(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139145
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】シールド掘進機
(51)【国際特許分類】
E21D 9/093 20060101AFI20241002BHJP
E21D 11/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E21D9/093 D
E21D11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049956
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】津村 匡洋
(72)【発明者】
【氏名】星 智久
(72)【発明者】
【氏名】松田 直篤
(72)【発明者】
【氏名】森 竜生
(72)【発明者】
【氏名】今北 公宏
【テーマコード(参考)】
2D054
2D155
【Fターム(参考)】
2D054AA02
2D054AC01
2D054AD02
2D054AD20
2D054GA04
2D054GA17
2D054GA62
2D054GA96
2D155BA01
2D155LA13
(57)【要約】
【課題】シールド掘進機のテールシールの変形状態を正確に検出する。
【解決手段】地盤を掘削するカッタヘッド2を回転可能な状態で支持する機器本体3と、機器本体3の筒状の外殻を形成するスキンプレート5と、スキンプレート5の内周面から内側に突出して環状に設けられ、スキンプレート5の軸方向に間隔を開けて複数設置されてスキンプレート5とトンネルを形成するセグメントSGの外周との間をシールするテールシール12Ba,12Bbと、テールシール12Baに設置され、テールシール12Baの曲げを検出するセンサユニットSUとを有し、センサユニットSUは、長手方向がテールシール12Baの突出方向となってテールシール12Baの突出方向の相互に異なる箇所に複数設置されてテールシールの曲げの大きさおよび方向を検出する長尺フィルム状の曲げセンサSで構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削するカッタヘッドと、
前記カッタヘッドを回転可能な状態で支持する機器本体と、
前記機器本体の筒状の外殻を形成するスキンプレートと、
前記スキンプレートの内周面から内側に突出して環状に設けられ、前記スキンプレートの軸方向に間隔を開けて複数設置されて当該スキンプレートと前記機器本体の後方でトンネルを形成するセグメントの外周との間をシールするテールシールと、
少なくとも一つの前記テールシールに設置され、前記テールシールの曲げを検出する検出手段とを有し、
前記検出手段は、長手方向が前記テールシールの突出方向となって当該テールシールの突出方向の相互に異なる箇所に複数設置され、前記テールシールの曲げの大きさおよび曲げの方向を検出する長尺フィルム状の曲げセンサで構成される、
ことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
前記検出手段は、環状の前記テールシールの少なくとも上下および両側部に設置されている、
ことを特徴とする請求項1記載のシールド掘進機。
【請求項3】
前記検出手段は、環状の前記テールシールの周方向で相互に隣接した複数列に設置されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載のシールド掘進機。
【請求項4】
前記テールシールは、金属製のブラシ部と、当該ブラシ部を挟むように前記ブラシ部の厚さ方向の両側にそれぞれ設けられて板バネの機能を備えた第1の鋼板部および第2の鋼板部と、前記第1の鋼板部と前記第2の鋼板部との間に設けられた金網部とを備え、
前記検出手段は、前記第1の鋼板部、前記第2の鋼板部または前記金網部に設置されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載のシールド掘進機。
【請求項5】
前記検出手段は、前記第1の鋼板部または前記第2の鋼板部の前記金網部側、または前記第1の鋼板部または前記第2の鋼板部の前記金網部と反対側に設置されている、
