(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139142
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】包装フィルム、包装材および食品包装体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241002BHJP
C08J 9/00 20060101ALI20241002BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20241002BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08J9/00 A
B29C55/12
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049953
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】アールエム東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】正本 琢巳
(72)【発明者】
【氏名】田村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】若木 裕之
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4F074
4F210
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086BA15
3E086BA16
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4F071AA16
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4F210QD25
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4F210QG02
(57)【要約】
【課題】同密度の包装フィルムにおいてヒートシール強度が向上した包装フィルム、包装材および食品包装体を提供する。
【解決手段】オレフィン系重合体を含む二軸延伸フィルム層101を備える包装フィルム100であって、包装フィルム100に対して、示差走査熱量計を用いて、昇温する過程(1stRun)と、降温する過程(降温測定)と、昇温する過程(2ndRun)と、からなる示差走査熱量測定を続けて行ったとき、示差走査熱量測定により得られたDSC曲線2(2ndRun)において吸熱ピークAが観察され、吸熱ピークAにおける融解熱量ΔH[J/g]とし、包装フィルムの密度をD[g/cm
3]としたとき、ΔH/D[(J/g)/(g/cm
3)]が、122.0以下である包装フィルム100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備える包装フィルムであって、
前記包装フィルムに対して、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(1stRun)と、降温速度10℃/分で250℃から-50℃まで降温する過程(降温測定)と、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(2ndRun)と、からなる示差走査熱量測定を続けて行ったとき、
前記示差走査熱量測定により得られたDSC曲線2(2ndRun)において吸熱ピークAが観察され、
前記吸熱ピークAにおける融解熱量ΔH[J/g]とし、前記包装フィルムの密度をD[g/cm3]としたとき、
ΔH/D[(J/g)/(g/cm3)]が、122.0以下である包装フィルム。
【請求項2】
前記吸熱ピークAにおける融解熱量ΔHが、90.0J/g以下である、請求項1に記載の包装フィルム。
【請求項3】
前記吸熱ピークAが、130.0℃以上170.0℃以下の範囲に観察される、請求項1または2に記載の包装フィルム。
【請求項4】
前記包装フィルムの密度Dが0.50g/cm3以上0.90g/cm3以下である、請求項1~3のいずれかに記載の包装フィルム。
【請求項5】
前記包装フィルムの厚みが5.0μm以上50.0μm以下である、請求項1~4のいずれかに記載の包装フィルム。
【請求項6】
前記オレフィン系重合体は、オレフィン共重合体を含む、請求項1~5のいずれかに記載の包装フィルム。
【請求項7】
前記オレフィン共重合体は、プロピレン共重合体を含み、
前記プロピレン共重合体は、プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのブロック共重合体、およびプロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項6に記載の包装フィルム。
【請求項8】
前記プロピレン共重合体は、前記プロピレン共重合体に含まれる全てのモノマー由来の構成単位の合計モル数を100モル%としたとき、炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)由来の構成単位の合計モル数が2.0モル%以上10.0モル%以下である、請求項7に記載の包装フィルム。
【請求項9】
前記オレフィン共重合体のDSC測定による融点は、125℃以上180℃以下の範囲にある、請求項6~8のいずれかに記載の包装フィルム。
【請求項10】
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される、前記オレフィン共重合体のMFRは、0.01g/10分以上20.0g/10分以下である、請求項6~9のいずれかに記載の包装フィルム。
【請求項11】
前記二軸延伸フィルム層に含まれる全ての重合体中のモノマー由来の構成単位の合計モル数を100モル%としたとき、炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)由来の構成単位の合計モル数が2.0モル%以上10.0モル%以下である、請求項1~10のいずれかに記載の包装フィルム。
【請求項12】
前記二軸延伸フィルム層の少なくとも一方の面上にヒートシール層をさらに備える、請求項1~11のいずれかに記載の包装フィルム。
【請求項13】
前記ヒートシール層は前記二軸延伸フィルム層の前記一方の面に直接接するように設けられている、請求項12に記載の包装フィルム。
【請求項14】
前記ヒートシール層は、プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体を含む、請求項12または13に記載の包装フィルム。
【請求項15】
食品用包装フィルムである、請求項1~14のいずれかに記載の包装フィルム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の包装フィルムを用いた包装材。
【請求項17】
請求項16に記載の包装材と、
前記包装材内の食品と、を含む食品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装フィルム、包装材および食品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系フィルムは、加工性、水蒸気バリア性、透明性、機械的強度および剛性等の性能バランスに優れており、例えば、食品を包装するための包装フィルムとして用いられている。
このようなポリオレフィン系フィルムに関する技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、少なくともシール層と発泡層の2層を含む事を特徴とする、ヒートシール性ポリオレフィン系発泡フィルムであって、その厚みが30μm以下の場合にJIS K7105による全光線透過率が15%以下であり、かつシール強度が5.0N/15mm2以上であることを特徴とする、ヒートシール性ポリオレフィン系発泡フィルムが記載されている。
特許文献1に記載のヒートシール性ポリオレフィン系発泡フィルムによれば、ヒートシール性付与と隠蔽性の良好なヒートシール性ポリオレフィン系発泡フィルムが得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、プラスチック包装材は、環境問題の観点からプラスチックの使用量を低減させることが求められている。
プラスチック包装材のプラスチックの使用量を低減させる方法として、例えば、包装材に用いる包装フィルムの密度を低下させる方法が挙げられる。
しかしながら、密度を低下させた包装フィルムは、ヒートシール強度が十分でない場合があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、同密度の包装フィルムにおいてヒートシール強度が向上した包装フィルム、包装材および食品包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下に示す包装フィルム、包装材および食品包装体が提供される。
【0008】
[1]
オレフィン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備える包装フィルムであって、
前記包装フィルムに対して、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(1stRun)と、降温速度10℃/分で250℃から-50℃まで降温する過程(降温測定)と、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(2ndRun)と、からなる示差走査熱量測定を続けて行ったとき、
