングより後に行われた着地動作を対象とする左右判定の結果に限定する。これにより、左右判定の精度の低下を抑制し、ユーザの停止に対してロバストに左右判定を行うことができる。
【0058】
ステップS410において、左右判定部107は、ステップS401で算出した対象着地動作の統合左右推定スコアと0との大小関係に応じて、左右何れの足が対象着地動作を行ったかを判定する(ステップS410)。左右判定部107は、ステップS410の判定の結果を示すデータを、着地動作リストD11中の対象着地動作に対応する「左右判定結果」に登録する。具体的に、左右判定部107は、対象着地動作の統合左右推定スコアが0より大きければ、左足が対象着地動作を行ったと判定して「左右判定結果」に「左足」と登録し、対象着地動作の統合左右推定スコアが0より小さければ、右足が対象着地動作を行ったと判定して「左右判定結果」に「右足」と登録し、対象着地動作の統合左右推定スコアが0であれば、「判定なし」を「左右判定結果」に登録する。
【0059】
ステップS410の後、処理は図8のフローチャートに示す運動解析処理へリターンする。図8に示すように、ステップS118の左右判定処理の実行後、処理はステップS114へ戻る。ステップS103においてYesと判定されると(ステップS103;Yes)、左右バランス指標算出部109が、着地動作リスト記憶部108に記憶された着地動作リストD11が示す各着地動作の左右判定の結果を参照し、上述した数式1に従ってピッチ左右差率Aを算出する(ステップS110)。続いて、左右バランス指標情報出力部110が、ステップS110で算出されたピッチ左右差率Aを示す左右バランス指標情報を表す画像を表示部18に表示し(ステップS111)、運動解析処理を終了する。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態に係る運動解析装置1の前額面角度左右推定部105は、前額面角度波形において、着地動作が行われた着地タイミング以後に、腰の前額面角度αが極大値と極小値との何れになったかを判定することにより左右何れの足が該着地動作を行ったかを推定する。左右判定部107は、前額面角度左右推定部105による推定の結果に基づいて左右判定を行う。このような構成によれば、ユーザの移動速度にかかわらず、精度よく左右判定を行い、ピッチ左右差率Aを精度よく算出できる。
【0061】
(変形例)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、左右判定部107は、前額面角度左右推定部105による推定の結果のみに基づいて左右判定を行ってもよい。具体的に、左右判定部107は、前額面角度左右推定部105により左足が着地動作を行ったと推定されたことに応答して、左足が着地動作を行ったと判定し、前額面角度左右推定部105により右足が着地動作を行ったと推定されたことに応答して、右足が着地動作を行ったと判定すればよい。このような構成によれば、処理負荷を軽減することができる。
【0063】
或いは、左右判定部107は、ユーザの移動速度が予め設定した速度閾値以上である場合、前額面角度左右推定部105による推定の結果と、水平面角度左右推定部106による推定の結果と、に基づいて左右判定を行い、ユーザの移動速度が該速度閾値未満である場合、これらの推定の結果のうち前額面角度左右推定部105による推定の結果のみに基づいて左右判定を行ってもよい。この速度閾値は、実験により求めたユーザの移動速度と水平面角度左右推定部106による推定の精度と相関関係に応じて設定することが好ましい。左右判定部107は、慣性データ記憶部101に記憶されたユーザのY軸方向の加速度の時系列データを積分してユーザのY軸方向の速度の時系列データを取得し、このY軸速度の時系列データを参照することにより、ユーザの移動速度を特定すればよい。このような構成によれば、ユーザの移動速度に応じて好適な方法で左右判定を行い、左右判定の精度を向上させることができる。
【0064】
上記実施の形態では、+Y軸方向から見て時計回りの方向が前額面角度αの正の方向であるものとして説明したが、これは一例に過ぎず、+Y軸方向から見て反時計回りの方向を前額面角度αの正の方向として規定してもよい。
【0065】
上記実施の形態では、+Z軸方向から見て反時計回りの方向が水平面角度βの正の方向であるものとして説明したが、これは一例に過ぎず、+Z軸方向から見て時計回りの方向を水平面角度βの正の方向として規定してもよい。
【0066】
上記実施の形態では、基準値の一例として0を、第1の値の一例として+1を、第2の値の一例として-1を、それぞれ挙げて説明したが、これは一例に過ぎない。基準値及び第1の値は、任意の値であってよい。また、第2の値は、正負の符号が第1の値の正負の符号と反対であり、かつ、基準値との差の絶対値が第1の値と基準値との差の絶対値に等しい任意の値であってよい。
【0067】
上記実施の形態では、第3の値の一例として+1を、第4の値の一例として-1を、それぞれ挙げて説明したが、これは一例に過ぎない。第3の値は、任意の値であってよい。また、第4の値は、正負の符号が第3の値の正負の符号と反対であり、かつ、基準値との差の絶対値が第3の値と基準値との差の絶対値に等しい任意の値であってよい。
【0068】
基準タイミングは、対象着地タイミングより前の任意のタイミングであってよい。一例として、基準タイミングは、時系列的に対象着地タイミングから予め設定した基準個(例えば、5個)前の着地タイミングであってよい。
【0069】
左右バランス指標算出部109は、左右判定部107による左右判定の結果に基づいて歩行中のユーザの体の左右バランスを表す、ピッチ左右差率A以外の指標を算出してもよい。一例として、左右バランス指標算出部109は、左足のストライド(一歩分の歩幅)の平均値と右足のストライドの平均値との差を表すストライド左右差率を算出してもよい。
【0070】
上記実施の形態では、運動解析装置1が、歩行中のユーザの体の動きを対象として、着地動作の検出、各着地動作の左右判定、ユーザの体の左右バランスを示す指標の算出といった処理を行うものとして説明した。しかしながら、これは一例に過ぎず、運動解析装置1は、着地動作を繰り返し実行することにより移動する任意の移動動作を行っている際のユーザの体の動きを対象として上述の処理を行うことができる。一例として、運動解析装置1は、階段を降りる動作を行っている際のユーザの体の動きを対象として上述の処理を行ってもよい。
【0071】
運動解析装置1の機能を複数の装置によって実現してもよい。つまり、図5に示した運動解析装置1の各部の機能を複数の装置によって実現し、これらの装置が協働することにより運動解析装置1として機能してもよい。
【0072】
本発明に係る運動解析装置1の各機能を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置を制御するプロセッサが実行できるように適用することで、当該既存の情報処理装置を本発明に係る運動解析装置1として機能させることができる。
【0073】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【符号の説明】
【0074】
1・・・運動解析装置、10・・・プロセッサ、11・・・主記憶部、12・・・ROM、13・・・補助記憶部、14・・・計時部、15・・・加速度センサ、16・・・角速度センサ、17・・・操作受付部、18・・・表示部、19・・・通信部、20・・・システムバス、100・・・慣性データ取得部、101・・・慣性データ記憶部、102・・・着地動作検出部、103・・・停止タイミング検出部、104・・・停止タイミングリスト記憶部、105・・・前額面角度左右推定部、106・・・水平面角度左右推定部、107・・・左右判定部、108・・・着地動作リスト記憶部、109・・・左右バランス指標算出部、110・・・左右バランス指標情報出力部、α・・・前額面角度、β・・・水平面角度、D10・・・停止タイミングリスト、D11・・・着地動作リスト、G・・・鉛直方向
図1
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