ことを特徴とする請求項4記載のシールド掘進機。
【請求項6】
前記第1の鋼板部、前記第2の鋼板部および前記金網部の少なくとも何れかは複数枚で構成されており、
前記検出手段は、複数枚になった前記第1の鋼板部、前記第2の鋼板部または前記金網部の間に挟み込まれている、
ことを特徴とする請求項4記載のシールド掘進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤を掘削してトンネルや地下鉄などシールドトンネルの掘削に使用される装置として、シールド掘進機が知られている。
【0003】
このシールド掘進機はスキンプレートの進行方向先端にカッタヘッドが回転可能に設置されており、当該カッタヘッドにはビットが円周状・放射状に複数配置されている。そして、カッタヘッドを掘削面(切羽)に押し付けて回転させながら進むことにより、地盤が円形に掘削されていく。このとき、シールド掘進機の機内では、筒状に組み立てられたセグメントがシールド掘進機の掘進に合わせてスキンプレートの後方に押し出される。
【0004】
このようなシールド掘進機を用いてシールドトンネルの曲線部を施工する際には、中折れジャッキによりシールド掘進機を中折れ操作して当該シールド掘進機を曲線に合わせて屈曲させている。
【0005】
ここで、シールド掘進機を構成するスキンプレートの後端には、シールド工事においてスキンプレートとセグメントの間をシールしてシールド掘進機内への地下水侵入を防止するためのテールシールが設けられている。このテールシールはセグメントの外周面に押し当てられた状態でシールド掘進機の掘進に伴って移動する。また、シールドトンネルの長距離化が進んでいる(一般的に、1.5km以上が長距離、3.0km以上が超長距離と呼ばれる。)。
【0006】
このようなシールドトンネルの長距離化に伴うテールシールの劣化や損傷(シール部材自体の変形、ワイヤブラシの抜けや変形など)に因って、セグメントに不具合が生じたり、推力が異常に上昇したりする等、様々なトラブルが発生している。そして、テールシールの不具合はテールシールが変形した後に発生しているものと思われる。そこで、テールシールのトラブルを未然に回避するために、テールシールに曲げセンサを装着しておき、掘進途中におけるテールシールの姿勢を検出することが行われている。
【0007】
例えば、特許文献1には、セグメントに接触しているテールシールの曲げを検出する曲げセンサをテールシールに設けておき、曲げセンサが検出したテールシールの曲げ量に基づいてテールシールのシール状態を判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、テールシールは、通常はセグメントの延在方向に湾曲しているが、シールド掘進機の掘進に伴うセグメントとの摩擦に伴う劣化や損傷、スキンプレートとセグメントとのクリアランスの変化などの要因により徐々に変形する。変形が進行すると湾曲方向が反転したり、ときにはテールシールを構成する金属製のブラシが摩擦で損耗することがある。
【0010】
そして、テールシールの変形の仕方は一律ではないために、曲げセンサによりテールシールの変形状態を正確に検出する必要がある。しかしながら、前述した技術は、曲線施工におけるテールシールの変形をコントロールするものであり、テールシールの変形の状態については検出できない。
【0011】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、テールシールの変形状態を正確に検出することのできるシールド掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のシールド掘進機は、地盤を掘削するカッタヘッドと、前記カッタヘッドを回転可能な状態で支持する機器本体と、前記機器本体の筒状の外殻を形成するスキンプレートと、前記スキンプレートの内周面から内側に突出して環状に設けられ、前記スキンプレートの軸方向に間隔を開けて複数設置されて当該スキンプレートと前記機器本体の後方でトンネルを形成するセグメントの外周との間をシールするテールシールと、少なくとも一つの前記テールシールに設置され、前記テールシールの曲げを検出する検出手段とを有し、前記検出手段は、長手方向が前記テールシールの突出方向となって当該テールシールの突出方向の相互に異なる箇所に複数設置され、前記テールシールの曲げの大きさおよび曲げの方向を検出する長尺フィルム状の曲げセンサで構成される、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項1に記載の発明において、前記検出手段は、環状の前記テールシールの少なくとも上下および両側部に設置されている、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項1記載の発明において、前記検出手段は、環状の前記テールシールの周方向で相互に隣接した複数列に設置されている、ことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項1または2記載の発明において、前記テールシールは、金属製のブラシ部と、当該ブラシ部を挟むように前記ブラシ部の厚さ方向の両側にそれぞれ設けられて板バネの機能を備えた第1の鋼板部および第2の鋼板部と、前記第1の鋼板部と前記第2の鋼板部との間に設けられた金網部とを備え、前記検出手段は、前記第1の鋼板部、前記第2の鋼板部または前記金網部に設置されている、ことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項4記載の発明において、前記検出手段は、前記第1の鋼板部または前記第2の鋼板部の前記金網部側、または前記第1の鋼板部または前記第2の鋼板部の前記金網部と反対側に設置されている、ことを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の本発明のシールド掘進機は、上記請求項4記載の発明において、前記第1の鋼板部、前記第2の鋼板部および前記金網部の少なくとも何れかは複数枚で構成されており、前記検出手段は、複数枚になった前記第1の鋼板部、前記第2の鋼板部または前記金網部の間に挟み込まれている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検出手段を構成する曲げセンサがテールシールの突出方向の相互に異なる箇所に複数本設置されているので、それぞれの曲げセンサがテールシールの部分的な変形を検出することになる。これにより、テールシールの変形状態を正確に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態であるシールド掘進機の内部を横から透かして見た要部構成図である。
【
図2】
図1のシールド掘進機におけるテールシールを横から見た構成図である。
【
図3】(a)~(e)は
図2のテールシールに設置されたセンサユニットを構成する曲げセンサの設置態様を示す説明図である。
【
図4】(a)~(c)はテールシールの変形の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
まず、本実施の形態のシールド掘進機の全体構成について
図1を参照して説明する。
図1は本実施の形態のシールド掘進機の内部を横から透かして見た要部構成図である。
【0022】
本実施の形態のシールド掘進機1は、例えば、カッタヘッド2で掘削された土砂に添加材を注入して練り混ぜることで生成された不透水性と塑性流動性(自由に変形および移動できる性質)とを有する泥土を、カッタヘッド2と機器本体3との間のチャンバ4内に充填した状態で掘進することにより、切羽の土圧に対抗する泥土圧を発生させて切羽の安定性を確保した状態で掘削を行う泥土加圧式のシールドマシンである。
【0023】
カッタヘッド2は、地盤を掘削するシールドカッタ盤であり、シールド掘進機1の先端頭部の前面に機器本体3の周方向に沿って正逆方向に回転可能な状態で設置されている。
【0024】
このカッタヘッド2の前面(切羽に対向する面)には、センタービットCB、ビットBおよびスクレーパツース(図示せず)等が装着されている。センタービットCBやビットBは、主に地山を切り崩す掘削部品であり、スクレーパツースは、主に地山を切削する切削部品である。なお、ビットBに代えて、例えば、ローラカッタ等を装着してもよい。