前記示差走査熱量測定により得られたDSC曲線2(2ndRun)において吸熱ピークAが観察され、
前記吸熱ピークAにおける融解熱量ΔH[J/g]とし、前記包装フィルムの密度をD[g/cm3]としたとき、
ΔH/D[(J/g)/(g/cm3)]が、122.0以下である包装フィルム。
[2]
前記吸熱ピークAにおける融解熱量ΔHが、90.0J/g以下である、前記[1]に記載の包装フィルム。
[3]
前記吸熱ピークAが、130.0℃以上170.0℃以下の範囲に観察される、前記[1]または[2]に記載の包装フィルム。
[4]
前記包装フィルムの密度Dが0.50g/cm3以上0.90g/cm3以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の包装フィルム。
[5]
前記包装フィルムの厚みが5.0μm以上50.0μm以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の包装フィルム。
[6]
前記オレフィン系重合体は、オレフィン共重合体を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載の包装フィルム。
[7]
前記オレフィン共重合体は、プロピレン共重合体を含み、
前記プロピレン共重合体は、プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのブロック共重合体、およびプロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含む、前記[6]に記載の包装フィルム。
[8]
前記プロピレン共重合体は、前記プロピレン共重合体に含まれる全てのモノマー由来の構成単位の合計モル数を100モル%としたとき、炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)由来の構成単位の合計モル数が2.0モル%以上10.0モル%以下である、前記[7]に記載の包装フィルム。
[9]
前記オレフィン共重合体のDSC測定による融点は、125℃以上180℃以下の範囲にある、前記[6]~[8]のいずれかに記載の包装フィルム。
[10]
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される、前記オレフィン共重合体のMFRは、0.01g/10分以上20.0g/10分以下である、前記[6]~[9]のいずれかに記載の包装フィルム。
[11]
前記二軸延伸フィルム層に含まれる全ての重合体中のモノマー由来の構成単位の合計モル数を100モル%としたとき、炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)由来の構成単位の合計モル数が2.0モル%以上10.0モル%以下である、前記[1]~[10]のいずれかに記載の包装フィルム。
[12]
前記二軸延伸フィルム層の少なくとも一方の面上にヒートシール層をさらに備える、前記[1]~[11]のいずれかに記載の包装フィルム。
[13]
前記ヒートシール層は前記二軸延伸フィルム層の前記一方の面に直接接するように設けられている、前記[12]に記載の包装フィルム。
[14]
前記ヒートシール層は、プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体を含む、前記[12]または[13]に記載の包装フィルム。
[15]
食品用包装フィルムである、前記[1]~[14]のいずれかに記載の包装フィルム。
[16]
前記[1]~[15]のいずれかに記載の包装フィルムを用いた包装材。
[17]
前記[16]に記載の包装材と、
前記包装材内の食品と、を含む食品包装体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、同密度の包装フィルムにおいてヒートシール強度が向上した包装フィルム、包装材および食品包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の包装フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【
図2】本実施形態の包装フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図は簡略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、文中の数字の間にある「~」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0012】
[包装フィルム]
図1および
図2は、本実施形態の包装フィルム100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態の包装フィルム100は、オレフィン系重合体を含む二軸延伸フィルム層101を備える包装フィルムであって、包装フィルム100に対して、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(1stRun)と、降温速度10℃/分で250℃から-50℃まで降温する過程(降温測定)と、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(2ndRun)と、からなる示差走査熱量測定を続けて行ったとき、示差走査熱量測定により得られたDSC曲線2(2ndRun)において吸熱ピークAが観察され、吸熱ピークAにおける融解熱量ΔH[J/g]とし、包装フィルムの密度をD[g/cm
3]としたとき、ΔH/D[(J/g)/(g/cm
3)]が、122.0以下である。
【0013】
上述したように、環境問題の観点から、密度を低下させた包装フィルムを用いた包装材が求められている。密度を低下させた包装フィルムを得る方法としては、例えば、二軸延伸フィルム層にボイドを形成する方法が挙げられる。しかしながら、密度を低下させた包装フィルムを用いた包装材は、強度が十分でない場合があった。
本発明者らの検討によれば、包装材の強度を向上させるために、包装フィルムのヒートシール強度を向上させることが有効であることを見出した。
【0014】
さらに、本発明者らの検討によれば、包装材の強度を向上させるために、包装フィルムのヒートシール剥離エネルギーを向上させることが有効であることを見出した。包装フィルムを用いた包装材は、例えば、2枚の包装フィルムのヒートシール層同士を貼り合わせることにより得られる。
しかしながら、従来のボイドが形成された二軸延伸フィルム層を備える包装フィルムを用いた包装材は、強度が低下する傾向にあった。本発明者らは、従来のボイドが形成された二軸延伸フィルム層を備える包装フィルムを用いた包装材では、二軸延伸フィルム層とヒートシール層との層間の強度が弱く、二軸延伸フィルム層とヒートシール層との層間が剥離してしまうことにより、包装材の強度が低下すると考察した。すなわち、本発明者らは、従来のボイドが形成された二軸延伸フィルム層を備える包装フィルムを用いた包装材が剥離する際、二軸延伸フィルム層とヒートシール層との層間が剥離面となっていると考えている。
ここで、本発明者らの検討によれば、包装フィルムのヒートシール剥離エネルギーを向上させると、包装材の強度が向上することを見出した。この理由について、本発明者らは以下のように考察している。
まず、包装フィルムのヒートシール剥離エネルギーを向上させることにより、二軸延伸フィルム層とヒートシール層との層間の強度が向上する。これにより、剥離剤が二軸延伸フィルム層とヒートシール層との層間ではなく、2枚の包装フィルムのヒートシール層同士の界面となる。剥離面が2枚の包装フィルムのヒートシール層同士となることにより、包装材の強度が向上する。
【0015】
本発明者らの検討によれば、包装フィルム100に対して、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(1stRun)と、降温速度10℃/分で250℃から-50℃まで降温する過程(降温測定)と、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(2ndRun)と、からなる示差走査熱量測定を続けて行ったとき、示差走査熱量測定により得られたDSC曲線2(2ndRun)において吸熱ピークAが観察され、吸熱ピークAにおける融解熱量ΔH[J/g]とし、包装フィルムの密度をD[g/cm3]としたとき、ΔH/D[(J/g)/(g/cm3)]が、特定の数値範囲である包装フィルム100は、同密度の包装フィルムにおいて、ヒートシール強度が向上することを知見し、本発明に至った。
すなわち、本実施形態の包装フィルム100は、同密度の包装フィルムにおいてヒートシール強度が向上する。
【0016】
さらに、本実施形態の包装フィルム100によれば、包装フィルムのヒートシールは剥離エネルギーを向上させることができる。
【0017】
本実施形態の包装フィルム100は、オレフィン系重合体を含む二軸延伸フィルム層101を備える包装フィルム100であって、包装フィルム100に対して、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(1stRun)と、降温速度10℃/分で250℃から-50℃まで降温する過程(降温測定)と、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(2ndRun)と、からなる示差走査熱量測定を続けて行ったとき、示差走査熱量測定により得られたDSC曲線2(2ndRun)において吸熱ピークAが観察され、吸熱ピークAにおける融解熱量ΔH[J/g]とし、包装フィルムの密度をD[g/cm3]としたとき、ΔH/D[(J/g)/(g/cm3)]が、122.0以下である。