【0025】
また、カッタヘッド2の外周には、コピーカッタCCが設置されている。コピーカッタCCは、曲線施工時の余堀りやシールド掘進機1の姿勢制御等を行う役割を備えている。また、カッタヘッド2の裏面内の中央周辺には、複数本の攪拌棒SBが装着されている。攪拌棒SBは、例えば、円柱状の突出部材で形成されており、カッタヘッド2が回転するとチャンバ4内の土砂と添加材とを撹拌混合する役割を備えている。なお、この攪拌棒SBには、例えば、振動センサが内装されている。
【0026】
機器本体3は、シールド掘進機1を駆動する主要構成部である。シールド掘進機1を駆動する機器等は、機器本体3の筒状の外殻を構成するスキンプレート5によって取り囲まれ保護されている。スキンプレート5は、前胴プレート(前胴部)5aと、その後方の後胴プレート(後胴部)5bとを有している。この前胴プレート5aと後胴プレート5bとは、例えば、円筒状の鋼製板によって構成されており、後胴プレート5bの先端の球面軸受部が前胴プレート5aの内周面に接した状態で入り込むことで係合されている。
【0027】
スキンプレート5内の中空空間は、前胴プレート5aの内部に設けられた隔壁7によって切羽側と機内側とに区画されている。隔壁7の切羽側(すなわち、カッタヘッド2と隔壁7との間)には、前述のチャンバ4が設けられている。なお、カッタヘッド2により掘削された土砂等は、カッタヘッド2の前裏面を貫通する貫通孔(図示せず)を通じチャンバ4内に取り込まれるようになっている。
【0028】
一方、スキンプレート5の中空空間の機内側には、カッタ駆動体8、中折れジャッキ9a、シールドジャッキ9b、スクリューコンベア10、エレクタ11およびテールシール12Ba,12Bb等が設置されている。また、シールドジャッキ9bを構成するロッド9baの先端には、シールドジャッキ9bの推力をトンネルを形成するセグメントSG(後述する)の広い範囲に伝えるためのスプレッダ15が、シールドジャッキ9bのロッド9baの位置とセグメントSGの位置とを合わせるためのブロック9bbを介して取り付けられている。なお、図示はしないが、機器本体3には、上記の他に、チャンバ4内の泥土圧を検出する土圧検出部やチャンバ4内に上記添加材(作泥土材)を注入する添加材注入部等、種々の機器が設置されている。
【0029】
カッタ駆動体8は、カッタヘッド2を正逆方向に回転させるモータ(駆動源)であり、カッタヘッド2の正面内の外周近傍位置に、カッタヘッド2の周方向に沿って複数個並んで設置されている。なお、ここでは、カッタ駆動方式として外周支持駆動方式が例示されている。
【0030】
中折れジャッキ9aは、シールド掘進機1の推進方向や姿勢を修正する機器であり、機器本体3内において前胴プレート5aと後胴プレート5bとを連結するように前胴プレート5aと後胴プレート5bとの境界を跨いだ状態で機器本体3の周方向に沿って複数本並んで設置されている。この中折れジャッキ9aに圧油を供給し前胴プレート5aと後胴プレート5bとを予め決められた方向および角度に屈折させた状態でシールド掘進機1を推進することでシールド掘進機1の推進方向や姿勢を制御することが可能になっている。
【0031】
シールドジャッキ9bは、機器本体3の後方に設置されたセグメントSGに反力をとってシールド掘進機1を前進させるための推進力を発生させる機器であり、後胴プレート5bに設置されている。このシールドジャッキ9bは前胴プレート5aと後胴プレート5bとの境界を跨いだ状態で配置されており、機器本体3の周方向に沿って複数本並んで設置されている。
【0032】
スクリューコンベア10は、チャンバ4内に取り込まれた土砂を機外に排出するための機器であり、チャンバ4から隔壁7を貫通し、後方に向かって斜め上方に連続的に延在するように設置されている。なお、ここでは、リボンスクリューコンベアが例示されている。
【0033】
エレクタ11は、セグメントSGを把持して掘削坑の内周方向に旋回し、掘削坑の内周方向の組立位置に移送する組立装置であり、後胴プレート5bの内周面に沿って設けられた中間リング体16に取り付けられて、エレクタ駆動用の油圧モータ(図示せず)等によって掘削坑の周方向に沿って回転可能な状態で後胴プレート5bの中空内に設置されている。