本実施形態の包装フィルム100のΔH/D[(J/g)/(g/cm3)]は、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは121.7以下、より好ましくは121.5以下、さらに好ましくは121.3以下、さらに好ましくは121.2以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば、95.0以上であってもよいし、98.5以上であってもよいし、102.0以上であってもよい。
ΔH/D[(J/g)/(g/cm3)]は、吸熱ピークAにおける融解熱量ΔH[J/g]および包装フィルムの密度をD[g/cm3]を適宜調整することにより、所望の値とすることができる。
【0018】
包装フィルム100の示差走査熱量測定により得られたDSC曲線2(2ndRun)において観察される吸熱ピークAにおける融解熱量ΔHは、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは90.0J/g以下、より好ましくは88.0J/g以下、さらに好ましくは85.0J/g以下、さらに好ましくは84.3J/g以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば、60.0J/g以上であってもよいし、65.0J/g以上であってもよい。
【0019】
吸熱ピークAにおける融解熱量ΔHは、例えば、包装フィルム100に含まれる樹脂の含有割合、延伸処理時の諸条件等を調整すること等によって、所望の数値とすることができる。より具体的には、二軸延伸フィルム層101にプロピレン共重合体を含むこと;延伸処理時の延伸倍率、延伸時の温度、熱処理の温度や時間等を適宜調整すること;等により調整することが可能である。
【0020】
包装フィルム100の示差走査熱量測定により得られたDSC曲線2(2ndRun)において観察される吸熱ピークAが観察される温度範囲は、好ましくは130.0℃以上、より好ましくは133.0℃以上、さらに好ましくは135.0℃以上、さらに好ましくは137.0℃以上であり、そして、好ましくは170.0℃以下、より好ましくは168.0℃以下、さらに好ましくは165.0℃以下である。
【0021】
本実施形態の包装フィルム100の密度Dは、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは0.50g/cm3以上、より好ましくは0.53g/cm3以上、さらに好ましくは0.55g/cm3以上、さらに好ましくは0.56g/cm3以上であり、そして、環境問題の観点から、好ましくは0.90g/cm3以下、さらに好ましくは0.87g/cm3以下、さらに好ましくは0.85g/cm3以下、さらに好ましくは0.83g/cm3以下、さらに好ましくは0.80g/cm3以下である。
包装フィルムの密度Dは、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0022】
ここで、包装フィルムの密度Dは、例えば、包装フィルム100に含まれるフィラーの粒子径、包装フィルム100に含まれるフィラーの含有割合、延伸処理時の諸条件等を調整すること等によって、所望の数値とすることができる。より具体的には、二軸延伸フィルム層101にフィラーを含み、フィラーの粒子径、および二軸延伸フィルム101中のフィラーの含有量を調整すること;延伸処理時の延伸倍率、延伸時の温度、熱処理の温度や時間等を適宜調整すること;等により調整することが可能である。
【0023】
本実施形態の包装フィルム100のMD方向の引張弾性率T1は、包装材の強度をより向上させる観点から、好ましくは200MPa以上、より好ましくは350MPa以上、さらに好ましくは500MPa以上、さらに好ましくは580MPa以上であり、そして、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは3000MPa以下、より好ましくは2000MPa以下、さらに好ましくは1500MPa以下、さらに好ましくは1200MPa以下、さらに好ましくは1100MPa以下である。
本実施形態の包装フィルム100のTD方向の引張弾性率T2は、包装材の強度をより向上させる観点から、好ましくは500MPa以上、より好ましくは800MPa以上、さらに好ましくは1000MPa以上、さらに好ましくは1050MPa以上であり、そして、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは3000MPa以下、より好ましくは2000MPa以下、さらに好ましくは1800MPa以下である。
包装フィルムの引張弾性率は、JIS K7127(1999)に準拠し、引張試験機を用いて測定温度23±2℃、50±5%RH、引張速度5mm/minの条件で測定される値を意味する。
【0024】
MD方向の引張弾性率T1[MPa]とTD方向の引張弾性率T2[MPa]との合計値をT3[MPa]とし、包装フィルムの密度をD[g/cm3]としたとき、本実施形態の包装フィルム100のT3/D[MPa/(g/cm3)]は、包装材の強度をより向上させる観点から、好ましくは1500以上、より好ましくは2000以上、さらに好ましくは2500以上、さらに好ましくは2700以上であり、そして、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは5000以下、より好ましくは4500以下、さらに好ましくは4400以下、さらに好ましくは4000以下、さらに好ましくは3800以下、さらに好ましくは3600以下、さらに好ましくは3500以下、さらに好ましくは3400以下である。
【0025】
本実施形態の包装フィルム100のヒートシール強度は、包装材の強度をより向上させる観点から、好ましくは3.5N/15mm以上、より好ましくは4.0N/15mm以上、さらに好ましくは4.5N/15mm以上であり、そして、上限値は特に限定されないが、例えば、10.0N/15mm以下であってもよいし、9.0N/15mm以下であってもよいし、8.0N/15mm以下であってもよい。
包装フィルムの密度をD[g/cm3]としたとき、本実施形態の包装フィルム100のヒートシール強度[N/15mm]をDで除した値[(N/15mm)/(g/cm3)]は、包装材の強度をより向上させる観点から、好ましくは6.0以上、より好ましくは7.0以上、さらに好ましくは7.5以上、さらに好ましくは7.8以上、さらに好ましくは8.0以上であり、そして、上限値は特に限定されないが、例えば、12.0以下であってもよいし、11.0以下であってもよいし、10.0以下であってもよいし、9.8以下であってもよい。
本明細書において、包装フィルムのヒートシール強度は実施例に記載の方法で測定される値を意味する。すなわち、2液硬化型ポリウレタン系接着剤(主剤であるウレタン系樹脂と、イソシアネート系硬化剤と、溶媒である酢酸エチルとを9.0:1.0:7.5(質量比)の割合で配合したもの)を用いて、包装フィルムと二軸延伸ポリプロピレンフィルムとをラミネート処理したサンプルに対して、引張試験機を用いて剥離試験を行ったときのヒートシール強度を意味する。
【0026】
本実施形態の包装フィルム100のヒートシール剥離エネルギーは、包装材の強度をより向上させる観点から、好ましくは200mJ以上、より好ましくは300mJ以上、さらに好ましくは350mJ以上、さらに好ましくは370mJ以上であり、そして、上限値は特に限定されないが、例えば、1500mJ以下であってもよいし、1300mJ以下であってもよいし、1100mJ以下であってもよい。
本明細書において、包装フィルムのヒートシール剥離エネルギーは実施例に記載の方法で測定される値を意味する。すなわち、2液硬化型ポリウレタン系接着剤(主剤であるウレタン系樹脂と、イソシアネート系硬化剤と、溶媒である酢酸エチルとを9.0:1.0:7.5(質量比)の割合で配合したもの)を用いて、包装フィルムと二軸延伸ポリプロピレンフィルムとをラミネート処理したサンプルに対して、引張試験機を用いて剥離試験を行ったときのヒートシール剥離エネルギーを意味する。
【0027】
本実施形態の包装フィルム100の色は特に限定されないが、乳白色であることが好ましい。包装フィルムが乳白色であると、包装フィルムを白色印刷する必要がなくなることから、環境問題の観点から好ましい。
ここで、包装フィルムが乳白色であるとは、例えば、白色度が60%以上であること、もしくは包装フィルムの全光線透過率が90.0%以下であることを意味する。
本実施形態の包装フィルム100の白色度は、環境問題の観点から、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上であり、そして、上限値は特に限定されないが、例えば、99%以下である。
白色度は、JIS L 1916(2000)に準拠して測定した値を意味する。
本実施形態の包装フィルム100の全光線透過率は、環境問題の観点から、好ましくは85.0%以下、より好ましくは80.0%以下、さらに好ましくは75.0%以下、さらに好ましくは70.0%以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば、20.0%以上であってもよいし、30.0%以上であってもよい。
ここで、全光線透過率はJIS K 7136(2000)に準拠して測定した値を意味する。
【0028】
本実施形態の包装フィルム100の厚みは、包装フィルムの取り扱い性をより向上させる観点から、好ましくは5.0μm以上、より好ましくは10.0μm以上、さらに好ましくは15.0μm以上、さらに好ましくは20.0μm以上、さらに好ましくは22.0μm以上、さらに好ましくは24.0μm以上であり、そして、環境問題の観点から、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは40.0μm以下、さらに好ましくは35.0μm以下、さらに好ましくは32.0μm以下、さらに好ましくは30.0μm以下である。
【0029】
以下、包装フィルム100を構成する各層について説明する。
【0030】
<二軸延伸フィルム層>
二軸延伸フィルム層101は、オレフィン系重合体を含む。
二軸延伸フィルム層101は、例えば、オレフィン系重合体を含むオレフィン系重合体組成物により構成されたフィルムを二軸延伸することにより形成されたものである。
二軸延伸フィルム層101は、単層であってもよいし、多層であってもよいが、二軸延伸されてなることが必要である。
【0031】
二軸延伸フィルム層101は、オレフィン系重合体を含む。
二軸延伸フィルム層101中のオレフィン系重合体とは、ホモポリオレフィン、オレフィン共重合体等が挙げられ、より具体的には、ホモポリエチレン、ホモポリプロピレン、ホモポリブテン、エチレン共重合体、プロピレン共重合体、1-ブテン共重合体等が挙げられる。
ここで、本実施形態のオレフィン共重合体とは、特に断りがなければ、オレフィン共重合体中に含まれる全てのモノマー由来の構成単位の合計モル数を100モル%としたとき、オレフィン共重合体中に最も多く含まれるオレフィン由来の構成単位が98.5モル%以下であるオレフィン共重合体のことを示す。本実施形態のホモポリオレフィンとは、特に断りがなければ、オレフィン単独重合体、およびオレフィン共重合体中に含まれる全てのモノマー由来の構成単位の合計モル数を100モル%としたとき、オレフィン共重合体中に最も多く含まれるオレフィン由来の構成単位が98.5モル%を超えるオレフィン共重合体のことを示す。
【0032】
二軸延伸フィルム層101に含まれるオレフィン系重合体は、好ましくはオレフィン共重合体を含み、より好ましくはプロピレン共重合体を含む。
【0033】
二軸延伸フィルム層101中のプロピレン共重合体は、プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのブロック共重合体、およびプロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、プロピレンと炭素数が2以上6以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのブロック共重合体、およびプロピレンと炭素数が2以上6以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体、プロピレンと1-ブテンとのブロック共重合体、プロピレンとエチレンと1-ブテンとのブロック共重合体、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンと1-ブテンとのランダム共重合体、およびプロピレンとエチレンと1-ブテンとのランダム共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましく、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体、およびプロピレンとエチレンと1-ブテンとのランダム共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
【0034】
二軸延伸フィルム層101中のプロピレン共重合体は、プロピレン共重合体に含まれる全てのモノマー由来の構成単位の合計モル数を100モル%としたとき、炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)由来の構成単位の合計モル数が、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは2.0モル%以上、より好ましくは3.0モル%以上、さらに好ましくは4.0モル%以上、さらに好ましくは5.0モル%以上、さらに好ましくは5.5モル%以上であり、そして、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは10.0モル%以下、より好ましくは9.5モル%以下、さらに好ましくは9.0モル%以下、さらに好ましくは8.5モル%以下である。
【0035】
二軸延伸フィルム層101に含まれるオレフィン共重合体の含有量は、二軸延伸フィルム層101に含まれる全成分の合計を100質量%としたとき、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは50.0質量%以上、より好ましくは60.0質量%以上、さらに好ましくは65.0質量%以上、さらに好ましくは68.0質量%以上であり、そして、好ましくは98.0質量%以下、より好ましくは96.0質量%以下である。
【0036】
二軸延伸フィルム層101中のオレフィン共重合体のDSC測定による融点は、包装材の熱寸法安定性をより向上させる観点から、好ましくは125℃以上、より好ましくは132℃以上、さらに好ましくは135℃以上、さらに好ましくは137℃以上であり、そして、包装フィルム100の成形性をより向上させる観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは175℃以下、さらに好ましくは170℃以下、さらに好ましくは168℃以下である。
オレフィン共重合体として2種類以上のオレフィン共重合体を用いる場合、オレフィン共重合体の融点は最大融解ピークのピーク温度である。
【0037】
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される、二軸延伸フィルム層101中のオレフィン共重合体のMFRは、包装フィルム100の成形性をより向上させる観点から、好ましくは0.01g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上、さらに好ましくは1.0g/10分以上、さらに好ましくは2.0g/10分以上であり、そして、包装材の熱寸法安定性をより向上させる観点から、好ましくは20.0g/10分以下、より好ましくは15.0g/10分以下、さらに好ましくは12.0g/10分以下、さらに好ましくは10.0g/10分以下、さらに好ましくは8.0g/10分以下である。
オレフィン共重合体として2種類以上のオレフィン共重合体を用いる場合、オレフィン共重合体のMFRは、公知の方法等で2種類以上のオレフィン共重合体をメルトブレンドして得られた混合物のMFRを採用することができる。
【0038】
本実施形態のオレフィン共重合体は、種々の方法により製造することができる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0039】
二軸延伸フィルム層101に含まれるオレフィン系重合体は、ホモポリオレフィンを含むことが好ましい。
ホモポリオレフィンとしては、例えば、ホモポリエチレン、ホモポリプロピレン、ホモポリブテン等が挙げられ、その中でもホモポリプロピレンを含むことが好ましい。
【0040】
二軸延伸フィルム層101に含まれるホモポリオレフィンの含有量は、二軸延伸フィルム層101に含まれる全成分の合計量を100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上であり、そして、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは25.0質量%以下、より好ましくは20.0質量%以下、さらに好ましくは15.0質量%以下である。
【0041】
二軸延伸フィルム層101中のホモポリオレフィンのアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)は、包装フィルム100の熱寸法安定性、耐熱性、水蒸気バリア性、機械的特性、剛性および製袋性等のバランスをより向上させる観点から、好ましくは96.0%以上、より好ましくは96.5%以上、さらに好ましくは97.0%以上、さらに好ましくは97.3%以上である。ホモポリオレフィンのアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)の上限は特に限定されないが、製造のし易さの観点から、好ましくは99.5%以下であり、より好ましくは99.0%以下であり、さらに好ましくは98.5%以下、さらに好ましくは98.0%以下である。
アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)は立体規則性の指標であり、13C-核磁気共鳴(NMR)スペクトルから公知の方法により求めることができる。
ホモポリオレフィンとして2種類以上のホモポリオレフィンを用いる場合、ホモポリオレフィンのアイソタクチックメソペンタッド分率は、公知の方法で2種類以上のホモポリオレフィンをメルトブレンドして得られた混合物のアイソタクチックメソペンタッド分率を採用することができる。
【0042】