【0034】
テールシール12Ba,12Bbは、後胴プレート5bの後端においてスキンプレート5の内周とセグメントSGの外周との間に設けられており、掘進作業中に、シールド掘進機1の後端側の外部から機器本体3の機内に、地下水、土砂および裏込め材等(以下、地下水等という)が入り込むのを防止する止水構造部である。なお、テールシール12Ba,12Bbの詳細については後述する。
【0035】
後胴プレート5bの外周面には、シール剤供給管(配管)14が設置されている。シール剤供給管14は、シール室12Rにグリス等のようなシール剤を供給するための配管であり、後胴プレート5bの外周面の上下および両側部の合計4カ所に設置されている(
図4参照)。そして、図示しないシール剤供給手段から圧送されたシール剤がシール剤供給管14を通じてシール室12R内に充填されることにより、後胴プレート5bの内周とセグメントSGの外周との隙間がシールされ、テールシール12Ba,12Bbと相俟って、掘進作業中にシールド掘進機1の機内に地下水等が入り込むことが防止される。
【0036】
さらに、後胴プレート5bの外周面には、裏込め材供給路(図示せず)が設置されている。裏込め材供給路は、例えば、セメント系の硬化材または固化材からなる裏込め材を後胴プレート5bの後方の掘削坑とセグメントSGとの隙間に供給するための配管である。なお、掘削坑とセグメントSGとの隙間に裏込め材を充填することにより、地盤沈下が防止され、さらに、セグメントSGと地山とが一体構造となってセグメントSGの継手からの漏水が防止される。
【0037】
また、裏込め材供給路は、例えば、後胴プレート5bの頂部を挟んで2箇所に設けられている。シール剤供給管14は後胴プレート5bの外周面の前述した4カ所箇所に設けられているのに対して、裏込め材供給路は後胴プレート5bの頂部付近にしか設けられていない。これは、シール剤は粘性が高いので、セグメントSGの外周に付着させるためには後胴プレート5bの内周に満遍なく供給しなければならないのに対して、裏込め材は粘性が低いので後胴プレート5bの頂部付近に供給すれば自重でセグメントSGの外周下部にまで回り込むからである。
【0038】
なお、シール剤供給管14および裏込め材供給路の形成箇所や形成数は上記したものに限定されない。例えば、シール剤供給管14はさらに数多く設けてもよく、裏込め材供給路は後胴プレート5bの軸方向の頂部の1箇所だけに設けてもよい。
【0039】
次に、シールド掘進機1のテールシールについて
図2~
図4を用いて説明する。
図2はテールシールを横から見た構成図、
図3は
図2のテールシールに設置されたセンサユニットを構成する曲げセンサの設置態様を示す説明図、
図4はテールシールの変形の状態を示す説明図である。
【0040】
図2に示すように、テールシール12Ba,12Bbは、スキンプレート5の最後端側の内周面から内側に突出して、シールド掘進機1の前後方向(シールド掘進機1の軸方向、掘削坑の延在方向)に沿って互いに離間した状態で2箇所に設置されている。また、各テールシール12Ba,12Bbは、セグメントSGの外周を取り囲むようにスキンプレート5の内周に沿って環状に設置されている。さらに、これらのテールシール12Ba,12Bbの間には、後胴外筒部5bbとセグメントSGで囲まれたシール室12Rが形成されている。なお、テールシールの設置個数は2箇所に限定されるものではなく、例えば、シールド掘進機1の前後方向に沿って3箇所以上に設置してもよい。
【0041】
また、各テールシール12Ba,12Bbは、スキンプレート5の内周に片持ち状態で設置されている。すなわち、各テールシール12Ba,12Bbの一端側(機器本体3の前後方向の一端側)はスキンプレート5の内周に固定され、テールシール12Ba,12Bbの一端側と他端側(機器本体3の前後方向の他端側)との間でセグメントSGに向かって傾斜した状態で折れ曲がり、さらに、テールシール12Ba,12Bbの他端側はテールシール12Ba,12Bbのバネ力によってセグメントSGに押し付けられた状態で接触するようになっている。
【0042】