二軸延伸フィルム層101中のホモポリオレフィンのDSC測定による融点は、包装フィルム100の熱寸法安定性、耐熱性、水蒸気バリア性、機械的特性、剛性、製袋性、流動性および成形性等のバランスをより向上させる観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは155℃以上、さらに好ましくは157℃以上であり、そして、好ましくは180℃以下、より好ましくは175℃以下、さらに好ましくは170℃以下、さらに好ましくは165℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。
ホモポリオレフィンとして2種類以上のホモポリオレフィンを用いる場合、ホモポリオレフィンの融点は最大融解ピークのピーク温度である。
【0043】
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される、二軸延伸フィルム層101中のホモポリオレフィンのMFRは、包装フィルム100の成形性をより向上させる観点から、好ましくは0.01g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上、さらに好ましくは1.0g/10分以上、さらに好ましくは2.0g/10分以上であり、そして、包装材の熱寸法安定性をより向上させる観点から、好ましくは20.0g/10分以下、より好ましくは15.0g/10分以下、さらに好ましくは12.0g/10分以下、さらに好ましくは10.0g/10分以下、さらに好ましくは8.0g/10分以下、さらに好ましくは5.0g/10分以下である。
ホモポリオレフィンとして2種類以上のホモポリオレフィンを用いる場合、ホモポリオレフィンのMFRは、公知の方法等で2種類以上のホモポリオレフィンをメルトブレンドして得られた混合物のMFRを採用することができる。
【0044】
ホモポリオレフィンは種々の方法により製造することができる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0045】
二軸延伸フィルム層101に含まれるオレフィン系重合体は、オレフィン共重合体およびホモポリオレフィンを含むことが好ましい。
【0046】
二軸延伸フィルム層101に含まれるオレフィン系重合体の合計含有量は、二軸延伸フィルム層に含まれる全成分の合計量を100質量%としたとき、好ましくは70.0質量%以上、より好ましくは72.0質量%以上、さらに好ましくは75.0質量%以上、さらに好ましくは80.0質量%以上であり、そして、好ましくは97.0質量%以下、より好ましくは96.7質量%以下、さらに好ましくは96.5質量%以下である。
【0047】
二軸延伸フィルム層101に含まれる全ての重合体中のモノマー由来の構成単位の合計モル数を100モル%としたとき、炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)由来の構成単位の合計モル数は、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは2.0モル%以上、より好ましくは3.0モル%以上、さらに好ましくは3.5モル%以上、さらに好ましくは4.0モル%以上であり、そして、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは10.0モル%以下、より好ましくは9.0モル%以下、さらに好ましくは8.5モル%以下、さらに好ましくは8.0モル%以下である。
【0048】
二軸延伸フィルム層101は、好ましくは有機フィラーおよび無機フィラーからなる群から選択される少なくとも一種のフィラーを含む。
二軸延伸フィルム層101中のフィラーは、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、シリカ、チタン酸カリウム、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、タルク、マイカ、クレイ、カオリナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ポリスチレン系樹脂粒子、およびポリ(メタ)アクリル系樹脂粒子からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、炭酸カルシウム、および酸化チタンからなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0049】
二軸延伸フィルム層101に含まれるフィラーの含有量は、二軸延伸フィルム層に含まれる全成分の合計量を100質量%としたとき、包装フィルム100の密度Dをより適切にする観点から、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは2.5質量%以上、さらに好ましくは3.0質量%以上であり、そして、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは30.0質量%以下、より好ましくは25.0質量%以下、さらに好ましくは23.0質量%以下、さらに好ましくは20.0質量%以下である。
【0050】
二軸延伸フィルム層101中のフィラーの形状は特に限定されず、立方状、棒状、球状、楕円状、不定形、円錐状、板状、針状等が挙げられるが、包装フィルム100の密度Dをより適切にする観点から立方状であることが好ましい。
フィラーの形状は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いて、二軸延伸フィルム層を観察することにより評価できる。
【0051】
二軸延伸フィルム層101中のフィラーの平均粒子径は、包装フィルム100の密度Dをより適切にする観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.0μm以下、さらに好ましくは3.5μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下である。
フィラーの平均粒子径は、遠心沈降による光透過測定方式により測定される値を意味する。
【0052】
二軸延伸フィルム層101中のフィラーは無処理のまま使用してもよいし、オレフィン系重合体に対する分散性を向上させるために、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、界面活性剤等で表面を処理して使用してもよい。
【0053】
二軸延伸フィルム層101は、包装フィルム100の密度Dを低下させる観点から、ボイドを有することが好ましい。二軸延伸フィルム層101中のボイドの最大孔径は、包装フィルム100の密度Dをより適切にする観点から、好ましくは2.0μm以上、より好ましくは3.0μm以上、さらに好ましくは5.0μm以上であり、そして、ヒートシール強度およびヒートシール剥離エネルギーをより向上させる観点から、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは30.0μm以下、さらに好ましくは10.0μm以下である。
ここで、最大孔径は1つのボイドの孔径の最大値を意味する。
二軸延伸フィルム層101中のボイドの有無およびボイドの最大孔径は、走査型電子顕微鏡を用いて、二軸延伸フィルム層を観察することにより評価できる。
ボイドは、例えば、二軸延伸フィルム層に含まれるフィラーの含有割合、二軸延伸フィルム層の厚み、延伸倍率等を調整することにより形成することができる。
【0054】
二軸延伸フィルム層101の厚みは、包装フィルム100の熱寸法安定性、成形性、水蒸気バリア性、コスト、機械的特性、透明性、製袋性、取扱い性、外観および軽量性等のバランスをより向上させる観点から、好ましくは5.0μm以上、より好ましくは10.0μm以上、さらに好ましくは12.0μm以上、さらに好ましくは15.0μm以上であり、そして、好ましくは100.0μm以下、より好ましくは50.0μm以下、さらに好ましく40.0μm以下、さらに好ましく30.0μm以下、さらに好ましく25.0μm以下である。
【0055】
包装フィルム100の全体の厚みに対する二軸延伸フィルム層101の厚みの割合は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上であり、そして、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは85%以下である。
【0056】
二軸延伸フィルム層101は、必要に応じて、粘着付与剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0057】
二軸延伸フィルム層101を構成するためのオレフィン系重合体組成物は、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0058】
<ヒートシール層>
本実施形態の包装フィルム100は、ヒートシール性を付与するために、二軸延伸フィルム層101の少なくとも一方の面上にヒートシール層103をさらに備えることが好ましい。
ヒートシール層103は、包装フィルム100の製造工程をより簡略化する観点から、二軸延伸フィルム層101の一方の面に直接接するように設けられていることがより好ましい。
【0059】
また、ヒートシール層103は、包装フィルム100のヒートシール性をより良好にする観点から、包装フィルム100の最外層に設けられていることが好ましい。
【0060】