ここで、テールシール12Ba,12Bbは、例えば、金属性のブラシ部Brと、このブラシ部Brを挟むようにしてブラシ部Brの厚さ方向の両側(つまり、ブラシ部Brの外側と内側)に設けられた鋼板部(第1の鋼板部)P1および鋼板部(第2の鋼板部)P2と、鋼板部P1,P2の間に設けられた金網部Mとを有している。
【0043】
鋼板部P1,P2には、例えば1枚の鋼板が設置されている。この鋼板部P1,P2の鋼板は、例えば炭素工具鋼鋼材からなり、板バネとしての機能を備えている。この鋼板の板バネの作用により、テールシール12Ba,12Bbの突出部分はセグメントSGに押し付けられるようになっている。鋼板部P1,P2の各々の鋼板の厚さは、例えば1.0mm程度である。そして、鋼板部P1,P2の鋼板の平面形状は、例えば矩形状に形成されている。
【0044】
テールシール12Ba,12Bbの金網部Mには、例えば、2枚のシート状の金網が設置されている。この金網部Mのシート状の金網は、例えばステンレスからなる細いワイヤを網目状に編むことによって構成されており、その厚さは、例えば0.5mm程度である。また、金網部Mのシート状の金網の平面形状は、鋼板部P1,P2の鋼板の平面形状とほぼ同じ形状に形成されている。
【0045】
テールシール12Ba,12Bbのブラシ部Brは、例えばワイヤブラシにより構成されている。すなわち、ブラシ部Brは、シールド掘進機1の前後方向に延びる複数本のワイヤを束ねることにより構成されている。
【0046】
このブラシ部Brの複数本のワイヤは、例えば硬鋼線材からなる。この複数本のワイヤの作用により、テールシール12Ba,12Bbの突出部分がセグメントSGに押し付けられるようになっている。ブラシ部Brの全体的な平面形状は、鋼板部P1,P2の鋼板の平面形状とほぼ同じ形状に形成されている。
【0047】
なお、鋼板部P1,P2の鋼板の枚数、厚さ、材料および平面形状等は、上記したものに限定されるものではなく種々変更可能である。例えば、鋼板部P1,P2の鋼板の枚数は1枚に限定されるものではなく、2枚以上(複数枚)でもよい。また、鋼板部P1,P2の鋼板の構成材料を炭素工具鋼鋼材とは異なる金属材料によって構成してもよい。さらに、鋼板部P1と鋼板部P2との間(つまり、ブラシ部Brの中)に鋼板部(第3の鋼板部)を設けてもよい。
【0048】
また、金網部Mの金網の枚数、厚さ、材料および平面形状等は、上記したものに限定されるものではなく種々変更可能である。例えば、金網部Mの金網の枚数は2枚に限定されるものではなく、1枚あるは3枚以上でもよい。また、金網部Mの金網の構成材料をステンレスとは異なる金属材料によって構成してもよい。また、金網部Mに代えて、鋼板(例えば、鋼板部P1,P2で用いられている炭素工具鋼鋼材など)を用いてもよい。さらに、金網部Mは設けられていなくてもよい。
【0049】
また、ブラシ部Brの材料および平面形状等は、上記したものに限定されるものではなく種々変更可能である。例えば、ブラシ部Brの構成材料を硬鋼線材とは異なる金属材料によって構成してもよい。
【0050】
ここで、
図2に示すように、前側のテールシール12Baには、当該テールシール12Baの曲げを検出するための2本の曲げセンサSで構成されたセンサユニット(検出手段)SUが設置されている。曲げセンサSは、内部の導電インク(導電体)の割れ目により導電体の断面積を増減させると電気抵抗が変わるという原理を利用して、変形量を電圧に変換するセンサであり、出力される電圧値(引っ張り歪みでの電圧値と圧縮歪みでの電圧値)によりセンサ全体としての曲げの大きさ(どの程度曲がっているか)と曲げの方向(どちら側に曲がっているか)が検出されるようになった長尺フィルム状のセンサであり、コーキングされてテールシール12Baを構成する外側の鋼板部P1に接着剤で貼り付けられて設置されている。
【0051】
また、曲げセンサSには、当該曲げセンサSで検出された電圧信号を機内に設けられたモニタ(図示せず)に送信するためのケーブルCが接続されている。このケーブルCは、鋼板部P1およびスキンプレート5に形成された貫通孔を通って前述したシール剤供給管14内に配設されており、後胴プレート5bの前方で機内に導出されてモニタに至っている。
【0052】