ヒートシール層103は、単層であっても多層であってもよいが、包装フィルム100の製造工程をより簡略化する観点から、単層であることが好ましい。
【0061】
ヒートシール層103は、二軸延伸フィルム層101の二軸延伸前の状態にあるフィルムと同時に二軸延伸されて形成されることが好ましい。これにより、共押出し成形法等の成形方法、すわなち、一度の成形で作製した積層フィルムを用いて包装フィルム100を作製することができるため、包装フィルム100の製造工程をより簡略化することができる。したがって、ヒートシール層103は二軸延伸されていることが好ましい。
【0062】
ヒートシール層103は、例えば、ポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂組成物により構成される。ヒートシール層103を構成するポリオレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体;オレフィン系エラストマー;高圧法低密度ポリエチレン;線状低密度ポリエチレン(LLDPE);高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体;プロピレン系エラストマー;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA);アイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0063】
ヒートシール層103は、ヒートシール性をより向上させる観点から、プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体を含むことが好ましく、プロピレンと炭素数が2以上6以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体を含むことがより好ましく、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンと1-ブテンとのランダム共重合体、およびプロピレンとエチレンと1-ブテンとのランダム共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
【0064】
ヒートシール層103中の、プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体の融点は、包装フィルム100の耐ブロッキング性をより向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、そして、包装フィルム100のヒートシール性をより向上させる観点から、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。
【0065】
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される、ヒートシール層103中の、プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体のMFRは、流動性および成形性をより向上させる観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1.0g/10分以上、さらに好ましくは2.0g/10分以上であり、そして、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは20.0g/10分以下、より好ましくは15.0g/10分以下、さらに好ましくは10.0g/10分以下である。
ランダム共重合体として2種類以上のランダム共重合体を用いる場合、ランダム共重合体のMFRは、公知の方法等で2種類以上のランダム共重合体をメルトブレンドして得られた混合物のMFRを採用することができる。
【0066】
ヒートシール層103は、ヒートシール性をより向上させる観点から、オレフィン系エラストマーを含むことが好ましい。オレフィン系エラストマーとしては、例えば、融点が好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下または融点が観測されない炭素数2~20のα-オレフィン重合体;エチレンと不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;等が挙げられる。
具体的には、オレフィン系エラストマーは、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・4-メチルペンテン-1共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、プロピレン単独共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、1-ブテン単独重合体、1-ブテン・エチレン共重合体、1-ブテン・プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1単独重合体、4-メチルペンテン-1・プロピレン共重合体、4-メチルペンテン-1・1-ブテン共重合体、4-メチルペンテン-1・プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等を含み、ヒートシール性をより向上させる観点から、その中でも、プロピレン・1-ブテン共重合体を含むことが好ましい。
【0067】
ヒートシール層103は、プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体、およびオレフィン系エラストマーを含むことがより好ましい。
【0068】
ヒートシール層103に含まれるプロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)とのランダム共重合体の含有量は、ヒートシール層103に含まれる全成分の合計量を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
ヒートシール層103に含まれるオレフィン系エラストマーの含有量は、ヒートシール層103に含まれる全成分の合計量を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0069】
ヒートシール層103の厚みは、ヒートシール性をより向上させる観点から、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは3.0μm以上、さらに好ましくは4.0μm以上であり、そして、包装フィルム100のブロッキング性およびスリップ性をより向上させる観点から、好ましくは13.0μm以下、より好ましくは11.0μm以下、さらに好ましくは10.0μm以下、さらに好ましくは8.0μm以下、さらに好ましくは6.0μm以下である。
【0070】
ヒートシール層103は、必要に応じて、粘着付与剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0071】
ヒートシール層103を構成するためのポリオレフィン系樹脂組成物は、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0072】
<表面層>
包装フィルム100は、目的に応じて、耐熱融着性、帯電防止性、耐ブロッキング性、印刷適性、スリップ性等の機能を付与する観点から、表面層105をさらに備えていてもよい。
表面層105は、二軸延伸フィルム層101のヒートシール層103側とは反対側の面上に設けられていることが好ましく、包装フィルム100の製造工程をより簡略化する観点から、二軸延伸フィルム層101のヒートシール層103側とは反対側の面上に直接接するように設けられていることがより好ましい。
【0073】
表面層105は、単層であっても多層であってもよいが、包装フィルム100の製造工程をより簡略化する観点から、単層であることが好ましい。
【0074】
表面層105は、二軸延伸フィルム層101の二軸延伸前の状態にあるフィルムと同時に二軸延伸されて形成されることが好ましい。これにより、共押出し成形法等の成形方法、すわなち、一度の成形で作製した積層フィルムを用いて包装フィルム100を作製することができるため、包装フィルム100の製造工程をより簡略化することができる。したがって、表面層105は二軸延伸されていることが好ましい。
【0075】
表面層105は、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、プライマーコート処理、オゾン処理等の表面活性化処理を行ってもよく、コロナ処理を行っていることが好ましい。
【0076】
表面層105は、ポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂組成物により構成される。表面層105を構成するポリオレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、1-オクテン等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体;高圧法低密度ポリエチレン;線状低密度ポリエチレン(LLDPE);高密度ポリエチレン;ホモポリプロピレン;プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA);およびアイオノマー樹脂等からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