本実施の形態において、センサユニットSUは、環状のテールシール12Baの上下および両側部の合計4カ所に設置されている。これは、シールド掘進機1を曲線施工する際におけるスキンプレート5の内周とセグメントSGの外周とのクリアランス(間隔)は、テールシール12Baの上下および両側部で異なり、これに伴ってテールシール12Baの曲げ状態も異なるようになるからである。但し、センサユニットSUの設置箇所はテールシール12Baの上下および両側部に限定されるものではなく、例えばこれらの設置箇所の間にさらに設置したり、上下のみに設置したり、両側部のみに設置したりなど、自由に設定することができる。
【0053】
図2および
図3(a)に示すように、長尺フィルム状の曲げセンサSは、その長手方向がテールシール12Baの突出方向D1(
図3(a))となるようにして設置されている。さらに、
図3(a)に示すように、曲げセンサSは、テールシール12Baの突出方向D1の相互に異なる箇所に2本設置されている。
【0054】
このように、曲げセンサSをテールシール12Baの突出方向D1の相互に異なる箇所に2本設置したのは次のような理由による。
【0055】
すなわち、通常では、
図4(a)に示すように、テールシール12BaがセグメントSGに押し付けられて外側(機外側:シールド掘進機1の進行方向と反対側)に曲がっており、止水が行われる。この状態から変形が進行すると、
図4(b-1)に示すように、曲がり(変形)が徐々に大きくなる。そして、最終的には
図4(c)に示すように、テールシール12Baが反転して内側(機内側:シールド掘進機1の進行方向側)に曲がり、止水ができなくなってしまう。
【0056】
テールシール12Baがこのような変形の経過のみを辿るのであれば、1本の曲げセンサSでテールシール12Baの変形の状態を検出することができると思われる。しかしながら、テールシール12Baは常にこのような変形の経過になるとは限らず、
図4(b-2)に示すように、テールシール12Baの一部が外側に曲がり、他の部分が内側に曲がるように変形する場合がある。
【0057】
そして、
図4(b-2)に示すような変形を1本の曲げセンサSで検出した場合、引っ張り歪みでの電圧値と圧縮歪みでの電圧値とが干渉し合った電圧値が出力されてしまうので、変形状態を正確に検出することができない。
【0058】
これに対して、
図3(a)に示すように、曲げセンサSをテールシール12Baの突出方向D1の相互に異なる箇所に2本設置しておけば、テールシール12Baの外側に曲がった箇所が一方の曲げセンサSで検出され、内側に曲がった箇所がもう一方の曲げセンサSで検出されることになる。このように、それぞれの曲げセンサSがテールシール12Baの部分的な変形を検出することになるので、テールシール12Baの変形状態を正確に検出することが可能になる。
【0059】
なお、本実施の形態のセンサユニットSUは、
図3(a)に示すように、長尺フィルム状の2本の曲げセンサSで構成されているが、
図3(b)に示すように、3本あるいはそれ以上の曲げセンサSで構成してもよい。このようにすれば、テールシール12Baがより複雑に曲がった場合でも、その変形状態を正確に検出することができる。
【0060】
また、複数本(本実施の形態では2本)の曲げセンサSはテールシール12Baの突出方向D1の相互に異なる箇所に設置されていれば足り、
図3(a)(b)に示すような直線上に設置するのではなく、
図3(c)に示すように、環状のテールシール12Baの周方向D2にずらして設置したり、
図3(d)に示すように、テールシール12Baの周方向D2にずらすとともに一部が相互にオーバーラップするように設置してもよい。
【0061】
また、センサユニットSUは、
図3(e)に示すように、環状のテールシール12Baの周方向D2で相互に隣接した複数列に設置してもよい。このようにセンサユニットSUを複数列に設置すれば、一部の曲げセンサSが故障した場合でも、他の曲げセンサSでテールシール12Baの曲げを検出できるので、テールシール12Baの正確な変形状態を安定して検出することが可能になる。
【0062】
さらに、センサユニットSUは第1の鋼板部P1の突出方向D1の全長あるいはほぼ全長に亘って設置されているのがよい。このように設置すれば、テールシール12Baの突出方向D1のどの箇所が曲がっていても、何れかの曲げセンサSにより曲がりを検出することができるからである。
【0063】
なお、センサユニットSUのテールシール12Baへの設置形態は本実施の形態に限定されるものではない。つまり、本実施の形態では、センサユニットSUは第1の鋼板部P1のブラシ部Br側に設置されているが、第1の鋼板部P1のブラシ部Brと反対側に設置されていてもよい。あるいは、第2の鋼板部P2のブラシ部Br側またはその反対側、または金網部Mに設置されていてもよい。但し、第1の鋼板部P1または第2の鋼板部P2の金網部Mと反対側に設置すれば、ブラシ部Brに煩わされることなくセンサユニットSUを第1の鋼板部P1または第2の鋼板部P2に容易に設置することができる。また、第1の鋼板部P1または第2の鋼板部P2の金網部M側に設置すれば、センサユニットSUを構成する曲げセンサSがシール室12R内のシール剤の充填圧の影響を受けたりセグメントSGと摩擦しなくなる。さらに、前述のように、第1の鋼板部P1および第2の鋼板部P2は複数枚の鋼板で構成することができ、金網部Mは複数枚の金網で構成することができるが、このような構成の場合には、センサユニットSUを複数枚になった第1の鋼板部P1、第2の鋼板部P2または金網部Mの間に挟み込むようにして設置してもよい。そして、センサユニットSUを構成する複数の曲げセンサSについては、相互に異なる部材(第1の鋼板部P1、第2の鋼板部P2、金網部M)に設置されていてもよい。
【0064】
また、本実施の形態では前側のテールシール12BaにセンサユニットSUが設置されているが、後側のテールシール12Bbあるいは両方のテールシール12Ba,12Bbに設置してもよい。テールシールをシールド掘進機1の前後方向に沿って3箇所以上に設置した場合には、一部のテールシールにセンサユニットSUを設置してもよく、全てのテールシールにセンサユニットSUを設置してもよい。
【0065】
このように、本実施の形態によれば、センサユニットSUを構成する曲げセンサSがテールシール12Baの突出方向D1の相互に異なる箇所に複数本設置されているので、それぞれの曲げセンサSがテールシール12Baの部分的な変形を検出することになる。これにより、テールシール12Baの曲がりについて、外側に曲がっているのかあるいは内側に曲がっているのかのみならず、一部が外側に曲がり、他の部分が内側に曲がっている場合についても形成することができ、テールシール12Baの変形状態を正確に検出することが可能になる。
【0066】
このようにテールシール12Baの変形状態を正確に検出できることで、テールシール12Baによる止水性異常の発生を未然に防止することができ、あるいは止水性異常が発生したときにそれがテールシール12Baによるものなのかを確認することができる。また、掘進の途中からそれまでのセグメントSGに比較して径の小さなセグメントになってテールシール12Baのスキンプレート5に対する傾斜角が大きくなった場合にも、テールシール12BaのセグメントSGへのかかり代を確保できているかどうかを確認することができる。
【0067】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上の説明では、本発明を泥土圧シールド掘進機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、チャンバ内の泥水に所定の圧力を加えることにより切羽を安定させ、泥水を循環させることにより掘削土砂を輸送する仕組みを持つ泥水式シールド掘進機など、他のシールド掘進機にも適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 シールド掘進機
2 カッタヘッド
3 機器本体
5 スキンプレート
5a 前胴プレート(前胴部)
5b 後胴プレート(後胴部)
9b シールドジャッキ
12Ba,12Bb テールシール
12R シール室
14 シール剤供給管(配管)
Br ブラシ部
D1 テールシールの突出方向
D2 テールシールの周方向
M 金網部
P1 鋼板部(第1の鋼板部)
P2 鋼板部(第2の鋼板部)
S 曲げセンサ
SG セグメント
SU センサユニット(検出手段)