これらの中でも、表面層105を構成するポリオレフィンとしては、包装フィルム100の耐熱融着性、熱寸法安定性、耐熱性、水蒸気バリア性、透明性、機械的特性、剛性、製袋性、流動性および成形性等のバランスをより向上させる観点から、ホモポリオレフィンが好ましく、その中でもホモポリプロピレンがより好ましい。ここで、表面層105を構成するホモポリオレフィンの好ましい態様は、前述した二軸延伸フィルム層101に含まれるホモポリオレフィンと同様である。
【0077】
表面層105に含まれるホモポリオレフィンの含有量は、表面層105に含まれる全成分の合計量を100質量%としたとき、包装フィルム100の耐熱融着性、熱寸法安定性、耐熱性、水蒸気バリア性、透明性、機械的特性、剛性、製袋性、流動性および成形性等のバランスをより向上させる観点から、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下である。
【0078】
表面層105の厚みは、包装フィルム100の耐熱融着性、ヒートシール性、帯電防止性、耐ブロッキング性、印刷適性、スリップ性等の機能をより向上させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上であり、そして、包装フィルム100の耐熱融着性、熱寸法安定性、成形性、コスト、機械的特性、透明性、環境適合性および軽量性等のバランスをより向上させる観点から、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは8.0μm以下、さらに好ましくは6.0μm以下、さらに好ましくは5.0μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。
【0079】
表面層105は、必要に応じて、粘着付与剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
表面層105は、包装フィルム100を製造する際のハンドリング性をより向上させる観点から、アンチブロッキング剤を含むことが好ましい。
【0080】
表面層105を構成するためのポリオレフィン系樹脂組成物は、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0081】
<その他の層>
包装フィルム100は、その他の層をさらに備えていてもよい。その他の層としては、例えば、接着剤層等の層が挙げられる。
【0082】
[包装フィルムの製造方法]
包装フィルム100は、例えば、二軸延伸フィルム層101を構成するためのオレフィン系重合体組成物を押出し成形して得たフィルムを、公知の同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、およびインフレーション二軸延伸法等の二軸延伸フィルム製造方法を用いて二軸延伸することにより得ることができる。
包装フィルム100が多層の場合は、例えば、二軸延伸フィルム層101を構成するためのオレフィン系重合体組成物と、各層を構成するための樹脂組成物とをフィルム上に共押出し成形して得たフィルムを、公知の同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、およびインフレーション二軸延伸法等の二軸延伸フィルム製造方法を用いて二軸延伸することにより得ることができる。
成形装置および成形条件としては特に限定されず、従来公知の成形装置および成形条件を採用することができる。成形装置としては、T-ダイ押出機、多層T-ダイ押出機、インフレーション成形機あるいは多層インフレーション成形機等を用いることができる。二軸延伸の条件は、例えば、公知のOPPフィルムの製造条件を採用することができる。より具体的には、逐次二軸延伸法では、例えば、MD方向の延伸温度を80℃~145℃、MD方向の延伸倍率を4.5~6倍の範囲、TD方向の延伸温度を130℃~190℃、TD方向の延伸倍率を9~11倍の範囲にすればよい。
また、包装フィルム100は、二軸延伸フィルム層101とその他の層とをそれぞれ別々に成形し、これらを積層して加熱成形することによっても得ることができる。
【0083】
[包装フィルムの用途]
包装フィルム100は、食品用包装フィルムであることが好ましく、その中でも、冷凍食品用包装フィルムであることがより好ましい。すなわち、食品用包装材を構成する包装フィルムとして用いることが好ましく、その中でも、冷凍食品用包装材を構成する包装フィルムとして用いることがより好ましい。
【0084】
[包装材]
本実施形態の包装材は、本実施形態の包装フィルム100を用いた包装材である。また、本実施形態の包装材は用途に応じて、その一部に包装フィルム100を使用してもよいし、包装材の全体に包装フィルム100を使用してもよい。
【0085】
本実施形態の包装材は、食品を収容することを目的として使用される包装材であることが好ましく、その中でも、冷凍食品を収容することを目的として使用される包装材であることがより好ましい。
【0086】
本実施形態の包装材は、例えば、本実施形態の包装フィルム100のヒートシール層103同士を貼り合わせ、袋状に加工することにより製造される。
また、本実施形態の包装材は、例えば、本実施形態の包装フィルム100と、ラミネート用の表基材用フィルム(例えば、OPPフィルム、PETフィルム等)、シーラントフィルム等とを貼り合わせ、袋状に加工することにより製造することもできる。
【0087】
[食品包装体]
本実施形態の食品包装体は、本実施形態の包装材と、包装材内の食品と、を含む。すなわち、本実施形態の食品包装体は、本実施形態の食品包装材に食品を収容したものである。
本実施形態の食品包装体において、食品は冷凍食品であることが好ましい。
【0088】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0089】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0090】
1.原料
実施例および比較例で用いた原料について以下に示す。
(1)ホモポリオレフィン
・h-PP1:ホモポリプロピレン(MFR:3.0g/10分、融点:159℃、アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm):97.5%、エチレン由来の構成単位の含有量:1.2モル%、プロピレン由来の構成単位の含有量:98.8モル%)
(2)共重合体
・b-PP1:プロピレンのブロック共重合体(MFR:3.0g/10分、融点:165℃、エチレン由来の構成単位の含有量:8.0モル%、プロピレン由来の構成単位の含有量:92.0モル%)
・r-PP1:プロピレンのランダム共重合体(MFR:7.0g/10分、融点:139℃、エチレン由来の構成単位の含有量:3.2モル%、1-ブテン由来の構成単位の含有量:2.9モル%、プロピレン由来の構成単位の含有量:93.9モル%)
・r-PP2:プロピレンのランダム共重合体(MFR:7.0g/10分、融点:131℃、エチレン由来の構成単位の含有量:3.6モル%、1-ブテン由来の構成単位の含有量:2.8モル%、プロピレン由来の構成単位の含有量:93.6モル%)
・PBR1:プロピレン・1-ブテン共重合体エラストマー(MFR:7.0g/10分、融点:75℃、1-ブテン由来の構成単位の含有量:27.0モル%、プロピレン由来の構成単位の含有量:73.0モル%)
(3)マスターバッチ
・MB1:後述する製造方法で作製した、ホモポリプロピレンと炭酸カルシウムとを混合したマスターバッチ(融点:161℃、マスターバッチ中の炭酸カルシウムの含有量:60質量%、マスターバッチ中のホモポリプロピレンの含有量:40質量%)
(4)添加剤
・A1:アンチブロッキング剤
【0091】
[MB1の製造]
<炭酸カルシウムの調製>
石灰石を高圧ジェット気流旋回渦方式のジェットミルを使用して粉砕、球形化し、炭酸カルシウムを得た。得られた炭酸カルシウムは、広角X線回折により炭酸カルシウムの結晶ピーク(カルサイト(三方晶系菱面体晶))が検出され、それ以外のピークは検出されず、実質的にすべてが炭酸カルシウムで構成されていることが確認できた。得られた炭酸カルシウムの物性は以下のとおりである。
平均粒子径:2μm
形状:立方状(2μm×2μm×1~2μm)
リンの含有量:16ppm
硫黄の含有量:<10ppm
なお、平均粒子径は、超遠心式自動粒度分布測定装置(堀場製作所社製、製品名:CAPA-700)を用い遠心沈降による光透過測定方式にて測定した。
【0092】
<MB1の作製>
上記の炭酸カルシウムをh-PP1に160℃~220℃の条件のもと、二軸押出機(日本製鋼所社製、製品名:TEX 44SS-38、58-3V 38mmφ)を用いて混練して、MB1を得た。なお、MB1は、炭酸カルシウムが60質量%、h-PP1が40質量%となるように作製した。
【0093】
2.評価および測定方法
(1)ホモポリプロピレンおよび共重合体中の、炭素数が2以上10以下のα-オレフィン由来の構成単位の含有量
ホモポリプロピレンおよび共重合体中の、炭素数が2以上10以下のα-オレフィン由来の構成単位の含有量の測定は、核磁気共鳴装置(ブルカー・バイオスピン社製、製品名:AVANCE III cryo-500型)を用い、13C-NMRにより測定した。試料を下記測定溶媒に溶解させて測定をし、各シグナルの積分強度より評価をした。得られた13C-NMRスペクトルにより、文献Macromolecules(1982)Ethylene-1-Butene Copolymers.1.Comonomer Sequence Distributionおよび、Macromolecules(1977)Carbon-13Nuclear Magnetic Resonance Determination of Monomer Composition and Sequence Distributions in Ethylene-Propylene Copolymers Prepared with a Stereoregular Catalyst System等を参考としてシグナルの帰属をし、ホモポリプロピレンおよび共重合体中のエチレン由来の構成単位の含有量[モル%]、プロピレン由来の構成単位の含有量[モル%]、および1-ブテン由来の構成単位の含有量[モル%]をそれぞれ定量した。
[測定条件]
測定核:13C(125MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:45°
ポイント数:64k
繰り返し時間:5.5秒
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(4:1)
試料濃度:50mg/0.6mL
測定温度:120℃
ウインドウ関数:exponential(BF:0.5Hz)
【0094】
(2)二軸延伸フィルム層中の、炭素数が2以上10以下のα-オレフィン(ただし、α-オレフィンはプロピレンを除く)由来の構成単位の含有量
二軸延伸フィルム層から試料を切り出して、上記(1)と同様の測定条件で、試料を測定溶媒に溶解させて、13C-NMRにより測定した。
【0095】
(3)ホモポリプロピレンおよび共重合体のMFR
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
【0096】
(4)ホモポリプロピレン、共重合体およびマスターバッチの融点
ホモポリプロピレン、共重合体およびマスターバッチに対し、示差走査熱量計(TAインスツルメント社製、製品名:Q200DSC)を用いて、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(1stRun)と、降温速度10℃/分で250℃から-50℃まで降温する過程(降温測定)と、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(2ndRun)と、を続けて行った。
2ndRunにおけるDSC曲線の最大融解ピークのピーク温度を融点とした。
【0097】
(5)ホモポリプロピレンのアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)
アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)の測定は、核磁気共鳴装置(ブルカー・バイオスピン社製、製品名:AVANCE III cryo-500型)を用い、13C-NMRにより測定した。試料を下記測定溶媒に溶解させて測定をし、各シグナルの積分強度より評価をした。
[測定条件]
測定核:13C(125MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:45°
ポイント数:64k
繰り返し時間:5.5秒
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(4:1)
試料濃度:50mg/0.6mL
測定温度:120℃
ウインドウ関数:exponential(BF:0.5Hz)
ケミカルシフト基準:mmmm(CH3):21.59ppm
【0098】
(6)包装フィルムの厚みおよび密度D
包装フィルムの厚みを、マイクロメーター(ハイブリッチ製作所社製、製品名:Automatic Micrometer)により測定した。包装フィルム内の厚みを5点測定し、平均値を包装フィルムの厚み[μm]とした。
包装フィルムから1m2の面積となるようにサンプルを切り出し、1m2あたりの測定用サンプルの質量[g/m2]を測定した。以下の計算式により包装フィルムの密度D[g/cm3]を算出した。
包装フィルムの密度D[g/cm3]=1m2あたりの測定用サンプルの質量[g/m2]/包装フィルムの厚み[μm]
【0099】
(7)包装フィルムの引張弾性率
包装フィルムから15mm×15cmの試験片を切り出した。次いで、オリエンテック社製引張試験機を用いて、JIS K7127(1999)に準拠し、測定温度23±2℃、50±5%RH、引張速度5mm/minの条件で上記試験片のMD方向の引張弾性率T1およびTD方向の引張弾性率T2をそれぞれ測定した。
包装フィルムの密度D、MD方向の引張弾性率T1[MPa]およびTD方向の引張弾性率T2[MPa]の測定値より、T3/D[MPa/(g/cm3)]を算出した。
【0100】
(8)包装フィルムのDSC測定
包装フィルムから約5.0mgの試料を切り出した。次いで、試料に対して、示差走査熱量計(TAインスツルメント社製、製品名:Q200DSC)を用いて、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(1stRun)と、降温速度10℃/分で250℃から-50℃まで降温する過程(降温測定)と、昇温速度10℃/分で-50℃から250℃まで昇温する過程(2ndRun)と、を続けて行った。
得られた2ndRunのDSC曲線2から、吸熱ピークのピーク温度[℃]および吸熱ピークの融解熱量ΔH[J/g]を求めた。
包装フィルムの密度Dおよび吸熱ピークの融解熱量ΔHより、ΔH/D[(J/g)/(g/cm3)]を算出した。
【0101】
(9)包装フィルムの全光線透過率
JIS K 7136(2000)に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業社製、製品名:NDH-5000)を用いて、フィルム1枚の全光線透過率[%]を測定した。
【0102】
(10)包装フィルムのヒートシール強度
厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社社製、製品名:U-1)のコロナ処理面と、接着剤を塗工した包装フィルムの表面層とを、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのMD方向と包装フィルムのMD方向が一致するように貼り合わせ、ラミネート処理後の包装フィルムを作製した。接着剤としては、2液硬化型ポリウレタン系接着剤(ウレタン系樹脂(三井化学社製、製品名:タケラックA525S):9.0質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学社製、製品名:タケネートA50):1.0質量部および酢酸エチル:7.5質量部を配合したもの)を用いた。接着剤のドライ塗工量は、2.7g/m2とした。
ラミネート処理後の2枚の包装フィルムのヒートシール層同士を、2枚の包装フィルムのMD方向が一致するように重ね、富士インパルス社製(形式:OPL-300-10)のインパルスシーラーを用いて、温度:140℃、シール時間:0.5秒、という条件で熱融着することにより、ヒートシール強度測定用サンプルを得た。
ヒートシール強度測定用サンプルから15mm幅の試験片を切り出し、オリエンテック社製引張試験機を用いて、90度剥離、剥離速度300mm/分、MD方向への引張の条件で、2枚の包装フィルムを剥離し、そのときの剥離強度をヒートシール強度[N/15mm]とした。
包装フィルムの密度D[g/cm3]およびヒートシール強度[N/15mm]より、ヒートシール強度を密度Dで除した値[(N/15mm)/(g/cm3)]を算出した。
【0103】
(11)包装フィルムのヒートシール剥離エネルギー
上記(10)のヒートシール強度を測定した際、ヒートシール強度[N/15mm]と剥離距離[mm]を用いて、下記式(1)から算出されるヒートシール剥離エネルギー[mJ]を算出した。
なお、本明細書中のヒートシール剥離エネルギーの算出方法は、文献:日本溶着学会誌、2006年、Vol.42、No.4、P146-152、「熱融着(ヒートシール)の溶着面における剥離エネルギーの計測と評価法の提案」に準拠した測定方法である。
【0104】
【0105】
式(1)中、Sは剥離エネルギー[mJ]、Fは各剥離距離点の引張強さ[N]、ΔLはエネルギー演算の単位距離[mm]、Ldは破断発生時の引張距離[mm]を示す。
【0106】
[実施例1~6および比較例1~3]
表1に示す組成で、ポリプロピレンフィルムをそれぞれ押出成形し、次いで、二軸延伸処理することで包装フィルムをそれぞれ作製し、各評価をおこなった。評価結果を表1に示す。また、表面層の二軸延伸フィルム層とは反対側の面にコロナ処理をおこなった。
押出成形機:60mmφ多層T-ダイ押出成形機(スクリュー:L/D=27、スクリュー精機社製)
押出設定温度:230~250℃
加工速度:20m/min(巻き取り速度)
MD方向の延伸温度[℃]:90℃~120℃
MD方向の延伸倍率[倍]:5倍
TD方向の延伸温度[℃]:150℃~170℃
TD方向の延伸倍率[倍]:9.3倍
【0107】
【0108】
表1より、実施例の包装フィルムは、比較例の包装フィルムと比較して、包装フィルムのヒートシール強度を密度Dで除した値が向上している。すなわち、本実施形態の包装フィルムによれば、同密度の包装フィルムにおいてヒートシール強度が向上することが理解できる。
また、実施例の包装フィルムは、同程度の密度の比較例の包装フィルムと比較して、ヒートシール剥離エネルギーが向上していることが理解できる。すなわち、本実施形態の包装フィルムによれば、包装フィルムのヒートシール剥離エネルギーが向上することが理解できる。